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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154939
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】抗腋臭菌剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/36 20060101AFI20231013BHJP
   A01N 37/40 20060101ALI20231013BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20231013BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
A61K8/36
A01N37/40
A01P3/00
A61Q15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064594
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】本岡 良太
(72)【発明者】
【氏名】土谷 美緒
【テーマコード(参考)】
4C083
4H011
【Fターム(参考)】
4C083AC471
4C083CC17
4C083EE18
4H011AA01
4H011BA06
4H011BB06
4H011DF04
(57)【要約】
【課題】本発明は、腋臭菌に対する発育阻止効果の高い抗腋臭菌剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、式(1)
【化1】
[式中、Rは炭素原子数6~14のアルキル基を示す]
で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩を含む、抗腋臭菌剤に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
[式中、Rは炭素原子数6~14のアルキル基を示す]
で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩を含む、抗腋臭菌剤。
【請求項2】
腋臭菌がコリネバクテリウム属の菌である、請求項1に記載の抗腋臭菌剤。
【請求項3】
式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルは、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルおよび/または4-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシルである、請求項1または2に記載の抗腋臭菌剤。
【請求項4】
式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルは、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルおよび4-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシルである、請求項3に記載の抗腋臭菌剤。
【請求項5】
被処理領域または被処理体に、請求項1に記載の抗腋臭菌剤を適用することを含む、腋臭発生の予防方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腋臭菌に対する発育阻止効果に優れた抗腋臭菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
コリネバクテリウム属菌は、別名、腋臭菌とも呼ばれ、腋窩部のアポクリン汗腺から分泌されるアポクリン汗を分解することによって腋臭を発生させることが知られている。そのため、コリネバクテリウム属菌の発育や増殖を抑制することが腋臭の予防に効果的である。
【0003】
特許文献1には、脂肪酸のショ糖エステル及び炭素数1~4のパラオキシ安息香酸エステルもしくはその塩を含有する抗菌性組成物が提案されている。また、特許文献2には、パラオキシ安息香酸メチルを有効成分とするコリネバクテリウム属菌に対する抗菌剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-255711号公報
【特許文献2】特開2005-289953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1で提案される炭素数1~4の低級アルキルエステルのパラベン類は、コリネバクテリウム属菌に対する抗菌活性は十分とは言えないものであった。
【0006】
従って、コリネバクテリウム属(腋臭菌)に対する発育阻止効果に優れる薬剤が望まれていた。
【0007】
本発明の目的は、腋臭菌に対する発育阻止効果の高い抗腋臭菌剤を提供することにある。また、本発明の目的は、コリネバクテリウム属の発育阻止効果に優れた腋臭予防方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩が腋臭菌に対して高い発育阻止効果を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下の好適な態様を包含する。
[1]式(1)
【化1】
[式中、Rは炭素原子数6~14のアルキル基を示す]
で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩を含む、抗腋臭菌剤。
[2]腋臭菌がコリネバクテリウム属の菌である、[2]に記載の抗腋臭菌剤。
[3]式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルは、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルおよび/または4-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシルである、[1]または[2]に記載の抗腋臭菌剤。
[4]式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルは、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルおよび4-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシルである、[1]~[3]のいずれかに記載の抗腋臭菌剤。
[5]被処理領域または被処理体に[1]~[4]のいずれかに記載の抗腋臭菌剤を適用することを含む、腋臭発生の予防方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抗腋臭菌剤によれば、腋臭菌に対して高い発育阻止効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の抗腋臭菌剤は、有効成分として式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩を含む。
【化2】
[式中、Rは炭素原子数6~14のアルキル基を示す。]
【0012】
本発明に使用される式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルの具体例としては、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘプチル、4-ヒドロキシ安息香酸オクチル、4-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、4-ヒドロキシ安息香酸ノニル、4-ヒドロキシ安息香酸デシル、4-ヒドロキシ安息香酸イソデシル、4-ヒドロキシ安息香酸ウンデシル、4-ヒドロキシ安息香酸ドデシル、4-ヒドロキシ安息香酸トリデシルおよび4-ヒドロキシ安息香酸テトラデシルからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0013】
