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  • 特開-ライニング剤組成物および硬化物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154958
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】ライニング剤組成物および硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/36 20060101AFI20231013BHJP
   C08G 59/60 20060101ALI20231013BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20231013BHJP
   C08K 13/04 20060101ALI20231013BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20231013BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231013BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20231013BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20231013BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231013BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20231013BHJP
【FI】
C08G59/36
C08G59/60
C08K9/06
C08K13/04
C08K5/20
C08L63/00 C
C09D163/00
C09D4/00
C09D7/61
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064627
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(72)【発明者】
【氏名】新角 潔
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4J038
【Fターム(参考)】
4J002CD011
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD131
4J002DE149
4J002DJ017
4J002DJ049
4J002DJ059
4J002EN038
4J002EN048
4J002EN078
4J002EP016
4J002EP026
4J002FA019
4J002FB097
4J002FD017
4J002FD019
4J002FD148
4J002FD206
4J002FD336
4J002GH00
4J002GL00
4J002GT00
4J036AA02
4J036AA05
4J036AB01
4J036AD01
4J036AD08
4J036AF06
4J036AH07
4J036AH18
4J036AJ14
4J036DA01
4J036DA04
4J036DC02
4J036DC03
4J036DC06
4J036DC09
4J036DC10
4J036DC14
4J036EA01
4J036FA05
4J036FA11
4J036FA12
4J036FA13
4J036HA11
4J036JA01
4J036JA15
4J038DB061
4J038FA092
4J038FA182
4J038KA03
4J038KA08
4J038NA24
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】
本発明は、低粘度でありながら高チクソ、耐垂下性を有し、ライニング施工性が優れたライニング剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
下記の(A)~(D)成分を含む、ライニング剤組成物。
(A)成分:単官能エポキシ化合物(A1)を含むエポキシ樹脂
(B)成分:不飽和アマイド化合物
(C)成分:疎水性シリカ粉体
(D)成分:エポキシ樹脂の硬化剤
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(D)成分を含む、ライニング剤組成物。
(A)成分:単官能エポキシ化合物(A1)を含むエポキシ樹脂
(B)成分:不飽和アマイド化合物
(C)成分:疎水性シリカ粉体
(D)成分:エポキシ樹脂の硬化剤
【請求項2】
前記(B)成分が、(A)成分100質量部に対して0.05~20質量部を含む、請求項1に記載のライニング剤組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が、ポリジメチルシロキサンで表面処理されたシリカである請求項1または2のいずれか1項に記載のライニング剤組成物。
