(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155030
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/18 20060101AFI20231013BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H05K3/18 K
H05K3/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064753
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 大介
(72)【発明者】
【氏名】高田 昌留
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA02
5E343AA17
5E343AA18
5E343AA36
5E343BB24
5E343BB44
5E343CC48
5E343CC56
5E343DD25
5E343DD33
5E343DD43
5E343EE36
5E343GG04
(57)【要約】
【課題】配線基板の品質及び特性の向上。
【解決手段】実施形態の配線基板は、第1絶縁層21と、第1絶縁層21の表面21a上に形成されている第1導体層11と、第1導体層11の上に積層されている第2絶縁層22と、第2絶縁層22上に形成されている第2導体層12と、第2絶縁層22を貫通して第1導体層11と第2導体層12とを接続するビア導体42と、を含んでいる。第1導体層11は、ビア導体42に接する導体パッド1a、及び配線パターン1bを含み、第1絶縁層21の表面21aは、第1領域211及び第1領域211よりも高い面粗度を有する第2領域212を含み、配線パターン1bは第1領域211に形成されており、導体パッド1aは第2領域212に形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の表面上に形成されている第1導体層と、
前記第1導体層の上に積層されている第2絶縁層と、
前記第2絶縁層上に形成されている第2導体層と、
前記第2絶縁層を貫通して前記第1導体層と前記第2導体層とを接続するビア導体と、
を含む配線基板であって、
前記第1導体層は、前記ビア導体に接する導体パッド、及び配線パターンを含み、
前記第1絶縁層の前記表面は、第1領域及び前記第1領域よりも高い面粗度を有する第2領域を含み、
前記配線パターンは前記第1領域に形成されており、
前記導体パッドは前記第2領域に形成されている。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1領域の面粗度は、算術平均粗さRaで0.01μm以上、0.2um未満であり、前記第2領域の面粗度は、算術平均粗さRaで0.2μm以上、1.0μm未満である。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記導体パッドは前記第2領域全体を覆っている。
【請求項4】
請求項3記載の配線基板であって、平面視における前記導体パッドの大きさは、前記第2領域よりも大きい。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1絶縁層の前記表面は、前記導体パッドが形成されている前記第2領域と前記配線パターンが形成されている前記第1領域との間で連続している。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、前記ビア導体における前記導体パッドと接している底面は、平面視で、前記第2領域と少なくも部分的に重なっている。
【請求項7】
請求項6記載の配線基板であって、前記第2領域は、平面視で、前記ビア導体の前記底面を包含している。
【請求項8】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1絶縁層の前記表面のうち前記第1導体層に覆われていない領域は、全て、前記第1領域である。
【請求項9】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2領域の面粗度は、前記第2絶縁層における前記第1絶縁層側と反対側の表面の面粗度よりも高い。
【請求項10】
第1絶縁層を形成することと、
前記第1絶縁層の表面を粗化することと、
前記表面上に、導体パッドと配線パターンとを含む第1導体層を形成することと、
前記第1導体層を覆う第2絶縁層を形成することと、
前記第2絶縁層を貫通して前記導体パッドと接続するビア導体を形成することと、
を含む配線基板の製造方法であって、
前記表面を粗化することは、第1領域及び前記第1領域よりも高い面粗度を有する第2領域を前記表面に設けることを含み、
前記ビア導体と接続される前記導体パッドは前記第2領域に形成され、前記配線パターンは前記第1領域に形成される。
【請求項11】
請求項10記載の配線基板の製造方法であって、前記第1領域は、算術平均粗さRaで0.01μm以上、0.2μm未満の面粗度を有するように設けられ、前記第2領域は、算術平均粗さRaで0.2μm以上、1.0μm未満の面粗度を有するように設けられる。。
【請求項12】
請求項10記載の配線基板の製造方法であって、前記導体パッドは、平面視において前記第2領域全体を覆うように形成される。
【請求項13】
請求項12記載の配線基板の製造方法であって、前記導体パッドは、平面視において前記第2領域よりも大きい面積を有するように形成される。
【請求項14】
請求項10記載の配線基板の製造方法であって、
前記第1絶縁層の前記表面を粗化することは、
前記表面のうちの前記導体パッドが形成される領域を粗化する第1粗化を行うことと、
前記第1粗化によって粗化される領域及び前記配線パターンが形成される領域を粗化する第2粗化を行うことと、を含んでいる。
【請求項15】
請求項14記載の配線基板の製造方法であって、前記第2粗化において前記表面の全面が粗化される。
【請求項16】
請求項14記載の配線基板の製造方法であって、前記第1粗化を行うことは、前記第1粗化によって粗化される領域に対応する開口を有するレジスト膜を前記表面上に形成することを含んでいる。
【請求項17】
請求項16記載の配線基板の製造方法であって、前記第1粗化はドライプロセスで行われ、前記第2粗化はウェットプロセスで行われる。
