(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155042
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20231013BHJP
H02P 4/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B25F5/00 C
H02P4/00
B25F5/00 H
B25F5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064772
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】岩城 幸三
(72)【発明者】
【氏名】長井 教博
(72)【発明者】
【氏名】橋本 孝博
【テーマコード(参考)】
3C064
5H501
【Fターム(参考)】
3C064AA02
3C064AA03
3C064AA06
3C064AA08
3C064AA09
3C064AA10
3C064AA20
3C064AB03
3C064AC02
3C064BA12
3C064BA37
3C064BB09
3C064BB11
3C064BB14
3C064BB89
3C064CA03
3C064CA07
3C064CA26
3C064CA53
3C064CA80
3C064CB17
3C064CB62
3C064CB71
3C064DA05
3C064DA43
3C064DA95
3C064EA01
5H501AA11
5H501CC04
5H501CC09
5H501DD04
5H501HA06
5H501HB07
5H501JJ03
5H501JJ17
5H501KK07
5H501LL23
5H501LL35
5H501LL51
(57)【要約】
【課題】複数のバッテリを搭載可能な電動工具において、各バッテリを有効に利用可能な電動工具用電源装置を備える電動工具を提供すること。
【解決手段】本開示に係る電動工具用電源装置を備える電動工具は、第1バッテリから供給される前記第1電源電圧に基づいて前記第2制御部を動作させるための第2動作電圧を供給可能であって、かつ、第2バッテリから供給される第2電源電圧に基づいて前記第2制御部を動作させるための前記第2動作電圧を供給可能に構成される第2電圧供給部と、前記第1電圧供給部と前記第2電圧供給部とを接続し、前記第1電源電圧を供給可能に構成される第1電圧線と、前記第1電圧供給部と前記第2電圧供給部とを接続し、前記第1電源電圧より低い第2電圧を供給可能に構成される第2電圧線と、前記第1電圧線に前記第1電圧供給部から前記第2電圧供給部へ電流が流れることを許可可能であって、かつ、前記第2電圧供給部から前記第1電圧供給部へ電流が流れることを防止可能に構成される逆流防止回路とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、
第1バッテリと、
第2バッテリと、
前記第1バッテリから供給される第1電源電圧に基づいて供給される第1動作電圧で、前記電動機を制御可能に構成される第1制御部と、
通信機と、
前記第1バッテリから供給される前記第1電源電圧に基づいて供給される第2動作電圧で、前記通信機を制御可能に構成され、かつ、前記第1バッテリから前記第1電源電圧が供給されないとき、前記第2バッテリから供給される第2電源電圧に基づいて供給される前記第2動作電圧で前記通信機を制御可能に構成される第2制御部とを備え、
前記第2制御部は、所定条件満足時に、リセット動作を実行可能に構成されている
電動工具。
【請求項2】
前記第1バッテリから供給される前記第1電源電圧に基づいて、前記第1制御部を動作させるための前記第1動作電圧を供給可能に構成される第1電圧供給部と、
前記第1バッテリから供給される前記第1電源電圧に基づいて、前記第2制御部を動作させるための前記第2動作電圧を供給可能であって、かつ、前記第2バッテリから供給される前記第2電源電圧に基づいて、前記第2制御部を動作させるための前記第2動作電圧を供給可能に構成される第2電圧供給部と、
前記第1電圧供給部と前記第2電圧供給部とを接続し、前記第1電源電圧を供給可能に構成される第1電圧線と、
前記第1電圧供給部と前記第2電圧供給部とを接続し、前記第1電源電圧より低い第2電圧を供給可能に構成される第2電圧線と、
前記第1制御部及び前記第1電圧供給部が搭載される第1配線基板と、
前記第2制御部及び前記第2電圧供給部が搭載される第2配線基板と、
前記第1配線基板に設けられた第1コネクタと、