【請求項4】
前記(B)成分10質量部に対して、(C)成分は0.1~30質量部含む、請求項1または2のいずれか1項に記載のライニング剤組成物。
【請求項5】
前記(A)成分が、単官能エポキシ化合物(A1)及び1分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ樹脂(A2)を含むエポキシ樹脂である、請求項1または2のいずれか1項に記載のライニング剤組成物。
【請求項6】
更に、(E)成分として鱗片状フィラーを含む、請求項1または2のいずれか1項に記載のライニング剤組成物。
【請求項7】
前記(B)成分が、不飽和結合が2以上である不飽和アマイド化合物であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のライニング剤組成物。
【請求項8】
エアーまたは水によりピグが圧送されるライニング工法に用いられる請求項1または2のいずれか1項に記載のライニング剤組成物。
【請求項9】
請求項1または2に記載のライニング剤組成物を硬化させることで得られる硬化物。
【請求項10】
下記のA剤およびB剤からなり、少なくともA剤、B剤のいずれか一方または両方に不飽和アマイド化合物(B)および/または疎水性シリカ粉体(C)が含まれる2液性ライニング剤組成物。
A剤:単官能エポキシ化合物(A1)及び1分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ樹脂(A2)を含むエポキシ樹脂を含む組成物
B剤:エポキシ樹脂の硬化剤(D)を含む組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライニング施工性が優れたライニング剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス等の配管は、地震等の振動、長年の使用又は配管本体の腐食により漏れが発生することがある。このような漏れの防止方法及び微小な漏れを起こしている継手部や腐食部分に対する補修方法としては、既設配管を埋設したままの状態で配管内面にライニング層を形成する工法が検討されている。
【0003】
埋設されたままの配管内にライニング剤を塗布する方法としては、埋設されたままの配管内にてピグを圧送することによって配管内にライニング樹脂層を形成する方法が挙げられる。該当方法に使用されるライニング剤としては、例えば特許文献1に開示されるようにエポキシ樹脂が主に用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-048425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたライニング剤組成物は、低粘度で塗布作業性がしやすいものの、ライニング施工した際に、配管内でライニング剤組成物が垂下してしまい、配管内を閉管してしまうことがあった。
【0006】
本発明は、低粘度でありながら高チクソ、耐垂下性を有し、ライニング施工性が優れたライニング剤組成物を提供することを目的とする。ここで前記耐垂下性とは配管内でライニング剤組成物が垂れさがりにくいことを意味し、チクソとは構造粘性比を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨を次に説明する。本発明の実施態様は、本発明は上述した従来の問題点を克服するものである。
[1]下記の(A)~(D)成分を含む、ライニング剤組成物。
(A)成分:単官能エポキシ化合物(A1)を含むエポキシ樹脂
(B)成分:不飽和アマイド化合物
(C)成分:疎水性シリカ粉体
(D)成分:エポキシ樹脂の硬化剤
[2]前記(B)成分が、(A)成分100質量部に対して0.05~20質量部を含む、[1]に記載のライニング剤組成物。
[3]前記(C)成分が、ポリジメチルシロキサンで表面処理されたシリカである[1]または[2]のいずれか1項に記載のライニング剤組成物。
[4]前記(B)成分10質量部に対して、(C)成分は0.1~30質量部含む、[1]または[2]のいずれか1項に記載のライニング剤組成物。
[5]前記(A)成分が、単官能エポキシ化合物(A1)及び1分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ樹脂(A2)を含むエポキシ樹脂である、[1]または[2]のいずれか1項に記載のライニング剤組成物。
[6]更に、(E)成分として鱗片状フィラーを含む、[1]または[2]のいずれか1項に記載のライニング剤組成物。
[7]前記(B)成分が、不飽和結合が2以上である不飽和アマイド化合物であることを特徴とする[1]または[2]のいずれか1項に記載のライニング剤組成物。
[8]エアーまたは水によりピグが圧送されるライニング工法に用いられる[1]または[2]のいずれか1項に記載のライニング剤組成物。
