(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154967
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】アレイコイル及び製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
A61B5/055 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064644
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 正裕
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和也
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB42
4C096CC06
4C096CC16
(57)【要約】
【課題】アレイコイルの製造及び調整を簡便にすること。
【解決手段】実施形態に係るアレイコイルは、第1の基板と、第2の基板とを備える。第1の基板には、少なくとも1つのコイルエレメントが形成されている。第2の基板は、第1の基板とは異なる基板であって、第1の基板に対して積層されている。第2の基板には、少なくとも1つのコイルエレメントが形成されている。第1の基板に形成された第1のコイルエレメントと、第2の基板に形成された第2のコイルエレメントとは、第1の基板に対して積層された第2の基板から当該第1の基板へ向かう積層方向からの平面視において交差する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのコイルエレメントが形成された第1の基板と、
少なくとも1つのコイルエレメントが形成された前記第1の基板とは異なる基板であって、前記第1の基板に対して積層された第2の基板と
を具備し、
前記第1の基板に形成された第1のコイルエレメントと、前記第2の基板に形成された第2のコイルエレメントとは、前記第1の基板に対して積層された前記第2の基板から当該第1の基板へ向かう積層方向からの平面視において交差する、
アレイコイル。
【請求項2】
前記第1の基板及び前記第2の基板の少なくとも一方には、複数のコイルエレメントが形成され、
前記複数のコイルエレメントが形成された基板において、当該複数のコイルエレメントは、互いに交差しない、
請求項1に記載のアレイコイル。
【請求項3】
前記第1の基板及び前記第2の基板の間であって、かつ、前記第1のコイルエレメント及び前記第2のコイルエレメントが前記平面視において交差する位置に配置される調整部材をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載のアレイコイル。
【請求項4】
前記第1の基板及び前記第2の基板は、同一のコイルエレメントの配置を有する、請求項1に記載のアレイコイル。
【請求項5】
前記第1の基板及び前記第2の基板は、互いに異なるコイルエレメントの配置を有する、請求項1に記載のアレイコイル。
【請求項6】
前記第1の基板及び前記第2の基板は、互いに異なる厚さを有する、請求項1に記載のアレイコイル。
【請求項7】
前記第1の基板及び前記第2の基板を含む、それぞれに複数のコイルエレメントが形成された複数の基板を備え、
前記複数の基板のそれぞれは、前記複数の基板のうちの少なくとも1つの他の基板に対して積層される、
請求項1に記載のアレイコイル。
【請求項8】
前記第1の基板及び前記第2の基板は、それぞれ可撓性を有するフレキシブル基板である、請求項1に記載のアレイコイル。
【請求項9】
前記アレイコイルは、平面アレイコイルである、請求項1に記載のアレイコイル。
【請求項10】
前記アレイコイルは、ボリュームアレイコイルである、請求項8に記載のアレイコイル。
【請求項11】
少なくとも1つのコイルエレメントを第1の基板に形成することと、
少なくとも1つのコイルエレメントを、前記第1の基板とは異なる第2の基板に形成することと、
前記第1の基板に対して積層された前記第2の基板から当該第1の基板へ向かう積層方向からの平面視において、前記第1の基板に形成された第1のコイルエレメントと、前記第2の基板に形成された第2のコイルエレメントとが交差するように、前記第1の基板に対して前記第2の基板を積層することと
を含むアレイコイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、アレイコイル及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、強力な静磁場中に置かれた生体組織の原子核スピンを、そのラーモア周波数をもつ高周波信号で励起し、この励起に伴って被検体内から発生する磁気共鳴信号(MR信号)に基づいて画像データを再構成する磁気共鳴イメージング(MRI)装置がある。MRI装置では、RF(Radio Frequency)アンプにより増幅されたRF信号の供給を受けたRFコイルにより発生された高周波磁場を静磁場中に配置された被検体に対して照射する。
【0003】
例えば、コイルパターンを基板上に形成することにより複数のコイルエレメントを含むアレイコイル(RFコイル)を製造する技術がある。しかしながら、コイルエレメントが同一平面上で交差するコイルパターンを形成する場合には、隣接するコイルエレメントが互いに電気的に接触しないように、コイルパターンを基板上に形成した後にジャンパーとなる単線を手作業ではんだ付けする必要があった。また、隣接するコイルエレメントが存在すると、例えば幾何学的デカップリングなどのアレイコイルの調整作業が煩雑になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、アレイコイルの製造及び調整を簡便にすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るアレイコイルは、第1の基板と、第2の基板とを備える。前記第1の基板には、少なくとも1つのコイルエレメントが形成されている。前記第2の基板は、前記第1の基板とは異なる基板であって、前記第1の基板に対して積層されている。前記第2の基板には、少なくとも1つのコイルエレメントが形成されている。