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特開2023-154962チオリン酸結合を有する核酸の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154962
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】チオリン酸結合を有する核酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 21/04 20060101AFI20231013BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
C07H21/04 A
C12N15/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064637
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】羽渕 貴紀
【テーマコード(参考)】
4C057
【Fターム(参考)】
4C057AA22
4C057BB05
4C057DD03
4C057MM04
(57)【要約】
【課題】脱硫体の発生を低減させる効果に優れた、チオリン酸結合を有する核酸の製造方法を提供すること。
【解決手段】チオリン酸結合を有する核酸を製造する方法であって、無機塩が存在する反応液中で保護基を脱離する工程を含み、当該無機塩が還元性無機塩である、核酸を製造する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオリン酸結合を有する核酸を製造する方法であって、
無機塩が存在する反応液中で保護基を脱離する工程を含み、
当該無機塩が還元性無機塩である、
核酸を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上市される医薬品の薬理活性成分は専ら低分子化合物であったが、最近においてはペプチドや核酸といった中分子の薬理活性成分を含む医薬品も多く上市されるようになってきている。特に核酸医薬は、標的のmRNAに対して塩基対を形成することによって特異的に作用できる等の他の創薬シーズには見られない特徴的な作用機構を有することから今後の開発が非常に期待されている創薬シーズと現在なっている。
【0003】
核酸医薬は、生体内でヌクレアーゼ(核酸分解酵素)による分解を受けやすくて標的のmRNAまで到達することが極めて難しい(即ち、期待される作用機構が発揮されない)という非常に大きな課題を有するものであり、標的部位に医薬を到達させる技術を指すDDS技術が特に重要性を有する医薬分野となっている。ヌクレアーゼに対する耐性を付与するための手法として、核酸にホスホロチオエート結合(リン酸部分のP=O結合がP=S結合に変換されたもの)を導入すること等の修飾が一般的に用いられている。
【0004】
ホスホロチオエート結合等のチオリン酸結合を有する核酸の製造においては脱硫体(チオリン酸結合の硫黄原子が酸素原子に置換されたもの)が発生することが一般に知られる。固相合成または液相合成工程において、当該脱硫体を低減させる技術については以下の特許文献1~3等で紹介されている。
特許文献1では、固相合成工程において脱硫体を低減させる技術が紹介され、ホスホロチオエート/ホスホジエステル混合配列のオリゴ核酸合成時、酸化剤(ヨウ素溶液)を熟成(Aging)もしくはヨウ化塩を添加することで脱硫体が低減される。
特許文献2では、特許文献1と同様、固相合成工程において脱硫体を低減させる技術が紹介され、ホスホロチオエート/ホスホジエステル混合配列のオリゴ核酸合成時、酸化剤(ヨウ素溶液)を熟成させることで脱硫体が低減される。
特許文献3では、オリゴ核酸の液相合成工程において脱硫体を低減させる技術が紹介され、カップリング時(オリゴ核酸とヌクレオチドを縮合する反応)においてリン系、硫黄系またはリン-硫黄系抗酸化剤を加えることで、脱硫体が低減される。
上記の通り、固相合成または液相合成工程において脱硫体を低減させる方法は多くの技術が開発されている。しかしながら、核酸塩基部保護基の脱保護工程において生じる脱硫体の抑制技術は十分確立していない。核酸塩基部保護基の脱保護工程において当該脱硫体を低減させる技術については、以下の非特許文献1~2等で紹介されている。
非特許文献1では、核酸塩基部保護基の脱保護工程で用いる反応溶液(脱保護剤)にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を添加することで脱硫体を低減する技術が紹介されている。しかしながら、EDTAの添加による脱硫抑制能は弱く、脱硫体の生成量を十分低減させることができないことがある。
非特許文献2では、脱保護剤に2―メルカプトエタノールを添加することで脱硫体を低減する技術が紹介されている。しかしながら、2-メルカプトエタノールのようなチオールの添加はオリゴ核酸製造時の悪臭が問題となる。
【0005】
医薬品は、其の安全性を確保する観点から不純物の種類や量は各種規制の下で厳しく品質管理されている。原薬製造においても同様に不純物の管理は厳しくされるものであり、原薬となるチオリン酸結合を有する核酸の製造において発生する脱硫体は精製工程での完全な除去が困難であるから、当該脱硫体を低減させる技術の創出についてもなお一層望まれるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2020/236618号公報
【特許文献2】国際公開第2020/2249571号公報
【特許文献3】国際公開第2020/2196890号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nucleic Acids Research,1995年,第23巻,第16号,p.3349‐3350.
