(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154944
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】道路機械の制御システム
(51)【国際特許分類】
E01C 19/48 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
E01C19/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064600
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】寺元 陶太
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052BD03
2D052BD11
2D052CA03
2D052CA04
2D052CA05
(57)【要約】
【課題】アスファルトフィニッシャの進行方向をより適切に決定できる制御システムを提供すること。
【解決手段】トラクタ1と、トラクタ1の前方に設置されて舗装材PVを受け入れるホッパ2と、ホッパ2内の舗装材PVをトラクタ1の後方へ給送するコンベアCVと、コンベアCVにより給送された舗装材PVをトラクタ1の後方で敷き拡げるスクリュSCと、スクリュSCにより敷き拡げられた舗装材PVをスクリュSCの後方で敷き均すスクリード3と、を備えるアスファルトフィニッシャ100の制御システムDSは、トラクタ1よりも前方に位置する施工対象範囲の境界線(前方境界線FB)を定める地物(物体AP)に関する情報に基づいてトラクタ1の走行軌道RPを設定するコントローラ50を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタと、前記トラクタの前方に設置されて舗装材を受け入れるホッパと、前記ホッパ内の舗装材を前記トラクタの後方へ給送するコンベアと、前記コンベアにより給送された前記舗装材を前記トラクタの後方で敷き拡げるスクリュと、前記スクリュにより敷き拡げられた前記舗装材を前記スクリュの後方で敷き均すスクリードと、を備える道路機械の制御システムであって、
前記トラクタよりも前方に位置する施工対象範囲の境界線を定める地物に関する情報に基づいて前記トラクタの走行軌道を設定する制御装置を有する、
道路機械の制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記トラクタの進行方向を制御することにより、設定した走行軌道に沿って前記トラクタを進行させる、
請求項1に記載の道路機械の制御システム。
【請求項3】
前記施工対象範囲の境界線は、前記施工対象範囲の左側の境界線と前記施工対象範囲の右側の境界線とを含む、
請求項1又は2に記載の道路機械の制御システム。
【請求項4】
前記施工対象範囲の境界線を定める地物に関する情報は、当該道路機械の外部にある空間認識装置の出力に基づいて生成される、
請求項1に記載の道路機械の制御システム。
【請求項5】
前記施工対象範囲の境界線を定める地物に関する情報は、当該道路機械に搭載された空間認識装置の出力に基づいて生成される、
請求項1に記載の道路機械の制御システム。
【請求項6】
前記空間認識装置は、前記道路機械と前記道路機械の前方に位置する運搬車両との間の距離を前記制御装置が算出できるように構成されている、
請求項4又は5に記載の道路機械の制御システム。
【請求項7】
前記空間認識装置は、前記道路機械の周囲に位置する物体を前記制御装置が検出できるように構成されている、
請求項4又は5に記載の道路機械の制御システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記施工対象範囲の境界線を定める地物に関する情報に基づいて前記トラクタの進行方向を決定するように構成されている、
請求項1に記載の道路機械の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、道路機械の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体の右側において車幅方向に隣接して並べられた二つの光センサによって真下にある舗装用型枠を検出しながら車体の進行方向を制御するアスファルトフィニッシャが知られている(特許文献1参照)。具体的には、アスファルトフィニッシャは、左側の光センサが舗装用型枠を検出しているが右側の光センサが舗装用型枠を検出していない場合に車体を左側に寄せるように、且つ、左側の光センサが舗装用型枠を検出していないが右側の光センサが舗装用型枠を検出している場合に車体を右側に寄せるように車体の進行方向を変化させる。舗装用型枠に沿って移動できるようにするためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この構成では、アスファルトフィニッシャは、直線的な道路を施工する場合であっても蛇行してしまうおそれがある。車幅方向における光センサの位置と舗装用型枠の位置との間のズレを検出した後でそのズレが解消されるように車体の進行方向を変化させるためである。
【0005】
そこで、アスファルトフィニッシャ等の道路機械の進行方向をより適切に決定できる道路機械の制御システムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態に係る道路機械の制御システムは、トラクタと、前記トラクタの前方に設置されて舗装材を受け入れるホッパと、前記ホッパ内の舗装材を前記トラクタの後方へ給送するコンベアと、前記コンベアにより給送された前記舗装材を前記トラクタの後方で敷き拡げるスクリュと、前記スクリュにより敷き拡げられた前記舗装材を前記スクリュの後方で敷き均すスクリードと、を備える道路機械の制御システムであって、前記トラクタよりも前方に位置する施工対象範囲の境界線を定める地物に関する情報に基づいて前記トラクタの走行軌道を設定する制御装置を有する。
【発明の効果】
【0007】
上述の制御システムは、道路機械の進行方向をより適切に決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】目標設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】走行軌道生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】搬送量調整処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】短い拡幅部を有する道路を含む施工現場の上面図である。
【
図9】長い拡幅部を有する道路を含む施工現場の上面図である。
【
図10】アスファルトフィニッシャの別の構成例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本開示の実施形態に係る道路機械の一例であるアスファルトフィニッシャ100の側面図である。
図2はアスファルトフィニッシャ100の上面図である。図示例では、アスファルトフィニッシャ100は、ホイール式アスファルトフィニッシャであり、主に、トラクタ1、ホッパ2、及びスクリード3で構成されている。以下では、トラクタ1から見たホッパ2の方向(+X方向)を前方とし、トラクタ1から見たスクリード3の方向(-X方向)を後方とする。
【0010】
トラクタ1は、アスファルトフィニッシャ100を移動させるための機構である。図示例では、トラクタ1は、後輪走行用油圧モータを用いて後輪5を回転させ、且つ、前輪走行用油圧モータを用いて前輪6を回転させてアスファルトフィニッシャ100を移動させる。後輪走行用油圧モータ及び前輪走行用油圧モータは油圧ポンプから作動油の供給を受けて回転する。但し、前輪6は従動輪であってもよい。
【0011】
アスファルトフィニッシャ100は、クローラ式アスファルトフィニッシャであってもよい。この場合、後輪5及び前輪6の組み合わせは左クローラ及び右クローラの組み合わせで置き換えられる。
【0012】
ホッパ2は、舗装材PVを受け入れるための機構である。図示例では、ホッパ2は、トラクタ1の前方に設置され、ホッパシリンダによって車幅方向(Y軸方向)に開閉できるように構成されている。アスファルトフィニッシャ100は、通常、ホッパ2が全開状態のときにダンプトラックの荷台から舗装材PV(例えばアスファルト混合物である。)を受け入れる。ダンプトラックは、舗装材PVを運搬する運搬車両の一例である。
図1及び
図2はホッパ2が全開状態であることを示す。施工中にホッパ2内の舗装材PVが減少するとアスファルトフィニッシャ100の操作者はホッパ2を閉じてホッパ2の内壁付近にあった舗装材PVをホッパ2の中央部に集める。ホッパ2の中央部にあるコンベアCVがトラクタ1の後方に舗装材PVを給送できるようにするためである。コンベアCVによってトラクタ1の後方に給送された舗装材PVは、スクリュSCによってトラクタ1の後ろ且つスクリード3の前で車幅方向に敷き拡げられる。
【0013】
コンベアCV及びスクリュSCは、舗装材PVを搬送する搬送装置の例である。図示例では、スクリュSCは、アスファルトフィニッシャ100の前後軸AXの左方に舗装材PVを敷き拡げるための左スクリュSCLと、前後軸AXの右方に舗装材PVを敷き拡げるための右スクリュSCRと、を含む。また、コンベアCVは、左スクリュSCLに向けて舗装材PVを搬送するための左コンベアCVLと、右スクリュSCRに向けて舗装材PVを搬送するための右コンベアCVRと、を含む。すなわち、搬送装置は、左コンベアCVL及び左スクリュSCLを含む左搬送装置と、右コンベアCVR及び右スクリュSCRを含む右搬送装置と、を含む。
【0014】
図1及び
図2では、明瞭化のため、ホッパ2内にある舗装材PVの図示が省略され、スクリュSCによって敷き拡げられた舗装材PVが粗いドットパターンで示され、スクリード3によって敷き均された新設舗装体NPが細かいドットパターンで示されている。
【0015】
スクリード3は、舗装材PVを敷き均すための機構である。図示例では、スクリード3は、前側スクリード30及び後側スクリード31を含む。前側スクリード30は、左前側スクリード30L及び右前側スクリード30Rを含む。後側スクリード31は、車幅方向に伸縮可能なスクリードであり、左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rを含む。具体的には、後側スクリード31は、スクリード3内に設置されたスクリード伸縮シリンダ7によって伸縮される。より具体的には、スクリード伸縮シリンダ7は、左スクリード伸縮シリンダ7L及び右スクリード伸縮シリンダ7Rを含む。そして、左後側スクリード31Lは、左スクリード伸縮シリンダ7Lによって伸縮され、右後側スクリード31Rは、右スクリード伸縮シリンダ7Rによって伸縮される。
【0016】
また、スクリード3は、トラクタ1によって牽引される浮動スクリードであり、レベリングアーム3Aを介してトラクタ1に連結されている。レベリングアーム3Aは、トラクタ1の左側に配置される左レベリングアーム3ALと、トラクタ1の右側に配置される右レベリングアーム3ARとを含む。なお、後側スクリード31の端部には端部敷き均し装置が配置されていてもよい。
【0017】
後側スクリード31の遠位端にはサイドプレート41が取り付けられている。図示例では、左後側スクリード31Lの左端には左サイドプレート41Lが取り付けられ、右後側スクリード31Rの右端には右サイドプレート41Rが取り付けられている。
【0018】
スクリード3の後方には踏み板32が取り付けられている。具体的には、踏み板32は、スクリード3の後方において作業者が新設舗装体NPを踏まずに車幅方向に行き来できるようにスクリード3の後方に取り付けられている。図示例では、踏み板32は、前側スクリード30の後方に取り付けられる中央踏み板32C、左後側スクリード31Lの後方に取り付けられる左踏み板32L、及び、右後側スクリード31Rの後方に取り付けられる右踏み板32Rを含む。
