(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155017
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】塗床工法及び塗床
(51)【国際特許分類】
E04F 15/12 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
E04F15/12 G
E04F15/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064717
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】522144011
【氏名又は名称】川西 隆広
(74)【代理人】
【識別番号】100195051
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 海幹
(72)【発明者】
【氏名】川西 隆広
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA02
2E220AA16
2E220AA26
2E220AA45
2E220AA51
2E220AA59
2E220AB01
2E220AC05
2E220AC11
2E220BA24
2E220BB14
2E220CA07
2E220DB05
2E220EA02
2E220FA11
2E220GA22X
2E220GA30X
2E220GB05X
2E220GB22X
2E220GB22Y
2E220GB25X
2E220GB32Z
2E220GB37X
(57)【要約】
【課題】短時間で高防滑性を備えた床面を施工する塗床工法及び塗床を提供する。
【解決手段】本発明に係る塗床工法は、下地Gを素地調整する素地調整工程S1と、素地調整した下地Gの表面に第一の骨材1を含有した下塗り材2を塗布する下塗り工程S2と、下塗り材2の表面を転圧する第一転圧工程S3と、下塗り材2が硬化する前に下塗り材2の転圧した表面に第二の骨材3を散布する散布工程S4と、下塗り材2の散布した表面を転圧する第二転圧工程S5と、下塗り材2が硬化した後に上塗り材4を塗布する上塗り工程S6と、からなることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地を素地調整する素地調整工程と、前記素地調整した前記下地の表面に第一の骨材を含有した下塗り材を塗布する下塗り工程と、前記下塗り材の表面を転圧する第一転圧工程と、前記下塗り材が硬化する前に前記下塗り材の前記転圧した表面に第二の骨材を散布する散布工程と、前記下塗り材の散布した表面を転圧する第二転圧工程と、前記下塗り材が硬化した後に上塗り材を塗布する上塗り工程と、からなることを特徴とする塗床工法。
【請求項2】
前記素地調整工程の後に前記下地を連続して隣接する複数の作業領域に分割し、起点となる最初の作業領域に対して前記下塗り工程から前記第二転圧工程を行った後、順次隣接する作業領域に対して前記下塗り工程から前記第二転圧工程を繰り返して全ての作業領域を終えた後、前記下塗り材が硬化した後に全ての作業領域に対して前記上塗り工程を行うことを特徴とした請求項1に記載の塗床工法。
【請求項3】
前記下塗り材は、前記第一の骨材を含有すると共に、ポリオール、イソシアネート、水によるウレタン結合とウレア結合をなし、且つセメントと水分による水和反応によりコンクリートをなす水性硬質ウレタン系コンクリート組成物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗床工法。
【請求項4】
前記下塗り材の膜厚を略4.0mm~略7.0mm、前記上塗り材の膜厚を略0.1mm~略0.3mm、前記第一の骨材の粒径を略2.0mm~3.0mm、前記第二の骨材の粒径を略略0.5mm~2.0mmとしたことを特徴とする請求項3に記載の塗床工法。
【請求項5】
請求項3に記載の塗床工法を用いた塗床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短時間で耐久性のある高防滑性を備えた床面を施工する塗床工法及び塗床に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や整備用ガレージ等のコンクリート等の床面は、そのままでは発塵したり油分が浸透したり、工具等が落下した際に欠けが発生する等して作業環境としては相応しくないことから床面に塗り床材を施工して上述のような問題を解決してきた。
