(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154912
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】合成スラブ構造、及び合成スラブ構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 5/38 20060101AFI20231013BHJP
E04B 5/32 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
E04B5/38 Z
E04B5/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064552
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 文久
(72)【発明者】
【氏名】中川 学
(72)【発明者】
【氏名】薮田 智裕
(57)【要約】
【課題】施工上の負担軽減を図りつつ、木質面材とコンクリートスラブとの一体化を図ることができる合成スラブ構造を提供すること。
【解決手段】合成スラブ構造100は、両端が梁10の上に載置された木質面材30と、前記木質面材30の上にある鉄筋コンクリートスラブ50とを備える、合成スラブ構造であって、前記木質面材30の上面には、鎹70が打ち込まれ、前記鎹70が前記鉄筋コンクリートスラブ50に埋め込まれている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が梁の上に載置された木質面材と、前記木質面材の上にある鉄筋コンクリートスラブとを備える、合成スラブ構造であって、
前記木質面材の上面には、鎹が打ち込まれ、
前記鎹が前記鉄筋コンクリートスラブに埋め込まれていることを特徴とする合成スラブ構造。
【請求項2】
前記鉄筋コンクリートスラブは、前記鎹をスペーサとして、該鎹の上に配筋された鉄筋を有することを特徴とする請求項1に記載の合成スラブ構造。
【請求項3】
前記鉄筋は、前記木質面材の長手方向に延設される第1鉄筋と、前記第1鉄筋と交差する方向に延設される第2鉄筋とを含み、
前記第1鉄筋と前記第2鉄筋との交点が、前記鎹の上に載置されるように配筋されていることを特徴とする請求項2に記載の合成スラブ構造。
【請求項4】
平面視において、前記鎹は前記第1鉄筋及び前記第2鉄筋と交差するように配置されていることを特徴する請求項3に記載の合成スラブ構造。
【請求項5】
前記鉄筋は、上下に配置された主筋である上端筋及び下端筋を有し、
前記鎹は、
前記下端筋を載置する第1鎹と、
前記第1鎹よりも高い位置まで立設され、前記上端筋を載置する第2鎹と、を有することを特徴とする請求項2~4の何れか一項に記載の合成スラブ構造。
【請求項6】
両端が梁の上に載置された木質面材の上に鉄筋コンクリートスラブを形成する、合成スラブ構造の施工方法であって、
前記木質面材の上面に鎹を打ち込む工程と、
前記鎹の上に鉄筋を載置して配筋する工程と、
前記木質面材の上にコンクリートを打設する工程と、を含むことを特徴とする合成スラブ構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成スラブ構造、及び合成スラブ構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、デッキプレートを用いた合成スラブにおいて、デッキプレートにエンボス加工を施すことにより、デッキプレートとコンクリートスラブとを一体化させるものがある。また、CLTパネル(Cross Laminated Timber、直交集成板)を有する木質床を用いた合成スラブにおいて、CLTパネルに対してラグスクリューボルトを打ち込むことにより、CLTパネルとコンクリートスラブとを一体化させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、二酸化炭素排出量の削減を求める社会情勢や環境への関心を配慮して、木質材料を活用した建築技術に対するニーズが高まっている。上記の木質材料の上にコンクリートスラブが施工された合成スラブでは、木質材料に複数のラグスクリューボルトを打ち込むことにより、木質材料とコンクリートスラブを一体化させているが、複数のラグスクリューボルトを用いた施工には施工手間が多く、施工上の負担が極めて大きいといった課題がある。
【0005】