【非特許文献2】Nucleic Acids Research,1997年,第25巻,第14号,p.2943‐2944.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、脱硫体の発生を低減させる効果に優れた、チオリン酸結合を有する核酸の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討した結果、チオリン酸結合を有する核酸の製造工程において特定の無機酸塩を用いると脱硫体の発生が優位に低減されることを見出した。本発明者はその知見に基づいて、下記の本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の好ましい構成は以下の(1)等において記述されるものである。
(1)チオリン酸結合を有する核酸を製造する方法であって、
無機塩が存在する反応液中で保護基を脱離する工程を含み、
当該無機塩が還元性無機塩である、
核酸を製造する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のチオリン酸結合を有する核酸の製造方法は、脱硫体の発生を低減させる効果が優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下で本発明のチオリン酸結合を有する核酸の製造方法の其々に係る事項を詳細に説明する。但し、以下の記載は本発明を説明するための例示であり、本発明をこの記載範囲にのみ特別限定する趣旨ではない。
【0013】
(核酸)
本発明における核酸は、ヌクレオシドの糖部分(リボース環又はデオキシリボース環等)間の結合として、一般のリン酸ジエステル結合の代わりに、チオリン酸結合を有するものである。
チオリン酸結合として、例えば、ホスホロチオエート結合(リン酸ジエステル結合部分のP=O結合がP=S結合に変換されたもの)、ホスホロジチオエート結合等が挙げられ、好ましくはホスホロチオエート結合である。
本発明における核酸は、ヌクレオシド間の結合の全てがチオリン酸結合で構成されていることが望ましいが、一部がリン酸ジエステル結合等の他の結合であってもよい。本発明における核酸は、ヌクレオシド間の全結合数に対してホスホロチオエート結合を例えば1.0~100%、好ましくは10~100%、より好ましくは50~100%、更により好ましくは80~100%含むものである。ヌクレオシド間の全結合数に対してリン酸ジエステル結合は例えば10.0%以下、好ましくは5.0%以下含まれることが可能である。
【0014】
本発明における核酸は、オリゴヌクレオチドであることが好ましい。長さは例えば10~100塩基長、特に好ましくは12~60塩基長である。
本発明における核酸は、合成されるものが1本鎖であり、糖がリボース又はデオキシリボース、塩基がアデニン(A)、チミン(T)、ウラシル(U)、グアニン(G)、シトシン(C)から選ばれるものである。
塩基は置換基によって修飾されたものであってもよく、当該置換基として、例えば、ハロゲン、アシル、アルキル、アリールアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシ、シアノ、ニトロを挙げることができる。当該修飾された塩基として、例えば、8-ブロモアデニル基、8-ブロモグアニル基、5-ブロモシトシル基、5-ブロモウラシル基、5-ヨードウラシル基、5-ヨードシトシル基、5-フルオロウラシル基、5-メチルシトシル基(mC)、8-オキソグアニル基、ヒポキサンチンチニル基等が挙げられる。
本発明における核酸は数ヌクレオチド(例えば1~3ヌクレオチド)を修飾することが可能であり、例えば糖部の2′位、5′位の修飾や架橋型修飾をすることが挙げられる。当該2′位の修飾の具体例として、例えば、2′―F、2′―O―メチル(2′―OMe)、2′―O―メトキシエチル(2′―MOE)等が挙げられる。当該5′位の修飾の具体例として、例えば、5′―メチル(5′―Me)、5′―シクロプロピレン(5′―CP)等が挙げられる。当該架橋型修飾の具体例として、2′位と4′位間に架橋構造を導入したものがあり、例えば、2′,4′-BNA/LNA、2′,4′-BNACOC、2′,4′-BNANC、ENA、AmNA、scpBNA、cEt、GuNA等が挙げられる。
本明細書において“塩基長”の単位は“mer”の単位に置換しても良い。
【0015】
(核酸の具体的種類)
本発明における核酸として、例えば、RNA又はDNAがある。
該DNAは、特記されない限り、糖部はデオキシリボース環であり、塩基部はアデニン、チミン、グアニン、シトシンから選ばれるものである。該RNAは、特記されない限り、糖部はリボース環であり、塩基部はアデニン、ウラシル、グアニン、シトシンから選ばれる。
