(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154953
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B60K 26/02 20060101AFI20231013BHJP
B60T 7/04 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B60K26/02
B60T7/04 C
B60T7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064614
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 智之
【テーマコード(参考)】
3D037
3D124
【Fターム(参考)】
3D037EB02
3D037EB03
3D037EB04
3D037EB07
3D037EB16
3D037EB25
3D124AA33
3D124BB07
3D124BB15
3D124CC31
3D124DD29
3D124DD62
(57)【要約】
【課題】原動部の出力を出力ペダルにより操作するように構成された作業車において、作業車の走行速度を所望の走行速度に容易に維持することができるように構成する。
【解決手段】原動部の出力を操作する出力ペダル21と、出力ペダル21を戻し側に付勢する付勢部材26と、走行用のブレーキを制動状態に操作するブレーキペダルとが備えられる。出力ペダル21を踏み操作された任意の位置で保持する保持状態及び出力ペダル21の保持を解除する解除状態に操作可能な保持部34と、保持部34を保持状態に人為的に操作する人為操作具38とが備えられる。保持状態においてブレーキペダルが踏み操作されると、保持部34を解除状態に操作するブレーキ連係部36が備えられる。保持状態において出力ペダル21が踏み操作されると、保持部34を解除状態に操作する出力連係部32が備えられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動部の出力を操作する出力ペダルと、
前記出力ペダルを戻し側に付勢する付勢部材と、
走行用のブレーキを制動状態に操作するブレーキペダルと、
前記出力ペダルを踏み操作された任意の位置で保持する保持状態、及び前記出力ペダルの保持を解除する解除状態に操作可能な保持部と、
前記保持部を前記保持状態に人為的に操作する人為操作具とが備えられ、
前記保持状態において前記ブレーキペダルが踏み操作されると、前記保持部を前記解除状態に操作するブレーキ連係部と、
前記保持状態において前記出力ペダルが踏み操作されると、前記保持部を前記解除状態に操作する出力連係部とが備えられている作業車。
【請求項2】
前記人為操作具が、前記出力ペダルよりも高い位置に設けられ、
前記出力連係部に、前記出力ペダルの上方の位置で且つ前記人為操作具と前記出力ペダルとの間の高さの位置に設けられ、前記出力ペダルが踏み操作及び戻し操作されることに連動して作動するように、前記出力ペダルに連係された操作部材が設けられており、
前記保持部が前記操作部材に係合操作されて前記操作部材を保持することにより、前記保持状態となり、前記保持部が前記操作部材から離し操作されることにより、前記解除状態となる請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記人為操作具が、前記出力ペダルから左右方向で離れた位置に設けられ、
前記人為操作具と前記保持部とに亘って接続され、前記人為操作具の操作を前記保持部に伝達して、前記保持部が前記保持状態に操作されるようにする連係部材が備えられている請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記ブレーキ連係部は、前記保持状態において前記ブレーキペダルが踏み操作されると、前記ブレーキペダルにより前記保持部が前記操作部材から離し操作されるように構成されている請求項3に記載の作業車。
【請求項5】
前記出力ペダルを踏み操作及び戻し操作可能に支持する支持部材が備えられ、
前記付勢部材が、前記出力ペダルと前記支持部材とに亘って接続されている請求項4に記載の作業車。
【請求項6】
前記支持部材に上下揺動可能に支持され、前記支持部材から後方に向けて延出された上リンクと、
前記支持部材に上下揺動可能に支持され、前記支持部材から後方に向けて延出された下リンクとが備えられ、
前記出力ペダルが、前記上リンクの後部及び前記下リンクの後部に接続されている請求項5に記載の作業車。
【請求項7】
