(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154957
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】推定システム、推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064626
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】東田 理沙
(72)【発明者】
【氏名】岡本 圭一郎
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA01
4C316AA05
4C316AA08
4C316AA13
4C316AA15
4C316AA25
4C316AA26
4C316AB04
4C316AB11
4C316FB12
(57)【要約】
【課題】被検眼の年齢を推定することを目的とする。
【解決手段】被検眼の属性であって、前眼部の複数の特性と前記被検眼の複数の寸法値とのうちの少なくとも1つである前記属性の計測値を取得する取得部と、前記計測値と、前記属性の値と眼球の年齢との対応を示す対応情報と、に基づいて、前記被検眼の推定年齢を決定する決定部と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の属性であって、前眼部の複数の特性と前記被検眼の複数の寸法値とのうちの少なくとも1つである前記属性の計測値を取得する取得部と、
前記計測値と、前記属性の値と眼球の年齢との対応を示す対応情報と、に基づいて、前記被検眼の推定年齢を決定する決定部と、
を備える推定システム。
【請求項2】
前記推定年齢と、前記被検眼の実際の年齢である実年齢と、に基づいて、前記被検眼の評価情報を出力する出力制御部を更に備える請求項1に記載の推定システム。
【請求項3】
前記出力制御部は、前記推定年齢が、前記実年齢よりも年齢閾値以上に大きい場合、前記被検眼に異常がある可能性があることを示す情報を、前記評価情報として出力する請求項2に記載の推定システム。
【請求項4】
前記属性は、乱視軸角度であり、
前記出力制御部は、前記推定年齢が、前記実年齢よりも前記年齢閾値以上に大きい場合、前記被検眼に白内障又は老視の可能性があることを示す情報を、前記評価情報として出力する請求項3に記載の推定システム。
【請求項5】
前記属性は、隅角の特性であり、
前記出力制御部は、前記推定年齢が、前記実年齢よりも前記年齢閾値以上に大きい場合、前記被検眼の隅角に異常がある可能性があることを示す情報を、前記評価情報として出力する請求項3に記載の推定システム。
【請求項6】
前記属性は、水晶体の特性であり、
前記出力制御部は、前記推定年齢が、前記実年齢よりも前記年齢閾値以上に大きい場合、前記被検眼に白内障の可能性があることを示す情報を、前記評価情報として出力する請求項3に記載の推定システム。
【請求項7】
前記属性は、水晶体の厚さと前房深度との少なくとも1つと、眼軸長と、であり、
前記取得部は、前記少なくとも1つと前記眼軸長とのそれぞれについて、前記計測値を取得し、
前記決定部は、前記少なくとも1つと前記眼軸長とのそれぞれについて、前記計測値と前記対応情報とに基づいて前記属性についての前記推定年齢を決定し、
前記出力制御部は、前記少なくとも1つと前記眼軸長とのそれぞれについて、前記推定年齢が、前記実年齢よりも前記年齢閾値以上に大きい場合、前記被検眼に老視の可能性があることを示す情報を、前記評価情報として出力する請求項3に記載の推定システム。
【請求項8】
複数の前記属性は、乱視軸角度と、隅角の特性と、水晶体の特性と、前房深度及び眼軸長と、であり、
前記取得部は、複数の前記属性それぞれについて、前記計測値を取得し、
前記決定部は、複数の前記属性それぞれについて、前記計測値と前記対応情報とに基づいて前記属性についての前記推定年齢を決定し、決定した複数の前記推定年齢に基づいて、前記被検眼の最終的な前記推定年齢を決定する請求項1乃至3の何れか1項に記載の推定システム。
【請求項9】
推定システムが実行する推定方法であって、
被検眼の属性であって、前眼部の複数の特性と前記被検眼の複数の寸法値とのうちの少なくとも1つである前記属性の計測値を取得する取得ステップと、
前記計測値と、前記属性の値と眼球の年齢との対応を示す対応情報と、に基づいて、前記被検眼の推定年齢を決定する決定ステップと、
を含む推定方法。
【請求項10】
コンピュータに、
被検眼の属性であって、前眼部の複数の特性と前記被検眼の複数の寸法値とのうちの少なくとも1つである前記属性の計測値を取得する取得ステップ、
前記計測値と、前記属性の値と眼球の年齢との対応を示す対応情報と、に基づいて、前記被検眼の推定年齢を決定する決定ステップ、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定システム、推定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼の検査を支援する技術がある。特許文献1には、前眼部の断層画像に基づいて、隅角の狭さを評価する技術が開示されている。隅角など多くの眼計測値は加齢により変化する特性を有していることが知られている。例えば、隅角は加齢により狭くなる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被検眼の特性から、被検眼の年齢を推定することが要望されている。例えば、隅角の狭さはAOD(Angle Opening Distance)等の値で評価されるが、AODなど眼の状態を表す値の多くは、患者にとって馴染みがないため、医師がこのような値を用いて被検眼の状態を患者に説明しても伝わりにくいという場合がある。このような場合に、被検眼の年齢が推定できると、推定された年齢を用いて眼の状態を患者にも分かりやすく眼の状態を説明できると考えられる。しかし、従来技術では、被検眼の年齢が推定できなかった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、被検眼の年齢を推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の推定システムは、被検眼の属性であって、前眼部の複数の特性と前記被検眼の複数の寸法値とのうちの少なくとも1つである前記属性の計測値を取得する取得部と、前記計測値と、前記属性の値と眼球の年齢との対応を示す対応情報と、に基づいて、前記被検眼の推定年齢を決定する決定部と、を備える。
【0006】
このように、本発明によれば、対応情報から、被検眼の属性の計測値に対応する被検眼の推定年齢が求まる。これにより推定システムは、被検眼の推定年齢を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】スキャニング-アライメント光学系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態に係る推定システム1について説明する。本実施形態では、推定システム1は、眼科装置であり、光干渉断層撮影法により被検眼の前眼部の断層画像を得る光干渉断層撮影装置である。
図1は、推定システム1の全体構成図である。推定システム1は、主に、波長掃引光源10と、SMFC(単一モードファイバカプラ)101と、OCT干渉系100と、k-clock生成用干渉光学系400と、制御ユニット500とを備える。ここで、制御ユニット500は、断層画像処理装置の一例である。
【0009】
OCT干渉系100は、光干渉断層撮影法により被検眼の前眼部の断層画像を得るための光学系である。本実施形態においては、光干渉断層撮影法として、SS-OCT(Swept Source-OCT)を採用した例について説明する。波長掃引光源10は、時間的に波長を変化させて走査しながら光を出力する光源である。この波長掃引光源10としては、例えば、中心波長1μm以上で掃引幅70nm以上の帯域を有する50KHz以上の高速スキャンが実現可能な性能を有する光源が用いられる。波長掃引光源10から出射される光は、単一モードファイバ(Singlemodefiber)などの光ファイバにより導かれ、サンプル20の断層画像撮影に利用されるとともに、k-clockの生成にも利用される。本実施形態では、サンプル20は、被検者の眼球(被検眼)である。