【0019】
スクリード3の前部にはモールドボード42が取り付けられている。モールドボード42は、スクリード3の前方に滞留する舗装材PVの量を調整できるように構成されている。舗装材PVは、モールドボード42の下端と路盤BSとの間の隙間を通ってスクリード3の下に至る。図示例では、モールドボード42は、左後側スクリード31Lの前方に配置される左モールドボード42L、及び、右後側スクリード31Rの前方に配置される右モールドボード42Rを含む。
【0020】
モールドボード42の前方にはスクリュSCが配置され、スクリュSCの前方にはリテーニングプレート43が配置されている。具体的には、リテーニングプレート43は、左スクリュSCLの前方に配置される左リテーニングプレート43L、及び、右スクリュSCRの前方に配置される右リテーニングプレート43Rを含む。なお、リテーニングプレート43は省略されてもよい。
【0021】
トラクタ1には、走行速度センサS1、高さセンサS2、コントローラ50、物体検出装置51、車載表示装置52、操舵装置53、スクリード伸縮装置54、前方監視装置55、コンベア制御装置56、及びスクリュ制御装置57が搭載されている。
【0022】
走行速度センサS1は、アスファルトフィニッシャ100の走行速度を検出できるように構成されている。図示例では、走行速度センサS1は、車輪速センサであり、後輪5の回転角速度及び回転角度、ひいては、アスファルトフィニッシャ100の走行速度及び走行距離を検出できるように構成されている。
【0023】
高さセンサS2は、スクリュSCによってトラクタ1の後ろ且つスクリード3の前で車幅方向に敷き拡げられた舗装材PVの山の高さ(舗装材高さ)を検出できるように構成されている。図示例では、高さセンサS2は、舗装材PVの山の表面までの距離を検出する超音波センサであり、トラクタ1の側面に取り付けられている。但し、高さセンサS2は、サイドプレート41の側面(内側面)に取り付けられていてもよい。具体的には、高さセンサS2は、左スクリュSCLによって敷き拡げられた舗装材PVの山の高さ(左舗装材高さ)を検出する左高さセンサS2Lと、右スクリュSCRによって敷き拡げられた舗装材PVの山の高さ(右舗装材高さ)を検出する右高さセンサS2Rと、を含む。なお、高さセンサS2は、単眼カメラ、ステレオカメラ、LIDAR、ミリ波レーダ、レーザレーダ、レーザスキャナ、距離画像カメラ、レーザレンジファインダ、又はそれらの組み合わせ等であってもよい。また、高さセンサS2は省略されてもよい。
【0024】
コントローラ50は、アスファルトフィニッシャ100を制御する制御装置である。図示例では、コントローラ50は、CPU、揮発性記憶装置、及び不揮発性記憶装置等を含むマイクロコンピュータで構成されている。コントローラ50の各機能は、不揮発性記憶装置に記憶されているプログラムをCPUが実行することで実現される。但し、コントローラ50の各機能は、ソフトウェアで実現されるばかりでなく、ハードウェアで実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0025】
物体検出装置51は、アスファルトフィニッシャ100の周囲の情報を取得する情報取得装置(空間認識装置)の一例であり、施工対象の道路の所定範囲内にある地物に関する情報を取得し、取得した情報をコントローラ50に対して出力できるように構成されている。すなわち、物体検出装置51は、施工対象の道路の所定範囲を監視対象とするように構成されている。道路上の所定範囲は、例えば、スクリード3よりも前方に位置する、道路の境界線を含む範囲である。図示例では、道路上の所定範囲は、舗装用型枠の幅より大きい前後幅及び左右幅を有する範囲であり、例えば、2メートル四方の範囲である。
【0026】
スクリード3よりも前方に位置する範囲は、例えば、ホッパ2よりも前方に位置する範囲、前輪6の車軸よりも前方に位置する範囲、後輪5の車軸よりも前方に位置する範囲、スクリュSCよりも前方に位置する範囲等である。
【0027】
所定範囲内にある地物は、例えば、路盤BSと路盤BSの外側にある物体APとを含む。物体APは、敷設される舗装体の幅方向の端面の位置を決めるために利用される地物である。
図1及び
図2に示す例では、物体APは、所定の厚さ(高さ)を有する舗装用型枠であり、アスファルトフィニッシャ100の左側にある左物体APLと、アスファルトフィニッシャ100の右側にある右物体APRとを含む。具体的には、左物体APLは第1左物体APL1及び第2左物体APL2を含み、右物体APRは第1右物体APR1及び第2右物体APR2を含む。物体APは、L形側溝ブロック、縁石ブロック、又は、既設舗装体の切削段差部等であってもよい。既設舗装体の切削段差部は、古い舗装体を切削して新しい舗装体を敷設する際に形成される、切削された部分の表面と切削されていない部分の表面との間の段差部を意味する。物体APは、地面に描かれた線、地面に貼り付けられたテープ、又は、地面に沿って張られた糸等のほとんど厚みのない地物であってもよい。地物に関する情報は、例えば、地物の高さ、地物の表面の色、又は地物の表面の反射率等を含む。なお、
図1では、明瞭化のため、左物体APLの図示が省略されている。
【0028】
図示例では、物体検出装置51は、所定範囲を監視できるように構成されたステレオカメラである。なお、物体検出装置51は、所定範囲を監視できるように構成された単眼カメラ、LIDAR、ミリ波レーダ、レーザレーダ、レーザスキャナ、距離画像カメラ、レーザレンジファインダ、超音波センサ、又はそれらの組み合わせ等であってもよい。
【0029】
また、物体検出装置51としてのステレオカメラは、望ましくは、自動露出調整機能を備えるように構成されている。この構成により、物体検出装置51は、昼夜を問わず、すなわち、特殊な照明等を必要とすることなく、所定範囲内にある地物に関する情報を取得することができる。
【0030】
図示例では、物体検出装置51は、アスファルトフィニッシャ100の左側に設置される左物体検出装置51L、及び、アスファルトフィニッシャ100の右側に設置される右物体検出装置51Rを含む。
【0031】
左物体検出装置51Lは、アスファルトフィニッシャ100の左側の地面を監視できるように構成されている。図示例では、左物体検出装置51Lは、アスファルトフィニッシャ100の左側にある地面上の左監視範囲ZL(
図2における一点鎖線で囲まれた範囲)を監視するステレオカメラである。
【0032】
右物体検出装置51Rは、アスファルトフィニッシャ100の右側の地面を監視できるように構成されている。図示例では、右物体検出装置51Rは、アスファルトフィニッシャ100の右側にある地面上の右監視範囲ZR(
図2における一点鎖線で囲まれた範囲)を監視するステレオカメラである。
【0033】
物体検出装置51は、取り付け部材60を介してアスファルトフィニッシャ100に取り付けられていてもよい。取り付け部材60は、物体検出装置51をアスファルトフィニッシャ100に取り付けるために利用される部材である。図示例では、取り付け部材60は、左取り付け部材60L及び右取り付け部材60Rを含む。
図2に示す例では、左物体検出装置51Lは、左取り付け部材60Lを介してトラクタ1の左前端部に取り付けられ、右物体検出装置51Rは、右取り付け部材60Rを介してトラクタ1の右前端部に取り付けられている。なお、左物体検出装置51Lは、左取り付け部材60Lを介し、ホッパ2の左前端部等、アスファルトフィニッシャ100の他の部分に取り付けられていてもよい。同様に、右物体検出装置51Rは、右取り付け部材60Rを介し、ホッパ2の右前端部等、アスファルトフィニッシャ100の他の部分に取り付けられていてもよい。
【0034】
また、物体検出装置51は、後側スクリード31の伸縮状態を監視できるように構成されていてもよい。例えば、物体検出装置51は、左後側スクリード31Lの端部を監視できるように構成されたステレオカメラと、右後側スクリード31Rの端部を監視できるように構成されたステレオカメラとを追加的に含んでいてもよい。この場合、物体検出装置51は、スクリード3に配置されていてもよい。例えば、物体検出装置51は、後側スクリード31に配置されていてもよい。また、後側スクリード31の端部に端部敷き均し装置が配置されている場合には、物体検出装置51は、端部敷き均し装置に配置されていてもよい。
【0035】
また、
図2に示す例では、物体検出装置51は、鉛直下方を向くように取り付け部材60に取り付けられているが、斜め下方等の他の方向を向くように取り付け部材60に取り付けられていてもよい。
【0036】
また、
図2に示す例では、左取り付け部材60Lは、幅方向に伸縮可能な伸縮部材TAと、伸縮部材TAの遠位端に回動可能に連結された回動部材SBとで構成されている。
図2において破線で表される回動部材SBaは、回動部材SBが回動したときの状態を示す。右取り付け部材60Rについても同様である。
【0037】
このように取り付け部材60は、伸縮部材TA及び回動部材SBにより、物体検出装置51の監視範囲を移動させることができるように構成されている。舗装幅の変化等に対応できるようにするためである。この場合、コントローラ50は、物体検出装置51が物体APに追随するように、回動部材SBを回動制御できるように構成されていてもよく、伸縮部材TAを伸縮制御できるように構成されていてもよい。これにより、コントローラ50は、物体APの位置が車幅方向に変化しても、物体APが物体検出装置51の監視範囲内に継続的に含まれるようにすることができる。
【0038】
取り付け部材60は、伸縮部材TAの伸縮量を検出するセンサ、及び、回動部材SBの回動量(回動角度)を検出するセンサの少なくとも一方を備えていてもよい。
【0039】
なお、伸縮部材TA及び回動部材SBの少なくとも一方は省略されてもよい。例えば、取り付け部材60は、伸縮不能且つ回動不能に構成されていてもよい。すなわち、取り付け部材60は、伸縮不能且つ回動不能な棒状部材であってもよい。
【0040】
また、物体検出装置51は、取り付け部材60を介さずにアスファルトフィニッシャ100に直接的に取り付けられていてもよい。
【0041】
また、物体検出装置51は、アスファルトフィニッシャ100の左側の地面とアスファルトフィニッシャ100の右側の地面とを同時に監視できる一つの装置で構成されていてもよい。具体的には、物体検出装置51は、左物体APL及び右物体APRを同時に監視できる一つの装置で構成されていてもよい。この場合、物体検出装置51は、トラクタ1の上面の前端中央部に取り付けられていてもよい。
【0042】
また、アスファルトフィニッシャ100には、アスファルトフィニッシャ100の操舵角を検出できるように構成された操舵角センサ、及び、後側スクリード31の伸縮量を検出できるように構成されたスクリード伸縮量センサ等が取り付けられていてもよい。
【0043】
車載表示装置52は、アスファルトフィニッシャ100に関する情報を表示できるように構成されている。図示例では、車載表示装置52は、運転席1Sの前方に設置されている液晶ディスプレイである。但し、車載表示装置52は、スクリード3の左端部及び右端部の少なくとも一方に設置される表示装置を含んでいてもよい。
【0044】
操舵装置53は、アスファルトフィニッシャ100を操舵できるように構成されている。図示例では、操舵装置53は、フロントアクスルの近くに設置された前輪操舵シリンダを伸縮させるように構成されている。具体的には、操舵装置53は、油圧ポンプから前輪操舵シリンダに流れる作動油の流量、及び、前輪操舵シリンダから排出される作動油の流量を制御する操舵用電磁制御弁を含む。操舵用電磁制御弁は、操作装置としてのステアリングホイールSH(ハンドル)の回転に応じて前輪操舵シリンダにおける作動油の流出入を制御できるように構成されている。なお、操舵用電磁制御弁は、ステアリングホイールSHの動きとは無関係に、ステアリングホイールSHとは別の操作装置である入力スイッチの操作に応じて前輪操舵シリンダにおける作動油の流出入を制御できるように構成されていてもよい。また、操舵用電磁制御弁は、コントローラ50からの操舵指令に応じ、ステアリングホイールSHの回転とは無関係に、前輪操舵シリンダにおける作動油の流出入を制御できるように構成されていてもよい。すなわち、コントローラ50は、運転者によるステアリングホイールSHの操作の有無とは無関係に、アスファルトフィニッシャ100を自動操舵できるように構成されていてもよい。
