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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154940
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】アスファルトフィニッシャ
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/48 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
E01C19/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064595
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000232508
【氏名又は名称】日本道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】寺元 陶太
(72)【発明者】
【氏名】美濃 寿保
(72)【発明者】
【氏名】浅井 友章
(72)【発明者】
【氏名】廣郡 俊彦
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052BD00
2D052CA03
2D052CA04
2D052CA05
(57)【要約】
【課題】トラクタをより適切に自動操舵できるアスファルトフィニッシャを提供すること。
【解決手段】アスファルトフィニッシャ100は、トラクタ1と、トラクタ1の前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパ2と、ホッパ2内の舗装材をトラクタ1の後側へ給送するコンベアCVと、コンベアCVにより給送された舗装材をトラクタ1の後側で敷き拡げるスクリュSCと、スクリュSCにより敷き拡げられた舗装材をスクリュSCの後側で敷き均すスクリード3と、施工対象の地面に設置された物体APに関する情報を取得する物体検出装置51と、物体APの変化に基づいてガイド線を生成し、ガイド線とトラクタ1の車長方向を示す基準線とに基づいてトラクタ1を操舵するコントローラ50とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタと、
前記トラクタの前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパと、
前記ホッパ内の舗装材を前記トラクタの後側へ給送するコンベアと、
前記コンベアにより給送された前記舗装材を前記トラクタの後側で敷き拡げるスクリュと、
前記スクリュにより敷き拡げられた前記舗装材を前記スクリュの後側で敷き均すスクリードと、
施工対象の地面の所定範囲内にある地物に関する情報を取得する物体検出装置と、
前記地物の変化に基づいて目標線を生成し、前記目標線に基づいて前記トラクタを操舵する制御装置と、
を備える、アスファルトフィニッシャ。
【請求項2】
前記制御装置は、前記地物の変化に基づいて前記目標線を生成し、前記目標線と前記トラクタの車長方向を示す基準線とに基づいて前記トラクタを操舵する、
請求項1に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項3】
前記制御装置は、車幅方向における前記目標線と前記基準線との間の距離、及び、前記目標線と前記基準線との間に形成される角度の少なくとも一つに基づき、前記目標線と前記基準線とが一致するように前記トラクタを操舵する、
請求項2に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項4】
前記トラクタの前輪の軸と直交する方向に前記基準線が設定されている、
請求項2又は3に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項5】
前記制御装置は、前記地物が屈曲する場合、前記屈曲の前後における前記地物に関する情報に基づいて前記目標線を生成する、
請求項1乃至4の何れかに記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項6】
前記地物の変化は、前記地物の高さ、色情報、反射率、又は形状の何れか一つの変化であり、
前記制御装置は、閾値以上の高さを有する前記地物の形状に基づいて前記目標線を生成し、
前記閾値は、変更可能に設定されている、
請求項1乃至5の何れかに記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項7】
前記制御装置は、前記トラクタの右側にある前記地物の変化と、前記トラクタの左側にある前記地物の変化とに基づいて施工幅を算出する、
請求項1乃至6の何れかに記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項8】
前記制御装置は、前記施工幅の中心に前記トラクタの中心が位置するように前記トラクタを操舵する、
請求項7に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項9】
トラクタと、
前記トラクタの前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパと、
前記ホッパ内の舗装材を前記トラクタの後側へ給送するコンベアと、
前記コンベアにより給送された前記舗装材を前記トラクタの後側で敷き拡げるスクリュと、
前記スクリュにより敷き拡げられた前記舗装材を前記スクリュの後側で敷き均すスクリードと、
施工対象の地面の所定範囲内にある地物に関する情報を取得する物体検出装置と、
前記地物の変化に基づいて前記スクリードを伸縮させる制御装置と、
を備える、アスファルトフィニッシャ。
【請求項10】
前記制御装置は、前記地物の変化に基づいて算出される前記トラクタの操舵角と検出される走行速度とに基づき前記スクリードを伸縮させる、
請求項9に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項11】
前記物体検出装置は、前記スクリードに配置される、
請求項9に記載のアスファルトフィニッシャ。
【請求項12】
前記スクリードの端部に配置された端部敷き均し装置を備え、
前記物体検出装置は、前記端部敷き均し装置に配置される、
請求項9に記載のアスファルトフィニッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アスファルトフィニッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタと、トラクタの前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパと、ホッパ内の舗装材をトラクタの後側へ給送するコンベアと、コンベアにより給送された舗装材をトラクタの後側で敷き拡げるスクリュと、スクリュにより敷き拡げられた舗装材をスクリュの後側で敷き均すスクリードとを備えたアスファルトフィニッシャが知られている。
【0003】
また、敷設される舗装体の幅方向の端面が施工対象の地面に描かれた走行基準線に沿って延びるようにトラクタを自動操舵するアスファルトフィニッシャが知られている(特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0004】
特許文献1及び特許文献2に開示されたアスファルトフィニッシャは、車幅方向に突き出るようにホッパに取り付けられた棒状部材と、棒状部材の先端に取り付けられ地面に向かって光を出力する複数の光センサと、を備えている。そして、複数の光センサのそれぞれは、車幅方向に並ぶように配置され、且つ、走行基準線で反射した光を受けることで走行基準線を検出できるように構成されている。
【0005】
この構成により、特許文献1及び特許文献2に開示されたアスファルトフィニッシャは、トラクタが走行基準線に沿って走行しているか、走行基準線に近づいているか、或いは、走行基準線から遠ざかっているかを検知できる。そして、アスファルトフィニッシャは、トラクタが走行基準線に近づいていることを検知したときにはトラクタが走行基準線から遠ざかるようにトラクタを操舵し、トラクタが走行基準線から遠ざかっていることを検知したときにはトラクタが走行基準線に近づくようにトラクタを操舵する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平3-40163号公報