【請求項18】
請求項17記載の配線基板の製造方法であって、前記第1絶縁層の前記表面を粗化することは、さらに、前記第1粗化と前記第2粗化との間に、前記表面を超音波洗浄することを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、絶縁層の表面上に形成された配線層を有する配線基板が開示されている。絶縁層の表面には、配線層に覆われている被覆領域を含めて全面に渡って略一様に、ミアンダ形状の溝が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の配線基板では、外部からのストレスに対して配線層と絶縁層との密着強度が不足して、配線層の剥離が起こることがある。或いは、配線層において所望の信号伝送特性が得られないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、第1絶縁層と、前記第1絶縁層の表面上に形成されている第1導体層と、前記第1導体層の上に積層されている第2絶縁層と、前記第2絶縁層上に形成されている第2導体層と、前記第2絶縁層を貫通して前記第1導体層と前記第2導体層とを接続するビア導体と、を含んでいる。そして、前記第1導体層は、前記ビア導体に接する導体パッド、及び配線パターンを含み、前記第1絶縁層の前記表面は、第1領域及び前記第1領域よりも高い面粗度を有する第2領域を含み、前記配線パターンは前記第1領域に形成されており、前記導体パッドは前記第2領域に形成されている。
【0006】
本発明の配線基板の製造方法は、第1絶縁層を形成することと、前記第1絶縁層の表面を粗化することと、前記表面上に、導体パッドと配線パターンとを含む第1導体層を形成することと、前記第1導体層を覆う第2絶縁層を形成することと、前記第2絶縁層を貫通して前記導体パッドと接続するビア導体を形成することと、を含んでいる。そして、前記表面を粗化することは、第1領域及び前記第1領域よりも高い面粗度を有する第2領域を前記表面に設けることを含み、前記ビア導体と接続される前記導体パッドは前記第2領域に形成され、前記配線パターンは前記第1領域に形成される。
【0007】
本発明の実施形態によれば、導体層と絶縁層との剥離が生じ難く、良好な信号伝送特性を有する配線パターンを含む配線基板が提供されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
【
図3】
図1に例示の第1導体層の導体パターンの一例を示す平面図。
【
図4】本発明の一実施形態の配線基板の他の例を示す部分拡大図。
【
図5A】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の工程の一例を示す断面図。
【
図5B】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の工程の一例を示す断面図。
【
図5C】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の工程の一例を示す断面図。
【
図5D】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の工程の一例を示す断面図。
【
図5E】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の工程の一例を示す断面図。
【
図5F】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の工程の一例を示す断面図。
【
図5G】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の工程の一例を示す断面図。
【
図5H】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の工程の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。
図1は一実施形態の配線基板の一例である配線基板100を示す断面図であり、
図2には、
図1のII部の拡大図が示されている。また、
図3は、
図1の例の配線基板100の第1導体層11の導体パターン及び第1絶縁層21の表面21aを部分的に示す平面図である。
図1は
図3のI-I線に重なる切断線での配線基板100全体の断面を示している。なお、配線基板100は本実施形態の配線基板の一例に過ぎない。実施形態の配線基板の積層構造、並びに、導体層及び絶縁層それぞれの数は、
図1の配線基板100の積層構造、並びに配線基板100に含まれる導体層及び絶縁層それぞれの数に限定されない。また、以下の説明で参照される各図面では、開示される実施形態が理解され易いように特徴部が拡大して描かれていることがあり、大きさや長さについて、各構成要素が、それぞれの間の正確な比率で描かれていない場合がある。
【0010】
図1に示されるように、配線基板100は、コア基板3と、コア基板3におけるその厚さ方向において対向する2つの主面(第1面3a及び第2面3b)それぞれの上に交互に積層されている絶縁層及び導体層を含んでいる。コア基板3は、絶縁層32と、絶縁層32の両面それぞれの上に形成されている導体層31とを含んでいる。絶縁層32には、絶縁層32を貫通してその両側の導体層31同士を接続するスルーホール導体33が形成されている。スルーホール導体33の内部は、例えば、エポキシ樹脂などの絶縁性樹脂又は導電性樹脂で構成される充填体34で充填されている。
【0011】
なお、実施形態の説明では、配線基板100の厚さ方向において絶縁層32から遠い側は「上側」もしくは「上方」、又は単に「上」とも称され、絶縁層32に近い側は「下側」もしくは「下方」、又は単に「下」とも称される。さらに、各導体層及び各絶縁層において、絶縁層32と反対側を向く表面は「上面」とも称され、絶縁層32側を向く表面は「下面」とも称される。また、配線基板100の厚さ方向は「Z方向」とも称される。
【0012】
配線基板100は、コア基板3の第1面3aの上に順に形成された、第1絶縁層21、第1導体層11、第2絶縁層22、及び第2導体層12を含んでいる。第1絶縁層21はコア基板3の第1面3aを覆っている。第1導体層11は第1絶縁層21の表面21a上に形成されており、第2絶縁層22は第1絶縁層21及び第1導体層11の上に積層されている。そして、第2絶縁層22上に第2導体層12が形成されている。
