(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154922
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064568
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 大生
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA23
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA26
2H033BB03
2H033BB04
2H033BB13
2H033BB37
2H033BB38
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】被規制部に対して耐熱性を持たせることができる上、被規制部及び/又は規制部の摩耗を抑制することができる定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着ベルト31の内周面311には耐熱性部材42aが設けられ、耐熱性部材42a上にさらに摺動性部材42bが設けられ、規制部43は段差部43aで構成され、被規制部42は耐熱性部材42a及び摺動性部材42bで構成され、摺動性部材42bの側面42b1の少なくとも一部が段差部43aに対向する。或いは、段差部44には摺動性部材43bが設けられ、定着ベルト31の内周面311には耐熱性部材42aが設けられ、規制部43は摺動性部材43bで構成され、被規制部42は耐熱性部材42aで構成され、耐熱性部材42aの側面42a1が摺動性部材43bの側面43b1に対向する。
【選択図】
図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着装置本体に固定された保持部材と、前記保持部材の外周面上に回転軸線回りに回転可能に設けられる定着ベルトと、を備えた定着装置であって、
前記保持部材の前記外周面には、前記定着ベルトに対向して規制部が設けられ、前記定着ベルトの内周面には、前記保持部材に対向して被規制部が設けられ、前記被規制部が前記規制部と当接することにより前記定着ベルトの回転軸線方向における移動を規制し、
前記保持部材の前記外周面には、前記定着ベルトの周方向に沿った段差部が設けられており、
前記定着ベルトの前記内周面には、耐熱性部材が設けられ、前記耐熱性部材上にさらに摺動性部材が設けられており、
前記規制部は、前記段差部で構成されており、
前記被規制部は、前記耐熱性部材及び前記摺動性部材で構成されており、
前記摺動性部材の側面の少なくとも一部が前記段差部に対向する、ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置であって、
前記摺動性部材の前記回転軸線方向における幅は、前記耐熱性部材の前記回転軸線方向における幅よりも大きく、前記摺動性部材の前記回転軸線方向における両端が前記耐熱性部材の前記回転軸線方向における両端よりも突き出ている、ことを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の定着装置であって、
前記摺動性部材の前記定着ベルトとは反対側の頂面と、前記保持部材において前記段差部に隣接して前記摺動性部材と対向する底面との間の距離は、前記定着ベルトの前記内周面と、前記保持部材の前記外周面との間の距離よりも小さい、ことを特徴とする定着装置。
【請求項4】
定着装置本体に固定された保持部材と、前記保持部材の外周面上に回転軸線回りに回転可能に設けられる定着ベルトと、を備えた定着装置であって、
前記保持部材の前記外周面には、前記定着ベルトに対向して規制部が設けられ、前記定着ベルトの内周面には、前記保持部材に対向して被規制部が設けられ、前記被規制部が前記規制部と当接することにより前記定着ベルトの回転軸線方向における移動を規制し、
前記保持部材の前記外周面には、前記定着ベルトの周方向に沿った段差部が設けられており、
前記段差部には、摺動性部材が設けられており、
前記定着ベルトの前記内周面には、耐熱性部材が設けられており、
前記規制部は、前記摺動性部材で構成されており、
前記被規制部は、前記耐熱性部材で構成されており、
前記耐熱性部材の側面が前記摺動性部材の側面に対向する、ことを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項4に記載の定着装置であって、
前記段差部、及び、前記保持部材において前記段差部に隣接して前記耐熱性部材と対向する底面の双方には、前記摺動性部材が設けられており、
前記耐熱性部材の前記定着ベルトとは反対側の頂面と、前記保持部材における前記底面に設けられた前記摺動性部材との間の距離は、前記定着ベルトの前記内周面と、前記保持部材の前記外周面、及び、前記段差部に設けられた前記摺動性部材の前記定着ベルトと対向する頂面との間の距離よりも小さい、ことを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の定着装置であって、
前記摺動性部材は、前記保持部材の前記外周面から前記定着ベルト側に突出し、前記耐熱性部材の前記定着ベルトとは反対側の頂面と、前記保持部材において前記段差部に隣接して前記耐熱性部材と対向する底面に設けられた前記摺動性部材との間の距離は、前記定着ベルトの前記内周面と、前記摺動性部材の前記定着ベルトと対向する頂面との間の距離よりも大きいことを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1、請求項2、請求項4又は請求項5に記載の定着装置であって、
前記保持部材の前記外周面には、前記周方向に延びる凹部が設けられており、
前記段差部は、前記凹部の前記回転軸線方向における両側の側面の2箇所で構成されている、ことを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項1、請求項2、請求項4又は請求項5に記載の定着装置であって、
前記被規制部の前記回転軸線方向における幅は、前記被規制部の前記規制部への前記回転軸線方向における挿通幅よりも小さい、ことを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項1、請求項2、請求項4又は請求項5に記載の定着装置であって、