【0010】
波長掃引光源10から出射された光は、SMFC101により分岐し、OCT干渉系100及びk-clock生成用干渉光学系400へ入射する。
【0011】
OCT干渉系100は、SMFC102,103と、測定側サーキュレータ104と、参照側サーキュレータ105と、バランスドディテクタ110と、偏波コントローラ120と、スキャニング-アライメント光学系200と、参照光学系300と、を備えている。SMFC101により分岐された入射光の一方は、SMFC102においてさらに分岐され、他方の光は、スキャニング-アライメント光学系200へ入射し、他方の光は参照光学系300側へ入射する。
【0012】
SMFC102によって分岐された一方の光は、測定側サーキュレータ104を介してスキャニング-アライメント光学系200に入射する。測定側サーキュレータ104は、SMFC102とスキャニング-アライメント光学系200とSMFC103との間に配置された光学素子である。スキャニング-アライメント光学系200は、入射光をサンプル20に照射するとともに、サンプル20からの反射光を、測定側サーキュレータ104を介してSMFC103に導くための光学系である。スキャニング-アライメント光学系200の詳細については
図2を参照しつつ後述する。
【0013】
SMFC102によって分岐された他方の光は、参照側サーキュレータ105を介して参照光学系300に入射する。参照側サーキュレータ105は、SMFC102と参照部301とSMFC103との間に配置された光学素子である。参照光学系300には、入射光を参照光に変換する参照部301が設けられている。本実施形態において、参照部301は、入射光を参照光として出射するプリズムである。参照部301は、サンプル20を測定する前にスキャニング-アライメント光学系200の光路長と参照光学系300の光路長とを一致させるために移動可能に設けられている。なお、サンプル20の測定中は、参照部301の位置は固定される。
【0014】
参照光学系300へ入射した光は、参照部301により参照光となり、参照側サーキュレータ105及び偏波コントローラ120を経由して、SMFC103へ導かれる。偏波コントローラ120は、参照光学系300からSMFC103に導かれる参照光の偏光を制御する素子である。偏波コントローラ120としては、インライン型やパドル型など、種々の態様のコントローラを用いることができる。
【0015】
SMFC103は、スキャニング-アライメント光学系200から導かれた反射光と、参照光学系300から導かれた参照光とを合成して測定干渉光を生成する。また、SMFC103は、合成された測定干渉光を180°位相が異なる2つの測定干渉光に分岐させてバランスドディテクタ110に導く。
【0016】
バランスドディテクタ110は、この測定干渉光を受光して測定干渉信号を出力する。測定干渉信号は、制御ユニット500に入力される。制御ユニット500は、演算処理を行うことにより、測定干渉信号からサンプル20の断層画像を生成する。
【0017】
図2は、スキャニング-アライメント光学系200の構成を示している。スキャニング-アライメント光学系200には、スキャニング光学系、前眼部撮影系、固視標光学系、アライメント光学系が含まれる。
【0018】
スキャニング光学系は、断層画像を得るための光学系である。スキャニング光学系において、測定側サーキュレータ104から光ファイバを経由した光は、コリメータレンズ201を通ってガルバノスキャナ202に入射する。ガルバノスキャナ202は、入射光を走査させるための装置であり、図示しないガルバノドライバにより駆動される。ガルバノスキャナ202を経由した光は、ホットミラー203により90°の角度で反射され、対物レンズ204を通ってサンプル20である被検眼Eに入射する。被検眼Eに入射した光は、前眼部Ecの各組織部分(角膜、前房、虹彩、水晶体等)にて反射して測定光となる。そして、測定光は、上記と逆に対物レンズ204、ホットミラー203、ガルバノスキャナ202、コリメータレンズ201を順に通り、測定側サーキュレータ104を介してSMFC103に導かれる。
【0019】
SMFC103において前眼部Ecからの反射光(測定光)と参照光とが合波され、その信号がバランスドディテクタ110に入力される。バランスドディテクタ110においては、波長毎の干渉が計測され、計測された測定干渉信号が制御ユニット500に入力される。制御ユニット500は、測定干渉信号に対する逆フーリエ変換などの処理を行い、走査線に沿う前眼部Ecの断層画像を取得する。
【0020】
前眼部撮影系は、前眼部の2次元画像を得るための撮影系である。前眼部撮影系には、照明光源205a、205b、対物レンズ204、ホットミラー203、ビームスプリッタ206、結像レンズ207、エリアセンサ208が含まれる。照明光源205a、205bは、被検眼Eの正面に可視光領域の照明光を照射する。照明光は、被検眼Eによって反射し、反射光は、対物レンズ204、ホットミラー203、ビームスプリッタ206、結像レンズ207を通って、エリアセンサ208に導かれる。これにより、被検眼Eの前眼部の正面画像が撮影され、撮影された正面画像は、制御ユニット500に入力される。ここで、正面画像は、反射光の光軸方向から見た前眼部の2次元の画像であり、被検者の左右を画像の左右方向とし、被検者の上下方向を縦方向とする画像である。
【0021】
固視標光学系は、被検者が固視灯を見つめることにより眼球(被検眼E)を極力動かさないようにさせるための光学系である。固視標光学系には、固視標光源210、可変焦点用可動式レンズ211、コールドミラー212、ホットミラー213、リレーレンズ214、ビームスプリッタ215、ビームスプリッタ206、ホットミラー203、対物レンズ204が含まれる。固視標光源210からの出射光は、可変焦点用可動式レンズ211、コールドミラー212、ホットミラー213、リレーレンズ214、ビームスプリッタ215、ビームスプリッタ206、ホットミラー203、対物レンズ204を順に経由して、被検眼Eに到達する。
【0022】
ここで、可変焦点用可動式レンズ211は、固視標のピントを自在に可変できるように移動可能に構成されている。例えば、被検眼Eの屈折力値の位置に固視標のピントが来るように可変焦点用可動式レンズ211を移動させて、被検者が自然視できるようにした状態(水晶体に負荷がかかっていない状態)にすることができる。
【0023】
アライメント光学系は、被検眼Eの位置合わせのための光学系である。図示しないが、推定システム1は、装置本体と、装置本体を支える保持台とを備える。装置本体の前面側(被検者側)には、被検者が顎を載せる顎受け部と、額を当てる額当て部が固定的に設けられている。額当て部に額を当てると、装置本体の前面に設けられた検査窓の正面に被検者の眼(被検眼E)が配置されるようになっている。
【0024】
さらに、装置本体は、保持台に対してX方向、Y方向及びZ方向に移動可能に支持される。装置本体は、制御ユニット500の制御により、保持台に対してX方向、Y方向、Z方向のそれぞれに移動することができる。ここで、X方向は、装置本体の左右方向に対応し、装置に固定された被検者の頭の左右方向に対応する。Y方向は、装置本体の上下方向に対応し、額当て部等に固定された被検者の上下方向に対応する。Z方向は、装置本体の奥行き方向に対応し、額当て部等に固定された被検者の前後方向に対応する。被検眼Eの検査においては、被検眼Eが装置本体の予め定められた位置にセットされるように、装置本体を移動させる必要があり、アライメント光学系は、装置本体の移動量を求めるための光学系である。
【0025】
アライメント光学系には、XY方向位置検出系及びZ方向位置検出系が含まれる。XY方向位置検出系は、被検眼E(角膜頂点)のXY方向の位置(装置本体に対する上下左右方向のずれ)を検出するための構成である。Z方向位置検出系は、被検眼E(角膜頂点)の前後方向の位置(Z方向のずれ)を検出するための構成である。
【0026】
XY方向位置検出系には、XY位置検出光源216、ホットミラー213、リレーレンズ214、ビームスプリッタ215、ビームスプリッタ206、ホットミラー203、対物レンズ204、結像レンズ217、2次元位置センサ218が含まれる。XY位置検出光源216から出射した、位置検出用のアライメント光は、ホットミラー213、リレーレンズ214、ビームスプリッタ215、ビームスプリッタ206、ホットミラー203、対物レンズ204を介して、被検眼Eの前眼部Ec(角膜)に到達する。
