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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001550
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】保守用治具
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20221226BHJP
【FI】
B66B5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102352
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新保 好史
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304BA06
3F304BA08
3F304BA21
(57)【要約】
【課題】エレベータの保守時に、ロープ侵入口から昇降路内への工具等の落下を抑制でき、かつ比較的容易に設置可能な保守用治具を提供する。
【解決手段】保守用治具10は、機械室の床面にロープ侵入口114が形成されておりロープ侵入口に少なくとも1本のロープ103が通されているエレベータの保守時に、ロープ侵入口114を塞ぐための保守用治具である。保守用治具10は、第1方向および第1方向と交差する第2方向に延びており、第1方向において第1端部1Aおよび第2端部1Bを有し、かつ第1端部1Aおよび第2端部1Bの各々が環状に変形され得る本体部1と、本体部1の第1端部1Aをロープ侵入口114に固定するための第1固定部2と、本体部1の第2端部1Bを少なくとも1本のロープ103に固定するための第2固定部3とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械室の床面にロープ侵入口が形成されており前記ロープ侵入口に少なくとも1本のロープが通されているエレベータの保守時に、前記ロープ侵入口を塞ぐための保守用治具であって、
第1方向および前記第1方向と交差する第2方向に延びており、前記第1方向において第1端部および第2端部を有し、かつ前記第1端部および前記第2端部の各々が環状に変形され得る本体部と、
前記本体部の前記第1端部を前記ロープ侵入口に固定するための第1固定部と、
前記本体部の前記第2端部を前記少なくとも1本のロープに固定するための第2固定部とを備える、保守用治具。
【請求項2】
前記第1固定部は、前記第2方向に並んで配置されておりかつ前記本体部の前記第1端部に固定されている複数の磁石を含み、
前記第2固定部は、前記本体部の前記第2端部に固定されておりかつ前記第2端部から前記第2方向に延びる少なくとも1本の紐状部を含む、請求項1に記載の保守用治具。
【請求項3】
前記本体部は、メッシュを含む、請求項1または2に記載の保守用治具。
【請求項4】
前記少なくとも1本のロープは互いに間隔を空けて配置されている複数本のロープであり、
前記第2端部は、前記複数本のロープの周囲に巻き付けられた状態において前記第2固定部により前記複数本のロープに固定され、
前記本体部の前記第2端部に固定されておりかつ前記第2端部から突出する少なくとも1つの突出部をさらに備え、
前記少なくとも1つの突出部は、前記状態において、前記複数本のロープのうち隣り合う2つのロープ間を塞ぐように設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の保守用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータのかごの昇降を停止して、作業者が機械室内で保守点検作業を行うとき(以下、エレベータの保守時とよぶ)に用いられる保守用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、かごと釣合錘とが少なくとも1本のロープを介して接続されているエレベータでは、ロープを巻き上げる巻上機が昇降路の上方に設置された機械室内に収容されている。機械室の床には2つのロープ侵入口が形成されており、一方のロープ侵入口には1本のロープのうち巻上機とかごとの間に延びる部分が通され、他方のロープ侵入口には当該1本のロープのうち巻上機と釣合錘との間に延びる部分が通されている。
【0003】
エレベータの通常運転時にロープがロープ侵入口と接触しないように、各ロープ侵入口の開口幅はロープの外径よりも十分に大きく形成されている。そのため、エレベータの保守時には、工具および部品の少なくともいずれか(以下、工具等とよぶ)がロープ侵入口から昇降路内に落下するおそれがある。
【0004】
特に、超高層用エレベータでは、低層用エレベータと比べて、ロープの本数が多くかつ各ロープの外径が大きくなるため、ロープ侵入口の開口幅も広くなり、工具等がロープ侵入口から昇降路内に落下する可能性は高くなる。
【0005】
特開2005-272131号公報(特許文献1)には、ロープ侵入口の周囲に配置される枠体と、枠体にたいして押し込み自在な複数の可動ピンとを備える塞ぎ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-272131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の塞ぎ装置を設置する際には、複数の可動ピンの各々を押し込む必要があり、設置作業の効率性に改善の余地がある。
【0008】