【0045】
アスファルトフィニッシャ100がクローラ式アスファルトフィニッシャである場合、操舵装置53は、左右一対のクローラを別々に制御できるように構成される。なお、クローラ式アスファルトフィニッシャは、ステアリングホイールSHの代わりに、左クローラを操作するための操作装置である左操作レバーと、右クローラを操作するための操作装置である右操作レバーとを有する。
【0046】
具体的には、操舵装置53は、油圧ポンプから左クローラを回転させるための左走行用油圧モータに流れる作動油の流量を制御する左操舵用電磁制御弁と、油圧ポンプから右クローラを回転させるための右走行用油圧モータに流れる作動油の流量を制御する右操舵用電磁制御弁とを含む。そして、左操舵用電磁制御弁は、左操作レバーの操作量(傾斜角)に応じて左走行用油圧モータにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。同様に、右操舵用電磁制御弁は、右操作レバーの操作量(傾斜角)に応じて右走行用油圧モータにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。なお、左操舵用電磁制御弁は、コントローラ50からの操舵指令に応じ、運転者による左操作レバーの操作の有無とは無関係に、左走行用油圧モータにおける作動油の流出入を制御できるように構成されていてもよい。同様に、右操舵用電磁制御弁は、コントローラ50からの操舵指令に応じ、運転者による右操作レバーの操作の有無とは無関係に、右走行用油圧モータにおける作動油の流出入を制御できるように構成されていてもよい。
【0047】
スクリード伸縮装置54は、後側スクリード31を車幅方向(Y軸方向)に伸縮できるように構成されている。図示例では、スクリード伸縮装置54は、スクリード3内に設置されたスクリード伸縮シリンダ7を伸縮させるように構成されている。具体的には、スクリード伸縮装置54は、油圧ポンプからスクリード伸縮シリンダ7に流れる作動油の流量、及び、スクリード伸縮シリンダ7から排出される作動油の流量を制御するスクリード伸縮用電磁制御弁を含む。スクリード伸縮用電磁制御弁は、車載表示装置52の近くに設けられた操作装置としての伸縮ボタンセット(図示せず。)の操作に応じてスクリード伸縮シリンダ7における作動油の流出入を制御できるように構成されている。伸縮ボタンセットは、典型的には、左後側スクリード31Lを伸縮させるための左伸縮ボタンセットと、右後側スクリード31Rを伸縮させるための右伸縮ボタンセットとを含む。スクリード伸縮用電磁制御弁は、コントローラ50からの伸縮指令に応じ、伸縮ボタンセットの操作とは無関係に、スクリード伸縮シリンダ7における作動油の流出入を制御できるように構成されていてもよい。すなわち、コントローラ50は、運転者による伸縮ボタンセットの操作の有無とは無関係に、後側スクリード31を自動的に伸縮させることができるように構成されていてもよい。
【0048】
具体的には、スクリード伸縮装置54は、油圧ポンプから左後側スクリード31Lを伸縮させるための左スクリード伸縮シリンダ7Lに流れる作動油の流量を制御する左伸縮用電磁制御弁と、油圧ポンプから右後側スクリード31Rを伸縮させるための右スクリード伸縮シリンダ7Rに流れる作動油の流量を制御する右伸縮用電磁制御弁とを含む。そして、左伸縮用電磁制御弁は、左伸縮ボタンセットの操作内容に応じて左スクリード伸縮シリンダ7Lにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。同様に、右伸縮用電磁制御弁は、右伸縮ボタンセットの操作内容に応じて右スクリード伸縮シリンダ7Rにおける作動油の流出入を制御できるように構成される。なお、左伸縮用電磁制御弁は、コントローラ50からの伸縮指令に応じ、運転者による左伸縮ボタンセットの操作の有無とは無関係に、左スクリード伸縮シリンダ7Lにおける作動油の流出入を制御できるように構成されていてもよい。同様に、右伸縮用電磁制御弁は、コントローラ50からの伸縮指令に応じ、運転者による右伸縮ボタンセットの操作の有無とは無関係に、右スクリード伸縮シリンダ7Rにおける作動油の流出入を制御できるように構成されていてもよい。
【0049】
前方監視装置55は、アスファルトフィニッシャ100の周囲の情報を取得する情報取得装置(空間認識装置)の別の一例であり、アスファルトフィニッシャ100の前方の空間を監視できるように構成されている。
【0050】
図示例では、前方監視装置55は、単眼カメラであり、トラクタ1よりも前方に位置する施工対象範囲である前方施工対象範囲の境界線を定める地物に関する情報を取得できるように構成されている。施工対象範囲の一部である前方施工対象範囲は、例えば、ホッパ2の前端から前方に所定距離にわたって広がる範囲である。所定距離は、数メートルから数百メートルの範囲内の値であり、不揮発性記憶装置等に記憶された値であってもよく、入力装置等を通じて入力される値であってもよく、走行速度センサS1等の出力に基づいて動的に算出される値であってもよい。
【0051】
具体的には、所定距離は、アスファルトフィニッシャ100の全長(約6メートル)と同じの長さであってもよい。自動操舵を実現するための情報を事前に取得できるようにするためである。
【0052】
但し、所定距離は、アスファルトフィニッシャ100の全長の二倍以上(12メートル以上)の長さであることが好ましい。滑らかな自動操舵を実現するための情報を事前に取得できるようにするためである。
【0053】
また、所定距離は、アスファルトフィニッシャ100の全長の二十倍以上(120メートル以上)の長さであってもよい。前方施工対象範囲の境界線を定める地物に関する情報をできるだけ早期に取得するためである。
【0054】
なお、前方監視装置55は、ステレオカメラ、LIDAR、又は距離画像センサ等であってもよい。また、前方監視装置55は、物体検出装置51であってもよい。この場合、物体検出装置51は、下方及び前方を同時に監視できるように構成されていてもよい。例えば、物体検出装置51がステレオカメラの場合、物体検出装置51は、下方及び前方を同時に撮像できるように構成されていてもよい。また、前方監視装置55は、前方施工対象範囲の境界線を定める地物(物体AP)とアスファルトフィニッシャ100の前後軸AXとの間の車幅方向(Y軸方向)における距離をコントローラ50が算出できるように構成されていてもよい。すなわち、コントローラ50は、前方監視装置55が撮像した画像に各種画像処理を施すことにより、前方施工対象範囲の境界線を定める物体APと前後軸AXとの間の車幅方向(Y軸方向)における距離を算出できるように構成されていてもよい。
【0055】
図示例では、前方監視装置55は、左物体検出装置51Lの前面に取り付けられた左前方監視装置55L、及び、右物体検出装置51Rの前面に取り付けられた右前方監視装置55Rを含む。そして、
図1及び
図2に示すように、左前方監視装置55Lは、ホッパ2よりも前方に位置する前方施工対象範囲の左側の境界線を定める地物(左物体APL)に関する情報を取得できるように配置され、右前方監視装置55Rは、ホッパ2よりも前方に位置する前方施工対象範囲の右側の境界線を定める地物(右物体APR)に関する情報を取得できるように配置されている。
【0056】
図1及び
図2のそれぞれに示す二点鎖線は、前方監視装置55の監視範囲MZの境界を表している。また、
図2に示す左前方監視装置55Lから前方に延びる二点鎖線は、左前方監視装置55Lの監視範囲(左監視範囲MZL)の境界を表し、
図2に示す右前方監視装置55Rから前方に延びる二点鎖線は、右前方監視装置55Rの監視範囲(右監視範囲MZR)の境界を表している。なお、前方監視装置55は、前輪6よりも前方で且つホッパ2の前端よりも後方に位置する施工対象範囲の境界線を定める地物に関する情報も取得できるように構成されていてもよい。すなわち、前方監視装置55の監視範囲MZは、前輪6よりも前方で且つホッパ2の前端よりも後方に位置する施工対象範囲も監視できるように設定されていてもよい。或いは、前方監視装置55は、スクリード3よりも前方で且つホッパ2の前端よりも後方に位置する施工対象範囲の境界線を定める地物に関する情報も取得できるように構成されていてもよい。すなわち、前方監視装置55の監視範囲MZは、スクリード3よりも前方で且つホッパ2の前端よりも後方に位置する施工対象範囲も監視できるように設定されていてもよい。
【0057】
また、前方監視装置55は、アスファルトフィニッシャ100とアスファルトフィニッシャ100の前方に位置するダンプトラック等の運搬車両との間の距離をコントローラ50が算出できるように構成されていてもよい。すなわち、コントローラ50は、前方監視装置55が撮像した画像に各種画像処理を施すことによってアスファルトフィニッシャ100とアスファルトフィニッシャ100の前方に位置するダンプトラック等の運搬車両との間の距離を算出できるように構成されていてもよい。この場合、単眼カメラである前方監視装置55は、その監視範囲MZが施工対象範囲の中央部分を含むように、より広い視野角を有するように構成されていてもよい。
【0058】
また、前方監視装置55は、アスファルトフィニッシャ100の周囲に位置する物体をコントローラ50が検出できるように構成されていてもよい。すなわち、コントローラ50は、前方監視装置55が撮像した画像に各種画像処理を施すことによってアスファルトフィニッシャ100の周囲に位置する作業者等の物体を検出できるように構成されていてもよい。この場合、コントローラ50は、所定の物体(例えば人)とその所定の物体以外の物体とを区別できるように構成されていてもよい。
【0059】
コンベア制御装置56は、コンベアCVの送り速度を制御するように構成されている。図示例では、コンベア制御装置56は、コンベアCVを駆動する油圧モータに流入する作動油の流量を制御する電磁弁である。具体的には、コンベア制御装置56は、コントローラ50からの制御指令に応じ、コンベアCVを駆動する油圧モータと油圧ポンプとを接続する管路の断面積である流路面積を増減させる。より具体的には、コンベア制御装置56は、流路面積を増大させることによって、コンベアCVを駆動する油圧モータに流入する作動油の流量を増加させ、コンベアCVの送り速度を増加させる。或いは、コンベア制御装置56は、流路面積を低減させることによって、コンベアCVを駆動する油圧モータに流入する作動油の流量を低下させ、コンベアCVの送り速度を低下させる。また、コンベア制御装置56は、左コンベアCVL及び右コンベアCVRのそれぞれの送り速度を別々に制御できるように構成されている。
【0060】
スクリュ制御装置57は、スクリュSCの回転速度を制御するように構成されている。図示例では、スクリュ制御装置57は、スクリュSCを駆動する油圧モータに流入する作動油の流量を制御する電磁弁である。具体的には、スクリュ制御装置57は、コントローラ50からの制御指令に応じ、スクリュSCを駆動する油圧モータと油圧ポンプとを接続する管路の断面積である流路面積を増減させる。より具体的には、スクリュ制御装置57は、流路面積を増大させることによって、スクリュSCを駆動する油圧モータに流入する作動油の流量を増加させ、スクリュSCの回転速度を増加させる。或いは、スクリュ制御装置57は、流路面積を低減させることによって、スクリュSCを駆動する油圧モータに流入する作動油の流量を低下させ、スクリュSCの回転速度を低下させる。また、スクリュ制御装置57は、左スクリュSCL及び右スクリュSCRのそれぞれの回転速度を別々に制御できるように構成されている。
【0061】
次に、
