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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154952
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】走行車両
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/00 20060101AFI20231013BHJP
   F16H 61/04 20060101ALI20231013BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20231013BHJP
   F16H 61/68 20060101ALI20231013BHJP
   F16H 59/42 20060101ALI20231013BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20231013BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20231013BHJP
   B60W 10/111 20120101ALI20231013BHJP
   F16H 9/18 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
F02D29/00 F
F16H61/04
F16H63/50
F16H61/68
F16H59/42
B60W10/00 106
B60W10/06
B60W10/111
F16H9/18 Z
F02D29/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064613
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 純
【テーマコード(参考)】
3D241
3G093
3J050
3J552
【Fターム(参考)】
3D241AA51
3D241AB04
3D241AC01
3D241AC18
3D241AD35
3D241AE03
3D241BB11
3D241CA04
3D241CB01
3D241DA24Z
3G093AA03
3G093AA04
3G093AA06
3G093AA08
3G093DA01
3G093EA03
3G093EB03
3J050AA01
3J050AB08
3J050BA01
3J050DA01
3J552MA04
3J552MA07
3J552MA17
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA20
3J552PA51
3J552PA54
3J552QC09
3J552RA02
3J552RA12
3J552RB02
3J552RC13
3J552SA23
3J552SA26
3J552SA27
3J552SA34
3J552SB35
3J552UA09
3J552VA03W
3J552VA32W
3J552VB01W
3J552VC01W
(57)【要約】
【課題】ノンシンクロトランスミッションを備えた走行車両における変速操作を簡便化する。
【解決手段】走行車両は、エンジン23からの動力を変速して走行装置11,12に伝達するノンシンクロトランスミッションに設けられたギヤ式変速装置30と、ギヤ式変速装置30の変速段を切り替える変速操作具19と、エンジン23を制御するエンジン制御ユニット5と、ギヤ式変速装置30における変速段の切り替えを検知する変速操作検知部82と、変速操作検知部82による変速段の切り替え操作の開始の検知に応じて、エンジン回転数を上昇させる変速開始時エンジン制御指令を生成して、エンジン制御ユニット5に与える変速時エンジン制御部83を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの動力を変速して走行装置に伝達するノンシンクロトランスミッションと、
前記ノンシンクロトランスミッションに設けられたギヤ式変速装置と、
前記変速装置の変速段を切り替える変速操作具と、
前記エンジンを制御するエンジン制御ユニットと、
前記ギヤ式変速装置における前記変速段の切り替えを検知する変速操作検知部と、
前記変速操作検知部による前記変速段の切り替え操作の開始の検知に応じて、エンジン回転数を上昇させる変速開始時エンジン制御指令を生成して、当該変速開始時エンジン制御指令を前記エンジン制御ユニットに与える変速時エンジン制御部と、
を備えた走行車両。
【請求項2】
前記変速開始時エンジン制御指令は、変速操作の開始を起点として前記変速操作の総時間より短い所定時間だけ、前記エンジン回転数を上昇させる請求項1に記載の走行車両。
【請求項3】