【0027】
被検眼Eの角膜表面が球面状に形成されているため、アライメント光は、被検眼Eの角膜頂点の内側で輝点像を形成するようにして角膜表面で反射される。角膜表面で反射した反射光は対物レンズ204に導かれる。角膜頂点による反射光は、対物レンズ204、ホットミラー203、ビームスプリッタ206、ビームスプリッタ215、結像レンズ217を介して2次元位置センサ218に入力される。2次元位置センサ218は、輝点の位置を、角膜頂点の位置(X方向およびY方向の位置)として検出する。
【0028】
2次元位置センサ218の検出信号は、制御ユニット500に入力される。本実施形態においては、制御ユニット500には、2次元位置センサ218と前眼部撮影系との間でのアライメントが行われた状態で、角膜頂点が配置されるべき位置が正規位置として予め設定されている。この角膜頂点の正規位置は、断層画像取得時に追従させるべき位置であり、例えば撮像素子の撮影画像の中心位置等である。制御ユニット500は、2次元位置センサ218の検出に基づいて、正規位置と、検出された角膜頂点(輝点)のX方向およびY方向の位置ずれ量を求める。
【0029】
Z方向位置検出系には、Z位置検出光源219、結像レンズ220、ラインセンサ221が含まれる。Z位置検出光源219は、被検眼Eに対して斜め方向から検出用の光(スリット光またはスポット光)を照射する。照射光は、角膜で斜め方向に反射し、反射光は、結像レンズ220を介してラインセンサ221に導かれる。被検眼Eの前後方向(Z方向)の位置によって、ラインセンサ221に入射される反射光の入射位置が異なるので、被検眼EのZ方向位置が検出される。
【0030】
制御ユニット500は、XY方向位置検出系により検出された角膜頂点(輝点)のX方向およびY方向の位置ずれ量並びにZ方向位置検出系により検出された被検眼Eの位置ずれ量を、すべて0とするように装置本体を保持台に対して移動させる。これにより、アライメントが完了する。
【0031】
図1に示すk-clock生成用干渉光学系400は、等間隔周波数にて測定干渉信号のサンプリングを行うために、SMFC101から分岐された入力光からサンプルクロック(k-clock)を光学的に生成する装置である。k-clock生成用干渉光学系400で生成されたk-clock信号は、制御ユニット500に入力される。制御ユニット500がk-clock信号を参照することで、測定干渉信号の歪みが抑えられ、分解能が悪化することが防止される。
【0032】
図3は、制御ユニット500の構成図である。制御ユニット500は、制御部510と、記憶媒体520と、表示部530と、操作部540と、を備える。制御部510は、不図示のプロセッサ、ROM、RAMを備える。制御部510は、記憶媒体520に記憶されたプログラムを実行することで各種処理を行う。制御部510は、例えば、OCT干渉系100やスキャニング-アライメント光学系200、参照光学系300、k-clock生成用干渉光学系400が備える各制御対象、例えば、アライメントのためのモータやエリアセンサ208等を制御する。また、制御部510は、OCT干渉系100やスキャニング-アライメント光学系200等から出力された情報に基づいて、断層画像を生成(取得)する。
【0033】
記憶媒体520は、各種プログラムや各種データを記憶する。記憶媒体520には、被検眼の生物年齢(Biological Age、BA)と、被検眼の既定の属性の属性値と、の対応を示す対応情報521が記憶されている。以下では、この既定の属性を、計測対象属性とする。本実施形態では、計測対象属性は、前眼部の部位である隅角の特性であって、TISA(trabecular iris space area)である。本実施形態の対応情報521は、生物年齢とサンプル20の属性の値との対応関係を示す情報であり、本実施形態では、生物年齢の情報と、TISAの値の範囲の情報と、が対応付けられた情報である。生物年齢とは、統計的に見てどのくらいの年齢の生態組織に近いかを示す指標である。なお、年齢とは、被検者が生まれてどのくらいの期間が経過したかを示す指標であり、生まれてからの経過年数だけでなく、その被検者の年代(20代、30代等)等も含む概念である。
TISAは、角膜頂点を通る入射光に平行な平面であって、角膜頂点を含む平面内に起きる既定の領域の面積である。この既定の領域は、角膜後面上で強膜岬から既定の距離(例えば、500μm、250μm等)の位置から垂直に引いた虹彩までの線分と、強膜岬からこの線分に平行に引いた直線と、角膜後面と、虹彩前面と、で囲まれた領域である。この線分(角膜後面上で強膜岬から既定の距離の位置から垂直に引いた虹彩までの線分)の長さは、AOD(angle opening distance)である。以下では、角膜後面上で強膜岬から既定の距離の位置から垂直に引いた虹彩までの線分を、AOD線分とする。以下では、この既定の距離を、既定距離とする。
対応情報521は、予め各年齢の複数の被検者の被検眼について計測対象属性の属性値を計測し、各年齢の被検眼の計測対象属性の属性値として、どのような範囲の値が主であるかを特定することで求まる。表示部530は、各種情報を表示する。表示部530は、例えば、前眼部の断層画像や正面画像を表示する。操作部540は、ユーザからの入力を受け付ける。操作部540は、例えばキーボードやマウスなどである。他の例としては、操作部540は、表示部530と一体に設けられたタッチパネルであってもよい。
【0034】
制御部510は、記憶媒体520に格納されているプログラムを実行することにより、断層画像取得部511、計測値取得部512、決定部513及び出力制御部514として機能する。すなわち、以下において、断層画像取得部511、計測値取得部512、決定部513及び出力制御部514が行うものとして記載する処理は、制御部510(プロセッサ)が実行する処理である。
【0035】
断層画像取得部511は、OCT干渉系100、スキャニング-アライメント光学系200(ガルバノスキャナ202等)、k-clock生成用干渉光学系400を制御して、測定干渉信号を取得する。そして、断層画像取得部511は、測定干渉信号に対する逆フーリエ変換などの処理を行い、走査線に沿った前眼部Ecの断層画像を取得する。
【0036】
断層画像取得部511は、ガルバノスキャナ202における走査方向を変更し、複数のスライス面について断層画像を取得する。本実施形態においては、断層画像取得部511は、
図4に示すラジアルスキャンを行う。ラジアルスキャンにおいては、被検眼Eの角膜頂点を中心とする放射方向がB-スキャン方向、被検眼Eの前眼部表面の円周方向がC-スキャン方向となり、各スライス面の2次元の断層画像の取り込みが行われる。なお、ラジアルスキャンの中心は、厳密に角膜頂点に一致しなくてもよい。他の例としては、ラジアルスキャンの中心は、瞳孔中心や角膜径中心など、角膜頂点に略一致するような位置でもよい。こうして得られた断層画像それぞれには、前眼部Ecの隅角が2か所含まれる。ラジアルスキャンにより、被検眼Eの前眼部3次元画像を構成する複数の断層画像が得られる。本実施形態においては、既定の角度間隔で複数の断層画像を取得する。本実施形態では、この角度間隔は、10°であるとするが、他の例として、1°、15°等の他の角度であってもよい。そのため、10°間隔で18の断層画像が取得される。このように、断層画像取得部511は、角膜頂点を中心とし、異なる放射方向において、隅角を含む複数の断層画像を取得する。
【0037】
なお、本実施形態においては、隅角が得られたラジアルスキャンにおける断層画像の位置である計測位置を、角膜頂点を中心とした円の所定位置からの回転角で表すものとする。本実施形態においては、正面画像における前眼部の右側の位置を回転角0°、上側を回転角90°、左側を回転角180°、下側を回転角270°と称することとする。本実施形態では、計測位置は、10°刻みで、0°~170°の値をとる。
【0038】
計測値取得部512は、断層画像取得部511により取得された断層画像に基づいて、被検眼であるサンプル20の計測対象属性の属性値を計測し、計測値を取得する。