本発明は、施工上の負担軽減を図りつつ、木質面材とコンクリートスラブとの一体化を図ることができる合成スラブ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成すべく、本発明による合成スラブ構造の一態様は、
両端が梁の上に載置された木質面材と、前記木質面材の上にある鉄筋コンクリートスラブとを備える、合成スラブ構造であって、
前記木質面材の上面には、鎹が打ち込まれ、
前記鎹が前記鉄筋コンクリートスラブに埋め込まれていることを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、鎹が木質面材の上面に打ち込まれ、鎹が木質面材より上方に突出して鉄筋コンクリートスラブに埋め込まれることにより、木質面材と鉄筋コンクリートスラブとを一体化できる。鎹のうち、木質面材の上方に張り出す部分が抵抗となり、木質面材と鉄筋コンクリートスラブとを高強度に一体化できる。本態様によれば、鎹をシアキーとして機能させることができる。従来からシアキーとして使用されているラグスクリューボルトや木ねじ状のビスと比較して、鎹を用いた場合のせん断耐力が高く、鎹の施工数量を減らすことができる。そのため、従前のようにラグスクリューボルトを施工する場合と比較して、施工負担を軽減することができる。
【0008】
また、本態様では、天井面となる木質面材をそのまま木材の現しとすることができることにより、木質感を増すことができる。
【0009】
また、本態様では、木質面材が設けられていない鉄筋コンクリートスラブのみの構成と比較して、木質面材があることにより、振動性能及び遮音性能の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明の他の態様において、
前記鉄筋コンクリートスラブは、
前記鎹をスペーサとして、該鎹の上に配筋された鉄筋を有することを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、鎹をスペーサとして利用することにより、シアキーとして機能する鎹をスペーサとして利用することで、別途スペーサを配置する必要がなくなる。これにより、施工負担を軽減することができる。スペーサを設けることにより、鉄筋コンクリートスラブにおいて鉄筋のかぶり厚さを確保することができる。
【0012】
また、本発明の他の態様において、
前記鉄筋は、前記木質面材の長手方向に延設される第1鉄筋と、前記第1鉄筋と交差する方向に延設される第2鉄筋とを含み、
前記第1鉄筋と前記第2鉄筋との交点が、前記鎹の上に載置されるように配筋されていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、第1鉄筋及び第2鉄筋の交点に鎹が配置されていることにより、第1鉄筋と第2鉄筋とに対して別々に鎹を配置する構成と比較して、鎹の設定数量を減らすことができ、施工負担を軽減することができる。
【0014】
また、本発明の他の態様において、
平面視において、前記鎹は前記第1鉄筋及び前記第2鉄筋と交差するように配置されていることを特徴する。
【0015】
本態様によれば、鉄筋を配筋する際に、第1鉄筋及び第2鉄筋のうちいずれか一方を先に配置してもよく、施工負担を軽減できる。例えば、鉄筋の長手方向に沿って鎹を配置した場合には、鉄筋を安定して支持することは難しいが、本態様では、鉄筋と交差するように鎹を配置することにより、安定して鉄筋を支持できる。
【0016】
また、本発明の他の態様において、
前記鉄筋は、上下に配置された主筋である上端筋及び下端筋を有し、
前記鎹は、
前記下端筋を載置する第1鎹と、
前記第1鎹よりも高い位置まで立設され、前記上端筋を載置する第2鎹と、を有することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、高さが異なる第1鎹及び第2鎹を有し、第1鎹の上に下端筋を配筋し、第2鎹の上に上端筋を配筋することにより、鉄筋コンクリートスラブの強度の向上を図ることができる。また、本態様によれば、高さが異なる第1鎹及び第2鎹を有することにより、第1鎹のみを有する構成と比較して、伝達されるせん断力の増大を図ることができる。
【0018】
本発明による合成スラブ構造の施工方法の一態様は、
両端が梁の上に載置された木質面材の上に鉄筋コンクリートスラブを形成する、合成スラブ構造の施工方法であって、
前記木質面材の上面に鎹を打ち込む工程と、
前記鎹の上に鉄筋を載置して配筋する工程と、