前記被規制部は、前記定着ベルトの前記内周面に全周に亘って形成されている、ことを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項1、請求項2、請求項4又は請求項5に記載の定着装置であって、
前記保持部材は、前記外周面において前記定着ベルトの前記内周面を保持する保持部を有し、
前記保持部は、円弧形状の円弧形状部とされており、
前記規制部は、前記保持部の前記外周面に全面的に形成されている、ことを特徴とする定着装置。
【請求項11】
請求項1、請求項2、請求項4又は請求項5に記載の定着装置であって、
前記保持部材は、前記外周面において前記定着ベルトの前記内周面を保持する保持部を有し、
前記保持部は、円筒形状の円筒形状部とされており、
前記規制部は、前記保持部の前記外周面に全周に亘って形成されている、ことを特徴とする定着装置。
【請求項12】
請求項1、請求項2、請求項4又は請求項5に記載の定着装置を備えている、ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び複写機、複合機、プリンター、ファクシミリ装置等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
未定着トナー像を記録用紙等のシートに定着させる定着装置として、定着装置本体に固定された保持部材と、保持部材の外周面上に回転軸線回りに回転可能に設けられる定着ベルトと、を備えたものがある。
【0003】
このような定着装置においては、各種の要因により、定着ベルトの回転軸線方向における移動(片寄り)が発生する。そうすると、定着ベルトの端部及び/又は保持部材の定着ベルトに対向する壁面が損傷したり破損したりすることがある。
【0004】
このような不都合を解消するために、従来では、保持部材の外周面には、定着ベルトに対向して規制部が設けられ、定着ベルトの内周面には、保持部材に対向して被規制部が設けられ、被規制部が規制部と当接することにより定着ベルトの回転軸線方向における移動を規制する定着装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
詳しくは、特許文献1には、被規制部として、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの耐熱性に優れた材料からなる蛇行防止部材を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の定着装置に用いられる被規制部に対して耐熱性を持たせることができるものの、摺動性(耐摩耗性)については考慮されておらず、被規制部が規制部に当接すると、被規制部及び/又は規制部が摩耗し易い。
【0008】
そこで、被規制部に対して耐熱性を持たせることができる上、被規制部及び/又は規制部の摩耗を抑制することができる定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために、次の第1態様及び第2態様の定着装置並びに画像形成装置を提供する。
【0010】
(1)第1態様の定着装置
本発明に係る第1態様の定着装置は、定着装置本体に固定された保持部材と、前記保持部材の外周面上に回転軸線回りに回転可能に設けられる定着ベルトと、を備えた定着装置であって、前記保持部材の前記外周面には、前記定着ベルトに対向して規制部が設けられ、前記定着ベルトの内周面には、前記保持部材に対向して被規制部が設けられ、前記被規制部が前記規制部と当接することにより前記定着ベルトの回転軸線方向における移動を規制し、前記保持部材の前記外周面には、前記定着ベルトの周方向に沿った段差部が設けられており、前記定着ベルトの前記内周面には、耐熱性部材が設けられ、前記耐熱性部材上にさらに摺動性部材が設けられており、前記規制部は、前記段差部で構成されており、前記被規制部は、前記耐熱性部材及び前記摺動性部材で構成されており、前記摺動性部材の側面の少なくとも一部が前記段差部に対向する、ことを特徴とする。
【0011】
(2)第2態様の定着装置
本発明に係る第2態様の定着装置は、定着装置本体に固定された保持部材と、前記保持部材の外周面上に回転軸線回りに回転可能に設けられる定着ベルトと、を備えた定着装置であって、前記保持部材の前記外周面には、前記定着ベルトに対向して規制部が設けられ、前記定着ベルトの内周面には、前記保持部材に対向して被規制部が設けられ、前記被規制部が前記規制部と当接することにより前記定着ベルトの回転軸線方向における移動を規制し、前記保持部材の前記外周面には、前記定着ベルトの周方向に沿った段差部が設けられており、前記段差部には、摺動性部材が設けられており、前記定着ベルトの前記内周面には、耐熱性部材が設けられており、前記規制部は、前記摺動性部材で構成されており、前記被規制部は、前記耐熱性部材で構成されており、前記耐熱性部材の側面が前記摺動性部材の側面に対向する、ことを特徴とする。
【0012】
(3)画像形成装置
本発明に係る画像形成装置は、前記本発明に係る定着装置を備えている、ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、被規制部に対して耐熱性を持たせることができる上、被規制部及び/又は規制部の摩耗を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【
図2A】
図1に示す画像形成装置における定着装置の斜視図である。
【
図3A】
図1から
図2Bに示す定着装置の定着ベルトの回転軸線方向における一方側の端部部分を正面側から視た斜視図である。
【
図3B】
図1から
図2Bに示す定着装置の定着ベルトの回転軸線方向における他方側の端部部分を背面側から視た斜視図である。
【
図4】定着ベルトが一方の保持部材及び他方の保持部材に支持されている様子を正面側から視た斜視図である。
【
図5A】定着装置における一方の保持部材の一例を正面側から視た斜視図である。
【
図5B】定着装置における他方の保持部材の一例を正面側から視た斜視図である。
【
図6A】定着装置における被規制部及び規制部を模式的に示す断面図である。
【
図6B】定着装置における被規制部及び規制部を模式的に示す斜視断面図である。
【
図7A】第2実施形態-1に係る定着装置における被規制部及び規制部を模式的に示す断面図である。
【