前記操作部材が、前記出力ペダルの踏み操作に連動して、第1軸芯周りに第1方向に揺動し、前記出力ペダルの戻し操作に連動して、前記第1軸芯周りに前記第1方向とは逆方向の第2方向に揺動するように支持され、
前記操作部材に、前記第1軸芯の半径方向に沿った複数の第1受け部と、前記第1受け部における前記第1軸芯の半径方向の外端部から、前記第1方向に向かい且つ前記第1軸芯に接近する方向に向かう複数の第1傾斜部とが設けられ、
前記保持部が、前記第1軸芯と平行な第2軸芯周りに揺動可能に支持され、
前記保持部に、前記第2軸芯の半径方向に沿った第2受け部と、前記第2受け部における前記第2軸芯の半径方向の外端部から、前記第2方向に向かい且つ前記第2軸芯に接近する方向に向かう第2傾斜部とが設けられ、
前記保持部が前記操作部材に係合操作されて、前記第1受け部と前記第2受け部とが当接することにより、前記付勢部材による前記出力ペダルの戻し操作が止められ、前記操作部材が保持されて、前記保持状態となり、
前記保持状態において前記出力ペダルが踏み操作されると、前記操作部材の前記第1方向への揺動により、前記第1傾斜部が前記第2傾斜部に押圧されて、前記保持部が前記操作部材から離し操作されることにより、前記解除状態となる請求項2~6のうちのいずれか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車における変速操作系の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車としては、特許文献1に開示されているように、エンジン(原動部に相当)の動力が、ベルト式の無段変速装置を介して前輪及び後輪に伝達されるように構成されたものがある。
【0003】
特許文献1では、運転者が、エンジンのアクセル部を操作するアクセルペダル(出力ペダルに相当)を踏み操作することにより、エンジンの出力を操作する。アクセルペダルが踏み操作されてエンジンの回転数が上昇すると、これに伴って無段変速装置が高速側に操作されるのであり、アクセルペダルが戻し操作されてエンジンの回転数が低下すると、これに伴って無段変速装置が低速側に操作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業車において、例えば除草剤や融雪剤等を散布する作業を行う場合、作業車を一定の走行速度で走行させる必要がある。
この場合、特許文献1の作業車では、作業車の走行速度が所望の走行速度に維持されるように、運転者はアクセルペダルを踏み操作した状態を維持する必要があるので、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、エンジンや電動モータ等の原動部の出力を出力ペダルにより操作するように構成された作業車において、作業車の走行速度を所望の走行速度に容易に維持することができるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業車は、原動部の出力を操作する出力ペダルと、前記出力ペダルを戻し側に付勢する付勢部材と、走行用のブレーキを制動状態に操作するブレーキペダルと、前記出力ペダルを踏み操作された任意の位置で保持する保持状態、及び前記出力ペダルの保持を解除する解除状態に操作可能な保持部と、前記保持部を前記保持状態に人為的に操作する人為操作具とが備えられ、前記保持状態において前記ブレーキペダルが踏み操作されると、前記保持部を前記解除状態に操作するブレーキ連係部と、前記保持状態において前記出力ペダルが踏み操作されると、前記保持部を前記解除状態に操作する出力連係部とが備えられている。
【0008】
本発明によると、運転者が出力ペダルを踏み操作することにより、原動部の出力(回転数)が上昇し、運転者が出力ペダルから足を離すと、付勢部材により出力ペダルが戻し操作されて、原動部の出力(回転数)が低下する。
【0009】
運転者は、出力ペダルを踏み操作して所望の走行速度が得られると、人為操作具を操作することにより保持部を保持状態に操作して、出力ペダルを保持する。運転者が出力ペダルから足を離しても、出力ペダルは所望の位置に保持されるので、作業車の走行速度が所望の走行速度に維持される。
これにより、作業車の走行速度を所望の走行速度に容易に維持することができるようになって、作業車の変速操作系の操作性を向上させることができる。
【0010】
本発明によると、出力ペダルが所望の位置に保持されて作業車が走行している場合、運転者がブレーキペダルを踏み操作すると、ブレーキ連係部により保持部が解除状態に操作されるのであり、付勢部材により出力ペダルが戻し操作されて、原動部の出力(回転数)が低下する。