前記第1の基板に形成された第1のコイルエレメントと、前記第2の基板に形成された第2のコイルエレメントとは、前記第1の基板に対して積層された前記第2の基板から当該第1の基板へ向かう積層方向からの平面視において交差する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るコイルエレメントが形成された単位フレキシブル基板の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る単位フレキシブル基板を積層して形成されるアレイコイルの構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る単位フレキシブル基板を積層して形成されるアレイコイルの構成の別の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るアレイコイルにおける幾何学的デカップリングについて説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るアレイコイルの製造工程の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態に係るアレイコイルとは異なり、フレキシブル基板において手作業ではんだ付けを行うことにより形成されるアレイコイルの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら各実施形態に係るアレイコイル及び製造方法を説明する。なお、以下の説明において、既出の図に関して前述したものと同一又は略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表されている場合もある。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置10の構成の一例を示す図である。MRI装置10は、静磁場中に配置された被検体Pに対して高周波磁場を照射する撮像により取得された磁気共鳴信号に基づいて画像を再構成する装置である。MRI装置10は、
図1に示すように、磁石架台111及び寝台121を備える。磁石架台111は、静磁場磁石112、傾斜磁場コイルユニット115及びRFコイル116を備える。なお、
図1は、磁石架台111の内部構成については、縦断面図にて例示する。なお、MRI装置10に、被検体P(例えば、人体)は含まれない。また、
図1に示す構成は一例であり、例えば、シーケンス制御回路135及びコンソール141の一部又は全部は、適宜統合して構成されてもよいし、適宜分離して構成されてもよい。例えば、MRI装置10は、MR撮影室に設置される。
【0010】
傾斜磁場コイルユニット115には、メインコイル113及びシールドコイル114が含まれている。また、MRI装置10は、傾斜磁場電源131、送信回路132、受信回路133、寝台制御回路134、シーケンス制御回路135及びコンソール141を備える。
【0011】
静磁場磁石112は、概略円筒形状を有し、被検体Pの撮像領域を含むボア(静磁場磁石112の円筒内部の空間)内に静磁場を発生する。静磁場磁石112は超伝導磁石でもよいし、永久磁石でもよい。
【0012】
傾斜磁場コイルユニット115は、概略円筒形状を有し、静磁場磁石112の内側に防振ゴム等の支持構造により保持されている。傾斜磁場コイルユニット115は、傾斜磁場電源131から供給される電流により互いに直交する方向に傾斜磁場を印加(発生)するメインコイル113と、メインコイル113の漏洩磁場をキャンセルするシールドコイル114とを有する。
【0013】
寝台121は、被検体Pが載置される天板122を備え、寝台制御回路134による制御の下、天板122を、被検体Pが載置された状態で、傾斜磁場コイルユニット115の空洞(撮像口)内へ挿入する。寝台制御回路134は、コンソール141による制御の下、寝台121を駆動して天板122を長手方向及び上下方向へ移動する。
【0014】
RF(Radio Frequency)コイル116は、傾斜磁場コイルユニット115の内側に配置され、送信回路132からRFパルスの供給を受けて高周波磁場を発生する。また、高周波磁場の影響によって被検体Pから発せられる磁気共鳴信号を受信し、受信した磁気共鳴信号を受信回路133へ出力する。なお、RFコイル116は、送信コイルと受信コイルとに分かれて構成されるものでもよい。
【0015】
送信回路132は、シーケンス制御回路135の制御により、ラーモア周波数(磁気共鳴周波数とも称される)に変調された高周波パルスをRFコイル116に供給する。本実施形態では、ラーモア周波数(磁気共鳴周波数とも称される)に変調された高周波パルスを、RFパルス、あるいはRF信号と記載する場合もある。磁気共鳴周波数は、磁気共鳴対象の原子に応じた磁気回転比と静磁場の磁束密度とに応じてあらかじめ設定される。つまり、RF信号の周波数は、当該RF信号に基づく計測における計測対象の核種に応じて異なる。静磁場の磁束密度が1.5Tである場合、磁気共鳴周波数は、およそ64MHzである。また、静磁場の磁束密度が3Tである場合、磁気共鳴周波数は、およそ128MHzである。例えば、送信回路132は、発振部や位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、RFアンプなどを有する。
【0016】
発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数のRFパルスを発生する。発振部は、水晶振動子を用いた発振回路と倍周器などとを用いた水晶発振器に相当する。すなわち、水晶発振器は、水晶振動子の発振周波数を倍周器で整数倍した振動(システムクロック)を源振として構成された発振器である。なお、発振回路は、水晶振動子を用いることに限定されず、他の振動子が用いられてもよい。また、発振部は、処理回路142に設けられてもよいし、コンソール141に搭載されてもよい。このとき、発振部は、MRI装置10の制御全体に関する源振となる。
【0017】
位相選択部は、発振部によって発生したRFパルスの位相を選択する。
【0018】
周波数変換部は、位相選択部から出力されたRFパルスの周波数を変換する。
【0019】
振幅変調部は、周波数変換部から出力されたRFパルスの振幅を例えばsinc関数に従って変調する。
【0020】
RFアンプは、振幅変調部から出力された磁気共鳴周波数を有するRFパルスを増幅して、図示しないデュプレクサを介して、RFコイル116に供給する。例えば、RFアンプは、RFパルスを10数kW~数10kWに増幅する。
【0021】