図7B】第2実施形態-1に係る定着装置における被規制部及び規制部を模式的に示す斜視断面図である。
【
図8A】第2実施形態-2に係る定着装置における被規制部及び規制部を模式的に示す断面図である。
【
図8B】第2実施形態-2に係る定着装置における被規制部及び規制部を模式的に示す斜視断面図である。
【
図9A】第3実施形態に係る定着装置における一方の保持部材を正面側から視た斜視図である。
【
図9B】第3実施形態に係る定着装置における他方の保持部材を正面側から視た斜視図である。
【
図10A】第1実施形態に対応する第3実施形態に係る定着装置における被規制部及び規制部を模式的に示す斜視断面図である。
【
図10B】第2実施形態-1に対応する第3実施形態に係る定着装置における被規制部及び規制部を模式的に示す斜視断面図である。
【
図10C】第2実施形態-2に対応する第3実施形態に係る定着装置における被規制部及び規制部を模式的に示す斜視断面図である。
【
図11A】一方の保持部材の他の例を正面側の右方から視た斜視図である。
【
図11B】他方の保持部材の他の例を正面側の右方から視た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。従って、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0016】
[画像形成装置]
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置100の概略構成を示す断面図である。
【0017】
図1に示すように、画像形成装置100は、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能及びプリンター機能を有する複合機であり、画像読取装置102によって読み取られた原稿Gの画像を外部に送信する。また、画像形成装置100は、画像読取装置102にて読み取った原稿Gの画像又は外部から受信した画像をカラー若しくは単色で記録媒体である用紙等のシートPに画像を形成する。画像形成装置100は、モノクロ画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置100は、他の形態のカラー画像形成装置であってもよい。
【0018】
画像読取部130の上側には、画像読取部130に対して開閉自在に支持された原稿送り装置160(自動原稿搬送装置)が設けられている。画像読取装置102は、原稿送り装置160にて搬送された原稿Gを読み取る。原稿送り装置160は、原稿Gを載置する原稿載置トレイ161と、排出された原稿Gを積載する原稿排出トレイ162と、を備えている。原稿送り装置160は、原稿載置トレイ161に載置された1枚又は複数枚の原稿Gを画像読取部130における原稿読取部130b上に1枚ずつ順に搬送し、原稿排出トレイ162に排出する。また、画像読取部130には、原稿Gを載置する原稿載置台130aが設けられている。画像読取装置102は、原稿載置台130a上に載置された原稿Gを読み取る。画像形成装置100は、原稿送り装置160が開かれると、画像読取部130の上方の原稿載置台130aが開放され、原稿Gを手置きで置くことができるようになっている。画像読取部130は、走査光学系130cを原稿読取部130bの下方の読取位置に位置させた状態で原稿送り装置160にて搬送される原稿Gを読み取るか又は走査光学系130cを走査して原稿載置台130aに載置された原稿Gを読み取って画像データを生成する。
【0019】
画像形成装置本体101は、光走査装置1、現像装置2、感光体ドラム3、ドラムクリーニング装置4、帯電器5、中間転写ベルト装置70、2次転写装置11、定着装置12、シート搬送路S、給紙カセット18、シート排出トレイ141を備えている。
【0020】
画像形成装置100では、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像、又は、単色(例えば、ブラック)を用いたモノクロ画像に応じた画像データが扱われる。画像形成装置100の画像形成部50には、4種類のトナー像を形成するための現像装置2、感光体ドラム3、ドラムクリーニング装置4及び
帯電器5が4つずつ設けられ、それぞれがブラック、シアン、マゼンタ及びイエローに対応付けられ、4つの画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdが構成されている。
【0021】
帯電器5は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させる。光走査装置1は、感光体ドラム3の表面を露光して静電潜像を形成する。現像装置2は、感光体ドラム3の表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム3の表面にトナー像を形成する。ドラムクリーニング装置4は、感光体ドラム3の表面の残留トナーを除去及び回収する。上述した一連の動作によって、各感光体ドラム3の表面に各色のトナー像が形成される。
【0022】
中間転写ベルト装置70は、中間転写ローラ6、無端状の中間転写ベルト71、中間転写駆動ローラ72、中間転写従動ローラ73及びクリーニング装置9を備えている。中間転写ローラ6は、各色に応じた4種類のトナー像を形成するようにそれぞれ4つずつ中間転写ベルト71の内側に設けられている。中間転写ローラ6は、感光体ドラム3の表面に形成された各色のトナー像を周回移動方向Cへ周回移動する中間転写ベルト71に転写する。
【0023】
中間転写ベルト71は、中間転写駆動ローラ72及び中間転写従動ローラ73に張架されている。画像形成装置100では、各感光体ドラム3の表面に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト71の表面に順次転写して重ね合わせて、中間転写ベルト71の表面にカラーのトナー像を形成する。
【0024】
2次転写装置11は、2次転写ローラ11aと中間転写ベルト71との間に転写ニップ部TNを形成しており、シート搬送路Sを通じて搬送されてきたシートPを転写ニップ部TNに挟み込んで搬送する。シートPは、転写ニップ部TNを通過する際に、中間転写ベルト71の表面のトナー像が2次転写装置11にて転写されて定着装置12に搬送される。クリーニング装置9は、シートPに転写されずに中間転写ベルト71の表面に残った廃トナーを除去及び回収する。