前記第2配線基板に設けられた第2コネクタと、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとを接続し、前記第1電圧線の少なくとも一部を構成する電源線及び前記第2電圧線の少なくとも一部を構成する電源線を含むケーブルと
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記第1制御部は、前記第2制御部に信号を送信可能に構成され、
前記第2制御部は、前記第1制御部に前記信号に対する応答信号を送信可能に構成され、
前記第1制御部は、前記応答信号が受信されなかったときに、前記第2制御部に前記第2制御部に前記リセット動作を実行させるためのリセット信号を供給可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記通信機がリセットコマンドを受信したときに、前記リセット動作を実行させるためのリセット信号が前記第2制御部に供給されるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具。
【請求項5】
前記第2バッテリからの前記第2電源電圧の供給を遮断するためのスイッチをさらに備え、
前記所定条件満足時に前記スイッチにより前記第2バッテリからの前記第2電源電圧の供給が遮断されることにより、前記第2制御部は、前記リセット動作を実行可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具。
【請求項6】
前記第1制御部には、前記所定条件と異なる第2所定条件満足時に、前記第1制御部がリセット動作を実行するためのリセット信号が供給されるように構成されており、
前記所定条件満足時に前記第1制御部はリセット動作を実行せず、かつ、前記第2制御部はリセット動作を実行するように構成され、
前記第2所定条件満足時に前記第1制御部はリセット動作を実行し、かつ、前記第2制御部はリセット動作を実行しないように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動工具本体に無線通信機を搭載することにより利便性を向上させた電動工具が知られている。
【0003】
特許文献1には、このような無線の通信機を搭載した電動工具が開示されている。この電動工具は、電動機と、無線通信を行うための通信機と、電動機及び通信機を制御するための制御部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電動工具は、制御部が電動機及び通信機を制御するため、制御部が通信するにあたり電動機によるノイズの影響を受けてしまうという問題がある。また、制御部は、電動機を制御しながら通信しなければならないため、リアルタイムに通信することができない。
【0006】
そこで本発明は、ノイズの影響を受けにくく、リアルタイムに通信することが可能となる電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、電動工具用電源装置を備える電動工具を開示する。この電動工具用電源装置は、第1バッテリから供給される第1電源電圧に基づいて供給される第1動作電圧で、電動工具に搭載される電動機を制御可能に構成される第1制御部と、前記第1バッテリから供給される前記第1電源電圧に基づいて供給される第2動作電圧で、前記電動工具に搭載される通信機を制御可能に構成され、かつ、前記第1バッテリから前記第1電源電圧が供給されないとき、第2バッテリから供給される第2電源電圧に基づいて供給される前記第2動作電圧で前記通信機を制御可能に構成される第2制御部とを備え、前記第2制御部は、所定条件満足時に、リセット動作を実行可能に構成されている。
【0008】
本発明の「電動工具」は、動力源として電気を利用する、機械加工その他の工作に用いる道具のことをいい、本発明の「電動工具」は、単体で使用される製品の他、他の装置の一部を構成する部品乃至モジュールを含む。例えば本発明の「電動工具」は、ロボットアーム等の設備機器に取り付けられるモジュールであってもよい。また本発明の「電動工具」は、複数の機能を有する工作機械の一部を構成する部品であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電動工具の斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る電動工具の断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る電動工具の電気回路構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る電動工具の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。