本開示の主たる目的は、エレベータの保守時に、ロープ侵入口から昇降路内への工具等の落下を抑制でき、かつ比較的容易に設置可能な保守用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る保守用治具は、機械室の床面にロープ侵入口が形成されておりロープ侵入口に少なくとも1本のロープが通されているエレベータの保守時に、ロープ侵入口を塞ぐための保守用治具である。保守用治具は、第1方向および第1方向と交差する第2方向に延びており、第1方向において第1端部および第2端部を有し、かつ第1端部および第2端部の各々が環状に変形され得る本体部と、本体部の第1端部をロープ侵入口に固定するための第1固定部と、本体部の第2端部を少なくとも1本のロープに固定するための第2固定部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、エレベータの保守時に、ロープ侵入口から昇降路内への工具等の落下を抑制でき、かつ比較的容易に設置可能な保守用治具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示に係る保守用治具が適用されるエレベータの一例を説明するための図である。
図2】本開示に係る保守用治具が適用されるロープ侵入口の一例を説明するための図である。
図3】実施の形態1に係る保守用治具を説明するための図である。
図4図3に示される保守用治具がロープ侵入口に取り付けられた状態を説明するための斜視図である。
図5図3に示される保守用治具がロープ侵入口に取り付けられた状態を説明するための平面図である。
図6】実施の形態2に係る保守用治具を説明するための図である。
図7図6に示される保守用治具がロープ侵入口に取り付けられた状態を説明するための斜視図である。
図8図6に示される保守用治具がロープ侵入口に取り付けられた状態を説明するための平面図である。
図9】実施の形態1または2に係る保守用治具の変形例を説明するための図である。
図10】実施の形態2に係る保守用治具の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0013】
はじめに、図1および図2を参照して、本開示に係る保守用治具が適用されるエレベータおよびロープ侵入口の各一例を説明する。なお、図1および図2は通常動作時のエレベータを説明するための図であり、両図において本開示に係る保守用治具の図示は省略されている。
【0014】
<エレベータの構成>
図1を参照して、エレベータ100は、かご101、釣合錘102、複数本のロープ103、巻上機104、およびそらせ車105を備える。なお、図1では、1本のロープ103のみが図示されている。
【0015】
複数のロープ103の各一端は、かご101に接続されている。複数のロープ103の各他端は、釣合錘102に接続されている。複数本のロープ103の各々は、巻上機104の綱車104Aおよびそらせ車105の各々に掛けられており、巻上機104のモータ104Bが綱車104Aを回転させることにより巻き上げられる。
【0016】
エレベータ100が設置された建造物110には、昇降路111、および昇降路111の上方に設置された機械室112が設けられている。かご101および釣合錘102は、昇降路111内に配置されている。巻上機104およびそらせ車105は、機械室112内に配置されている。
【0017】
機械室112の床113は、昇降路111と機械室112とを区画する隔壁を成している。床113には、昇降路111と機械室112とを連通させる2つのロープ侵入口114が形成されている。複数本のロープ103の各々は、昇降路111、機械室112、および2つのロープ侵入口114の各々の内部に通されている。各ロープ侵入口114内において、複数のロープ103の各々は、鉛直方向Zに沿って延びており、鉛直方向Zと直交するX方向に互いに間隔を空けて配置されている。
【0018】
図2を参照して、2つのロープ侵入口114の各々は、複数本のロープ103の各々と接触しないように設けられている。各ロープ侵入口114は、複数本のロープ103の各々の外周面と間隔を空けて配置されている。
【0019】
図2を参照して、例えば、2つロープ侵入口114の各々は、機械室112の床113を貫通する貫通孔114Aと、床113の上面よりも上方に突出しておりかつ貫通孔114Aの周方向に連なる塀114Bとを含む。塀114Bは、床面を転がった工具等がロープ侵入口114から落下することを防止するように設けられている。
【0020】
2つロープ侵入口114の各々は、内周面114Cと外周面114Dとを含む。各ロープ侵入口114の内周面114Cは、貫通孔114Aの内周面と塀114Bの内周面とにより構成されている。各ロープ侵入口114の外周面114Dは、塀114Bの外周面により構成されている。各ロープ侵入口114の内周面114Cを構成する材料は、例えば磁性体を含む。内周面114Cは、例えば、X方向に延びかつX方向および鉛直方向Zの各々と直交するY方向に対向する1対の平面と、Y方向に延びかつX方向に対向する1対の平面とを有している。
【0021】
<保守用治具の構成>
本開示に係る保守用治具は、エレベータ100の保守時に、1つのロープ侵入口114を塞ぐための保守用治具である。図1に示されるエレベータ100では、2つのロープ侵入口114が形成されているため、該エレベータ100の保守時には、2つの保守用治具が使用される。2つの保守用治具は、例えば互いに同等の構成を有している。以下、本開示に係る保守用治具の実施の形態を説明する。
【0022】
実施の形態1.