図1の配線基板100は、さらに、コア基板3の第2面3bの上に交互に積層されている2つの絶縁層23及び2つの導体層13を備えている。
【0013】
配線基板100は、さらに、各絶縁層を貫通し、各絶縁層を介して隣接する導体層同士を接続するビア導体41~43を含んでいる。ビア導体41(第1ビア導体)は、第1絶縁層21を貫通して導体層31と第1導体層11とを接続している。ビア導体42(第2ビア導体)は、第2絶縁層22を貫通して第1導体層11と第2導体層12とを接続している。各ビア導体43は絶縁層23を貫通しており、導体層13と導体層31とを接続するか、導体層13同士を接続している。
【0014】
第2絶縁層22及び第2導体層12の上には、ソルダーレジスト5が形成されている。コア基板3の第2面3b側の最表層にもソルダーレジスト5が形成されている。ソルダーレジスト5には、第2導体層12又は導体層13の一部を露出させる開口5aが設けられている。ソルダーレジスト5は、例えば、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などで形成される。
【0015】
第1及び第2の絶縁層21、22、並びに、絶縁層23及び絶縁層32は、任意の絶縁性樹脂によって形成される。
図1の例では、絶縁層32は、ガラス繊維などで形成される芯材(補強材)32aを含んでいる。
図1には示されていないが、絶縁層32以外の各絶縁層も、ガラス繊維などからなる芯材を含み得る。各絶縁層は、さらに、シリカ(SiO
2)、アルミナ、又はムライトなどの微粒子からなる無機フィラー(図示せず)を含み得る。
【0016】
各絶縁層を形成する絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、及びフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂が例示される。各絶縁層は、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、フッ化エチレン樹脂(PTFE)、ポリエステル樹脂(PE)、及び変性ポリイミド樹脂(MPI)のような熱可塑性樹脂によって形成されていてもよい。これら熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂よりも低い誘電率と誘電正接とを有していることがあり、第1及び第2の導体層11、12などの各導体層における高周波信号の伝送に関して有利なことがある。
【0017】
第1及び第2の導体層11、12、導体層13及び31、ビア導体41~43、並びにスルーホール導体33は、銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成される。
図1の例において、導体層31は、金属箔31a、金属膜31b、及び金属膜31cを含んでいる。スルーホール導体33は、金属膜31bによって導体層31と一体的に形成されている。金属膜31b、31cは、それぞれ、例えば無電解めっき膜、スパッタリング膜、及び電解めっき膜のいずれか1以上で構成される。一方、第1及び第2の導体層11、12、導体層13、及びビア導体41~43は、それぞれ、金属膜10b及びめっき膜10cによって構成されている。ビア導体41~43は、それぞれの上側で接続する各導体層と一体的に形成されている。めっき膜10cは、例えば電解めっき膜である。金属膜10bは、例えば無電解めっき膜又はスパッタリング膜であり、めっき膜10cが電解めっきで形成される際の給電層として機能する。
【0018】
各導体層は、それぞれ、所定の導体パターンを含んでいる。第1導体層11は、導体パッド1a及び配線パターン1bを含んでいる。
図1及び
図2の例では、第1導体層11は、さらに、導体パターン1cを含んでいる。
【0019】
導体パッド1aは、第2絶縁層22を貫通するビア導体42と接している。すなわち、導体パッド1aは、その上にビア導体42が形成される導体パッドであり、ビア導体42に対する、所謂受けパッドである。
【0020】
配線パターン1bは、任意の電気信号の伝送や電力の供給に用いられる導電路として機能する導体パターンである。配線パターン1bは、例えば電気信号の所定の送信元と送信先とを単独で又は他の導体パターンと連携して接続していてもよく、電力の所定の給電元と給電先とを接続していてもよい。配線パターン1bは、例えば数GHzを超えるような高周波信号の伝送路であってもよい。
【0021】
導体パターン1cは、
図3に示されるように、導体パッド1a及び配線パターン1bが形成されていない領域に広がる平板状の形体を有する導体パターンである。導体パターン1cは、第1導体層11において導体パターン1c以外の配線や接続パッドなどの導体が形成されない領域を略埋め尽くすように設けられる所謂ベタパターンであってもよい。導体パターン1cは、例えば、グランド電位又は特定の電源の電位が印加されるグランドプレーン又は電源プレーンとして用いられる。
【0022】
図2及び
図3を引き続き参照して、配線基板100の第1絶縁層21の表面21aが、さらに説明される。
図1では省略されているが、
図2に示されるように、第1絶縁層21の表面21aは凹凸を有している。そして、本実施形態では、凹凸の高低差が互いに異なる少なくとも二つの領域が表面21aに含まれている。すなわち、第1絶縁層21の表面21aは、互いに異なる面粗度を有する少なくも2つの領域を含んでいる。
図2及び
図3の例では、表面21aは、第1領域211及び第1領域211よりも高い面粗度を有する第2領域212を含んでいる。第1領域211及び第2領域212は、それぞれ、配線基板100の製造工程で粗化処理された粗化領域であり得る。
【0023】
例えば算術平均粗さRaに関して、第2領域212の面粗度は、第1領域211の面粗度よりも高い。第2領域212内の凹凸の最大高低差は、第1領域211内の凹凸の最大高低差よりも大きくてもよく、第2領域212内の凹凸の平均高低差は、第1領域211内の凹凸の平均高低差よりも大きくてもよい。なお「最大高低差」は、各領域内の表面2aの最高点と最低点との高さ(Z方向の位置)の差であり、「平均高低差」は、各領域において隣り合う凸部と凹部との間の高さの差についての各領域全体での平均値である。また、算術平均粗さRaは、例えば、日本産業規格JIS B 0601に規定される方法によって得られる、表面の粗さの程度を示すパラメータである。