計測値取得部512は、複数の断層画像それぞれから、TISAの値を求める。
図5において、AOD線分を白線で示す。なお、
図5は、隅角近傍を示す断層画像を示す図である。
AODの値が小さいほど、隅角が狭いことがわかる。隅角が狭くなる病気として、PACS(原発閉塞隅角症疑い)、PAC(原発閉塞隅角症)、PACG(原発閉塞隅角緑内障)、急性緑内障発作、急性原発閉塞隅角緑内障、続発緑内障(1.前房深度に無関係に生じる周辺前癒着による、2.瞳孔ブロック以外の原因による虹彩―水晶体の前方移動による直接隅角閉塞)がある。例えば、原発性閉塞隅角症は、隅角が狭い状態である。閉塞隅角緑内障は、隅角が狭く、房水の流出抵抗が高くなり、眼圧が上昇し、視神経の障害が発生しつつある状態である。急性緑内障発作は、隅角と虹彩が閉塞し、房水の流出ができなくなり、眼圧が急激に上昇する状態である。
【0039】
計測値取得部512は、複数の断層画像それぞれについて、以下の処理を行うことでTISAの計測値を取得する。
断層画像には、角膜頂点を中心に計測位置の方向における隅角と、角膜頂点を中心に計測位置+180°の方向における隅角と、の2つの隅角が含まれる。そこで、計測値取得部512は、断層画像の2つの隅角それぞれについて、以下の処理を行う。計測値取得部512は、断層画像の隅角の近傍の画像から、強膜岬の位置を特定する。以下では、強膜岬の位置をSS位置と称する。具体的には、計測値取得部512は、まず、断層画像から隅角の近傍の画像を抽出する。これにより、例えば、
図5に示すような画像が抽出される。以下、抽出された画像を局所画像と称する。計測値取得部512は、局所画像において、輝度勾配に基づいて、角膜後面境界線600や虹彩前面境界線602を検出する。角膜後面境界線600は、角膜のうち虹彩側の面に対応する境界線である。虹彩前面境界線602は、虹彩のうち角膜側の面に対応する境界線である。これらの境界線の検出は、輝度勾配の閾値との比較により行われる。また、境界線の検出は、境界線の検出フィルタを用いて行われるとしてもよい。
【0040】
計測値取得部512は、角膜後面境界線600と虹彩前面境界線602を繋いで形成される境界線の湾曲点(隅角底604に相当)を基準として、輝度勾配の大きさに基づいて、強膜-ぶどう膜境界線606を特定する。ここで、強膜-ぶどう膜境界線606は、強膜とブドウ膜の境界に対応する境界線である。
【0041】
そして、計測値取得部512は、強膜-ぶどう膜境界線606と、角膜後面境界線600及び虹彩前面境界線602の交点をSS位置610として特定する。計測値取得部512は、SS位置610を特定する処理として、例えば、特開2015-66084号公報に記載されている技術を用いてもよい。
【0042】
なお、計測値取得部512は、断層画像に基づいてSS位置を特定すればよく、そのための具体的な処理は、本実施形態に限定されるものではない。他の例としては、計測値取得部512は、SS位置推定モデルを用いて、SS位置を特定してもよい。この場合には、SS位置が特定された正解画像をテスト用に用いて、SS位置推定モデルを学習(生成)し、これを記憶媒体520に格納しておくものとする。また、他の例としては、断層画像が表示部530に表示され、ユーザによりSS位置が指定されてもよい。
【0043】
計測値取得部512は、角膜後面境界線600上における、SS位置610から角膜頂点の方向へ既定距離の位置を特定する。そして、計測値取得部512は、特定した位置から延びる角膜後面境界線600に垂直な線と、虹彩前面境界線602と、の交点を特定する。計測値取得部512は、特定した位置と、特定した交点と、を結んだ線分(AOD線分)の距離をAODとして取得する。そして、計測値取得部512は、SS位置610を通るAOD線分に平行な直線と、角膜後面境界線600と、虹彩前面境界線602と、AOD線分と、により囲まれた領域を特定し、特定した領域の面積をTISAとして取得する。
以上の処理により、計測値取得部512は、角膜頂点を中心とした各方向におけるTISAを取得する。
【0044】
決定部513は、計測値取得部512により取得されたTISAの計測値と、対応情報521と、に基づいて、被検眼であるサンプル20の生物年齢を、サンプル20の推定年齢として決定する。本実施形態では、対応情報521は、角膜頂点を中心とした各方向それぞれについての、TISAの値の範囲と年齢との対応情報を示す。
決定部513は、計測値取得部512により取得された各方向のTISAの計測値それぞれについて、対応情報521から、計測値に対応する生物年齢を特定する。そして、決定部513は、各方向のTISAの計測値それぞれについて特定した生物年齢の平均値を、サンプル20の推定年齢として決定する。ただし、他の例として、決定部513は、各方向のTISAの計測値それぞれについて特定した生物年齢についての他の統計値(中央値、最頻値等)等の他の値を、サンプル20の推定年齢として決定してもよい。
【0045】
出力制御部514は、決定部513により決定されたサンプル20の推定年齢と、サンプル20の実年齢(被検者の実年齢)と、に基づいて、サンプル20の評価情報を出力する。本実施形態では、サンプル20の実年齢は、予め指定されており、記憶媒体520に記憶されている。本実施形態では、出力制御部514は、サンプル20の推定年齢からサンプル20の実年齢を引いた差分値が、既定の年齢閾値(例えば、5、10等)以上である場合、サンプル20の計測対象属性に何らかの異常(例えば、疾患、老化等)が生じている可能性があることを示す情報を、評価情報として生成する。本実施形態では、出力制御部514は、評価情報として、サンプル20の隅角に異常が生じている可能性があることを示す情報を、評価情報として生成する。本実施形態では、出力制御部514は、サンプル20の隅角に異常が生じている可能性があることを示すテキスト情報(例えば、「隅角要注意」等)を評価情報として生成する。そして、出力制御部514は、生成した評価情報を、表示部530に表示させることで出力する。ただし、他の例として、出力制御部514は、生成した評価情報を、スピーカを介して音声出力してもよいし、紙などの印刷媒体に印刷することで出力してもよいし、既定の送信先に送信することで出力してもよい。
【0046】
以上、本実施形態の構成により、推定システム1は、被検眼の計測対象属性の計測値と、対応情報521と、から被検眼であるサンプル20の推定年齢を決定できる。
推定システム1は、サンプル20の推定年齢と、サンプル20の実年齢と、に基づいて、サンプル20の評価情報を出力する。これにより、推定システム1は、サンプル20の状態をユーザに提示できる。例また、推定システム1は、サンプル20の推定年齢からサンプル20の実年齢を引いた値が既定の年齢閾値以上であれば、被検眼の隅角に異常が生じている可能性があることを示す評価情報を出力する。これにより、推定システム1は、ユーザに、サンプル20の隅角に異常がある可能性を提示できる。
【0047】
(1-2)推定処理:
図6は、制御部510による推定処理を示すフローチャートである。推定処理は、被検眼であるサンプル20の年齢を推定する処理である。なお、推定処理では、断層画像が取得されるが、これらの取得前に、スキャニング-アライメント光学系におけるアライメントが完了しているものとする。
【0048】
ステップS100において、断層画像取得部511は、3次元画像を構成する複数の断層画像を取得する。具体的には、断層画像取得部511は、ガルバノスキャナ202における走査方向を変更しながら、前眼部の3次元画像を構成する複数の断層画像を取得する。本実施形態においては、10°間隔のラジアルスキャンにより、18個の断層画像が得られる。断層画像取得部511は、ステップS100の処理を完了後に、処理をステップS105に進める。
【0049】
ステップS105において、計測値取得部512は、ステップS100で得られた各断層画像に含まれる2つの隅角それぞれについてTISAの値を計測値として取得する。計測値取得部512は、ステップS105の処理を完了後に、処理をステップS110に進める。ステップS105は、取得ステップの一例である。
ステップS110において、決定部513は、ステップS105で取得されたTISAの計測値と、対応情報521と、に基づいて、被検眼であるサンプル20の生物年齢を、サンプル20の推定年齢として決定する。決定部513は、ステップS110の処理を完了後に、処理をステップS115に進める。ステップS115は、決定ステップの一例である。