受信回路133は、RFコイル116から出力される磁気共鳴信号を検出し、検出された磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴データを生成する。具体的には、受信回路133は、RFコイル116で受信された磁気共鳴信号をデジタル変換することによって磁気共鳴データを生成する。また、受信回路133は、生成された磁気共鳴データをシーケンス制御回路135へ送信する。
【0022】
シーケンス制御回路135は、コンソール141から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源131、送信回路132及び受信回路133を駆動することによって、パルスシーケンスを実行し、被検体Pの撮像を行う。ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源131がメインコイル113に供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信回路132がRFコイル116に供給するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信回路133が磁気共鳴信号を検出するタイミング等がパルスシーケンスとして定義される。例えば、シーケンス制御回路135は、プロセッサにより実現される。
【0023】
なお、シーケンス情報には、計測対象の核種やRFコイル116に供給するRFパルス(入力信号)の周波数が含まれていてもよい。
【0024】
さらに、シーケンス制御回路135は、傾斜磁場電源131、送信回路132及び受信回路133を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路133から磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データをコンソール141へ転送する。
【0025】
また、送信回路132、受信回路133及び寝台制御回路134等も同様に、上記のプロセッサ等の電子回路により構成される。
【0026】
コンソール141は、MRI装置10を制御するコンピュータである。コンソール141は、MRI装置10の全体制御や、画像の生成等を行う。コンソール141は、処理回路142、記憶回路143、入力インタフェース144、ディスプレイ145及び通信回路146を備える。
【0027】
処理回路142は、ハードウェア資源として、CPU等のプロセッサと、ROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路142は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、MRI装置10の有する各機能を実行する。処理回路142は、MRI装置10の全体制御を行い、撮像や画像の生成、画像の表示等を制御する。例えば、処理回路142は、撮像条件(撮像パラメータ等)の入力をGUI上で受け付け、受け付けた撮像条件に従ってシーケンス情報を生成する。また、処理回路142は、生成したシーケンス情報をシーケンス制御回路135へ送信する。また、処理回路142は、シーケンス制御回路135から磁気共鳴データを受信し、受信した磁気共鳴データを記憶回路143に格納する。また、処理回路142は、k空間データを記憶回路143から読み出し、読み出したk空間データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、画像を生成する。つまり、処理回路142は、静磁場中に配置された被検体Pに対して高周波磁場を照射する撮像により取得された磁気共鳴信号に基づいて画像を再構成する。
【0028】
記憶回路143は、処理回路142で使用される各種の情報を記憶する。具体的には、記憶回路143は、処理回路142によって受信された磁気共鳴データや、処理回路142によってk空間に配置されたk空間データ、処理回路142によって生成された画像データ等を記憶する。また、記憶回路143は、処理回路142により実行される各種のプログラムや各種の設定情報を記憶する。具体的には、記憶回路143は、撮像範囲の位置決めを支援するプログラム、磁気共鳴データの信号処理に係るプログラム等を記憶する。例えば、記憶回路143は、RAMやROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等で実現される。
【0029】
入力インタフェース144は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路142に出力する。例えば、入力インタフェース144は、マウスやトラックボール等のポインティングデバイス等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスである。また、コンソール141とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路142へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース144の例に含まれる。
【0030】
ディスプレイ145は、処理回路142による制御の下、撮像条件の設定や調整に係る入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、処理回路142によって生成された画像等を表示する。ディスプレイ145としては、種々の任意のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。例えばディスプレイ145として、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)、Cathode Ray Tube(CRT)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(Organic Electro Luminescence Display:OELD)又はプラズマディスプレイが使用可能である。
【0031】
なお、ディスプレイ145は、如何なる場所に設けられてもよい。例えば、ディスプレイ145は、撮影室や操作室等に設けられてもよい。また、ディスプレイ145は、磁石架台111に設けられてもよい。また、ディスプレイ145は、デスクトップ型でもよいし、コンソール141の本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、ディスプレイ145として、1又は2以上のプロジェクタが用いられてもよい。
【0032】