【特許文献2】特公平4-32883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されたアスファルトフィニッシャは、トラクタが走行基準線に近づいたこと或いは走行基準線から遠ざかったことを検知した後でしかトラクタを操舵できない。
【0008】
上述に鑑み、トラクタをより適切に自動操舵できるアスファルトフィニッシャを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係るアスファルトフィニッシャは、トラクタと、前記トラクタの前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパと、前記ホッパ内の舗装材を前記トラクタの後側へ給送するコンベアと、前記コンベアにより給送された前記舗装材を前記トラクタの後側で敷き拡げるスクリュと、前記スクリュにより敷き拡げられた前記舗装材を前記スクリュの後側で敷き均すスクリードと、施工対象の地面の所定範囲内にある地物に関する情報を取得する物体検出装置と、前記地物の変化に基づいてガイド線を生成し、前記ガイド線と前記トラクタの車長方向を示す基準線とに基づいて前記トラクタを操舵する制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
上述の手段により、トラクタをより適切に自動操舵できるアスファルトフィニッシャが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るアスファルトフィニッシャの側面図である。
図2図1のアスファルトフィニッシャの上面図である。
図3】自動操舵システムの構成例を示す図である。
図4】舗装用型枠の概略斜視図である。
図5】物体検出装置の出力に基づいて生成される距離画像の例を示す図である。
図6】物体検出装置の出力に基づいて生成される距離画像の例を示す図である。
図7】物体検出装置の出力に基づいて生成される距離画像の別の例を示す図である。
図8】自動操舵されるアスファルトフィニッシャの上面図である。
図9】舗装現場の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るアスファルトフィニッシャ100の側面図である。図2はアスファルトフィニッシャ100の上面図である。本実施形態では、アスファルトフィニッシャ100は、ホイール式アスファルトフィニッシャであり、主に、トラクタ1、ホッパ2、及びスクリード3で構成されている。以下では、トラクタ1から見たホッパ2の方向(+X方向)を前方とし、トラクタ1から見たスクリード3の方向(-X方向)を後方とする。
【0013】
トラクタ1は、アスファルトフィニッシャ100を移動させるための機構である。本実施形態では、トラクタ1は、後輪走行用油圧モータを用いて後輪5を回転させ、且つ、前輪走行用油圧モータを用いて前輪6を回転させてアスファルトフィニッシャ100を移動させる。後輪走行用油圧モータ及び前輪走行用油圧モータは油圧ポンプから作動油の供給を受けて回転する。但し、前輪6は従動輪であってもよい。
【0014】
アスファルトフィニッシャ100は、クローラ式アスファルトフィニッシャであってもよい。この場合、後輪5及び前輪6の組み合わせは左クローラ及び右クローラの組み合わせで置き換えられる。
【0015】
ホッパ2は、舗装材を受け入れるための機構である。本実施形態では、ホッパ2は、トラクタ1の前側に設置され、ホッパシリンダによって車幅方向(Y軸方向)に開閉できるように構成されている。アスファルトフィニッシャ100は、通常、ホッパ2が全開状態のときにダンプトラックの荷台から舗装材(例えばアスファルト混合物である。)を受け入れる。ダンプトラックは、舗装材を運搬する運搬車両の一例である。図1及び図2はホッパ2が全開状態であることを示す。ホッパ2内の舗装材が減少するとホッパ2が閉じられ、ホッパ2の内壁付近にあった舗装材がホッパ2の中央部に集められる。ホッパ2の中央部にあるコンベアCVがトラクタ1の後側に舗装材を給送できるようにするためである。コンベアCVによってトラクタ1の後側に給送された舗装材は、スクリュSCによってトラクタ1の後側且つスクリード3の前側で車幅方向に敷き拡げられる。本実施形態では、スクリュSCは、エクステンションスクリュが左右に連結された状態にある。図1及び図2では、明瞭化のため、ホッパ2内にある舗装材の図示が省略され、スクリュSCによって敷き拡げられた舗装材PVが粗いドットパターンで示され、スクリード3によって敷き均された新設舗装体NPが細かいドットパターンで示されている。
【0016】
スクリード3は、舗装材PVを敷き均すための機構である。本実施形態では、スクリード3は、前側スクリード30及び後側スクリード31を含む。前側スクリード30は、左前側スクリード30L及び右前側スクリード30Rを含む。後側スクリード31は、車幅方向に伸縮可能なスクリードであり、左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rを含む。但し、後側スクリード31は、前側スクリード30の左右に連結される固定幅スクリードであってもよい。固定幅スクリードの場合、左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rは、前後方向の同じ位置に取り付けられていてもよい。また、スクリード3は、トラクタ1によって牽引される浮動スクリードであり、レベリングアーム3Aを介してトラクタ1に連結されている。レベリングアーム3Aは、トラクタ1の左側に配置される左レベリングアーム3ALと、トラクタ1の右側に配置される右レベリングアーム3ARとを含む。なお、後側スクリード31の端部には端部敷き均し装置が配置されていてもよい。
【0017】
スクリード3の前部にはモールドボード43が取り付けられている。モールドボード43は、スクリード3の前方に滞留する舗装材PVの量を調整できるように構成されている。舗装材PVは、モールドボード43の下端と路盤BSとの間の隙間を通ってスクリード3の下に至る。
【0018】
トラクタ1には、走行速度センサS1、コントローラ50、物体検出装置51、車載表示装置52、及び操舵装置53が取り付けられている。
【0019】
走行速度センサS1は、アスファルトフィニッシャ100の走行速度を検出できるように構成されている。本実施形態では、走行速度センサS1は、車輪速センサであり、後輪5の回転角速度及び回転角度、ひいては、アスファルトフィニッシャ100の走行速度及び走行距離を検出できるように構成されている。
【0020】
コントローラ50は、アスファルトフィニッシャ100を制御する制御装置である。本実施形態では、コントローラ50は、CPU、揮発性記憶装置、及び不揮発性記憶装置等を含むマイクロコンピュータで構成されている。コントローラ50の各機能は、不揮発性記憶装置に記憶されているプログラムをCPUが実行することで実現される。但し、コントローラ50の各機能は、ソフトウェアで実現されるばかりでなく、ハードウェアで実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0021】
物体検出装置51は、施工対象の地面の所定範囲内にある地物に関する情報を取得し、取得した情報をコントローラ50に対して出力できるように構成されている。すなわち、物体検出装置51は、施工対象の地面の所定範囲を監視対象とするように構成されている。地面上の所定範囲は、舗装用型枠の幅より大きい前後幅及び左右幅を有する範囲であり、例えば、2メートル四方の範囲である。
【0022】
所定範囲内にある地物は、例えば、路盤BSと路盤BSの外側にある物体APとを含む。具体的には、物体APは、敷設される舗装体の幅方向の端面の位置を決めるために利用される地物である。図1及び図2に示す例では、物体APは、所定の厚さ(高さ)を有する舗装用型枠であり、アスファルトフィニッシャ100の左側にある左物体APLと、アスファルトフィニッシャ100の右側にある右物体APRとを含む。物体APは、L形側溝ブロック、縁石ブロック、又は、既設舗装体の切削段差部等であってもよい。既設舗装体の切削段差部は、古い舗装体を切削して新しい舗装体を敷設する際に形成される、切削された部分の表面と切削されていない部分の表面との間の段差部を意味する。物体APは、地面に描かれた線、地面に貼り付けられたテープ、又は、地面に沿って張られた糸等のほとんど厚みのない地物であってもよい。地物に関する情報は、例えば、地物の高さ、地物の表面の色、又は地物の表面の反射率等を含む。なお、図1では、明瞭化のため、左物体APLの図示が省略されている。
【0023】