[9][1]または[2]のいずれか1項に記載のライニング剤組成物を硬化させることで得られる硬化物。
[10]下記のA剤およびB剤からなり、少なくともA剤、B剤のいずれか一方または両方に不飽和アマイド化合物(B)および/または疎水性シリカ粉体(C)が含まれる2液性ライニング剤組成物。
A剤:単官能エポキシ化合物(A1)及び1分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ樹脂(A2)を含むエポキシ樹脂を含む組成物
B剤:エポキシ樹脂の硬化剤(D)を含む組成物
【発明の効果】
【0008】
本発明のライニング剤組成物は、低粘度でありながら高チクソ、耐垂下性を有し、ライニング施工性が優れたものである。また、本発明のライニング剤組成物を硬化させることにより、高伸張、高強度の優れた硬化物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】耐垂下性の試験方法を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「X~Y」は、その前後に記載される数値(XおよびY)を下限値および上限値として含む意味で使用し、「X以上Y以下」を意味する。
【0011】
<(A)成分>
本発明の(A)成分としては、単官能エポキシ化合物(A1)を含むエポキシ樹脂であれば、特に制限されない。前記(A)成分としては、更に(A2)成分として1分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ樹脂等を含めることによりライニング施工性が優れ、高伸張、高強度の優れた硬化物が得られるという観点から好ましい。
【0012】
前記(A1)成分としては、特に制限されないが、例えば1,2-エポキシ-3-トリルオキシプロパン、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、n-ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールグリシジルエーテル、ブタンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。
【0013】
前記(A1)成分と(A2)成分の合計100質量部に対して、(A1)成分の添加量は、特に制限されないが、例えば、2~50質量部の範囲であり、更に好ましくは5~40質量部であり、特に好ましくは10~30質量部である。上記の範囲内であることで、より一層、低粘度でありながら高チクソ、耐垂下性を有し、ライニング施工性が優れたライニング剤組成物を得ることができる。
【0014】
前記(A1)成分の市販品としては、特に限定されないが、例えばED-502、ED-502S、ED-509E、ED-509S、ED-529、ED-503、ED-503G、ED-506、ED-523T、ED-505、EP-4530(株式会社ADEKA製)、YED111N、YED111AN、YED122、YED188、YED216M、YED216D(三菱ケミカル株式会社製)、EPICLON855、EPICLON D-591、D-595(DIC株式会社製)、YD-115、YD-115CA(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、エポライト40E、100E、200E、400E、70P、200P、400P(共栄社化学株式会社製)等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。
【0015】
前記(A2)成分としては、特に制限されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノール型エポキシ樹脂、1,2-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,3-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、2,3-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなどのアルキレングリコール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン等のグリシジルアミン化合物;グリシジル基を4つ有するナフタレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、低粘度でありながら高チクソ、耐垂下性を有し、ライニング施工性が優れたライニング剤組成物を得ることができるという観点からビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく、特に好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂を併用することである。ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂を併用する場合、ビスフェノールA型エポキシ樹脂100質量部に対して、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を5~70質量部であり、更に好ましくは7~40質量部であり、特に好ましくは10~30質量部の範囲である。また、これらは単独あるいは混合で使用してもよい。