本発明により合成された1本鎖のRNA又はDNAは、そのままアンチセンス、CpGオリゴ又はアプタマーとして用いることもできるが、相補的な塩基配列を持つもの同士で塩基対を形成(アニーリング)させることで、2本鎖のRNA又はDNAを製造して、siRNA、miRNA、デコイ、HDO(ヘテロ2本鎖核酸)として用いることもできる。
【0016】
(無機塩)
本発明の核酸を製造する方法においては、還元性無機塩が用いられる。
当該還元性無機塩としては、特に限定されないが、ヨウ化塩、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜二チオン酸塩、三チオン酸塩、四チオン酸塩、硫化塩、硫化水素塩、亜硝酸塩、ヘキサシアニド鉄(II)酸塩等が挙げられ、具体例としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化ベリリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化鉄、ヨウ化銅、ヨウ化アルミニウム、チオ硫酸リチウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸ルビジウム、チオ硫酸セシウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸ベリリウム、チオ硫酸マグネシウム、チオ硫酸カルシウム、チオ硫酸ストロンチウム、チオ硫酸バリウム、チオ硫酸鉄、チオ硫酸銅、チオ硫酸アルミニウム、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ルビジウム、チオシアン酸セシウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸ベリリウム、チオシアン酸マグネシウム、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸ストロンチウム、チオシアン酸バリウム、チオシアン酸鉄、チオシアン酸銅、チオシアン酸アルミニウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸ルビジウム、亜硫酸セシウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸ベリリウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸ストロンチウム、亜硫酸バリウム、亜硫酸鉄、亜硫酸銅、亜硫酸アルミニウム、亜硫酸水素リチウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ルビジウム、亜硫酸水素セシウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素ベリリウム、亜硫酸水素マグネシウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素ストロンチウム、亜硫酸水素バリウム、亜硫酸水素鉄、亜硫酸水素銅、亜硫酸水素アルミニウム、ピロ亜硫酸リチウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ルビジウム、ピロ亜硫酸セシウム、ピロ亜硫酸アンモニウム、ピロ亜硫酸ベリリウム、ピロ亜硫酸マグネシウム、ピロ亜硫酸カルシウム、ピロ亜硫酸ストロンチウム、ピロ亜硫酸バリウム、ピロ亜硫酸鉄、ピロ亜硫酸銅、ピロ亜硫酸アルミニウム、亜二チオン酸リチウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、亜二チオン酸ルビジウム、亜二チオン酸セシウム、亜二チオン酸アンモニウム、亜二チオン酸ベリリウム、亜二チオン酸マグネシウム、亜二チオン酸カルシウム、亜二チオン酸ストロンチウム、亜二チオン酸バリウム、亜二チオン酸鉄、亜二チオン酸銅、亜二チオン酸アルミニウム、三チオン酸リチウム、三チオン酸ナトリウム、三チオン酸カリウム、三チオン酸ルビジウム、三チオン酸セシウム、三チオン酸アンモニウム、四チオン酸リチウム、四チオン酸ナトリウム、四チオン酸カリウム、四チオン酸ルビジウム、四チオン酸セシウム、四チオン酸アンモニウム、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、硫化アンモニウム、硫化ベリリウム、硫化マグネシウム、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、硫化バリウム、硫化鉄、硫化銅、硫化アルミニウム、硫化水素リチウム、硫化水素ナトリウム、硫化水素カリウム、硫化水素ルビジウム、硫化水素セシウム、硫化水素アンモニウム、硫化水素ベリリウム、硫化水素マグネシウム、硫化水素カルシウム、硫化水素ストロンチウム、硫化水素バリウム、硫化水素鉄、硫化水素銅、硫化水素アルミニウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ルビジウム、亜硝酸セシウム、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸ベリリウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸鉄、亜硝酸銅、亜硝酸アルミニウム、ヘキサシアニド鉄(II)酸リチウム、ヘキサシアニド鉄(II)酸ナトリウム、ヘキサシアニド鉄(II)酸カリウム等が挙げられる。