本実施形態では、物体検出装置51は、所定範囲を監視できるように構成されたステレオカメラである。なお、物体検出装置51は、所定範囲を監視できるように構成された単眼カメラ、LIDAR、ミリ波レーダ、レーザレーダ、レーザスキャナ、距離画像カメラ、レーザレンジファインダ、又は超音波センサ等であってもよい。
【0024】
また、物体検出装置51としてのステレオカメラは、望ましくは、自動露出調整機能を備えるように構成されている。この構成により、物体検出装置51は、昼夜を問わず、すなわち、特殊な照明等を必要とすることなく、所定範囲内にある地物に関する情報を取得することができる。
【0025】
本実施形態では、物体検出装置51は、アスファルトフィニッシャ100の左側に設置される左物体検出装置51L、及び、アスファルトフィニッシャ100の右側に設置される右物体検出装置51Rを含む。
【0026】
左物体検出装置51Lは、アスファルトフィニッシャ100の左側の地面を監視できるように構成されている。本実施形態では、左物体検出装置51Lは、アスファルトフィニッシャ100の左側にある地面上の左監視範囲ZL(図2における一点鎖線で囲まれた範囲)を監視するステレオカメラである。
【0027】
右物体検出装置51Rは、アスファルトフィニッシャ100の右側の地面を監視できるように構成されている。本実施形態では、右物体検出装置51Rは、アスファルトフィニッシャ100の右側にある地面上の右監視範囲ZR(図2における一点鎖線で囲まれた範囲)を監視するステレオカメラである。
【0028】
物体検出装置51は、取り付け部材60を介してアスファルトフィニッシャ100に取り付けられていてもよい。取り付け部材60は、物体検出装置51をアスファルトフィニッシャ100に取り付けるために利用される部材である。本実施形態では、取り付け部材60は、左取り付け部材60L及び右取り付け部材60Rを含む。図2に示す例では、左物体検出装置51Lは、左取り付け部材60Lを介してトラクタ1の左前端部に取り付けられ、右物体検出装置51Rは、右取り付け部材60Rを介してトラクタ1の右前端部に取り付けられている。なお、左物体検出装置51Lは、左取り付け部材60Lを介し、ホッパ2の左前端部等、アスファルトフィニッシャ100の他の部分に取り付けられていてもよい。同様に、右物体検出装置51Rは、右取り付け部材60Rを介し、ホッパ2の右前端部等、アスファルトフィニッシャ100の他の部分に取り付けられていてもよい。
【0029】
また、物体検出装置51は、後側スクリード31の伸縮状態を監視できるように構成されていてもよい。例えば、物体検出装置51は、左後側スクリード31Lの端部を監視できるように構成されたステレオカメラと、右後側スクリード31Rの端部を監視できるように構成されたステレオカメラとを追加的に含んでいてもよい。この場合、物体検出装置51は、スクリード3に配置されていてもよい。例えば、物体検出装置51は、後側スクリード31に配置されていてもよい。また、後側スクリード31の端部に端部敷き均し装置が配置されている場合には、物体検出装置51は、端部敷き均し装置に配置されていてもよい。
【0030】
また、図2に示す例では、物体検出装置51は、鉛直下方を向くように取り付け部材60に取り付けられているが、斜め下方等の他の方向を向くように取り付け部材60に取り付けられていてもよい。
【0031】
また、図2に示す例では、左取り付け部材60Lは、幅方向に伸縮可能な伸縮部材TAと、伸縮部材TAの遠位端に回動可能に連結された回動部材SBとで構成されている。図2において破線で表される回動部材SBaは、回動部材SBが回動したときの状態を示す。右取り付け部材60Rについても同様である。
【0032】
このように取り付け部材60は、伸縮部材TA及び回動部材SBにより、物体検出装置51の監視範囲を移動させることができるように構成されている。舗装幅の変化に対応できるようにするためである。具体的には、コントローラ50は、物体検出装置51が物体APに追随するように伸縮部材TAを伸縮制御する。これにより、コントローラ50は、物体APの配置位置が進行方向において左右に変化しても、物体APを物体検出装置51の監視範囲内に継続的に位置させることができる。
【0033】
取り付け部材60は、伸縮部材TAの伸縮量を検出するセンサ、及び、回動部材SBの回動量(回動角度)を検出するセンサの少なくとも一方を備えていてもよい。
【0034】
なお、伸縮部材TA及び回動部材SBの少なくとも一方は省略されてもよい。例えば、取り付け部材60は、伸縮不能且つ回動不能に構成されていてもよい。すなわち、取り付け部材60は、伸縮不能且つ回動不能な棒状部材であってもよい。
【0035】
また、物体検出装置51は、取り付け部材60を介さずにアスファルトフィニッシャ100に直接的に取り付けられていてもよい。
【0036】
また、アスファルトフィニッシャ100には、アスファルトフィニッシャ100の操舵角を検出できるように構成された操舵角センサ、及び、後側スクリード31の伸縮量を検出できるように構成されたスクリード伸縮量センサ等が取り付けられていてもよい。
【0037】
車載表示装置52は、アスファルトフィニッシャ100に関する情報を表示できるように構成されている。本実施形態では、車載表示装置52は、運転席1Sの前方に設置されている液晶ディスプレイである。但し、車載表示装置52は、スクリード3の左端部及び右端部の少なくとも一方に設置される表示装置を含んでいてもよい。
【0038】
操舵装置53は、アスファルトフィニッシャ100を操舵できるように構成されている。本実施形態では、操舵装置53は、フロントアクスルの近くに設置された前輪操舵シリンダを伸縮させるように構成されている。具体的には、操舵装置53は、油圧ポンプから前輪操舵シリンダに流れる作動油の流量、及び、前輪操舵シリンダから排出される作動油の流量を制御する操舵用電磁制御弁を含む。操舵用電磁制御弁は、操作装置としてのステアリングホイールSH(ハンドル)の回転に応じて前輪操舵シリンダにおける作動油の流出入を制御できるように構成されている。また、操舵用電磁制御弁は、コントローラ50からの操舵指令に応じ、ステアリングホイールSHの回転とは無関係に、前輪操舵シリンダにおける作動油の流出入を制御できるように構成されている。すなわち、コントローラ50は、運転者によるステアリングホイールSHの操作の有無とは無関係に、アスファルトフィニッシャ100を自動操舵できる。
【0039】
アスファルトフィニッシャ100がクローラ式アスファルトフィニッシャである場合、操舵装置53は、左右一対のクローラを別々に制御できるように構成される。なお、クローラ式アスファルトフィニッシャは、ステアリングホイールSHの代わりに、左クローラを操作するための操作装置である左操作レバーと、右クローラを操作するための操作装置である右操作レバーとを有する。
【0040】
具体的には、操舵装置53は、油圧ポンプから左クローラを回転させるための左走行用油圧モータに流れる作動油の流量を制御する左電磁制御弁と、油圧ポンプから右クローラを回転させるための右走行用油圧モータに流れる作動油の流量を制御する右電磁制御弁とを含む。そして、左電磁制御弁は、左操作レバーの操作量(傾斜角)に応じて左走行用油圧モータにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。また、左電磁制御弁は、コントローラ50からの操舵指令に応じ、運転者による左操作レバーの操作の有無とは無関係に、左走行用油圧モータにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。同様に、右電磁制御弁は、右操作レバーの操作量(傾斜角)に応じて右走行用油圧モータにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。また、右電磁制御弁は、コントローラ50からの操舵指令に応じ、運転者による右操作レバーの操作の有無とは無関係に、右走行用油圧モータにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。
【0041】
次に、図3を参照し、アスファルトフィニッシャ100に搭載される自動操舵システムDSの構成例について説明する。図3は、自動操舵システムDSの構成例を示すブロック図である。
【0042】
自動操舵システムDSは、主に、コントローラ50、左物体検出装置51L、右物体検出装置51R、走行速度センサS1、車載表示装置52、及び操舵装置53等で構成されている。
【0043】
図3に示す例では、コントローラ50は、機能ブロックとしてガイド線生成部50a、操舵制御部50b、及びスクリード伸縮制御部50cを含む。