実施の形態1に係る保守用治具10は、図3に示される第1状態と、図4および図5に示される第2状態とを、繰り返し切替えるように設けられている。第1状態は、保守用治具10が複数のロープ103およびロープ侵入口114に取り付けられていない状態である。第2状態は、保守用治具10が複数のロープ103およびロープ侵入口114に取り付けられた状態である。
【0023】
図3図5に示されるように、実施の形態1に係る保守用治具10は、第2状態においてロープ侵入口114上に落下した工具等を受け止めるように設けられている本体部1と、第2状態において本体部1を複数のロープ103およびロープ侵入口114に固定するように設けられている第1固定部2および第2固定部3とを備える。第1固定部2は、第2状態において本体部1の第1端部1Aをロープ侵入口114に固定する。第1固定部2は、例えば第1端部1Aをロープ侵入口114の内周面114Cに隙間なく固定するように設けられている。ここでの隙間とは、工具等が通過し得る隙間を意味する。第2固定部3は、第2状態において本体部1の第2端部1Bを複数のロープ103に固定する。
【0024】
図3に示されるように、本体部1は、第1方向Aと、第1方向Aと直交する第2方向Bに延びている帯状部材である。異なる観点から言えば、本体部1は、第1状態において第1方向Aおよび第2方向Bの各々に延びるように展開される。本体部1は、第1方向Aにおいて第1端部1Aおよび第2端部1Bを有している。第1端部1Aおよび第2端部1Bの各々は、第1状態において第2方向Bに延びている。第1端部1Aの第2方向Bの長さは、例えば第2端部1Bの第2方向Bの長さよりも短い。本体部1は、可撓性を有する。
【0025】
本体部1は、例えばメッシュを含む。メッシュとは、網目構造を有する部材を意味する。メッシュは、工具等が網目を通過し得えないように設けられている。メッシュは、例えば不織布、織物、または編物である。メッシュを構成する繊維は、任意に選択され得る。メッシュは、例えば金属繊維および炭素繊維などの無機繊維、ならびに綿および麻などの有機繊維の少なくともいずれかを含む。
【0026】
本体部1の第1方向Aの長さ(幅)の最小値は、ロープ侵入口114の開口幅の最大値の半分よりも広い。第1端部1Aと第2端部1Bとの間の第1方向Aの最短距離は、ロープ侵入口114を平面視したときに、複数のロープ103の各々とロープ侵入口114の内周面114Cとの間を最短距離で結ぶように描かれる仮想直線のうち、最長の仮想直線の長さよりも長くなるように設けられている。
【0027】
本体部1の第2方向Bの長さ(幅)の最大値は、ロープ侵入口114の内周面114Cの周方向の長さよりも長くなるように設けられている。第2端部1Bの第2方向Bの長さは、ロープ侵入口114の内周面114Cの周方向の長さよりも長くなるように設けられている。
【0028】
図3に示されるように、第1固定部2は、例えば第2方向Bに並んで配置されている複数の磁石2Aを含む。複数の磁石2Aの各々は、各磁石2Aにより形成される磁界によって各磁石2Aとロープ侵入口114の内周面114Cとの間に引力を生じさせ、当該引力により第1端部1Aをロープ侵入口114の内周面114Cに固定する。
【0029】
複数の磁石2Aの各々の第2方向Bの長さ(幅)は、ロープ侵入口114の内周面114CのX方向の長さ、および内周面114CのY方向の長さよりも短い。複数の磁石2Aの各々は、内周面114CのうちX方向に延びる2つの面部分およびY方向に延びる2つの面部分の各々に、少なくとも1つの磁石2Aが固定されるように、設けられている。複数の磁石2Aの各々は、例えば、内周面114CのうちX方向に延びる2つの面部分およびY方向に延びる2つの面部分の各々に、2つ以上の磁石2Aが固定されるように、設けられている。
【0030】
