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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023154989
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】車両用前照灯制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/115 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
B60Q1/115
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064678
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 敬
(72)【発明者】
【氏名】河崎 佳
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA30
3K339CA01
3K339GA02
3K339GB01
3K339HA01
3K339HA13
3K339HA14
3K339HA15
3K339HA19
3K339JA21
3K339KA23
3K339KA27
3K339LA02
3K339MA01
3K339MA07
3K339MA10
3K339MC02
3K339MC03
3K339MC41
3K339MC90
(57)【要約】
【課題】先行車両の運転手を眩惑させることを適切に抑制することができる車両用前照灯制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置60は、車両の前照灯の光軸Aの上下の傾き調整制御を行う。制御装置60は、車両の直前において先行して走行している先行車両と自車両との車間距離D1及び先行車両における後方視認装置を検知する検知部40と、制御部50とを備えている。制御部50は、車間距離D1が前照灯の配光範囲S内に入っており、後方視認装置が、基準直線L1及び前照灯の光軸Aの延長線L2の双方よりも下方であるときに、光軸Aの上下の傾き調整を行う。制御部50は、延長線L2が後方視認装置よりも下方となるように光軸Aを下げる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前照灯の光軸の上下の傾き調整制御を行う車両用前照灯制御装置であって、
前記車両の直前において先行して走行している先行車両と前記車両との車間距離及び前記先行車両における後方視認装置を検知する検知部と、
前記車間距離が前記前照灯の配光範囲内に入っており、前記後方視認装置が、前記前照灯を通って前記車両の前後方向に沿って延在する基準直線及び前記前照灯の光軸の延長線の双方よりも下方であるときに、前記延長線が前記後方視認装置よりも下方となるように前記光軸を下げる制御部と、を備える、
車両用前照灯制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記延長線が前記後方視認装置よりも下方となるように前記光軸を下げる際、前記光軸を段階的に下げる、
請求項1に記載の車両用前照灯制御装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記先行車両のルーフの高さを検知するものであり、
前記制御部は、前記ルーフの高さが前記前照灯の高さよりも高いときには、前記光軸の上下の傾き調整を禁止する、
請求項1または請求項2に記載の車両用前照灯制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記基準直線と前記前照灯の光軸のなす角度である光軸角度を導出するとともに、前記前照灯と前記後方視認装置とを結ぶ仮想直線と前記基準直線とのなす角度である装置角度を導出し、前記車間距離が前記配光範囲内に入っており、前記光軸角度が前記装置角度よりも小さいときに、前記光軸角度が前記装置角度よりも大きくなるように前記光軸を下げる、
請求項1に記載の車両用前照灯制御装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記車両の前方を撮像するカメラ及び前記車両の前方を測定するレーダの少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の車両用前照灯制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、有線または無線の通信により書き換え可能なメモリを備えており、