【0044】
ガイド線生成部50aは、物体検出装置51が取得した地物に関する情報に基づいてガイド線GDを生成するように構成されている。ガイド線GDは、目標線の一例であり、ガイド面を表す仮想線である。ガイド面は、敷設される舗装体の幅方向の端面を一致させるべき面として認識される仮想面である。図2に示す例では、ガイド線GDは、新設舗装体NPの左端面を一致させるべき面である左ガイド面を表す左ガイド線GDL、及び、新設舗装体NPの右端面を一致させるべき面である右ガイド面を表す右ガイド線GDRを含む。
【0045】
ガイド線生成部50aは、左物体検出装置51Lが取得した左物体APLに関する情報に基づいて左ガイド線GDLを生成し、右物体検出装置51Rが取得した右物体APRに関する情報に基づいて右ガイド線GDRを生成する。
【0046】
例えば、ガイド線生成部50aは、図4に示すように、右監視範囲ZR内にある右物体APRの左端面LEと上端面UEとの間のエッジを表す仮想線が右ガイド線GDRとなるように右ガイド線GDRを生成する。なお、図4は、アスファルトフィニッシャ100の後方から見た右物体APRとしての舗装用型枠の概略斜視図であり、右物体検出装置51Rと右物体APRとの間の位置関係を概略的に示している。
【0047】
例えば、ガイド線生成部50aは、右物体検出装置51Rとしてのステレオカメラの出力に基づいて生成される右監視範囲ZRに関する距離画像を利用して右ガイド線GDRを生成する。距離画像は、二次元配列の画素群のそれぞれの画素値が右物体検出装置51Rからの距離で表されるデータセットである。
【0048】
ガイド線生成部50aは、距離画像を構成する画素のうち、左隣の画素値との差が所定の閾値以上となる画素を抽出し、抽出した複数の画素の配置から一本の直線を導き出す。一本の直線を導き出す方法は、ハフ変換等の任意の画像認識技術が利用され得る。
【0049】
なお、ガイド線生成部50aは、抽出した画素の位置がばらついてしまう部分については、平均化処理を施すことによってそれらの影響を排除してもよい。具体的には、二つの舗装用型枠が接する部分、又は、切削段差部の不整部分等に対応する画像部分でこのようなばらつきが発生する場合がある。
【0050】
所定の閾値は、この例では、舗装用型枠の高さに関する閾値THである。この場合、ガイド線生成部50aは、図4に示すように、閾値TH以上の高さH1を有する舗装用型枠である右物体APRの左上のエッジを表す仮想線を右ガイド線GDRとして生成できる。
【0051】
なお、閾値THは、実際に使用される舗装用型枠の高さに合わせて事前に設定できるように構成されていてもよい。実際に使用される舗装用型枠の高さに合わせて設定された閾値THの利用は、薄層型枠のエッジに基づくガイド線の生成を可能にする。また、実際に使用される舗装用型枠の高さに合わせて設定された閾値THの利用は、ガイド線生成部50aが舗装用型枠以外の地物の形状(エッジ)に基づいて誤ってガイド線を生成してしまうのを防止できる。
【0052】
なお、上述の説明は、右監視範囲ZRに関する距離画像から右ガイド線GDRを生成する処理に関するが、左監視範囲ZLに関する距離画像から左ガイド線GDLを生成する処理にも同様に適用される。
【0053】
また、物体検出装置51が単眼カメラである場合、上述の説明における「距離画像」は「画像」で読み替えられる。この場合、「画素値」は、距離ではなく、色情報等で表される。色情報は輝度であってもよい。
【0054】
操舵制御部50bは、操作装置に対する操作とは無関係に、アスファルトフィニッシャ100を自動操舵できるように構成されている。なお、操舵制御部50bは、アスファルトフィニッシャ100を自動操舵する際に、アスファルトフィニッシャ100の走行速度を制御できるように構成されていてもよい。
【0055】
スクリード伸縮制御部50cは、操作装置に対する操作とは無関係に、左右の伸縮可能な後側スクリード31を自動伸縮できるように構成されている。なお、スクリード伸縮制御部50cは、アスファルトフィニッシャ100を自動操舵する際に、アスファルトフィニッシャ100の走行速度に応じて自動制御できるように構成されていてもよい。
【0056】
本実施形態では、操舵制御部50bは、ガイド線生成部50aが生成したガイド線GDと基準線BLとに基づいて操舵装置53に対する操舵指令を生成する。操舵指令は、例えば、操舵方向に関する情報、及び、操舵量に関する情報を含む。操舵方向に関する情報は、例えば、右に操舵するか左に操舵するかに関する情報である。操舵量に関する情報は、例えば、操舵角に関する情報であり、典型的には、自動操舵を開始してから自動操舵を停止させるまでの操舵角の推移又は大きさ(目標操舵角)に関する情報である。操舵制御部50bは、走行速度センサS1によって検出されるアスファルトフィニッシャ100の走行速度の大きさに応じて操舵角に関する情報を決定してもよい。また、操舵指令は、例えば、操舵角速度(単位時間当たりの操舵角の増減率)に関する情報を含んでいてもよい。
【0057】
基準線BLは、操舵指令を生成する際に利用される仮想直線である。本実施形態では、基準線BLは、トラクタ1の車長方向(長手方向)を示す線である。これは、基準線BLが前輪6の軸(車軸)と直交する方向に設定されることを意味する。そして、操舵制御部50bは、この例では、ガイド線GDと基準線BLとを比較することによって操舵指令を生成するように構成されている。
【0058】
具体的には、操舵制御部50bは、ガイド線GDと基準線BLとの間のズレを認識し、認識したズレの大きさに基づいて操舵指令を生成する。より具体的には、操舵制御部50bは、図5に示すように、車幅方向における基準線BLとガイド線GDとの間の距離をズレ量DFとして算出する。また、操舵制御部50bは、基準線BLとガイド線GDとの間に形成される角度をズレ角θとして算出する。そして、操舵制御部50bは、ズレ量DF及びズレ角θをゼロに近づけることができる操舵指令、すなわち、基準線BLとガイド線GDとを一致させることができる操舵指令を生成する。
【0059】
なお、図5は、右物体検出装置51Rとしてのステレオカメラの出力に基づいて生成される距離画像DMの例を示す。図5は、ドットパターンが細かいほど距離が近いことを表している。具体的には、図5(A)は、アスファルトフィニッシャ100の車長方向と右物体APRとしての舗装用型枠の延在方向との間にズレが生じているときに取得される距離画像DMaの例を示す。図5(B)は、アスファルトフィニッシャ100の車長方向と右物体APRとしての舗装用型枠の延在方向とが一致しているときに取得される距離画像DMbの例を示す。
【0060】
操舵制御部50bは、例えば、図5(A)に示すような距離画像DMaが得られた場合に、適切な操舵指令を生成し、図5(B)に示すような距離画像DMaが得られるようにトラクタ1を自動操舵するように構成されている。
【0061】
また、スクリード伸縮制御部50cは、例えば、図5(A)に示すような距離画像DMaが得られた場合に、左右の伸縮可能な後側スクリード31の何れかに対して適切な伸縮指令を生成する。
【0062】
なお、図5では、距離画像DMにおける破線で表される縦に延びる中心線は、アスファルトフィニッシャ100(トラクタ1)の車長方向を表す基準線BLに対応している。また、図5では、距離画像DMにおける破線で表される横に延びる中心線は、アスファルトフィニッシャ100(トラクタ1)の車幅方向を表す横断線TLに対応している。そして、基準線BLと横断線TLとの交点である距離画像DMの中心点CPは、右物体検出装置51Rの中心の真下に位置する地面(路盤BSの表面)上の点に対応している。
【0063】
図5(A)に示す例では、基準線BLと右ガイド線GDRとの間のズレ量DFは、横断線TLと右ガイド線GDRとの交点である点P1と中心点CPとの間の距離で表され、値DFaとなっている。また、基準線BLと右ガイド線GDRとの間に形成されるズレ角θは値θaである。図5(B)では、ズレ量DF及びズレ角θは何れも値ゼロである。
【0064】
なお、この例では、ズレ量DFは、中心点CPの外側(右側)に点P1が位置する場合に正値となり、中心点CPの内側(左側)に点P1が位置する場合に負値となる。また、ズレ角θは、図5(A)に示すように基準線BLに関してガイド線GDが外側(右側)に傾いている場合に正値となり、基準線BLに関してガイド線GDが内側(左側)に傾いている場合に負値となる。
【0065】
そして、操舵制御部50bは、ズレ量DFが正値の場合、アスファルトフィニッシャ100が右方に移動するように、操舵装置53に対して操舵指令を出力する。同様に、操舵制御部50bは、ズレ量DFが負値の場合、アスファルトフィニッシャ100が左方に移動するように、操舵装置53に対して操舵指令を出力する。