前記変速開始時エンジン制御指令による前記エンジン回転数の上昇は、前記エンジン回転数が予め算定されたクラッチイン回転数を超えるように設定されている請求項1に記載の走行車両。
【請求項4】
前記変速開始時エンジン制御指令による前記エンジン回転数の上昇量は、アイドリング回転数を基準にして設定されている請求項1に記載の走行車両。
【請求項5】
前記エンジンと前記ギヤ式変速装置との間に遠心クラッチとして機能するベルト無段変速装置が介装されており、前記エンジンがアイドリング回転数で駆動している場合、エンジン動力の前記ギヤ式変速装置への入力が遮断される請求項1から4のいずれか一項に記載の走行車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの動力を変速して走行装置に伝達するノンシンクロトランスミッションを備えた走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ノンシンクロトランスミッションには、ギヤ式変速装置が設けられており、運転者による変速操作具の操作によって、変速装置の変速段が切り替えられる。特許文献1による作業車では、ギヤ式変速装置は入力軸と変速軸とを備え、エンジンからの回転動力が伝達される入力軸には、前進一速ギヤ機構の前進一速ギヤと、前進二速ギヤ機構56の前進二速ギヤと、後進ギヤ機構の後進ギヤとが支持されている。変速軸には、前進一速ギヤ機構の変速ギヤと、前進二速ギヤ機構の変速ギヤと、後進ギヤ機構の変速ギヤとが、相対回転可能に支持されている。さらに、変速軸上には、複数のスプライン機構が備えられている。このように構成されたギヤ式変速装置では、変速レバーの操作に基づいて回転する変速ドラムにより、セレクタフォークが軸方向Xに沿ってスライドし、このスライドにより変速段が切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-003862公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シフタのスライドによって歯(スプライン)と歯とが嵌合することで変速段の切り替えを行っている場合、嵌合すべき歯同士に位相ずれが生じると、シフタがスライドできず、変速が不能となる。シフタの位相ずれを解消するためには、嵌合すべき歯のいずれかが回転する必要がある。しかしながら、エンジンがアイドリング状態で、例えば、無段変速装置が中立状態となっておれば、車体が停止状態となり、トランスミッションの入力軸も静止状態となるので、位相ずれを解消するためには、運転者がアクセルペダルを踏んで、意図的にエンジンの回転数を上昇させるか、あるいは、外力により車輪に回転を与える必要がある。このような変速時の特殊な操作は、運転者にとって煩わしいものである。また、運転技術が未熟な場合、そのような特殊な操作を咄嗟に行うことは困難である。
【0005】
上記実情に鑑み、本発明の目的は、ノンシンクロトランスミッションを備えた走行車両において、変速操作を簡便にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による走行車両は、エンジンからの動力を変速して走行装置に伝達するノンシンクロトランスミッションと、前記ノンシンクロトランスミッションに設けられたギヤ式変速装置と、前記変速装置の変速段を切り替える変速操作具と、前記エンジンを制御するエンジン制御ユニットと、前記ギヤ式変速装置における前記変速段の切り替えを検知する変速操作検知部と、前記変速操作検知部による前記変速段の切り替え操作の開始の検知に応じて、エンジン回転数を上昇させる変速開始時エンジン制御指令を生成して、当該変速開始時エンジン制御指令を前記エンジン制御ユニットに与える変速時エンジン制御部とを備える。
【0007】
この構成によれば、運転者が変速操作具を用いて変速操作を行うと、当該変速操作に基づくギヤ式変速装置における変速段の切り替えが操作検知部によって検知される。変速操作検知部によって、変速操作が開始されたことが検知されると、変速時エンジン制御部が、エンジン回転数を上昇させる指令を、エンジン制御ユニットに与える。これにより、変速操作の開始時に、エンジン回転数が上昇し、例えば、遠心クラッチ等によって動力伝達がオフされていても動力伝達がオンとなり、ギャ式変速装置の入力軸が回転する。これにより、ギヤ式変速装置の変速段を構成する変速ギヤ対(スプライン対)に位相ずれが生じていても、位相ずれが解消され、変変速ギヤ対(スプライン対)が嵌合し、変速段の切り替えが完了する。
【0008】
変速ギヤ対が嵌合すれば、つまり変速操作(変速段の切り替え)が完了すれば、変速時のエンジン回転数の上昇は不要となる。このことから、本発明では、記変速開始時エンジン制御指令は、変速操作の開始を起点として前記変速操作の総時間より短い所定時間だけ、前記エンジン回転数を上昇させるように設定されている。
【0009】