【0024】
そして本実施形態では、導体パッド1aは第2領域212に形成されている。導体パッド1aは、前述したようにビア導体42と接続される、ビア導体42の所謂受けパッドである。すなわち、導体パッド1a上にビア導体42が形成される。ビア導体42は、後述されるように、第2絶縁層22を貫いて導体パッド1aに達する貫通孔42aの内部に形成される。貫通孔42aは、例えばレーザー光が照射されるレーザー加工や、ドリル加工のような機械加工によって形成される。
【0025】
これらの加工の際に、貫通孔42aに露出する導体パッド1aには、熱的ストレスや機械的ストレスなどの負荷が加わることがある。例えば、レーザー加工では、レーザー光の熱によって導体パッド1aの温度が上昇し、導体パッド1aの熱膨張によって、導体パッド1aと第1絶縁層21との間に界面剥離が生じることがある。例え導体パッド1aがレーザー光から受けた熱が第1絶縁層21に伝わっても、その伝わった熱量が十分でないと、両者の間に大きな温度差が生じ、熱膨張量の違いから、やはり導体パッド1aと第1絶縁層21との間に界面剥離が生じることがある。また、ドリル加工によって貫通孔42が形成される場合には、ドリルと導体パッド1aとの接触及びドリルの回転によって、導体パッド1aと第1絶縁層21との界面に沿う方向の力が導体パッド1aに加わり、やはり、導体パッド1aと第1絶縁層21との間に界面剥離が生じることがある。
【0026】
これに対して、本実施形態では、導体パッド1aは、第1領域211よりも高い面粗度を有する第2領域212に形成されている。従って、第2領域212の比較的大きい高低差を有する凹凸のために、導体パッド1aと第1絶縁層21との接触面積が、少なくとも、第1領域211上に導体パッド1a全体が形成されるときよりも増大する。そのため、導体パッド1aと第1絶縁層21との接合強度が、第1領域211上に導体パッド1a全体が形成されるときよりも増大する。また、第2領域212の大きな凹凸によって、導体パッド1aと第1絶縁層21との間に、第1領域211上に導体パッド1aが形成されるときよりも高い、所謂アンカー効果が得られる。この高いアンカー効果によって、導体パッド1aと第1絶縁層21との接合強度が一層向上する。
【0027】
さらに、導体パッド1aと第1絶縁層21の接触面積が増大すると、導体パッド1aが例えばレーザー加工で受けた熱が、良好に第1絶縁層21に伝達する。そのため、導体パッド1a側での局所的な温度上昇が低減され、導体パッド1aと第1絶縁層21との間での大きな温度差の発生が抑制される。結果として、導体パッド1aと第1絶縁層21との間で大きな熱膨張量の差異が生じ難い。このように本実施形態では、導体パッド1aと第1絶縁層21との間に高い接合強度が得られ、しかも大きな温度差は生じ難いので、両者の界面剥離が抑制される。
【0028】
さらに本実施形態では、配線パターン1bは第1領域211に形成されている。そのため、配線パターン1bが第2領域212に形成されるときと比べて、配線パターン1bにおいて良好な高周波信号の伝送特性が得られ易い。詳述すると、配線パターン1bが高い面粗度を有する下地の上に形成されると、その高い面粗度に応じた凹凸が、配線パターン1bにおけるその下地に面する表面にも形成(転写)される。一方、高周波信号は、表皮効果のために伝送路の表面付近を伝播する。そのため、伝送路である導体の表面の凹凸の大きさが大きいと、高周波信号に対するその伝送路の実質的なインピーダンスが増加し、伝送特性が低下し易い。すなわち、配線パターン1bが第1領域211よりも高い面粗度を有する第2領域212に形成されると、高周波信号の伝送特性が低下することがある。これに対して本実施形態では、配線パターン1bは、第2領域212ではなく第1領域211に形成されている。そのため、配線パターン1bが第2領域212に形成されるときと比べて、配線パターン1bにおいて良好な高周波信号の伝送特性が得られ易い。
【0029】
このように本実施形態では、ビア導体42の形成に絡んで第1絶縁層21との界面にストレスが加わり易い導体パッド1aでは、両者の間の接合強度及び熱伝達特性の向上によって、その界面剥離が抑制され得る。一方、配線パターン1bは、その表面への大きな凹凸の形成が回避されるため良好な高周波信号の伝送特性を有し得る。従って、本実施形態によれば、導体層(例えば第1導体層11)と絶縁層(例えば第1絶縁層21)との剥離が生じ難く、しかも、良好な伝送特性を有する配線パターン(例えば配線パターン1b)を含む配線基板100のような配線基板が提供される。
【0030】
本実施形態において、第1領域211の面粗度は、例えば、算術平均粗さRaで0.2μm未満(第1面粗度α1)であり得る。第1領域211の面粗度は、算術平均粗さRaで0.01μm以上、0.2μm未満であってもよい。第1絶縁層21の表面21aにおいて0.2μm未満の算術平均粗さRaを有する領域上に形成される配線パターン1bには、例え表皮効果が作用するほど高い周波数の信号の伝送においても、伝送特性の低下は生じ難いと考えられる。好ましくは、第1領域211の全面が第1面粗度α1を有する。第1領域211の面積の80%以上の部分が第1面粗度α1を有していてもよい。
【0031】
一方、第2領域212の面粗度は、算術平均粗さRaで0.2μm以上、1.0μm未満(第2面粗度α2)であり得る。好ましくは、第2領域212の全面が第2面粗度α2を有する。第2領域212の面積の80%以上の部分が第2面粗度α2を有していしていてもよい。算術平均粗さRaで1.0μm未満の面粗度は、任意の粗化処理で比較的容易に形成され得る。また、第2領域212が少なくとも算術平均粗さRaで0.2μm以上の面粗度を有していれば、前述したような接合強度や熱伝達特性の向上が見込めると考えられる。
【0032】
図2及び
図3の例では、導体パッド1aは第2領域212全体を覆っている。すなわち、第2領域212において導体パッド1aに覆われずに表面21aとして露出している部分は存在せず、第2領域212は平面視で導体パッド1aからはみ出ていない。なお「平面視」は、配線基板100をその厚さ方向に沿う視線で見ることを意味している。
【0033】