【0050】
ステップS115において、出力制御部514は、決定部513により決定されたサンプル20の推定年齢と、サンプル20の実年齢と、に基づいて、サンプル20の評価情報を出力する。本実施形態では、出力制御部514は、サンプル20の推定年齢からサンプル20の実年齢を引いた差分値が、既定の年齢閾値以上である場合、サンプル20の計測対象属性に何らかの異常が生じている可能性があることを示す情報を、評価情報として生成する。そして、出力制御部514は、生成した評価情報を、表示部530に表示させることで出力する。
【0051】
(2)第2の実施形態:
第2の実施形態として、計測対象属性が被検眼であるサンプル20の前眼部の部位である角膜の特性である場合の実施形態について説明する。本実施形態では、計測対象属性は、乱視軸角度である。眼球は、加齢が進むと、乱視軸が傾き、倒乱視になる傾向がある。
本実施形態の推定システム1のハードウェア構成は、第1の実施形態と同様である。
【0052】
本実施形態の対応情報521は、乱視軸角度の値の情報と生物年齢の情報とが対応付けられた情報である。
制御部510は、第1の実施形態と同様に、記憶媒体520に格納されているプログラムを実行することにより、断層画像取得部511、計測値取得部512、決定部513及び出力制御部514として機能する。すなわち、以下において、断層画像取得部511、計測値取得部512、決定部513及び出力制御部514が行うものとして記載する処理は、制御部510(プロセッサ)が実行する処理である。以下では、本実施形態の断層画像取得部511、計測値取得部512、決定部513及び出力制御部514それぞれの処理を説明する。
【0053】
断層画像取得部511は、OCT干渉系100、スキャニング-アライメント光学系200(ガルバノスキャナ202等)、k-clock生成用干渉光学系400を制御して、測定干渉信号を取得する。そして、断層画像取得部511は、測定干渉信号に対する逆フーリエ変換などの処理を行い、走査線に沿った前眼部Ecの断層画像を取得する。
【0054】
断層画像取得部511は、ガルバノスキャナ202における走査方向を変更し、複数のスライス面について断層画像を取得する。本実施形態においては、断層画像取得部511は、第1の実施形態と同様に、ラジアルスキャンを行う。ラジアルスキャンにより、被検眼Eの前眼部3次元画像を構成する複数の断層画像が得られる。このように、断層画像取得部511は、角膜頂点を中心とし、異なる放射方向において、複数の断層画像を取得する。
【0055】
計測値取得部512は、断層画像取得部511により取得された断層画像に基づいて、被検眼であるサンプル20の計測対象属性の属性値を計測し、計測値を取得する。
計測値取得部512は、複数の断層画像それぞれについて、以下の処理を行う。計測値取得部512は、断層画像から角膜前面の境界線を検出する。そして、計測値取得部512は、検出した境界線上における複数の位置における曲率半径を導出する。計測値取得部512は、導出した曲率半径に基づいて、この境界線上における各位置における屈折力を、この位置における角膜の屈折力として求める。より具体的には、計測値取得部512は、この境界線上における各位置について、この位置の曲率半径の逆数に既定の定数を乗じることで、この位置における角膜の屈折力を求める。
計測値取得部512は、以上の処理により、各計測位置における角膜上の複数の位置の屈折力を取得する。
【0056】
計測値取得部512は、取得した角膜上の複数の位置の屈折力に基づいて、角膜上における屈折力の分布を特定する。そして、計測値取得部512は、特定した分布を、最小二乗法等の公知の方法を用いて楕円球近似する。計測値取得部512は、近似した楕円球の長径を、強主径線として特定する。また、計測値取得部512は、入射光に垂直で、特定した強主径線に垂直な線を、弱主径線として特定する。
計測値取得部512は、サンプル20を正面から見た際の特定した強主径線の傾きを、サンプル20の乱視軸角度として特定する。計測値取得部512は、特定した乱視軸角度を、サンプル20の計測対象属性の計測値として取得する。
【0057】
決定部513は、計測値取得部512により取得された乱視軸角度の計測値と、対応情報521と、に基づいて、被検眼であるサンプル20の角膜についての推定年齢を決定する。より具体的には、決定部513は、対応情報521から、乱視軸角度の計測値に対応する生物年齢を取得し、取得した生物年齢を、サンプル20における角膜についての推定年齢として決定する。
【0058】
出力制御部514は、決定部513により決定されたサンプル20の推定年齢と、サンプル20の実年齢と、に基づいて、サンプル20の評価情報を出力する。本実施形態では、サンプル20の実年齢は、予め指定されており、記憶媒体520に記憶されている。
出力制御部514は、サンプル20の推定年齢から実年齢を引いた差分値が既定の年齢閾値(例えば、5、10等)以上である場合、サンプル20の角膜に異常がある可能性があることを示す情報を評価情報として生成する。老視、白内障の眼球は、倒乱視である携行がある。そこで、本実施形態では、出力制御部514は、サンプル20の角膜に異常がある可能性があることを示す情報として、サンプル20に老視、又は白内障の可能性があることを示す情報を生成する。本実施形態では、出力制御部514は、サンプル20に老視、又は白内障の可能性があることを示すテキスト情報(例えば、「老視・白内障注意」等)を評価情報として生成する。ただし、他の例として、出力制御部514は、サンプル20の角膜に異常がある可能性があることを示すテキスト情報(例えば、「角膜注意」等)を評価情報として生成してもよい。そして、出力制御部514は、生成した評価情報を、表示部530に表示させることで出力する。ただし、他の例として、出力制御部514は、生成した評価情報を、スピーカを介して音声出力してもよいし、紙などの印刷媒体に印刷することで出力してもよいし、既定の送信先に送信することで出力してもよい。
【0059】
以上、本実施形態の構成により、推定システム1は、ユーザに、サンプル20の角膜に異常がある可能性を提示できる。
【0060】
(3)第3の実施形態:
第3の実施形態として、計測対象属性が被検眼であるサンプル20の前眼部の部位である水晶体の特性である場合の実施形態について説明する。本実施形態では、計測対象属性は、水晶体核の輝度分布、水晶体の厚さ、及び、水晶体の赤道直径である。
本実施形態の推定システム1のハードウェア構成は、第1の実施形態と同様である。
【0061】
本実施形態の対応情報521は、水晶体核の輝度分布の値の情報と生物年齢の情報とが対応付けられた情報と、水晶体の厚さの値の情報と生物年齢の情報とが対応付けられた情報と、水晶体の赤道直径の値の情報と生物年齢の情報とが対応付けられた情報と、を含む。
制御部510は、第1の実施形態と同様に、記憶媒体520に格納されているプログラムを実行することにより、断層画像取得部511、計測値取得部512、決定部513及び出力制御部514として機能する。すなわち、以下において、断層画像取得部511、計測値取得部512、決定部513及び出力制御部514が行うものとして記載する処理は、制御部510(プロセッサ)が実行する処理である。以下では、本実施形態の断層画像取得部511、計測値取得部512、決定部513及び出力制御部514それぞれの処理を説明する。
【0062】
断層画像取得部511は、OCT干渉系100、スキャニング-アライメント光学系200(ガルバノスキャナ202等)、k-clock生成用干渉光学系400を制御して、測定干渉信号を取得する。そして、断層画像取得部511は、測定干渉信号に対する逆フーリエ変換などの処理を行い、走査線に沿った前眼部Ecの断層画像を取得する。
【0063】
断層画像取得部511は、サンプル20を計測することで、被検眼であるサンプル20の水晶体の近傍の断層画像を取得する。ここで取得される水晶体近傍の画像の模式図を、
図7に示す。
【0064】
計測値取得部512は、断層画像取得部511により取得された水晶体の近傍の断層画像から、境界線の検出により、水晶体の前面701、水晶体核702の前面703、水晶体核702の後面704、水晶体の後面705を検出する。なお、水晶体核702は、水晶体皮質706に囲まれている。計測値取得部512は、検出した水晶体の前面701と後面705との位置を特定し、特定した前面701の位置と後面705の位置との距離を、水晶体の厚さの計測値として取得する。