【0016】
前記(A2)成分の市販品としては、特に限定されないが、例えばjER828、1001、801、806、807、152、604、630、871、YX8000、YX8034、YX4000(三菱ケミカル株式会社製);エピクロン830、850、830LVP、850CRP、835LV、HP4032D、703、720、726、820(DIC株式会社製);EP4100、EP4000、EP4080,EP4085、EP4088、EPU6、EPU7N、EPR4023、EPR1309、EP4920(株式会社ADEKA製)、TEPIC(日産化学工業株式会社製);KF-101、KF-1001、KF-105、X-22-163B、X-22-9002(信越化学工業株式会社製);デナコールEX411、314、201、212、252(ナガセケムテックス株式会社製);DER-331、332、334、431、542(ダウケミカル社製);YH-434、YH-434L(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
<(B)成分>
本発明の(B)成分としては、不飽和アマイド化合物である。後述する(C)成分と組み合わせることで顕著に低粘度でありながら高チクソ、耐垂下性を有し、ライニング施工性が優れ、且つ、高伸張高強度の硬化物を得ることができるという効果が得られる。不飽和アマイド化合物とは、1分子中に不飽和結合を含むアマイド化合物であり、例えば不飽和脂肪酸アマイド(アミド)などがあげられる。前記(B)成分は、より好ましくは1分子中に不飽和結合が2以上有する不飽和アマイド化合物であり、具体的な化合物としては、特に制限されないが、例えば、エチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。なお、ライニング剤がA剤、B剤からなる2液硬化性樹脂である場合、前記(B)成分は、A剤またはB剤の少なくとも一方に含まれることが好ましく、より好ましくは、A剤に含まれることである。分子中に不飽和結合を含むか否かの検出方法としては、例えばIR(赤外分光光度法)など公知の方法が挙げられる。
【0018】
前記(B)成分の市販品としては、特に制限されないが、例えば、デイスパロンF9020(ビックケミー社製)、スリパックスO、スリパックスZOA、スリパックスZHO、スリパックスZOS、スリパックスZSA(三菱ケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0019】
前記(B)成分の配合量は特に制限されないが、例えば、前記(A)成分100質量部に対して、0.05~20質量部であり、さらに好ましくは0.1~15質量部の範囲であり、特に好ましくは0.5~10質量部の範囲である。上記の範囲内であることで、より一層、ライニング施工性が優れ、且つ高伸張高強度の硬化物を得ることができる。なお、ライニング剤がA剤、B剤からなる2液硬化性樹脂である場合、前記(B)成分の添加量は、A剤またはB剤に含まれる合計量を意味する。
【0020】
<(C)成分>
本発明の(C)成分としては、疎水性シリカ粉体である。当該疎水性シリカ粉体とは、シリカ粉体の表面が疎水化処理剤により修飾処理されたシリカ粉体である。当該疎水化処理剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーンオイル、シランカップリング剤等のアルコキシシリル化合物、シラザン化合物等が知られている。好ましい疎水化処理剤としては、シリコーンオイル、アルコキシシリル化合物、シラザン化合物などがあげられる。なお、ライニング剤がA剤、B剤からなる2液硬化性樹脂である場合、前記(C)成分は、A剤またはB剤の少なくとも一方に含まれることが好ましく、より好ましくは、A剤に含まれることであり、特に好ましくは、A剤とB剤の両方に含まれることである。
【0021】
前記アルコキシシリル化合物としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシラン類が公知であり、また、シラザン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン等が公知である。
【0022】
前記(C)の平均粒子径は、特に制限されないが、好ましくは0.1~100nmの範囲であり、より好適には0.5~50nmの範囲であり、さらに好適には1~25nmの範囲である。上記範囲にあるものを用いることにより、より一層、低粘度でありながら高チクソ、耐垂下性を有し、ライニング施工性が優れる。ここでいう平均粒子径とは、電子顕微鏡での観測により測定した一次粒子の平均粒子径のことを意味する。
