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▶ 株式会社オメガの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155023
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】基材面の固着物の除去方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/12 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
B05D3/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064739
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AE03
4D075BB20Z
4D075BB21Z
4D075BB63X
4D075BB65X
4D075BB70Z
4D075BB73X
4D075BB79Z
4D075BB89X
4D075CA07
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DA06
4D075DB01
4D075DB02
4D075DB04
4D075DB12
4D075DB18
4D075DB20
4D075DB31
4D075DC12
(57)【要約】
【課題】好適な基材面の固着物の除去方法を提供しようとするもの。
【解決手段】基材とこの基材面の固着物の温度収縮差により相互間に剥離空間を形成し、この剥離空間を拡張するようにした。基材とこの基材面の固着物の温度収縮差により相互間に剥離空間を形成するようにしたので、固着物とその基材面を一体的に昇温すると、これらの温度収縮差により相互間に剥離空間が形成されることとなる。そして、この剥離空間を拡張するようにしたので、もともとはほぼ密着状態であった基材面と固着物とを比較的に容易に分離することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とこの基材面の固着物の温度収縮差により相互間に剥離空間を形成し、この剥離空間を拡張するようにしたことを特徴とする基材面の固着物の除去方法。
【請求項2】
前記相互間に電解水を注入するようにした請求項1記載の基材面の固着物の除去方法。
【請求項3】
前記固着物を加熱処理して熱分解ガスを得るようにした請求項1又は2記載の基材面の固着物の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基材面の固着物の除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両ボディの塗装方法に関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、通常、自動車ボディの塗装ラインにおいては、ワークである自動車ボディを略コ字状のハンガを用いて吊り下げた状態で搬送しながら、脱脂及び化成処理等の表面処理を行った後、さらに電着塗装による下塗りを行う。この後、自動車ボディをハンガから台車に移載し、台車をレールに沿って走行させて搬送を行いながら、下塗り塗装の乾燥、シーラー等の塗布及びその乾燥、中塗り塗装及びその乾燥、上塗り塗装及びその乾燥を順次行う。
一般に、自動車塗装においては、塗膜に美しい光沢があることが絶対の条件とされており、特に深みのある光沢を出すことが望まれる。また、限りなく高品質な塗装を追求する自動車業界では、自動車ボディの仕上げ塗装の塗膜について、光沢の美しさのみならず、物体を鏡のように映し出す鮮映性までも要求される。この光沢・鮮映性の良否は、使用する塗料の種類や品質等にもよるが、塗膜の平滑性(レベリング)の良し悪しによって受ける影響が極めて大きい。
ところが、車体工場から搬入されてくる自動車ボディの表面(特に上面)には、まれに異物(スパッタ粉など)が付着していることがある。また、脱脂処理・化成処理のときに自動車ボディから処理槽内に落下した異物が、別の自動車ボディに再付着することもある。このような状態で塗装を行うと、いわゆる「ブツ」と呼ばれる塗装不良になり、塗膜の平滑性が低下するという問題が生じる、というものである。
このような状況に対し、好適な基材面の固着物の除去方法を得たいという要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-81274
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、好適な基材面の固着物の除去方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の基材面の固着物の除去方法は、基材とこの基材面の固着物の温度収縮差により相互間に剥離空間を形成し、この剥離空間を拡張するようにしたことを特徴とする。