【0011】
なお、便宜上、
図2における紙面左右方向を前後方向X(「第1方向」の一例)、特に紙面左方向を前方X1、紙面右方向を後方X2と呼び、紙面上下方向を上下方向Z(「第2方向の一例」、特に紙面上方向を上方Z1、紙面下方向を下方Z2と呼び、前後方向X及び上下方向Zに垂直な方向を左右方向Y(「第3方向」の一例)、特に前方X1を向いたときに右方向を右方Y1、左方向を左方Y2と呼ぶ場合がある。これらは相対的な方向関係を説明する目的で使用され、絶対的な方向を示すものではない。
【0012】
以下、本発明を電動工具である鉄筋結束機に適用した実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係る電動工具である鉄筋結束機10の斜視図であり、
図2は鉄筋結束機10を左右方向Yに垂直な断面で電動工具を切断した断面図である。
【0013】
ただし本発明は、通信機能を有し、かつ、電動機(モータ)を用いて作業を行う電動工具に広く適用可能であり、例えば、ドリル、インパクトドライバ、ネイラ、グラインダ、レシプロソー、ポリッシャー等に適用可能である。なおモータは、ブラシレスモータでも、ブラシ付きモータでもよい。
【0014】
[電動工具の基本構成]
【0015】
本実施形態に係る鉄筋結束機10は、ワイヤWを前方X1の端部から外方に送り出すことにより、二本又は三本以上の鉄筋RBを結束可能に構成されている。
【0016】
具体的には鉄筋結束機10は、作業者が把持するためのハンドル10Hと、ワイヤWを収容するためのマガジン10Mと、ワイヤWを前方X1の端部から外方に送り出すためのワイヤ送り部12と、鉄筋RBの周囲にワイヤWを巻き回すためのワイヤWの進行経路を構成するカール形成部14と、鉄筋RBに巻き付けられたワイヤWを切断するための切断部16と、鉄筋RBに巻き付けられたワイヤWを捩じるための結束部18と、ワイヤ送り部12及び結束部18がそれぞれ備える送りモータ12M及び結束モータ18Mを制御するための駆動制御部22を含む工具制御部と、鉄筋結束機10が外部機器と通信するための通信機32及び通信機32を制御するための通信制御部34とを備える通信部30とを備える。
【0017】
本実施形態の鉄筋結束機10においてカール形成部14、切断部16、結束部18、工具制御部及び通信部30は、鉄筋結束機10の本体部10Bを構成する。マガジン10Mは、本体部10Bの前方X1の下部から下方Z2に延在して設けられる。ハンドル10Hは、本体部10Bの後方X2の下部から下方Z2に延在して設けられる。よってマガジン10Mは、ハンドル10Hに対して前方X1に設けられ、ハンドル10Hは、マガジン10Mに対して後方X2に設けられる。さらにマガジン10Mの下部とハンドル10Hの下部とは接続されている。以下、各構成について説明する。
【0018】
鉄筋結束機10は、本体部10Bから下方Z2に延在するハンドル10Hを備える。ハンドル10Hは、作業者が鉄筋結束機10を把持する部分に相当する。ハンドル10Hの下端は、メインのバッテリ10BPが着脱可能に取り付け可能に形成されている。ハンドル10Hの前方X1を向いた面には、トリガ10HTが設けられる。鉄筋結束機10は、作業者がトリガ10HTを後方X2に押下すると後述するように工具制御部が制御動作を開始し、結束作業が始まるように構成されている。
【0019】
マガジン10Mは、線状のワイヤWが巻回されたリールRLを回転可能、かつ、着脱可能に収納する。ここでリールRLは、1本、または、複数本のワイヤWを同時に送り出し可能に構成される。なおワイヤWは、長尺に形成された可塑性を有する金属線(被覆されたものを含む)その他の鉄筋RBを結束するために適した線状体である。
【0020】
ワイヤ送り部12は、ワイヤWを挟んだ状態で互いに異なる方向に回転することによりワイヤWを進行可能に構成される一対のギア12Gと、ギア12Gを駆動する送りモータ12M(「電動機」の一例)とを備えている。送りモータ12Mは回転子と固定子とを備えている。ワイヤ送り部12は、送りモータ12Mの回転子を正方向に回転させることによりワイヤWを外方に送り出すとともに、逆方向に回転させることにより、ワイヤWを引き戻し可能に構成されている。ワイヤ送り部12の送りモータ12Mを制御する工具制御部については後述する。