図3を参照し、アスファルトフィニッシャ100に搭載される制御システムDSの構成例について説明する。
図3は、制御システムDSの構成例を示すブロック図である。
【0062】
制御システムDSは、主に、コントローラ50、左物体検出装置51L、右物体検出装置51R、走行速度センサS1、車載表示装置52、操舵装置53、スクリード伸縮装置54、及び前方監視装置55等で構成されている。
【0063】
図3に示す例では、コントローラ50は、座標算出部50a、操舵制御部50b、スクリード伸縮制御部50c、境界線導出部50d、走行軌道生成部50e、及び搬送量調整部50fを含む。
【0064】
座標算出部50aは、物体検出装置51が取得した地物に関する情報に基づいて施工対象範囲の境界線上の座標を算出するように構成されている。
図2の太い破線で示すガイド線GDは、施工対象の道路の境界線の一例であり、ガイド面を表す仮想線である。なお、
図2では、ガイド線GDは、現時点では導き出されていない部分(物体検出装置51の監視範囲よりも前方にある部分)を含む。ガイド面は、敷設される舗装体の幅方向の端面を一致させるべき面として認識される仮想面である。
図2に示す例では、ガイド線GDは、新設舗装体NPの左端面を一致させるべき面である左ガイド面を表す左ガイド線GDL、及び、新設舗装体NPの右端面を一致させるべき面である右ガイド面を表す右ガイド線GDRを含む。
【0065】
具体的には、座標算出部50aは、物体検出装置51が取得した物体APに関する情報に基づいてガイド線GD上の座標を算出する。より具体的には、座標算出部50aは、左物体検出装置51Lが取得した左物体APLに関する情報に基づいて左ガイド線GDLを構成する点VLの座標を算出し、且つ、右物体検出装置51Rが取得した右物体APRに関する情報に基づいて右ガイド線GDRを構成する点VRの座標を算出する。
【0066】
例えば、座標算出部50aは、
図4に示すように、右物体検出装置51Rの右監視範囲ZR内にある右物体APRの左端面LEと上端面UEとの間の角(エッジ)を表す仮想線が右ガイド線GDRとなるように画像認識技術を用いて右ガイド線GDRを生成する。そして、座標算出部50aは、生成した右ガイド線GDRと横断線TLとの交点の座標を点VRの座標として算出する。
図4に示す例では、横断線TLは、車幅方向(Y軸方向)に平行で且つ右物体検出装置51Rの中心線(光軸OA)と交差する直線である。なお、
図4は、アスファルトフィニッシャ100の後方から見た右物体APRとしての舗装用型枠の概略斜視図であり、右物体検出装置51Rと右物体APRとの間の位置関係を概略的に示している。
【0067】
例えば、座標算出部50aは、右物体検出装置51Rとしてのステレオカメラの出力に基づいて生成される右監視範囲ZRに関する距離画像を利用し、右ガイド線GDRと横断線TLとの交点を含む画素の座標を点VRの座標として算出する。距離画像は、二次元配列の画素群のそれぞれの画素値が右物体検出装置51Rからの距離で表されるデータセットである。
【0068】
点VRの座標は、所定の座標系における一座標である。所定の座標系は、例えば、世界測地系である。世界測地系は、地球の重心に原点をおき、X軸をグリニッジ子午線と赤道との交点の方向にとり、Y軸を東経90度の方向にとり、そしてZ軸を北極の方向にとる三次元直交XYZ座標系である。但し、所定の座標系は、アスファルトフィニッシャ100上の所定点を原点とする局所座標系であってもよい。すなわち、所定の座標系は、アスファルトフィニッシャ100の移動とともにその原点が移動する局所座標系であってもよい。具体的には、所定の座標系は、例えば、アスファルトフィニッシャ100の中心点を原点とする三次元直交座標系であってもよい。この場合、アスファルトフィニッシャ100の中心点は、例えば、トラクタ1の中心点であってもよく、後輪5の車軸と前後軸AX(
図2参照)との交点であってもよい。また、所定の座標系は、アスファルトフィニッシャ100が移動してもその原点が移動しない局所座標系であってもよい。この場合、局所座標系は、施工開始時のアスファルトフィニッシャ100の中心点を原点とする座標系であってもよい。また、所定の座標系は、トータルステーション等で用いられる測量用平面座標系等の平面直角座標系であってもよい。
【0069】
座標算出部50aは、例えば、距離画像を構成する画素のうち、左隣の画素値との差が所定の閾値以上となる画素を抽出し、抽出した複数の画素の配置からガイド線GDとして一本の線を導き出すように構成されていてもよい。一本の線は、直線、曲線、又はそれらの組み合わせである。一本の線を導き出す技術としては、ハフ変換等の任意の画像認識技術が利用され得る。
【0070】
なお、座標算出部50aは、抽出した画素の位置がばらついてしまう部分については、平均化処理を施すことによってそれらの影響を排除してもよい。具体的には、二つの舗装用型枠が接する部分、又は、切削段差部の不整部分等に対応する画像部分でこのようなばらつきが発生する場合がある。
【0071】
所定の閾値は、この例では、舗装用型枠の高さに関する閾値THである。この場合、座標算出部50aは、
図4に示すように、閾値TH以上の高さH1を有する舗装用型枠である右物体APRの左上のエッジを表す仮想線を右ガイド線GDRとして生成できる。
【0072】
なお、閾値THは、実際に使用される舗装用型枠の高さに合わせて事前に設定できるように構成されていてもよい。実際に使用される舗装用型枠の高さに合わせて設定された閾値THの利用は、薄い舗装用型枠のエッジに基づくガイド線の生成を可能にする。また、実際に使用される舗装用型枠の高さに合わせて設定された閾値THの利用は、座標算出部50aが舗装用型枠以外の地物の形状(エッジ)に基づいて誤ってガイド線を生成してしまうのを抑制できる。
【0073】
その後、座標算出部50aは、
図4に示すように、生成した右ガイド線GDRと横断線TLとの交点の座標を点VRの座標として算出する。
【0074】
なお、上述の説明は、右監視範囲ZRに関する距離画像から右ガイド線GDR上の点VRの座標を算出する処理に関するが、左監視範囲ZLに関する距離画像から左ガイド線GDL上の点VLの座標を算出する処理にも同様に適用される。
【0075】
また、物体検出装置51が単眼カメラである場合、上述の説明における「距離画像」は「画像」で読み替えられる。この場合、「画素値」は、距離ではなく、色情報等で表される。色情報は輝度であってもよい。
【0076】
このようにして、座標算出部50aは、点VL及び点VRのそれぞれの座標を断続的に算出して記憶する。図示例では、座標算出部50aは、アスファルトフィニッシャ100が所定距離(例えば15cm)だけ前進する度に点VL及び点VRのそれぞれの座標を算出して記憶するように構成されている。なお、座標算出部50aは、所定時間が経過する度に点VL及び点VRのそれぞれの座標を算出して記憶するように構成されていてもよい。
【0077】
図1は、座標算出部50aが点VLの座標を断続的に算出して記憶する様子を示している。
図1において、点VL0は、座標算出部50aが現時点における左物体検出装置51Lの出力に基づいて導き出した点VLに対応している。また、点VL1は、座標算出部50aが過去の一時点における左物体検出装置51Lの出力に基づいて導き出した点VLに対応している。点VL2~点VL4についても同様である。また、点VL11は、座標算出部50aが未来の一時点における左物体検出装置51Lの出力に基づいて導き出す点VLに対応している。点VL12~点VL14についても同様である。すなわち、現時点においては、座標算出部50aは、点VL0及び点VL1~点VL4のそれぞれの座標値を既に算出し且つ記憶している。
【0078】
図2も、
図1と同様に、座標算出部50aが点VL及び点VRのそれぞれの座標を断続的に算出して記憶する様子を示している。
図2において、点VR0は、座標算出部50aが現時点における右物体検出装置51Rの出力に基づいて導き出した点VRに対応している。点VL0についても同様である。また、点VR1は、座標算出部50aが過去の一時点における右物体検出装置51Rの出力に基づいて導き出した点VRに対応している。点VR2~点VR4についても同様である。また、点VL1は、座標算出部50aが過去の一時点における左物体検出装置51Lの出力に基づいて導き出した点VLに対応している。点VL2~点VL4についても同様である。また、点VR11は、座標算出部50aが未来の一時点における右物体検出装置51Rの出力に基づいて導き出す点VRに対応している。点VR12~点VR14についても同様である。また、点VL11は、座標算出部50aが未来の一時点における左物体検出装置51Lの出力に基づいて導き出す点VLに対応している。点VL11~点VL14についても同様である。
【0079】
操舵制御部50bは、走行速度ダイヤル、ステアリングホイールSH、又は入力スイッチ等の操作装置に対する操作とは無関係に、アスファルトフィニッシャ100を自動操舵できるように構成されている。なお、操舵制御部50bは、アスファルトフィニッシャ100を自動操舵する際に、アスファルトフィニッシャ100の走行速度を制御できるように構成されていてもよい。また、操舵制御部50bは省略されてもよい。
【0080】
スクリード伸縮制御部50cは、伸縮ボタンセット等の操作装置に対する操作とは無関係に、左右の伸縮可能な後側スクリード31を自動伸縮できるように構成されている。なお、スクリード伸縮制御部50cは、アスファルトフィニッシャ100が自動操舵される際に、アスファルトフィニッシャ100の走行速度及び操舵角に応じて後側スクリード31を自動伸縮できるように構成されていてもよい。
【0081】
図示例では、スクリード伸縮制御部50cは、座標算出部50aが算出して記憶した境界線上の座標に基づいてスクリード伸縮シリンダ7に対する伸縮指令を生成する。伸縮指令は、例えば、伸縮速度に関する指令、伸縮量に関する指令、又はそれらの組み合わせ等である。
【0082】
具体的には、スクリード伸縮制御部50cは、後側スクリード31の伸縮量のフィードフォワード制御を実行する。より具体的には、スクリード伸縮制御部50cは、左後側スクリード31Lの所定部位(例えば左前端点)の座標を左目標座標に一致させるように左スクリード伸縮シリンダ7Lを伸縮させる。左目標座標は、目標座標の一例であり、例えば、左後側スクリード31Lの所定部位(例えば左前端点)の前方の最も近い位置にある点VLの座標である。また、スクリード伸縮制御部50cは、右後側スクリード31Rの所定部位(例えば右前端点)の座標を右目標座標に一致させるように右スクリード伸縮シリンダ7Rを伸縮させる。右目標座標は、目標座標の別の一例であり、例えば、右後側スクリード31Rの所定部位(例えば右前端点)の前方の最も近い位置にある点VRの座標である。また、スクリード伸縮制御部50cは、走行速度センサS1によって検出されるアスファルトフィニッシャ100の走行速度に応じて伸縮速度を決定するように構成されていてもよい。
【0083】
なお、左後側スクリード31Lの左前端点の座標、及び、右後側スクリード31Rの右前端点の座標といった後側スクリード31の所定部位の座標は、点VL及び点VRの座標と同様に、座標算出部50aによって算出され得る。具体的には、座標算出部50aは、物体検出装置51の位置決めを行う伸縮部材TAの伸縮量等に基づき、トラクタ1の中心点等の基準点の位置に対する物体検出装置51の相対位置を算出できる。同様に、座標算出部50aは、後側スクリード31の伸縮量等に基づき、基準点の位置に対する左後側スクリード31Lの左前端点及び右後側スクリード31Rの右前端点のそれぞれの相対位置を算出できる。また、座標算出部50aは、走行速度センサS1及び操舵角センサ等の出力に基づいて第1時点における基準点の位置に対する第2時点における基準点の相対位置を算出できる。そのため、座標算出部50aは、第1時点における基準点の位置に対する他の時点における点VL、点VR、左後側スクリード31Lの左前端点、及び右後側スクリード31Rの右前端点のそれぞれの相対位置を算出できる。
【0084】