前記メモリに記憶されているプログラムに基づいて前記傾き調整制御を行う、
請求項5に記載の車両用前照灯制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両におけるヘッドライトの光軸の向きを調整するライト制御装置が開示されている。ライト制御装置は、光軸角度変更手段と、テールライト検出手段と、角度演算手段と、角度指令手段とを備えている。
【0003】
光軸角度変更手段は、外部指令に応じて設定される所定の角度にヘッドライトの光軸の向きを変更する。
テールライト検出手段は、車両の前方を撮像するカメラから撮像画像を取得するとともに、撮像画像中から他車両のテールライトを検出する。
【0004】
角度演算手段は、検出されたテールライトの撮像画像中における位置を基準として照射目標を設定するとともに、同照射目標に対してヘッドライトの光軸を向けるときの角度を演算する。
【0005】
角度指令手段は、角度演算手段により演算された角度にヘッドライトの光軸の向きを変更させる。
こうしたライト制御装置によれば、自車両の前方を自車両と同方向に先行車両が走行しているときに、同先行車両のテールライトの撮像画像中における位置を基準として設定された照射目標に対してヘッドライトの光軸が変更される。これにより、先行車両の運転者を眩惑したり、先行車両との間にヘッドライトによって照らされない領域ができたりすることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-67084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の装置の場合、カメラにより取得された撮像画像中に先行車両のテールライトが検出されると、ヘッドライトの光軸が下げられる。そのため、例えば先行車両が大型車であり、自車両が小型車である場合のように、自車両のヘッドライトの光によって先行車両の運転手を眩惑させる可能性がほとんどない場合であっても光軸が下げられることで自車両の運転手に対して違和感を与えやすい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための車両用前照灯制御装置は、車両の前照灯の光軸の上下の傾き調整制御を行う車両用前照灯制御装置であって、前記車両の直前において先行して走行している先行車両と前記車両との車間距離及び前記先行車両における後方視認装置を検知する検知部と、前記車間距離が前記前照灯の配光範囲内に入っており、前記後方視認装置が、前記前照灯を通って前記車両の前後方向に沿って延在する基準直線及び前記前照灯の光軸の延長線の双方よりも下方であるときに、前記延長線が前記後方視認装置よりも下方となるように前記光軸を下げる制御部と、を備える。
【0009】
同構成によれば、先行車両と自車両との車間距離が自車両の前照灯の配光範囲内に入っており、先行車両の後方視認装置が、前照灯を通って車両の前後方向に沿って延在する基準直線及び同前照灯の光軸の延長線の双方よりも下方であるときに、光軸が下げられる。これにより、上記延長線がルームミラー、サイドミラーなどの後方視認装置よりも下方となるので、後方視認装置に自車両の前照灯の光が進入することが抑制されるようになる。したがって、先行車両の運転手を眩惑させることを抑制できる。
【0010】
一方、上記車間距離が前照灯の配光範囲内に入っていないとき、後方視認装置が上記基準直線よりも上方であるとき、または後方視認装置が前照灯の光軸の延長線よりも上方であるときには、光軸が下げられることはない。このため、自車両の前照灯の光によって先行車両の運転手を眩惑させる可能性がほとんどない場合に光軸が下げられることを抑制できる。
【0011】
したがって、先行車両の運転手を眩惑させることを適切に抑制できる。
上記車両用前照灯制御装置において、前記制御部は、前記延長線が前記後方視認装置よりも下方となるように前記光軸を下げる際、前記光軸を段階的に下げることが好ましい。
【0012】
同構成によれば、上記延長線が後方視認装置よりも下方となるように光軸を下げる際、光軸が段階的に下げられるようになる。これにより、光軸が一度に大きく下げられることによって自車両の運転手に違和感を与えることを抑制できる。
【0013】