通信回路146は、ネットワークを介して情報処理装置30等の外部装置と通信を行う。通信回路146は、例えば、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等の通信インタフェースである。
【0033】
図2は、実施形態に係るコイルエレメント513が形成された単位フレキシブル基板511の構成の一例を示す図である。
【0034】
単位フレキシブル基板511には、
図2に示すように、複数のコイルエレメント513が形成される。単位フレキシブル基板511において、各コイルエレメント513は、互いに離間して配置されている。換言すれば、単位フレキシブル基板511において、各コイルエレメント513は、隣接するコイルエレメント513と交差しない。ここで、隣接するコイルエレメント513が互いに離間している、あるいは、各コイルエレメント513が隣接するコイルエレメント513と交差しないとは、隣接する一対のコイルエレメント513が電気的に接続されていない、すなわち短絡していないことを意味する。
【0035】
図3に示す例では、各コイルエレメント513は、それぞれ6角形の形状を有する。なお、各コイルエレメント513は、
図4のコイルエレメント533と同様に楕円形の形状を有するなど、他の形状を有していてもよい。
【0036】
一例として、単位フレキシブル基板511は、ポリイミドやポリカーボネイトなどの可撓性を有する材料により形成される。なお、単位フレキシブル基板511は、他の材料により形成されても構わない。
【0037】
図3は、実施形態に係る単位フレキシブル基板511を積層して形成されるアレイコイル50の構成の一例を示す図である。アレイコイル50は、上述のRFコイル116の一例である。
図3は、アレイコイル50の一例として、平面アレイコイル51を例示する。
【0038】
平面アレイコイル51は、複数の単位フレキシブル基板511を有する。
図3は、平面アレイコイル51の有する複数の単位フレキシブル基板511として、第1の単位フレキシブル基板511a、第2の単位フレキシブル基板511b及び第3の単位フレキシブル基板511cを例示する。
図3は、第3の単位フレキシブル基板511c上に第2の単位フレキシブル基板511bを積層し、かつ、当該第2の単位フレキシブル基板511b上に第1の単位フレキシブル基板511aを積層した場合を例示する。第1の単位フレキシブル基板511aには、複数のコイルエレメント513aが形成されている。第2の単位フレキシブル基板511bには、複数のコイルエレメント513bが形成されている。第3の単位フレキシブル基板511cには、複数のコイルエレメント513cが形成されている。
【0039】
ここで、複数の単位フレキシブル基板511のうちの任意の単位フレキシブル基板511(例えば第1の単位フレキシブル基板511a)は、第1の基板の一例である。また、複数の単位フレキシブル基板511のうちの当該第1の基板に形成されるコイルエレメント(例えば複数のコイルエレメント513aそれぞれ)は、第1のコイルエレメントの一例である。また、複数の単位フレキシブル基板511のうちの当該第1の基板の他の基板(例えば第2の単位フレキシブル基板511b又は第3の単位フレキシブル基板511c)は、第2の基板の一例である。また、複数の単位フレキシブル基板511のうちの当該第2の基板に形成されるコイルエレメント(例えば複数のコイルエレメント513b又は複数のコイルエレメント513cそれぞれ)は、第2のコイルエレメントの一例である。
【0040】
なお、平面アレイコイル51の複数の単位フレキシブル基板511の数は、各単位フレキシブル基板511の大きさと、平面アレイコイル51の大きさとに基づいて適宜決定されればよい。
【0041】
具体的には、平面アレイコイル51は、複数の単位フレキシブル基板511を積層することにより形成される。換言すれば、平面アレイコイル51は、厚さ方向において、複数の単位フレキシブル基板511に分割されている。平面アレイコイル51において、各単位フレキシブル基板511は、例えば接着剤などにより互いに固定されていてもよい。
【0042】
上述したように、単位フレキシブル基板511において、各コイルエレメント513は、隣接するコイルエレメント513と交差しない。一方で、
図3に示すように、平面アレイコイル51の各コイルエレメント513は、平面アレイコイル51の主面に垂直な方向、すなわち単位フレキシブル基板511の積層方向からの平面視において、交差する。換言すれば、平面アレイコイル51は、互いに異なる単位フレキシブル基板511に形成されたコイルエレメント513が、平面視において交差するように各単位フレキシブル基板511を積層して形成される。
【0043】
図3に示す例では、第1の単位フレキシブル基板511aのコイルエレメント513aと、第2の単位フレキシブル基板511bのコイルエレメント513bとは、平面視において交差する。同様に、第1の単位フレキシブル基板511aのコイルエレメント513aと、第2の単位フレキシブル基板511bのコイルエレメント513bとは、平面視において交差する。同様に、第2の単位フレキシブル基板511bのコイルエレメント513bと、第3の単位フレキシブル基板511cのコイルエレメント513cとは、平面視において交差する。
【0044】
なお、平面アレイコイル51において、各単位フレキシブル基板511は、可撓性を有さない材料により形成されていてもよい。つまり、平面アレイコイル51の各単位フレキシブル基板511は、フレキシブル基板でなくてもよい。
【0045】
なお、単位フレキシブル基板511により形成されるアレイコイル50は、平面アレイコイル51に限らない。
図4は、実施形態に係る単位フレキシブル基板511を積層して形成されるアレイコイル50の構成の別の一例を示す図である。
図4は、アレイコイル50の一例として、ボリュームアレイコイル53を例示する。
【0046】
ボリュームアレイコイル53は、複数の単位フレキシブル基板531を有する。複数の単位フレキシブル基板531は、
図3の複数の単位フレキシブル基板511と同様の構成を有する。
【0047】
なお、
図4には、ボリュームアレイコイル53の有する複数の単位フレキシブル基板531として、1つの単位フレキシブル基板531だけを例示している。なお、ボリュームアレイコイル53の複数の単位フレキシブル基板531の数は、各単位フレキシブル基板531の大きさと、ボリュームアレイコイル53の大きさとに基づいて適宜決定されればよい。単位フレキシブル基板531には、複数のコイルエレメント533が形成されている。
【0048】
各コイルエレメント533は、
図2及び