複数の磁石2Aの各々は、例えば第2方向Bに互いに間隔を空けて配置されている。第2方向Bにおいて隣り合う2つの磁石2Aの間隔は、例えば一定である。
【0031】
複数の磁石2Aの各々は、例えば第1端部1Aに固定されている。複数の磁石2Aの各々は、例えば第1端部1Aのうち第2状態においてロープ侵入口114の内周面114Cに接触する面とは反対側(ロープ侵入口114の内側)を向いた面に固定されている。複数の磁石2Aの各々は、例えば第1端部1Aに接着または縫着されている。
【0032】
図3に示されるように、第2固定部3は、例えば本体部1の第2端部1Bに固定されておりかつ第2端部1Bから第2方向Bに延びる複数本(例えば2本)の紐状部3Aを含む。1本の紐状部3Aは、第2端部1Bの第2方向Bの一端に固定されている。他の1本の紐状部3Aは、第2端部1Bの第2方向Bの他端に固定されている。
【0033】
図4および図5に示されるように、複数の磁石2Aの各々は、磁力により内周面114Cに固定される。複数の磁石2Aは、例えば、第1端部1Aよりもロープ侵入口114の内側に配置された状態で、磁力により内周面114Cに固定される。これにより、複数の磁石2Aの各々は、第1端部1Aをロープ侵入口114に固定する。図4および図5に示されるように、複数本の紐状部3Aは、第2端部1Bが複数本のロープ103の周囲に巻き付けられた状態で、互いに緊締される。これにより、複数本の紐状部3Aは、第2端部1Bを複数本のロープ103に固定する。
【0034】
複数の磁石2Aの各々が第1端部1Aをロープ侵入口114の内周面114Cに固定し、かつ複数の紐状部3Aが複数のロープ103の各々に固定されることにより、保守用治具10が複数のロープ103およびロープ侵入口114に取り付けられた第2状態が実現される。
【0035】
図4に示されるように、本体部1の第1端部1Aおよび第2端部1Bの各々は、第2状態において環状に変形される。第1端部1Aは、例えば第2状態において第2端部1Bよりも上方に固定される。本体部1は、例えば第2状態において錐環状に変形される。図4および図5に示されるように、保守用治具10は、第2状態において、X方向に隣り合う2つのロープ103の間に挟まれた領域を除くロープ侵入口114内の大部分を塞ぐことができる。
【0036】
<効果>
実施の形態1に係る保守用治具10では、第1固定部2および第2固定部3により上記第2状態が実現され、第2状態において、本体部1が、ロープ侵入口114内のうち複数のロープ103の各々と内周面114Cとの間に位置する領域を塞ぎ、ロープ侵入口114内に落下した工具等を受け止めて捕集するための捕集部として作用する。その結果、エレベータの保守時に保守用治具10が上記第2状態とされることにより、エレベータの保守時に保守用治具10が用いられない場合と比べて、ロープ侵入口114から昇降路111内への工具等の落下を抑制できる。さらに、保守用治具10によれば、複数の磁石2Aの各々が第1端部1Aをロープ侵入口114の内周面114Cに固定し、かつ複数の紐状部3Aが複数のロープ103の各々に固定されることにより、保守用治具10が複数のロープ103およびロープ侵入口114に取り付けられた第2状態が実現される。そのため、特許文献1に記載の塞ぎ装置と比べて、容易に設置され得る。
【0037】
保守用治具10では、第1固定部2が複数の磁石2Aを含むため、第1固定部2は比較的容易にロープ侵入口114に固定され得る。さらに保守用治具10では、第2固定部3が複数本の紐状部3Aを含むため、第2固定部3は複数のロープ103に比較的容易に固定され得る。その結果、保守用治具10によれば、上記第2状態が比較的容易に実現される。
【0038】
保守用治具10では、本体部1はメッシュを含む。メッシュを含む本体部1は、メッシュを含まない本体部1と比べて、軽量化され得る。そのため、保守用治具10によれば、上記第2状態が比較的容易に実現される。
【0039】
実施の形態2.