【0021】
カール形成部14は、ワイヤ送り部12により送られるワイヤWを湾曲させて巻き癖をつけるカールガイド14Aと、カールガイド14Aにより巻き癖を付けられたワイヤWを結束部18に誘導するための誘導ガイド14Bとを備える。カールガイド14Aは、内壁面に沿ってワイヤWを進行させることによりループ状にワイヤWを湾曲可能に構成されている。このため、カールガイド14Aと誘導ガイド14Bとの間の空間に複数の鉄筋RBが左右方向Yに延伸するように配置された状態でワイヤWを送り出すことにより、ワイヤWを鉄筋RBの周囲に巻き回させることが可能となる。
【0022】
切断部16は、固定刃と、固定刃との協働でワイヤWを切断する可動刃と、結束部18の動作を可動刃に伝達する伝達機構16Aを備える。切断部16は、固定刃を支点軸とした可動刃の回転動作でワイヤWを切断可能に構成されている。伝達機構16Aは、結束部18の動作を可動刃に伝達し、結束部18による結束動作と連動して可動刃部を回転させるように構成されている。このため、伝達機構16Aは、結束部18の動作と連動して可動刃を回転動作させることにより、後述するように所定のタイミングにおいてワイヤWを切断可能に構成されている。
【0023】
結束部18は、ワイヤWを挟持するために開閉可能に構成された一対のフック18Hと、一対のフック18Hを、前後方向Xを回転軸として回転させるための回転シャフトと、回転シャフトを回転軸方向(前後方向X)に移動させ、かつ、前方X1に移動した回転シャフトを回転させるための減速機及び回転軸AXを基準に回転可能に構成された結束モータ18Mとを備える。
【0024】
結束部18の回転シャフトは、結束モータ18Mの正方向への回転により正方向に回転する。回転シャフトの周囲には摺動部が設けられ、摺動部は回転シャフトが正回転することで前方X1に移動可能に構成される。一対のフック18Hが開いた状態において送りモータ12Mによって送り出されたワイヤWは、カールガイド14A及び誘導ガイド14Bの内壁面に沿って湾曲しながら進行し、ワイヤWの先端が開いている一対のフック18Hの間隙を通過するように構成されている。この状態で結束モータ18Mが正方向に回転して回転シャフトが正回転に回転すると摺動部が前方X1に移動して、一対のフック18Hは閉じるように構成されている。このため一対のフック18HはワイヤWを挟持可能に構成されている。さらに結束モータ18Mが正方向に回転して回転シャフトが正方向に回転することで摺動部が前方X1に移動すると、伝達機構16Aにより可動刃が回転してワイヤWを切断する。さらに結束モータ18Mが正方向に回転すると、一対のフック18HがワイヤWを挟持した状態で、結束部18は、切断されたワイヤWの先端を折り曲げる。さらに結束モータ18Mが正方向に回転すると、回転シャフトは摺動部と共に、前後方向Xを回転軸として回転するように構成されている。一対のフック18HがワイヤWを挟持した状態で、回転シャフトが回転することにより、一対のフック18Hは、ワイヤWを捩じるように構成されている。
【0025】
[電動工具の電気回路構成]
図3は、本実施形態に係る鉄筋結束機10の電気回路構成を示すブロック図である。鉄筋結束機10の電気回路構成のうち、送りモータ12Mを制御するための構成と、通信機32を制御するための構成と、これら構成に電力(電圧)を供給するための構成が本実施形態の電源装置40を構成する。
【0026】
具体的には、本実施形態に係る電源装置40は、バッテリ10BP(「駆動用バッテリ」又は「第1バッテリ」と呼ばれる場合がある。)から電力(電圧)の供給を受けるためのバッテリ接続部40CNと、バッテリ接続部40CNから供給される電力(電圧)の供給をオン乃至オフするための電源スイッチ40Sと、電源スイッチ40Sを介してバッテリ10BPから電力(電圧)の供給を受け、バッテリ10BPから供給される第1電源電圧に基づいて、駆動制御部22(「第1制御部」の一例)を動作させるための第1動作電圧を供給する第1電力制御部41PC(「第1電圧供給部」の一例)と、第1動作電圧に基づいて動作して、送りモータ12Mを制御するための制御信号を生成する駆動制御部22と、駆動制御部22により生成された制御信号に基づいて送りモータ12Mの固定子に流す電流を制御するモータ制御部24とを備える。
【0027】