これにより、原動部の出力(回転数)が上昇した状態に維持されながら、作業車の走行速度を無理に減速する(作業車を無理に停止させる)という状態を避けることができて、作業車の走行速度を無理なく減速することができる(作業車を無理なく停止させることができる)。
【0011】
本発明によると、出力ペダルが所望の位置に保持されて作業車が走行している場合、運転者が出力ペダルを踏み操作すると、出力連係部により保持部が解除状態に操作されるのであり、保持部の干渉を受けることなく、出力ペダルの踏み操作(原動部の出力(回転数)の上昇操作)を行うことができる。
【0012】
以上のように、出力ペダルが所望の位置に保持されて作業車が走行している状態において、ブレーキペダルが踏み操作されることにより保持部が解除状態に操作される点、並びに、出力ペダルが踏み操作されることにより保持部が解除状態に操作される点により、作業車の変速操作系の操作性を向上させることができる。
【0013】
本発明において、前記人為操作具が、前記出力ペダルよりも高い位置に設けられ、前記出力連係部に、前記出力ペダルの上方の位置で且つ前記人為操作具と前記出力ペダルとの間の高さの位置に設けられ、前記出力ペダルが踏み操作及び戻し操作されることに連動して作動するように、前記出力ペダルに連係された操作部材が設けられており、前記保持部が前記操作部材に係合操作されて前記操作部材を保持することにより、前記保持状態となり、前記保持部が前記操作部材から離し操作されることにより、前記解除状態となると好適である。
【0014】
本発明によると、運転者により操作される人為操作具が、出力ペダルよりも高い位置に設けられることにより、運転者にとって人為操作具が操作し易くなるので、人為操作具の操作性を向上させることができる。
【0015】
出力ペダルが所望の位置に保持されるように構成する場合、保持部が出力ペダルに直接に作用して出力ペダルを保持するように構成することは、運転者の足が出力ペダルの付近に存在することにより、好ましくない。
【0016】
本発明によると、出力連係部において、出力ペダルが踏み操作及び戻し操作されることに連動して作動する操作部材が、出力ペダルの上方の位置に設けられ、人為操作具と出力ペダルとの間の高さの位置に設けられており、保持部が操作部材に作用する。
これにより、保持部及び操作部材が運転者の足から離れて配置されるので、保持部及び操作部材と運転者の足とが互いに干渉する状態は生じ難い。
【0017】
本発明によると、操作部材が、出力ペダルから左右方向で離れた位置ではなく、出力ペダルの上方の位置に設けられている点、及び、操作部材が、人為操作具よりも低い位置に設けられている点により、出力ペダルと操作部材とが必要以上に離れることはないので、出力ペダルと操作部材との連係構造を無理なく構成することができる。
【0018】
本発明において、前記人為操作具が、前記出力ペダルから左右方向で離れた位置に設けられ、前記人為操作具と前記保持部とに亘って接続され、前記人為操作具の操作を前記保持部に伝達して、前記保持部が前記保持状態に操作されるようにする連係部材が備えられていると好適である。
【0019】
作業車において、出力ペダルの上方には、エアコンの操作スイッチ等が存在することが考えられる。
本発明によると、人為操作具が出力ペダルよりも高い位置に設けられる場合、人為操作具が出力ペダルから左右方向で離れた位置に設けられ、連係部材が人為操作具と保持部とに亘って接続される。これにより、エアコンの操作スイッチ等を避けながら、人為操作具を無理なく設けることができる。
【0020】
本発明において、前記ブレーキ連係部は、前記保持状態において前記ブレーキペダルが踏み操作されると、前記ブレーキペダルにより前記保持部が前記操作部材から離し操作されるように構成されていると好適である。
【0021】
本発明によると、出力ペダルが所望の位置に保持されて作業車が走行している場合、運転者がブレーキペダルを踏み操作すると、ブレーキ連係部において、ブレーキペダルが保持部に直接に作用して、保持部を操作部材から離し操作する。
これにより、運転者の足の力がブレーキペダルを介して保持部に直接に作用するので、ブレーキペダルが踏み操作されると、保持部が遅れることなく解除状態に操作される。
【0022】
本発明において、前記出力ペダルを踏み操作及び戻し操作可能に支持する支持部材が備えられ、前記付勢部材が、前記出力ペダルと前記支持部材とに亘って接続されていると好適である。
【0023】
本発明によると、出力ペダルを戻し側に付勢する付勢部材が、出力ペダルを支持する支持部材と出力ペダルとに亘って接続されている。これにより、出力ペダルを支持する支持部材が、付勢部材の取付部材にも兼用されるので、構造の簡素化の面で有利である。