図3の各コイルエレメント513と同様の構成を有する。
図4に示す例では、各コイルエレメント533は、それぞれ楕円形の形状を有する。なお、各コイルエレメント533は、
図3のコイルエレメント513と同様に6角形の形状を有するなど、他の形状を有していてもよい。
【0049】
ここで、複数の単位フレキシブル基板531のうちの任意の単位フレキシブル基板511は、第1の基板の一例である。また、単位フレキシブル基板531のうちの当該第1の基板に形成される複数のコイルエレメント533それぞれは、第1のコイルエレメントの一例である。また、複数の単位フレキシブル基板531のうちの当該第1の基板の他の基板は、第2の基板の一例である。また、複数の単位フレキシブル基板531のうちの当該第2の基板に形成される複数のコイルエレメント533それぞれは、第2のコイルエレメントの一例である。
【0050】
具体的には、ボリュームアレイコイル53は、複数の単位フレキシブル基板531を軸535に積層して巻き付けることにより形成される。換言すれば、ボリュームアレイコイル53は、厚さ方向、すなわち軸535の径方向において、複数の単位フレキシブル基板531に分割されている。ボリュームアレイコイル53において、各単位フレキシブル基板531は、例えば接着剤などにより互いに固定されていてもよい。
【0051】
上述したように、単位フレキシブル基板531において、各コイルエレメント533は、隣接するコイルエレメント533と交差しない。一方で、ボリュームアレイコイル53の各コイルエレメント533は、軸535の径方向からの平面視において、交差する。換言すれば、ボリュームアレイコイル53は、互いに異なる単位フレキシブル基板531に形成されたコイルエレメント533が、平面視において交差するように各単位フレキシブル基板531を積層して形成される。
【0052】
なお、
図2及び
図4は、それぞれ4つのコイルエレメント513,533が形成された単位フレキシブル基板511,531を例示するが、これに限らない。単位フレキシブル基板511,531に形成されるコイルエレメント513,533の数は、アレイコイル50に要求される高周波磁場に応じて適宜設計されればよく、1つ、2つ又は3つであってもよいし、5以上の複数であっても構わない。
【0053】
なお、各コイルエレメント513,533の形状や大きさ、コイルエレメント間の間隔などのコイルエレメント513,533のパターンは、後述するように、アレイコイル50に要求される高周波磁場に応じて適宜設計される。
【0054】
また、各単位フレキシブル基板511,531において、各コイルエレメント513,533の形状は、例えば一様であるが、異なっていてもよい。また、各単位フレキシブル基板511,531において、各コイルエレメント513,533の大きさは、例えば一様であるが、異なっていてもよい。
【0055】
なお、各コイルエレメント513,533の大きさは、アレイコイル50が設けられる位置に応じて適宜設計され得る。一例として、被検体Pの体表を対象とするアレイコイル50のコイルエレメント513,533は、被検体Pの体表から深い部分を対象とするアレイコイル50のコイルエレメント513,533より大きくてもよい。
【0056】
なお、単位フレキシブル基板511,531のうちの、アレイコイル50においてチューニング回路やマッチング回路、コンデンサ、他の基板などのアレイコイル50の他の構成要素と干渉する位置には、図示しない穴部が設けられている。
【0057】
なお、アレイコイル50において、単位フレキシブル基板511,531が重なっていない領域があっても構わない。換言すれば、アレイコイル50の全体に亘って単位フレキシブル基板511,531が積層されていなくてもよい。
【0058】
なお、アレイコイル50において、複数の単位フレキシブル基板511は、共通であってもよいし、複数の単位フレキシブル基板511のうちの少なくとも1つの単位フレキシブル基板511が他の単位フレキシブル基板511と異なっていてもよい。
【0059】
ここで、単位フレキシブル基板511,531が異なるとは、例えば、各単位フレキシブル基板511,531におけるコイルエレメント513,533の配置が異なることであってもよい。なお、コイルエレメント513,533の配置とは、コイルエレメント513,533の数及び位置のうちの少なくとも一方により規定される。
【0060】
一例として、アレイコイル50がボディコイルに適用される場合、アレイコイル50におけるコイルエレメント513,533の分布が一様となるように、各単位フレキシブル基板511,531にコイルエレメント513,533が配置される。一例として、アレイコイル50が頭コイルに適用される場合、アレイコイル50のうちの被検体Pの頭部側においてコイルエレメント513,533が密になるように、各単位フレキシブル基板511,531にコイルエレメント513,533が配置される。このように、各単位フレキシブル基板511,531におけるコイルエレメント513,533の配置を異ならせることにより、アレイコイル50の分解能に分布を持たせることができる。
【0061】
なお、単位フレキシブル基板511,531が異なるとは、例えば、各単位フレキシブル基板511,531の厚さが異なることであってもよい。
【0062】
また、各単位フレキシブル基板511,531において、基板の厚さは一様であってもよいし、例えばコイルエレメント513,533の配置に応じて基板の厚さに分布があってもよい。
【0063】
ここで、実施形態に係るアレイコイル50におけるデカップリングについて説明する。
図5は、実施形態に係るアレイコイル50における幾何学的デカップリングについて説明するための図である。
図5の平面アレイコイル51は、
図3の平面アレイコイル51にスペーサ517を挿入した状態を例示する。ここで、スペーサ517は、調整部材の一例である。
【0064】
なお、ここでは説明の簡単のために、
図3の平面アレイコイル51に対して幾何学的デカップリング(Geometry Decoupling)を行う場合を例に説明を行うが、
図4のボリュームアレイコイル53についても同様である。
【0065】
上述したように、実施形態に係るアレイコイル50は、複数の単位フレキシブル基板511を積層することにより形成することができる。このため、実施形態に係るアレイコイル50においては、単位フレキシブル基板511ごとにコイルエレメント513を動かすことができる。したがって、実施形態に係るアレイコイル50に対する幾何学的デカップリングは、積層方向において単位フレキシブル基板511の間にスペーサ517を挟み込むことで実現することができる。なお、実施形態に係るアレイコイル50に対する幾何学的デカップリングは、他の単位フレキシブル基板511に対する位置、すなわち貼り合わせる位置を調整することで実現することもできる。