バッテリ10BPは、少なくとも駆動制御部22、モータ制御部24、送りモータ12M及び結束モータ18M、後述する通信制御部34、無線通信機32及び位置情報取得部36を動作させるための電力を供給可能に構成される。バッテリ10BPは、例えば、充電可能に構成されるリチウムイオン二次電池であり、所定の定格容量、定格電圧及び定格電流を有する。例えばバッテリ10BPは、5.0Ahの定格容量を有し、定格が14.4Vの直流電圧を供給可能に構成されている。ただし後述するように、バッテリ10BPから供給される直流電圧は、バッテリ10BPの電力消費に伴って次第に低下する。
【0028】
バッテリ接続部40CNは、バッテリ10BPから直流電圧の供給を受けて、第1電力制御部41PCに供給する。電源装置40は、バッテリ接続部40CNと第1電力制御部41PCとを接続する第1電圧線41を備え、バッテリ10BPから供給される直流の第1電源電圧は、この第1電圧線41に印加される。
【0029】
電源スイッチ40Sは、鉄筋結束機10の主電源スイッチ(不図示)の操作に従って、バッテリ接続部40CNを介してバッテリ10BPから第1電力制御部41PCに供給される電力(電圧)の供給をオン乃至オフする。したがって作業者が主電源スイッチをオフにすると、電源スイッチ40Sはバッテリ10BPから第1電力制御部41PCへの電力(電圧)の供給を遮断(オフ)し、オンにすると、電源スイッチ40Sはバッテリ10BPから第1電力制御部41PCへの電力(電圧)の供給を許可(オン)する。
【0030】
第1電力制御部41PCは、バッテリ10BPから供給される第1電源電圧に基づいて駆動制御部22を含む各回路素子を動作させるための電圧を生成し各回路素子等に供給する。例えば、バッテリ10BPから供給される14.4Vの第1電源電圧に基づいて駆動制御部22の動作電圧である3.3Vの電圧(「第1動作電圧」の一例)を生成し駆動制御部22に供給し、また、第1電源電圧(14.4V)をそのままモータ制御部24、モータ制御部26及び各モータの固定子に供給可能に構成される。ここで、電圧を供給することは、電圧を生成して供給することと、電圧を生成することなくパススルーしてそのまま供給することを含む。第1電力制御部41PCは、第1動作電圧より大きく第1電源電圧より小さい中間電圧をさらに生成し、異なる回路素子に供給可能に構成されている。なお、第1電力制御部41PCは、第1電源電圧より大きい電圧を生成し、異なる回路素子に供給可能な昇圧回路を備えてもよい。
【0031】
駆動制御部22は、例えば3.3Vの電圧に基づいて動作して、送りモータ12Mを制御するための制御信号を生成し、モータ制御部24に供給する。また駆動制御部22は、鉄筋結束機10の他のアクチュエータ等を制御可能に構成されている。さらに駆動制御部22は、第1電力制御部41PCから供給された第1電源電圧をモータ制御部24(の例えば正極電源線)に供給する。駆動制御部22は、さらに、トリガ10HTが押下されたことを検出する信号を受信し、これに基づいてモータの制御動作を開始可能に構成されている。くわえて駆動制御部22は、サーミスタから電動工具(鉄筋結束機10)の温度を示す信号を受信し、これに基づいて送りモータ12Mを制御するように構成されてよい。例えば駆動制御部22は、電動工具が相対的に高温の場合と、低温の場合で、異なる制御信号を生成してモータ制御部24に供給してもよい。
【0032】
駆動制御部22は、集積回路(IC)により実現される単一、又は、複数個のプロセッサと、このプロセッサにより実行され、本実施形態に記載される各処理を実行するコンピュータ命令を含むファームウェアを格納するメモリ(非一時的(Non-transitory)に情報を記憶する不揮発性半導体メモリを含む)から構成されてよい。駆動制御部22は、ASIC、FPGA、マイクロコントローラ等と呼ばれるICから実現される場合もある。なお、駆動制御部22は工具制御部の一部としても機能する。
モータ制御部24は、駆動制御部22により生成された制御信号に基づいて送りモータ12Mの固定子に流す電流を制御する。例えばモータ制御部24は、正極の電源線と、負極となるグランド(基準電位)の電源線との間に三相ブリッジ接続された複数個(例えば6個)の半導体素子と、各半導体素子のゲート(又はベース)にゲート信号(又はベース信号)を生成して供給するためのドライバ回路を備えてよい。
【0033】
なお本実施形態における電動機である送りモータ12Mは、例えば、モータ制御部24の三相の出力に接続された三相の巻線から構成される固定子と、固定子の巻線に電流が流れることによって生じる回転磁界に従って正方向及び逆方向のいずれの方向にも回転可能に構成された回転子とを備える。送りモータ12Mはさらに回転子の位置を検出するための例えばホール素子を備え、駆動制御部22は、ホール素子からの位置信号を受信し、これに基づいて制御信号を生成可能に構成されてよい。