変速操作(変速段の切り替え)前は、摩擦クラッチや遠心クラッチが切り状態となっている場合、エンジン回転数が、そのようなクラッチが入り状態となるクラッチイン回転数を超えると、エンジン動力がギヤ式変速装置(ノンシンクロトランスミッション)に入力され、ギヤ式変速装置の入力軸の回転することで、位相ずれが解消される。このことから、本発明では、記変速開始時エンジン制御指令による前記エンジン回転数の上昇は、前記エンジン回転数が予め算定されたクラッチイン回転数を超えるように設定されている。
【0010】
変速操作(変速段の切り替え)前は、通常アクセルペダルも開放されるので、エンジン回転数はアイドリング回転数となる。したがって、エンジン回転数の上昇は、エンジンのアイドリング回転数を最低回転数として、そこからエンジン回転数を上昇させる必要がある。このことから、本発明では、前記変速開始時エンジン制御指令による前記エンジン回転数の上昇量は、アイドリング回転数を基準にして設定されている。
【0011】
本発明が適用されるパワートレインの具体的な実施形態の1つでは、前記エンジンと前記ギヤ式変速装置との間に遠心クラッチとして機能するベルト無段変速装置が介装されており、前記エンジンがアイドリング回転数で駆動している場合、エンジン動力の前記ギヤ式変速装置への入力が遮断される。この構成では、変速操作前は、ベルト無段変速装置がニュートラル状態となって、動力伝達は遮断されるが、エンジン回転数が上昇することで、ベルト無段変速装置が動力伝達状態となり、その結果、位相ずれが解消され、変速段の切り替えが完了する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】多目的車両の全体側面図である。
図2】多目的車両のパワートレインを示す模式図である。
図3】ギヤ式変速装置を示す部分断面図である。
図4】変速操作系の機能ブロック部である。
図5】変速段切替過程を説明するためのグラフ図である。
図6】別実施形態での変速操作系の機能ブロック部である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
なお、本明細書では、特に断りがない限り、「前」は機体前後方向(走行方向)に関して前方を意味し、「後」は機体前後方向(走行方向)に関して後方を意味する。また、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)を意味する。「上」または「下」は、機体の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さに基づく位置関係を示す。
【0014】
以下、本発明の一例である実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1に示す多目的車両(「走行車両」の一例)は、荷の運搬やレクリエーション等の多様な目的に使用可能な車両として構成されている。多目的車両には、駆動可能且つ操向操作可能な走行装置としての左右一対の前車輪11と、駆動可能な走行装置としての左右一対の後車輪12と、が備えられている。つまり、多目的車両の走行機体は、左右一対の前車輪11及び左右一対の後車輪12により走行可能に構成されている。走行機体の中央部には、操縦者が搭乗して運転操作を行う運転部13が備えられている。走行機体の後部には、荷を積載可能な荷台14が備えられている。走行機体における荷台14よりも下方には、原動部15が備えられている。
【0015】
運転部13は、枠状のロプスフレーム16で囲まれて保護されている。運転部13には、操縦者が着座する運転座席17が備えられている。また、運転部13には、左右の前車輪11の操向操作用のステアリングハンドル18、変速レバーとして構成されている変速操作用の変速操作具19、走行速度を変更操作可能なアクセルペダル20、走行機体を制動操作可能なブレーキペダル21、駐車ブレーキ操作可能なパーキングレバー22等が備えられている。原動部15には、水冷式のガソリンエンジン(「エンジン」の一例;以下、エンジン23と略称する)が備えられている。
【0016】
図2には、この多目的車両のパワートレインが示されている。パワートレインには、エンジン23、ベルト式無段変速機構29、変速装置であるノンシンクロタイプのトランスミッション24が含まれている。エンジン23からの動力は、ベルト式無段変速機構29とトランスミッション24とによって変速され、走行装置に伝達される。
【0017】
図2に示すように、エンジン23は、クランク軸が機体横向きになる姿勢で配置されている。エンジン23には、クランク軸と一体の主出力軸25及びクランク軸と一体の副出力軸26が備えられている。主出力軸25の出力は、ベルト式無段変速機構29に入力される。副出力軸26の出力は、オルタネータ等で構成される発電機28を駆動する。
【0018】
ベルト式無段変速機構29の出力を入力するトランスミッション24には、ギヤ式変速装置30、左右の後車輪12の間に速度差を作り出すことが可能な後輪差動機構31、左右の前車輪11の間に速度差を作り出すことが可能な前輪差動機構32等が備えられている。