【0025】
定着装置12は、シートPを挟んで回転する定着ベルト31及び加圧ローラ32を備えている。定着装置12は、定着ベルト31及び加圧ローラ32の間にトナー像が転写されたシートPを挟み込んで加熱及び加圧し、トナー像をシートPに定着させる。なお、
図1においては図示を省略しているが、定着装置12は、定着ベルト31及び加圧ローラ32以外の構成部材を有している。定着装置12の詳細については、後述する。
【0026】
給紙カセット18は、画像形成に使用するシートPを蓄積しておくためのカセットであり、光走査装置1の下側に設けられている。シートPは、ピックアップローラ16によって給紙カセット18から引き出されて、シート搬送路Sに搬送される。シート搬送路Sに搬送されたシートPは、2次転写装置11や定着装置12を経由し、排出ローラ17に搬送され、排出部140におけるシート排出トレイ141に排出される。シート搬送路Sには、搬送ローラ13、レジストローラ14及び排出ローラ17が配置されている。搬送ローラ13は、シートPの搬送を促す。レジストローラ14は、シートPを一旦停止させて、シートPの先端を揃える。レジストローラ14は、一旦停止したシートPを中間転写ベルト71上のトナー像のタイミングに合わせて搬送する。
【0027】
なお、
図1では、給紙カセット18が1つとされているがこれに限定されず、複数の給紙カセット18を設けた構成とし、それぞれに異なる種類のシートPを積載してもよい。
【0028】
また、画像形成装置100は、シートPの表面だけでなく、裏面に画像形成を行う場合は、シートPを排出ローラ17からシート反転経路Srに逆方向に搬送する。画像形成装置100は、逆方向に搬送されたシートPの表裏を反転し、レジストローラ14に再度導く。また、画像形成装置100は、レジストローラ14に導かれたシートPを表面と同様にして裏面に画像形成し、シート排出トレイ141に搬出する。
【0029】
[定着装置]
図2Aは、
図1に示す画像形成装置100における定着装置12の斜視図である。
図2Bは、
図2Aに示すA-A線に沿った断面図である。
【0030】
定着装置12は、定着ベルト31の内側に設けられた支持部材33、定着パッド34、摺動シート35、熱源36、反射板37、温度検知部38(この例ではサーモパイル)、剥離板39及びサーモスタット40をさらに備えている。
【0031】
定着ベルト31は、無端状のフレキシブルなベルトであり、ベルト状に形成されている。定着ベルト31は、シートPの搬送方向Hに直交する直交方向に沿った回転軸線α回りに回転可能に設けられている。
【0032】
定着ベルト31としては、所定厚み(例えば30μm~100μm程度)のニッケル等の金属、又は、ポリイミド(PI)の基体上に所定厚み(例えば100μm~300μm程度)の弾性層(例えばシリコーンゴム層)を形成し、さらにその上に厚み(例えば20μm~30μm程度)の離型層(例えばフッ素樹脂層)を形成したもの、具体的には、シリコーンゴム上層にPFAのチューブを設けたものや、フッ素樹脂を塗布したものを例示できる。この例では、定着ベルト31は、厚み40μmのニッケルからなる基体にシリコーンゴムを設け、さらにシリコーンゴム上層にPFAのチューブを設けたものであり、全体の厚みが300μmのものとされている。定着ベルト31の内径は、それには限定されないが、この例では、30mmとされている。
【0033】
定着パッド34は、例えば、樹脂により構成されており、定着ベルト31の回転軸線αの方向(回転軸線方向W)に沿って延びる長板状に形成され、定着パッド34の定着ベルト31との間には摺動シート35が設けられている。
【0034】
支持部材33は、定着ベルト31の内周面に摺動シート35を押し当てながら定着パッド34を支持する部材である。支持部材33の回転軸線方向Wにおける両端部は定着フレーム(図示せず)に固定されている。支持部材33の熱源36側の面には、反射板37が設けられている。
【0035】
熱源36は、定着ベルト31を加熱するための部材であって、定着ベルト31の回転軸線方向Wに沿って延びている。熱源36は、例えば、ハロゲンランプ等のランプヒータとすることができる。定着ベルト31は、熱源36により、所定の定着温度(例えば160℃~250℃、この例では160℃)に加熱される。従って、定着ベルト31だけでなく、摺動シート35等も上記温度に対して耐熱性を有している。
【0036】
加圧ローラ32は、定着ベルト31を挟んで定着パッド34と対向する位置に配置される。加圧ローラ32は、定着ベルト31の回転軸線αに平行な回転軸線を中心に回転し、定着ベルト31と平行に延びている。加圧ローラ32は、定着パッド34(摺動シート35)に向けて定着ベルト31を押圧することで、定着ベルト31との間に定着ニップ部FNを形成する。加圧ローラ32は、具体的には、アルミニウム等の金属によって形成される円筒状の芯材の表面をゴム等の弾性材によって覆われたローラ部材で構成することができる。
【0037】
加圧ローラ32には、モータ等の駆動源(図示せず)からの駆動力が、ギア等(図示せず)を介して伝達される。加圧ローラ32は、駆動源からの駆動力を受けて回転駆動される。定着ベルト31は、加圧ローラ32の回転駆動に伴い、加圧ローラ32の第2回転方向R2とは逆方向の第1回転方向R1に従動回転する。つまり、加圧ローラ32は、定着ベルト31の外周面と当接することにより定着ニップ部FNを形成し、定着ニップ部FNを介して定着ベルト31に駆動力を伝達することにより、定着ベルト31を従動回転させる。
【0038】
温度検知部38は、定着ベルト31の表面温度を検知する。定着装置12では、温度検知部38にて検出した温度により、定着ベルト31が定着温度(この例では160℃)になるように熱源36の温度制御が行われる。
【0039】
剥離板39は、シートPの搬送方向Hにおける定着ニップ部FNの下流側に配置され、定着ベルト31に対するシートPの巻き付きを防止する。
【0040】
サーモスタット40は、熱源36が異常加熱したときに熱源36への電力供給を遮断する。詳しくは、サーモスタット40は、熱源36に電力を供給する電力線(図示せず)に電気的に接続されており、熱源36への電力供給を直接遮断するようになっている。
【0041】
温度検知部38は、画像形成装置本体101(本体フレーム)(