【0034】
電源装置40は、同様に、結束モータ18Mについても結束モータ18Mを制御するための制御信号を生成し結束モータ18Mのモータ制御部26に供給する駆動制御部と、この駆動制御部により生成された制御信号に基づいて結束モータ18Mの固定子に流す電流を制御するモータ制御部26を備える(詳細な説明を省略する)。なお結束モータ18Mの駆動制御部と送りモータ12Mの駆動制御部22は同一の半導体チップ内に設けられるように構成されてもよい。
【0035】
電源装置40はさらに、少なくとも第1電力制御部41PC、駆動制御部22、モータ制御部24及びモータ制御部26が搭載される第1配線基板41PCBを備える。第1配線基板41PCBには、後述する第2配線基板42PCBとケーブル40CBを介して接続するための第1接続部41CN(「第1コネクタ」の一例)が設けられる。
図3に示されるとおり、第1電圧線41は、バッテリ接続部40CNと第1電力制御部41PCを接続する第1配線部41Aと、この第1配線部41Aから分岐して第1接続部41CNに接続する第2配線部41Bを備える。さらに電源装置40は、第1電力制御部41PCによって生成される第1動作電圧(3.3V)が印加可能に構成され、第1電力制御部41PCと第1接続部41CNとを接続する第2電圧線42を備える。なお
図3において第1配線基板41PCBは、概念的に描かれているが実際の第1配線基板41PCBは平行な2つの長辺と長辺の端部同士を接続する平行な2つの短辺を有する矩形状に形成される。
【0036】
以上のような構成により、電動工具としての機能を実現するための電力の供給が可能となる。次いで電動工具の通信機能に関する構成について説明する。
【0037】
同じく
図3に示されるように電源装置40は、通信用の第2バッテリ42BP(「通信用バッテリ」と呼ばれる場合もある。)と、メインのバッテリ10BPから供給される第1電源電圧に基づいて通信制御部34(「第2制御部」の一例)を動作させるための第2動作電圧を供給可能に構成され、かつ、メインのバッテリ10BPが外されたとき等には第2バッテリ42BPから供給される第2電源電圧に基づいて通信制御部34を動作させるための第2動作電圧を供給可能に構成される第2電力制御部42PC(「第2電圧供給部」の一例)と、第2電力制御部42PCから供給される第2動作電圧に基づいて無線通信機32(「通信機32」の一例)及び位置情報取得部36を制御する通信制御部34とを備える。
【0038】
さらに電動工具は、通信部30として電動工具の位置情報を取得して通信制御部34に供給する位置情報取得部36と、外部機器と無線で情報の送受信を行うための無線通信機32とを備える。
【0039】
位置情報取得部36は、例えば、GPS(又はGLONASSその他のGNSS)の測位衛星からの信号を受信可能に構成されているアンテナと、アンテナが受信した信号に基づいて電動工具の位置情報を取得する受信回路を備えている。
【0040】
無線通信機32は、例えば、LPWA技術に基づいてライセンスバンド乃至アンライセンスバンドの周波数帯を用いて所定の規格に基づいて、遠隔にある基地局と情報を送受信可能に構成されているアンテナと、アンテナが受信したアナログ信号を復調してベースバンドICに供給し、かつ、ベースバンドICから供給された信号をアナログ信号に変調してアンテナから送信させるためのRFICと、RFICから取得した信号を規格に規定されるプロトコルに従ってデコード乃至エンコード処理して情報を送受信するベースバンドICとを備えている。なお、通信機32は、Bluetooth(登録商標)又は無線LAN等の近距離無線通信方式に対応していてもよい。
【0041】
以上のような構成により通信制御部34は、例えば、位置情報取得部36が取得した位置情報を、無線通信部30を介して送信することにより電動工具の位置情報を外部機器に提供可能に構成されている。本実施形態において、通信制御部34とRFICとベースバンドICは、同一の半導体パッケージ内に積層されてもよい。また、通信制御部34とベースバンドICは、同一の半導体チップから構成されてもよい。
【0042】
さらに電源装置40は、少なくとも第2電力制御部42PC、通信制御部34、通信機32及び位置情報取得部36が搭載される第2配線基板42PCBを備える。第2配線基板42PCBには、第1配線基板41PCBとケーブル40CBを介して接続するための第2接続部42CN(「第2コネクタ」の一例)が設けられる。