【0023】
前記(C)の市販品としては、特に制限は無いが、例えば、アエロジルR972、RX200、RX300、NX90G、RY200、RY300、R805、R106、R912(日本アエロジル社製)、CAB-O-SILR TS-720(キャボシル社)等を適宜選択することができ、これらは複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
前記(C)成分の添加量は、特に制限されないが、例えば、前記(A)成分100質量部に対して、1.5~40質量部の範囲であり、好ましくは2~25質量部であり、特に好ましくは、3~15質量部である。上記の範囲内であることで、より一層、低粘度でありながら高チクソ、耐垂下性を有し、ライニング施工性が優れるという観点から好ましい。
【0025】
前記(C)成分と(B)成分の混合比は、特に制限されないが、例えば、前記(B)成分10質量部に対して、(C)成分は0.1~30質量部であり、好ましくは1~25質量部であり、特に好ましくは、3~20質量部である。上記の範囲内であることで、より一層、低粘度でありながら高チクソ、耐垂下性を有し、ライニング施工性が優れるという観点から好ましい。なお、ライニング剤がA剤、B剤からなる2液硬化性樹脂である場合、前記(C)成分の添加量は、A剤またはB剤に含まれる合計量を意味する。
【0026】
<(D)成分>
次に、この発明に用いられる(D)のエポキシ樹脂の硬化剤は、公知の硬化剤が使用でき、例えばポリアミン、ポリアミド、ポリメルカプタン等が挙げられ、低粘度且つ高チクソであることから好ましくはポリアミンが挙げられる。
【0027】
前記ポリアミンとしては、例えばN-アミノピペラジン、N-ベンジルエチレンジアミン、トリエチレングリコールジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、トリメチロールプロパン、グリセリルポリオキシプロピレントリアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、ジエチルトルエンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’―ジアミノジフェニルスルホン、m-キシリレンジアミン等が挙げられ、中でもポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、トリメチロールプロパンポリ(オキシプロピレン)トリアミンが好ましい。
【0028】
<(E)成分>
発明のライニング剤には、更に(E)成分として鱗片状フィラーを含めることができる。(E)成分により、低粘度且つ高チクソであり、硬化物特性が優れるとの効果が得られる。前記(E)成分としては、タルク、マイカ、アルミナなどがあげられ、中でもタルクが好ましい。前記(E)成分は(C)成分を含まないものとする。前記(E)の平均粒子径は、特に制限されないが、例えば1~100μmの範囲であり、より好適には3~75μmの範囲である。上記範囲にあるものを用いることにより、より一層、ライニング施工性が優れる。前記平均粒径は、レーザー回折散乱法によって求めた粒度分布における累積体積比率50%での粒径(D50)である。
【0029】
前記(E)成分の添加量は、特に制限されないが、例えば、前記(A)成分100質量部に対して、0.5~50質量部の範囲であり、好ましくは1~30質量部であり、特に好ましくは、1.5~10質量部である。なお、ライニング剤がA剤、B剤からなる2液硬化性樹脂である場合、前記充填剤の添加量は、A剤またはB剤に含まれる合計量を意味する。
【0030】
<任意成分>
本発明に対し、本発明の目的を損なわない範囲で、硬化促進剤、充填剤((C)成分、(E)成分を除く)、スチレン系共重合体等の各種エラストマー、保存安定剤、酸化防止剤、難燃性付与剤、光安定剤、重金属不活性剤、可塑剤、消泡剤、顔料、防錆剤、レベリング剤、分散剤、レオロジー調整剤(前記(B)成分を除く)、難燃剤、及び界面活性剤等の添加剤を使用することができる。前記充填剤としては、ガラス、セラミックス、炭酸カルシウム、カーボン粉、カオリンクレー等が挙げられる。
【0031】
<2液性ライニング剤組成物>
本発明の2液性ライニング剤組成物は、A剤及びB剤を含有するものであり、A剤は、前記(A)成分を含む組成物であり、B剤は、前記(D)成分を含有する組成物である。このように成分を別々の液に分けることにより貯蔵中に無駄な反応を抑えることができ、貯蔵安定性を高めることができる。また、少なくともA剤、B剤のいずれか一方または両方に不飽和アマイド化合物(B)および/または疎水性シリカ粉体(C)を含有する。なお、(E)成分と前記任意成分についてもA剤、B剤の片方または両方に含まれていてもよい。このような2液性ライニング剤組成物においても、それぞれの液は周知の方法により混合して製造することができる。そして、使用の際に二つの液を混合し使用される。なお、A剤100質量部に対して、B剤は5~300質量部の範囲であり、より好ましくは、10~200質量部であり、特に好ましくは、20~150質量部の範囲である。前記A剤、B剤は使用前に両者を混合撹拌することで硬化物を得ることができる。