これらの中でも、腋臭菌に対する発育阻止効果に優れる点で4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルおよび/または4-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシルがより好適に使用される。
【0014】
本発明に使用される式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルの塩は、上記4-ヒドロキシ安息香酸エステルのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が好ましい。アルカリ金属の具体例としては、ナトリウム、カリウムおよびリチウムからなる群から選択される1種以上が挙げられ、アルカリ土類金属としては、マグネシウムおよび/またはカルシウムが挙げられる。
【0015】
4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩は、単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。腋臭菌に対する発育阻止効果により優れるという点で4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルおよび4-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシルを併用することが好ましい。
【0016】
本発明で使用される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩は、市販のものを用いてもよく、また、特開2018-95581号公報に記載されるように、触媒の存在下、4-ヒドロキシ安息香酸と脂肪族アルコールとを反応させることによって得られたものを用いてもよい。
【0017】
本発明の抗腋臭菌剤は、使用目的に応じた形態で用いることができるが、具体的には以下の形態が挙げられる。
(1)式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩を単独でそのまま抗腋臭菌剤として使用する形態。
(2)式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩を固体担体に担持させた固体製剤を抗腋臭菌剤として使用する形態。
(3)式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩を溶剤に可溶化または分散させた液体製剤を抗腋臭菌剤として使用する形態。
(4)式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩を樹脂中に混錬した樹脂組成物を抗腋臭菌剤として使用する形態。
【0018】
(2)の固体担体に担持させた固体製剤を抗腋臭菌剤とする形態において、使用し得る固体担体としては、例えば、カオリン、タルク、ベントナイト、クレー、珪藻土、炭酸カルシウム、シリカ、ゼオライト等の鉱物質又は無機質粉末;木粉、大豆粉、小麦粉、澱粉等の植物質粉末;PCP(多孔性配位高分子)、MOF(金属有機構造体)などの多孔質体;フェノール樹脂、ポリアミド、(メタ)アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル等のプラスチック;該プラスチックからなる合成繊維;ポリブタジエン等のゴムまたはその粉末;樟脳、ナフタレン、パラジクロロベンゼン、トリオキサン、シクロドデカン、アダマンタン等の昇華性粉末;リンター、パルプ等の天然繊維;羊毛、綿、絹などの動植物性繊維;レーヨンなどの再生繊維;ガラス繊維などの無機繊維などが挙げられる。
【0019】
(3)の溶剤に溶解または分散させた液体製剤を抗腋臭菌剤とする形態において、使用し得る溶剤としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ヘキサン、ケロシン、パラフィン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;および酢酸エチル、ラウリン酸ヘキシル等のエステル類;ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。
【0020】
(4)の樹脂中に練り込んだ樹脂組成物を抗腋臭菌剤とする形態において、使用する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂およびゴム類が挙げられる。
【0021】
熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超分子量ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂類;ポリプロピレン系樹脂類;エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン・メタアクリル酸共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂類;塩化ビニル、塩化ビニデン単独重合体等の塩化ビニル(ビニリデン)系樹脂等の塩素系樹脂類;ポリスチレン、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂等のスチレン系樹脂類;ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル樹脂類;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂類;ポリアセタール樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂、PEI(ポリエーテルイミド)樹脂、PES(ポリエーテルスルホン)樹脂、変性PPE樹脂、PPS(ポリフェニレンスルフィド)樹脂等のポリエーテル系樹脂類;PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂等の熱可塑性ポリエステル樹脂類;PVF(ポリフッ化ビニル)樹脂等のフッ素樹脂類;PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂等のポリエーテルケトン系樹脂類;スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー樹脂類;ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド、PSU(ポリサルホン)樹脂、プラストマー、加水分解性樹脂、水和分解型樹脂、吸水性樹脂が挙げられる。
【0022】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキド樹脂、グアナミン樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。
【0023】
ゴム類としては、ブチルゴム、イソプレンゴム、SBR(スチレンブタジエンゴム)、NIR(ニトリルイソプレンゴム)、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、EPDM(エチレンプロピレンジエン共重合体ゴム)、EPM(エチレンプロピレン共重合体ゴム)、ブタジエンゴム、アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、プロピレンオキサイドゴム、エチレン・アクリルゴム、ノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、ポリエーテル系ゴム、四フッ化エチレン・プロピレンゴム、クロロスルホン化ゴム、多硫化ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、天然ゴムなどが挙げられる。
【0024】
これらの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂およびゴム類は、単独で使用してもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、ポリマーアロイ化して使用してもよく、ブレンドして使用してもよく、あるいはそれぞれの樹脂層を積層して使用してもよい。
