(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154908
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】エアーダンパー装置
(51)【国際特許分類】
F16F 9/02 20060101AFI20231013BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20231013BHJP
F16F 7/09 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
F16F9/02
F16F9/32 L
F16F7/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064547
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】513014628
【氏名又は名称】株式会社ナチュラレーザ・ワン
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤哲生
【テーマコード(参考)】
3J066
3J069
【Fターム(参考)】
3J066AA14
3J066AA24
3J066CA07
3J066CB08
3J069AA16
3J069CC13
3J069EE02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ダンパー装置の動作時にソフトに動作し、オイル漏れの心配のないエアーダンパー装置を提供する。
【解決手段】筒状を呈したケース本体と、ケース本体内部へスライド可能に挿入された軸方向に貫通する気体流通孔を有するピストンシャフトと、ピストンシャフトに設けた上部フランジ部と下部フランジ部との間に前記ケース本体の内周と接して設けられて下方に向けて開口した気体圧入周溝を有する円筒状かつ可撓性材質のシール部材と、前記下部フランジ部内に前記気体流通孔及び気体貯留室と連通して設けられたバルブ装着室と、バルブ装着室と前記ケース体の内底部との間に設けられた気体貯留室と、前記バルブ装着室内に上下方向へスライド可能に装着され前記気体流通孔を開閉するバルブと、前記ピストンシャフトを一方向へスライド付勢させるための圧縮コイルスプリングを有し、前記下部フランジ部に前記シール部材の前記周溝と連通する気体流通溝を設ける。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状を呈したケース本体と、このケース本体に取り付けたキャップを通して前記ケース本体内部へスライド可能に挿入されるところの軸方向に貫通する気体流通孔を有するピストンシャフトと、このピストンシャフトに設けた上部フランジ部と下部フランジ部との間に前記ケース本体の内周と接して設けられたところの下方に向けて開口した気体圧入周溝を有する円筒状かつ可撓性材質のシール部材と、前記下部フランジ部内に前記気体流通孔及び気体貯留室と連通して設けられたバルブ装着室と、このバルブ装着室と前記ケース体の内底部との間に設けられた気体貯留室と、前記バルブ装着室内に上下方向へスライド可能に装着され前記気体流通孔を開閉するバルブと、前記ピストンシャフトを一方向へスライド付勢させるために前記ケース本体内底部との間に弾設された圧縮コイルプリイングを有し、前記下部フランジ部には前記シール部材の前記周溝と連通する気体流通溝が設けられていることを特徴とする、エアーダンパー装置。
【請求項2】
前記ピストンシャフトは、前記ケース本体に対し非回転かつスライド可能に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載のエアーダンパー装置。
【請求項3】
前記バルブは、前記バルブ装着室内においてスライド可能かつ非回転に装着されていることを特徴とする、請求項1に記載のエアーダンパー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複写機、複合機、印刷機のような事務機器の原稿圧着板や家具、各種機器類などの開閉体を装置本体へ開閉可能に取り付ける際に用いられる開閉装置などに用いて好適なエアーダンパー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記事務機器等に用いられる原稿圧着板や開閉体を開閉するヒンジや開閉装置には、下記特許文献1に示されたように、緩衝作用を行うためにダンパー装置が用いられており、このダンパー装置には粘性オイルなどの流体を用いたものをもっぱら用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の開閉装置は、原稿圧着板の所定閉成角度から、ダンパー装置が動作して原稿圧着板が急激に閉じられるのを防止しているが、ダンパー装置が急激に効き始めるため、原稿圧着板にその衝撃が伝わりガクンとした手ごたえを覚えることから、操作性の改善が求められているところである。
【0005】