【0024】
本発明において、前記支持部材に上下揺動可能に支持され、前記支持部材から後方に向けて延出された上リンクと、前記支持部材に上下揺動可能に支持され、前記支持部材から後方に向けて延出された下リンクとが備えられ、前記出力ペダルが、前記上リンクの後部及び前記下リンクの後部に接続されていると好適である。
【0025】
本発明によると、出力ペダルが上リンク及び下リンクを介して支持部材に支持されることにより、出力ペダルが左右方向に沿った軸芯周りに上下揺動可能に支持された構成に比べて、出力ペダルが上下に平行移動する状態に近い状態を得ることができる。
これにより、一般の乗用車に比べて比較的起立した姿勢で運転者が着座する作業車において、運転者にとって出力ペダルが踏み操作し易いものとなる。
【0026】
本発明において、前記操作部材が、前記出力ペダルの踏み操作に連動して、第1軸芯周りに第1方向に揺動し、前記出力ペダルの戻し操作に連動して、前記第1軸芯周りに前記第1方向とは逆方向の第2方向に揺動するように支持され、前記操作部材に、前記第1軸芯の半径方向に沿った複数の第1受け部と、前記第1受け部における前記第1軸芯の半径方向の外端部から、前記第1方向に向かい且つ前記第1軸芯に接近する方向に向かう複数の第1傾斜部とが設けられ、前記保持部が、前記第1軸芯と平行な第2軸芯周りに揺動可能に支持され、前記保持部に、前記第2軸芯の半径方向に沿った第2受け部と、前記第2受け部における前記第2軸芯の半径方向の外端部から、前記第2方向に向かい且つ前記第2軸芯に接近する方向に向かう第2傾斜部とが設けられ、前記保持部が前記操作部材に係合操作されて、前記第1受け部と前記第2受け部とが当接することにより、前記付勢部材による前記出力ペダルの戻し操作が止められ、前記操作部材が保持されて、前記保持状態となり、前記保持状態において前記出力ペダルが踏み操作されると、前記操作部材の前記第1方向への揺動により、前記第1傾斜部が前記第2傾斜部に押圧されて、前記保持部が前記操作部材から離し操作されることにより、前記解除状態となると好適である。
【0027】
本発明によると、出力連係部の操作部材に、複数の第1受け部と複数の第1傾斜部とが設けられている。保持部に、第1受け部と略平行な第2受け部と、第1傾斜部とは逆向きに傾斜した第2傾斜部とが設けられている。
【0028】
人為操作具により保持部が操作部材に係合操作されると、保持部の第2受け部が操作部材の第1受け部の一つと当接する。この場合、操作部材が付勢部材により第2方向に付勢されているので、操作部材の第1受け部が保持部の第2受け部に押圧されて止められることにより、出力ペダル(操作部材)が保持される。この状態が保持状態である。
ブレーキペダルの踏み操作により、保持部の第2受け部が操作部材の第1受け部から離し操作されることによって、解除状態が得られる。
【0029】
前述の保持状態において、出力ペダルが踏み操作されると、操作部材が第1方向に揺動操作されて、操作部材の第1傾斜部が保持部の第2傾斜部に押圧される。
この場合、操作部材の第1傾斜部が第1方向に向かうように傾斜している点、並びに、保持部の第2傾斜部が第1方向とは逆方向の第2方向に向かうように傾斜している点により、操作部材の第1傾斜部が保持部の第2傾斜部に押圧されると、保持部を操作部材から離れる方向に押し操作する分力が発生して、この分力により保持部の第2受け部が操作部材の第1受け部から離し操作されるのであり、これによって解除状態が得られる。
【0030】
以上のように、出力連係部の操作部材の第1受け部及び第1傾斜部の形状、並びに、保持部の第2受け部及び第2傾斜部の形状に工夫を施すことにより、保持状態において出力ペダルが踏み操作されると保持部を解除状態に操作する出力連係部を、簡素な構造で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図5】操作部材及び保持部の付近の左側面図である。
【
図6】保持部が操作部材に係合操作された保持状態における操作部材及び保持部の付近の左側面図である。
【
図7】
図6に示す状態からアクセルペダルが踏み操作されて、保持部が操作部材から離し操作された解除状態における操作部材及び保持部の付近の左側面図である。
【
図8】保持部が操作部材に係合操作された保持状態におけるブレーキペダルの付近の左側面図である。
【
図9】
図8に示す状態からブレーキペダルが踏み操作されて、保持部が操作部材から離し操作された解除状態におけるブレーキペダルの付近の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1~