【0003】
また、床面を水や油分等の液体が覆うような環境になり易い、例えば、食品工場や厨房においては防滑性に優れた材質からなる塗り床材を施工することや、床面に物理的な凹凸を形成するために所定の粒径の骨材を含有した塗り床材を施工することで対応している。
【0004】
このような状況において、例えば、特許文献1に係る技術では、骨材を含む水性硬質ウレタン系コンクリート組成物を下地にコテ塗りによって塗布し、コテ塗りにより得られた塗布面を、さらに転圧手段によって転圧し、かつ水性硬質ウレタン系コンクリート組成物を硬化させて、水性硬質ウレタン系コンクリートの塗り床を形成する塗り床の形成方法が開示されている。
【0005】
本技術によれば、骨材を含む水性硬質ウレタン系コンクリートの塗り床の、強度、耐摩耗性、表面の見栄えを向上させることが可能であるとされている。
【0006】
また、例えば、特許文献2に係る技術では、下地に下塗り材を塗布した後、その上に
塗り床材を塗布する塗り床工法において、下塗り材が硬化する前に骨材を撒布し、下塗り材を硬化させることにより骨材を固着させた後、塗り床材を塗布する塗り床工法が開示されている。
【0007】
本技術によれば、流動性の低い塗り床材を平滑な下地に塗布する際に塗り床材が滑ることがなく、均一に塗布することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-138385号公報
【特許文献2】特開2001-207631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
確かに特許文献1に記載の技術によれば、骨材を含むことで塗り床の強度や耐摩耗性を向上させることができ、更に、高価な塗り床材の主成分の比率を骨材によって低く抑えることがことができる点では優れている。
【0010】
しかしながら、コテ塗りにより得られた塗布面が硬化する前は作業者が塗布面を歩行できないため、作業者が転圧可能な範囲を未施工の領域から転圧用のローラーで転圧を実施するか、塗布面に影響しない足場等から転圧を行う必要がある。
【0011】
前者であれば、一度に転圧可能な領域が限定されるため下地へのコテ塗りと転圧を複数回繰り返さなければならず施工が長時間に及んでしまい、後者であれば、足場等を組まなければならず作業が非常に煩雑になると共に、足場の撤去は塗布面が硬化した後でなければ行うことができず、結果として長時間の施工となってしまう。
【0012】
また、本技術は転圧によって骨材を下方に沈降・移動させるものであるため骨材により表面に物理的な凹凸を形成して防滑性を備えることもできない。
【0013】
また、特許文献2に記載の技術によれば、確かに流動性の低い塗り床材を平滑な下地に塗布する際、その前に下塗り材の表面に骨材で凹凸を形成しておけば下塗り材に対して塗り床材が滑ることを抑制できる点で優れている。
【0014】
しかしながら、下塗り材が硬化する前は作業者が塗布面を歩行できないため、下塗り材が硬化する前に骨材を散布(及び骨材の固着のために転圧すること)するには、作業者が散布(や転圧)可能な範囲を未施工の領域から実施するか、塗布面に影響しない足場等から転圧を行う必要がある。
【0015】
前者であれば、一度に散布(や転圧)可能な領域が限定されるため下地への下塗り作業(や転圧作業)を複数回繰り返さなければならず施工が長時間に及んでしまい、後者であれば、足場等を組まなければならず作業が非常に煩雑になると共に、足場の撤去は下塗り材が硬化した後でなければ行うことができず、結果として長時間の施工となってしまう。
【0016】
このように特許文献2に係る技術も特許文献1と同様に施工時間の長期化という問題を有している。
【0017】
また、特許文献2に係る技術は、作業時に塗り床材が滑ることを抑制する技術であり、単に下塗り材の上に塗り床材を塗布するため、塗り床材中の骨材自体を下塗り材に固着させることができないことから防滑性や耐摩耗性を長期間に渡り維持することもできない。
【0018】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、短時間で耐久性のある高防滑性を備えた床面を施工する塗床工法及び塗床の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以上のような目的を達成するために、本発明は以下の技術を提供する。
【0020】