【0019】
ベルト式無段変速機構29には、遠心クラッチを介してエンジン23の主出力軸25と連動連結可能な駆動軸36に取り付けられた駆動プーリ37と、駆動プーリ37の後方に位置する従動プーリ38と、駆動プーリ37と従動プーリ38とに亘って巻回された無端ベルト39と、が備えられている。
【0020】
ベルト式無段変速機構29は、駆動プーリ37と従動プーリ38の夫々の巻回径がエンジン23の回転速度に応じて変化して、これにより、エンジン23の動力を無段階に変速してギヤ式変速装置30に出力できるようになっている。
【0021】
ギヤ式変速装置30は、ベルト式無段変速機構29の動力を従動プーリ38と一体回転する入力軸40から入力し、入力軸40から入力した動力を変速して、後車輪12側に連動連結されるファイナルギヤ41、及び、前車輪11側に連動連結可能な動力取出軸42に出力可能となっている。
【0022】
後輪差動機構31は、ファイナルギヤ41から入力した動力を、夫々、機体左右方向に沿って延びる後輪駆動軸43を介して、左右の後車輪12に出力する。
【0023】
左右の前車輪11及び左右の後車輪12には、夫々、ディスクブレーキ機構からなるブレーキ装置50が備えられている。各ブレーキ装置50は、マスターシリンダ(図示せず)を介して、ブレーキペダル21(図1参照)に連動連結されている。
【0024】
図2図3に示すように、ギヤ式変速装置30には、動力を伝達する軸として、入力軸40、変速軸51、中継軸52、伝動軸53が備えられている。入力軸40、変速軸51、中継軸52、伝動軸53は、ミッションケース33内に回動可能に支持されている。
【0025】
入力軸40には、前進一速ギヤ機構54の前進一速駆動ギヤ55と、前進二速ギヤ機構56の前進二速駆動ギヤ57と、後進ギヤ機構58の後進駆動ギヤ59と、が入力軸40と一体回転するように固定支持されている。
【0026】
図3に示すように、変速軸51には、前進一速ギヤ機構54の変速段を構成する前進一速従動ギヤ60と、前進二速ギヤ機構56の変速段を構成する前進二速従動ギヤ61と、後進ギヤ機構58の変速段を構成する後進従動ギヤ62とが相対回転可能な状態で支持されている。前進一速従動ギヤ60は、前進一速駆動ギヤ55と常時噛み合っている。前進二速従動ギヤ61は、前進二速駆動ギヤ57と常時噛み合っている。後進従動ギヤ62は、バックギヤ63(図2参照)を介して、後進駆動ギヤ59と常時噛み合っている。
【0027】
変速軸51には、前進一速従動ギヤ60と後進従動ギヤ62との間に、円筒状の第一ボス部材64が、変速軸51と一体回転するように固定支持されている。変速軸51には、第一伝動ギヤ65が、変速軸51と一体回転するように固定支持されている。変速軸51には、第一伝動ギヤ65と前進二速従動ギヤ61との間に、円筒状の第二ボス部材66が、変速軸51と一体回転するように固定支持されている。
【0028】
第一ボス部材64の外周部には、周方向に複数の外歯を有する第一常噛スプライン67が設けられている。第二ボス部材66の外周部には、周方向に複数の外歯を有する第二常噛スプライン68が設けられている。
【0029】
変速軸51上には、複数(例えば3つ)のスプライン機構70が備えられている。スプライン機構70は、各ギヤ機構54,56,58毎に備えられている。各スプライン機構70には、夫々、外スプライン71と、外スプライン71と噛み合い可能な内スプライン72とが備えられている。
【0030】
具体的には、前進一速ギヤ機構54のスプライン機構70には、前進一速従動ギヤ60の外スプライン71と、前進一速従動ギヤ60の外スプライン71と噛み合い可能な第一シフタ73(「シフタ」の一例)の一端側の内スプライン72と、が備えられている。後進ギヤ機構58のスプライン機構70には、後進従動ギヤ62の外スプライン71と、後進従動ギヤ62の外スプライン71と噛み合い可能な第一シフタ73の他端側の内スプライン72と、が備えられている。前進二速ギヤ機構56のスプライン機構70には、前進二速従動ギヤ61の外スプライン71と、前進二速従動ギヤ61の外スプライン71と噛み合い可能な第二シフタ74(「シフタ」の一例)の一端側の内スプライン72と、が備えられている。
【0031】
第一ボス部材64の第一常噛スプライン67には、第一シフタ73の内スプライン72が常時噛み合っている。第一シフタ73は、変速操作具19に連動連結される第一セレクタフォーク69により、変速軸51の軸方向Xに沿ってスライド移動可能となっている。これにより、第一シフタ73の内スプライン72を、前進一速従動ギヤ60の外スプライン71、または、後進従動ギヤ62の外スプライン71に噛み合わせることができる。
【0032】