図9に、多目的の作業車が示されており、
図1~
図9において、Fは前方向を示し、Bは後方向を示し、Uは上方向を示し、Dは下方向を示し、Rは右方向を示し、Lは左方向を示している。
【0033】
(作業車の全体構成)
図1に示すように、右及び左の前輪1と右及び左の後輪2とにより、機体フレーム3が支持されている。機体フレーム3は、フロアフレーム4、ロプスフレーム5及び後部フレーム6等を有している。後部フレーム6が、ロプスフレーム5の後部に連結され後方に向けて延出されており、荷台11が後部フレーム6に支持されている。
【0034】
右及び左の前席7と右及び左の後席8とが、フロアフレーム4に設けられており、ロプスフレーム5が、前席7及び後席8を覆うようにフロアフレーム4に連結されている。ロプスフレーム5の前部及び後部に、フロントガラス(図示せず)及びリヤガラス(図示せず)が設けられ、ロプスフレーム5の上部に屋根9が設けられており、ロプスフレーム5の前部及び後部に、ドア10が設けられている。
【0035】
エンジン12(原動部に相当)、無段変速装置13、ミッションケース14及び後輪2が、下部フレーム15に支持されており、下部フレーム15がフロアフレーム4及び後部フレーム6に連結されている。
【0036】
無段変速装置13は、ベルト無段変速型式に構成されている。エンジン12の回転数が上昇すると、これに伴って無段変速装置13が自動的に高速側に操作されるのであり、エンジン12の回転数が低下すると、これに伴って無段変速装置13が自動的に低速側に操作される。
ミッションケース14の内部に、前進3段後進1段に変速可能な副変速装置(図示せず)、及び後輪デフ装置(図示せず)が設けられている。
【0037】
エンジン12の動力が、無段変速装置13に伝達され変速されて、ミッションケース14の副変速装置に伝達され変速されて、後輪デフ装置に伝達され、後輪デフ装置から後輪2に伝達される。副変速装置と後輪デフ装置との間から分岐した動力が、伝動軸16を介して前輪デフ装置17に伝達され、前輪デフ装置17から前輪1に伝達される。
【0038】
(ロプスフレームの内部の前部付近の構成)
図1及び
図2に示すように、ロプスフレーム5の内部において、前部パネル18が前席7の前方に設けられている。
【0039】
前部パネル18の上部の左部(左の前席7の前方)に、前輪1を操向操作する操縦ハンドル19と、ミッションケース14の副変速装置を操作する変速レバー20とが設けられている。前部パネル18の左部の下方(左の前席7の前方)に、アクセルペダル21(出力ペダルに相当)と、ブレーキペダル22とが設けられている。
【0040】
(アクセルペダルの支持構造)
図3及び
図4に示すように、前部パネル18(
図2参照)の内部において、支持部材23が設けられている。平板状の上リンク24が、左右方向に沿った軸芯P3周りに上下揺動可能に支持部材23に支持され、支持部材23から後方に向けて延出されている。平板状の下リンク25が、左右方向に沿った軸芯P4周りに上下揺動可能に支持部材23に支持され、支持部材23から後方に向けて延出されている。
【0041】
アクセルペダル21が上リンク24の後部及び下リンク25の後部に接続されており、下リンク25の前部に連結されたアーム25aと、ポテンショメータ型式の位置センサー(図示せず)とが、連係ロッド(図示せず)を介して接続されている。
【0042】
バネ26(付勢部材に相当)が、支持部材23の上部の取付部23aと上リンク24とに亘って接続されており、アクセルペダル21がバネ26により戻し側(上方)に付勢されている。アクセルペダル21の下方に、アクセルペダル21の踏み操作の限度位置を設定するストッパー部27が設けられている。
【0043】
以上の構成により、アクセルペダル21が、踏み操作及び戻し操作可能に支持部材23に支持されている。アクセルペダル21を戻し側に付勢するバネ26(付勢部材)が、上リンク24を介して、アクセルペダル21と支持部材23とに亘って接続されている。
【0044】
アクセルペダル21の操作位置が、下リンク25を介して位置センサーにより検出されており、位置センサーの検出値に基づいて、エンジン12のアクセル部がアクチュエータ(図示せず)により操作されて、エンジン12の出力が操作される(フライバイワイヤ型式)。この場合、アクセルペダル21(下リンク25のアーム25a)と、エンジン12のアクセル部とに亘って、ワイヤ(図示せず)を接続するように構成してもよい。
【0045】
(出力連係部の構成)
図3及び