上記還元性無機塩は、好ましくはヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化ベリリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化鉄、ヨウ化銅及びヨウ化アルミニウム等のヨウ化塩、チオ硫酸リチウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸ルビジウム、チオ硫酸セシウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸ベリリウム、チオ硫酸マグネシウム、チオ硫酸カルシウム、チオ硫酸ストロンチウム、チオ硫酸バリウム、チオ硫酸鉄、チオ硫酸銅及びチオ硫酸アルミニウム等のチオ硫酸塩並びに、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ルビジウム、チオシアン酸セシウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸ベリリウム、チオシアン酸マグネシウム、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸ストロンチウム、チオシアン酸バリウム、チオシアン酸鉄、チオシアン酸銅及びチオシアン酸アルミニウム等のチオシアン酸塩から選ばれ、より好ましくはヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化ベリリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化鉄、ヨウ化銅及びヨウ化アルミニウム等のヨウ化塩並びに、チオ硫酸リチウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸ルビジウム、チオ硫酸セシウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸ベリリウム、チオ硫酸マグネシウム、チオ硫酸カルシウム、チオ硫酸ストロンチウム、チオ硫酸バリウム、チオ硫酸鉄、チオ硫酸銅及びチオ硫酸アルミニウム等のチオ硫酸塩から選ばれ、さらに好ましくはヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウム、チオ硫酸リチウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウムから選ばれ、最も好ましくはヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウム、チオ硫酸ナトリウムから選ばれる。
上記の無機塩は反応液中に添加されて用いられるものであるが、反応液中の無機塩の濃度は例えば15~8333mM、好ましくは50~8333mM、より好ましくは150~8333mMである。尚、オリゴ核酸の塩析による沈殿化の観点から反応液中の無機塩の濃度は低く抑えられることが望ましく、1500mM以下であることが望まれる。
【0017】
(核酸の製造方法)
本発明の核酸を製造する方法は、上記の無機塩が存在する反応液中で保護基を脱離する工程を含む。
核酸を製造する方法として固相合成方法、液相合成方法等が挙げられるが、好ましくは固相合成方法又は液相合成方法であり、特に好ましくは固相合成方法である。
前記の保護基は塩基部(A、G等のプリン塩基又はT、U、C等のピリミジン塩基)に結合しているものであることが望ましく、当該保護基は例えばアシル基、ジメチルホルムアミジル基から選ばれるものであり、好ましくはイソブチリル基、アセチル基、ベンゾイル基、フェノキシアセチル基、イソプロピルフェノキシアセチル基、tert-ブチルフェノキシアセチル基、ジメチルホルムアミジル基から選ばれ、より好ましくはベンゾイル基又はイソブチリル基である。
本発明の核酸を製造する方法が固相合成方法である場合は、保護基を脱離する工程と同時に固相担体からの核酸の切出工程を行うことが可能である。
【0018】
(脱保護工程)