上記車両用前照灯制御装置において、前記検知部は、前記先行車両のルーフの高さを検知するものであり、前記制御部は、前記ルーフの高さが前記前照灯の高さよりも高いときには、前記光軸の上下の傾き調整を禁止することが好ましい。
【0014】
先行車両のルーフの高さが自車両の前照灯の高さよりも高い場合、後方視認装置は、一般的に当該ルーフの高さに応じて高い位置に設置されるので、上記基準直線よりも上方となる。
【0015】
この点、上記構成によれば、先行車両のルーフの高さが自車両の前照灯の高さよりも高いときには、光軸の上下の傾き調整が禁止されるので、光軸の上下の傾き調整の実行に伴う制御負荷の増大を抑制できる。
【0016】
上記車両用前照灯制御装置において、前記制御部は、前記基準直線と前記前照灯の光軸のなす角度である光軸角度を導出するとともに、前記前照灯と前記後方視認装置とを結ぶ仮想直線と前記基準直線とのなす角度である装置角度を導出し、前記車間距離が前記配光範囲内に入っており、前記光軸角度が前記装置角度よりも小さいときに、前記光軸角度が前記装置角度よりも大きくなるように前記光軸を下げることが好ましい。
【0017】
同構成によれば、後方視認装置が上記基準直線及び上記延長線の双方よりも下方であるか否かを、光軸角度と装置角度との比較に基づいて容易に判定することができる。
上記車両用前照灯制御装置において、前記検知部は、前記車両の前方を撮像するカメラ及び前記車両の前方を測定するレーダの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0018】
同構成によれば、例えば車両に設けられるミリ波レーダなどのレーダにより、先行車両と自車両との車間距離を検知できる。また、車両に設けられるカメラの撮像画像に基づいて、先行車両の後方視認装置を検知できる。したがって、専用の検知部を設けなくて済む。
【0019】
上記車両用前照灯制御装置において、前記制御部は、有線または無線の通信により書き換え可能なメモリを備えており、前記メモリに記憶されているプログラムに基づいて前記傾き調整制御を行うことが好ましい。
【0020】
同構成によれば、上下の傾き調整が可能な前照灯と、前記車両の前方を撮像するカメラ及び前記車両の前方を測定するレーダの少なくとも一方を備える車両において、制御部のメモリに記憶されているプログラムを書き換えることによって、上記発明の作用効果を容易に奏することができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、先行車両の運転手を眩惑させることを適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、一実施形態に係る車両用前照灯制御装置について、前照灯を中心とした車両の前部を示す側面図である。
図2図2は、図1の要部を拡大して示す部分拡大図である。
図3図3は、同実施形態の車両用前照灯制御装置の電気的構成を示すブロック図である。
図4図4は、同実施形態の前照灯の光軸調整制御の処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、同実施形態の自車両と先行車両との位置関係を示す側面図である。
図6図6は、各種距離と光軸角度及び装置角度との関係を示す模式図である。
図7図7は、同実施形態の作用を説明する模式図である。
図8図8は、同実施形態の作用を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1図8を参照して、車両用前照灯制御装置(以下、制御装置60)の一実施形態について説明する。
なお、以降において、車両70の前後方向を前後方向Lとし、車両70が水平面上に位置しているときの車両70の上下方向を上下方向Zとして説明する。
【0024】
また、前後方向Lにおける前側及び後側を、それぞれ単に「前側」及び「後側」とし、上下方向Zにおける上側及び下側を、それぞれ単に「上側」及び「下側」として説明する。
【0025】
<前照灯10>
図1に示すように、車両70の前部には、前照灯10が設けられている。前照灯10は、車幅方向(図1の紙面直交方向)において互いに間隔をあけて一対配置されている。
【0026】
図2に示すように、前照灯10は、ハウジング11とカバー14とを有している。
ハウジング11は、前方に向かって開口する開口部12aを形成する周壁12と、開口部12aの後方に位置し、開口部12aと前後方向Lにおいて対向する対向壁13とを有している。ハウジング11は、図示しない車体のフレームに固定されている。ハウジング11は、例えば硬質樹脂製である。
【0027】