図4に示すように、支持部材28が、支持部材23の上方に設けられている。平板状の操作部材29が設けられており、操作部材29に連結された支点軸29cが、左右方向に沿った軸芯P1(第1軸芯に相当)周りに回転可能に、支持部材28に支持されている。これにより、操作部材29が、軸芯P1周りに揺動可能に支持部材28に支持されており、軸芯P1から前方に向けて延出されている。
【0046】
操作部材29の支点軸29cの端部にアーム29dが連結されており、操作部材29のアーム29dと上リンク24とに亘って連係ロッド30が接続されている。操作部材29を
図3の時計方向に付勢するバネ31が、操作部材29の支点軸29cに取り付けられている。
これにより、支持部材28と、操作部材29と、連係ロッド30と、バネ31とを有する出力連係部32が設けられている。
【0047】
図5に示すように、操作部材29の前端部が鋸刃状に形成されており、軸芯P1の半径方向に沿った複数の第1受け部29aが、操作部材29の前端部に設けられている。複数の第1傾斜部29bが、操作部材29の前端部に設けられており、第1傾斜部29bは、第1受け部29aにおける軸芯P1の半径方向の外端部から、第1方向A1に向かい且つ軸芯P1に接近する方向に向かうように傾斜している。
【0048】
以上の構成により、
図3,4,5に示すように、アクセルペダル21が踏み操作されると(下方に操作されると)、アクセルペダル21の踏み操作に連動して、上リンク24により連係ロッド30が下方に操作され、操作部材29の支点軸29c及びアーム29dにより、操作部材29が軸芯P1周りに第1方向A1(
図5の反時計方向)に揺動操作される。
【0049】
バネ26によりアクセルペダル21が戻し操作されると(上方に操作されると)、アクセルペダル21の戻し操作に連動して、上リンク24により連係ロッド30が上方に操作され、操作部材29の支点軸29c及びアーム29d、バネ31により、操作部材29が軸芯P1周りに第1方向A1とは逆方向の第2方向A2(
図5の時計方向)に揺動操作される。
【0050】
(保持部の構成)
図3及び
図4に示すように、支持部材33が、支持部材23の上方に設けられている。保持部34が、軸芯P1と平行に左右方向に沿った軸芯P2(第2軸芯に相当)周りに揺動可能に、支持部材33に支持されている。
【0051】
保持部34は、板材がチャンネル状に折り曲げられて構成されており、係合部35及び連係アーム36(ブレーキ連係部に相当)が、保持部34に連結されている。バネ37が支持部材33の取付部33aと保持部34とに亘って接続されており、保持部34がバネ37により
図3の時計方向に付勢されている。
【0052】
図5に示すように、第2受け部35aと第2傾斜部35bとが、係合部35に設けられている。第2受け部35aは、軸芯P2の半径方向に沿うように形成されている。第2傾斜部35bは、第2受け部35aにおける軸芯P2の半径方向の外端部から、第2方向A2に向かい且つ軸芯P2に接近する方向に向かうように傾斜している。
【0053】
図2,3,4に示すように、操作ノブ38(人為操作具に相当)が、前部パネル18における変速レバー20の横隣の部分に設けられており、操作ノブ38と保持部34とに亘って、ワイヤ39(連係部材に相当)が接続されている。
【0054】
操作ノブ38が後方上方に引き操作されると、操作ノブ38の操作がワイヤ39を介して保持部34に伝達されて、保持部34が軸芯P2周りに
図3及び
図5の反時計方向に揺動し、保持部34(係合部35)が操作部材29に係合操作される(保持状態)。
【0055】
以上の構成により、保持部34を保持状態に人為的に操作する操作ノブ38(人為操作具)が設けられている。操作ノブ38(人為操作具)が、アクセルペダル21(出力ペダル)よりも高い位置(前部パネル18)に設けられ、アクセルペダル21(出力ペダル)から左右方向で離れた位置に設けられている(
図2参照)。
【0056】
出力連係部32において、アクセルペダル21(出力ペダル)に連係された操作部材29が、アクセルペダル21(出力ペダル)の上方の位置で且つ操作ノブ38(人為操作具)とアクセルペダル21(出力ペダル)との間の高さの位置に設けられており、操作部材29は、アクセルペダル21(出力ペダル)が踏み操作及び戻し操作されることに連動して作動する。
【0057】
(アクセルペダルの保持状態)
作業車の走行速度を所望の走行速度に維持する場合、運転者は以下の説明のような操作を行えばよい。
【0058】