保護基を脱離する工程で使用される脱保護剤として、例えば、濃アンモニア水、メチルアミン、水酸化ナトリウム等の塩基性物質を挙げることができる。濃アンモニア水のアンモニア濃度は20~30重量%が好ましく、28~30重量%がより好ましい。使用される脱保護剤の量は、固相担体に担持されている核酸1mmolに対して10mL~1000mLが好ましく、核酸1mmolに対して50mL~500mLがより好ましい。
当該脱保護剤は、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等で希釈して使用することもでき、好ましくは水又はエタノールである。脱保護工程における反応液は塩基性であることが好ましく、pH10~14であることがより望ましい。
脱保護工程の反応温度は、例えば、5℃~75℃の範囲内の温度であり、好ましくは15~60℃の範囲内の温度である。脱保護工程の反応時間は、例えば48時間以下であり、24時間以下で行われることが好ましい。
尚、本発明の核酸の製造方法が固相合成法である場合は、上記で説明する脱保護工程において固相担体からの核酸の切り出し(切出工程)を行うことが出来る。
【0019】
上記の通り核酸製造法には様々な形態があるが、下記では一例として固相合成の詳細について説明する。
(固相合成方法)
本発明における固相合成方法は、本明細書において特記されない限りは常法に従って行うことが出来る。固相合成方法は、H-ホスホネート法、ホスホエステル法、ホスホロアミダイト法が挙げられ、特に好ましくはホスホロアミダイト法が挙げられる。
ホスホロアミダイト法による固相合成法は、例えば、以下の(a)~(e)の工程を順に行うことで実行できる。
(a)脱保護工程:固相にリンカーを介して担持されたヌクレオシドの5′位の水酸基の保護基を除去する。
(b)カップリング工程:活性化剤を用いてヌクレオシドホスホロアミダイトの3′位水酸基のリン原子と固相に担持されたヌクレオシドの5′位の水酸基間で縮合させる。
(c)酸化/硫化工程:酸化剤又は硫化剤を用いてヌクレオシド間の亜リン酸エステル結合(保護基が結合したものも含む)をリン酸ジエステル結合(保護基が結合したものも含む)又はチオリン酸エステル結合(保護基が結合したものも含む)に変換する。
(d)キャッピング工程:工程(b)において未反応だった、固相に担持されたヌクレオシドの5′位の水酸基にキャップ化剤を用いて保護基を結合させる。
キャッピング工程は工程(b)の未反応物が次回以降の(a)~(d)工程の反応に関与することを防ぐためのものである。
(e)切出・脱保護工程:工程(a)~(d)を所望の回数繰り返したのち、製造された所望の鎖長の核酸を切出・脱保護剤を用いて固相担体から切り出し、其の塩基部、2′位の水酸基、リン酸ジエステル結合やチオリン酸エステル結合など、等の保護基を脱離させる工程。
【0020】
上記(a)~(e)の工程につき、構造式を用いて以下に例示する。
尚、下記構造式はデオキシリボース環(2′位に水素原子が結合)の例だが、リボース環(2′ 位に水酸基)や其れを修飾したもの(例えば2′ 位がO-メトキシエチル化(2′-MOE)、O-メチル化(2′-OMe)又はフルオロ化(2′-F)されたもの)を用いた場合も同様である。
【0021】
工程(a):
【0022】
【化1】
[式中、DMTrは4,4’-ジメトキシトリチル基を表す。BasePGはアデニン、チミン、ウラシル、グアニン、シトシン又はそれらを修飾したものを独立して示しており、場合によってはアシル基又はジメチルホルムアミジル基の保護基からなる保護基を有する。●部分は、リンカーと結合した固相担体を表す。]
固相合成における固相担体として、例えば、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、シリカゲルを挙げることができ、好ましくはガラスビーズ又は樹脂ビーズである。
リンカーとしては、例えば、3-アミノプロピル、スクシニル、2,2’-ジエタノールスルホニル、ロングチェーンアルキルアミノ(LCAA)等を挙げることができる。
固相に担持されたヌクレオシド、ヌクレオチド鎖、ヌクレオシドホスホロアミダイト等の5′位の水酸基の保護基として、4,4’-ジメトキシトリチル基以外に例えば、4-メトキシトリチル基等を用いることもできる。
【0023】
工程(b):
【0024】
【化2】
【0025】
[式中、DMTr、BasePG、●部分は、前記と同義である。]
工程(b)で用いる活性化剤として、例えば、1H-テトラゾール、5-エチルチオテトラゾール、4,5-ジクロロイミダゾール、4,5-ジシアノイミダゾール、ベンゾトリアゾールトリフラート、イミダゾールトリフラート、ピリジニウムトリフラート、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、2,4,6-コリジン/N-メチルイミダゾール、5-(ベンジルチオ)-1H-テトラゾール、5-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]テトラゾール等を挙げることができる。