前記木質面材の上にコンクリートを打設する工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、鎹が木質面材の上面に打ち込まれ、鎹が木質面材より上方に突出し、鉄筋コンクリートスラブに埋め込まれることにより、木質面材と鉄筋コンクリートスラブとを一体化できる。鎹のうち、木質面材の上方に張り出す部分が抵抗となり、木質面材と鉄筋コンクリートスラブとを高強度に一体化できる。本態様によれば、鎹をシアキーとして機能させることができる。従来からシアキーとして使用されているラグスクリューボルトや木ねじ状のビスと比較して、鎹を用いた場合のせん断耐力が高く、鎹の施工数量を減らすことができる。そのため、従前のようにラグスクリューボルトを施工する場合と比較して、施工負担を軽減することができる。また、本態様では、鎹を木質面材に打ち込むだけでよく、従前のようにラグスクリューボルトを施工する場合と比較して、施工負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明から理解できるように、合成スラブ構造によれば、施工上の負担軽減を図りつつ、木質面材とコンクリートスラブとを一体化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る合成スラブ構造の一例を示す平面図である。
【
図2】第1実施形態に係る合成スラブ構造の一例を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る合成スラブ構造の鎹及び鉄筋を示す拡大断面図である。
【
図4】第2実施形態に係る合成スラブ構造の鎹及び鉄筋を示す拡大断面図である。
【
図5】第3実施形態に係る合成スラブ構造の施工方法の手順を示す工程図である。
【
図6】第4実施形態に係る合成スラブ構造の一例を示す平面図である。
【
図7】第4実施形態に係る合成スラブ構造の一例を示す断面図である。
【
図8】第5実施形態に係る合成スラブ構造の一例を示す平面図である。
【
図9】第5実施形態に係る合成スラブ構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態に係る合成スラブ構造、及び合成スラブ構造の施工方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0023】
[第1実施形態に係る合成スラブ構造]
はじめに、
図1乃至
図3を参照して、実施形態に係る合成スラブ構造の一例について説明する。ここで、
図1は、第1実施形態に係る合成スラブ構造の一例を示す平面図である。
図2は、第1実施形態に係る合成スラブ構造の一例を示す断面図である。
図3は、第1実施形態に係る合成スラブ構造の鎹及び鉄筋を示す拡大断面図である。また、各図において、互いに直交する3方向として、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向を示す矢印を適宜図示す場合がある。X軸方向及びY軸方向は、水平方向に沿う。Y軸方向は、梁10の長手方向に沿う方向である。X軸方向は、梁10の長手方向に交差する方向である。Z軸方向は、鉛直方向に沿う。
【0024】
合成スラブ構造100を有する建物の躯体は、柱及び梁10を備える。柱は、例えば鉄骨造(S造)の柱でもよい。柱は、鉄骨造の柱に限定されず、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の柱でもよい。
【0025】
梁10は、例えば鉄骨造の梁(鉄骨梁)である。梁10は、Y軸方向に延設されている。梁10の両端は、一対の柱に接続されている。
【0026】
図2に示されるように、梁10は、例えばH形鋼からなり、ウェブ11と上フランジ12と下フランジとを有する。
図2では、梁10のウェブ11の一部、及び上フランジ12を示し、下フランジは図示していない。なお、梁10は、鉄骨造の梁に限定されず、SRC造やRC造の梁でもよい。
【0027】
合成スラブ構造100は、CLTパネル30と、鉄筋コンクリートスラブ50と、を有する。なお、「鉄筋コンクリートスラブ」を「RCスラブ」と省略する場合がある。
【0028】
RCスラブ50は、CLTパネル30の上に打設されたコンクリート40と、コンクリート40に埋め込まれた鉄筋120,150と、を有する。コンクリート40は、例えば普通コンクリートでもよい。
【0029】
図1に示されるように、鉄筋120は、Y軸方向に間隔を置いて配置され、X軸方向に延設されている。鉄筋150は、X軸方向に間隔を置いて配置され、Y軸方向に延設されている。鉄筋120,150は、例えば異形鉄筋であり、互いに交差する方向に配置されている。なお、鉄筋120,150は、異形鉄筋に限定されず、その他の鉄筋でもよい。鉄筋120,150は、格子状に配置されたワイヤでもよい。鉄筋120は、CLTパネル30の長手方向に延設される第1鉄筋の一例である。鉄筋150は、鉄筋120と交差する方向に延設される第2鉄筋の一例である。