【0066】
また、この例では、操舵制御部50bは、ズレ角θが正値の場合、アスファルトフィニッシャ100が右方に旋回するように、操舵装置53に対して操舵指令を出力する。同様に、操舵制御部50bは、ズレ角θが負値の場合、アスファルトフィニッシャ100が左方に旋回するように、操舵装置53に対して操舵指令を出力する。
【0067】
また、この例では、操舵制御部50bは、ズレ量DF及びズレ角θのそれぞれをゼロに近づけるためにトラクタ1を右旋回させることができる操舵指令を生成する。なお、この例では、右後側スクリード31Rの右端の位置は、新設舗装体NPの右側端面が基準線BLを含む鉛直平面に含まれるように調整される。そのため、操舵制御部50bは、ズレ量DFがゼロになるようにトラクタ1を自動操舵するように構成されている。
【0068】
更に、スクリード伸縮制御部50cは、物体検出装置51の位置に応じて伸縮可能な後側スクリード31の端部の位置を調整する。具体的には、スクリード伸縮制御部50cは、物体検出装置51を配置する伸縮部材TAの伸縮量に基づき、トラクタ1に対する物体検出装置51の位置を算出する。同様に、スクリード伸縮制御部50cは、後側スクリード31の伸縮量に基づき、トラクタ1に対するスクリード端部の位置を算出する。スクリード伸縮制御部50cは、算出した物体検出装置51の位置と、スクリード端部の位置と、伸縮部材TAと後側スクリード31との間の前後方向の長さとを用いて、物体検出装置51に対する後側スクリード31の端部の位置を算出する。そして、スクリード伸縮制御部50cは、検出される走行速度に基づき、物体検出装置51により検出された位置まで後側スクリード31の端部が到達する時間を算出する。そして、スクリード伸縮制御部50cは、操舵角に基づき物体検出装置51により検出された位置に到達する時点のアスファルトフィニッシャ100の姿勢を求め、後側スクリード31の端部の位置を算出し、後側スクリード31を伸縮制御する。このようにして、スクリード伸縮制御部50cは、物体APの配置位置が進行方向において左右に変化しても、後側スクリード31の端部を物体APの配置位置に追随させることができる。
【0069】
次に、図6を参照し、操舵指令を生成する別の方法について説明する。図6は、右物体検出装置51Rとしてのステレオカメラの出力に基づいて生成される距離画像DMの別の例を示す図であり、図5に対応している。なお、図6では、明瞭化のため、右物体APRの図示が省略されている。また、以下の説明は、右物体検出装置51Rの出力に基づいて生成される操舵指令に関するが、左物体検出装置51Lの出力に基づいて生成される操舵指令についても同様に適用される。
【0070】
図6において、X軸は、アスファルトフィニッシャ100の車長方向に対応している。Y軸は、アスファルトフィニッシャ100の車幅方向に対応している。前軸FXは、前輪6の車軸の延長線に対応している。すなわち、図6に示す例では、右物体検出装置51Rは、車長方向(X軸方向)において前軸FXよりも後側に位置するように配置されている。具体的には、右物体検出装置51Rは、距離画像DMの中心点CPが前軸FXよりも距離Lcだけ後側に位置するように配置されている。偏差(ズレ量DF)は、車幅方向(Y軸方向)における中心点CPとガイド線GDとの間の距離である。
【0071】
図6に示す例では、操舵制御部50bは、ガイド線生成部50aが生成したガイド線GDに基づいて操舵装置53に対する操舵指令(目標操舵角δ)を生成する。具体的には、操舵制御部50bは、目標位置TPと前軸FXとの間の距離X'に基づき、目標位置TPとX軸との間の距離Y'を算出する。
【0072】
距離X'は、事前に設定される値であり、制御感度パラメータとして機能する。但し、距離X'は、アスファルトフィニッシャ100の走行速度に応じて動的に設定されてもよい。この場合、距離X'は、典型的には、アスファルトフィニッシャ100の走行速度が大きいほど大きくなるように設定される。
【0073】
具体的には、操舵制御部50bは、以下の式(1)に基づいて距離Y'を算出する。より具体的には、操舵制御部50bは、ズレ量DF、距離X'、距離Lc、及びズレ角θに基づいて距離Y'を算出する。
【0074】
Y'=DF+(X'+Lc)×tanθ・・・(1)
その上で、操舵制御部50bは、以下の式(2)に基づいて目標操舵角δを算出する。目標操舵角δは、位置NDと目標位置TPとを結ぶ線分がX軸に対して形成する角度に相当する。位置NDは、X軸と前軸FXとの交点である。
【0075】
【数1】
そして、操舵制御部50bは、算出した目標操舵角δを用いて自動操舵を実行する。なお、操舵制御部50bは、右物体検出装置51Rの出力に基づいて目標操舵角δRを生成し、且つ、左物体検出装置51Lの出力に基づいて目標操舵角δLを生成できた場合には、目標操舵角δRと目標操舵角δLの平均値を最終的な目標操舵角δとして自動操舵を実行してもよい。すなわち、操舵制御部50bは、目標操舵角δRのみを生成できた場合には、目標操舵角δRを用いて自動操舵を実行してもよく、目標操舵角δLのみを生成できた場合には、目標操舵角δLを用いて自動操舵を実行してもよい。或いは、操舵制御部50bは、目標操舵角δR及び目標操舵角δLの双方を生成できた場合であっても、目標操舵角δR及び目標操舵角δLの何れか一方を用いて自動操舵を実行してもよい。また、操舵制御部50bは、何らかの理由により、目標操舵角δR及び目標操舵角δLを生成できない場合には、自動操舵を停止させてもよい。また、操舵制御部50bは、自動操舵を停止させた後で、目標操舵角δR及び目標操舵角δLの少なくとも一方の生成が再開された場合には、自動操舵を再開させてもよい。
【0076】
また、操舵制御部50bは、左ガイド線GDLのズレ量DFと右ガイド線GDRのズレ量DFとの平均値である平均ズレ量を算出し、且つ、左ガイド線GDLのズレ角θと右ガイド線GDRのズレ角θとの平均値である平均ズレ角を算出した上で、平均ズレ量及び平均ズレ角に基づいて平均ガイド線を導き出してもよい。この平均ガイド線は、施工幅の仮想中心線に相当する。その上で、操舵制御部50bは、この平均ガイド線に基づいて目標操舵角δを算出してもよい。
【0077】
次に、図7及び図8を参照し、ガイド線生成部50aがガイド線GDを生成する処理の別の例について説明する。図7は、右物体検出装置51Rとしてのステレオカメラの出力に基づいて生成される距離画像DMの例を示す。具体的には、図7(A)は、時刻t0において生成された距離画像DM0を示し、図7(B)は、時刻t0から所定時間が経過した後の時刻t1において生成された距離画像DM1を示し、図7(C)は、時刻t1から所定時間が経過した後の時刻t2において生成された距離画像DM2を示し、図7(D)は、時刻t2から所定時間が経過した後の時刻t3において生成された距離画像DM3を示している。なお、図7では、明瞭化のため、図5では図示されていた基準線BL及び横断線TLの図示が省略されている。
【0078】
図8は、右に湾曲する道路を舗装しようとしているアスファルトフィニッシャの上面図である。具体的には、図8は、アスファルトフィニッシャ100の中心線CLを点線で示している。また、図8は、現時点である時刻t0において、アスファルトフィニッシャ100の中心線CLと新設舗装体NPの幅の中心とが一致していることを表している。
【0079】
また、図8は、時刻t0において生成される距離画像DM0に対応する右監視範囲ZR0、及び、時刻t3において生成される距離画像DM3に対応する右監視範囲ZR3を破線で表している。なお、図8では、明瞭化のため、物体検出装置51及び取り付け部材60の図示が省略されている。また、時刻t1において生成される距離画像DM1に対応する右監視範囲ZR1(図示せず。)、及び、時刻t2において生成される距離画像DM2に対応する右監視範囲ZR2(図示せず。)は、実際には右監視範囲ZR0と右監視範囲ZR3との間に位置しているが、図8では、明瞭化のため、それらの図示が省略されている。
【0080】
なお、図7及び図8に示す例では、説明の便宜のため、アスファルトフィニッシャ100は、距離画像DM3が生成されるまでは直進を継続しているが、実際には、距離画像DMが生成される度に自動操舵され得る。
【0081】
時刻t0では、ガイド線生成部50aは、図7(A)に示すように、距離画像DM0に基づき、右物体APRの一つである舗装用型枠APR1の左上のエッジに対応する右ガイド線GDRを生成する。そして、操舵制御部50bは、基準線BLと右ガイド線GDRとの間のズレ量DFの値DF0を算出し、且つ、基準線BLと右ガイド線GDRとの間に形成されるズレ角θの値ゼロを算出する。そのため、時刻t0では、操舵制御部50bは、トラクタ1を右方向又は左方向に旋回させるような操舵指令を生成することなく、トラクタ1の直進を継続させる。