請求項1に係る発明では、下地を素地調整する素地調整工程と、前記素地調整した前記下地の表面に第一の骨材を含有した下塗り材を塗布する下塗り工程と、前記下塗り材の表面を転圧する第一転圧工程と、前記下塗り材が硬化する前に前記下塗り材の前記転圧した表面に第二の骨材を散布する散布工程と、前記下塗り材の散布した表面を転圧する第二転圧工程と、前記下塗り材が硬化した後に上塗り材を塗布する上塗り工程と、からなることを特徴とする塗床工法を提供せんとする。
【0021】
請求項2に係る発明では、前記素地調整工程の後に前記下地を連続して隣接する複数の作業領域に分割し、起点となる最初の作業領域に対して前記下塗り工程から前記第二転圧工程を行った後、順次隣接する作業領域に対して前記下塗り工程から前記第二転圧工程を繰り返して全ての作業領域を終えた後、前記下塗り材が硬化した後に全ての作業領域に対して前記上塗り工程を行うことを特徴とした請求項1に記載の塗床工法を提供せんとする。
【0022】
請求項3に係る発明では、前記下塗り材は、前記第一の骨材を含有すると共に、ポリオール、イソシアネート、水によるウレタン結合とウレア結合をなし、且つセメントと水分による水和反応によりコンクリートをなす水性硬質ウレタン系コンクリート組成物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗床工法を提供せんとする。
【0023】
請求項4に係る発明では、前記下塗り材の膜厚を略4.0mm~略7.0mm、前記上塗り材の膜厚を略0.1mm~略0.3mm、前記第一の骨材の粒径を略2.0mm~3.0mm、前記第二の骨材の粒径を略略0.5mm~2.0mmとしたことを特徴とする請求項3に記載の塗床工法を提供せんとする。
【0024】
請求項5に係る発明では、請求項3に記載の塗床工法を用いた塗床を提供せんとする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の発明によれば、下地を素地調整する素地調整工程と、素地調整した下地の表面に第一の骨材を含有した下塗り材を塗布する下塗り工程と、下塗り材の表面を転圧する第一転圧工程と、下塗り材が硬化する前に下塗り材の転圧した表面に第二の骨材を散布する散布工程と、下塗り材の散布した表面を転圧する第二転圧工程と、下塗り材が硬化した後に上塗り材を塗布する上塗り工程と、からなることより、下塗り材が硬化する前に第一の骨材の上に第二の骨材を積層的に固着させることができるので第二の骨材で安定的に表面を凹凸に形成でき耐久性のある高い防滑性を備えた床面を施工することができる。
【0026】
また、上塗り工程の前に既に安定した凹凸を形成できているため上塗り材を薄膜に形成でき、美観向上のための着色や耐摩耗性、耐薬品性等の個別の機能を有する上塗り材を防滑性が損なうことなく柔軟に使用することができる。
【0027】
請求項2記載の発明によれば、素地調整工程の後に下地を連続して隣接する複数の作業領域に分割し、起点となる最初の作業領域に対して下塗り工程から第二転圧工程を行った後、順次隣接する作業領域に対して下塗り工程から第二転圧工程を繰り返して全ての作業領域を終えた後、下塗り材が硬化した後に全ての作業領域に対して上塗り工程を行うことより、施工面積が広くても第二転圧工程までは全ての施工領域を一気に施工でき、しかも、最後の転圧工程を終えた作業領域の下塗り材が硬化すれば全ての施工領域に対して一気に上塗り工程を行うことができるため短時間で施工を完了させることができる。
【0028】
請求項3記載の発明によれば、下塗り材は、第一の骨材を含有すると共に、ポリオール、イソシアネート、水によるウレタン結合とウレア結合をなし、且つセメントと水分による水和反応によりコンクリートをなす水性硬質ウレタン系コンクリート組成物であることより、耐衝撃性や耐摩耗性に優れ、更に耐熱性や耐薬品性を有するため、食品工場や機械工場、産業床に要求される耐久性に優れた床材として広く使用できるだけでなく、第一の骨材の粒径や含有量の調整を容易に行なうことができる。
【0029】
請求項4記載の発明によれば、下塗り材の膜厚を略4.0mm~略7.0mm、上塗り材の膜厚を略0.1mm~略0.3mm、第一の骨材の粒径を略2.0mm~3.0mm、第二の骨材の粒径を略略0.5mm~2.0mmとしたことより、第一の骨材の上に第二の骨材を安定して積層させることができるので、第二の骨材で安定的に表面を凹凸に形成でき高い防滑性を備えた床面を施工することができる。
【0030】
請求項5記載の発明によれば、請求項3に記載の塗床工法を用いた塗床により、高防滑性を備えた床面を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本実施形態に係る塗床工法のフロー図である。
【