【0066】
スペーサ517は、例えばガラスや、ガラスエポキシ樹脂、テフロン(登録商標)などの磁場を遮蔽しない非磁性体により形成される。スペーサ517は、例えば板状の形状を有する。
【0067】
具体的には、スペーサ517は、積層方向において隣接する単位フレキシブル基板511の間において、平面視において交差する、調整対象のコイルエレメント513の間の位置に配置される。これにより、互いに異なる単位フレキシブル基板511に形成されたコイルエレメント513の間の距離(厚み)が調整されるため、調整対象のコイルエレメント513を貫く磁束量を調整することができる。
【0068】
図5に示す例では、スペーサ517a(スペーサ517)は、第1の単位フレキシブル基板511aのコイルエレメント513aと、第3の単位フレキシブル基板511cのコイルエレメント513cとが、平面視において交差する位置に配置されている。ここで、スペーサ517aは、第1の単位フレキシブル基板511a及び第2の単位フレキシブル基板511bの間に挟み込まれてもよいし、第2の単位フレキシブル基板511b及び第3の単位フレキシブル基板511cの間に挟み込まれてもよい。つまり、積層方向において隣接しない単位フレキシブル基板511の間でコイルエレメント513のデカップリングを行う場合、スペーサ517は、対象のコイルエレメント513が設けられた一対の単位フレキシブル基板511の間において、任意の一対の単位フレキシブル基板511の間に挿入されればよい。
【0069】
また、
図5に示す例では、スペーサ517b(スペーサ517)は、第1の単位フレキシブル基板511aのコイルエレメント513aと、第2の単位フレキシブル基板511bのコイルエレメント513bとが、平面視において交差する位置に配置されている。スペーサ517bは、例えば、第1の単位フレキシブル基板511a及び第2の単位フレキシブル基板511bの間に挟み込まれる。
【0070】
なお、スペーサ517は、板状に限らず、線状の形状など他の形状であっても構わない。また、スペーサ517は、単位フレキシブル基板511の間の全体に亘って挿入されてもよい。つまり、スペーサ517は、積層方向において隣接するコイルエレメント513の間の距離を変化させるために使用されてもよいし、積層方向において隣接する単位フレキシブル基板511の間の距離そのものを変化させるために使用されてもよい。
【0071】
なお、実施形態に係るアレイコイル51の幾何学的デカップリングは、スペーサ517を用いる場合に限らず、厚さの異なる単位フレキシブル基板511を用いることにより行われてもよい。具体的には、調整対象のコイルエレメント513が形成された単位フレキシブル基板511のうちの少なくとも一方を、厚さが異なる、かつ、コイルエレメント513の配置が共通の単位フレキシブル基板511と差し替えることにより、幾何学的デカップリングが実現されても構わない。なお、単位フレキシブル基板511の厚さが異なるとは、単位フレキシブル基板511の全体に亘って厚さが異なることであってもよいし、積層されたときに他の単位フレキシブル基板511のコイルエレメント513と交差する位置の厚さが局所的に異なることであってもよい。ここで、差し替える単位フレキシブル基板511は、調整部材の一例であると表現することができる。
【0072】
なお、コイルエレメント513の一部を削るなど、コイルエレメント513の線幅を変化させることにより幾何学的デカップリングを実現することもできる。この際、調整対象のコイルエレメント513が形成された単位フレキシブル基板511のうちの少なくとも一方を、コイルエレメント513の線幅が異なる、すなわちインダクタンスが異なる、かつ、コイルエレメント513の配置が共通の単位フレキシブル基板511と差し替えることにより、幾何学的デカップリングが実現されても構わない。
【0073】
このように、実施形態に係るアレイコイル51は、複数の単位フレキシブル基板511を積層することにより形成されるため、一部の単位フレキシブル基板511を差し替えることにより、幾何学的デカップリングを実現することもできる。また、積層されていない状態の単位フレキシブル基板511に対して線幅を調整する作業を行うことができるため、調整作業を容易なものとすることができる。
【0074】
ここで、実施形態に係るアレイコイル50(RFコイル116)の製造方法について説明する。
図6は、実施形態に係るアレイコイル50の製造工程の流れの一例を示すフローチャートである。
【0075】
まず、アレイコイル50における各コイルエレメント513,533の配置を決定する(S101)。各コイルエレメント513,533の配置は、例えばアレイコイル50に要求される高周波磁場に応じて適宜設計され得る。
【0076】
次に、複数の単位フレキシブル基板511,531のそれぞれにおける各コイルエレメント513,533の配置を決定する(S102)。具体的には、アレイコイル50における各コイルエレメント513,533の配置を分割し、各単位フレキシブル基板511,531における各コイルエレメント513,533の配置を決定する。このとき、アレイコイル50における各コイルエレメント513,533のうち、同一平面上に形成すると交差するコイルエレメント513,533は、互いに異なる単位フレキシブル基板511,531に配置される。
【0077】
そして、単位フレキシブル基板511,531に個々のコイルエレメント513,533を離して形成する(S103)。具体的には、S102で決定された配置に従い、各単位フレキシブル基板511,531に各コイルエレメント513,533を印刷する。
【0078】
その後、コイルエレメント513,533が形成された単位フレキシブル基板511,531を積層してアレイコイル50を形成する(S104)。また、例えば単位フレキシブル基板511,531の間にスペーサ571を挿入して、各コイルエレメント513,533間の距離を調整するデカップリングを行う(S105)。
【0079】
このように、実施形態に係るアレイコイル50は、積層された複数の単位フレキシブル基板511,531を有する。また、複数の単位フレキシブル基板511,531それぞれには、少なくとも1つのコイルエレメント513,533が形成されている。ここで、第1の基板に形成された第1のコイルエレメントと、前記第2の基板に形成された第2のコイルエレメントとは、第1の基板に対して積層された第2の基板から当該第1の基板へ向かう積層方向からの平面視において交差する。