【0082】
時刻t1では、ガイド線生成部50aは、図7(B)に示すように、距離画像DM1に基づき、右物体APRの一つである舗装用型枠APR1の左上のエッジに対応する右暫定ガイド線PG1を生成し、且つ、右物体APRの別の一つである舗装用型枠APR2の左上のエッジに対応する右暫定ガイド線PG2を生成する。舗装用型枠APR2は、舗装用型枠APR1に隣接して配置される舗装用型枠であり、右に湾曲する道路に合わせ、舗装用型枠APR1に対して傾斜するように配置されている。すなわち、図7及び図8に示す右物体APRは、舗装用型枠APR1と舗装用型枠APR2との間の接点で屈曲するように設置されている。
【0083】
右暫定ガイド線PG1は、舗装用型枠APR1のうちの右監視範囲ZR1(図示せず。)内に入っている部分の左上のエッジに対応する仮想線であり、図7(B)では一点鎖線で表されている。同様に、右暫定ガイド線PG2は、舗装用型枠APR2のうちの右監視範囲ZR1(図示せず。)内に入っている部分の左上のエッジに対応する仮想線であり、図7(B)では一点鎖線で表されている。
【0084】
右暫定ガイド線PG1を生成した場合、ガイド線生成部50aは、右暫定ガイド線PG1の中点BM1を算出する。同様に、右暫定ガイド線PG2を生成した場合、ガイド線生成部50aは、右暫定ガイド線PG2の中点FM1を算出する。
【0085】
その上で、ガイド線生成部50aは、中点BM1及び中点FM1を通る仮想線を右ガイド線GDR1として生成する。そして、操舵制御部50bは、基準線BLと右ガイド線GDR1との間のズレ量DFの値DF1(>値ゼロ)を算出し、且つ、基準線BLと右ガイド線GDR1との間に形成されるズレ角θの値θ1(>値ゼロ)を算出する。この時点において、操舵制御部50bは、ズレ量DFとズレ角θとに基づき、右ガイド線GDR1を基準線BLに一致させるための操舵指令を生成できる。
【0086】
時刻t2では、ガイド線生成部50aは、図7(C)に示すように、距離画像DM2に基づき、舗装用型枠APR1の左上のエッジに対応する右暫定ガイド線PG1を生成し、且つ、舗装用型枠APR2の左上のエッジに対応する右暫定ガイド線PG2を生成する。
【0087】
右暫定ガイド線PG1は、舗装用型枠APR1のうちの右監視範囲ZR2(図示せず。)内に入っている部分の左上のエッジに対応する仮想線であり、図7(C)では一点鎖線で表されている。同様に、右暫定ガイド線PG2は、舗装用型枠APR2のうちの右監視範囲ZR2(図示せず。)内に入っている部分の左上のエッジに対応する仮想線であり、図7(C)では一点鎖線で表されている。なお、右暫定ガイド線PG1は、図7(B)のときと比べて短くなっており、右暫定ガイド線PG2は、図7(B)のときと比べて長くなっている。
【0088】
右暫定ガイド線PG1を生成した場合、ガイド線生成部50aは、右暫定ガイド線PG1の中点BM2を算出する。同様に、右暫定ガイド線PG2を生成した場合、ガイド線生成部50aは、右暫定ガイド線PG2の中点FM2を算出する。
【0089】
その上で、ガイド線生成部50aは、中点BM2及び中点FM2を通る仮想線を右ガイド線GDR2として生成する。そして、操舵制御部50bは、基準線BLと右ガイド線GDR2との間のズレ量DFの値DF2(>値DF1)を算出し、且つ、基準線BLと右ガイド線GDR2との間に形成されるズレ角θの値θ2(>値θ1)を算出する。この時点において、操舵制御部50bは、ズレ量DFとズレ角θとに基づき、右ガイド線GDR2を基準線BLに一致させるための操舵指令を生成できる。
【0090】
時刻t3では、ガイド線生成部50aは、図7(D)に示すように、距離画像DM3に基づき、舗装用型枠APR1の左上のエッジに対応する右暫定ガイド線PG1を生成し、且つ、舗装用型枠APR2の左上のエッジに対応する右暫定ガイド線PG2を生成する。
【0091】
右暫定ガイド線PG1は、舗装用型枠APR1のうちの右監視範囲ZR3(図8参照。)内に入っている部分の左上のエッジに対応する仮想線であり、図7(D)では一点鎖線で表されている。同様に、右暫定ガイド線PG2は、舗装用型枠APR2のうちの右監視範囲ZR3(図8参照。)内に入っている部分の左上のエッジに対応する仮想線であり、図7(D)では一点鎖線で表されている。なお、右暫定ガイド線PG1は、図7(C)のときと比べて短くなっており、右暫定ガイド線PG2は、図7(C)のときと比べて長くなっている。
【0092】
右暫定ガイド線PG1を生成した場合、ガイド線生成部50aは、右暫定ガイド線PG1の中点BM3を算出する。同様に、右暫定ガイド線PG2を生成した場合、ガイド線生成部50aは、右暫定ガイド線PG2の中点FM3を算出する。
【0093】
その上で、ガイド線生成部50aは、中点BM3及び中点FM3を通る仮想線を右ガイド線GDR3として生成する。そして、操舵制御部50bは、基準線BLと右ガイド線GDR3との間のズレ量DFの値DF3(>値DF2)を算出し、且つ、基準線BLと右ガイド線GDR3との間に形成されるズレ角θの値θ3(>値θ2)を算出する。この時点において、操舵制御部50bは、ズレ量DFとズレ角θとに基づき、右ガイド線GDR3を基準線BLに一致させるための操舵指令を生成できる。
【0094】
このように、ガイド線生成部50aは、物体APが屈曲している場合であっても、二つの暫定ガイド線を生成することにより、それぞれの中点を通る一本のガイド線GDを生成できる。なお、ガイド線生成部50aは、三つ以上の暫定ガイド線を生成し、三つ以上の暫定ガイド線のそれぞれの中点の位置に基づいて一本のガイド線GDを生成してもよい。
【0095】
また、上述の例では、ガイド線GDは、直線となるように生成されているが、曲線として生成されてもよい。
【0096】
また、図5図8を参照する上述の説明は、アスファルトフィニッシャ100の前進に応じて新設舗装体NPの幅が変化しない場合の操舵制御部50bによる処理に関する。すなわち、上述の説明は、左ガイド線GDLと右ガイド線GDRとが略平行に延びる場合の操舵制御部50bによる処理に関する。アスファルトフィニッシャ100の前進に応じて新設舗装体NPの幅が変化する場合、操舵制御部50bは、右ガイド線GDRと基準線BLとの間のズレ角θを値ゼロに近づけるようにトラクタ1を自動操舵すると、左ガイド線GDLと基準線BLとの間のズレ角θを値ゼロに近づけることができないためである。
【0097】
そのため、アスファルトフィニッシャ100の前進に応じて新設舗装体NPの幅が変化する場合には、操舵制御部50bは、後側スクリード31を自動的に伸縮させながら、トラクタ1を自動操舵するように構成されていてもよい。例えば、図9に示すように、舗装しようとしている道路が左側に拡幅する部分(クロスパターンで表される拡幅部WD)を有する場合、操舵制御部50bは、後側スクリード31を自動的に伸縮させながら、トラクタ1を自動操舵するように構成されていてもよい。
【0098】
図9は、舗装現場の上面図である。具体的には、図9は、拡幅部WDを含まない幅W1の舗装予定領域の中心線L1を一点鎖線で示し、拡幅部WDを含む幅W2の舗装予定領域の中心線L2を二点鎖線で示している。また、図9は、このような舗装予定領域を適切に舗装するためにアスファルトフィニッシャ100の中心点が辿るべき軌道TRを太実線で示している。また、図9は、拡幅部WDが第1拡幅部WD1~第3拡幅部WD3を含むことを示している。第1拡幅部WD1は、舗装幅が拡がっていく部分であり、第2拡幅部WD2は、舗装幅が維持される部分であり、第3拡幅部WD3は、舗装幅が狭まっていく部分である。なお、図9では、明瞭化のため、物体検出装置51及び取り付け部材60の図示が省略されている。
【0099】
具体的には、図9は、ブロック矢印AR10で表される位置に後側スクリード31の前端が達したときに、物体検出装置51が検出する左側地物(左物体APL)及び右側地物(右物体APR)の位置に応じてコントローラ50が左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rを伸張させながらアスファルトフィニッシャ100を車幅方向の左側(+Y側)に移動させることで第1拡幅部WD1が適切に舗装されることを示している。また、図9は、ブロック矢印AR11で表される位置に後側スクリード31の前端が達したときに、コントローラ50が後側スクリード31の伸張を停止させた上でアスファルトフィニッシャ100を直進させることで第2拡幅部WD2が適切に舗装されることを示している。この際、コントローラ50は、物体検出装置51の検出値に基づいて左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rの端部を検出してもよい。また、アスファルトフィニッシャ100は、左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rの端部を検出するために、物体検出装置51とは別の物体検知装置を備えていてもよい。