図2】本実施形態に係る塗床工法の下塗りの施工領域の様子を示す平面図であり、(a)は下塗り工程前で、(b)は作業領域を分割した図で、(c)は最初の作業領域を施工した図で、(d)は二番目の作業領域まで施工した図で、(e)は五番目の作業領域まで施工した図で、(f)は全ての作業領域の下塗りを完了した図である。
【
図3】本実施形態に係る塗床工法で施工される塗床の簡易断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態に係る塗床工法の要旨は、下地を素地調整する素地調整工程と、素地調整した下地の表面に第一の骨材を含有した下塗り材を塗布する下塗り工程と、下塗り材の表面を転圧する第一転圧工程と、下塗り材が硬化する前に下塗り材の転圧した表面に第二の骨材を散布する散布工程と、下塗り材の散布した表面を転圧する第二転圧工程と、下塗り材が硬化した後に上塗り材を塗布する上塗り工程と、からなることを特徴とする。すなわち、短時間で耐久性のある高防滑性を備えた床面を施工する塗床工法の提供を図ろうとするものである。
【0033】
本発明の実施形態に係る塗床工法は、
図1、
図2に示すように、下地Gを素地調整する素地調整工程S1と、素地調整した下地Gの表面に第一の骨材1を含有した下塗り材2を塗布する下塗り工程S2と、下塗り材2の表面を転圧する第一転圧工程S3と、下塗り材2が硬化する前に下塗り材2の転圧した表面に第二の骨材3を散布する散布工程S4と、下塗り材2の散布した表面を転圧する第二転圧工程S5と、下塗り材2が硬化した後に上塗り材4を塗布する上塗り工程と、からなる。
【0034】
また、素地調整工程S1の後に下地Gを連続して隣接する複数の作業領域に分割し、起点となる最初の作業領域g1に対して下塗り工程S2から第二転圧工程S5を行った後、順次隣接する作業領域(g2以降)に対して下塗り工程S2から第二転圧工程S5を繰り返して全ての作業領域を終えた後、下塗り材2が硬化した後に全ての作業領域に対して上塗り工程S6を行うものである。
【0035】
また、下塗り材2は、第一の骨材1を含有すると共に、ポリオール、イソシアネート、水によるウレタン結合とウレア結合をなし、且つセメントと水分による水和反応によりコンクリートをなす水性硬質ウレタン系コンクリート組成物である。
【0036】
また、下塗り材2の膜厚が略4.0mm、上塗り材4の膜厚が略0.15mmとなるように形成し、第一の骨材1の粒径が略2.5mm、第二の骨材3の粒径が略1.0mmである材料を用いて塗床を形成しているが、下塗り材2の膜厚を略4.0mm~略7.0mm、上塗り材4の膜厚を略0.1mm~略0.3mmの範囲で形成しつつ、第一の骨材1の粒径を略2.0mm~略3.0mm、第二の骨材3の粒径を略0.5mm~2.0mmとする材料を用いることができる。
【0037】
更に、上塗り工程S6は、下塗り工程S2を終えてから略2時間経過後に行うものである。
【0038】
このような本実施形態に係る塗床工法について、以下に具体的に詳述する。
【0039】
なお、下地Gは、コンクリート、モルタル、塗床等であり特に限定されないが、本実施形態ではコンクリートを対象とした塗床工法として説明する。
【0040】
本実施形態に係る塗床工法で説明する施工領域Gは、
図2(a)に示した平面図の如く、平面視略L字状で施工面積49.0mm
2(T1=5.0m、T2=8.0m、T3=3.0m、T4=3.0m)の領域であり、T4以外は全て壁で囲繞された空間として説明する。
【0041】
また、
図2(b)に示すように、この施工領域Gを8つの作業領域g1~g15に分割(t1、t2、t3=1.0m)し、起点となる北側の最初の作業領域g1から南側の作業領域g1,・・・g8~g12、更には西側の作業領域g13~g15へと順次施工を進める。
【0042】
作業領域Gの分割については、一度に第二転圧工程S5までを進められる程度であればどの様な施工面積でどの様な分割数で行うか等は状況に応じて適宜変更することができることは言うまでもない。
【0043】
本実施形態に係る塗床工法で説明する下塗り材2は、ポリオールと水を主成分とする第一の液体(日本特殊塗料株式会社:ユータックコンプリートCPM A液)と、イソシアネートを主成分とする第二の液体(日本特殊塗料株式会社:ユータックコンプリートCPM B液)、及び粒径略0.1mm~0.3mmの粉体からなるセメントと上述したセラミック骨材からなる第一の骨材1を混合して調整する。
【0044】
また、第一の液体と第二の液体との反応により生成される樹脂は、ウレタン結合において柔軟性と耐衝撃性、及び耐摩耗性を発揮し、ウレア結合において耐薬品性と耐摩耗性、強靭性、付着性を発揮し、セメントと水分からなるコンクリートは、水和反応により耐熱性と付着性、及び強度の向上を図ることができる。