【0025】
上記(1)~(4)の使用形態において、いずれの場合も、必要により他の剤、例えば抗菌剤、殺菌剤、抗黴剤、抗ウイルス剤、着色剤、可塑剤、帯電防止剤、分散剤等の各種添加剤、強化剤、界面活性剤および粉末増量剤等の充填剤等を併用してもよい。また、他の剤と併用する場合、その使用量(質量)は、式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩の使用量(質量)と同量以下とすることが、安全性の観点から好ましい。
【0026】
上述した形態の抗腋臭菌剤は、スプレー剤、エアゾール剤、ポンプ剤、液剤、塗布剤、貼付剤、マット剤、シート剤、テープ剤、粉剤、顆粒剤、ゲル剤、クリーム剤、フィルム、容器、塗料、繊維、ペレット等の剤型に調製することができる。
【0027】
本発明の抗腋臭菌剤において、式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩の含有量は、抗腋臭菌剤の剤型や適用方法、適用場所に応じて適宜決定することができる。
【0028】
例えば、溶剤に溶解または分散させた液体製剤、樹脂との混錬により得られた樹脂組成物ならびに固体担体に担持させた固体製剤として抗腋臭菌剤を使用する場合、いずれも式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステルまたはその塩の割合が、各製剤の質量に対して、好ましくは0.0001~50質量%、より好ましくは0.001~30質量%、更に好ましくは0.01~20質量%となるように含有させるのがよい。
【0029】
本発明の抗腋臭菌剤により発育阻止すべき対象とされる腋臭菌としては、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)などが挙げられる。
【0030】
これらの中でも、本発明の抗腋臭菌剤の腋臭菌に対する発育阻止効果が高い点で、コリネバクテリウム属の菌が好ましい。
【0031】
コリネバクテリウム属の菌としては、コリネバクテリウム・キセロシス(Corynebacterium xerosis)、コリネバクテリウム・ミヌティシマム(Corynebacterium minutissimum)、コリネバクテリウム・テナース(Corynebacterium tenuis)等が挙げられる。
【0032】
本発明の抗腋臭菌剤は、腋臭菌が発育可能な、もしくは、腋臭菌が発育され得る被処理領域または被処理体にこれを適用し、腋臭菌の発育による悪臭発生を防徐することができる。すなわち、本発明は、被処理領域または被処理体に、前記の抗腋臭菌剤を適用することを含む、腋臭菌の発育による悪臭の発生またはその拡大を予防または除去する方法にも関する。
【0033】
被処理領域または被処理体としては、皮膚(皮表)や、下着、シャツ、靴、靴下、手袋、帽子などの衣類、ハンカチ、タオル、腋汗パッド、汗拭きシート等が挙げられる。
【0034】
本発明の抗腋臭菌剤の被処理領域への適用手段としては、撒布、噴霧、塗布等の方法が挙げられ、また、被処理体への適用手段としては、混錬、撒布、噴霧、塗布または含浸等の方法が挙げられる。
【実施例0035】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例および比較例に用いた試験対象腋臭菌類を以下に示す。
【0036】
<試験対象腋臭菌類>
腋臭菌類:コリネバクテリウム・キセロシス(Corynebacterium xerosis)NBRC16721
【0037】
[実施例1]
4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル0.02g、ジメチルスルホシキド(DMSO)500μL、滅菌水9.48mLをサンプル管へ投入し、ボルテックスミキサーにて1分間撹拌し、前調整液(4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル濃度2000ppm)を作製した。
96ウェル(12列×8段)マイクロプレートの左から1列目のウェル毎に前調整液180μLを、左から2列目~11列目の各ウェルに滅菌水90μLを添加した。続いて、左から1列目のウェルから90μL採取し、1つ右隣のウェルへ投入し、1/2になるよう希釈した。この操作を2列目以降も繰り返し実施し、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル濃度2000~2ppm含有液を96ウェルマイクロプレート内に準備した。また、残りのウェルに滅菌水90μLのみを入れ、ブランクとした。
67.5g/Lに調製したソイビーンカゼインダイジェスト(SCD)培地(日水製薬株式会社製)を滅菌後、すべてのウェルへ80μLずつ分注した。次に、試験対象腋臭菌類をSCD培地にて30℃、20時間培養した菌液を、10cfu/mLとなるよう生理食塩水で希釈した懸濁液をすべてのウェルへ10μLずつ加えた後、30℃で48時間培養した。ブランクに腋臭菌が発育したことを目視にて確認後、各ウェル内の腋臭菌の生育状況を目視にて観察し、最小発育阻止濃度(MIC:μg/mL)を測定した。結果を表1に示す。なお、最小発育阻止濃度は日本化学療法学会標準法(微量液体希釈法)に準じ、測定を実施した。
【0038】
[実施例2]
4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを4-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシルに変更した以外は実施例1と同様にして最小発育阻止濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
[実施例3]
4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル0.02gを4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシル0.01gおよび4-ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル0.01gに変更した以外は実施例1と同様にして最小発育阻止濃度を測定した。結果を表1に示す。また、各MIC値から下記計算式により、FIC値(Fractional Inhibitory Concentration Index:併用効果指数)を算出し、評価基準に基づいて併用効果を評価した。FIC値の結果を表2に示す。
FIC値=Qa/QA + Qb/QB
Qa:A成分とB成分を併用した時のA成分のMIC値、
QA:A成分単独でのMIC値、
Qb:A成分とB成分を併用した時のB成分のMIC値、
QB:B成分単独でのMIC値
<評価基準>
FIC値<1:相乗的効果
FIC値=1:相加的効果
FIC値>1:拮抗的効果
【0040】
[比較例1]
4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを4-ヒドロキシ安息香酸メチルに変更した以外は実施例1と同様にして最小発育阻止濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
[比較例2]
4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを4-ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルに変更した以外は実施例1と同様にして最小発育阻止濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【表2】
【0043】
表1から明らかなように、式(1)で表される4-ヒドロキシ安息香酸エステル(実施例1~3)は、腋臭菌類の発育阻止効果に優れ、抗腋臭菌剤として有用であることが理解される。また、表2から明らかなように、実施例3に示す4-ヒドロキシ安息香酸エステルの組み合わせで併用することにより、腋臭菌類に対する発育阻止効果が相乗的に向上することが理解される。