【0032】
<硬化物>
本発明のライニング剤組成物を硬化させることで得られる硬化物も発明の一態様である。また、ライニング剤組成物における硬化条件は、特に限定されないが、例えば、0℃以上150℃未満の温度が好ましく、より好ましくは、10℃以上100℃未満である。硬化時間は特に限定されないが、1日以上30日以下が好ましく、2日以上14日以内がさらに好ましい。また、本発明の2液性ライニング剤組成物を硬化させることで得られる硬化物も発明の一態様である。二液混合による硬化とは、使用の際に二つの液を混合することで硬化させることができることを意味する。また、2液性ライニング剤組成物における硬化条件は、特に限定されないが、例えば、二液を混合後において、0℃以上150℃未満の温度が好ましく、より好ましくは、10℃以上100℃未満である。硬化時間は特に限定されないが、1日以上30日以下が好ましく、2日以上14日以内がさらに好ましい。
【0033】
<用途>
本発明のライニング剤組成物は、低粘度でありながら高チクソ、耐垂下性を有し、ライニング施工性が優れたものであり、且つ、高伸張、高強度の硬化物であることから、ガス管、水道管用ライニング剤として使用することができる。エアーまたは水によりピグが圧送されるライニング工法に用いられるライニング剤組成物として最適である。
【実施例0034】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細な説明をするが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0035】
<2液性ライニング剤組成物の調製>
各成分を表1に示す質量部で採取し、常温にてミキサーで60分混合し、2液性ライニング剤組成物に該当するA剤、B剤をそれぞれ調製した。尚、詳細な調製量は表1に従い、数値は全て質量部で表記する。
【0036】
<(A)成分>
a1:1,2-エポキシ-3-トリルオキシプロパン20質量%およびビスフェノールA型エポキシ樹脂80質量%(株式会社ADEKA製アデカレジンEP-4530)
a2:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製アデカレジンEPU-15F)
<(B)成分と比較成分>
b1:不飽和脂肪酸アマイド化合物(楠本化成株式会社製デイスパロンF9020)
b2:エチレンビスオレイン酸アマイド(三菱ケミカル株式会社製スリパックスO)
b’1:ヒドロキシステアリン酸アマイド(三菱ケミカル株式会社製ダイヤミッドKH)
<(C)成分および比較成分>
c1:平均粒子径16nm、ポリジメチルシロキサン処理シリカ粉体(キャボシル社製CAB-O-SILR TS-720)
c’1:平均粒子径12nm、親水性シリカ粉体(日本アエロジル株式会社製アエロジル200)
<(D)成分>
d1:ポリオキシプロピレンジアミン(ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社製ハードナーPH-785)
d2:トリメチロールプロパンポリ(オキシプロピレン)トリアミン(HUNTSMAN社製ジェファーミン T-403)
<(E)成分>
e1:平均粒径15μmのタルク(松村産業株式会社製クラウンタルクP)
【0037】
表1の実施例、比較例における試験方法は下記の通りである。
【0038】
<(1)A剤の粘度>
ライニング剤組成物のA剤の調整終了直後に、循環恒温槽を用いて25℃に調整したコーンプレート型回転粘度計(E型粘度計)を用いて、組成物を0.4cc採取して、サンプルカップの中心部に吐出してコーンローター(E型No.52)、回転速度:10rpmという測定条件にて粘度を測定して「粘度(mPa・s)」とする。本発明のA剤の粘度は、ライニング性施工性の観点から10000~50000mPa・sの範囲であることが好ましい。結果を表1に示す。
【0039】
<(2)A剤の構造粘性比測定>
コーンローター(E型No.52)を用いて、コーンプレート型回転粘度計(E型粘度計)の回転速度を変えることで(回転速度2rpmの粘度)/(回転速度10rpmの粘度)により各A剤の「構造粘性比」を計算する。本発明のA剤の構造粘性比は、ライニング性施工性の観点から3.3~5.0の範囲が好ましい。結果を表1に示す。
【0040】
<(3)混合後の樹脂組成物の粘度>
表1の実施例、比較例のA剤、B剤を準備して、A剤100質量部に対してB剤40質量部とを混合して得られた混合樹脂組成物を準備した。循環恒温槽を用いて25℃に調整したコーンプレート型回転粘度計(E型粘度計)を用いて、混合後3分後の樹脂組成物を0.4cc採取して、サンプルカップの中心部に吐出してコーンローター(E型No.52)、回転速度:10rpmという測定条件にて粘度を測定して「粘度(mPa・s)」とする。本発明の混合後の樹脂組成物の粘度は、ライニング性施工性の観点から3000~30000mPa・sの範囲であることが好ましい。結果を表1に示す。なお、表中の「-」は未測定を意味する。