境界線導出部50dは、施工対象範囲の境界線に関する情報を導き出すように構成されている。境界線に関する情報は、境界線の位置、境界線の延在方向、又は、境界線を構成する各点の座標等である。図示例では、境界線導出部50dは、前方監視装置55が取得した地物に関する情報に基づき、アスファルトフィニッシャ100の前方に位置する前方施工対象範囲の境界線を前方境界線FB(
図8及び
図9参照)として導き出すように構成されている。具体的には、前方境界線FBは、前方施工対象範囲の左側の境界線に対応する左前方境界線FBL(
図8及び
図9参照)と、前方施工対象範囲の右側の境界線に対応する右前方境界線FBR(
図8及び
図9参照)と、を含む。また、画像から一本の線を導き出す技術としては、ハフ変換等の任意の画像認識技術が利用され得る。
【0085】
走行軌道生成部50eは、アスファルトフィニッシャ100の走行軌道RP(
図8及び
図9参照)を生成できるように構成されている。図示例では、走行軌道RPは、アスファルトフィニッシャ100の中心点が辿る軌道である。具体的には、走行軌道生成部50eは、左前方境界線FBLと右前方境界線FBRとに基づいて走行軌道RPを生成するように構成されている。例えば、走行軌道生成部50eは、前方施工対象範囲の延在方向において前方施工対象範囲を二等分する線を走行軌道RPとして生成する。この場合、前方施工対象範囲の幅方向における左前方境界線FBLと走行軌道RPとの間の距離と前方施工対象範囲の幅方向における右前方境界線FBRと走行軌道RPとの間の距離とは同じである。
【0086】
但し、走行軌道RPは、所定の条件が満たされる場合には、前方施工対象範囲の延在方向において前方施工対象範囲を二等分する線から逸脱するように生成されてもよい。例えば、前方施工対象範囲の幅が部分的に広がっている場合、すなわち、前方施工対象範囲が拡幅部WP(
図8参照)を含む場合、前方施工対象範囲の延在方向における拡幅部WPの長さLT1が距離LX以下であれば、拡幅部WPが存在しないものと見なした上で、(拡幅部WPを含まない)前方施工対象範囲を二等分する線を走行軌道RPとして生成してもよい。
【0087】
そして、操舵制御部50bは、走行軌道生成部50eが生成した走行軌道RPに沿ってアスファルトフィニッシャ100の中心点が移動するように操舵装置53を制御して操舵角を制御する。この場合、操舵制御部50bは、必要に応じてアスファルトフィニッシャ100の走行速度を強制的に減速させてもよい。
【0088】
また、走行軌道生成部50eは、座標算出部50aが算出する座標を利用せずに、アスファルトフィニッシャ100の走行軌道RPを生成するように構成されていてもよい。
【0089】
搬送量調整部50fは、搬送装置による舗装材PVの搬送量を調整するように構成されている。図示例では、搬送量調整部50fは、後側スクリード31の突出量が変化した場合であっても舗装材高さが変化しないように、搬送装置が舗装材PVを搬送する速度の目標値である目標搬送速度を設定するように構成されている。なお、舗装材高さは、スクリュSCによってモールドボード42の前方に敷き拡げられる舗装材PVの量である抱え込み量を表し、後側スクリード31の突出量が一定であれば、抱え込み量が多いほど高くなる。
【0090】
図示例では、後側スクリード31の突出量は、車幅方向における前後軸AXと後側スクリード31の端部との間の長さである。具体的には、左後側スクリード31Lの突出量WL(
図8及び
図9参照)は、車幅方向における前後軸AXと左後側スクリード31Lの左端部との間の距離であり、右後側スクリード31Rの突出量WR(
図8及び
図9参照)は、車幅方向における前後軸AXと右後側スクリード31Rの右端部との間の距離である。走行軌道RPが生成されている場合には、後側スクリード31の突出量は、車幅方向における走行軌道RPと後側スクリード31の端部との間の長さであってもよい。
【0091】
具体的には、搬送量調整部50fは、境界線導出部50dが導き出したスクリード3よりも前方にある施工対象範囲の境界線(前方境界線FB)に関する情報に基づいて目標搬送速度を設定することにより、搬送装置による舗装材PVの搬送量を制御するように構成されている。
【0092】
より具体的には、搬送量調整部50fは、スクリード3よりも前方にある施工対象範囲の境界線(前方境界線FB)に関する情報に基づき、所定時間経過後の左後側スクリード31Lの突出量WL及び右後側スクリード31Rの突出量WRを導き出す。所定時間は、予め登録された時間であってもよく、アスファルトフィニッシャ100の走行速度等に応じて動的に設定される時間であってもよい。そして、搬送量調整部50fは、導き出した突出量に基づいて目標搬送速度を設定する。
【0093】
図示例では、搬送量調整部50fは、所定時間経過後に左後側スクリード31Lの突出量WLが大きくなる場合には左搬送装置の左目標搬送速度を大きくし、所定時間経過後に左後側スクリード31Lの突出量WLが小さくなる場合には左搬送装置の左目標搬送速度を小さくする。左目標搬送速度を大きくすることは、例えば、左コンベアCVLの送り速度を大きくし、且つ、左スクリュSCLの回転速度を大きくすることを意味する。また、左目標搬送速度を小さくすることは、例えば、左コンベアCVLの送り速度を小さくし、且つ、左スクリュSCLの回転速度を小さくすることを意味する。
【0094】
同様に、搬送量調整部50fは、所定時間経過後に右後側スクリード31Rの突出量WRが大きくなる場合には右搬送装置の右目標搬送速度を大きくし、所定時間経過後に右後側スクリード31Rの突出量WRが小さくなる場合には右搬送装置の右目標搬送速度を小さくする。右目標搬送速度を大きくすることは、例えば、右コンベアCVRの送り速度を大きくし、且つ、右スクリュSCRの回転速度を大きくすることを意味する。また、右目標搬送速度を小さくすることは、例えば、右コンベアCVRの送り速度を小さくし、且つ、右スクリュSCRの回転速度を小さくすることを意味する。
【0095】
また、搬送量調整部50fは、座標算出部50aが算出する座標を利用せずに、搬送装置による舗装材PVの搬送量を調整するように構成されていてもよい。
【0096】
コントローラ50は、搬送量調整部50fが設定した目標搬送速度(左目標搬送速度及び右目標搬送速度)に基づいて各種制御指令を生成し、生成した各種制御指令を各種制御装置に対して出力する。具体的には、コントローラ50は、左目標搬送速度に基づき、左コンベアCVLの送り速度に関する制御指令(左コンベア制御指令)と、左スクリュSCLの回転速度に関する制御指令(左スクリュ制御指令)とを生成し、左コンベア制御指令をコンベア制御装置56に対して送信し、左スクリュ制御指令をスクリュ制御装置57に対して送信する。同様に、コントローラ50は、右目標搬送速度に基づき、右コンベアCVRの送り速度に関する制御指令(右コンベア制御指令)と、右スクリュSCRの回転速度に関する制御指令(右スクリュ制御指令)とを生成し、右コンベア制御指令をコンベア制御装置56に対して送信し、右スクリュ制御指令をスクリュ制御装置57に対して送信する。また、コントローラ50は、必要に応じてアスファルトフィニッシャ100の走行速度を強制的に減速させてもよい。
【0097】
コンベア制御装置56は、左コンベア制御指令に基づいて左コンベアCVLの送り速度を制御し、且つ、右コンベア制御指令に基づいて右コンベアCVRの送り速度を制御する。同様に、スクリュ制御装置57は、左スクリュ制御指令に基づいて左スクリュSCLの回転速度を制御し、且つ、右スクリュ制御指令に基づいて右スクリュSCRの回転速度を制御する。
【0098】
なお、コントローラ50は、目標搬送速度に基づいて各種制御指令を生成する際に、高さセンサS2の出力を利用するように構成されていてもよい。例えば、コントローラ50は、目標搬送速度に基づいて目標舗装材高さを設定し、高さセンサS2によって検出される実際の舗装材の高さが目標舗装材高さとなるようにコンベア制御指令(左コンベア制御指令及び右コンベア制御指令)及びスクリュ制御指令(左スクリュ制御指令及び右スクリュ制御指令)の少なくとも一つを調整してもよい。すなわち、コントローラ50は、高さセンサS2の出力をフィードバックして舗装材高さを調整してもよい。
【0099】
次に、
図5を参照し、コントローラ50が後側スクリード31を伸縮させる際の目標を設定する処理(以下、「目標設定処理」とする。)について説明する。
図5は、目標設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。コントローラ50は、所定の制御周期でこの目標設定処理を繰り返し実行する。
【0100】
最初に、コントローラ50は、車体座標を取得する(ステップST1)。車体座標は、アスファルトフィニッシャ100の所定部位の座標を意味し、左後側スクリード31Lの左前端点の座標、及び、右後側スクリード31Rの右前端点の座標といった後側スクリード31の所定部位の座標を含む。
【0101】
具体的には、コントローラ50は、施工開始時点等の第1時点におけるアスファルトフィニッシャ100の中心点を基準点として記憶する。
【0102】
そして、施工中、コントローラ50は、走行速度センサS1及び操舵角センサの出力に基づき、現時点等の任意の時点におけるアスファルトフィニッシャ100の中心点の相対位置及びアスファルトフィニッシャ100の向きを導き出すことができる。なお、中心点の相対位置は、基準点に対する中心点の相対位置を意味する。以下の説明においても同様である。
【0103】
図示例では、コントローラ50は、操舵角センサの出力に基づいて旋回中心の座標を導き出すことができる。そして、コントローラ50は、その旋回中心の座標と走行速度センサS1の出力とに基づき、現時点等の任意の時点におけるアスファルトフィニッシャ100の中心点の相対位置及びアスファルトフィニッシャ100の向きを導き出すことができる。なお、コントローラ50は、アスファルトフィニッシャ100に搭載される不図示のIMU(Inertial Measurement Unit)、GNSS(Global Navigation Satellite System)、又は測量機器等の出力に基づいて移動距離又は姿勢の変化等を導き出すように構成されていてもよい。更に、コントローラ50は、任意の時点におけるアスファルトフィニッシャ100の中心点の相対位置及びアスファルトフィニッシャ100の向きと、アスファルトフィニッシャ100を構成する各部材の既知の寸法等とに基づき、任意の時点におけるアスファルトフィニッシャ100の所定部位の相対位置を導き出すことができる。アスファルトフィニッシャ100の所定部位の相対位置は、左物体検出装置51Lの相対位置、及び、右物体検出装置51Rの相対位置を含む。
【0104】
車体座標を取得した後、コントローラ50は、地物座標を取得する(ステップST2)。地物座標は、物体AP等の地物の座標を意味し、施工対象の道路の左側の境界線上の座標、及び、施工対象の道路の右側の境界線上の座標等を含む。
【0105】
具体的には、コントローラ50は、任意の時点におけるアスファルトフィニッシャ100の中心点の相対位置及びアスファルトフィニッシャ100の向きと任意の時点における物体検出装置51の出力とに基づき、施工対象の道路の左側の境界線上の座標である点VLの座標、及び、施工対象の道路の右側の境界線上の座標である点VR0の座標を算出できる。
【0106】
車体座標と地物座標とを取得した後で、コントローラ50は、目標を設定する(ステップST3)。図示例では、コントローラ50は、後側スクリード31の伸縮量の目標値を算出する。
【0107】
