(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155019
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20231013BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20231013BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20231013BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20231013BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20231013BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20231013BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20231013BHJP
H01M 10/6553 20140101ALI20231013BHJP
H01M 10/0583 20100101ALI20231013BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20231013BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M4/66 A
H01M50/533
H01M10/0562
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/6551
H01M10/6553
H01M10/0583
H01M10/058
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064721
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 海志
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 正浩
(72)【発明者】
【氏名】蕪木 智裕
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H031
5H043
【Fターム(参考)】
5H017AA04
5H017AS10
5H017DD05
5H029AJ12
5H029AK05
5H029AK15
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL13
5H029AM11
5H029AM12
5H029BJ14
5H029BJ15
5H029CJ07
5H029DJ05
5H029DJ07
5H031EE03
5H031KK06
5H043AA09
5H043BA20
5H043CA13
5H043CB04
5H043CB09
5H043EA03
5H043EA08
5H043EA22
5H043FA02
5H043FA23
5H043HA22F
5H043JA08F
5H043JA21F
(57)【要約】 (修正有)
【課題】放熱性の向上を図ることが可能な全固体電池を提供することである。
【解決手段】正極層11と、固体電解質層12と、負極層13と、が順に積層される複数の発電要素10と、正極層11に接触している正極集電体20と、負極層13に接触している負極集電体30と、を備え、発電要素10は、少なくとも3個以上積層されている全固体電池1であって、正極集電体20は、各々の発電要素10の正極層11に接触している第1~第4の接触部21a~21dと、第1~第4の接触部21a~21dから延出していると共に、第1~第4の接触部21a~21d同士を電気的に接続することにより複数の発電要素10の正極層11同士を電気的に接続している第2~第4の延出部22b~22dを有しており、正極集電体20は、複数の発電要素10に巻回されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極層と、固体電解質層と、第2の電極層と、が順に積層される複数の発電要素と、
前記第1の電極層に接触している第1の集電体と、
前記第2の電極層に接触している第2の集電体と、を備え、
前記発電要素は、少なくとも3個以上積層されている全固体電池であって、
前記第1の集電体は、
各々の前記発電要素の前記第1の電極層に接触している複数の接触部と、
前記接触部から延出していると共に、前記接触部同士を電気的に接続することにより前記複数の発電要素の前記第1の電極層同士を電気的に接続している延出部を有しており、
前記第1の集電体は、前記複数の発電要素に巻回されている全固体電池。
【請求項2】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記第1の集電体は、複数の前記延出部を有し、
前記複数の延出部同士は互いに接触している全固体電池。
【請求項3】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記全固体電池は、前記延出部の表面を被覆する放熱材層をさらに備える全固体電池。
【請求項4】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記第1の電極層は、正極層であり、
前記第1の集電体は、正極集電体であり、
前記第2の電極層は、負極層であり、
前記第2の集電体は、負極集電体である全固体電池。