【0080】
図7は、実施形態に係るアレイコイル50とは異なり、フレキシブル基板615において手作業ではんだ付けを行うことにより形成されるアレイコイル60の構成の一例を示す図である。例えば、
図7に示すように、コイルエレメント613が同一平面上で交差するコイルパターンを形成する場合には、隣接するコイルエレメント613が互いに電気的に接触しないように、コイルパターンを基板上に形成した後にジャンパーとなる単線617を手作業ではんだ付けする必要があった。
図7に示す例では、コイルエレメント613a,613cと同一平面上で交差するコイルエレメント613bを形成するためには、単線617bをはんだ付けすることにより、互いに離されて基板上に形成されたコイルエレメント613bを構成する各パターンを接続する必要があった。同様に、コイルエレメント613a,613cと同一平面上で交差するコイルエレメント613dを形成するためには、単線617dをはんだ付けすることにより、互いに離されて基板上に形成されたコイルエレメント613dを構成する各パターンを接続する必要があった。
【0081】
一方で、本実施形態に係るアレイコイル50は、上述したように、同一平面上に形成する場合には交差するコイルエレメント513,533が互いに異なる単位フレキシブル基板511,531に形成されている。この構成によれば、単位フレキシブル基板に形成されたコイルエレメントに対して、隣接するコイルエレメントが互いに電気的に接触しないようにジャンパーとなる単線を手作業ではんだ付けする作業を不要とすることができる。
【0082】
つまり、本実施形態に係るアレイコイル50は、少なくとも1つのコイルエレメント513,533が形成された複数の単位フレキシブル基板511,531を重ね合わせることにより形成することができる。このため、本実施形態に係るアレイコイル50は、簡便に製造することができる。
【0083】
また、本実施形態に係るアレイコイル50において、複数のコイルエレメント513,533は、
図7に示すコイルパターンとは異なり、単位フレキシブル基板511,531において、すなわち同一平面上において互いに交差しない。この構成によれば、
図7のアレイコイル60とは異なり、隣接するコイルエレメント513,533が互いに電気的に接触しないため、コイルパターンを基板上に形成した後にジャンパーとなる単線617を手作業ではんだ付けする作業を不要とすることができる。したがって、実施形態に係るアレイコイル50は、簡便に製造することができる。また、隣接するコイルエレメントが離れているため、例えば幾何学的デカップリングなどのアレイコイルの調整作業が容易になり、アレイコイル50の製造をより簡便にすることができる。
【0084】
また、本実施形態に係るアレイコイル50において、複数の単位フレキシブル基板511,531の間であって、かつ、同一平面上に形成する場合には交差するコイルエレメント513,533が交差する位置、すなわち互いに異なる単位フレキシブル基板511,531に形成されたコイルエレメントが積層方向からの平面視において交差する位置には、スペーサ517を配置可能である。この構成によれば、簡便に、かつ、コイルエレメント513,533の配置に影響を与えることなく、デカップリングを調整することができる。
【0085】
また、複数の単位フレキシブル基板511,531を重ね合わせてアレイコイル50を形成することができるため、柔軟なレイアウト変更を実現することもできる。
【0086】
例えば、重ね合わせる単位フレキシブル基板511,531を、同一のコイルエレメント513,533の配置とすることができる。一方で、重ね合わせる単位フレキシブル基板511,531を、互いに異なるコイルエレメント513,533の配置とすることもできる。
【0087】
例えば、重ね合わせる単位フレキシブル基板511,531の厚さを同一とすることも、互いに異ならせることもできる。
【0088】
例えば、単位フレキシブル基板511,531を積層することにより、複数の平面アレイコイル51が形成される。なお、平面アレイコイル51を形成する単位基板については、可撓性を有する単位フレキシブル基板511,531とすることもできるし、可撓性を有さない単位基板とすることもできる。平面アレイコイル51を形成する単位基板を、可撓性を有する単位フレキシブル基板511,531と、可撓性を有さない単位基板との組み合わせとすることもできる。
【0089】
例えば、可撓性を有する単位フレキシブル基板511,531を軸535に巻き付けることにより、ボリュームアレイコイル53を形成することができる。
【0090】
なお、同一平面上に形成する場合には交差するコイルエレメント513,533を互いに異なる面に形成することでも、隣接するコイルエレメントが互いに電気的に接触しないようにジャンパーとなる単線を手作業ではんだ付けする作業を不要とすることができる。
【0091】
しかしながら、コイルエレメントを基板の両面に形成する場合、コイルエレメントを2層以上に分割できないため、同一平面上に形成する場合には交差するコイルエレメント513,533のすべてを異なる面に形成できない場合もあり得る。一方で、本実施形態に係るアレイコイル50においては、3以上の複数の単位フレキシブル基板511,531を積層することができる。このため、同一平面上に形成する場合には交差するコイルエレメント513,533のすべてを異なる単位フレキシブル基板511,531に形成し、すべてのコイルエレメント513,533を、同一平面上で互いに交差させない構成とすることができる。
【0092】
また、コイルエレメントを基板の両面に形成する場合、一方の面に形成されたコイルエレメントと、他方の面に形成されたコイルエレメントとは、厚さ方向及び水平方向のいずれに対しても位置が固定されている。一方で、本実施形態に係るアレイコイル50においては、厚さ方向及び水平方向のいずれに対しても、各単位フレキシブル基板511,531を調整しながら積層することができる。
【0093】
なお、上述の実施形態に係るアレイコイル50は、コイルエレメント513,533の分布が均一な領域については複数の単位フレキシブル基板511,531を積層することにより形成しつつ、コイルエレメント513,533の分布が不均一な領域については
図7に例示するアレイコイル60を参照して説明したように手作業で形成することにより製造することもできる。