図5に示すように、保持部34(係合部35)が操作部材29から離し操作された解除状態に操作されていると、運転者がアクセルペダル21を踏み操作及び戻し操作することにより、操作部材29が軸芯P1周りに揺動操作され、エンジン12の出力(回転数)が操作される。
【0059】
図5から
図3及び
図6に示すように、運転者は、アクセルペダル21を踏み操作して所望の走行速度が得られると、アクセルペダル21の踏み操作を維持しながら、操作ノブ38を引き操作して、保持部34(係合部35)を軸芯P2周りに
図6の反時計方向に揺動させ、保持部34(係合部35)を操作部材29に係合操作する。
【0060】
図6に示すように、保持部34(係合部35)が操作部材29に係合操作されると、保持部34(係合部35)の第2受け部35aが、操作部材29の第1受け部29aの一つと当接する。この場合、操作部材29がバネ26,31(
図3及び
図4参照)により第2方向A2に付勢されているので、操作部材29の第1受け部29aが、保持部34(係合部35)の第2受け部35aに押圧される。
【0061】
操作部材29の第1受け部29aと保持部34(係合部35)の第2受け部35aとの間の摩擦抵抗は、バネ37の付勢力よりも強い。これにより、保持部34(係合部35)がバネ37により操作部材29から離し操作されることはなく、操作部材29が保持部34(係合部35)により保持され、バネ26,31によるアクセルペダル21の戻し操作が止められて、アクセルペダル21が保持される。この状態が保持状態である。
【0062】
運転者がアクセルペダル21から足を離しても、アクセルペダル21は踏み操作された所望の位置に保持されるので(保持状態)、作業車の走行速度が所望の走行速度に維持される。
【0063】
以上の構成によって、運転者は、アクセルペダル21を任意の位置に踏み操作した状態で、操作ノブ38を引き操作して保持部34(係合部35)を操作部材29に係合操作することにより、アクセルペダル21を踏み操作された任意の位置で保持することができる(保持状態)。
【0064】
(ブレーキペダルの踏み操作によるアクセルペダルの解除状態への操作)
図4,8,9に示すように、前部パネル18(
図2参照)の左部の下方に、ブレーキペダル22が設けられている。ブレーキペダル22は、左右方向に沿った軸芯P5周りに揺動可能に支持されたアーム22aと、アーム22aの下部に設けられた踏み部22bとを有している。
【0065】
ブレーキペダル22の踏み部22bが踏み操作されて、ブレーキペダル22が軸芯P5周りに踏み方向A3に操作されると、走行用のブレーキ(図示せず)が制動状態に操作される。ブレーキペダル22は、バネ(図示せず)により戻り方向A4に付勢されている。
【0066】
ブレーキペダル22のアーム22aが、連係アーム36の前方に設けられている。
図8に示すように、保持部34(係合部35)が操作部材29に係合操作された保持状態において、連係アーム36が、ブレーキペダル22のアーム22aの前方の近傍に位置している。
【0067】
保持部34(係合部35)が操作部材29に係合操作された保持状態において、
図9に示すように、ブレーキペダル22の踏み部22bが踏み操作されてブレーキが制動状態に操作されると(踏み方向A3)、ブレーキペダル22のアーム22aが、連係アーム36に当接して連係アーム36を前方に押し操作するのであり、保持部34(係合部35)が軸芯P2周りに操作部材29から前方に離し操作されて、保持部34(係合部35)が解除状態となる。
【0068】
保持部34(係合部35)が操作部材29から離し操作された解除状態となることによって、バネ26,31(
図3及び
図4参照)により、アクセルペダル21が戻し操作されて、エンジン12の出力(回転数)が低下する。
【0069】
この後、ブレーキペダル22が戻し操作されても(戻り方向A4)、保持部34(係合部35)は、バネ37(
図3~
図6参照)により操作部材29から離し操作された解除状態に維持される。
【0070】
保持部34(係合部35)が操作部材29から離し操作された解除状態において、ブレーキペダル22が踏み操作(踏み方向A3)及び戻し操作(戻り方向A4)されても、ブレーキペダル22(アーム22a)と連係アーム36とは干渉しない。
【0071】
以上の構成により、保持部34(係合部35)が操作部材29に係合操作された保持状態において、ブレーキペダル22が踏み操作されると、連係アーム36(ブレーキ連係部)により保持部34(係合部35)が解除状態に操作される。
【0072】
保持部34(係合部35)が操作部材29から離し操作された解除状態に操作されることにより、アクセルペダル21(出力ペダル)の保持が解除されるのであり、運転者はアクセルペダル21を踏み操作及び戻し操作することができ、操作部材29が軸芯P1周りに揺動操作されて、エンジン12の出力(回転数)が操作される。