具体的には、コントローラ50は、現時点におけるアスファルトフィニッシャ100の中心点の相対位置及びアスファルトフィニッシャ100の向きに基づき、左後側スクリード31Lの所定部位(例えば左前端点)の前方の最も近い位置にある点VLとアスファルトフィニッシャ100の中心軸としての前後軸AXとの間の距離(以下、「第1距離」とする。)を導き出す。また、コントローラ50は、現時点におけるアスファルトフィニッシャ100の中心点の相対位置及びアスファルトフィニッシャ100の向きに基づき、左後側スクリード31Lの所定部位(例えば左前端点)とアスファルトフィニッシャ100の前後軸AXとの間の距離(以下、「第2距離」とする。)を導き出す。そして、コントローラ50は、第1距離と第2距離との差を目標伸縮量として設定する。具体的には、コントローラ50は、第1距離が第2距離よりも大きい場合、第1距離と第2距離との差を目標伸張量として設定し、第1距離が第2距離よりも小さい場合、第1距離と第2距離との差を目標収縮量として設定する。
【0108】
また、コントローラ50は、左後側スクリード31Lの所定部位(例えば左前端点)とその前方の最も近い位置にある点VLとの間の進行方向における距離(以下、「第3距離」とする。)に基づいて伸縮速度を決定する。具体的には、コントローラ50は、目標伸縮量が同じであれば、第3距離が大きいほど伸縮速度が大きくなるようにする。
【0109】
或いは、コントローラ50は、所定時間後(例えば1秒後)の左後側スクリード31Lの所定部位(例えば左前端点)の位置を予測し、所定時間後の所定部位の位置の前方にある最も近い点VLとその後方にある最も近い点VLとを結ぶ線分を導き出してもよい。そして、コントローラ50は、その線分上にある補間点(二つの点VLを補間する点)と前後軸AXとの間の距離を第1距離としてもよい。
【0110】
この構成により、コントローラ50は、スクリード3よりも前方にある境界線の位置を把握できるため、後側スクリード31を適切なタイミングで過不足なく伸縮させることができる。そのため、コントローラ50は、施工幅が変化する場合に後側スクリード31の伸縮が遅れてしまうのを抑制或いは防止できるため、施工精度を向上させることができる。
【0111】
上述の構成により、スクリード伸縮制御部50cは、アスファルトフィニッシャ100が所定距離だけ前進したところで左後側スクリード31Lの左前端点の座標がガイド線GD上の座標と一致するように左後側スクリード31Lを伸縮させることができる。すなわち、スクリード伸縮制御部50cは、任意の時点における点VLと左後側スクリード31Lの左前端点との間の進行方向における距離がゼロになるときに、点VLと左後側スクリード31Lの左前端点との間の車幅方向における距離もゼロになるように左後側スクリード31Lの伸縮量を制御できる。
【0112】
同様に、スクリード伸縮制御部50cは、アスファルトフィニッシャ100が所定距離だけ前進したところで右後側スクリード31Rの右前端点の座標がその前方にある直近の点VRの座標と一致するように右後側スクリード31Rを伸縮させることができる。すなわち、スクリード伸縮制御部50cは、任意の時点における点VRと右後側スクリード31Rの右前端点との間の進行方向における距離がゼロになるときに、点VRと右後側スクリード31Rの右前端点との間の車幅方向における距離もゼロになるように右後側スクリード31Rの伸縮量を制御できる。
【0113】
次に、
図6を参照し、コントローラ50が走行軌道を生成する処理(以下、「走行軌道生成処理」とする。)について説明する。
図6は、走行軌道生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。図示例では、コントローラ50は、アスファルトフィニッシャ100が前進している間、所定の制御周期でこの処理を繰り返し実行する。
【0114】
最初に、コントローラ50は、前方境界線を導き出す(ステップST11)。本実施形態では、コントローラ50の境界線導出部50dは、情報取得装置(空間認識装置)の一例である前方監視装置55の出力に基づいて前方施工対象範囲の境界線である前方境界線FBを導き出す。具体的には、境界線導出部50dは、左前方監視装置55Lの出力に基づいて前方施工対象範囲の左側の境界線である左前方境界線FBLを導き出し、且つ、右前方監視装置55Rの出力に基づいて前方施工対象範囲の右側の境界線である右前方境界線FBRを導き出す。
【0115】
その後、コントローラ50の走行軌道生成部50eは、走行軌道RPを生成する(ステップST12)。本実施形態では、走行軌道生成部50eは、境界線導出部50dが導き出した前方境界線FBに関する情報に基づいて走行軌道RPを生成する。具体的には、走行軌道生成部50eは、前方施工対象範囲の延在方向において前方施工対象範囲を二等分する線を走行軌道RPとして生成する。
【0116】
コントローラ50は、生成した走行軌道RPを用いてアスファルトフィニッシャ100の操舵を支援するように構成されていてもよい。例えば、コントローラ50は、走行軌道RPに沿ってアスファルトフィニッシャ100の中心点が移動するようにアスファルトフィニッシャ100の進行方向を自動的に制御してもよい。或いは、コントローラ50は、アスファルトフィニッシャ100が進行すべき方向をアスファルトフィニッシャ100の操作者に前もって知らせるように構成されていてもよい。例えば、コントローラ50は、走行軌道RPに沿ってアスファルトフィニッシャ100の中心点が移動するように、「右に30センチメートルだけ寄せて下さい」といった音声メッセージをアスファルトフィニッシャ100の操作者に向けて出力してもよい。この場合、アスファルトフィニッシャ100の操作者は、音声メッセージにしたがってステアリングホイールSHを操作するだけでアスファルトフィニッシャ100の中心点を走行軌道RPに沿って移動させることができる。
【0117】
次に、
図7を参照し、コントローラ50が搬送装置による舗装材PVの搬送量を調整する処理(以下、「搬送量調整処理」とする。)について説明する。
図7は、搬送量調整処理の流れの一例を示すフローチャートである。図示例では、コントローラ50は、アスファルトフィニッシャ100が前進している間、所定の制御周期でこの処理を繰り返し実行する。なお、コントローラ50は、走行軌道生成処理と搬送量調整処理とを同時並行で実行するように構成されていてもよく、走行軌道生成処理及び搬送量調整処理の何れか一方のみを独立して実行するように構成されていてもよい。
【0118】
最初に、コントローラ50は、前方境界線を導き出す(ステップST21)。本実施形態では、コントローラ50の境界線導出部50dは、情報取得装置(空間認識装置)の一例である前方監視装置55の出力に基づいて前方施工対象範囲の境界線である前方境界線FBを導き出す。具体的には、境界線導出部50dは、左前方監視装置55Lの出力に基づいて前方施工対象範囲の左側の境界線である左前方境界線FBLを導き出し、且つ、右前方監視装置55Rの出力に基づいて前方施工対象範囲の右側の境界線である右前方境界線FBRを導き出す。
【0119】
その後、コントローラ50の搬送量調整部50fは、目標搬送速度を設定する(ステップST22)。本実施形態では、搬送量調整部50fは、境界線導出部50dが導き出した前方境界線FBに関する情報に基づいて目標搬送速度を設定する。
【0120】
具体的には、搬送量調整部50fは、境界線導出部50dが導き出した前方境界線FBに関する情報に基づいて所定時間経過後の後側スクリード31の突出量を導き出す。より具体的には、搬送量調整部50fは、所定時間経過後の左前方境界線FBLと前後軸AXとの間の距離を所定時間経過後の左後側スクリード31Lの突出量として導き出す。また、搬送量調整部50fは、所定時間経過後の右前方境界線FBRと前後軸AXとの間の距離を所定時間経過後の右後側スクリード31Rの突出量として導き出す。
【0121】
その上で、搬送量調整部50fは、後側スクリード31の突出量に基づいて目標搬送速度を設定する。より具体的には、搬送量調整部50fは、左後側スクリード31Lの突出量に基づいて左目標搬送速度を設定し、且つ、右後側スクリード31Rの突出量に基づいて右目標搬送速度を設定する。
【0122】
搬送量調整部50fは、後側スクリード31の突出量が大きいほど目標搬送速度が大きくなるように、すなわち、搬送装置による舗装材PVの搬送量が大きくなるように目標搬送速度を設定する。
【0123】
なお、搬送量調整部50fは、設定した目標搬送速度を、走行速度センサS1の出力に基づいて調整してもよい。具体的には、搬送量調整部50fは、アスファルトフィニッシャ100の走行速度が大きいほど目標搬送速度が大きくなるように目標搬送速度を調整してもよい。
【0124】
また、搬送量調整部50fは、設定した目標搬送速度を、施工厚さ(新設舗装体NPの目標厚さ)の設定値に基づいて調整してもよい。具体的には、搬送量調整部50fは、施工厚さが大きいほど目標搬送速度が大きくなるように目標搬送速度を調整してもよい。
【0125】
また、搬送量調整部50fは、設定した目標搬送速度を、操舵角センサの出力に基づいて調整してもよい。具体的には、搬送量調整部50fは、左操舵角が大きいほど左目標搬送速度が小さくなるように且つ右目標搬送速度が大きくなるように左目標搬送速度及び右目標搬送速度のそれぞれを調整してもよい。また、搬送量調整部50fは、右操舵角が大きいほど右目標搬送速度が小さくなるように且つ左目標搬送速度が大きくなるように左目標搬送速度及び右目標搬送速度のそれぞれを調整してもよい。
【0126】
次に、
図8及び
図9を参照し、コントローラ50が生成する走行軌道RPの例について説明する。
図8及び
図9は施工現場の上面図である。具体的には、
図8は、短い拡幅部WP1を有する前方施工対象範囲(道路)を含む施工現場の上面図である。
図8は、長い拡幅部WP2を有する前方施工対象範囲(道路)を含む施工現場の上面図である。
図8及び
図9では、前方監視装置55の監視範囲MZが二点鎖線で表され、前方施工対象範囲の境界線である前方境界線FBが一点鎖線で表されている。また、
図8及び
図9では、現時点におけるアスファルトフィニッシャ100の位置が図形100Aで表され、現時点から所定時間が経過した後の第1時点におけるアスファルトフィニッシャ100の位置が図形100Bで表され、第1時点から所定時間が経過した後の第2時点におけるアスファルトフィニッシャ100の位置が図形100Cで表されている。また、
図8及び
図9では、明瞭化のため、前方施工対象範囲の境界線を定める地物である物体AP(舗装用型枠)には粗いドットパターンが付され、拡幅部WPには細かいドットパターンが付されている。また、
図8及び
図9では、明瞭化のため、前方境界線FBは実際の位置よりも車幅方向の内側に描かれている。また、
図8では、物体APは、第1左物体APL1~第5左物体APL5を含む左物体APLと、第1右物体APR1~第3左物体APR3を含む右物体APRとで構成され、
図9では、物体APは、第1左物体APL1~第4左物体APL4を含む左物体APLと、第1右物体APR1~第4右物体APR4を含む右物体APRとで構成されている。
【0127】
図8に示す施工現場では、現時点において、前方施工対象範囲は、進行方向の左側(+Y側)に拡幅部WP1を有する。拡幅部WP1は、進行方向において長さLT1にわたって延びるように形成されている。
【0128】
コントローラ50の走行軌道生成部50eは、左前方監視装置55Lの出力に基づいて左前方境界線FBLを導き出し、前方施工対象範囲の左側に拡幅部WP1が存在することを導き出す。また、走行軌道生成部50eは、右前方監視装置55Rの出力に基づいて右前方境界線FBRを導き出し、前方施工対象範囲の右側に拡幅部WPが存在しないことを導き出す。
【0129】
この場合、走行軌道生成部50eは、拡幅部WP1の長さLT1が所定の距離LX以上であるか距離LX未満であるかを判定する。
図8に示す例では、走行軌道生成部50eは、拡幅部WP1の長さLT1が距離LX未満であると判定する。
【0130】
拡幅部WP1の長さLT1が距離LX未満であると判定した場合、走行軌道生成部50eは、拡幅部WP1が比較的短いものであると判定する。そして、走行軌道生成部50eは、前方施工対象範囲のうちの拡幅部WP1が存在する部分の幅(道路幅)を、前方施工対象範囲のうちの拡幅部WP1が存在しない部分の幅WD1と同じであると見なした上で、前方施工対象範囲を二等分する直線を走行軌道として生成する。