【請求項5】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記第1の集電体及び前記第2の集電体のいずれか一方に前記複数の発電要素が形成されている全固体電池。
【請求項6】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記第1の延出部は、蛇腹形状を有する蛇腹部、又は、円弧形状を有する円弧部を含む全固体電池。
【請求項7】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記第1の集電体は、
前記第1の集電体の巻回形状の中心側に位置する端部である第1の端部と、
前記第1の集電体の巻回形状の最外周側に位置する端部である第2の端部と、を含み、
前記第1の集電体の幅は、前記第1の端部から前記第2の端部に向かうに従って増加している全固体電池。
【請求項8】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記第1の集電体は、
前記第1の集電体の巻回形状の中心側に位置する端部である第1の端部と、
前記第1の集電体の巻回形状の最外周側に位置する端部である第2の端部と、を含み、
前記第1の集電体の幅は、前記第2の端部から前記第1の端部に向かうに従って増加している全固体電池。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の全固体電池であって、
前記第2の集電体は、前記複数の発電要素に巻回されている全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全固体電池では、正極層と、負極層と、正極層と負極層との間に配置された固体電解質層と、を含む電極積層体が複数積層されている(例えば、特許文献1参照)。この全固体電池では、正極集電体が、電極積層体のそれぞれの正極層同士を電気的に接続するように折込まれて配置されていると共に、負極集電体が、電極積層体のそれぞれの前記負極層同士を電気的に接続するように折込まれて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、全固体電池は、伝熱体として機能する電解液を備えていないため、充放電に伴って生じる熱が全固体電池の外部に放出され難い、という問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、放熱性の向上を図ることが可能な全固体電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1の集電体を発電要素に巻回することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1の集電体を発電要素に巻回することにより、第1の集電体の発電要素から露出する部分の表面積を増加させることができる。このため、第1の集電体の露出部分から輻射による放熱を行うことができるため、放熱性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態における全固体電池の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す全固体電池の正極集電体の巻回方法の一例を説明する断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の他の実施形態における全固体電池の正極集電体の巻回方法の一例を説明する断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態における全固体電池の変形例の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態における全固体電池の正極集電体の第1及び第2変形例の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態における正極集電体の第3~第6変形例の一例を示す展開図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態における負極集電体の変形例の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る全固体電池1について図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態における全固体電池の一例を示す断面図であり、
図2は
図1のII-II線に沿った断面図である。なお、
図1及び
図2では、充電された状態の全固体電池を図示している。また、特に図示していないが、全固体電池1は、発電要素や集電体の他に、電極タブと、電極タブ及び発電要素を収容する外装部材を有している。
【0010】
図1に示すように、完全放電された状態の全固体電池1は、複数の発電要素10(本例では6個の発電要素10a~10f)と、正極集電体20と、複数(本例では3枚)の負極集電体30と、を備えている。
【0011】
複数の発電要素10は、図中のZ方向に沿って積層されており、発電要素10の間には正極集電体20及び複数の負極集電体30が介在している。この発電要素10は、正極層11と、固体電解質層12と、負極層13と、を有している。なお、本実施形態における正極層11は本発明における「第1の電極層」又は「第2の電極層」の一例に相当し、本実施形態における負極層13は本発明における「第2の電極層」又は「第1の電極層」の一例に相当する。