【0065】
また、計測値取得部512は、角膜頂点を通る入射光に平行な直線(
図7の直線A)に沿った水晶体核の画像内における輝度値の分布を特定する。計測値取得部512は、特定した輝度値の分布を、水晶体核の輝度値の分布の計測値として取得する。白内障等で水晶体核702が濁ると水晶体核702内での輝度値は高くなる。そのため、水晶体核702の輝度分布は、被検眼であるサンプル20の状態を反映した値となる。
【0066】
また、計測値取得部512は、以下のようにして、水晶体の赤道部の直径(以下では、赤道直径)の計測値を取得する。水晶体赤道直径は、水晶体前面の曲線と水晶体後面の曲線の交差する二点間の距離として求まる。計測値取得部512は、被検眼の断面の断層画像から検出した水晶体の前面701の断面内における近似曲線を求める。以下では、この近似曲線を、前面近似曲線とする。また、計測値取得部512は、断層画像から検出した水晶体の後面705の断面内における近似曲線を求める。以下では、この近似曲線を、後面近似曲線とする。そして、計測値取得部512は、前面近似曲線と、後面近似曲線と、の2つの交点を特定し、特定した2つの交点の距離を、被検眼であるサンプル20の水晶体の赤道直径の計測値として取得する。
【0067】
決定部513は、計測値取得部512により取得された水晶体核702の輝度値の分布の計測値と、対応情報521と、に基づいて、被検眼であるサンプル20の水晶体核702の輝度値の分布についての推定年齢を決定する。より具体的には、決定部513は、計測値の輝度値の分布と、対応情報521が示す各輝度値の分布と、の類似度を求める。本実施形態では、決定部513は、輝度値の分布の類似度として、各分布をベクトルとみなした際のベクトル同士の内積の大きさを用いる。ただし、決定部513は、輝度値の分布の類似度として他の値を用いてもよい。例えば、決定部513は、画像相関法を用いて、計測値の輝度値の分布と、対応情報521が示す各輝度値の分布と、の相関値を求めて、求めた相関値を、これらの分布の類似度として用いてもよい。決定部513は、対応情報521が示す輝度値の分布のうち、最も計測値との類似度の大きな分布を特定する。決定部513は、対応情報521から、特定した分布に対応する生物年齢を取得する。決定部513は、取得した生物年齢を、水晶体核702の輝度値の分布についてのサンプル20の推定年齢として決定する。以下では、水晶体核702の輝度値の分布についてのサンプル20の推定年齢を、輝度値推定年齢とする。
【0068】
また、決定部513は、計測値取得部512により取得された水晶体の厚さの計測値と、対応情報521と、に基づいて、被検眼であるサンプル20の水晶体の厚さについての推定年齢を決定する。より具体的には、決定部513は、対応情報521から、水晶体の厚さの計測値に対応する生物年齢を取得する。決定部513は、取得した生物年齢を、水晶体の厚さについてのサンプル20の推定年齢として決定する。以下では、水晶体の厚さについてのサンプル20の推定年齢を、厚さ推定年齢とする。
【0069】
また、決定部513は、計測値取得部512により取得された水晶体の赤道直径の計測値と、対応情報521と、に基づいて、被検眼であるサンプル20の水晶体の赤道直径についての推定年齢を決定する。より具体的には、決定部513は、対応情報521から、水晶体の赤道直径の計測値に対応する生物年齢を取得する。決定部513は、取得した生物年齢を、水晶体の赤道直径についてのサンプル20の推定年齢として決定する。以下では、水晶体の赤道直径についてのサンプル20の推定年齢を、赤道直径推定年齢とする。
【0070】
本実施形態では、決定部513は、被検者の人種、被検者の性別についても加味したサンプル20の推定年齢を求める。本実施形態では、予め、人種の違いによる水晶体の健康状態に対する影響を調査することで、各人種について、年齢に対する補正値(例えば、水晶体の状態が悪化しやすい傾向にある人種ほど、大きくなる値等)が定められている。以下では、人種についての年齢に対する補正値を、人種補正値とする。
また、予め、性別の違いによる視力に対する影響を調査することで、各性別について、年齢に対する補正値(例えば、視力が悪い傾向にある性別ほど、大きくなる値等)が定められている。以下では、性別についての年齢に対する補正値を、性別補正値とする。
【0071】
決定部513は、輝度値推定年齢、厚さ推定年齢、赤道直径推定年齢、被検者の実年齢、被検者の人種に対応する人種補正値、被検者の性別に対応する性別補正値に基づいて、サンプル20の水晶体についての最終的な推定年齢を決定する。本実施形態では、サンプル20の実年齢は、予め指定されており、記憶媒体520に記憶されている。
本実施形態では、決定部513は、輝度値推定年齢、厚さ推定年齢、赤道直径推定年齢、被検者の実年齢、被検者の人種に対応する人種補正値、被検者の性別に対応する性別補正値それぞれを、既定の重みで加重平均することで、最終的な推定年齢を決定する。この重みは、予め、水晶体核702の輝度値の分布、水晶体の厚さ、水晶体の赤道直径、被検者の実年齢、被検者の人種、被検者の性別それぞれの視力に対する寄与度に応じて定められている。ただし、この重みは、他の値(例えば、全ての要素について均等な値等)としてもよい。
【0072】
出力制御部514は、決定部513により決定されたサンプル20の水晶体についての推定年齢と、サンプル20の実年齢と、に基づいて、サンプル20の評価情報を出力する。
出力制御部514は、サンプル20の水晶体についての推定年齢から実年齢を引いた差分値が既定の年齢閾値(例えば、5、10等)以上である場合、サンプル20の水晶体に異常がある可能性があることを示す情報を評価情報として生成する。水晶体の老化が進むと、白内障の可能性も増加する。そこで、本実施形態では、出力制御部514は、サンプル20の水晶体に異常がある可能性があることを示す情報として、サンプル20に白内障の可能性があることを示す情報を生成する。本実施形態では、出力制御部514は、サンプル20に白内障の可能性があることを示すテキスト情報(例えば、「白内障注意」等)を評価情報として生成する。ただし、他の例として、出力制御部514は、サンプル20の水晶体に異常がある可能性があることを示すテキスト情報(例えば、「水晶体注意」等)を評価情報として生成してもよい。出力制御部514は、生成した評価情報を、表示部530に表示させることで出力する。ただし、他の例として、出力制御部514は、生成した評価情報を、スピーカを介して音声出力してもよいし、紙などの印刷媒体に印刷することで出力してもよいし、既定の送信先に送信することで出力してもよい。
【0073】
以上、本実施形態の構成により、推定システム1は、ユーザに、サンプル20の水晶体に異常がある可能性を提示できる。また、推定システム1は、ユーザに、サンプル20に白内障の可能性があることを提示できる。
【0074】
(4)第4の実施形態:
第4の実施形態として、計測対象属性が被検眼であるサンプル20の寸法値、及び、前眼部の部位である前房・水晶体の特性である場合の実施形態について説明する。本実施形態では、計測対象属性は、眼軸長、水晶体の厚さ及び、前房深度である。
本実施形態の推定システム1のハードウェア構成は、第1の実施形態と同様である。
【0075】
本実施形態の対応情報521は、眼軸長の値の情報と生物年齢の情報とが対応付けられた情報と、前房深度の値の情報と生物年齢の情報とが対応付けられた情報と、水晶体の厚さの値の情報と生物年齢の情報とが対応付けられた情報と、を含む。
制御部510は、第1の実施形態と同様に、記憶媒体520に格納されているプログラムを実行することにより、断層画像取得部511、計測値取得部512、決定部513及び出力制御部514として機能する。すなわち、以下において、断層画像取得部511、計測値取得部512、決定部513及び出力制御部514が行うものとして記載する処理は、制御部510(プロセッサ)が実行する処理である。以下では、本実施形態の断層画像取得部511、計測値取得部512、決定部513及び出力制御部514それぞれの処理を説明する。
【0076】