図1参照)に固定されている。温度検知部38は、定着ベルト31の表面温度を非接触で検知する。サーモスタット40は、定着装置本体12a(本体フレーム)に固定されている。サーモスタット40は、所定の反応温度(作動温度、定格温度)になると、作動して熱源36への電力供給を遮断する。
【0042】
図3A及び
図3Bは、それぞれ、
図1から
図2Bに示す定着装置12の定着ベルト31の回転軸線方向Wにおける一方側W1及び他方側W2の端部部分を正面側及び背面側から視た斜視図である。
図4は、定着ベルト31が一方の保持部材41a(41)及び他方の保持部材41b(41)に支持されている様子を正面側から視た斜視図である。
図5A及び
図5Bは、それぞれ、定着装置12における一方の保持部材41a(41)の一例及び他方の保持部材41b(41)の一例を正面側から視た斜視図である。また、
図6Aは、定着装置12における被規制部42及び規制部43を模式的に示す断面図である。
図6Bは、定着装置12における被規制部42及び規制部43を模式的に示す斜視断面図である。
【0043】
図3Aから
図5Bに示すように、定着装置12は、保持部材41と、保持部材41の外周面411上に回転軸線α(
図2B参照)回りに回転可能に設けられる定着ベルト31(
図3A、
図3B参照)と、を備えている。保持部材41は、定着装置本体12a(本体フレーム)(
図2B参照)に固定されている。
【0044】
この例では、保持部材41は、一対の保持部材41a,41bとされており、定着ベルト31の内周面311の回転軸線方向Wにおける両端部を保持している。一対の保持部材41a,41bのうち、一方の保持部材41aは定着ベルト31の内周面311の回転軸線方向Wにおける一方側W1(前側、操作側)の両端部を保持し、他方の保持部材41bは定着ベルト31の内周面311の回転軸線方向Wにおける他方側W2(後側)の両端部を保持している。
【0045】
図5A及び
図5Bに示すように、一方の保持部材41a及び他方の保持部材41bは、それぞれ、保持部41a1,41b1と、保持部41a1,41b1に連接された突出部41a2,41b2と、を有している。保持部41a1,41b1は、外周面411において定着ベルト31の内周面311を保持する。保持部41a1,41b1は、周方向Rの一部を切り欠いた円弧形状の円弧形状部とされている。保持部41a1,41b1の形状としては、180度以上の円弧形状、より好ましくは270度以上の円弧形状を例示でき、この例では、270度程度の円弧形状とされている。突出部41a2,41b2は、保持部41a1,41b1の回転軸線方向Wにおける外側の端部から回転軸線方向Wの外側に延設し、かつ、保持部41a1,41b1の外周面411に対して径方向の外方に突出している。突出部41a2,41b2は、定着ベルト31の端面31a(
図6B参照)に対向する壁面41a3,41b3を有している。
【0046】
保持部材41(41a,41b)の材料としては、耐熱性樹脂材料〔例えば、液晶ポリマー(LCP)を用いることができる。
【0047】
一対の保持部材41a,41bのうち少なくとも一方(何れか一方又は双方)(この例では一方の保持部材41a)の外周面411には、定着ベルト31の周方向Rに沿った段差部43a〔この例では、周方向Rに延びる凹部の側面43a1,43a1)〕(
図5A、
図6A参照)が設けられている。
図6A及び
図6Bに示すように、定着ベルト31の内周面311には、一対の保持部材41a,41bのうち少なくとも一方(何れか一方又は双方)(この例では一方の保持部材41a)に対向して被規制部42が設けられている。
【0048】
定着装置12は、被規制部42(この例では摺動性部材42b)が規制部43と当接することにより定着ベルト31の回転軸線方向Wにおける移動を規制する。
【0049】
(第1実施形態)
図6A及び
図6Bに示すように、定着ベルト31の内周面311には、耐熱性部材42aが設けられ、耐熱性部材42a上にさらに摺動性部材42bが設けられている。規制部43は、段差部43aで構成されている。被規制部42は、耐熱性部材42a及び摺動性部材42bで構成されている。摺動性部材42bの側面42b1,42b1の少なくとも一部(全部又は一部)が段差部43a(側面43a1,43a1)に対向する。この例では、定着ベルト31と耐熱性部材42aとが耐熱性の接着部材(接着剤)で、及び、耐熱性部材42aと摺動性部材42bとが耐熱性の接着部材(接着剤)で互いに接着されている。
【0050】
第1実施形態に係る定着装置12によれば、定着ベルト31が回転軸線α回りに回転するときに回転軸線方向Wに移動しても、定着ベルト31の内周面311に設けられた被規制部42が保持部材41の外周面411に設けられた規制部43と当接することにより、定着ベルト31の回転軸線方向Wにおける移動を規制する。被規制部42を構成する耐熱性部材42aが定着ベルト31の内周面311に設けられている。従って、被規制部42に対して耐熱性を持たせることができる。また、耐熱性部材42a上に設けられて被規制部42を構成する摺動性部材42bの側面42b1,42b1の少なくとも一部が、規制部43を構成する段差部43a(側面43a1,43a1)に対向する。従って、定着ベルト31が回転軸線α回りに回転するときに、摺動性部材42b(被規制部42)の側面42b1,42b1の少なくとも一部が段差部43a(規制部43)の側面43a1,43a1に当接しても、摺動性部材42bの摺動性(耐摩耗性)により、摺動性部材42b(被規制部42)及び/又は段差部43a(規制部43)の摩耗を抑制することができる。
【0051】
ここで、耐熱性部材としては、例えば、ガラス転移温度が80度以上の耐熱性樹脂部材を用いることができ、それには限定されないが、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Poly Phenylene Sulfide)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:Poly Ether Ether Ketone)、液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)などの耐熱性樹脂部材を例示できる。また、摺動性部材としては、例えば、摩擦係数(動摩擦係数)が0.1以下の摺動性樹脂部材を用いることができ、それには限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:PolyTetraFluoroEthylene)といったフッ素樹脂などの摺動性樹脂部材を例示できる。これらのことは、後述する第2実施形態及び第3実施形態についても同様である。