【0012】
発電要素10a~10fは、基本的に同様の構造を有しているので、発電要素10aの構造を代表として説明する。発電要素10aの正極層11は、正極集電体20の主面に形成されている。この正極層11は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、又は、カリウム(K)等のアルカリ金属を放出及び吸蔵可能な正極活物質を少なくとも含有しており、特に限定されないが、硫黄を含む正極活物質を含有することが好ましい。硫黄を含む正極活物質は、硫黄の酸化還元反応を利用して、充電時にリチウムイオン等のアルカリ金属イオンを放出し、放電時に当該アルカリ金属イオンを吸蔵することができる物質であればよい。硫黄を含む正極活物質の種類としては、特に制限されないが、硫黄単体(S)、有機硫黄化合物、又は、無機硫黄化合物の粒子或いは薄膜を使用することができる。
【0013】
有機硫黄化合物としては、特に限定されないが、ジスルフィド化合物、硫黄変性ポリアクリロニトリル、硫黄変性ポリイソプレン、ルベアン酸(ジチオオキサミド)、ポリ硫化カーボン等を用いることができる。無機硫黄化合物としては、特に限定されないが、S-カーボンコンポジット、TiS2、TiS3、TiS4、NiS、NiS2、CuS、FeS2、Li2S、MoS2、MoS3等が挙げられる。なお、正極活物質として、硫黄を含まないものを使用してもよい。
【0014】
この正極層11と接触するように固体電解質層12が設けられている。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質又は酸化物固体電解質等を用いることができるが、硫化物固体電解質を用いることが好ましい。
【0015】
硫化物固体電解質としては、例えば、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5、LiI-Li3PS4、LiI-LiBr-Li3PS4、Li3PS4、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-ZmSn(ただし、m、nは正の数であり、Zは、Ge、Zn、Gaのいずれかである)、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LixMOy(ただし、x、yは正の数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、又はInのいずれかである)等が挙げられる。なお、「Li2S-P2S5」という記載は、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味しており、上記の他の記載についても同様である。或いは、硫化物固体電解質として硫化物ガラス等を用いてもよい。
【0016】
酸化物固体電解質としては、例えば、NASICON型構造を有する化合物等を用いることができる。NASICON型構造を有する化合物としては、例えば、一般式Li1+xAlxGe2-x(PO4)3(0≦x≦2)で表される化合物(LAGP)、一般式Li1+xAlxTi2-x(PO4)3(0≦x≦2)で表される化合物(LATP)等を用いることができる。また、他の酸化物固体電解質としては、LiLaTiO(例えば、Li0.34La0.51TiO3)、LiPON(例えば、Li2.9PO3.3N0.46)、LiLaZrO(例えば、Li7La3Zr2O12)等を用いることができる。
【0017】
この固体電解質層12に正極層11の反対側から接触するように負極層13が設けられている。この負極層13は、アルカリ金属層13aと、負極中間層13bと、を含んでいる。
【0018】
アルカリ金属層13aは、全固体電池1の充電に伴って、正極層11から放出され固体電解質層12を介して負極集電体30又は負極中間層13bの主面に到達し析出する。このアルカリ金属層13aの体積は、全固体電池1の充電に伴ってアルカリ金属が析出して増加していく一方で、放電に伴ってアルカリ金属が消失(正極層11側へ移動)して減少していく。アルカリ金属層13aの主成分としては、例えば、リチウム金属、ナトリウム金属、及び、カリウム金属等を挙げることができる。
【0019】
負極中間層13bは、固体電解質層12とアルカリ金属層13aとの間に設けられている。この負極中間層13bは、アルカリ金属の平滑な析出を補助するため、及び/又は、アルカリ金属層13aが固体電解質層に直接接しないようにするための層である。負極中間層13bは、アルカリ金属イオンを吸蔵及び放出可能な材料または電子絶縁性およびリチウムイオン伝導性を有する材料を含有している。アルカリ金属イオンを吸蔵及び放出可能な材料は、グラファイト等の炭素材料や銀等の金属材料からなる群から選択される1種または2種以上の材料を含有している。また、電子絶縁性およびリチウムイオン伝導性を有する材料は、固体電解質層に含まれる固体電解質よりもリチウム金属と接触することによる還元分解に対して安定な材料であり、例えば、ハロゲン化リチウム(フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI))、リチウムイオン伝導性ポリマー、Li-M-O(Mは、Mg、Au、Al、SnおよびZnからなる群より選ばれる1種または2種以上の金属元素である)で表される複合金属酸化物、ならびにLi-Ba-TiO3複合酸化物からなる群から選択される1種または2種以上の材料を含有している。これらの材料はいずれも、リチウム金属との接触による還元分解について特に安定である。また、負極中間層は、例えば、樹脂バインダーを含んでも良い。なお、本実施形態の中間層13bは、固体電解質層12とアルカリ金属層13aとの間に設けられているがこれに限定されず、アルカリ金属層13aと負極集電体30との間に設けられていてもよい。また、負極層13は、負極中間層13bを含んでいなくてもよい。