この基材面の固着物の除去方法は、基材とこの基材面の固着物の温度収縮差により相互間に剥離空間を形成するようにしたので、固着物とその基材面を一体的に昇温すると、これらの温度収縮差により相互間に剥離空間が形成されることとなる。そして、この剥離空間を拡張するようにしたので、もともとはほぼ密着状態であった基材面と固着物とを比較的に容易に分離することができる。
【0006】
前記基材として、鉄板、ステンレス板その他の金属類、布、紙、セメント、コンクリート、材木、プラスチック、フィルムなどを例示できる。
前記固着物(汚れ)として、車などの塗装、ペンキの塗膜、被膜、メッキ膜、インキ、トナーなどを例示できる。
前記固着物の態様として、基材の周囲の端面の裏側まで巻き込んでいるもの、連続的なもの、断続的なもの、断片的なものなどを例示できる。
基材面の固着物の除去方法の態様として、塗膜の収縮差を利用して剥離する塗膜の剥離方法を例示できる。
【0007】
(2)前記相互間に電解水を注入するようにしてもよい。
このように、前記相互間に電解水を注入するようにすると、基材とこの基材面の固着物の間に浸透性が高い電解水が浸入することにより、相互間の密着性を緩和して空間を広げていくことができる。
【0008】
前記電解水として、O3共存水を電気分解して3つの酸素ラジカル(・O)を生成させたものを用いることができる。酸素ラジカル(・O)の酸化電位は 2.42V(オゾンから酸素ラジカル3つになると2.42V×3=7.26Vになる)、オゾン(O3)の酸化電位は 2.07Vである。すなわち、オゾン(O3)の酸化電位2.07Vは、3つの酸素ラジカル(・O)になると、酸化電位は2.42V×3=7.26Vと大きなものになる。
【0009】
(3)前記固着物を加熱処理して熱分解ガスを得るようにしてもよい。
このように、固着物を加熱処理して熱分解ガスを得るようにすると、本来 不要物である固着物を熱分解ガス(メタン、エタン、プロパンなど)に変換し、有用物としてエネルギー利用し有効活用することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
もともとはほぼ密着状態であった基材面と固着物とを比較的に容易に分離することができるので、好適な基材面の固着物の除去方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
(実施形態1)
この実施形態の基材面の固着物の除去方法は、基材とこの基材面の固着物の温度収縮差により相互間に剥離空間を形成し、この剥離空間を拡張するようにした。
前記基材はプラスチック(PVC)、前記固着物は黒色の塗装であり、基材のPVCから黒色の塗装を除去した。
【0012】
具体的には、黒色の塗膜を有するPVC板を80~90℃のお湯に1~2分浸漬すると、PVC板と黒色の塗膜の温度収縮差により相互間に剥離空間を形成され、この剥離空間を拡張することにより、塗膜を剥がした。
【0013】
次に、この実施形態の基材面の固着物の除去方法の使用状態を説明する。
この基材面の固着物の除去方法は、基材(PVC板)とこの基材面の固着物(黒色の塗膜)の温度収縮差により相互間に剥離空間を形成するようにしたので、固着物とその基材面を一体的に昇温すると、これらの温度収縮差により相互間に剥離空間が形成された。
そして、この剥離空間を拡張するようにしたので、もともとはほぼ密着状態であった基材(PVC板)面と固着物(黒色の塗膜)とを容易に分離することができた。
【0014】
(実施形態2)
前記基材(PVC板)と固着物(黒色の塗膜)相互間に電解水を注入するようにした。
前記電解水として、O3共存水を電気分解して3つの酸素ラジカル(・O)を生成させたものを用いた。酸素ラジカル(・O)の酸化電位は 2.42V(オゾンから酸素ラジカル3つになると2.42V×3=7.26Vになる)、オゾン(O3)の酸化電位は 2.07Vである。すなわち、オゾン(O3)の酸化電位2.07Vは、3つの酸素ラジカル(・O)になると、酸化電位は2.42V×3=7.26Vと大きなものになった。
このように、前記相互間に電解水を注入するようにしたので、基材とこの基材面の固着物の間に浸透性が高い電解水が浸入することにより、相互間の密着性を緩和して空間を広げていくことができた。
【0015】
(実施形態3)
前記固着物(黒色の塗膜)を加熱処理して熱分解ガスを得るようにした。
このように、固着物(黒色の塗膜)を約650℃で加熱処理して熱分解ガスを得るようにしので、本来 不要物である固着物(黒色の塗膜)を熱分解ガス(メタン)に変換し、有用物としてエネルギー利用し有効活用することができた。
【産業上の利用可能性】
【0016】
もともとはほぼ密着状態であった基材面と固着物とを比較的に容易に分離することができることによって、種々の基材面の固着物の除去方法の用途に適用することができる。