【0030】
図2に示されるように、CLTパネル30は、RCスラブ50の下方に配置されている。CLTパネル30は、複数の層32,34,36が積層されて形成され、これらの層32,34,36に含まれるひき板は、隣接する層のひき板と繊維方向が互いに直交するように配置されている。複数の層32,34,36は、互いに接着されている。CLTパネル30は、木質面材の一例である。木質面材は、CLTパネル30に限定されず、LVL(Laminated Veneer Lumber、単板積層材)などその他の木質面材でもよい。
【0031】
CLTパネル30は、複数の梁10によって支持されている。CLTパネル30の端部30aは、梁10の上フランジ12の上面12aの上に載置されている。
【0032】
図1~
図3に示されるように、合成スラブ構造100は、CLTパネル30の上に固定された複数の鎹70を備える。鎹70は、X軸方向及びY軸方向に所定の間隔を置いて配置されている。鎹70は、鉄筋120及び鉄筋150が交差する交点を支持するように配置されている。鉄筋120は、鎹70の上に載置されて配筋され、鉄筋150は鉄筋120の上に載置されて配筋されている。なお、鉄筋150が鎹70の上に載置され、この鉄筋150の上に鉄筋120が載置されるように配筋されていてもよい。また、鉄筋120と鉄筋150の全ての交点に鎹70が配置されていなくてもよい。
【0033】
図3に示されるように、鎹70は、一対の足部72,74と、一対の足部72,74同士を連結する水平部76と、を有する。鎹70は、例えば棒状の部材を屈曲して形成できる。一対の足部72,74は、水平部76の両端部から折り曲げられて、水平部76と交差する方向に突出する。水平部76は、板状を成していてもよい。水平部76は、鉛直方向に対して直交するものに限定されない。
【0034】
鎹70は、CLTパネル30の上面に打ち込まれて、コンクリート40に埋め込まれている。足部72,74の先端部は、CLTパネル30に打ち込まれている。一対の足部72,74は、CLTパネル30に打ち込まれて、CLTパネル30よりも上方に突出している。水平部76は、CLTパネル30よりも上方の位置で、足部72,74の上端部を連結する。水平部76は、CLTパネル30の上面に対して離間している。
【0035】
鉄筋120は、水平部76の上に配置されて支持されている。鉄筋120は、鎹70をスペーサとして利用して配筋されている。鉄筋150は、鉄筋120の上の載置されている。
【0036】
図1に示されるように、鎹70は、平面視において、鉄筋120及び鉄筋150と交差するように配置されている。具体的には、水平部76が、鉄筋120及び鉄筋150と交差するように配置されている。鉄筋120及び鉄筋150に対する水平部76の角度は、例えば45度である。水平部76は、鉄筋120又は鉄筋150に対してその他の角度で交差するように配置されていてもよい。
【0037】
図2に示されるように、上フランジ12には、X軸方向に離間する複数のCLTパネル30が載置されている。複数のCLTパネル30の端部30aは、相互に離間を置いて載置されている。
【0038】
複数のCLTパネル30の端部間の隙間には、上フランジ12から上方に突出する複数のスタッド8が設けられている。スタッド8は、X軸方向に所定の間隔を置いて複数配置されている。複数のスタッド8は、梁10の長手方向において、所定の間隔を置いて配置されている。スタッド8は、例えば上フランジ12に対して溶接されている。
【0039】
上フランジ12上の隙間には、コンクリート40が打設されて、RCスラブ50と梁10とが一体化されている。複数のスタッド8は、コンクリート40に埋め込まれている。
【0040】
(合成スラブ構造100の作用効果)
第1実施形態に係る合成スラブ構造100によれば、複数の鎹70がCLTパネル30の上面に打ち込まれ、鎹70がCLTパネル30より上方に突出し、RCスラブ50に埋め込まれることにより、CLTパネル30とRCスラブ50とを一体化できる。鎹70のうち、CLTパネル30の上方に張り出す部分が抵抗となり、CLTパネル30とRCスラブ50とを高強度に一体化できる。合成スラブ構造100では、鎹70をシアキーとして機能させることができる。合成スラブ構造100では、従来からシアキーとして使用されているラグスクリューボルトや木ねじ状のビスと比較して、せん断耐力が高く、鎹70の施工数量を減らすことができる。そのため、従前のようにラグスクリューボルトを施工する場合と比較して、施工負担を軽減することができる。合成スラブ構造100では、鎹70をCLTパネル30に打ち込むだけでよく、従前のようにラグスクリューボルトを施工する場合と比較して、施工負担を軽減することができる。