第二ボス部材66の第二常噛スプライン68には、第二シフタ74の内スプライン72が常時噛み合っている。第二シフタ74は、変速操作具19に連動連結されている第二セレクタフォーク75により、変速軸51の軸方向Xに沿ってスライド移動可能となっている。これにより、第二シフタ74の内スプライン72を、前進二速従動ギヤ61の外スプライン71に噛み合わせることができる。
【0033】
中継軸52には、第一伝動ギヤ65と常時噛み合う第一被伝動ギヤ76と、第二伝動ギヤ77とが、中継軸52と一体回転するように固定支持されている。
【0034】
ギヤ式変速装置30は、変速操作具19の操作に基づいて第一セレクタフォーク69と第二セレクタフォーク75とを軸方向Xに沿ってスライド移動させることにより、変速段が切り替えられる。
【0035】
具体的には、第一セレクタフォーク69と第二セレクタフォーク75とが、シフトドラム78(図4参照)を介して、変速操作具19に連動連結されている。変速操作具19の操作位置と、第一セレクタフォーク69及び第二セレクタフォーク75の位置との関係は、シフトドラム78の回転角度位置により実現される。
【0036】
変速操作具19を前進一速位置に操作すると、第一セレクタフォーク69により第一シフタ73が前進一速従動ギヤ60側へスライド移動され、第一シフタ73で前進一速従動ギヤ60と第一ボス部材64(変速軸51)とが連動連結される。この際、第二シフタ74は、前進二速従動ギヤ61とは連動連結されない。これにより、ギヤ式変速装置30は前進一速動力を出力する状態となる。この状態で、アクセルペダル20を踏み込み操作すると、前進一速状態で走行機体の走行が行われる。
【0037】
変速操作具19を前進二速位置に操作すると、第二セレクタフォーク75により第二シフタ74が前進二速従動ギヤ61側へスライド移動され、第二シフタ74によって前進二速従動ギヤ61と第二ボス部材66(変速軸51)とが連動連結される。この際、第一シフタ73は、前進一速従動ギヤ60や後進従動ギヤ62とは連動連結されない。これにより、ギヤ式変速装置30は前進二速動力を出力可能な状態が現出される。この状態で、アクセルペダル20を踏み込み操作すると、前進二速状態で走行機体の走行が行われる。
【0038】
変速操作具19を後進位置に操作すると、第一セレクタフォーク69により第一シフタ73が後進従動ギヤ62側へスライド移動され、第一シフタ73によって後進従動ギヤ62と第一ボス部材64(変速軸51)とが連動連結される。この際、第二シフタ74は、前進二速従動ギヤ61とは連動連結されない。これにより、トランスミッション24が後進動力を出力する状態となる。この状態で、アクセルペダル20を踏み込み操作すると、後進状態で走行機体の走行が行われる。
【0039】
図4は、ギヤ式変速装置30に対する変速制御に関係する機能を説明するための機能ブロック図である。ギヤ式変速装置30に対する変速制御に関する機能は、実質的に、エンジン制御ユニット5と、ギヤ式変速装置30における変速段の切り替えを検出する操作検出器6と、制御ユニット8とによって、作り出される。
【0040】
エンジン制御ユニット5は、エンジン操作のための操作具からの信号やエンジン機器からの信号を、直接または制御ユニット8を介して受け取って、エンジン始動、エンジン停止、エンジンの回転数調整等のための制御信号を生成し、エンジン23の動作機器に与える。
【0041】
この実施形態での、ギヤ式変速装置30における変速段の切り替えの中核部材は、シフトドラム78であり、このシフトドラム78は、連係機構79を介して伝達される変速操作具19の操作変位によって、回動変位する。この回動変位が、第一シフタ73と第二シフタ74とを操作することで、変速段の切り替えが行われる。このようなシフトドラム78または第一シフタ73や第二シフタ74による変速段の切り替えに関する操作は操作検出器6によって検出される。つまり、変速操作具19による変速操作は、最終的には、操作検出器6によって検出される。操作検出器6による検出結果は、検出信号として、制御ユニット8に送られる。
【0042】
制御ユニット8は、入出力処理部80、変速制御部81、変速操作検知部82、変速時エンジン制御部83を備えている。入出力処理部80は、ベルト式無段変速機構(CVT)29やトランスミッション24などの車両動作機器に配置された検出器やスイッチなどからの信号を受信し、制御ユニット8の各機能部に転送し、制御ユニット8の各機能部で生成された制御信号や制御指令を車両動作機器に転送する。変速制御部81は、変速操作具19、アクセルペダル20、ブレーキペダル21、パーキングレバー22等の動きに基づいて、車両走行制御を行う。変速操作検知部82は、操作検出器6から送られてくる検出信号に基づいて、ギヤ式変速装置30における変速段の切り替え過程を制御的に検知する。変速時エンジン制御部83は、変速操作検知部82による変速段の切り替え操作の開始の検知に応じて、エンジン回転数を上昇させる変速開始時エンジン制御指令を生成して、エンジン制御ユニット5に与える。