第1導体層11の導体パッド1aなどの各導体パターンが例えばセミアディティブ法で形成される場合、第1絶縁層21の表面21a全面に形成された金属膜10bのうち、いずれの導体パターンも構成しない部分は、例えばクイックエッチングなどによって除去される。この除去において、表面21aが高い面粗度、すなわち大きな凹凸を有していると、凹部内にエッチング液が十分に入り難く、深い凹部に形成された金属膜10bが除去されずに残ってしまい、導体パターン間の短絡不良を生じさせることがある。
【0034】
しかし、
図2及び
図3の例のように、比較的高い面粗度を有する第2領域212全体が覆われるように導体パッド1aが設けられる場合は、金属膜10bのうちの第2領域212上の部分はエッチングなどで除去されない。そのため、第2領域212での金属膜10bの残存による短絡不良は生じ得ず、そのため、配線基板100全体での短絡不良の発生も抑制される。高い歩留まり及び品質の配線基板100が提供されると考えられる。
【0035】
特に、
図2及び
図3の例では、平面視における導体パッド1aの大きさは、第2領域212よりも大きい。すなわち、導体パッド1aの面積は、第2領域212の面積よりも大きい。そのため、配線基板100の製造において、導体パッド1aの形成位置が正規の位置からばらついても、第2領域212は、平面視で導体パッド1aからはみ出し難い。すなわち、そのように導体パッド1aの形成位置がばらついても、第2領域212上に形成された金属膜10bの除去が必要となり難い。従って、配線基板100の短絡不良が生じ難い。本実施形態では、第1絶縁層21の表面21aのうち第1導体層11に覆われていない領域は、全て第1領域211であってもよい。
【0036】
導体パッド1aが平面視で第2領域212よりも大きい場合、任意の第1方向(例えば
図2において矢印Xで示される方向)において導体パッド1aが1つの縁部で第2領域212よりもはみ出ている部分(余白部)の長さM1は、例えば、3μm以上、0.2×X1以下である。なおX1は、第1方向における導体パッド1aの長さである。導体パッド1aがこの程度の長さの余白部を有していると、前述したように導体パッド1aの形成位置がばらついても金属膜10bの残存による短絡不良は生じ難く、一方、第2領域212の高い面粗度によって接合強度などが向上し得ると考えられる。
【0037】
図2及び
図3の例において、第2領域212は、導体パッド1aの平面形状と略同じ略円形の平面形状を有している。なお「平面形状」は、平面視における第2領域212又は導体パッド1aの形状である。しかし、第2領域212の平面形状と導体パッド1aの平面形状とは異なっていてもよい。また、第2領域212及び導体パッド1aは、それぞれ、略円形に限らず、任意の平面形状を有し得る。
【0038】
なお、
図2及び
図3の例と異なり、第2領域212と導体パッド1aとの平面視での大きさが略同じであり、両者の面積が略同じであってもよい。すなわち第2領域212及び導体パッド1aが、互いに略相似の平面形状を有していてもよい。従って、第2領域212及び導体パッド1aのいずれも、平面視で相手方からはみ出ていなくてもよい。
【0039】
図2及び
図3の例では、ビア導体42における導体パッド1aと接している底面42bは、平面視で、第2領域212と重なっている。すなわち、ビア導体42及び貫通孔42aは、底面42bにおいて第2領域212と平面視で重なる位置に形成されている。ビア導体42の底面42bが、第2領域212の真上に位置しており、平面視で第2領域212内に位置している。特に、
図2及び
図3の例では、第2領域212は、平面視でビア導体42の底面42bを包含している。すなわち、
図2及び
図3の例では、ビア導体42の底面42b全体が、平面視で第2領域212内に位置している。ビア導体42の底面42bの面積は、第2領域212の面積よりも小さい。なおビア導体42の底面42bの平面形状は、
図3に例示される略円形に限定されない。
【0040】
前述したような貫通孔42aの形成におけるストレスは、導体パッド1aと第1絶縁層21との界面のうち、貫通孔42aの底面の真下の領域、すなわちビア導体42の底面42bと平面視で重なっている領域に顕著に加わると考えられる。
図2及び
図3の例では、ビア導体42の底面42bが第2領域212と重なっているので、ストレスが加わり易い領域は、比較的高い導体パッド1aと第1絶縁層21との接合強度を有し得る。従って、貫通孔42aの形成時、及び/又は、万一その後にビア導体42を介して導体パッド1aと第1絶縁層21との界面に外力が作用するときでも、導体パッド1aと第1絶縁層21との界面剥離が生じ難い。
【0041】
なお、ビア導体42の底面42bは、
図2及び
図3の例のように平面視でその全体が第2領域212内に位置していなくてもよく、底面42bが部分的に第2領域212内に位置していてもよい。その場合でも、ストレスが加わり易い領域の一部を占める第2領域212の高い面粗度によって、導体パッド1aと第1絶縁層21との界面剥離が抑制される。すなわち、ビア導体42の底面42bは、平面視で、第2領域212と少なくとも部分的に重なっていれば、導体パッド1aと第1絶縁層21との界面剥離の抑制効果が得られることがある。
【0042】
図2に示されるように、第2領域212における表面21aの凹凸は、第2絶縁層22の上面の凹凸よりも大きい。すなわち、第2領域212の面粗度は、第2絶縁層22における第1絶縁層21側と反対側の表面22aの面粗度よりも高い。
図2の例では、表面22aは、第1領域211と略同じ面粗度を有している。配線基板100において第2絶縁層22は最表層の絶縁層である。従って、第2絶縁層22上の第2導体層12の上にビア導体42のようなビア導体は形成されない。すなわち、第2導体層12と第2絶縁層22との界面には、前述したビア導体42の形成時に第1導体層11の導体パッド1aと第1絶縁層21との界面に加わり得るようなストレスは加わり得ない。従って、第2絶縁層22の表面22aには、第2領域212のような高い面粗度は求められない。従って、第2絶縁層22の表面22aは第2領域212よりも低い面粗度を有していてもよく、換言すると、第2領域212の面粗度は、第2絶縁層22の表面22aの面粗度よりも高くてもよい。特に第2領域212は、第2領域212を有する絶縁層(例えば第1絶縁層21)を含む配線基板100のような配線基板の最外層の絶縁層の外側の表面の面粗度よりも高い面粗度を有していてもよい。