【0052】
ところで、耐熱性部材42aの摺動性は摺動性部材42bの摺動性よりも小さい。このため、定着ベルト31が回転軸線α回りに回転するときに、耐熱性部材42aが保持部材41に接触すると、耐熱性部材42a及び/又は保持部材41が摩擦により損傷し易い。このため、耐熱性部材42aが保持部材41に接触しないようにすることが好ましい。
【0053】
この点、本実施の形態において、摺動性部材42bの回転軸線方向Wにおける幅d1(
図6A参照)(この例では5.00mm)は、耐熱性部材42aの回転軸線方向Wにおける幅d2(
図6A参照)(例えば4.00mm以上5.00mm未満、この例では4.00mm)よりも大きい。摺動性部材42bの回転軸線方向Wにおける両端が耐熱性部材42aの回転軸線方向Wにおける両端よりも突き出ている。詳しくは、摺動性部材42bの耐熱性部材42aからの両側の突出量d3,d3(
図6A参照)は、所定の突出量(この例では0.50mm、0.50mm)とされている。また、摺動性部材42bの側面42b1,42b1と段差部43a(側面43a1,43a1)との間の両側の隙間d4,d4(
図6A参照)(この例では0.50mm、0.50mm)は、定着ベルト31の両側の端面31a,31aと、一対の保持部材41a,41bの壁面41a3,41b3との間の両側の隙間d5,d5(
図6B参照、
図6Bでは片側のみ示している)よりも小さい。すなわち、両側の隙間d4,d4及び両側の隙間d5,d5は、摺動性部材42bの側面42b1,42b1が段差部43a(側面43a1,43a1)に当接しても定着ベルト31の端面31a,31aが一対の保持部材41a,41bの壁面41a3,41b3に接触しない寸法とされている。図示例では、定着ベルト31が回転軸線方向Wにおける所定の位置(中央)に位置し、このとき、両側の隙間d4,d4が等しく、かつ、両側の隙間d5,d5が等しい。
【0054】
こうすることで、定着ベルト31が回転軸線α回りに回転するときに回転軸線方向Wに移動しても、摺動性部材42bを保持部材41に接触させることができ、従って、耐熱性部材42aの保持部材41への接触を効果的に防止することができる。これにより、耐熱性部材42a及び/又は保持部材41の摩擦による損傷を抑制することができる。
【0055】
ところで、定着ベルト31は高温となるため、定着ベルト31が回転軸線α回りに回転するときに、定着ベルト31が保持部材41に接触すると、保持部材41が熱により損傷し易い。このため、定着ベルト31が保持部材41に接触しないようにすることが好ましい。
【0056】
この点、本実施の形態において、摺動性部材42bの定着ベルト31とは反対側の頂面42b2と、保持部材41において段差部43aに隣接して摺動性部材43bと対向する底面41cとの間の距離d6(
図6A参照)(この例では0.25mm)は、定着ベルト31の内周面311と、保持部材41の外周面411との間の距離d7(
図6A参照)(この例では2.50mm)よりも小さい。
【0057】
こうすることで、定着ベルト31が回転軸線α回りに回転するときに回転軸線方向Wに移動しても、定着ベルト31の保持部材41への接触を効果的に防止することができる。これにより、保持部材41の熱による損傷を抑制することができる。
【0058】
本実施の形態において、保持部材41の外周面411には、周方向Rに延びる凹部が設けられている。凹部は、被規制部42を挿通し、挿通した被規制部42の周方向Rの移動を許容する。段差部43aは、凹部の回転軸線方向Wにおける両側の側面43a1,43a1の2箇所で構成されている。すなわち、凹部は、段差部43a(側面43a1,43a1)と保持部材41の底面41cとで構成されている。凹部(43a1,43a1,41c)は、回転軸線方向Wにおける一方の保持部材41a及び他方の保持部材41bのうち、何れか一方の保持部材(この例では一方の保持部材41a)に設けることができる。
【0059】
このように、凹部(43a1,43a1,41c)を何れか一方の保持部材(この例では一方の保持部材41a)に設けたとしても、定着ベルト31が回転軸線α回りに回転するときに回転軸線方向Wに移動したときに、保持部材41における凹部(43a1,43a1,41c)の回転軸線方向Wにおける両側の側面43a1,43a1により、定着ベルト31の回転軸線方向Wにおける一方側W1及び他方側W2の双方における移動を規制することができる。
【0060】
なお、第1実施形態において、段差部43aを一方の保持部材41a(41)に設けるようにしたが、他方の保持部材41b(41)に設けるようにしてもよい。この場合、被規制部42は、定着ベルト31の内周面311の回転軸線方向Wにおける他方側W2に設けられる。
【0061】
(第2実施形態)
<第2実施形態-1>
図7Aは、第2実施形態-1に係る定着装置12における被規制部42及び規制部43を模式的に示す断面図である。
図7Bは、第2実施形態-1に係る定着装置12における被規制部42及び規制部43を模式的に示す斜視断面図である。
【0062】
第2実施形態-1に係る定着装置12は、第1実施形態に係る定着装置12において被規制部42及び規制部43を変更した以外は第1実施形態に係る定着装置12の構成と同様である。従って、第2実施形態-1において、第1実施形態の同様の構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
保持部材41の外周面411には、定着ベルト31の周方向に沿った段差部44が設けられている。段差部44(側面44a,44a)には、摺動性部材43b,43bが設けられている。定着ベルト31の内周面311には、耐熱性部材42aが設けられている。規制部43は、摺動性部材43b,43bで構成されている。被規制部42は、耐熱性部材42aで構成されている。耐熱性部材42aの側面42a1,42a1が摺動性部材43bの側面43b1,43b1に対向している。この例では、段差部44と摺動性部材43b,43bとが耐熱性の接着部材(接着剤)で互いに接着されている。
【0064】