【0026】
工程(c):
【0027】
【化3】
【0028】
[式中、DMTr、BasePG、●部分は、前記と同義である。Xは酸素原子もしくは硫黄原子を表す]
工程(c)の酸化剤として、例えばメタクロロ過安息香酸、メタ過ヨウ素酸塩、過酸化水素、ヨウ素、(1S)-(+)-(10-カンファースルホニル)オキサジリジン等を、硫化剤として、例えば3-[(N,N-ジメチルアミノメチリデン)アミノ]-3H-1,2,4-ジチアゾール-5- チオン(DDTT)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシド (Beaucage試薬)、3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン、ビスフェニルアセチルジスルフィド(PADS)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、3- アミノ-1,2,4-ジチアゾール-5-チオン(ADTT)等を挙げることができる。工程(c)の反応溶媒として、例えばジクロロメタン、アセトニトリル、ピリジン、3-ピコリン、水、テトラヒドロフランまたはこれらを任意の組合せで混合した溶媒等が挙げられる。
【0029】
工程(d):
【0030】
【化4】
【0031】
[式中、DMTr、BasePG、●部分は、前記と同義である。]
工程(d)のキャップ化剤として、例えば無水酢酸、フェノキシ酢酸無水物等を挙げることができる。工程(d)の反応溶媒として、例えばアセトニトリル、ピリジン、2,6-ルチジン、テトラヒドロフランまたはこれらを任意の組合せで混合した溶媒等が挙げられる。
【0032】
工程(e):
【0033】
【化5】
【0034】
[式中、BasePG、●、Xは、前記と同義である。Baseは保護基を除去したアデニン、チミン、ウラシル、グアニン、シトシン又はそれらを修飾したものを独立して示す。Rは4,4’-ジメトキシトリチル基又は水素原子を表す。nは0以上の整数を表す。]
【0035】
(切出・脱保護工程における反応液)
切出・脱保護剤として、例えば、濃アンモニア水、メチルアミン、水酸化ナトリウム等の塩基性物質を挙げることができる。濃アンモニア水のアンモニア濃度は20~30重量%が好ましく、25~30重量%がより好ましい。使用される切出・脱保護剤の量は、固相担体に担持されている核酸1mmolに対して10mL~1000mLが好ましく、核酸1mmolに対して50mL~500mLがより好ましい。
当該切出・脱保護剤は、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1―プロピルアルコール、1―ブタノール、2―ブタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等で希釈して使用することもでき、好ましくは水、エタノール又はイソプロピルアルコールである。切出・脱保護工程における反応液は塩基性であることが好ましく、pH10~14であることがより望ましい。
工程(e)の反応温度は、例えば、5~75℃の範囲内の温度であり、好ましくは15~60℃の範囲内の温度である。工程(e)の反応時間は、例えば48時間以下であり、24時間以下で行われることが好ましい。
上記切出・脱保護剤によって、固相担体からの核酸の切り出しが行われ、更に核酸に結合している保護基が除去される。
【0036】
尚、上記で説明される固相合成工程は、市販の核酸自動合成装置等を用いて実施することが可能である。また、上記工程に従えば3′位の炭素原子から5′位の炭素原子の方向へヌクレオチド鎖が伸長するように核酸が合成されることになる。
【0037】
(分離精製工程)
合成された核酸は、一般に行われる分離精製手段、例えば逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等によって核酸の精製を行うことができる。また更に、限外ろ過などにより溶液中に含まれる不純物である塩を除去することが可能であり、凍結乾燥によってオリゴ核酸溶液を粉体化させることが可能である。
【0038】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例におけるDNAは、特記されない限り、糖部はデオキシリボース環であり、塩基部はアデニン、チミン、グアニン、シトシンから選ばれる。実施例におけるRNAは、特記されない限り、糖部はリボース環であり、塩基部はアデニン、ウラシル、グアニン、シトシンから選ばれる。
【実施例0039】