【0043】
図1~
図3の例では、前述したように、第1導体層11は、導体パターン1cを含んでいる。
図2に示されるように、導体パターン1cは、第1領域211上に形成されている。
図2に示される導体パターン1cの上には、ビア導体42のようなビア導体は形成されていない。すなわち、導体パターン1cと第1絶縁層21との界面には、前述したビア導体42の形成時に導体パッド1aと第1絶縁層21との界面に加わり得るようなストレスは加わり得ない。従って、導体パターン1cが第1領域211の面粗度と略同じ面粗度の領域に形成されていてもよく、その領域は第1領域211であってもよい。その場合でも、導体パターン1cと第1絶縁層21の表面21aとの間で界面剥離は生じ難い。
【0044】
なお、
図2及び
図3に示されるように、第1絶縁層21の表面21aは、導体パッド1aが形成されている第2領域212と配線パターン1bが形成されている第1領域211との間で連続している。すなわち、第1領域211と第2領域212とは、別体として形成又は用意された2つの絶縁層それぞれの表面上の領域ではなく、一体の絶縁層(第1絶縁層21)上に広がる連続した表面21a上の領域である。2以上の絶縁層に渡る表面ではなく、第1領域211と第2領域212との間で連続する単一の絶縁層(第1絶縁層21)の表面(表面21a)に、第1領域211及び第2領域212の両方が設けられている。
【0045】
図4には、本実施形態の配線基板の他の例における
図2に相当する部分の拡大図が示されている。
図4の例では、第1絶縁層21の表面21aは、配線パターン1bが形成されている第1領域211として略平坦な領域を有している。すなわち、配線パターン1bは、略平坦な第1領域211に形成されている。配線パターン1bにおいて一層良好な高周波信号の伝送特性が得られると考えられる。
図4の例において、第1領域211は、配線基板100の製造工程で、特段粗化されていない無粗化領域であり得る。なお、
図4の例では、導体パターン1cも、略平坦な領域である第1領域211に主に形成されている。
【0046】
一方、
図4の例においても、第1絶縁層21の表面21aは、凹凸を有する第2領域212を有している。すなわち、第2領域212の面粗度は、第1領域211の面粗度よりも高い。
図4の例においても、第2領域212は、配線基板100の製造工程で粗化処理された粗化領域であり得る。第2領域212を覆うように導体パッド1aが形成されている。このように、本実施形態では、第1領域211と第2領域212とのうちで第2領域212だけが粗化領域であり、第1領域211は無粗化領域であってもよい。例えば、第1領域211の面粗度(算術平気粗さRa)は略ゼロであってもよい。この場合、第2領域212は、少なくともゼロよりも高い面粗度を有し得る。すなわち、「第1領域211よりも高い面粗度を有する第2領域212」は、略ゼロである第1領域211の面粗度よりも高い面粗度を有する第2領域212を含んでいる。
【0047】
つぎに、一実施形態の配線基板の製造方法が、
図1の配線基板100を例に用いて
図5A~
図5Hを参照して説明される。
【0048】
図5Aに示されるように、コア基板3が用意される。例えばコア基板3の絶縁層32となる絶縁層と、この絶縁層の両表面にそれぞれ積層された金属箔31aを含む出発基板(例えば両面銅張積層板)が用意され、コア基板3の導体層31及びスルーホール導体33が形成される。例えばドリル加工によってスルーホール導体33の形成位置に貫通孔が形成される。その貫通孔内及び金属箔31a上に無電解めっきや電解めっきなどによって金属膜31bが形成され、貫通孔内に金属膜31bからなるスルーホール導体33が形成される。エポキシ樹脂などを充填することによって、スルーホール導体33の内部が充填体34で充填される。さらに、充填体34及び金属膜31b上に無電解めっき及び電解めっきなどで金属膜31cを形成することによって導体層31が形成される。その後、サブトラクティブ法によって導体層31をパターニングすることによって所定の導体パターンを備えるコア基板3が用意される。
【0049】
図5B~
図5Eに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、第1絶縁層21を形成することと、第1絶縁層21の表面21aを粗化することと、を含んでいる。第1絶縁層21の形成では、例えばフィルム状のエポキシ樹脂が、コア基板3の上に積層され、加熱及び加圧される。第1絶縁層21は、フィルム状のエポキシ樹脂に限らず、BT樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、LCPなどの任意の樹脂によって形成され得る。絶縁層21には、ビア導体41(
図1参照)を形成すべく貫通孔41aが、例えば炭酸ガスレーザー光の照射などによって形成される。
図5Bの例では、コア基板3の第2面3b側に絶縁層23及び貫通孔41aが、第1面3a側の第1絶縁層21及び貫通孔41aと同様の方法で形成される。
【0050】
図5Cに示されるように、第1絶縁層21の表面21aの粗化において、レジスト膜Rが、表面21a上に設けられる。レジスト膜Rは、第2領域212(
図5D参照)を画定する後続の粗化処理(以下、第2領域212を画定する粗化処理は「第1粗化」とも称される)で粗化されるべきではない領域を第1粗化から保護し得る任意の材料で形成される。例えば、アルカリ溶解性ポリマー及び光重合性モノマーを含むフィルム状の樹脂が、レジスト膜Rとして表面21a上に積層される。第1粗化によって第2領域212となる所定の領域と対応する箇所のレジスト膜Rには、例えばフォトリソグラフィ技術を用いて開口R1が形成される。なお、
図5Cの例では、絶縁層23の上面(絶縁層23における第1絶縁層21側と反対側の表面)が第1粗化で粗化されないように、この上面にもレジスト膜Rが設けられている。しかし、絶縁層23の上面へのレジスト膜Rの形成は省略されてもよい。
【0051】
図5Dに示されるように、第1絶縁層21の表面21aのうちレジスト膜Rの開口R1に露出する領域を粗化する第1粗化が行われる。なお、
図5D~
図5Fには、
図5Cに示されるVD部に相当する部分における各工程での加工や処理後の状態が拡大して示されている。第1粗化で粗化された領域によって第2領域212が確定される。それと共に、