図8に示す例では、前方施工対象範囲のうちの拡幅部WP1が存在する部分の幅(道路幅)は、矢印AR10で示す位置で幅WD1から徐々に広がり、矢印AR11で示す位置で幅WD2(最大幅)となり、矢印AR12で示す位置で幅WD2から徐々に狭まり、矢印AR13で示す位置で幅WD3となる。なお、幅WD3は幅WD1と同じである。この場合、走行軌道生成部50eは、少なくとも距離LXにわたって前方施工対象範囲の幅WD1が不変であると見なし、幅WD1の前方施工対象範囲を二等分する直線を走行軌道RP1として生成する。
【0131】
操舵制御部50bは、走行軌道生成部50eが生成した走行軌道RP1に沿ってアスファルトフィニッシャ100の中心点が移動するように操舵装置53に対して操舵指令を出力する。
図8に示す例では、操舵制御部50bは、アスファルトフィニッシャ100が拡幅部WP1を通過する間、操舵角を変化させることなく、アスファルトフィニッシャ100を直進させる。
【0132】
スクリード伸縮制御部50cは、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR10で示す位置に達したときに左後側スクリード31Lの伸張を開始させ、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR11で示す位置に達したときに左後側スクリード31Lの伸張を停止させる。また、スクリード伸縮制御部50cは、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR12で示す位置に達したときに左後側スクリード31Lの収縮を開始させ、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR13で示す位置に達したときに左後側スクリード31Lの収縮を停止させる。
【0133】
搬送量調整部50fは、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR10で示す位置に所定時間後に達すると判定した時点で左目標搬送速度の増大を開始させる。そして、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR10で示す位置を通過した後もしばらくの間は、左目標搬送速度は徐々に大きくなっていく。その後、搬送量調整部50fは、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR11で示す位置に所定時間後に達すると判定した時点で左目標搬送速度の増大を停止させる。そして、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR11で示す位置を通過した後もしばらくの間は、左目標搬送速度はそのまま維持される。その後、搬送量調整部50fは、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR12で示す位置に所定時間後に達すると判定した時点で左目標搬送速度の低減を開始させる。そして、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR12で示す位置を通過した後もしばらくの間は、左目標搬送速度は徐々に小さくなっていく。その後、搬送量調整部50fは、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR13で示す位置に所定時間後に達すると判定した時点で左目標搬送速度の低減を停止させる。そして、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR13で示す位置を通過した後も、左目標搬送速度はそのまま維持される。
【0134】
図8に示す例では、左後側スクリード31Lの左前端部が拡幅部WP1に達するまでは、左後側スクリード31Lの突出量WLは値WL1であり、右後側スクリード31Rの突出量WRは値WR1である。なお、値WL1と値WR1とは同じである。
【0135】
その後、左後側スクリード31Lの左前端部が拡幅部WP1を通過している間では、左後側スクリード31Lの突出量WLは値WL2まで大きくなった後で値WL1に戻る。右後側スクリード31Rの突出量WRは、左後側スクリード31Lの左前端部が拡幅部WP1を通過している間も大きくなることはなく、値WR1のままで維持される。
【0136】
このように、左後側スクリード31Lの左前端部が拡幅部WP1を通過している間では、左目標搬送速度は一時的に増大するが、右目標搬送速度は変化しない。
【0137】
図9に示す施工現場では、現時点において、前方施工対象範囲は、進行方向の左側(+Y側)に拡幅部WP2を有する。拡幅部WP2は、進行方向において距離LXを超えて長距離にわたって延びるように形成されている。
【0138】
コントローラ50の走行軌道生成部50eは、左前方監視装置55Lの出力に基づいて左前方境界線FBLを導き出し、前方施工対象範囲の左側に拡幅部WP2が存在することを導き出す。また、走行軌道生成部50eは、右前方監視装置55Rの出力に基づいて右前方境界線FBRを導き出し、前方施工対象範囲の右側に拡幅部WPが存在しないことを導き出す。
【0139】
この場合、走行軌道生成部50eは、拡幅部WP2の長さが所定の距離LX以上であるか距離LX未満であるかを判定する。
図9に示す例では、走行軌道生成部50eは、拡幅部WP2の長さが距離LX以上であると判定する。
【0140】
拡幅部WP2の長さが距離LX以上であると判定した場合、走行軌道生成部50eは、拡幅部WP2が比較的長いものであると判定する。そして、走行軌道生成部50eは、拡幅部WP2を含む前方施工対象範囲を二等分する線を走行軌道として生成する。
図9に示す例では、前方施工対象範囲の幅は、矢印AR10で示す位置で幅WD1から徐々に広がり、矢印AR11で示す位置で幅WD2(最大幅)となる。この場合、走行軌道生成部50eは、前方施工対象範囲を二等分する線、すなわち、曲線部分を含む線を走行軌道RP2として生成する。
【0141】
具体的には、走行軌道RP2は、アスファルトフィニッシャ100の前端が矢印AR10で示す位置に達する前のアスファルトフィニッシャ100の前後軸AX11に一致する第1直線部分と、アスファルトフィニッシャ100の後端が矢印AR11で示す位置を通過した後のアスファルトフィニッシャ100の前後軸AX12に一致する第2直線部分と、第1直線部分と第2直線部分とを滑らかに繋ぐ曲線部分と、を含む。
【0142】
操舵制御部50bは、走行軌道生成部50eが生成した走行軌道RP2に沿ってアスファルトフィニッシャ100の中心点が移動するように操舵装置53に対して操舵指令を出力する。
図9に示す例では、操舵制御部50bは、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR10で示す位置に達する前に左方への操舵を開始させ、且つ、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR11で示す位置に達する前に左方への操舵を終了させる。
【0143】
スクリード伸縮制御部50cは、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR10で示す位置に達したときに左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rのそれぞれの伸張を開始させ、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR11で示す位置に達したときに左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rのそれぞれの伸張を停止させる。
【0144】
搬送量調整部50fは、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR10で示す位置に所定時間後に達すると判定した時点で左目標搬送速度及び右目標搬送速度のそれぞれの増大を開始させる。そして、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR10で示す位置を通過した後もしばらくの間は、左目標搬送速度及び右目標搬送速度のそれぞれは徐々に大きくなっていく。その後、搬送量調整部50fは、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR11で示す位置に所定時間後に達すると判定した時点で左目標搬送速度及び右目標搬送速度のそれぞれの増大を停止させる。そして、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR11で示す位置を通過した後も、左目標搬送速度及び右目標搬送速度のそれぞれはそのまま維持される。
【0145】
図9に示す例では、左後側スクリード31Lの左前端部が拡幅部WP2に達するまでは、左後側スクリード31Lの突出量WLは値WL1であり、右後側スクリード31Rの突出量WRは値WR11である。なお、値WL11と値WR11とは同じである。
【0146】
その後、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR11で示す位置に達するまでは、左後側スクリード31Lの突出量WLは値WL12まで大きくなり、右後側スクリード31Rの突出量WRも値WR12まで大きくなる。なお、値WL12と値WR12とは同じである。
【0147】
そして、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR11で示す位置に達した後は、左後側スクリード31Lの突出量WLは値WL12のまま維持され、右後側スクリード31Rの突出量WRも値WR12のまま維持される。
【0148】
そのため、左後側スクリード31Lの左前端部が矢印AR10で示す位置に達してから矢印AR11で示す位置に達するまでは、左目標搬送速度及び右目標搬送速度は略同じ割合で増大する。
【0149】
次に、
図10を参照し、本開示の実施形態に係る道路機械の別の一例であるアスファルトフィニッシャ150について説明する。
【0150】
図10に示すアスファルトフィニッシャ150は、前方監視装置55がトラクタ1の上面の前端中央部に一つだけ取り付けられている点で、
図2に示すアスファルトフィニッシャ100と異なるが、その他の点で
図2に示すアスファルトフィニッシャ100と同じである。なお、
図10に示す二点鎖線は、前方監視装置55の監視範囲MZの境界を表している。
【0151】
図10に示す前方監視装置55は、ホッパ2よりも前方に位置する前方施工対象範囲の左側の境界線を定める地物(左物体APL)に関する情報と、ホッパ2よりも前方に位置する前方施工対象範囲の右側の境界線を定める地物(右物体APR)に関する情報と、を同時に取得できるように構成されている。また、
図10に示す前方監視装置55は、ホッパ2内に供給された舗装材PVの残量の状態等、ホッパ2内の状態を監視できるように構成されていてもよい。また、
図10に示す前方監視装置55は、ホッパ2内に供給される舗装材PVを運搬するダンプトラックの状態等、ホッパ2の前方に位置する空間を監視できるように構成されていてもよい。
【0152】
上述のように、本開示の実施形態に係る道路機械の一例であるアスファルトフィニッシャ100は、
図1及び
図2に示すように、トラクタ1と、トラクタ1の前方に設置されて舗装材PVを受け入れるホッパ2と、ホッパ2内の舗装材PVをトラクタ1の後方へ給送するコンベアCVと、コンベアCVにより給送された舗装材PVをトラクタ1の後方で敷き拡げるスクリュSCと、スクリュSCにより敷き拡げられた舗装材PVをスクリュSCの後方で敷き均すスクリード3と、スクリード3よりも前方に位置する施工対象範囲の境界線(ガイド線GD)を定める地物(物体AP)に関する情報に基づいて所定の座標系における境界線(ガイド線GD)上の座標を算出する制御装置(コントローラ50)と、を備えている。
【0153】