図3に示されるとおり、第1電圧線41の第1配線部41Aと第2配線部41Bとは第1配線基板41PCB上に形成される一方で、第1配線部41A及び第2配線部41Bとコネクタを介して電気的に接続される第3配線部41Cは第2配線基板42PCB上に形成される。また、第2電圧線42の第1接続部41CNと第1電力制御部41PCを接続する配線部は第1配線基板41PCB上に形成される一方で、この配線部とコネクタを介して電気的に接続されて第2電力制御部42PCに接続する配線部は第2配線基板42PCB上に形成される。
【0043】
電源装置40がさらに備える第2バッテリ42BPは、少なくとも通信制御部34、無線通信機32及び位置情報取得部36を動作させるための電力を供給する。第2バッテリ42BPは、例えば、充電可能に構成されるリチウムイオン二次電池であり、所定の定格容量、定格電圧及び定格電流を有する。例えば第2バッテリ42BPは、メインのバッテリ10BPよりも小さい定格容量を有し、定格が3.6V(「第2電源電圧」の一例)の直流電圧を供給可能に構成されている。加えて第2バッテリ42BPは、電動工具の本体部10Bを構成する筐体内に収納されているため、メインのバッテリ10BPと異なり、容易に着脱可能には設けられておらず、第2配線基板42PCBと一体的に固定されている。なお、第2バッテリ42BPは、第2配線基板42PCBと一体的に固定されなくてもよく、例えば、第2配線基板42PCBに対して着脱可能に設けられてもよい。
【0044】
第2電力制御部42PCは、バッテリ10BPから供給される電源電圧に基づいて通信制御部34及び駆動制御部22を含む各回路素子を動作させるための電圧を生成し各回路素子等に供給可能に構成される。例えば、バッテリ10BPから供給される14.4Vの電源電圧に基づいて通信制御部34を動作電圧である3.3Vの電圧(「第2動作電圧」の一例)を生成し、第2電力制御部42PCと通信制御部34とを接続する第3電圧線43によって通信制御部34に供給し、かつ、同様に所定の動作電圧を生成して位置情報取得部36及び無線通信部30に供給する。
【0045】
加えて第2電力制御部42PCは、第2バッテリ42BPから供給される第2電源電圧に相当する3.6Vの直流電圧に基づいて、各回路素子等を動作させるための動作電圧を生成し、通信制御部34及び駆動制御部22を含む各回路素子等に供給可能に構成されている。ここで第2電力制御部42PCは、アンテナを動作させるために、第2電源電圧より大きい電圧を生成可能な昇圧回路を備えている。ただし、鉄筋結束機10は昇圧回路を必ずしも備えなくてもよい。本実施形態においては、アンテナの動作電圧が第2電源電圧よりも高いため、鉄筋結束機10は、チャージポンプ回路等の昇圧回路を備えている。しかしながら、例えば、第2バッテリ42BPの電力で駆動する回路素子の動作電圧が、第2電源電圧以下となるように回路素子が選択される場合、又は、第2電源電圧が設定される場合、鉄筋結束機10は昇圧回路を必ずしも備えなくてもよい。
【0046】
以上のような構成により第2電力制御部42PCは、メインのバッテリ10BPが外されたときは、第2バッテリ42BPから供給される第2電源電圧に基づいて駆動制御部22、通信制御部34、位置情報取得部36及び無線通信部30を動作させることにより、外部機器と無線で情報の送受信を実行可能に構成されている。従って通信制御部34は、メインのバッテリ10BPが外されているときであっても、位置情報取得部36が取得した位置情報を、無線通信部30を介して送信することにより電動工具の位置情報を外部機器に提供可能に構成され、また、無線通信部30を介して受信した駆動制御部22のファームウェアを更新するための更新データを、駆動制御部22を構成する例えば不揮発性半導体メモリに格納可能に構成されている。
【0047】
さらに第2電力制御部42PCは、メインのバッテリ10BPから供給される電源電圧に基づいて第2バッテリ42BPを充電するための充電電圧を生成し、第2バッテリ42BPを充電可能に構成されている。従って本実施形態に係る電源装置40は、バッテリ10BPが取り付けられているときは、バッテリ10BPから供給される電力に基づいて、駆動制御部22、モータ制御部24及びモータ制御部26、モータ(送りモータ12M及び結束モータ18M)、通信制御部34、位置情報取得部36及び無線通信部30を動作可能に、かつ、第2バッテリ42BPを充電可能に構成され、メインのバッテリ10BPが外されたときは、第2バッテリ42BPから供給される電力に基づいて駆動制御部22、通信制御部34、位置情報取得部36及び無線通信部30を動作可能に構成されている。なお上述したとおり、電圧を供給することは、電圧を生成することなくパススルーしてそのまま供給することを含むから、第2バッテリ42BPからの出力電圧が印加される配線を、直接、通信制御部34等の電源端子に接続することにより電源となる電圧を通信制御部34等に供給してもよいし、第2電力制御部42PCからの出力電圧が印加される配線を直接、駆動制御部22等の電源端子に接続することにより電源となる電圧を駆動制御部22等に供給してもよい。