カバー14は、可視光透過性を有している。カバー14は、開口部12aを前方から覆うようにして周壁12における開口部12aの周縁部に取り付けられている。カバー14は、例えば硬質樹脂製である。
【0028】
ハウジング11の内部には、駆動部30を介して発光部20が設けられている。
発光部20は、光源21と反射鏡22とを備えている。
反射鏡22は、前方に向かって開口するお椀形状を有している。反射鏡22の底部には、光源21が取り付けられている。反射鏡22は、光源21から照射された光を前方に向けて反射させる。したがって、発光部20は、前後方向Lに延びる光軸Aを有している。
【0029】
駆動部30は、モータ31、変換機構32、下側支持部33、及び上側支持部36を備えている。
モータ31は、対向壁13の後側に設けられている。モータ31は、前後方向Lに延在する出力軸31aを有している。出力軸31aは、対向壁13を貫通してハウジング11の内部まで延在している。
【0030】
出力軸31aには、変換機構32を介して、下側支持部33が連結されている。
下側支持部33は、変換機構32に連結され、前後方向Lに延在する下側軸部34と、反射鏡22の後面に連結された受け部35とを備えている。下側軸部34の前端には、球状部34aが設けられている。受け部35は、球状部34aを転動自在に支持する凹球面状の支持面を有している。
【0031】
上側支持部36は、反射鏡22から後方に向かって延びる前側軸部37と、対向壁13の前面に連結され、前後方向Lに延在する後側軸部38とを備えている。前側軸部37の後端には、球状部37aが設けられている。後側軸部38の前端には、軸受け38aが設けられている。軸受け38aは、球状部37aを転動自在に支持する凹球面状の支持面を有している。
【0032】
変換機構32は、出力軸31aの回転運動を、下側軸部34の前後方向Lにおける直線運動に変換する周知の構成を備えている。
出力軸31aが正回転されると、変換機構32を介して下側軸部34が後方に向けて引っ張られる。このとき、受け部35を介して反射鏡22の下部が後方に向けて引っ張られることで、光軸Aが下げられる。
【0033】
出力軸31aが逆回転されると、変換機構32を介して下側軸部34が前方に向けて押し出される。このとき、受け部35を介して反射鏡22の下部が前方に向けて押し出されることで、光軸Aが上げられる。
【0034】
モータ31には、出力軸31aの回転角θaを検知するための回転角センサ39が設けられている。回転角センサ39は、例えば磁気センサなどの出力軸31aの回転角θaを検知する周知の構成を備えている。
【0035】
図3に示すように、制御装置60は、いずれも車両70に設けられた検知部40及び制御部50を備えている。
<検知部40>
検知部40は、車両70の直前において先行して走行している先行車両80と車両70との車間距離D1及び先行車両80における後方視認装置81を検知する。本実施形態では、検知部40は、後方視認装置81としてルームミラー82を検知する。
【0036】
検知部40は、レーダ41、カメラ42、及び画像処理部43を備えている。
レーダ41は、車両70の前方を測定する。詳しくは、レーダ41は、先行車両80と車両70との車間距離D1を検知する。本実施形態のレーダ41は、例えば周知のミリ波レーダである。レーダ41は、前後方向Lにおいて前照灯10の発光部20と略同一の位置に設けられている。
【0037】
カメラ42は、車両70の前方を撮像する。カメラ42は、例えば車両70の車室内においてフロントガラスの上部の後側に隣り合って配置されている。
画像処理部43は、カメラ42の撮像画像を画像処理することで、車両70の前方を走行している先行車両80の後方視認装置81を検知するとともに、後方視認装置81の道路の路面Gからの高さを検知する。画像処理部43には、レーダ41及びカメラ42が電気的に接続されている。
【0038】
画像処理部43は、カメラ42の撮像画像を画像処理することで先行車両80のルーフ86、後方視認装置81、及びナンバープレート85を特定する(図5参照)。
画像処理部43は、撮像画像中における路面Gからのルーフ86の高さに対して、上記車間距離D1に応じて設定される所定の縮尺比率を乗じることにより、路面Gからのルーフ86の高さH2を導出する。
【0039】
画像処理部43は、撮像画像中における路面Gからの後方視認装置81の高さに対して、上記車間距離D1に応じて設定される所定の縮尺比率を乗じることにより、路面Gからの後方視認装置81の高さH3を導出する。詳しくは、画像処理部43は、路面Gからの後方視認装置81の最下点の高さH3を導出する。