【0020】
正極集電体20は、導電性を有する板状(又は箔状)の部材であり、特に限定されないが、例えば、金属や、導電性を有する樹脂から構成されている。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、又は、銅等を用いることができる。或いは、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、又は、銅とアルミニウムとのクラッド材等が用いられてもよい。また、導電性を有する樹脂としては、非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。
【0021】
この正極集電体20は、折り曲げられることによって、各々の発電要素10a~10fの正極層11に接触するように発電要素10a~10fに巻回されている。よって、各々の正極層11は、この正極集電体20により相互に電気的に接続されている。なお、発電要素10に正極集電体20を巻回するために、全固体電池1は、発電要素を少なくとも3個以上備えている。
【0022】
本実施形態における正極集電体20は、以下に説明するような構造を有することにより、発電要素10a~10fに巻回された渦巻き形状を有している。すなわち、この正極集電体20は、各々の発電要素10の正極層11に接触する第1~第4の接触部21a~21dと、当該正極層11に接触していない第1~第5の延出部22a~22eと、を有している。
【0023】
第1~第4の接触部21a~21dは、それぞれ、発電要素10a~10fの正極層11と接触している。より具体的には、第1の接触部21aは、発電要素10a,10cの正極層11の間に介在しており、第2の接触部21bは、発電要素10b,10eの正極層11の間に介在している。一方で、第3の接触部21cは、発電要素10dの正極層11に接触しており、第4の接触部21dは、発電要素10fの正極層11に接触している。
【0024】
第1の接触部21aの一方側(図中の-X方向側)の一端から第1の延出部22aが延出している。この第1の延出部22aは、第1の接触部21aと略平行に延在しており、当該第1の接触部21aの一方端から図中の-X方向に向かって延出している。なお、この第1の延出部22aを正極集電体20から省略してもよい。
【0025】
第1の接触部21aの他方側(図中の+X方向側)の他端と、第2の接触部21bの他方側(図中の+X方向側)の他端と、から、第2の延出部22bが延出している。この第2の延出部22bは、発電要素10a,10bに対して開口するコの字形状を有している。この第2の延出部22bは、一対の第1及び第2の対向部23a,23bと、第1の連結部24aと、を含んでいる。
【0026】
第1の対向部23aは、第1の接触部21aの他端から図中の+X方向に向かって延出しており、第2の対向部23bは、第2の接触部21bの他端から図中の+X方向に向かって延出している。これらの第1及び第2の対向部23a,23bは、図中のZ方向において相互に対向している。
【0027】
第1の連結部24aは、積層方向(図中のZ方向)に沿って延在している。本実施形態における第1の連結部24aは、一対の第1及び第2の対向部23a,23bの間に介在していることで、当該第1及び第2の対向部23a,23bを連結している。この第1の連結部24aは、2個の発電要素10a,10bと対向している。
【0028】
第2の接触部21bの一端及び第3の接触部21cの一端から第3の延出部22cが延出している。この第3の延出部22cは、発電要素10a~10dに対して、第2の延出部22bとは反対側に位置している。第3の延出部22cは、第2の延出部22bと逆向きのコの字形状を有しており、発電要素10a~10dに対して開口している。第3の延出部22cは、一対の第3及び第4の対向部23c,23dと、第2の連結部24bと、を含んでいる。
【0029】
第3の対向部23cは、第2の接触部21bの一端から図中の-X方向に向かって延出しており、第4の対向部23dは、第3の接触部21cの一端から図中の-X方向に向かって延出している。これらの第3及び第4の対向部23c,23dは、積層方向において相互に対向している。
【0030】
第2の連結部24bは、積層方向に沿って延在している。この第2の連結部24bは、一対の第3及び第4の対向部23c,23dの間に介在していることで、当該第3及び第4の対向部23c,23dを連結している。また、第2の連結部24bは、4個の発電要素10a~10dと対向しており、第2の連結部24bの長さは、第1の連結部24aの長さよりも長くなっている。
【0031】
第3の接触部21cの他端及び第4の接触部21dの他端から第4の延出部22dが延出している。この第4の延出部22dは、発電要素10a~10fに対して、第3の延出部22cとは反対側に位置している。この第4の延出部22dは、発電要素10a~10fに対して開口するコの字形状を有している。この第4の延出部22dは、第2の延出部22bと接触するように、第2の延出部22bの外側に配置されている。第4の延出部22dは、一対の第5及び第6の対向部23e,23fと、第3の連結部24cと、を含んでいる。
【0032】