【0094】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、ASIC、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device:PLD)等の回路を意味する。PLDは、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)を含む。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。プログラムが保存された記憶回路は、コンピュータ読取可能な非一時的記録媒体である。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、プログラムを実行するのではなく、論理回路の組合せにより当該プログラムに対応する機能を実現してもよい。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0095】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、アレイコイルの製造及び調整を簡便にすることができる。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0097】
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
【0098】
(付記1)
少なくとも1つのコイルエレメントが形成された第1の基板と、
少なくとも1つのコイルエレメントが形成された前記第1の基板とは異なる基板であって、前記第1の基板に対して積層された第2の基板と
を備え、
前記第1の基板に形成された第1のコイルエレメントと、前記第2の基板に形成された第2のコイルエレメントとは、前記第1の基板に対して積層された前記第2の基板から当該第1の基板へ向かう積層方向からの平面視において交差する、
アレイコイル。
【0099】
(付記2)
前記第1の基板及び前記第2の基板の少なくとも一方には、複数のコイルエレメントが形成されていてもよい。
前記複数のコイルエレメントが形成された基板において、当該複数のコイルエレメントは、互いに交差していなくてもよい。
【0100】
(付記3)
前記アレイコイルは、前記第1の基板及び前記第2の基板の間であって、かつ、前記第1のコイルエレメント及び前記第2のコイルエレメントが前記平面視において交差する位置に配置される調整部材をさらに備えていてもよい。
【0101】
(付記4)
前記第1の基板及び前記第2の基板は、同一のコイルエレメントの配置を有していてもよい。
【0102】
(付記5)
前記第1の基板及び前記第2の基板は、互いに異なるコイルエレメントの配置を有していてもよい。
【0103】
(付記6)
前記第1の基板及び前記第2の基板は、互いに異なる厚さを有していてもよい。
【0104】
(付記7)
前記アレイコイルは、前記第1の基板及び前記第2の基板を含む、それぞれに複数のコイルエレメントが形成された複数の基板を備えていてもよい。
前記複数の基板のそれぞれは、前記複数の基板のうちの少なくとも1つの他の基板に対して積層されていてもよい。
【0105】
(付記8)
前記第1の基板及び前記第2の基板は、それぞれ可撓性を有するフレキシブル基板であってもよい。
【0106】
(付記9)
前記アレイコイルは、平面アレイコイルであってもよい。
【0107】
(付記10)
前記アレイコイルは、ボリュームアレイコイルであってもよい。
【0108】
(付記11)
少なくとも1つのコイルエレメントを第1の基板に形成することと、
少なくとも1つのコイルエレメントを、前記第1の基板とは異なる第2の基板に形成することと、
前記第1の基板に対して積層された前記第2の基板から当該第1の基板へ向かう積層方向からの平面視において、前記第1の基板に形成された第1のコイルエレメントと、前記第2の基板に形成された第2のコイルエレメントとが交差するように、前記第1の基板に対して前記第2の基板を積層することと
を含むアレイコイルの製造方法。
【0109】
(付記12)
前記製造方法は、前記第1の基板及び前記第2の基板の少なくとも一方に、複数のコイルエレメントが形成することを含んでいてもよい。
前記製造方法は、前記複数のコイルエレメントが形成された基板において、当該複数のコイルエレメントを、互いに交差させないことを含んでいてもよい。
【0110】
(付記13)
前記製造方法は、前記第1の基板及び前記第2の基板の間であって、かつ、前記第1のコイルエレメント及び前記第2のコイルエレメントが前記平面視において交差する位置に調整部材を配置することをさらに含んでいてもよい。
【0111】
(付記14)
前記製造方法は、前記第1の基板及び前記第2の基板に、同一のコイルエレメントを配置することを含んでいてもよい。
【0112】
(付記15)
前記製造方法は、前記第1の基板及び前記第2の基板に、互いに異なるコイルエレメントを配置することを含んでいてもよい。
【0113】
(付記16)
前記製造方法は、前記第1の基板及び前記第2の基板を、互いに異なる厚さとすることを含んでいてもよい。
【0114】
(付記17)
前記製造方法は、前記第1の基板及び前記第2の基板を含む複数の基板のそれぞれに、複数のコイルエレメントを形成することを含んでいてもよい。
前記製造方法は、前記複数の基板のそれぞれを、前記複数の基板のうちの少なくとも1つの他の基板に対して積層することを含んでいてもよい。
【0115】
(付記18)
前記製造方法は、前記第1の基板及び前記第2の基板を、それぞれ可撓性を有するフレキシブル基板とすることを含んでいてもよい。
【0116】
(付記19)
前記製造方法は、前記アレイコイルを、平面アレイコイルとすることを含んでいてもよい。
【0117】
(付記20)
前記製造方法は、前記アレイコイルを、ボリュームアレイコイルとすることを含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0118】
10 MRI装置
132 送信回路
133 受信回路
135 シーケンス制御回路
141 コンソール
142 処理回路
50 アレイコイル
51 平面アレイコイル
511 単位フレキシブル基板(第1の基板,第2の基板)
513 コイルエレメント(第1のコイルエレメント,第2のコイルエレメント)
517 スペーサ(調整部材)
53 ボリュームアレイコイル
531 単位フレキシブル基板(第1の基板,第2の基板)
533 コイルエレメント(第1のコイルエレメント,第2のコイルエレメント)
535 軸