【0041】
また、合成スラブ構造100では、鎹70をスペーサとして利用することにより、シアキーとして機能する鎹70をスペーサとして利用することで、別途スペーサを配置する必要がなくなる。これにより、施工負担を軽減することができる。スペーサを設けることにより、RCスラブ50において鉄筋120,150のかぶり厚さを確保することができる。
【0042】
また、合成スラブ構造100では、鉄筋120及び鉄筋150の交点に鎹70が配置されていることにより、鉄筋120と鉄筋150とに対して別々に鎹を配置する構成と比較して、鎹70の設置数量を減らすことができ、施工負担を軽減することができる。
【0043】
また、合成スラブ構造100では、鎹70は鉄筋120及び鉄筋150と交差するように配置されていることにより、鉄筋120,150を配筋する際に、鉄筋120及び鉄筋150のいずれか一方を先に配置してもよく、施工負担を軽減できる。また、鉄筋の長手方向に沿って鎹70を配置すると、鉄筋を安定して支持することはできないが、鉄筋と交差するように鎹70を配置することにより、安定して鉄筋を支持できる。
【0044】
また、合成スラブ構造100では、天井面となるCLTパネル30をそのまま木材の現しとすることができることにより、建物の天井において木質感を増すことができる。
【0045】
また、合成スラブ構造100では、CLTパネル30が設けられていないRCスラブ50のみの構成と比較して、CLTパネル30があることにより、振動性能及び遮音性能の向上を図ることができる。
【0046】
[第2実施形態に係る合成スラブ構造]
次に、
図4を参照して、第2実施形態に係る合成スラブ構造100Bについて説明する。
図4は、第2実施形態に係る合成スラブ構造の鎹及び鉄筋を示す拡大断面図である。第2実施形態に係る合成スラブ構造100Bが第1実施形態に係る合成スラブ構造100と違う点は、RCスラブ50は、上下2段に配置された鉄筋120,130,150,160を備える点、及び、RCスラブ50は、下段の鉄筋120,150を支持する鎹70と、上段の鉄筋130,160を支持する鎹70Bを備える点である。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の説明は省略する。
【0047】
鉄筋120は、下端主筋であり、鉄筋150は、下端主筋に交差する配力筋である。鉄筋130は、上端主筋であり、鉄筋160は、上端主筋に交差する配力筋である。
【0048】
鎹70Bは、例えば、X軸方向において、複数の鎹70間に配置されている。鎹70Bは、Y軸方向において、複数の鎹70間に配置されていてもよく、X軸方向及びY軸方向において、鎹70と同じ位置に配置されていてもよい。鎹70Bは、平面視において、70と同じ角度で配置されていてもよく、鎹70と交差するように配置されていてもよい。鎹70は、第1鎹の一例であり、鎹70Bは、第2鎹の一例である。
【0049】
鎹70Bは、一対の足部72,74と、一対の足部72,74同士を連結する水平部76と、を有する。鎹70Bの足部72,74は、鎹70の足部72,74よりも長い。鎹70Bの水平部76は、鎹70の水平部76よりも高い位置に配置されている。鎹70Bは、鎹70よりも高い位置まで立設されている。
【0050】
鉄筋130は、鎹70Bの上に載置され、X軸方向に延設されている。鉄筋160は、鉄筋130の上に載置され、Y軸方向に延設されている。鎹70Bは、スペーサとして機能し、鉄筋130及び鉄筋160を支持する。なお、Y軸方向に延設された鉄筋160が鎹70Bの上に載置され、X軸方向に延設された鉄筋130が鉄筋160の上に配置されていてもよい。
【0051】
このような第2実施形態に係る合成スラブ構造100Bにおいても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0052】
合成スラブ構造100Bによれば、高さが異なる鎹70及び鎹70Bを有し、鎹70の上に下端筋である鉄筋120を配筋し、鎹70Bの上に上端筋である鉄筋130を配筋することにより、RCスラブ50の強度の向上を図ることができる。また、本態様によれば、高さが異なる鎹70及び鎹70Bを有することにより、鎹70のみを有する構成と比較して、伝達されるせん断力の増大を図ることができ、一層強固にCLTパネル30とRCスラブ50とを一体化できる。