第5の対向部23eは、第3の接触部21cの他端から図中の+X方向に向かって延出しており、第6の対向部23fは、第4の接触部21dの他端から図中の+X方向に向かって延出している。これらの第5及び第6の対向部23e,23fは、図中のZ方向において相互に対向している。
【0033】
第3の連結部24cは、積層方向(図中のZ方向)に沿って延在している。第3の連結部24cは、一対の第5及び第6の対向部23e,23fの間に介在していることで、当該第5及び第6の対向部23e,23fを連結している。また、第3の連結部24cは、6個の発電要素10a~10fと対向しており、第3の連結部24cの長さは、第2の連結部24bの長さよりも長くなっている。
【0034】
また、第3の連結部24cは、第1の連結部24aと接触している。このように、第2の延出部22bと第4の延出部22dとが接触していることにより、第3の連結部24cと第1の連結部24aとの間においても通電させることができる。このため、正極集電体20を流れる電流を第3の連結部24cと第1の連結部24aの接触面を起点に分散させることができるため、正極集電体20における電流密度を低減することができる。よって、全固体電池1の発熱量の低減を図ることができる。
【0035】
第4の接触部21dの一端から第5の延出部22eが延出している。この第5の延出部22eは、第4の接触部21dと略平行に延在しており、当該第4の接触部21dの一端から図中の-X方向に向かって延出している。なお、この第5の延出部22eも正極集電体20から省略してもよい。
【0036】
負極集電体30は、導電性を有する板状(又は箔状)の部材であり、特に限定されないが、例えば、金属や、導電性を有する樹脂から構成されている。金属及び導電性を有する樹脂としては、上述の正極集電体20を構成する材料と同様の材料を用いることができる。
図1及び
図2に示すように、本実施形態における負極集電体30は、矩形の平面形状を有しており、正極集電体20のように折り曲げられていない。
【0037】
以上のような全固体電池1の正極集電体20の巻回方法を
図3を参照しながら説明する。
図3は、
図1に示す全固体電池1の正極集電体20の巻回方法の一例を説明する断面図である。
【0038】
図3に示すように、まず、両面に発電要素10が形成された負極集電体30を3枚準備する。次いで、負極集電体30上に形成された発電要素10a,10bの正極層11に、第1及び第2の接触部21a,21bが接触するように正極集電体20を巻回する(図中の一点鎖線A)。
【0039】
次いで、正極集電体20の第1の接触部21aに発電要素10c,10dが形成された負極集電体30を配置すると共に、第2の接触部21b上に発電要素10e,10fが形成された負極集電体30を配置する(図中の一点鎖線B)。
【0040】
そして、発電要素10d,10fの正極層11に、第3及び第4の接触部21c,21dがそれぞれ接触するように正極集電体20を巻回する(図中の一点鎖線C)。以上のようにして、上記のような全固体電池1の正極集電体20を発電要素10に巻回することができる。
【0041】
以上のような本実施形態における全固体電池1であれば、発電要素10に正極集電体20が巻回されていることにより、正極集電体20において発電要素10に覆われていない表面の面積を増大させることができる。このため、電解液を含まない全固体電池であっても、正極集電体20からの輻射による放熱量を増加させることができる。また、内部の真空度が高く、空気による伝熱量が少ない全固体電池においても、正極集電体20からの輻射による放熱を行うことができるため、放熱性能の向上を図ることができ、ひいては、高温耐性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態では正極集電体20を巻回している一方で、負極集電体30は巻回していない。このように、負極集電体30の面積を制限することにより、アルカリ金属が負極集電体30の反応面以外の領域に析出してしまうことを抑制することができる。これにより、全固体電池1の容量の低下を抑制することができる。
【0043】
また、
図3に示すように、本実施形態における全固体電池1であれば、負極集電体30のみに発電要素10を形成すればよく、負極集電体30と正極集電体20の両方に発電要素10を形成する必要がなくなるため、製造性を向上させることができる。なお、本実施形態では、予め負極集電体30に発電要素10を形成しているので、負極集電体30と発電要素10とは接合している一方で、正極集電体20と発電要素10とは単に接触しているのみであって接合はしていない。
【0044】
なお、上記実施形態では、
図3に示すような複数の負極集電体30のそれぞれに発電要素10を形成してから、正極集電体20を巻回する巻回方法を説明したがこれに限定されない。例えば、以下のような巻回方法で全固体電池1Bにおいて正極集電体20を巻回してもよい。
【0045】
図4は、他の実施形態における全固体電池1Bの正極集電体20の巻回方法の一例を説明する断面図である。この実施形態では、1枚の負極集電体30Bの一方の主面上に発電要素10a~10fが形成されている。この負極集電体30Bは、山折り部30aにおいて山折りされていると共に、谷折り部30bにおいて谷折りされている。よって、この実施形態では、発電要素10の間に2層の負極集電体30Bが介在している。
【0046】
この場合においても、負極集電体30B上に形成された発電要素10a,10bの正極層11に、第1及び第2の接触部21a,21bが接触するように正極集電体20を巻回する(図中の一点鎖線A)。そして、発電要素10d,10fの正極層11に、第3及び第4の接触部21c,21dがそれぞれ接触するように正極集電体20を巻回する(図中の一点鎖線B)。以上のようにして、上記のような全固体電池1Bの正極集電体20を発電要素10に巻回することができる。