【0043】
図5に、変速段の切り替え過程を説明する(a)(b)(c)の3つのグラフが示されている。(a)のグラフは、縦軸がエンジン回転数で、横軸が時間であり、(b)のグラフは、縦軸が入力軸40の回転数で、横軸が時間であり、(c)のグラフは、縦軸が操作検出器6によって検出された操作量で、横軸が時間である。
【0044】
以下に、これらのグラフを参照して、変速段の切り替え過程の一例を説明する。ここでは、変速段切替の前提条件として、ベルト式無段変速機構29が中立状態で、入力軸40が静止しているとする。次いで、運転者が変速操作具19を操作し始めると(時点:TP1)、変速時エンジン制御部83が変速開始時エンジン制御指令をエンジン制御ユニット5に与える。これにより、エンジン制御ユニット5は、エンジン回転数を上昇させる。エンジン回転数がベルト式無段変速機構29のクラッチイン回転数を超えると、ベルト式無段変速機構29が動力伝達状態となり、入力軸40が回転する(時点:TP2)。この入力軸40の回転により、スプラインの位相ずれが解消され、変速段の切り替えが進行し、時点:TP3で変速段の切り替えが完了する。
【0045】
(a)(b)(c)のグラフから明らかなように、変速開始時エンジン制御指令は、変速操作の開始(時点:TP1)を起点として変速操作の総時間(TP3-TP1)より短い所定時間だけ、エンジン回転数を上昇させるので、変速段の切り替え完了時には、エンジン回転数が元(例えば、アイドリング回転数)に戻っている。また、(a)のグラフで模式的に示されているように、変速開始時エンジン制御指令によるエンジン回転数の上昇量は、アイドリング回転数を基準として、エンジン回転数が予め算定されたクラッチイン回転数を少し超える程度に制限されている。これにより、無駄にエンジン回転数を上昇させること、及び不要に長くエンジン回転数を高くすることを避けている。
【0046】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、変速操作具19とギヤ式変速装置30のシフトドラム78とは、リンク機構などの連係機構79で機械的にかつ操作変位伝達可能に連結されていたが、バイ・ワイヤ方式を用いることも可能である。バイ・ワイヤ方式が用いられた別実施形態における、変速段切替の機能ブロック図が、図6に示されている。ここでは、操作検出器6は、変速操作具19の操作量を検出するように構成されており、操作検出器6からの検出信号は、制御ユニット8の変速操作検知部82に送られる。変速操作検知部82は操作検出器6からの検出信号に基づいて、変速操作を検知する。さらに、変速制御部81は、操作検出器6からの検出信号に基づいて、シフトドラム78のアクチュエータ78aに駆動信号を送り、シフトドラム78を回動させる。なお、この別実施形態においても、操作検出器6が、シフトドラム78などの変速操作機器の動作を検出するように配置されてもよい。
【0047】
(2)上述した実施形態では、変速段切替の前提条件として、ベルト式無段変速機構29が中立状態で、入力軸40が静止しているとしていたが、入力軸40が回転状態であっても、位相ずれが発生するような場合には、変速時エンジン制御部83による変速開始時エンジン制御指令は有効である。
【0048】
(3)上述した実施形態において、変速制御系は、図4図6に示すような機能部から構成されるものに限定されず、任意の機能部の組み合わせから構成されてもよい。例えば、制御ユニット8の各機能部はさらに細分化されても良く、逆に、各機能部の一部または全部がまとめられてもよい。例えば、変速時エンジン制御部83は、エンジン制御ユニット5に備えることができる。
【0049】
(4)上述した実施形態では、ベルト式無段変速機構29が設けられていたが、油圧式無段変速機構が採用されてもよいし、無段変速機構を省略して、単なるメインクラッチ機構を採用してもよい。
【0050】
(5)上述した実施形態では、走行装置は、左右一対の前車輪11と左右一対の後車輪12車輪とから構成されていたが、三輪タイプや二輪タイプで構成してもよい。
【0051】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、変速段切替可能なギヤ式変速装置を備えた走行車両に適用される。
【符号の説明】
【0053】
5 :エンジン制御ユニット
6 :操作検出器
8 :制御ユニット
19 :変速操作具
23 :エンジン
24 :トランスミッション(ノンシンクロトランスミッション)
29 :ベルト式無段変速機構
30 :ギヤ式変速装置
51 :変速軸
52 :中継軸
53 :伝動軸
54 :前進一速ギヤ機構(変速段)
56 :前進二速ギヤ機構(変速段)
58 :後進ギヤ機構(変速段)
79 :連係機構
81 :変速制御部
82 :変速操作検知部
83 :変速時エンジン制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6