固相担体とリンカーを介して結合しているヌクレオシドに順次ホスホロアミダイトを縮合していくことで目的のオリゴヌクレオチドを合成した。
次に該オリゴヌクレオチドが結合した固相担体を28重量%アンモニア水溶液/エタノール(4:1)混合溶液に60℃で24時間浸漬して、固相担体からの該オリゴヌクレオチドの切出し及び保護基の脱保護を行った。当該混合溶液には添加物を無添加又は表1記載のいずれかの添加物を500mMの濃度になる量で添加することを其々行った。
上記切出し・脱保護後に、当該混合溶液を水で希釈することで、該オリゴヌクレオチドのクルード液を得た。
尚、上記の固相担体、リンカー、オリゴヌクレオチドは下記に示すものである。
固相担体、リンカー:Primer Support(登録商標) 5G Unylinker 350(Cytiva)
オリゴヌクレオチド(DNA):5′-C^T^A^G^C^A^G^A^T^G^C^T-3′(12mer DNA、^はホスホチオエート結合を示す)
【実施例0040】
「該オリゴヌクレオチドが結合した固相担体を28重量%アンモニア水溶液/エタノール(4:1)混合溶液に60℃で24時間浸漬して、固相担体からの該オリゴヌクレオチドの切出し及び保護基の脱保護を行った。」を「該オリゴヌクレオチドが結合した固相担体を28重量%アンモニア水溶液に60℃で24時間浸漬して、固相担体からの該オリゴヌクレオチドの切出し及び保護基の脱保護を行った。」に、
「当該混合溶液には添加物を無添加又は表1記載のいずれかの添加物を500mMの濃度になる量で添加することを其々行った。」を「当該混合溶液には添加物を無添加又は表2記載のいずれかの添加物を500mMの濃度になる量で添加することを其々行った。」に変更した以外は実施例1と同じ条件で同じ操作を行った。また、脱保護反応で使用した固相担体は実施例1とは異なるロット品を使用した。
【実施例0041】
「当該混合溶液には添加物を無添加又は表1記載のいずれかの添加物を500mMの濃度になる量で添加することを其々行った。」を「当該混合溶液にはヨウ化ナトリウムを表3のいずれかの濃度になる量で添加することを其々行った。」に変更した以外は実施例1と同じ条件で同じ操作を行った。
【実施例0042】
「該オリゴヌクレオチドが結合した固相担体を28重量%アンモニア水溶液/エタノール(4:1)混合溶液に60℃で24時間浸漬して、固相担体からの該オリゴヌクレオチドの切出し及び保護基の脱保護を行った。」を「該オリゴヌクレオチドが結合した固相担体を28重量%アンモニア水溶液に60℃で24時間浸漬して、固相担体からの該オリゴヌクレオチドの切出し及び保護基の脱保護を行った。」に、
「当該混合溶液には添加物を無添加又は表1記載のいずれかの添加物を500mMの濃度になる量で添加することを其々行った。」を「当該混合溶液には、脱硫体増加要因物質を無添加又は表4記載のいずれかの脱硫体増加要因物質を添加した上、添加物を無添加又は表4記載のいずれかの添加物を500mMの濃度になる量で添加することを其々行った」に変更した以外は実施例1と同じ条件で同じ操作を行った。また、固相担体は実施例2と同様のロット品を使用した。
【実施例0043】
固相担体とリンカーを介して結合しているヌクレオシドに順次ホスホロアミダイトを縮合していくことで目的のオリゴヌクレオチドを合成した。
該オリゴヌクレオチドが結合した固相担体を40重量%メチルアミン水溶液/イソプロピルアルコール(1:1)混合溶液に45℃で4時間浸漬して、固相担体からの該オリゴヌクレオチドの切出し及び保護基の脱保護を行った。当該混合溶液には、アセトニトリル(脱硫体を増加させるために添加)を150重量%の濃度になる量で添加した上、添加物を無添加又は表5記載のいずれかの添加物を150mMの濃度になる量で添加することを其々行った。
上記切出し・脱保護後に、当該混合溶液を0.45μmフィルターでろ過し、ジメチルスルホキシド及びトリエチルアミン三ふっ化水素酸塩を加え、55℃で1.5時間加熱することで、RNAの2′位水酸基保護基(tert-ブチルジメチルシリル基)の脱保護を行った。脱保護後、当該混合溶液中のオリゴヌクレオチドを塩析により沈殿洗浄し、最後に20mMりん酸緩衝液(15vol%アセトニトリル含有、pH8.0)に溶解させることで、該オリゴヌクレオチドのクルード液を得た。
尚、上記の固相担体、リンカー、オリゴヌクレオチドは下記に示すものである。
固相担体、リンカー:Primer Support(登録商標) 5G Unylinker 350(Cytiva)
オリゴヌクレオチド(RNA):5′-a^c^g^gcgagaaucu^u^u^c -3′(16mer RNA、^はホスホチオエート結合を示す)
【0044】
(試験例1:収量、純度、脱硫体量の測定)