また、粘性オイルをシールするために構成が複雑となる上に、永年使用後にはシール部分から粘性オイルが漏れたり、ピストンシャフトに急激に過大な圧力が加わった場合に、内部圧力によってケース本体が破壊して漏れた粘性オイルでヒンジや事務機器を汚すという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ダンパー装置の動作時にソフトに動作し、オイル漏れの心配のないエアーダンパー装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に係るエアーダンパー装置は、筒状を呈したケース本体と、このケース本体に取り付けたキャップを通して前記ケース本体内部へスライド可能に挿入されるところの軸方向に貫通する気体流通孔を有するピストンシャフトと、このピストンシャフトに設けた上部フランジ部と下部フランジ部との間に前記ケース本体の内周と接して設けられたところの下方に向けて開口した気体圧入周溝を有する円筒状かつ可撓性材質のシール部材と、前記下部フランジ部内に前記気体流通孔及び気体貯留室と連通して設けられたバルブ装着室と、このバルブ装着室と前記ケース体の内底部との間に設けられた気体貯留室と、前記バルブ装着室内に上下方向へスライド可能に装着され前記気体流通孔を開閉するバルブと、前記ピストンシャフトを一方向へスライド付勢させるために前記ケース本体内底部との間に弾設された圧縮コイルプリイングを有し、前記下部フランジ部には前記シール部材の前記周溝と連通する気体流通溝が設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために請求項2に係るエアーダンパー装置は、前記ピストンシャフトが、前記ケース本体に対し非回転かつスライド可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するために請求項3に係るエアーダンパー装置は、前記バルブが、前記バルブ装着室内においてスライド可能かつ非回転に装着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は以上のように構成したので、ピストンシャフトに例えば開閉体の閉成時に下方に向けた圧力が加わると、このピストンシャフトにより圧縮される圧縮コイルスプリングの弾力による摺動抵抗と、エアー貯留室内のエアーがピストンシャフトの下部フランジ部に設けた気体流通溝を介してシール部材の気体圧入周溝に流れ込むことによって膨張するシール部材の外周とケース部の内周との間に生ずる摩擦抵抗とにより、緩衝機能を発揮できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るエアーダンパー装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したエアーダンパー装置の縦断面図である。
【
図3】
図1に示したエアーダンパー装置の分解斜視図である。
【
図4】
図1に示したエアーダンパー装置のケース本体の縦断面図である。
【
図5】
図1に示したエアーダンパー装置のピストンシャフトを示し、(a)はその斜視図、(b)は(a)のA-A線断面図、(c)は(a)B-B線断面図である。
【
図6】
図1に示したエアーダンパー装置のバルブを示し、(a)は上方から見た斜視図、(b)はその側面図である。
【
図7】
図1に示したエアーダンパー装置のシール部材を示し、(a)下方から見た斜視図、(b)はその縦断面図である。
【
図8】
図1に示したエアーダンパー装置のキャップを示し、(a)は下方から見た斜視図、(b)はその縦断面図である。
【
図9】
図1に示したエアーダンパー装置の動作途中の状態を説明する従断面図であり、(a)は
図2の状態からの動作を示す縦断面図であり、(b)ピストンシャフトの下部フランジ部に設けた気体流通溝の部分で割った縦断面図である。
【
図10】
図1に示したエアーダンパー装置の動作終了時の状態を説明するためのもので、(a)はピストンシャフトの下部フランジ部に設けた気体流通孔の部分で割った縦断面図であり、(b)はピストンシャフトの下部フランジ部に設けた気体流通溝の部分で割った縦断面図である。
【
図11】
図1に示したエアーダンパー装置のピストンシャフトの復帰動作中の状態を説明するもので、(a)はピストンシャフトの下部フランジ部に設けた気体流通孔の部分で割った縦断面図であり、(b)はピストンシャフトの下部フランジ部に設けた気体流通溝の部分で割った縦断面図である。
【
図12】
図1に示したエアーダンパー装置の他の実施例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明に係るエアーダンパー装置の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例0013】
図面によれば、
図1乃至
図8において、指示記号1で示されたものは、本発明に係るエアーダンパー装置Aのケース本体である。このケース本体1は、略円筒状のもので、受座部1aとこの受座部1a上に一体に立設された上端部に開口部1cを有するケース部1bから成り、受座部1の内底部には平面リング状を呈した凸部1dが設けられ、上部等間隔に4個の係止突起1e、1e、・・が設けられている。
【0014】
指示記号2で示したものは、ケース本体1のケース部1bの開口部1cに被せられるキャップであり、このキャップ2はその中央部にピストンシャフト3を通す挿通孔2aが設けられると共に、この挿通孔2aの周りに等間隔に4個のガイド凹部2b、2b・・が設けられている。キャップ2にはさらに、その外周に等間隔に4個の係合孔2c、2c・・がキャップ2の半径方向に貫通して設けられると共に、その内頂部にはリング状のストッパー部2dが設けられている。
【0015】
ケース部1b内部にはキャップ2の挿通孔2aを貫通してピストンシャフト3が上下方向へスライド可能に挿入されている。このピストンシャフト3は、とくに
図3と