【0040】
画像処理部43は、撮像画像中における路面Gからのナンバープレート85の高さに対して、上記車間距離D1に応じて設定される所定の縮尺比率を乗じることにより、路面Gからのナンバープレート85の高さH4を導出する。詳しくは、画像処理部43は、路面Gからのナンバープレート85の最下点の高さH4を導出する。
【0041】
画像処理部43は、上記車間距離D1に対して、所定値Dfを加算することで、車両70との後方視認装置81との間の距離D2を導出する。ここで、所定値Dfは、一般的な車両の後端とルームミラーとの間の距離である。
【0042】
<制御部50>
図3に示すように、制御部50は、検知部40から出力される信号に基づいて、前照灯10の光軸Aの上下の傾き調整制御(以下、光軸調整制御)を行う。制御部50には、検知部40(レーダ41及び画像処理部43)の他に、モータ31及び回転角センサ39が電気的に接続されている。
【0043】
制御部50は、書き換え可能なメモリ51を備えている。メモリ51には、光軸調整制御を実行するプログラムが記憶されている。
制御部50は、メモリ51に記憶されているプログラムに基づいて、光軸調整制御を実行する。
【0044】
なお、制御部50は、車両70の外部の制御装置と有線または無線にて通信可能に構成されている。
ここで、前照灯10を通って前後方向Lに沿って延在する仮想直線を基準直線L1とし、前照灯10の光軸Aを仮想的に延長した直線を延長線L2とする。
【0045】
制御部50は、車間距離D1が前照灯10の配光範囲S内に入っており、後方視認装置81が、基準直線L1及び延長線L2の双方よりも下方であるときに、延長線L2が後方視認装置81よりも下方となるように光軸Aを下げる。
【0046】
詳しくは、制御部50は、前照灯10の光量と、光軸Aの上下の傾きと、前照灯10の配光範囲Sとの関係が規定されたマップを参照することによって配光範囲Sを導出する。上記マップは、メモリ51に予め記憶されている。
【0047】
詳しくは、制御部50は、基準直線L1と前照灯10の光軸Aのなす角度である光軸角度θ1を導出する。制御部50は、前照灯10と後方視認装置81とを結ぶ仮想直線L3と基準直線L1とのなす角度である装置角度θ2を導出する。制御部50は、車間距離D1が配光範囲S内に入っており、光軸角度θ1が装置角度θ2よりも小さいときに、光軸角度θ1が装置角度θ2よりも大きくなるように光軸Aを下げる。制御部50は、光軸角度θ1が下限角度θ3となるまで光軸Aを下げる。制御部50は、光軸Aを下げる際、光軸Aを段階的に下げる。
【0048】
ここで、制御部50は、回転角センサ39により検知される回転角θaに基づいて、光軸角度θ1を導出する。
制御部50は、以下のようにして装置角度θ2を導出する。
【0049】
図6に示すように、装置角度θ2は、車両70と後方視認装置81との間の距離D2と、上下方向Zにおける基準直線L1と後方視認装置81(この場合、ルームミラー82)との距離ΔH1とから導出される。
【0050】
制御部50は、路面Gからの前照灯10の高さH1と、後方視認装置81の高さH3との差分である上記距離ΔH1を導出する。
また、制御部50は、前照灯10の高さH1と、ナンバープレート85の高さH4との差分、すなわち上下方向Zにおける前照灯10とナンバープレート85との間の距離ΔH2を導出する。
【0051】
制御部50は、車間距離D1と上記距離ΔH2とから、前照灯10とナンバープレート85とを結ぶ仮想直線L4と基準直線L1とのなす角度である下限角度θ3を導出する。
次に、図4のフローチャートを参照して、光軸調整制御の処理手順について説明する。なお、この一連の処理は、車両70の走行中、車間距離D1が前照灯10の配光範囲S内に入っているときに、制御部50により実行される。
【0052】
この一連の処理では、まず、制御部50は、先行車両80のルーフ86の高さH2が前照灯10の高さH1よりも低いか否かを判断する(ステップS1)。
ここで、ルーフ86の高さH2が前照灯10の高さH1よりも低くないと判断された場合(ステップS1:「NO」)には、光軸Aの上下の傾き調整を行うことなく、この一連の処理を終了する。すなわち、この場合、制御部50は、光軸Aの上下の傾き調整を禁止する。
【0053】
一方、ルーフ86の高さH2が前照灯10の高さH1よりも低いと判断された場合(ステップS1:「YES」)には、制御部50は、光軸角度θ1、装置角度θ2、及び下限角度θ3を導出する(ステップS2)。