断層画像取得部511は、OCT干渉系100、スキャニング-アライメント光学系200(ガルバノスキャナ202等)、k-clock生成用干渉光学系400を制御して、測定干渉信号を取得する。そして、断層画像取得部511は、測定干渉信号に対する逆フーリエ変換などの処理を行い、走査線に沿った前眼部Ecの断層画像を取得する。
【0077】
断層画像取得部511は、参照光学系300の参照部301の位置を調整しつつ、サンプル20を計測することで、被検眼であるサンプル20の角膜及び水晶体の近傍の断層画像と、網膜近傍の断層画像と、それぞれを取得する。
【0078】
計測値取得部512は、断層画像取得部511により取得された角膜及び水晶体の近傍の断層画像から、角膜頂点を検出し、検出した角膜頂点の位置を特定する。また、計測値取得部512は、断層画像取得部511により取得された網膜近傍の断層画像から、角膜頂点を通る入射光と網膜との交点を検出し、検出した交点の位置を特定する。計測値取得部512は、特定した角膜頂点の位置と、網膜の位置と、の距離を眼軸長の計測値として取得する。
【0079】
また、計測値取得部512は、断層画像取得部511により取得された角膜及び水晶体の近傍の断層画像から、角膜頂点を通る入射光と角膜後面との交点を検出し、検出した交点の位置を特定する。また、計測値取得部512は、断層画像取得部511により取得された角膜及び水晶体の近傍の断層画像から、角膜頂点を通る入射光と水晶体前面との交点を検出し、検出した交点の位置を特定する。そして、計測値取得部512は、角膜頂点を通る入射光と角膜後面との交点の位置と、角膜頂点を通る入射光と水晶体前面との交点の位置と、の距離を前房深度の計測値として取得する。
また、計測値取得部512は、断層画像取得部511により取得された水晶体の近傍の断層画像から、上述の第3の実施形態と同様の方法で、水晶体の厚さの計測値を取得する。
【0080】
決定部513は、計測値取得部512により取得された眼軸長の計測値と、対応情報521と、に基づいて、被検眼であるサンプル20の眼軸長についての推定年齢を決定する。より具体的には、決定部513は、対応情報521から、眼軸長の計測値に対応する生物年齢を取得し、取得した生物年齢を、サンプル20の眼軸長についての推定年齢として決定する。以下では、サンプル20の眼軸長についての推定年齢を、眼軸長推定年齢とする。
【0081】
決定部513は、計測値取得部512により取得された前房深度の計測値と、対応情報521と、に基づいて、被検眼であるサンプル20の前房深度についての推定年齢を決定する。より具体的には、決定部513は、決定部513は、対応情報521から、前房深度の計測値に対応する生物年齢を取得し、取得した生物年齢を、サンプル20の前房深度についての推定年齢として決定する。以下では、サンプル20の前房深度についての推定年齢を、前房深度推定年齢とする。
【0082】
決定部513は、計測値取得部512により取得された水晶体の厚さの計測値と、対応情報521と、に基づいて、被検眼であるサンプル20の水晶体の厚さについての推定年齢を決定する。より具体的には、決定部513は、決定部513は、対応情報521から、水晶体の厚さの計測値に対応する生物年齢を取得し、取得した生物年齢を、サンプル20の水晶体の厚さについての推定年齢(厚さ推定年齢)として決定する。
【0083】
出力制御部514は、決定部513により決定されたサンプル20の推定年齢と、サンプル20の実年齢と、に基づいて、サンプル20の評価情報を出力する。本実施形態では、サンプル20の実年齢は、予め指定されており、記憶媒体520に記憶されている。
出力制御部514は、サンプル20の眼軸長推定年齢から実年齢を引いた差分値が既定の年齢閾値(例えば、5、10等)以上である場合、サンプル20の眼軸長に異常がある可能性があることを示す情報を評価情報として生成する。本実施形態では、出力制御部514は、サンプル20の眼軸長に異常がある可能性があることを示すテキスト情報(例えば、「眼軸長注意」等)を評価情報として生成する。
【0084】
また、出力制御部514は、サンプル20の前房深度推定年齢から実年齢を引いた差分値が既定の年齢閾値(例えば、5、10等)以上である場合、サンプル20の前房深度に異常がある可能性があることを示す情報を評価情報として生成する。本実施形態では、出力制御部514は、サンプル20の前房深度に異常がある可能性があることを示すテキスト情報(例えば、「前房深度注意」等)を評価情報として生成する。
また、出力制御部514は、サンプル20の厚さ推定年齢から実年齢を引いた差分値が既定の年齢閾値(例えば、5、10等)以上である場合、サンプル20の水晶体の厚さに異常がある可能性があることを示す情報を評価情報として生成する。本実施形態では、出力制御部514は、サンプル20の水晶体の厚さに異常がある可能性があることを示すテキスト情報(例えば、「水晶体の厚さ注意」等)を評価情報として生成する。
なお、眼軸長推定年齢から実年齢を引いた差分値、前房深度推定年齢から実年齢を引いた差分値、厚さ推定年齢から実年齢を引いた差分値それぞれと比較される年齢閾値それぞれは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0085】
眼軸長、前房深度、水晶体の厚さは、それぞれ老化によって変動する傾向がある。具体的には、水晶体の厚さは厚くなる傾向がある。また、水晶体の厚さが厚くなる結果、前房深度は短くなるため、前房深度は短くなる傾向がある。このように、水晶体の厚さと、前房深度と、は負の相関関係を有する。また、眼軸長は、短くなる傾向がある。眼軸長、前房深度は、短くなると、老視が強くなる傾向がある。水晶体の厚さは、長くなると老視が強くなる傾向がある。なお、眼軸長は、長くなると近視が強くなる傾向がある。そこで、本実施形態では、出力制御部514は、サンプル20の眼軸長推定年齢から実年齢を引いた差分値が既定の年齢閾値以上であり、サンプル20の厚さ推定年齢から実年齢を引いた差分値が既定の年齢閾値以上であり、サンプル20の前房深度推定年齢から実年齢を引いた差分値が既定の年齢閾値以上である場合、更に、サンプル20に老視の可能性があることを示す情報についても、評価情報として生成する。本実施形態では、出力制御部514は、サンプル20に老視の可能性があることを示すテキスト情報(例えば、「老視注意」等)を評価情報として生成する。
【0086】
そして、出力制御部514は、生成した評価情報を、表示部530に表示させることで出力する。ただし、他の例として、出力制御部514は、生成した評価情報を、スピーカを介して音声出力してもよいし、紙などの印刷媒体に印刷することで出力してもよいし、既定の送信先に送信することで出力してもよい。
【0087】
以上、本実施形態の構成により、推定システム1は、ユーザに、サンプル20の眼軸長、前房深度、又は、水晶体の厚さに異常がある可能性を提示できる。また、推定システム1は、ユーザに、サンプル20に老視の可能性があることを提示できる。
【0088】
(5)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。従って、上述の実施形態の少なくとも一部の構成が省略、置換、された構成であってもよい。
【0089】
上述の第1の実施形態では、計測対象属性は、隅角の特性であり、TISAであるとした。ただし、他の例として、計測対象属性は、AOD、ARA(angle recess area)、TIA(trabecular iris angle)等の他の隅角の特性であってもよい。例えば、計測対象属性として、AODが用いられる場合、対応情報521は、AODと生物年齢との対応を示す。計測値取得部512は、サンプル20の各計測位置のAODを取得する。そして、決定部513は、計測値取得部512により取得されたAODと、対応情報521と、に基づいて、サンプル20の推定年齢を決定してもよい。また、計測対象属性は、隅角についての複数の特性であってもよい。
【0090】
また、上述の第2の実施形態では、計測対象属性は、角膜の特性であり、乱視軸角度であるとした。ただし、計測対象属性は、他の角膜の特性であってもよい。例えば、計測対象属性は、角膜の厚さであってもよい。また、加齢によって、角膜内皮細胞の個数が減少することが知られている。このため、角膜内皮細胞の個数は、年齢を反映する指標とみなせる。そのため、計測対象属性は、角膜内皮細胞の個数でもよい。