【0053】
なお、第2実施形態の合成スラブ構造100Bでは、足部72,74の長さが異なる鎹70,70Bを用いて、上下2段の鉄筋を配筋しているが、例えば、鎹70Bの打ち込み深さを変えることで、上下2段の鉄筋を配筋してもよい。このように、CLTパネル30より張り出す足部72,74の長さを変えることで、水平部76の高さ位置を変えることができる。そのため、複数種類の鎹70,70Bを準備する必要がなく、施工負担の増大を抑制できる。
【0054】
[第3実施形態に係る合成スラブ構造の施工方法]
次に、第3実施形態に係る合成スラブ構造100の施工方法について説明する。
図5は、第3実施形態に係る合成スラブ構造の施工方法の手順を示す工程図である。ここでは、上記の第1実施形態に係る合成スラブ構造100を施工する場合について説明する。なお、第3実施形態の説明において、上記の第1実施形態と同様の説明は省略する。
【0055】
図5に示されるように、第3実施形態に係る合成スラブ構造100の施工方法は、CLTパネル30に鎹70を打ち込む工程(工程S11)と、鎹70の上に鉄筋120,150を載置して配筋する工程(工程S12)と、CLTパネル30の上にコンクリート40を打設する工程(工程S13)と、を含む。
【0056】
合成スラブ構造100の施工方法では、はじめに、CLTパネル30の上面に鎹70を打ち込む(工程S11)。工程S11は、例えば、CLTパネル30が梁10の上に載置される前に行ってもよく、CLTパネル30が梁10の上に載置された後に行ってもよい。
【0057】
次に、鎹70の上に鉄筋120,150を載置して配筋する(工程S12)。工程S12では、例えば、鎹70の上に鉄筋120を載置し、鉄筋120の上に鉄筋150を載置して配筋する。工程S12では、鉄筋150を鎹70の上に載置し、鉄筋150の上に鉄筋120を載置してもよい。
【0058】
次に、CLTパネル30の上に、コンクリート40を打設する(工程S13)。コンクリート40を打設した後、適宜、コンクリート養生を行い、コンクリートの強度を発現させる。
【0059】
このような第3実施形態に係る合成スラブ構造の施工方法によれば、複数の鎹70がCLTパネル30の上面に打ち込まれ、鎹70がCLTパネル30より上方に突出し、RCスラブ50に埋め込まれることにより、CLTパネル30とRCスラブ50とを一体化できる。鎹70のうち、CLTパネル30の上方に張り出す部分が抵抗となり、CLTパネル30とRCスラブ50とを高強度に一体化できる。鎹70をCLTパネル30に打ち込むだけでよく、従前のようにラグスクリューボルトを施工する場合と比較して、施工負担を軽減することができる。
【0060】
[第4実施形態に係る合成スラブ構造]
次に、
図6及び
図7を参照して、第4実施形態に係る合成スラブ構造100Cについて説明する。
図6は、第4実施形態に係る合成スラブ構造の一例を示す平面図である。
図7は、第4実施形態に係る合成スラブ構造の一例を示す断面図である。第4実施形態に係る合成スラブ構造100Cが第1実施形態に係る合成スラブ構造100と違う点は、鎹70Cの配置が異なる点、及び、鉄筋150が鎹70Cの上に載置され、鉄筋120が鉄筋150の上に載置されている点である。なお、第4実施形態の説明において、上記の実施形態と同様の説明は省略する場合がある。
【0061】
鎹70Cは、鎹70と同様に、足部72,74、及び水平部76を有する。水平部76は、平面視において、鉄筋150と交差するように配置されている。水平部76は、平面視において、鉄筋150に対して直交していてもよく、その他の角度で交差するように配置されていてもよい。水平部76は、平面視において、鉄筋120と平行に配置されていてもよい。鎹70Cは、Y軸方向において、複数の鉄筋120間の中間に配置されている。鎹70Cは、Y軸方向において、複数の鉄筋120間の中央の位置から外れた位置に配置されていてもよい。
【0062】
鉄筋150は、鎹70Cの上に載置され、鉄筋120は、鉄筋150の上に載置されている。合成スラブ構造100Cでは、鉄筋150を配筋した後に、鉄筋120を配筋する。
【0063】
このような第4実施形態に係る合成スラブ構造100Cにおいても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。合成スラブ構造100Cにおいて、鎹70Cは、鉄筋120と鉄筋150との交点に配置されていなくてもよい。鎹70Cは、鉄筋120に対して交差しないように配置していなくてもよい。
【0064】
[第5実施形態に係る合成スラブ構造]