また、アスファルトフィニッシャ100では、スクリード3は、車幅方向に伸縮可能となるように構成されている。そのため、コントローラ50は、境界線(ガイド線GD)上の座標とスクリード3の端部の座標とを一致させるようにスクリード3を伸縮させることができる。
【0154】
この構成により、コントローラ50は、境界線(ガイド線GD)の向きが変化する部分にスクリード3が到達する前に境界線(ガイド線GD)の向きの変化を認識できる。そのため、コントローラ50は、スクリード3の端部と境界線(ガイド線GD)との間に間隔が存在していることを認識した後でその間隔が小さくなるようにスクリードを伸縮させる場合に比べ、スクリード3の伸縮量を適切に制御できる。換言すれば、コントローラ50は、スクリード3の端部と境界線(ガイド線GD)との間に間隔が発生するのを抑制できる。
【0155】
また、アスファルトフィニッシャ100では、コントローラ50は、トラクタ1が所定の距離だけ前進する度に境界線(ガイド線GD)上の座標を算出するように構成されていてもよい。
図2に示す例では、コントローラ50は、境界線(ガイド線GD)上の点VL及び点VRのそれぞれの座標を断続的に算出して記憶するように構成されている。
【0156】
この構成は、座標の算出に関する演算負荷が必要以上に大きくなってしまうのを抑制できるという効果をもたらす。
【0157】
また、換言すれば、コントローラ50は、第1時点で算出された境界線(ガイド線GD)上の座標が、第1時点よりも後の第2時点におけるスクリード3の端部の目標座標となるようにスクリード3を伸縮させるように構成されている。
【0158】
この構成により、コントローラ50は、境界線(ガイド線GD)の向きが変化する部分にスクリード3が到達する前に境界線(ガイド線GD)の向きの変化を認識できる。そのため、この構成は、スクリード3の伸縮量をより適切に制御できるという効果をもたらす。
【0159】
また、アスファルトフィニッシャ100は、スクリード3よりも前方に位置する施工対象の道路の境界線(ガイド線GD)を定める地物(物体AP)に関する情報を取得する物体検出装置51を備えていてもよい。そして、物体検出装置51は、スクリード3よりも前方に配置されていてもよい。
図2に示す例では、物体検出装置51は、スクリード3の前方にあるトラクタ1よりも前方に配置されている。
【0160】
この構成により、物体検出装置51は、境界線(ガイド線GD)の向きが変化する部分にスクリード3が到達する前にその部分に関する情報(例えば、車体(トラクタ1)に対する相対位置、距離画像、又は画像等)を取得できる。そのため、この構成は、境界線(ガイド線GD)の向きが変化する部分にスクリード3が到達する前に境界線(ガイド線GD)の向きの変化をコントローラ50が認識できるようになるという効果をもたらす。
【0161】
また、本開示の実施形態に係るアスファルトフィニッシャ100の制御システムDSでは、
図8又は
図9に示すように、コントローラ50は、トラクタ1よりも前方に位置する施工対象範囲の境界線(前方境界線FB)を定める地物(物体AP)に関する情報に基づいてトラクタ1の走行軌道RPを設定するように構成されていてもよい。
【0162】
この構成により、制御システムDSは、アスファルトフィニッシャ100の進行方向をより適切に決定できるという効果をもたらす。
【0163】
また、コントローラ50は、トラクタ1の進行方向を制御することにより、設定した走行軌道RPに沿ってトラクタ1を進行させることができるように構成されていてもよい。なお、トラクタ1の進行方向の制御は、例えば、車輪式アスファルトフィニッシャの場合には、操舵輪としての前輪6の操舵角の制御を意味し、クローラ式アスファルトフィニッシャの場合には、左右のクローラの回転速度の差の制御を意味する。
【0164】
この構成により、制御システムDSは、設定した走行軌道RPに沿ってアスファルトフィニッシャ100を進行させることができるという効果をもたらす。
【0165】
また、コントローラ50は、トラクタ1よりも前方に位置する施工対象範囲の境界線(前方境界線FB)を定める地物(物体AP)に関する情報に基づいてトラクタ1の進行方向を決定するように構成されていてもよい。
【0166】
また、本開示の実施形態に係るアスファルトフィニッシャ100の制御システムDSでは、
図8又は
図9に示すように、コントローラ50は、前方に位置する施工対象範囲の境界線(前方境界線FB)を定める地物(物体AP)に関する情報に基づいて搬送装置が舗装材PVを搬送する速度の目標値である目標搬送速度を設定するように構成されていてもよい。
【0167】
この構成により、制御システムDSは、搬送装置による舗装材PVの搬送速度をより適切に制御できるという効果をもたらす。そのため、制御システムDSは、抱え込み量が不足して新設舗装体NPの表面に凹部が形成されてしまうといった状況が発生するのを抑制できる。また、制御システムDSは、抱え込み量が多くなりすぎて後側スクリード31が受ける負荷が大きくなり車輪のスリップ等が発生してしまうのを抑制できる。そのため、制御システムDSは、走行速度センサS1等の出力に基づいて算出される走行速度又は走行距離等に誤差が生じたり、アスファルトフィニッシャ100の進行方向が誤った方向に変化したりするのを抑制できる。また、抱え込み量の不足を取り戻すためにコンベアCVの送り速度及びスクリュSCの回転速度を急加速させるとエンジン負荷が一時的に大きくなりパワー不足(馬力不足)に陥るおそれがあるが、制御システムDSは、そのような事態の発生を抑制することもできる。
【0168】
また、搬送装置は、ホッパ2内の舗装材PVをトラクタ1の後方へ給送するコンベアCVと、コンベアCVにより給送された舗装材PVをトラクタ1の後方で敷き拡げるスクリュSCと、を含んでいてもよい。この場合、コントローラ50は、目標搬送速度に基づき、コンベアCV及びスクリュSCの動きを制御するように構成されていてもよい。
【0169】
この構成により、制御システムDSは、コンベアCVの送り速度及びスクリュSCの回転速度を制御することにより、搬送装置による舗装材PVの搬送速度をより適切に制御できるという効果をもたらす。
【0170】
また、コントローラ50は、搬送装置が左後側スクリード31Lに向けて舗装材PVを搬送する速度の目標値である左目標搬送速度と、搬送装置が右後側スクリード31Rに向けて舗装材PVを搬送する速度の目標値である右目標搬送速度と、を別々に設定するように構成されていてもよい。
【0171】
この構成により、制御システムDSは、左後側スクリード31Lの突出量と右後側スクリード31Rの突出量とが異なる場合であっても、左後側スクリード31L及び右後側スクリード31Rのそれぞれに対して適量の舗装材PVを搬送できるという効果をもたらす。
【0172】
また、施工対象範囲の境界線(前方境界線FB)は、施工対象範囲の左側の境界線(左前方境界線FBL)と施工対象範囲の右側の境界線(右前方境界線FBR)とを含んでいてもよい。
【0173】
また、施工対象範囲の境界線(前方境界線FB)を定める地物(物体AP)に関する情報は、アスファルトフィニッシャ100の外部にある空間認識装置の出力に基づいて生成されてもよく、アスファルトフィニッシャ100に搭載された空間認識装置(前方監視装置55)の出力に基づいて生成されてもよい。
【0174】
また、空間認識装置は、アスファルトフィニッシャ100とアスファルトフィニッシャ100の前方に位置する運搬車両との間の距離をコントローラ50が算出できるように構成されていてもよい。
【0175】
また、空間認識装置は、アスファルトフィニッシャ100の周囲に位置する物体をコントローラ50が検出できるように構成されていてもよい。
【0176】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、後述する実施形態に制限されることもない。上述した或いは後述する実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形又は置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
【0177】
例えば、上述の実施形態では、スクリード3よりも前方に位置する施工対象範囲の境界線(ガイド線GD)を定める地物(物体AP)に関する情報は、物体検出装置51が取得するように構成されている。しかしながら、コントローラ50は、揮発性記憶装置又は不揮発性記憶装置に予め記憶される設計データ等から、地物(物体AP)に関する情報を取得するように構成されていてもよい。この場合、物体検出装置51による地物(物体AP)に関する情報の取得は省略されてもよい。
【0178】
また、上述の実施形態では、物体検出装置51は、アスファルトフィニッシャ100に取り付けられているが、車両又はマルチコプタ等の、アスファルトフィニッシャ100以外の移動体に取り付けられていてもよい。
【0179】
また、上述の実施形態では、前方監視装置55は、アスファルトフィニッシャ100に取り付けられているが、車両又はマルチコプタ等の、アスファルトフィニッシャ100以外の移動体に取り付けられていてもよく、施工現場に設置された鉄塔等の構造物に取り付けられていてもよい。
【0180】
また、コントローラ50の各種機能を実現するための座標算出部50a、操舵制御部50b、スクリード伸縮制御部50c、境界線導出部50d、走行軌道生成部50e、及び搬送量調整部50fの少なくとも一つは、コントローラ50以外の他の制御装置(演算装置)に実装されていてもよい。他の制御装置は、空間認識装置が有する制御装置(演算装置)であってもよい。
【符号の説明】
【0181】
1・・・トラクタ 1S・・・運転席 2・・・ホッパ 3・・・スクリード 3A・・・レベリングアーム 3AL・・・左レベリングアーム 3AR・・・右レベリングアーム 5・・・後輪 6・・・前輪 7・・・スクリード伸縮シリンダ 7L・・・左スクリード伸縮シリンダ 7R・・・右スクリード伸縮シリンダ 30・・・前側スクリード 30L・・・左前側スクリード 30R・・・右前側スクリード 31・・・後側スクリード 31L・・・左後側スクリード 31R・・・右後側スクリード 32・・・踏み板 32C・・・中央踏み板 32L・・・左踏み板 32R・・・右踏み板 41・・・サイドプレート 41L・・・左サイドプレート 41R・・・右サイドプレート 42・・・モールドボード 42L・・・左モールドボード 42R・・・右モールドボード 43・・・リテーニングプレート 43L・・・左リテーニングプレート 43R・・・右リテーニングプレート 50・・・コントローラ 50a・・・座標算出部 50b・・・操舵制御部 50c・・・スクリード伸縮制御部 50d・・・境界線導出部 50e・・・走行軌道生成部 50f・・・搬送量調整部 51・・・物体検出装置 51L・・・左物体検出装置 51R・・・右物体検出装置 52・・・車載表示装置 53・・・操舵装置 54・・・スクリード伸縮装置 55・・・前方監視装置 55L・・・左前方監視装置 55R・・・右前方監視装置 56・・・コンベア制御装置 57・・・スクリュ制御装置 60・・・取り付け部材 60L・・・左取り付け部材 60R・・・右取り付け部材 100・・・アスファルトフィニッシャ AP・・・物体 APL・・・左物体 APL1・・・第1左物体 APL2・・・第2左物体 APR・・・右物体 APR1・・・第1右物体 APR2・・・第2右物体 AX・・・前後軸 BS・・・路盤 CL・・・中心線 CV・・・コンベア CVL・・・左コンベア CVR・・・右コンベア DS・・・制御システム GD・・・ガイド線 GDL・・・左ガイド線 GDR・・・右ガイド線 NP・・・新設舗装体 PV・・・舗装材 S1・・・走行速度センサ S2・・・高さセンサ S2L・・・左高さセンサ S2R・・・右高さセンサ SB、SBa・・・回動部材 SC・・・スクリュ SCL・・・左スクリュ SCR・・・右スクリュ SH・・・ステアリングホイール TA・・・伸縮部材 ZL・・・左監視範囲 ZR・・・右監視範囲