【0054】
次に、制御部50は、光軸角度θ1が装置角度θ2よりも小さいか否かを判断する(ステップS3)。
ここで、光軸角度θ1が装置角度θ2よりも小さくないと判断された場合(ステップS3:「NO」)には、光軸Aの上下の傾き調整を行うことなく、この一連の処理を終了する。
【0055】
一方、光軸角度θ1が装置角度θ2よりも小さいと判断された場合(ステップS3:「YES」)には、次に、制御部50は、下限角度θ3が、法規により定められている光軸角度の下限である法定下限角度θrよりも小さいか否かを判断する(ステップS4)。
【0056】
ここで、下限角度θ3が法定下限角度θrよりも小さくないと判断された場合(ステップ4:「NO」)には、制御部50は、光軸角度θ1が法定下限角度θrとなるまで光軸Aを段階的に下げるべくモータ31を間欠的に正回転させる(ステップS5)。そして、制御部50は、この一連の処理を終了する。
【0057】
一方、下限角度θ3が法定下限角度θrよりも小さいと判断された場合(ステップ4:「YES」)には、制御部50は、光軸角度θ1が下限角度θ3となるまで光軸Aを段階的に下げるべくモータ31を間欠的に正回転させる(ステップS6)。そして、制御部50は、この一連の処理を終了する。
【0058】
なお、制御部50は、車間距離D1が前照灯10の配光範囲S内に入っていない状態になると、光軸角度θ1が光軸調整制御の実行開始前の光軸角度θ1となるようにモータ31を逆回転させる。
【0059】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図7に示すように、先行車両80と車両70との車間距離D1が車両70の前照灯10の配光範囲S内に入っている。
【0060】
また、図8に二点鎖線にて示すように、先行車両80の後方視認装置81(本実施形態では、ルームミラー82)の最下端が、基準直線L1及び前照灯10の光軸Aの延長線L2の双方よりも下方である。
【0061】
このとき、図8に実線にて示すように、延長線L2が後方視認装置81よりも下方となるように光軸Aが下げられる。
これにより、延長線L2が後方視認装置81よりも下方となるので、後方視認装置81に車両70の前照灯10の光が進入することが抑制されるようになる。したがって、先行車両80の運転手を眩惑させることを抑制できる。
【0062】
一方、図示は省略するが、車間距離D1が前照灯10の配光範囲S内に入っていないときには、光軸Aが下げられることはない。また、後方視認装置81が基準直線L1よりも上方であるとき、または後方視認装置81が前照灯10の光軸Aの延長線L2よりも上方であるときには、光軸Aが下げられることはない。このため、車両70の前照灯10の光によって先行車両80の運転手を眩惑させる可能性がほとんどない場合に光軸Aが下げられることを抑制できる。
【0063】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)制御部50は、車間距離D1が前照灯10の配光範囲S内に入っており、後方視認装置81が、基準直線L1及び前照灯10の光軸Aの延長線L2の双方よりも下方であるときに、光軸Aの上下の傾き調整制御を行う。制御部50は、延長線L2が後方視認装置81よりも下方となるように光軸Aを下げる。
【0064】
こうした構成によれば、上記作用を奏することから、先行車両80の運転手を眩惑させることを適切に抑制できる。
(2)制御部50は、延長線L2が後方視認装置81よりも下方となるように光軸Aを下げる際、光軸Aを段階的に下げる。
【0065】
こうした構成によれば、延長線L2が後方視認装置81よりも下方となるように光軸Aを下げる際、光軸Aが段階的に下げられるようになる。これにより、光軸Aが一度に大きく下げられることによって車両70の運転手に違和感を与えることを抑制できる。
【0066】
(3)検知部40は、先行車両80のルーフ86の高さH2を検知するものである。制御部50は、ルーフ86の高さH2が前照灯10の高さH1よりも高いときには、光軸Aの上下の傾き調整の実行を禁止する。
【0067】
先行車両80のルーフ86の高さH2が車両70の前照灯10の高さH1よりも高い場合、後方視認装置81は、一般的に当該ルーフ86の高さH2に応じて高い位置に設置されるので、基準直線L1よりも上方となる。
【0068】
この点、上記構成によれば、先行車両80のルーフ86の高さH2が車両70の前照灯10の高さH1よりも高いときには、光軸Aの傾き調整が禁止されるので、傾き調整の実行に伴う制御負荷の増大を抑制できる。