【0100】
また、図9は、ブロック矢印AR12で表される位置に後側スクリード31の前端が達したときに、物体検出装置51が検出する左側地物及び右側地物の位置に応じてコントローラ50が左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rを収縮させながらアスファルトフィニッシャ100を車幅方向の右側(-Y側)に移動させることで第3拡幅部WD3が適切に舗装されることを示している。
【0101】
また、図9は、ブロック矢印AR13で表される位置に後側スクリード31の前端が達したときに、コントローラ50が後側スクリード31の収縮を停止させた上でアスファルトフィニッシャ100を直進させることで、拡幅部WDを含まない幅W1の舗装予定領域が適切に舗装されることを示している。
【0102】
図9に示すような例においても、ガイド線生成部50aは、右物体検出装置51Rの出力に基づいて生成した距離画像に基づいて右ガイド線GDRを生成し、且つ、左物体検出装置51Lの出力に基づいて生成した距離画像に基づいて左ガイド線GDLを生成する。
【0103】
その後、コントローラ50は、左ガイド線GDL及び右ガイド線GDRのそれぞれに関する情報に基づき、舗装予定領域の全幅を算出する。操舵制御部50bは、算出した全幅の推移に基づいて舗装予定領域の幅が変化しているか否かを判定できる。更に、コントローラ50は、物体検出装置51が検出する左側地物及び右側地物の位置に基づきガイド線GDを生成し、生成したガイド線GDに基づいてスクリード3を伸縮させてもよい。この場合、コントローラ50は、自動操舵を実行することなく、後側スクリード31を伸縮させてもよい。或いは、コントローラ50は、偏差(ズレ量DF)の時系列データとトラクタ1の走行軌跡の予測結果とに基づいて後側スクリード31を伸縮させてもよい。また、コントローラ50は、物体検出装置51の検出値に基づいて左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rの端部の位置を検出してもよく、スクリード伸縮量センサの検出値に基づいて左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rの端部の位置を検出してもよい。
【0104】
コントローラ50は、伸縮可能な取り付け部材60の伸縮量を検出するセンサの出力に基づいて舗装予定領域の全幅を算出するように構成されていてもよい。この場合、コントローラ50は、例えば、距離画像DMの中心点CPがガイド線GD上に位置するように取り付け部材60を自動的に伸縮させるように構成されていてもよい。そして、コントローラ50は、取り付け部材60の伸縮量を検出するセンサの出力に基づき、トラクタ1と物体検出装置51の中心点との間の距離を算出してもよい。そして、コントローラ50は、予め記憶されているトラクタ1の全幅に関する情報と、トラクタ1の左端と左物体検出装置51Lの中心点との間の距離に関する情報と、トラクタ1の右端と右物体検出装置51Rの中心点との間の距離に関する情報と、に基づいて舗装予定領域の全幅を算出してもよい。
【0105】
或いは、物体検出装置51がトラクタ1に直接取り付けられている場合には、コントローラ50は、物体検出装置51が検出する物体検出装置51と物体AP(地物)との間の距離に基づいて舗装予定領域の全幅を算出してもよい。具体的には、コントローラ50は、予め記憶されているトラクタ1の全幅に関する情報と、左物体検出装置51Lが検出する左物体検出装置51Lと左物体APL(左側地物)との間の距離に関する情報と、右物体検出装置51Rが検出する右物体検出装置51Rと右物体APR(右側地物)との間の距離に関する情報と、に基づいて舗装予定領域の全幅を算出してもよい。
【0106】
そして、舗装予定領域の幅が変化していると判定した場合、操舵制御部50bは、舗装予定領域の中央にアスファルトフィニッシャ100が位置するようにトラクタ1を自動操舵する。具体的には、操舵制御部50bは、アスファルトフィニッシャ100の中心点が軌道TR(図9参照。)を辿るようにトラクタ1を自動操舵する。軌道TRは、舗装予定領域の幅の中点が描く線である。
【0107】
また、コントローラ50は、左後側スクリード31Lの左端と舗装予定領域の左端とが一致するように左後側スクリード31Lを伸縮させ、且つ、右後側スクリード31Rの右端と舗装予定領域の右端とが一致するように右後側スクリード31R伸縮させてもよい。この場合、コントローラ50は、左後側スクリード31Lの伸縮量(張り出し量)と右後側スクリード31Rの伸縮量(張り出し量)とが等しくなるように左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rを伸縮させてもよい。新設舗装体NPの密度が全幅にわたって均一となり新設舗装体NPの平坦性の確保が可能となるためである。
【0108】
また、コントローラ50は、操舵角から算出されるアスファルトフィニッシャ100の内外輪差、及び、物体検出装置51と後側スクリード31との間の距離等の少なくとも一つを追加的に考慮して後側スクリード31の伸縮量を制御するように構成されていてもよい。この構成により、コントローラ50は、新設舗装体NPの幅を高精度に調整することができ、新設舗装体NPの端部の品質を向上させることができる。また、この構成により、コントローラ50は、新設舗装体NPの端部の厚みを調整する作業を不要とし、舗装作業に携わる作業者の人数の削減をもたらすことができる。
【0109】
上述のように、本発明の実施形態に係るアスファルトフィニッシャ100は、トラクタ1と、トラクタ1の前側に設置されて舗装材を受け入れるホッパ2と、ホッパ2内の舗装材PVをトラクタ1の後側へ給送するコンベアCVと、コンベアCVにより給送された舗装材PVをトラクタ1の後側で敷き拡げるスクリュSCと、スクリュSCにより敷き拡げられた舗装材PVをスクリュSCの後側で敷き均すスクリード3と、施工対象の地面の所定範囲内にある地物に関する情報を取得する物体検出装置51と、地物の変化に基づいて目標線としてのガイド線GDを生成し、ガイド線GDに基づいてトラクタ1を操舵する制御装置としてのコントローラ50と、を備えている。
【0110】
コントローラ50は、地物の変化に基づいて目標線としてのガイド線GDを生成し、ガイド線GDとトラクタ1の車長方向を示す基準線BLとに基づいてトラクタ1を操舵してもよい。なお、トラクタ1の車長方向は、トラクタ1の車幅方向に垂直な方向である。
【0111】
所定範囲は、基準点を中心として所定の前後幅と所定の左右幅を有する範囲である。基準点は、現時点における操舵指令の内容を決定する際の基準となる点であり、例えば、距離画像DMの中心点CPである。
【0112】
所定の前後幅は、車長方向の前方の舗装幅に関する情報を事前に得られるようにするために設定される。前後幅(特に基準点の前方にある範囲の前後幅)が大きいほど、コントローラ50は、より前方の舗装幅に関する情報を事前に取得できる。また、所定の左右幅も、車長方向の前方の舗装幅に関する情報を事前に得られるようにするために設定される。左右幅(特に基準点の前方にある範囲の左右幅)が大きいほど、コントローラ50は、前方の舗装幅に関する情報をより正確に取得できる。この構成は、前方の舗装幅の変化を考慮したより適切な自動操舵を可能にする。
【0113】
地物は、例えば、路盤BSと路盤BSの外側にある物体APとを含む。物体APは、例えば、舗装用型枠、L形側溝ブロック、縁石ブロック、又は既設舗装体等である。地物は、地面に描かれた線、地面に貼り付けられたテープ、又は、地面に沿って張られた糸等のほとんど厚みのない地物であってもよい。地物に関する情報は、例えば、物体検出装置51によって非接触で検出される地物の性状であり、地物の高さ、地物の表面の色、又は地物の表面の反射率等である。地物の変化は、例えば、地物の高さの変化、地物の表面の色の変化、地物の形状の変化、又は、地物の表面の反射率の変化等である。地物の形状は、例えば、連続する帯状の形状である。
【0114】