【0091】
また、上述の第3の実施形態では、計測対象属性は、水晶体核の輝度分布、水晶体の厚さ、及び、水晶体の赤道直径であるとした。ただし、計測対象属性は、水晶体核の輝度分布、水晶体の厚さ、及び、水晶体の赤道直径のうちの一部であってもよい。また、計測対象属性は、水晶体核の厚さ等の水晶体の他の属性を含んでもよい。
【0092】
また、上述の第3の実施形態では、決定部513は、被検者の年齢、性別に応じた補正値を用いて、サンプル20の推定年齢を決定した。ただし、決定部513は、これらの補正値を用いずに、サンプル20の推定年齢を決定してもよい。また、第1、2、4の実施形態においても、決定部513は、被検者の年齢、性別に応じた補正値を用いて、サンプル20の推定年齢を決定してもよい。
【0093】
また、上述の実施形態4では、計測対象属性は眼軸長と水晶体の厚さと前房深度とであるとした。そして、推定システム1は、眼軸長と水晶体の厚さと前房深度とのそれぞれについて推定年齢を決定し、決定した推定年齢それぞれから実年齢を引いた差分値それぞれが既定の年齢閾値以上である場合、サンプル20に老視の可能性があることを示す評価情報を出力するとした。
ただし、計測対象属性は、水晶体の厚さと前房深度との少なくとも1つと、眼軸長と、であれば、眼軸長と水晶体の厚さと前房深度との全てでなくてもよい。例えば、計測対象属性は、水晶体の厚さと前房深度との何れか1つと、眼軸長と、であってもよい。その場合、決定部513は、水晶体の厚さと前房深度との何れか1つと、眼軸長と、のそれぞれについて推定年齢を決定してもよい。そして、出力制御部514は、水晶体の厚さと前房深度との何れか1つと、眼軸長と、の推定年齢それぞれから実年齢を引いた差分値それぞれが既定の年齢閾値以上である場合、サンプル20に老視の可能性があることを示す評価情報を生成し、出力してもよい。
【0094】
また、上述の第4の実施形態では、計測対象属性は、被検眼の寸法値である眼軸長、水晶体の特性である水晶体の厚さ、及び、前房の特性である前房深度とした。ただし、計測対象属性は、被検眼の寸法値、及び、水晶体の特性、前房の特性の何れかであってもよい。例えば、計測対象属性は、被検眼の眼軸長であってもよい。また、計測対象属性とする被検眼の寸法値は、被検眼の縦幅、横幅等であってもよい。
【0095】
また、上述の第4の実施形態では、決定部513は、複数の計測対象属性(眼軸長、水晶体の厚さ、及び、前房深度)それぞれについて、サンプル20の推定年齢を決定するとした。ただし、決定部513は、複数の計測対象属性を加味した1つの推定年齢を決定してもよい。例えば、決定部513は、上述の第4の実施形態と同様に、眼軸長、水晶体の厚さ、及び、前房深度それぞれについて、推定年齢を求め、求めた3つの推定年齢を既定の重みで加重平均をとり、求めた加重平均値を、眼軸長、水晶体の厚さ、及び、前房深度の双方を加味した推定年齢として決定してもよい。また、決定部513は、対応情報521として、複数の計測対象属性と、生物年齢と、の対応を示す情報を用いて、以下のようにしてもよい。すなわち、決定部513は、対応情報521から、サンプル20の複数の計測対象属性の計測値に対応する年齢を、取得し、取得した年齢を推定年齢として決定してもよい。このような場合、複数の計測対象属性が、水晶体の厚さと前房深度とのうちの少なくとも1つと、眼軸長と、であるなら、出力制御部514は、決定部513により決定された推定年齢からサンプル20の実年齢を引いた差分値が既定の閾値以上であれば、サンプル20に老視の可能性があることを示す情報を評価情報として生成し、出力してもよい。
【0096】
また、上述の各実施形態では、対応情報521は、被検眼の属性の値の情報と、生物年齢の情報と、が対応付けられた情報であるとした。ただし、対応情報521は、被検眼の属性の値と、生物年齢と、の対応を示す情報であれば、他の情報でもよい。例えば、対応情報521は、被検眼の属性の値から生物年齢を求めるためのモデル(例えば、被検眼の属性の値から生物年齢を求めるための数式等)の情報であってもよい。例えば、対応情報521が数式の情報である場合、決定部513は、サンプル20の属性の計測値をこの数式に当てはめることで、この属性についてのサンプル20の推定年齢を決定してもよい。
【0097】
また、上述の各実施形態では、出力制御部514は、サンプル20の推定年齢からサンプル20の実年齢を引いた値が既定の年齢閾値以上の場合、サンプル20の計測対象属性に異常がある可能性を示す評価情報を出力するとした。ただし、出力制御部514は、サンプル20の推定年齢と、サンプル20の実年齢と、に基づいて、サンプル20の評価情報として、サンプル20に異常がある可能性があることを示す情報と異なる情報を出力してもよい。例えば、出力制御部514は、サンプル20の推定年齢が、サンプル20の実年齢以下である場合、サンプル20が正常であることを示す評価情報(例えば、「正常」等のテキスト情報)を生成し、出力してもよい。
【0098】
また、上述の各実施形態では、推定システム1は、角膜の特性と、隅角の特性と、水晶体の特性と、前房の特性及び被検眼の寸法値と、の何れかを計測対象属性として、サンプル20の推定年齢を決定するとした。ただし、計測対象属性として、前眼部の複数の特性と、被検眼の複数の寸法値と、のうちの少なくとも1つ以上であればよく、上述の各実施形態に限定されない。例えば、推定システム1は、角膜の特性と、隅角の特性と、水晶体の特性と、前房の特性及び被検眼の寸法値と、のうちの2つ以上を計測対象属性として、サンプル20の推定年齢を決定してもよい。例えば、決定部513は、第1~第4の実施形態と同様の推定年齢をそれぞれ決定し、決定した推定年齢に基づいて、サンプル20の最終的な推定年齢を決定してもよい。決定部513は、第1~第4の実施形態と同様の推定年齢を、既定の重みで加重平均をとり得られえる加重平均値を、サンプル20の最終的な推定年齢として決定してもよい。この場合の重みは、例えば、計測対象属性それぞれの視力に対する寄与度に応じた値として定められる。また、この場合の重みは、均等な値としてもよい。これにより、推定システム1は、複数の特性を加味した被検眼の推定年齢を決定できる。
【0099】
また、上述の各実施形態では、計測値取得部512は、光干渉断層撮影法を用いて撮影したサンプル20の断層画像から、サンプル20の計測対象属性の計測値を取得するとした。ただし、計測値取得部512は、他の方法で、サンプル20の計測対象属性の計測値を取得してもよい。例えば、計測値取得部512は、操作部540を介して、サンプル20の計測対象属性の計測値の指定を受け付けることで、取得してもよい。
【0100】
また、上述の各実施形態では、推定システム1は、光干渉断層撮影法により被検眼の前眼部の断層画像を得る光干渉断層撮影装置であるとした。ただし、推定システム1は、前眼部の断層画像を得る光干渉断層撮影装置と異なってもよい。例えば、推定システム1は、他の眼科装置(例えば、前眼部撮影装置、角膜形状測定装置、角膜内皮細胞測定装置、眼底三次元OCT等)、汎用コンピュータ等であってもよい。
【符号の説明】
【0101】
1…推定システム、10…波長掃引光源、20…サンプル、100…OCT干渉系、104…測定側サーキュレータ、105…参照側サーキュレータ、110…バランスドディテクタ、120…偏波コントローラ、200…アライメント光学系、201…コリメータレンズ、202…ガルバノスキャナ、203…ホットミラー、204…対物レンズ、205a,205b…白色光源、206…ビームスプリッタ、207…結像レンズ、208…エリアセンサ、210…固視標光源、211…可変焦点用可動式レンズ、212…コールドミラー、213…ホットミラー、214…リレーレンズ、215…ビームスプリッタ、216…XY位置検出光源、217…結像レンズ、218…2次元位置センサ、219…Z位置検出光源、220…結像レンズ、221…ラインセンサ、300…参照光学系、301…参照部、400…k-clock生成用干渉光学系、500…制御ユニット、510…制御部、511…断層画像取得部、512…計測値取得部、513…決定部、514…出力制御部、520…記憶媒体、521…対応情報、530…表示部、540…操作部、701…前面、702…水晶体核、703…前面、704…後面、705…後面、706…水晶体皮質