【0045】
なお、下塗り材2には硬化促進剤や顔料となる着色剤を調合して硬化促進性や美観性を発揮させてもよい。
【0046】
具体的には、
図2(a)に示した施工面積49.0mm
2の施工領域Gに対して、第一の液体を略36kg、第二の液体を略36kg、セメントと第一の骨材1を混合したものを略324kg使用し、これらを混合・攪拌して得た下塗り材2により略4.0mm厚の塗膜を形成する。
【0047】
次に、素地調整工程S1は、表面の埃や異物を除去した後、残ったレイタンス、エフロ、油脂類を充分に除去し、平部については5m以内の間隔で幅10mm、深さ10mmのU溝の目地を形成すると共に、壁等の端部との境界にも同様のU溝を形成する。
【0048】
なお、素地調整工程S1では、浮き水がなく充分に乾燥していることが必要である。
【0049】
また、以降の工程に対して全ての施工領域を一度で施工できる程度の作業面積であれば良いが、複数の作業領域に分割して施工を行う必要があれば、例えば、
図2(b)に示すように予め作業領域が認識できるように床面にマスキングテープ等で作業領域を明示しておくことが望ましい。
【0050】
下塗り工程S2は、第一の骨材1を含有した上塗り材4を金ゴテ等のコテ塗りにより下地に塗布するが、一つの作業領域に対して本実施形態では15分以内で行っている。
【0051】
第一転圧工程S3は、下塗り工程S2後直ちに行うが、砂骨ローラーにより塗布面に対して押圧しないよう転がすように作業を行ない、樹脂分が浮いて程度まで複数回繰り返す。
【0052】
なお、本実施形態では転圧のために砂骨ローラーを用いているが、例えば、ウーローラーやマスチックローラー、ヘッドカットローラー等でも良く、本実施形態に限定されるものではない。
【0053】
散布工程S4は、第一転圧工程S3後直ちに行うが、本実施形態では上述の通り粒径略1.0mmのアルミナ骨材を手撒きにより均一に散布しているが、手撒きにおいては未施工領域から手を伸ばして安定して散布可能な距離を略1.0mとして施工しており、よって、本実施形態では全ての作業領域g1~g15を手撒きが可能な長さを考慮して分割している。
【0054】
なお、本実施形態では第二の骨材3としてアルミナ骨材を用いており、広義においてはセラミック骨材も同様のものとするが、セラミック骨材は粒径の均一性が乏しいため粒径略0.5mm~2.0mmの範囲の材料を用いることが望ましく、また、珪砂(4号:0.6mm~1.12mm)を用いることもできる。
【0055】
また、本実施形態では手撒きにより散布を行っているが、例えば、リシンガンやブロアー等の装置を用いても良く、本実施形態に限定されるものではない。
【0056】
また、散布する第二の骨材3は、下塗り材2と同系色の骨材を用いることが美感上望ましい。
【0057】
第二転圧工程S5は、散布工程S4後直ちに行うが、砂骨ローラーにより塗布面に対して押圧しないよう撫でるように転がして作業を行なう。この場合、第二転圧工程S5よりも更に弱い力で行う必要がある。
【0058】
なお、本実施形態では転圧のために砂骨ローラーを用いているが、例えば、ウーローラーやマスチックローラー、ヘッドカットローラー等でも良く、本実施形態に限定されるものではない。
【0059】
このようにして素地調整された下地Gに対して下塗り工程S2から第二転圧工程S5までを行うが、複数の作業領域に分割して施工を行う場合は、例えば、
図2(b)~(f)に示すように、起点となる最初の作業領域g1に対して下塗り工程S2から第二転圧工程S5を行った後、順次隣接する作業領域に対して下塗り工程から第二転圧工程S5を繰り返して全ての作業領域を終える。
【0060】
全ての作業領域に対して第二転圧工程S5を終えたら、最後の下塗り材2の塗布を終えてから略2時間経過後にローラーや刷毛により上塗り工程S6を行うことができる。
【0061】
なお、本実施形態では上述の下塗り材2により塗布から2時間以上経過することで塗布面に影響なく歩行することができ、上塗り工程S6を進めることが可能となる。
【0062】
上塗り工程S6で使用する上塗り材4は特に限定されないが、本実施形態では、前工程の段階で既に安定した凹凸を形成できているため、上塗り材4は薄膜で防滑性を重視した以下の材料を用いて施工している。
【0063】