図5Dの例では、第2領域212以外の領域である第1領域211が画定される。第2領域212には、後工程で導体パッド1a(
図5F参照)が形成される。第1領域211には、後工程で配線パターン1b(
図5F参照)が形成される。
【0052】
第1粗化は、溶剤を用いるウェットプロセス、又は、気相中で粗化が実行されるドライプロセスなどの任意の方法で行われ得る。しかし
図5Dの例では表面21a上にレジスト膜Rが設けられているので、好ましくは、レジスト膜Rを溶解などによって損壊させない方法で第1粗化が行われる。そのため、第1粗化には、溶剤を用いないドライプロセスが好ましいことがある。例えば、第1粗化は、酸素、窒素、アルゴン、四フッ化メタン、四フッ化メタンと酸素との混合気、又は、六フッ化硫黄などのプラズマガスを用いるプラズマ処理によって行われてもよい。表面21aに露出していてプラズマガスと反応する樹脂成分がガスとして放散されることによって表面21aが粗化される。
【0053】
その後、
図5Eに示されるように、レジスト膜Rが、例えば水酸化ナトリウムなどのアルカリ性剥離剤を用いて除去される。レジスト膜Rの除去後、第1絶縁層21に含まれていて表面21aに露出又は残留し得る無機フィラー(図示せず)を除去する洗浄が行われてもよい。特に、第1粗化がドライエッチングによって行われる場合、第1絶縁層21に含まれる無機フィラーが除去されずに表面21aに残留することがある。そのため、第1粗化後に洗浄、例えば、超音波洗浄が行われてもよい。
【0054】
そして、
図5Eに示されるように、表面21aがさらに粗化される。第1粗化によって粗化される第1領域212は再度粗化される(以下、第2領域212を再度粗化する粗化処理は「第2粗化」とも称される)。
図5Eの例では、第1領域211を含む表面21aの全体が粗化される。このように、本実施形態において第1絶縁層21の表面21aを粗化することは、表面21aのうちの第2領域212を粗化する第1粗化を行うことと、第2領域212及び第1領域211を粗化する第2粗化を行うことと、を含み得る。さらに、表面21aを粗化することは、第1粗化と第2粗化との間に、前述したように、表面21aを超音波洗浄することを含んでいてもよい。また、第2粗化において、第1領域211及び第2領域212を含む表面21aの全面が粗化されてもよい。さらに、第1粗化を行うことは、前述したように、第1粗化によって粗化される第2領域212に対応する開口R1を有するレジスト膜R1を第1絶縁層21の表面21a上に形成することを含んでいてもよい。
【0055】
第2粗化は、第1粗化と同様に任意の方法で行われる。
図5Eに示されるように第2粗化が行われるときにはレジスト膜Rは除去されているので、前述したドライプロセス、及びウェットプロセスを含む、より広い範囲の粗化方法の中から第2粗化の方法が選択され得る。例えば、アルカリ性過マンガン酸溶液などの処理液に表面21aを晒すウェットプロセスによって第2粗化が行われてもよい。ドライプロセスと比較して、よりシンプルな装置で容易に第2粗化を行い得ることがある。このように本実施形態では、第1粗化がドライプロセスで行われ、第2粗化がウェットプロセスで行われてもよい。
【0056】
第2粗化によって再度粗化される第2領域212は、第1領域211よりも高い面粗度を有し得る。本実施形態において第1絶縁層21の表面21aを粗化することは、このように、第1領域211、及び第1領域211よりも高い面粗度を有する第2領域212を表面21aに設けることを含んでいる。第1領域211は、例えば、算術平均粗さRaで0.01μm以上、0.2μm未満の面粗度を有するように設けられる。このような面粗度を第1領域211が有していると、前述したように、後工程で形成される配線パターン1b(
図5F参照)において良好な高周波信号の伝送特性が得られると考えられる。一方、第2領域212は、例えば、算術平均粗さRaで0.2μm以上、1.0μm未満の面粗度を有するように設けられる。このような面粗度を第2領域212が有していると、前述したような、後工程で形成される導体パッド1a(
図5F参照)と第1絶縁層21との界面剥離の抑制効果が得られると考えられる。
【0057】
図5Fに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、第1絶縁層21の表面21a上に、導体パッド1aと配線パターン1bとを含む第1導体層11を形成することを含んでいる。
図5Fの例では、さらに導体パターン1cを含む第1導体層11が形成される。第1導体層11は、サブトラクティブ法やセミアディティブ法などの任意の方法で形成され得る。例えばセミアディティブ法が用いられる場合、表面21a上、及び貫通孔41a(
図5B参照)内に、無電解めっきやスパッタリングによって金属膜10bが形成される。金属膜10b上に、導体パッド1aなどの第1導体層11の導体パターンに対応する開口を有するめっきレジスト(図示せず)が形成され、その開口内に、金属膜10bを給電層として用いる電解めっきによってめっき膜10cが形成される。その結果、貫通孔41a内にビア導体41が形成される。そしてめっきレジストが除去された後、金属膜10bのうち、めっき膜10cに覆われていない部分(不要部分)が例えばエッチングによって除去される。その結果、導体パッド1a及び配線パターン1bを含む第1導体層11が形成される。
【0058】
本実施形態では、
図5Fに示されるように、配線パターン1bは第1領域211に形成され、導体パッド1aは第1領域211よりも高い面粗度を有する第2領域212に形成される。そのため、前述したように、配線パターン1bにおいて良好な高周波信号の伝送特性が得られる。また、導体パッド1aと第1絶縁層21との界面では、良好な高い接合強度及び良好な熱伝達特性が得られる。導体パッド1aの上には、後述されるようにビア導体42(
図5H参照)が形成される。ビア導体42の形成では、前述したように、導体パッド1aと第1絶縁層21との界面にストレスが加わることがある。しかし、そのようなストレスが導体パッド1aと第1絶縁層21との界面に加わっても、良好な高い接合強度及び良好な熱伝達特性によって、導体パッド1aと第1絶縁層21との界面剥離が抑制され得る。
【0059】