【0041】
<(4)混合後の樹脂組成物の構造粘性比測定>
表1の実施例、比較例のA剤、B剤を準備して、A剤100質量部に対してB剤40質量部とを混合して得られた混合樹脂組成物を準備した。次に、コーンローター(E型No.52)を用いて、コーンプレート型回転粘度計(E型粘度計)の回転速度を変えることで(回転速度2rpmの粘度)/(回転速度10rpmの粘度)により、混合後3分後の混合樹脂組成物の「構造粘性比」を計算する。本発明の混合後の樹脂組成物の構造粘性比は、ライニング性施工性の観点から3.0~5.0の範囲が好ましい。結果を表1に示す。なお、表中の「-」は未測定を意味する。
【0042】
<(5)耐垂下性>
表1の実施例1、2、比較例2のA剤、B剤を準備して、A剤100質量部に対してB剤40質量部とを混合攪拌して得られた混合樹脂組成物を準備した。次に、混合攪拌3分後であるため粘度が下がっている混合樹脂組成物を外形34mm、内径27.6mmの鋳鉄製ソケットプラグに充填し、試験片を準備した(図1の(A)参照)。次に、充填3分後に、試験片を逆さにして(図1の(B)参照)、25℃、55%相対湿度の条件下で60分間放置し、前記混合物の液ダレを観察して下記の基準に基づき評価した。本発明においては○であるものが好ましい。結果を表1に示す。なお、表中の「-」は未測定を意味する。
評価基準
○:全く液だれが確認されなかったもの
×:ソケットの底まで液だれが確認されたもの
【0043】
【表1】
【0044】
表1の実施例1または2の結果より、本発明のライニング剤組成物は、低粘度でありながら高チクソ、耐垂下性を有し、ライニング施工性が優れることが確認できた。
【0045】
表1の比較例1は、本発明の(B)成分ではない(b’1)の飽和アマイドであるヒドロキシステアリン酸アマイドを用いた組成物であるが、低粘度であるが、A剤のチクソが劣る結果であった。また、比較例2は、本発明の(B)成分を含まない組成物であるが、A剤または混合後の樹脂組成物のチクソ、耐垂下性が劣ることが確認された。また、比較例3は、本発明の(C)成分を含まない組成物であるが、A剤または混合後の樹脂組成物のチクソ、耐垂下性が劣ることが確認された。また、比較例4は、本発明の(C)成分ではない(c’1)成分の親水性シリカ粉体を用いた組成物であるが、A剤のチクソが劣ることが確認された。
【0046】
更に、(6)硬化物の引っ張り強さ、(7)硬化物の伸び率について評価した。表2の実施例、比較例における試験方法は下記の通りである。
【0047】
(6)硬化物の引張強さ
表1の実施例1,2、比較例2のA剤、B剤を準備して、A剤100質量部に対してB剤40質量部とを混合して得られた混合樹脂組成物を用いて厚さを2mmに設定して、25℃、50%RH環境下で7日間養生し、硬化物を作製する。3号ダンベルで打ち抜いてテストピースを作製した。テストピースの長軸とチャックの中心が一直線になる様に、テストピースの両端をチャックに固定する。引張速度100mm/minでテストピースを引張り、最大荷重を測定する。結果を表2に示す。当該最大荷重時の強度を「引張強さ(MPa)」とする。詳細はJIS K 6251(2010)に従う。また、引張強さは10~60MPaの範囲が好ましい。
【0048】
(7)硬化物の伸び率
表1の実施例1,2、比較例2のA剤、B剤を準備して、A剤100質量部に対してB剤40質量部とを混合して得られた混合樹脂組成物を用いて厚さを2mmに設定して、25℃、50%RH環境下で7日間養生し、硬化物を作製する。3号ダンベルで打ち抜いてテストピースを作製し、20mm間隔の標線をテストピースに記入する。引張強さの測定と同じ要領でチャックに固定して、引張速度100mm/minで試験片の切断に至るまで引っ張る。測定時にテストピースが伸びて標線の間隔の広がるため、テストピースが切断されるまでノギスにより標線の間隔を計測する。初期の標線間隔を基準として、伸びた割合を「伸び率(%)」とする。下記の基準に基づき評価し、結果を表2に示す。また、伸び率は高伸張性の観点から2~50%が好ましい。
【0049】
【表2】
【0050】
表2の実施例1、2の結果より、本発明のライニング剤組成物を硬化させることにより、高伸張、高強度の優れた硬化物が得られることが確認できた。一方で、比較例2は、本発明の(B)成分を含まない組成物であるが、伸張性が劣る硬化物であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のライニング剤組成物は、低粘度でありながら高チクソ、耐垂下性を有し、ライニング施工性が優れるので、ガス配管、水道管等の各種用途に好適に用いられる。したがって、広い分野に適用可能であることから産業上有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 ソケットプラグ
2 樹脂組成物
図1