【0073】
(アクセルペダルの踏み操作によるアクセルペダルの解除状態への操作)
図6に示すように、保持部34(係合部35)が操作部材29に係合操作された保持状態において、保持部34(係合部35)の第2受け部35aが、操作部材29の第1受け部29aの一つと当接しており、操作部材29がバネ26,31(
図3及び
図4参照)により第2方向A2に付勢されていることにより、操作部材29の第1受け部29aが、保持部34(係合部35)の第2受け部35aに押圧されている。
【0074】
前述の状態において、アクセルペダル21が踏み操作されると、アクセルペダル21の踏み操作に連動して、操作部材29が軸芯P1周りに第1方向A1に揺動操作される。これに伴って、操作部材29の第1傾斜部29bのうち、保持部34(係合部35)の第2傾斜部35bに隣接する操作部材29の第1傾斜部29bが、保持部34(係合部35)の第2傾斜部35bに、第1方向A1に向けて押圧される。
【0075】
この場合、操作部材29の第1傾斜部29bが第1方向A1に向かうように傾斜しており、保持部34(係合部35)の第2傾斜部35bが第1方向A1とは逆方向の第2方向A2に向かうように傾斜している。
【0076】
図7に示すように、操作部材29の第1傾斜部29bが保持部34(係合部35)の第2傾斜部35bに第1方向A1に向けて押圧されると、保持部34(係合部35)を操作部材29から離れる方向(前方)に押し操作する分力が発生して、この分力により保持部34(係合部35)の第2受け部35aが、操作部材29の第1受け部29aから離し操作される。
【0077】
保持部34(係合部35)の第2受け部35aが操作部材29の第1受け部29aから離し操作されると、バネ37により保持部34(係合部35)が軸芯P2周りにさらに前方に揺動操作されて、保持部34(係合部35)が操作部材29から離し操作される。この状態が解除状態である。
アクセルペダル21の踏み操作が停止されても、保持部34(係合部35)は、バネ37により操作部材29から離し操作された解除状態に維持される。
【0078】
以上の構成により、保持部34(係合部35)が操作部材29に係合操作された保持状態において、アクセルペダル21が踏み操作されると、操作部材29(出力連係部32)により保持部34(係合部35)が解除状態に操作される。
【0079】
保持部34(係合部35)が操作部材29から離し操作された解除状態に操作されることにより、アクセルペダル21(出力ペダル)の保持が解除されるのであり、運転者はアクセルペダル21を踏み操作及び戻し操作することができ、操作部材29が軸芯P1周りに揺動操作されて、エンジン12の出力(回転数)が操作される。
【0080】
(発明の実施の第1別形態)
ワイヤ39を廃止し、操作ノブ38と保持部34(係合部35)とに亘って、連係ロッド(図示せず)(連係部材に相当)や、連係リンク(図示せず)(連係部材に相当)を接続してもよい。
【0081】
前述の構成によると、操作ノブ38の前方下方への押し操作を保持部34(係合部35)に伝達することができるので、操作ノブ38の引き操作及び押し操作により、保持部34(係合部35)を、操作部材29に係合操作される保持状態及び操作部材29から離し操作される解除状態に操作することができる。
この場合、操作ノブ38に代えて、操作レバー(図示せず)(人為操作具に相当)を採用してもよい。
【0082】
(発明の実施の第2別形態)
エンジン12に代えて、電動モータ(図示せず)を原動部として設けてもよい。
この構成によると、電動モータの出力を制御する出力ペダル(図示せず)に対して、
図3~
図9に示す構成を採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、エンジンや電動モータ等の原動部の出力を出力ペダルにより操作するように構成された作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0084】
12 エンジン(原動部)
21 アクセルペダル(出力ペダル)
22 ブレーキペダル
23 支持部材
24 上リンク
25 下リンク
26 バネ(付勢部材)
29 操作部材
29a 第1受け部
29b 第1傾斜部
32 出力連係部
34 保持部
35a 第2受け部
35b 第2傾斜部
36 連係アーム(ブレーキ連係部)
38 操作ノブ(人為操作具)
39 ワイヤ(連係部材)
A1 第1方向
A2 第2方向
P1 軸芯(第1軸芯)
P2 軸芯(第2軸芯)