本実施形態に係る塗床工法で説明する上塗り材4は、ポリオールと水を主成分とする第三の液体(日本特殊塗料株式会社:ユータックコンプリートG A液)と、イソシアネートを主成分とする第四の液体(日本特殊塗料株式会社:ユータックコンプリートG B液)、及び粉体からなるセメント(日本特殊塗料株式会社:ユータックコンプリートTパウダー)を混合して調整する。
【0064】
具体的には、
図2(a)に示した施工面積49.0mm
2の施工領域Gに対して、第三の液体を略2kg、第四の液体を略2kg、セメントを略3kg使用し、これらを混合・攪拌して得た上塗り材4により略0.15mm厚の塗膜を材形成する。
【0065】
従って、本実施形態では略4.0mm厚の下塗り材2の上に上塗り材4を形成することで下地Gから略4.15mm厚の塗床が形成され、第二の骨材3が現出する箇所は最大で略5.15mm厚となってメリハリが効いた凹凸が形成される。
【0066】
上塗り工程S6は、調整した上塗り材4をローラーにより下塗り材2の表面に塗布するが、この場合は、全ての施工領域Gに対して一気に作業を行なうことができ、本実施形態では7分以内で行っており、
図3に示すような塗膜を形成する。
【0067】
なお、本実施形態では上塗りのためにウーローラーを用いているが、マスチックローラー、ヘッドカットローラー等や刷毛等であっても良く、本実施形態に限定されるものではない。
【0068】
以上、説明したように本実施形態に係る塗床工法は、下地Gを素地調整する素地調整工程S1と、素地調整した下地Gの表面に第一の骨材1を含有した下塗り材2を塗布する下塗り工程S2と、下塗り材2の表面を転圧する第一転圧工程S3と、下塗り材2が硬化する前に下塗り材2の転圧した表面に第二の骨材3を散布する散布工程S4と、下塗り材2の散布した表面を転圧する第二転圧工程S5と、下塗り材2が硬化した後に上塗り材4を塗布する上塗り工程S6と、からなることより、下塗り材2が硬化する前に第一の骨材1の上に第二の骨材3を積層的に固着させることができるので第二の骨材3で安定的に表面を凹凸に形成でき耐久性のある高い防滑性を備えた床面を施工することができる。
【0069】
また、上塗り工程S6の前に既に安定した凹凸を形成できているため上塗り材4を薄膜に形成でき、美観向上のための着色や耐摩耗性、耐薬品性等の個別の機能を有する上塗り材を防滑性が損なうことなく柔軟に使用することができる。
【0070】
また、素地調整工程S1の後に下地Gを連続して隣接する複数の作業領域に分割し、起点となる最初の作業領域g1に対して下塗り工程S2から第二転圧工程S5を行った後、順次隣接する作業領域(g2以降)に対して下塗り工程S2から第二転圧工程S5を繰り返して全ての作業領域を終えた後、下塗り材2が硬化した後に全ての作業領域に対して上塗り工程S6を行うことより、施工面積が広くても第二転圧工程S5までは全ての施工領域を一気に施工でき、しかも、最後の第二転圧工程S5を終えた作業領域の下塗り材2が硬化すれば全ての施工領域に対して一気に上塗り工程S6を行うことができるため短時間で施工を完了させることができる。
【0071】
また、下塗り材2は、第一の骨材1を含有すると共に、ポリオール、イソシアネート、水によるウレタン結合とウレア結合をなし、且つセメントと水分による水和反応によりコンクリートをなす水性硬質ウレタン系コンクリート組成物であることより、耐衝撃性や耐摩耗性に優れ、更に耐熱性や耐薬品性を有するため、食品工場や機械工場、産業床に要求される耐久性に優れた床材として広く使用できるだけでなく、第一の骨材1の粒径や含有量の調整を容易に行なうことができる。
【0072】
更に、下塗り材の膜厚を略4.0mm~略7.0mm、前記上塗り材の膜厚を略0.1mm~略0.3mm、前記第一の骨材の粒径を略2.0mm~3.0mm、前記第二の骨材の粒径を略略0.5mm~2.0mmとしたことより、第一の骨材1の上に第二の骨材3を安定して積層させることができるので、第二の骨材3で安定的に表面を凹凸に形成でき高い防滑性を備えた床面を施工することができる。
【0073】
また、本発明に係る塗床工法を用いた塗床により、高防滑性を備えた床面を提供することができる。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
G 下地
g1 作業領域(最初)
g2 作業領域
g3 作業領域
g4 作業領域
g5 作業領域
g6 作業領域
g7 作業領域
g8 作業領域
g9 作業領域
g10 作業領域
g11 作業領域
g12 作業領域
g13 作業領域
g14 作業領域
g15 作業領域(最後)
S1 素地調整工程
S2 下塗り工程
S3 第一転圧工程
S4 散布工程
S5 第二転圧工程
S6 上塗り工程
1 第一の骨材
2 下塗り材
3 第二の骨材
4 上塗り材