第2実施形態-1に係る定着装置12によれば、定着ベルト31が回転軸線α回りに回転するときに回転軸線方向Wに移動しても、定着ベルト31の内周面311に設けられた被規制部42が保持部材41の外周面411に設けられた規制部43と当接することにより、定着ベルト31の回転軸線方向Wにおける移動を規制する。被規制部42を構成する耐熱性部材42aが定着ベルト31の内周面311に設けられている。従って、被規制部42に対して耐熱性を持たせることができる。また、被規制部42を構成する耐熱性部材42aの側面42a1,42a1が、段差部44(側面44a,44a)に設けられて規制部43を構成する摺動性部材43bの側面43b1,43b1に対向する。従って、定着ベルト31が回転軸線α回りに回転するときに、耐熱性部材42a(被規制部42)の側面42a1,42a1が、摺動性部材43b(規制部43)の側面43b1,43b1に当接しても、摺動性部材43bの摺動性(耐摩耗性)により、耐熱性部材42a(被規制部42)及び/又は摺動性部材43b(規制部43)の摩耗を抑制することができる。
【0065】
本実施の形態において、段差部44(側面44a,44a)、及び、保持部材41において段差部44に隣接して耐熱性部材42aと対向する底面41cの双方には、摺動性部材43b,43b,43bが設けられている。
【0066】
ところで、定着ベルト31は高温となるため、定着ベルト31が回転軸線α回りに回転するときに、定着ベルト31が保持部材41及び摺動性部材43bに接触すると、保持部材41及び摺動性部材43bが熱により損傷し易い。このため、定着ベルト31が保持部材41及び摺動性部材43bに接触しないようにすることが好ましい。
【0067】
この点、本実施の形態において、耐熱性部材42aの定着ベルト31とは反対側の頂面42a2と、保持部材41における底面41cに設けられた摺動性部材43b(底面43b2)との間の距離d11(
図7A参照)(この例では0.25mm)は、定着ベルト31の内周面311と、保持部材41の外周面411、及び、段差部44(側面44a,44a)に設けられた摺動性部材43b,43bの定着ベルト31と対向する頂面43b3,43b3との間の距離d12(
図7A参照)(この例では1.00mm)よりも小さい。この例では、保持部材41の外周面411と摺動性部材43b,43bの頂面43b3,43b3とは面一となっている。
【0068】
こうすることで、定着ベルト31が回転軸線α回りに回転するときに回転軸線方向Wに移動しても、定着ベルト31の保持部材41及び摺動性部材42bへの接触を効果的に防止することができる。これにより、保持部材41及び摺動性部材42bの熱による損傷を抑制することができる。
【0069】
詳しくは、耐熱性部材42aの側面42a1,42a1(
図7A参照)と摺動性部材43bの側面43b1,43b1との間の両側の隙間d13,d13(
図7A参照)(この例では0.50mm、0.50mm)は、定着ベルト31の両側の端面31a,31aと、一対の保持部材41a,41bの壁面41a3,41b3との間の両側の隙間d5,d5(
図6B参照)よりも小さい。すなわち、両側の隙間d13,d13及び両側の隙間d5,d5は、耐熱性部材42aの側面42a1,42a1が摺動性部材43bの側面43b1,43b1に当接しても定着ベルト31の両側の端面31a,31aが一対の保持部材41a,41bの壁面41a3,41b3に接触しない寸法とされている。図示例では、定着ベルト31が回転軸線方向Wにおける中央に位置し、このとき、両側の隙間d13,d13が等しく、かつ、両側の隙間d5,d5が等しい。耐熱性部材42aの回転軸線方向Wにおける幅d14(
図7A参照)は、所定の距離(この例では3.00mm)とされている。耐熱性部材42aの径方向Vにおける厚みd15(
図7A参照)は、所定の距離(この例では2.00mm)とされている。耐熱性部材42aの幅d14及び厚みd15は、所望の強度及び耐熱性を維持できる程度の値とされている。摺動性部材43bの厚みd16,d16,d16(
図7A参照)は、所定の距離(この例では0.50mm,0.50mm,0.50mm)とされている。摺動性部材43bの厚みd16は、所望の強度を維持できる程度の値とされている。
【0070】
<第2実施形態-2>
図8Aは、第2実施形態-2に係る定着装置12における被規制部42及び規制部43を模式的に示す断面図である。
図8Bは、第2実施形態-2に係る定着装置12における被規制部42及び規制部43を模式的に示す斜視断面図である。
【0071】
第2実施形態-2に係る定着装置12は、第2実施形態-1に係る定着装置12において摺動性部材43bの径方向Vにおける高さを高くしたものである。
【0072】
ところで、保持部材41の摺動性は摺動性部材42bの摺動性よりも小さい。このため、定着ベルト31が回転軸線α回りに回転するときに、定着ベルト31が保持部材41に接触すると、定着ベルト31及び/又は保持部材41が摩擦により損傷し易い。このため、定着ベルト31が保持部材41に接触しないようにすることが好ましい。
【0073】
この点、本実施の形態において、摺動性部材43bは、保持部材41の外周面411から定着ベルト31側に突出している。耐熱性部材42aの定着ベルト31とは反対側の頂面42a2と、保持部材41において段差部44に隣接して耐熱性部材42aと対向する底面41cに設けられた摺動性部材43bとの間の距離d11(
図8A参照)(この例では1.00mm)は、定着ベルト31の内周面311と、摺動性部材43bの定着ベルト31と対向する頂面43b3,43b3との間の距離d121(
図8A参照)(この例では0.25mm)よりも大きい。詳しくは、摺動性部材43bの保持部材41の外周面411からの突出量d17は、0mmより大きく、かつ、定着ベルト31の内周面311と、保持部材41の外周面411との間の距離d122(
図8A参照)よりも小さい。
【0074】
こうすることで、定着ベルト31が回転軸線α回りに回転するときに回転軸線方向Wに移動しても、定着ベルト31の保持部材41への接触を効果的に防止することができる。これにより、定着ベルト31及び/又は保持部材41の摩擦による損傷を抑制することができる。
【0075】
(第3実施形態)
図9A及び
図9Bは、それぞれ、第3実施形態に係る定着装置12における一方の保持部材41a(41)及び他方の保持部材41b(41)を正面側から視た斜視図である。
図10Aから
図10Cは、それぞれ、第1実施形態、第2実施形態-1及び第2実施形態-2に対応する第3実施形態に係る定着装置12における被規制部42及び規制部43を模式的に示す斜視断面図である。なお、