【0069】
(4)制御部50は、車間距離D1が配光範囲S内に入っており、光軸角度θ1が装置角度θ2よりも小さいときに、光軸角度θ1が装置角度θ2よりも大きくなるように光軸Aを下げる。
【0070】
こうした構成によれば、後方視認装置81が基準直線L1及び延長線L2の双方よりも下方であるか否かを、光軸角度θ1と装置角度θ2との比較に基づいて容易に判定することができる。
【0071】
(5)検知部40は、車両70の前方を撮像するカメラ42及び車両70の前方を測定するレーダ41を含む。
こうした構成によれば、例えば車両70に設けられるミリ波レーダなどのレーダ41により、先行車両80と車両70との車間距離D1を検知できる。また、車両70に設けられるカメラ42の撮像画像に基づいて、先行車両80の後方視認装置81を検知できる。したがって、専用の検知部を設けなくて済む。
【0072】
(6)制御部50は、有線または無線の通信により書き換え可能なメモリ51を備えており、メモリ51に記憶されているプログラムに基づいて傾き調整制御を行う。
こうした構成によれば、上下の傾き調整が可能な前照灯10と、車両70の前方を撮像するカメラ42と、車両70の前方を測定するレーダ41とを備える車両70において、制御部50のメモリ51に記憶されているプログラムを書き換えることができる。また、制御部50は、メモリ51に記憶されているプログラムを書き換えることによって、上記発明の作用効果を容易に奏することができるようになる。
【0073】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0074】
・光軸調整制御を行うプログラムを記憶するメモリ51は、書き換え不可能なものであってもよい。
・検知部40は、カメラ42とレーダ41とによって、先行車両80と車両70との車間距離D1及び後方視認装置81を検知するようにしたが、これに限らない。例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)を搭載する車両70にあっては、LiDARを利用して、車間距離D1及び後方視認装置81を検知するようにしてもよい。なお、LiDARは、パルス状に発光するレーザー照射に対する散乱光を測定し、遠距離にある対象までの距離やその対象の性質を分析するものである。
【0075】
・制御部50は、光軸角度θ1と装置角度θ2とを比較することで、光軸調整制御を行うようにしたが、これに限らない。要するに、制御部50は、先行車両80の後方視認装置81が、基準直線L1及び延長線L2の双方よりも下方であることを把握できるのであれば、他の態様を採用することもできる。
【0076】
・検知部40は、先行車両80のルーフ86の高さH2を検知しないものであってもよい。
・上記実施形態では、制御部50は、所定角度ずつ光軸Aを下げることによって、光軸Aを段階的に下げるようにしたが、これに限らない。例えばルームミラー及びサイドミラーなどの複数の後方視認装置を対象とする場合には、複数の後方視認装置の装置角度をそれぞれ導出するとともに、大きい装置角度から順に、光軸角度θ1が装置角度よりも大きくなるように光軸Aを順次下げるようにしてもよい。
【0077】
・上記実施形態では、検知部40は、後方視認装置81としてルームミラー82を検知するようにしたが、これに限らない。検知部40は、後方視認装置81として、サイドミラーを検知するようにしてもよい。また、後方視認用のカメラを搭載する先行車両に対しては、検知部40は当該カメラを後方視認装置として検知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10…前照灯
11…ハウジング
12…周壁
12a…開口部
13…対向壁
14…カバー
20…発光部
21…光源
22…反射鏡
30…駆動部
31…モータ
31a…出力軸
32…変換機構
33…下側支持部
34…下側軸部
34a…球状部
35…受け部
36…上側支持部
37…前側軸部
37a…球状部
38…後側軸部
38a…軸受け
39…回転角センサ
40…検知部
41…レーダ
42…カメラ
43…画像処理部
50…制御部
51…メモリ
60…制御装置
70…車両
80…先行車両
81…後方視認装置
82…ルームミラー(後方視認装置)
85…ナンバープレート
86…ルーフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8