図6に示されるように、実施の形態2に係る保守用治具20は、実施の形態1に係る保守用治具10と基本的に同様の構成を備えるが、複数の突出部4をさらに備えている点で、保守用治具10とは異なる。以下では、保守用治具20が保守用治具10と異なる点を主に説明する。
【0040】
保守用治具20は、図6に示される第1状態と、図7および図8に示される第2状態とを、繰り返し切替えるように設けられている。第1状態は、保守用治具20が複数のロープ103およびロープ侵入口114に取り付けられていない状態である。第2状態は、保守用治具20が複数のロープ103およびロープ侵入口114に取り付けられた状態である。
【0041】
複数の突出部4の各々は、本体部1の第2端部1Bに固定されておりかつ第2端部1Bから突出するように設けられている。複数の突出部4の各々は、第2状態において、複数本のロープ103のうち隣り合う2つのロープ103間を塞ぐように設けられている。
【0042】
複数の突出部4の各々は、第2方向Bに互いに間隔を空けて配置されている。複数の突出部4の各々は、第2端部1Bに固定されている第1部分4Aと、第1方向Aにおいて第2端部1Bから第1端部1Aとは反対側に延びる第2部分4Bと、第2部分4Bに対して第1部分4Aとは反対側に位置する第3部分4Cとを含む。
【0043】
突出部4の数は、1つ以上の任意の数であればよいが、好ましくはX方向に隣り合う2つのロープ103の組数以上である。図7および図8に示されるように、ロープ103の本数が6本の場合、突出部4の数は、5つ以上である。ロープ103の本数が2本の場合、突出部4の数は、1つ以上であればよい。
【0044】
複数の突出部4の各々は、例えば本体部1と同様にメッシュを含む。第1部分4Aは、例えば第2端部1Bに接着または縫着されている。複数の突出部4の各々を構成する材料は、本体部1を構成する材料と同じであってもよい。この場合、複数の突出部4の各々は、本体部1と一体として構成されていてもよい。
【0045】
図7および図8に示されるように、複数の突出部4の各々の第2部分4Bは、第2状態において、複数のロープ103のうちX方向に隣り合う2つのロープ103間に渡される。複数の突出部4の各々の第3部分4Cは、第2状態において、環状に変形された本体部1の第2端部1Bのうち、第1部分4Aが固定されている部分とY方向に対向する部分に掛けられる。図7および図8に示されるように、保守用治具20は、第2状態において、X方向に隣り合う2つのロープ103の間に挟まれた領域を含むロープ侵入口114内の大部分を塞ぐことができる。
【0046】
<変形例>
実施の形態1に係る保守用治具10および実施の形態2に係る保守用治具20は、例えば以下のように変形され得る。
【0047】
保守用治具10および保守用治具20は、少なくとも第1状態から第2状態に切替可能であればよい。
【0048】
保守用治具10および保守用治具20では、本体部1の全体がメッシュにより構成されていてもよい。本体部1は、複数のメッシュが積層された積層体を含んでいてもよい。本体部1は、複数の貫通孔が形成された多孔質部材であってもよい。本体部1の第1端部1Aの第2方向Bの長さは、第2端部1Bの第2方向Bの長さと同等であってもよい。
【0049】
保守用治具10および保守用治具20では、第1固定部2が、第1端部1Aをロープ侵入口114の塀114Bの外周面114Dに固定するように設けられていてもよい。この場合、各ロープ侵入口114の塀114Bの外周面114Dを構成する材料が磁性体を含んでいればよい。ロープ侵入口114が塀114Bを含んでない場合、保守用治具10および保守用治具20の第1固定部2は、貫通孔114Aの内周面に固定される。
【0050】
保守用治具10および保守用治具20では、第2方向Bに隣り合う2つの磁石2Aの間隔が、互いに異なっていてもよい。
【0051】
保守用治具10および保守用治具20において、紐状部3Aの本数は1本であってもよい。例えば、1本の紐状部3Aは、第2端部1Bが複数本のロープ103の周囲に巻き付けられた状態で、紐状部3A自身に結び付けられることにより、第2端部1Bを複数本のロープ103に固定し得る。
【0052】
図9を参照して、保守用治具10および保守用治具20において、第2端部1Bには、第2方向Bに延びる筒部1Cが設けられていてもよい。第2固定部3は、筒部1Cの内部に通されておりかつ第2方向Bにおいて筒部1Cの両端部から外側に延びている紐状部3Bを含んでいてもよい。第2端部1Bが複数本のロープ103の周囲に巻き付けられた状態で、1本の紐状部3Bの両端部が互いに緊締されることにより、第2端部1Bが絞られて複数本のロープ103に固定される。
【0053】
図10を参照して、保守用治具20は、第2状態において複数本の突出部4の各々の第3部分4Cを本体部1に着脱可能に固定するための複数の第3固定部5をさらに備えていてもよい。複数の第3固定部5の各々は、機械的に着脱可能な任意の構造体により構成されていればよいが、例えば面ファスナおよびクリップの少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0054】
以上のように本開示の実施の形態について説明を行なったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本開示の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本開示の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1 本体部、1A 第1端部、1B 第2端部、2 第1固定部、2A 磁石、3 第2固定部、3A 紐状部、4 突出部、4A 第1部分、4B 第2部分、4C 第3部分、5 第3固定部、10,20 保守用治具、100 エレベータ、101 かご、102 釣合錘、103 ロープ、104 巻上機、104A 綱車、104B モータ、105 そらせ車、110 建造物、111 昇降路、112 機械室、113 床、114 ロープ侵入口、114A 貫通孔、114B 塀、114C 内周面、114D 外周面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10