図5Fの例では、第2領域212全体を覆う導体パッド1aが形成されている。すなわち、第2領域212において、導体パッド1aに覆われずに表面21aとして露出している部分は存在せず、第2領域212の縁部は導体パッド1aの縁部の外側にはみ出ていない。換言すると、その縁部が第2領域212の縁部の外側にはみ出ていて、平面視で第2領域212よりも大きい面積を有する導体パッド1aが形成されている。
【0060】
比較的高い面粗度を有する、すなわち比較的大きな凹凸を有する第2領域212が導体パッド1aの外側にはみ出ていないので、前述した金属膜10bの不要部分の除去において、第2領域212の深い凹部内に形成された金属膜10bの除去は求められない。従って、金属膜10bの不要部分が残り難く、導体パッド1aとその周囲の導体パターンとの短絡不良が生じ難い。このように、導体パッド1aは、平面視において第2領域212全体を覆うように形成され得る。また、導体パッド1aは、平面視において第2領域212よりも大きい面積を有するように形成されてもよい。
【0061】
図5G及び
図5Hに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、第1導体層11を覆う第2絶縁層22を形成することと、第2絶縁層22を貫通して導体パッド1aと接続するビア導体42を形成することと、を含んでいる。なお、前述した第1導体層11の形成において、コア基板3の第2面3b側には、導体層13及びビア導体43が、第1導体層11の形成と同様の方法で形成されている。
図5Gに示されるように、第2絶縁層22には、第2絶縁層22を貫いて導体パッド1aに達する貫通孔42aが、ビア導体42(
図5H参照)の形成位置に形成される。
図5Gの例では、コア基板3の第2面3b側に絶縁層23及び貫通孔43aが、第2絶縁層22及び貫通孔42aと同様の方法で形成される。
【0062】
第2絶縁層22は、
図5Bを参照して説明された第1絶縁層21の形成方法と同様に、例えばフィルム状のエポキシ樹脂を第1絶縁層21及び第1導体層11の上に積層して加熱及び加圧することによって形成される。第2絶縁層22は、フィルム状のエポキシ樹脂に限らず、BT樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、LCPなどの任意の樹脂によって形成され得る。貫通孔42aは、例えば炭酸ガスレーザー光の照射によるレーザー加工やドリル加工などによって形成される。このレーザー加工やドリル加工時のストレスが、導体パッド1aと第1絶縁層21との界面に加わることがあるが、その界面での剥離は、前述したように、比較的高い面粗度を有する第2領域212(
図5F参照)によって抑制される。
【0063】
図5Hに示されるように、貫通孔42a内にビア導体42が形成され、そのビア導体42と共に、第2絶縁層22上に第2導体層12が形成される。第1導体層11の導体パッド1aは、ビア導体42と接続され、ビア導体42を介して第2導体層12と接続される。ビア導体42及び第2導体層12は、前述した第1導体層11及びビア導体41と同様に、セミアディティブ法やサブトラクティブ法などの任意の方法で形成され得る。コア基板3の第2面3b側には、さらに導体層13及びビア導体43が、第2導体層12、及びビア導体42と同様の方法で形成される。
【0064】
図1の配線基板100が製造される
図5Hの例では、ソルダーレジスト5が形成される。ソルダーレジスト5には第2導体層12又は導体層13の一部を露出させる開口5aが設けられる。ソルダーレジスト5及び開口5aは、例えば感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを含む樹脂層の形成と、適切な開口パターンを有するマスクを用いた露光及び現像とによって形成される。
【0065】
以上の工程を経る事によって、
図1の例の配線基板100が完成する。ソルダーレジスト5の開口5a内に露出する第2導体層12又は導体層13の一部の表面上には、無電解めっき、半田レベラ、又はスプレーコーティングなどによって表面保護膜(図示せず)が形成されてもよい。
【0066】
なお、先に参照した
図4の例の配線基板100が製造される場合は、
図5Eを参照して説明された第2粗化が省略される。このように、本実施形態の配線基板の製造方法では、前述した第2粗化が省略されてもよい。すなわち、第1領域211及び第2領域212のうちの第2領域212だけが粗化され、第1領域211が粗化されなくてもよい。
【0067】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。前述したように、実施形態の配線基板は任意の積層構造を有し得る。例えば実施形態の配線基板はコア基板を含まないコアレス基板であってもよい。実施形態の配線基板は、任意の数の導体層及び絶縁層を含み得る。第1導体層11及び第1絶縁層21は、配線基板の積層構造上の任意の階層に存在し得る。配線基板に含まれる複数の導体層の全部、又は一部の複数の導体層が、第1導体層11に含まれているような導体パッド1a及び配線パターン1bを含んでいてもよい。配線基板に含まれる複数の絶縁層の全部又は一部の複数の絶縁層が、その表面に、第1領域211及び第2領域212のような、互いに異なる面粗度を有する2つの領域を含んでいてもよい。また、導体パッド1aは、第2領域212の全体を覆っていなくてもよい。ビア導体42は、
図1などの例のようなテーパー形状を有していなくてもよい。
【0068】
実施形態の配線基板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されない。例えば第1及び第2の絶縁層21、22は、フィルム状の樹脂に限らず、任意の形態の樹脂を用いて形成され得る。また、第2絶縁層22以外の絶縁層にはビア導体が形成されなくてもよい。実施形態の配線基板の製造方法には、前述された各工程以外に任意の工程が追加されてもよく、前述された工程のうちの一部が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
100 配線基板
11 第1導体層
12 第2導体層
1a 導体パッド
1b 配線パターン
21 第1絶縁層
21a 表面
211 第1領域(低面粗度領域)
212 第2領域(高面粗度領域)
22 第2絶縁層
22a 表面
42 ビア導体
42a 貫通孔
42b ビア導体の底面
R レジスト膜
R1 開口