図10Aから
図10Cでは、回転軸線方向Wにおける両側の端部部分を1つの図で示している。
【0076】
第3実施形態に係る定着装置12は、第1実施形態、第2実施形態-1及び第2実施形態-2に係る定着装置12において段差部43aを2箇所で構成した以外は第1実施形態及び第2実施形態に係る定着装置12の構成と同様である。従って、第3実施形態において、第1実施形態、第2実施形態-1及び第2実施形態-2の同様の構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
本実施の形態において、一方の保持部材41a(41)及び他方の保持部材41b(41)の双方において、回転軸線方向Wにおける外側を低くし、かつ、内側を高くした段差部43aを設けるようにしている。このように、一方の保持部材41a(41)及び他方の保持部材41b(41)の双方に段差部43a,43aを設ける場合、定着ベルト31の回転軸線方向Wにおける両側に被規制部42,42を設けることができる。
【0078】
(1実施形態から第3実施形態の共通の実施形態)
この点、第1実施形態から第3実施形態において、被規制部42の回転軸線方向Wにおける幅d1,d14は、被規制部42の規制部43への回転軸線方向Wにおける挿通幅(d1+d4+d4),(d14+d13+d13)よりも小さい。
【0079】
こうすることで、定着ベルト31が回転軸線α回りに回転して定着ベルト31が保持部材41に接触するときに、被規制部42の規制部43への摺接頻度を抑制することができる。これにより、被規制部42及び/又は規制部43の摩耗を抑制することができる。
【0080】
第1実施形態から第3実施形態において、被規制部42は、定着ベルト31の内周面311に全周に亘って形成されていてもよい。言い換えると、被規制部42は、定着ベルト31の内周面311において周方向Rに沿って連続的に(無端状に)形成されている。
【0081】
こうすることで、被規制部42により定着ベルト31の回転軸線方向Wにおける移動を確実に規制することができる。
【0082】
ここで、第1実施形態から第3実施形態では、一方の保持部材41a(41)及び他方の保持部材41b(41)における保持部41a1,41b1は、周方向Rの一部を切り欠いた円弧形状部とされているが、円筒形状の円筒形状部とされていてもよい。
【0083】
図11A及び
図11Bは、それぞれ、一方の保持部材41a(41)の他の例及び他方の保持部材41b(41)の他の例を正面側の右方から視た斜視図である。
【0084】
図11Aに示す一方の保持部材41a(41)における保持部41a1、及び、
図11Bに示す他方の保持部材41b(41)における保持部41b1は、円筒形状部とされている。
【0085】
なお、
図11Aに示す一方の保持部材41a(41)は、第1実施形態、第2実施形態-1及び第2実施形態-2の構成例を示しているが、第1実施形態、第2実施形態-1及び第2実施形態-2の場合、円筒形状部の保持部41b1を有する他方の保持部材41b(41)が第1実施形態、第2実施形態-1及び第2実施形態-2のような構成例になっていてもよい。また、
図11Bに示す他方の保持部材41b(41)は、第3実施形態の例を示しているが、この場合、円筒形状部の保持部41a1を有する一方の保持部材41a(41)も第3実施形態のような構成例になっている。
【0086】
第1実施形態から第3実施形態において、一対の保持部材41a,41bの保持部41a1,41b1が周方向Rの一部を切り欠いた円弧形状部とされている場合には、規制部43(段差部43a,44)は、保持部41a1,41b1の外周面411,411に全面的に形成されていることが好ましい。言い換えると、規制部43(43a,44)は、保持部41a1,41b1の外周面411において周方向Rにおける一端と他端との間で周方向Rに沿って連続的に形成されることが好ましい。
【0087】
こうすることで、規制部43により定着ベルト31の回転軸線方向Wにおける移動を確実に規制することができる。
【0088】
また、第1実施形態から第3実施形態において、一対の保持部材41a,41bの保持部41a1,41b1が円筒形状部とされている場合には、規制部43(段差部43a,44)は、保持部41a1,41b1の外周面411,411に全周に亘って形成されていることが好ましい。言い換えると、規制部43(43a,44)は、保持部41a1,41b1の外周面411,411において周方向Rに沿って連続的に(無端状に)形成されることが好ましい。
【0089】
こうすることで、規制部43により定着ベルト31の回転軸線方向Wにおける移動を確実に規制することができる。
【0090】
なお、被規制部42は、定着ベルト31の内周面311に1箇所又は複数箇所に部分的に形成されていてもよい。及び/又は、規制部43は、保持部41a1,41b1の外周面411,411に1箇所又は複数箇所に部分的に形成されていてもよい。また、被規制部42が1箇所又は複数箇所に部分的に形成され、かつ、規制部43が1箇所又は複数箇所に部分的に形成される場合、及び、被規制部42が1箇所又は複数箇所に部分的に形成され、かつ、保持部41a1,41b1が円弧形状部とされている場合には、1箇所又は複数箇所に部分的に形成された被規制部42の第1回転方向R1における下流側の端部にテーパーを設ける、及び/又は、1箇所又は複数箇所に部分的に形成された規制部43の第1回転方向R1における上流側の端部にテーパーを設けることができる。
【0091】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、係る実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0092】
100 画像形成装置
12 定着装置
12a 定着装置本体
31 定着ベルト
311 内周面
31a 端面
41 保持部材
411 外周面
41a 一方の保持部材
41a 保持部材
41a1 保持部
41b 他方の保持部材
41b1 保持部
41c 底面
42 被規制部
42a 耐熱性部材
42a1 側面
42b 摺動性部材
42b1 側面
43 規制部
43a 段差部
43a1 側面
43b 摺動性部材
43b1 側面
44 段差部
44a 側面
R 周方向
V 径方向
W 回転軸線方向
W1 一方側
W2 他方側
α 回転軸線