次に、
図8及び
図9を参照して、第5実施形態に係る合成スラブ構造100Dについて説明する。
図8は、第5実施形態に係る合成スラブ構造の一例を示す平面図である。
図9は、第9実施形態に係る合成スラブ構造の一例を示す断面図である。第5実施形態に係る合成スラブ構造100Dが第2実施形態に係る合成スラブ構造100Bと違う点は、鎹70D,70Eの配置が異なる点、及び、鉄筋150が鎹70Dの上に載置され、鉄筋120が鉄筋150の上に載置されている点である。なお、第5実施形態の説明において、上記の実施形態と同様の説明は省略する場合がある。
【0065】
鎹70D,70Eは、鎹70,70Bと同様に、足部72,74、及び水平部76を有する。鎹70Dは、下段の鉄筋120,150を支持するスペーサとして機能する。鎹70Eは、上段の鉄筋130,160を支持するスペーサとして機能する。鎹70Dの水平部76は、平面視において、鉄筋150と交差するように配置されている。鎹70Dは、Y軸方向に離間する鉄筋120間において、一方の鉄筋120に近い位置に配置されている。
【0066】
鉄筋150は、鎹70Dの上に載置され、鉄筋120は、鉄筋150の上に載置されている。合成スラブ構造100Dでは、鉄筋150を配筋した後に、鉄筋120を配筋する。鉄筋150は、平面視において、鎹70Dの水平部76の中央から外れた位置に配置されていてもよい。
【0067】
鎹70Eの水平部76は、鎹70Dの水平部76よりも高い位置に配置されている。平面視において、鎹70Eの水平部76は、鎹70Dの水平部76と異なる角度で配置されている。鎹70Eの水平部76は、鎹70の水平部76に対して、例えば90度異なる方向に延在する。鎹70Dの水平部76は、X軸方向に延在し、鎹70Eの水平部76は、Y軸方向に延在する。鎹70Eは、X軸方向及びY軸方向において、複数の鎹70D間に配置されている。なお、鎹70Eは、平面視において、鎹70Dに重なる位置に配置されていてもよい。
【0068】
鎹70Eは、平面視において、鉄筋130と交差するように配置されている。鎹70Eは、X軸方向に離間する鉄筋160間において、一方の鉄筋160に近い位置に配置されている。
【0069】
鉄筋130は、鎹70Eの上に載置され、鉄筋160は、鉄筋130の上に載置されている。合成スラブ構造100Dでは、鉄筋130を配筋した後に、鉄筋160を配筋する。鉄筋130は、平面視において、鎹70Eの水平部76の中央から外れた位置に配置されていてもよい。
【0070】
このような第5実施形態に係る合成スラブ構造100Dにおいても、上記の第2実施形態と同様の作用効果を奏する。合成スラブ構造100Dのような2段配筋の場合、鎹70D,70Eの水平部76が延在する方向を交互に90度回転させることにより、容易に配筋することができる。鎹70D,70Eの角度が異なることにより、伝達されるせん断力の向きを変えることができる。合成スラブ構造100Dでは、一層強固にCLTパネル30とRCスラブ50とを一体化できる。
【0071】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0072】
上記の実施形態では、鎹70をスペーサとして利用し、鎹70の上の鉄筋120,150を配筋する場合について例示しているが、合成スラブ構造100は、スペーサとして利用されない鎹70を備える構成でもよい。
【0073】
また、上記の実施形態において、CLTパネル30に対して、ラグスクリューボルトや木ねじ状のビス等が設けられていてもよい。必要に応じて、鎹70とは別に、ラグスクリューボルトやビス等を設けることにより、CLTパネル30とRCスラブ50との間で伝達されるせん断力の増大を図ることができる。
【0074】
また、上記の実施形態では、1段配筋及び2段配筋の場合について例示しているが、RCスラブ50は、3段以上の多段配筋の鉄筋を含むものでもよい。
【符号の説明】
【0075】
100,100B,100C,100D:合成スラブ構造
8:スタッド
10:梁
11:ウェブ
12:上フランジ
12a:上面
30:CLTパネル(木質面材)
32,34,36:層
40:コンクリート
50:RCスラブ(鉄筋コンクリートスラブ)
70:鎹(第1鎹)
70B:鎹(第2鎹)
70C:鎹
70D:鎹(第1鎹)
70E:鎹(第2鎹)
72,74:足部
76:水平部
120:鉄筋(第1鉄筋、下端筋)
130:鉄筋(第2鉄筋)
150:鉄筋(第1鉄筋、上端筋)
160:鉄筋(第2鉄筋)
X:X軸方向(木質面材の長手方向)
Y:Y軸方向(梁の長手方向)
Z:Z軸方向(鉛直方向)