実施例1、3、5で製造した各オリゴヌクレオチドのクルード液につき、当該溶液を水で希釈後、分光光度計による吸光度の測定を行い、収量(OD/μmol(固相樹脂1μmolあたりのOD値))を計測した。
また、実施例1~5で製造した各オリゴヌクレオチドのクルード液につき、当該溶液を超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)による測定を行い、純度(目的オリゴヌクレオチドのピーク面積/全ピークの総面積(%))を計測した(測定条件:UHPLC装置;ACQUITY UPLC、カラム;Waters ACQUITY UPLC Oligonucleotide BEH C18、130Å、 1.7μm、 2.1mm×100mm、UV検出;260nm、BufferA;100mM HFIP,8mM TEA in HO:MeCN=98:2、BufferB;HO:MeCN=50:50、温度;60℃)。
さらに実施例1~4については、同測定により脱硫体含有率(脱硫オリゴヌクレオチドのピーク面積/目的オリゴヌクレオチドのピーク面積(%))の計測も行った。
また、実施例5で製造した各オリゴヌクレオチドのクルード液につき、当該溶液を超高速液体クロマトグラフ質量分析法(UHPLC-MS)による測定を行い、脱硫体量を計測(測定条件:UHPLC装置;Vanquish UHPLCシステム、質量分析計;Q Exactive、カラム;Waters ACQUITY UPLC Oligonucleotide BEH C18、130Å、 1.7μm、 2.1mm×100mm、UV検出;260nm、BufferA;100mM HFIP,8mM TEA in HO:MeCN=98:2、BufferB;HO:MeCN=50:50、温度;60℃)し、脱流体含有率(脱硫オリゴヌクレオチドのイオン強度/目的オリゴヌクレオチドのイオン強度(%))を求めた。
上記で測定した結果は下記の表1~5(其々、実施例1~5の其々に対応)において示される通りである。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
上記で示す表1、3及び5記載の収量はOD/μmol(固相樹脂1μmolあたりのOD値)のことである。表1、2、3、4及び5記載のFLP純度(FLP:Full Length Product)は逆相クロマトグラフィーのUV面積比から算出した目的オリゴヌクレオチドの含有率のことである。表1~5記載の脱硫体含有率(%)は、FLPを100とした場合の脱硫体の割合である。表1、2、3及び4の脱硫体含有率(%)はUHPLCのUV面積比から算出したものであり、表5の脱硫体含有率(%)はUHPLC-MSのイオン強度比から算出したものである。尚、表4のSUS316Lは高耐食ステンレス鋼である。
【0051】
表1で示される様に、本発明にかかる特定の無機塩(ヨウ化塩、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩)を添加したもの(番号2、5~9)は、それ以外の無機塩(番号3:臭化ナトリウム、番号4:塩化ナトリウム)を用いた例よりも、脱硫体の含有率が有意に低いことが示された。
表2で示される様に、本発明にかかるヨウ化塩やチオ硫酸塩、チオシアン酸塩を添加した例(番号12~14)は、従来の脱硫体を抑制する方法(番号11:EDTA添加)を用いた例と同等もしくはそれ以上の脱硫体抑制能があることが示された。
表3で示される様に、本発明にかかるヨウ化ナトリウムを15mMの濃度で添加した場合(番号16)であっても無添加の場合(番号15)と比較して脱硫体の量を低減する効果が見られた。また、ヨウ化ナトリウムを50mM以上や150mM以上の濃度で添加した場合(番号17~23)に脱硫体の量を低減させる効果がより高いことが確認できた。
表4で示される様に、脱硫体を増加させる条件下(N-メチルピロリドン、アセトニトリル又はSUS316L(高耐食ステンレス鋼)添加)においても、本発明にかかるヨウ化塩(番号27、30、33)は従来の脱硫を抑制する方法(番号26、29、32:EDTA添加)よりも高い脱硫体抑制能を示した。
表5で示される様に、使用する核酸をDNAからRNAに変更し、脱保護剤の種類を変更した場合であっても、本発明にかかるヨウ化塩(番号36、37)は脱硫体の量を有意に低減させることが確認できた。
【0052】
本発明は核酸を製造する工程での脱硫体発生の抑制に寄与することが特に想定されるが、オリゴ核酸溶液の保管時や製剤化後の脱硫体発生の抑制にも本発明が寄与することが考えられる
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によればチオリン酸結合を有する核酸を製造するに際しての脱硫体の発生量を低減することが可能である。よって本発明は不純物含量の低い高品質な核酸医薬を製造することに貢献するものである。