【0047】
図5は、本実施形態における全固体電池の変形例の一例を示す断面図である。本変形例では、全固体電池1Cが正極集電体20上に放熱材層40をさらに備えている点で上記実施形態と相違する。
【0048】
本変形例における放熱材層40は、正極集電体20の第2~第4の延出部22bの表面を被覆している。この放熱材層40としては、放熱性を有する絶縁性の材料を用いることができる。このような材料としては、具体的には、セラミックやゴム等を用いることができる。セラミックやゴムは金属箔よりも放射計数が大きいため、輻射による放熱効果の向上を図ることができる。
【0049】
図6(a)は、本実施形態における全固体電池の正極集電体20の第1変形例の一例を示す断面図である。本変形例に示すように、全固体電池1Dの正極集電体20Dの第2~第4の延出部22b~22dは、蛇腹形状の部分を有していてもよい。本変形例では、第1~第3の連結部24a~24cが蛇腹形状を有する場合を図示しているがこれに限定されず、対向部も蛇腹形状になっていてもよい。このように、第2~第4の延出部22b~22dが蛇腹形状の部分を含むことにより、第2~第4の延出部22b~22dの表面積を増大させることができるため、輻射による放熱効果の向上を図ることができる。さらに、このような蛇腹形状及び円弧形状は、充放電に伴う発電要素10の積層方向における膨張及び収縮に追従することができる。
【0050】
図6(b)は、本実施形態における全固体電池の正極集電体20の第2変形例の一例を示す断面図である。本変形例に示すように、全固体電池1Eの正極集電体20Eの第2~第4の延出部22b~22dは、円弧形状の部分を有していてもよい。本変形例では、第1~第3の連結部24a~24cが円弧形状を有する場合を図示しているがこれに限定されず、対向部も蛇腹形状になっていてもよい。この場合にも、第2~第4の延出部22b~22dの表面積を増大させることができるため、輻射による放熱効果の向上を図ることができる。さらに、このような蛇腹形状及び円弧形状は、充放電に伴う発電要素10の積層方向における膨張及び収縮に追従することができる。
【0051】
図7(a)~
図7(d)は、本実施形態における正極集電体の第3~第6変形例の一例を示す展開図である。
図7(a)に示すように、正極集電体20Fの幅は、第1の端部20aから第2の端部20bに向かうに従って増加していてもよい。本変形例では、正極集電体20Gの2つの長辺を傾斜させることにより幅を変化させている。なお、第1の端部20aは、正極集電体20Fの巻回形状の中心側に位置する端部であり、第2の端部20bは、巻回形状の最外周側に位置する端部である。或いは、
図7(b)に示すように、正極集電体20Gの1つの長辺のみを傾斜させることで、正極集電体20Gの幅を変更してもよい。
【0052】
或いは、
図7(a)とは逆に、正極集電体20Hの幅は、第2の端部20bから第1の端部20aに向かうに従って増加していてもよい。また、
図7(d)に示すように、正極集電体20Iの1つの長辺のみを傾斜させることで、正極集電体20Gの幅を変更してもよい。
【0053】
図7(a)~
図7(d)に示すような正極集電体20F~20Iであれば、正極集電体20F~20Iが巻回された際に、第1~第5の延出部22a~22e(
図1参照)の向かい合う部分同士の幅が互いに異なるので、当該向かい合う部分の面積を小さくすることができる。よって、第1~第5の延出部22a~22eからの輻射熱が外装部材に伝播し易くなるため、放熱量の増大を図ることができる。
【0054】
図8は、本実施形態における負極集電体の変形例の一例を示す断面図である。この変形例では、正極集電体20だけでなく、負極集電体30Gも発電要素10に巻回されている点で、上記実施形態と相違している。
【0055】
本変形例における全固体電池1Gにおける負極集電体30Gは、基本的に、上記実施形態における正極集電体20と同様に発電要素10に巻回されている。但し、本変形例では、負極集電体30Gの第1~第3の接触部31a~31cは、発電要素10の負極層13の間に介在している。そして、第1の接触部31aと第2の接触部31bからコの字状の第1の延出部32aが延出しており、第2の接触部31bと第3の接触部31cからコの字状の第2の延出部32bが延出している。
【0056】
このように、負極集電体30Gも巻回されていることで、負極集電体30Gからの輻射熱を増大させることができるため、全固体電池1Gの放熱性能の向上を図ることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0058】
例えば、正極集電体を巻回せずに、上記の負極集電体のみを発電要素に巻回してもよい。
【0059】
また、発電要素の数は少なくとも3個以上であれば特に限定されない。
【符号の説明】
【0060】
1,1B~1G…全固体電池
10a~10f…発電要素
11…正極層
12…固体電解質層
13…負極層
13a…アルカリ金属層
13b…中間層
20,20D…正極集電体
21a~21d…第1~第4の接触部
22a~22e…第1~第5の延出部
23a~23f…第1~第6の対向部
24a~24c…第1~第3の連結部
30,30B,30G…負極集電体
30a…山折り部
30b…谷折り部
31a~31c…第1~第3の接触部
32a,32b…第1及び第2の延出部
40…放熱材層