図5に示したように、その軸芯部軸方向へ気体流通孔3aが貫通して設けられると共に、その外周の上下方向の略中央部にケース部1bの内径と一致する外径を有する上部フランジ部3bが設けられ、この上部フランジ部3bの上方へキャップ2のガイド凹部2b、2b、・・と係合する4本のガイド凸条3c、c・・が設けられており、その動作時に軸方向へ回転することはない。上部フランジ部3bの下方には断面円柱形状のシール部材装着部3dを介して、同じくケース部1bの内径と一致する外径を有する下部フランジ部3eが設けられ、この下部フランジ部3eの内部には、気体流通孔3aに対向してバルブ装着室4が設けられ、このバルブ装着室4内にバルブ5が上下方向へ移動可能に収装されている。下部フランジ部3eの外周には、90度間隔に軸方向へ設けた4個の気体流通溝3f、3f・・が設けられると共に、バルブ装着室4と連通している同じく4個の気体流通孔3g、3g・・が、気体流通溝3f、3f・・と重ならないように90度間隔で設けられている。
【0016】
とくに
図2に示したように、上部フランジ部3bと下部フランジ部3eの間に設けられたシール部材装着部3dには略円筒状を呈した例えばゴム製等の可撓性材質のシール部材5が装着されている。このシール部材5は、とくに
図7に示したように、中央部にシール部装着部3dを収容する収容部5aが設けられると共に、その上端部と下端部にピストンシャフト3のシール部材装着部3dの上部と下部に設けた上部係合周溝3hと下部係合収溝3iと係合するリング状係合部5b、5cが内側に突出して設けられている。このシール部材5にはさらに収容部5aとその外周との間の肉厚部にその下端部側を開口させたリング状の気体圧入周溝5dが設けられている。
【0017】
バルブ6は、とくに
図6に示したように、円盤状の基板部6aと、この基板部6aの表面に十文字形状に設けられた気体流通溝6bと、この気体流通溝6bで仕切られた部分毎に上方へ突出させて設けた4個の係合片6c、6c・・とを有し、これらの各係合片6c、6c・・の上部に設けた係合部6d、6d・・は、バルブ装着室4に設けた気体流通孔3g、3g・・と係合しており、その動作時に水平方向へ回転することはない。そして、ピストンシャフト3の下部フランジ部3eとケース部1bの内底部との間には、圧縮コイルスプリングから成る弾性部材7が弾設されると共に、ケース本体1内の弾性部材7を収容した部分はバルブ装着室4と連通させた気体貯留室8となっている。
【0018】
以下に添付した図面に基いて、上述した本発明に係るエアーダンパー装置Aの動作について説明する。図面によれば、
図2に示したように、本発明に係るエアーダンパー装置Aは、その動作前において、ピストンシャフト3は、弾性部材7に押されてケース本体1のケース部1b内部において最も上方へスライドした位置にあって、キャップ2の内頂部に設けたストッパー部2dに当接している。この状態において、バルブ6はバルブ装着室4内において下方へ自重で落下した状態にあり、気体流通孔3aとケース部1bの気体貯留室8内部は連通した状態にある。
【0019】
この状態から、ピストンシャフト3の上端部に外部から押圧力が加わると、
図9に示したように、ピストンシャフト3は弾性部材7の弾力に抗して下方へ移動し始めることから、比較的に弱い緩衝作用がなされる。同時にバルブ6が気体収容室8内のエアーに押されて気体流通孔3aを塞ぐことから、気体収容室8内のエアーは行き場を失い、ピストンシャフト3の下部フランジ部3eに設けた気体流通溝3f、3f・・を介してシール部材5の気体圧入周溝5d内に圧入する。すると、可撓性材質のシール部材5の外周が外側へ膨らみケース部1bの内周へ圧接することになることから、ピストンシャフト3の下方への摺動動作が抵抗を受け、緩衝作用がなされることになる。
【0020】
ピストンシャフト3が外部から押圧力を受けて下方へ摺動する際には、弾性部材7とシール部材5の双方により緩衝がなされる結果、弾性部材7に弾力の強いものを使用しなくてもよいので、その分、緩衝動作がソフトになされることになる。また、このように、ピストンシャフト3が下降した状態は
図10に示してあり、バルブ6はバルブ装着室4内において気体流通孔3aを閉じた状態にあると共に、弾性部材7は最大限に圧縮された状態にある。この状態は、
図10に記載してある。
図10には、ピストンシャフト3の頂部がキャップ2の上端面まで降下した状態のものが示してあるが、他に図示してないストッパーを用いることにより、ピストンシャフト3の降下位置を規制することは可能である。
【0021】
この
図10の状態から、ピストンシャフト3に対する押圧力が解かれると、ピストンシャフト3は弾性部材7の弾力により上方へスライドする力を受けるが、気体貯留室8内が負圧になることにより、バルブ6が下方へスライドし外部の気体が気体流通孔3aからバルブ装着室4を介して気体貯留室8内へ流れ込むことにより、ピストンシャフト3の元位置へ戻る動作はスムーズなものとなり、上部フランジ部3bがキャップ2に当接することにより停止する。このようにエアーダンパー装置Aの緩衝動作がなされることになる。
図11はピストンシャフト3が元位置に戻る途中の状態を示している。
【0022】
図12は、本発明に係るエアーダンパー装置の他の実施例を示し、この実施例に係るエアーダンパー装置Bは、軸方向に長い形態であるが、内部構造は実施例1のものと同じであり、指示記号10のものがケース本体であり、指示記号11のものがピストンシャフトである。
【0023】
従って、本発明に係るエアーダンパー装置Aの外形或は形態は、それが用いられる個所によって変わるものであり、実施例1のものに限定されない。また、キャップ2はケース本体1に対し係合手段によらず、ネジ着であっても良い。
本発明に係るエアーダンパー装置は、以上のように構成したので、緩衝作用を必要とするヒンジなどの開閉装置をはじめとし、緩衝作用を必要とする様々な分野で好適に用いられるものである。