コントローラ50は、例えば、物体検出装置51の出力に基づいて距離画像を生成し、その距離画像において、地物の高さが変化する位置(例えば、舗装用型枠のエッジがある位置)を導き出してガイド線GDを生成できる。そして、コントローラ50は、例えば、距離画像におけるガイド線GDと基準線BLとが一致するようにトラクタ1を自動操舵できる。
【0115】
この構成により、コントローラ50は、トラクタ1をより適切に自動操舵できる。そのため、この構成は、舗装作業に携わる作業者の人数を低減でき、ひいては、舗装作業に掛かる費用を低減させることができる。また、この構成は、作業者の熟練度による影響を受けることなく、舗装作業が適切に行われることを可能にする。すなわち、この構成は、施工品質の均一化を図ることができ、更には、施工品質の向上、及び、高い施工品質の維持を図ることができる。
【0116】
コントローラ50は、例えば、車幅方向におけるガイド線GDと基準線BLとの間の距離(ズレ量DF)、及び、ガイド線GDと基準線BLとの間に形成される角度(ズレ角θ)の少なくとも一つに基づき、ガイド線GDと基準線BLとが一致するようにトラクタ1を操舵するように構成されていてもよい。
【0117】
この構成により、コントローラ50は、トラクタ1をより適切に自動操舵できる。ズレ量DFは、現時点における舗装体と舗装用型枠とのズレを表し、ズレ角θは、未来の時点における舗装体と舗装用型枠とのズレを表しているためである。すなわち、コントローラ50は、現時点におけるズレを解消するためにトラクタ1を自動操舵できるばかりでなく、未来の時点におけるズレを事前に解消するためにトラクタ1を自動操舵できるためである。
【0118】
また、真っ直ぐな道路を舗装する場合において、ズレ量DF及びズレ角θに基づいてトラクタ1を自動操舵することは、ズレ量DFのみに基づいてトラクタ1を自動操舵することに比べ、トラクタ1の直進性を高めることができる。或いは、湾曲する道路を舗装する場合においても、ズレ量DF及びズレ角θに基づいてトラクタ1を自動操舵することは、ズレ量DFのみに基づいてトラクタ1を自動操舵することに比べ、道路の湾曲に対するトラクタ1の追従性を高めることができる。コントローラ50は、ズレが発生する前に、ズレの発生を未然に防止するための自動操舵を実行できるためである。
【0119】
コントローラ50は、例えば、地物が屈曲する場合、その屈曲の前後における地物に関する情報に基づいてガイド線GDを生成するように構成されていてもよい。具体的には、コントローラ50は、例えば図8に示すように、地物としての右物体APRが、その構成要素である舗装用型枠APR1と舗装用型枠APR2との間の接点のところで屈曲する場合、図7に示すように、その屈曲の前にある舗装用型枠APR1に関する情報と、その屈曲の後にある舗装用型枠APR2に関する情報とに基づいてガイド線GDを生成してもよい。この構成により、コントローラ50は、ガイド線GDの基礎となり得る地物が屈曲或いは湾曲している場合であっても、適切なガイド線GDを生成できる。そのため、コントローラ50は、舗装予定領域が前方で湾曲している場合であっても、トラクタ1を適切に自動操舵できる。
【0120】
上述の地物の変化は、例えば、地物の高さの変化であってもよい。この場合、コントローラ50は、閾値TH以上の高さを有する地物の形状に基づいてガイド線GDを生成してもよい。そして、閾値THは、変更可能に設定されていてもよい。この構成により、コントローラ50は、閾値TH未満の高さを有する地物の形状に基づいてガイド線GDが誤って生成されてしまうのを防止できる。
【0121】
コントローラ50は、トラクタ1の右側にある地物の変化と、トラクタ1の左側にある地物の変化とに基づいて施工幅を算出するように構成されていてもよい。なお、施工幅は、例えば、舗装予定領域の全幅である。例えば、コントローラ50は、トラクタ1の左側にある地物の高さが変化する部分(路盤BSと左物体APLとの境界)の位置と、トラクタ1の右側にある地物の高さが変化する部分(路盤BSと右物体APRとの境界)の位置とに基づいて施工幅を算出するように構成されていてもよい。この構成により、コントローラ50は、舗装予定領域の全幅を正確に把握できる。
【0122】
そして、コントローラ50は、施工幅の中心にトラクタ1の中心が位置するようにトラクタ1を操舵するように構成されていてもよい。この構成により、コントローラ50は、例えば、左後側スクリード31Lの伸縮量と右後側スクリード31Rの伸縮量とをほぼ同じにすることができる。そのため、コントローラ50は、アスファルトフィニッシャ100の走行性(直進性)を高めることができる。
【0123】
コントローラ50は、地物の変化に基づいて目標線を生成し、その目標線に基づいてスクリード3を伸縮させるように構成されていてもよい。この構成により、コントローラ50は、スクリード3をより適切に伸縮できる。そのため、この構成は、舗装作業に携わる作業者の人数を低減でき、ひいては、舗装作業に掛かる費用を低減させることができる。また、この構成は、作業者の熟練度による影響を受けることなく、舗装作業が適切に行われることを可能にする。すなわち、この構成は、施工品質の均一化を図ることができ、更には、施工品質の向上、及び、高い施工品質の維持を図ることができる。
【0124】
以上、本発明の好ましい実施形態が説明された。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に限定されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形又は置換等が適用され得る。また、上述の実施形態を参照して説明された特徴のそれぞれは、技術的に矛盾しない限り、適宜に組み合わされてもよい。
【0125】
例えば、上述の実施形態では、操舵装置53は、フロントアクスルの近くに設置された前輪操舵シリンダを伸縮させるように構成されているが、前輪操舵シリンダの代わりに油圧操舵モータが採用される場合には、油圧操舵モータを回転させるように構成されていてもよい。この場合、操舵装置53は、油圧ポンプから油圧操舵モータに流れる作動油の流量を制御する操舵用電磁制御弁を含む。操舵用電磁制御弁は、操作装置としてのステアリングホイールSH(ハンドル)の回転に応じて油圧操舵モータにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。また、操舵用電磁制御弁は、コントローラ50からの操舵指令に応じ、ステアリングホイールSHの回転とは無関係に、油圧操舵モータにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。或いは、操舵装置53は、ステアリングホイールSHを自動的に回転させる電動モータを制御するように構成されていてもよい。この場合、操舵装置は、コントローラ50からの操舵指令に応じ、ステアリングホイールSHを自動的に回転させることで、アスファルトフィニッシャ100を自動的に操舵できる。
【符号の説明】
【0126】
1・・・トラクタ 1S・・・運転席 2・・・ホッパ 3・・・スクリード 3A・・・レベリングアーム 3AL・・・左レベリングアーム 3AR・・・右レベリングアーム 5・・・後輪 6・・・前輪 30・・・前側スクリード 30L・・・左前側スクリード 30R・・・右前側スクリード 31・・・後側スクリード 31L・・・左後側スクリード 31R・・・右後側スクリード 43・・・モールドボード 50・・・コントローラ 50a・・・ガイド線生成部 50b・・・操舵制御部 50c・・・スクリード伸縮制御部 51・・・物体検出装置 51L・・・左物体検出装置 51R・・・右物体検出装置 52・・・車載表示装置 53・・・操舵装置 60・・・取り付け部材 60L・・・左取り付け部材 60R・・・右取り付け部材 100・・・アスファルトフィニッシャ AP・・・物体 APL・・・左物体 APR・・・右物体 APR1、APR2・・・舗装用型枠 BS・・・路盤 CL・・・中心線 CV・・・コンベア DM、DMa、DMb、DM0~DM3・・・距離画像 DS・・・自動操舵システム GD・・・ガイド線 GDL・・・左ガイド線 GDR・・・右ガイド線 L1、L2・・・中心線 NP・・・新設舗装体 PV・・・舗装材 S1・・・走行速度センサ SB、SBa・・・回動部材 SC・・・スクリュ SH・・・ステアリングホイール TA・・・伸縮部材 TR・・・軌道 WD・・・拡幅部 WD1・・・第1拡幅部 WD2・・・第2拡幅部 WD3・・・第3拡幅部 ZL・・・左監視範囲 ZR、ZR1、ZR3・・・右監視範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9