【0048】
電源装置40はさらに、少なくとも第2電力制御部42PC、通信制御部34、位置情報取得部36及び無線通信部30が搭載される第2配線基板42PCBを備える。第2配線基板42PCBには、第1配線基板41PCBとケーブル40CBを介して接続するための第2接続部42CN(「第2コネクタ」の一例)が設けられる。
【0049】
図3に示されるとおり、バッテリ10BPからの電源電圧が印加される第1電圧線41は、電源スイッチ40Sを介して第1電力制御部41PCに電圧を供給するのみならず、第1配線基板41PCBの第1接続部41CN、ケーブル40CB及び第2配線基板42PCBの第2接続部42CNを介して第2電力制御部42PCに接続する配線を備えることにより、第2電力制御部42PCに電圧を供給する。
【0050】
さらに第1電力制御部41PCによって生成される第1動作電圧(3.3V)が印加される第2電圧線42は、第1配線基板41PCBの接続部、ケーブル40CB及び第2配線基板42PCBの接続部を介して第2電力制御部42PC及び通信制御部34に接続される配線部を備えることにより、メインのバッテリ10BPが取り付けられているときは、第1電力制御部41PCから第2電力制御部42PCに向かう方向に電力(電圧及び電流)を供給可能に構成される一方で、メインのバッテリ10BPが外されたときには、第2電力制御部42PCから第1電力制御部41PCに向かう方向に電力(電圧及び電流)を供給可能に構成されている。
【0051】
ここで第1電圧線41のうち、第2配線基板42PCBに設けられる第3配線部41Cには、第1電力制御部41PCから第2電力制御部42PCへ電流が流れることを許可可能であって、かつ、第2電力制御部42PCから第1電力制御部41PCへ電流が流れることを防止可能に構成される回路として、例えば、アノードが第1電力制御部41PC側に接続されカソードが第2電力制御部42PCに接続されるダイオード(「逆流防止回路」の一例)が設けられている。なお、逆流防止回路は、第1電圧線41のうち、第1配線基板41PCBに設けられる第2配線部41Bに設けられてもよい。
【0052】
逆流防止回路を設けることにより、第2バッテリ42BPから第2電力制御部42PCを介して第1電力制御部41PCに流れることを抑制することが可能となったので、メインのバッテリ10BPと第2バッテリ42BPとを有効に利用することが可能となる。
【0053】
なお、第2電圧線42は、第1電力制御部41PC(第1電圧供給部)から第2電力制御部42PC(第2電圧供給部)へ電流が流れることを許可可能であって、かつ、第2電力制御部42PC(第2電圧供給部)から第1電力制御部41PC(第1電圧供給部)へ電流が流れることを許可可能に構成されることが好ましい。
【0054】
このような構成により、通信基板である第2配線基板42PCB、第2コネクタ、第1コネクタ、第1電力制御部41PCを接続する第2電圧線42を介して、第1配線基板41PCBの駆動制御部22の電源端子に電力(電圧)を供給することが可能となる。
【0055】
このためメインのバッテリ10BPが取り外されているときに、駆動制御部22を動作させることが可能となる。例えば駆動制御部22は、制御プログラムであるファームウェアの更新等を実行することが可能となる。したがって作業者は、駆動制御部22のファームウェアの更新等のために作業を中断しなければならない事態を抑制できるから、作業効率を向上することが可能となる。
【0056】
なお、第2電圧線42は、第1電力制御部41PCを介さず直接に、第1コネクタと第1配線基板41PCBの駆動制御部22の電源端子とを接続するように設けてもよい。
加えて本実施形態に係る電源装置40は、(第1電圧線41の一部を構成する配線及び第2電圧線42の一部を構成する配線を含む)ケーブル40CBを介して第1配線基板41PCBと第2配線基板42PCBとを接続する構成を備えている。このため、第1配線基板41PCBと第2配線基板42PCBとを異なる位置に配置することも可能となる。例えば、第1配線基板41PCBを結束モータ18Mの上方Z1に、基板が上下方向Zと略垂直となるように配置し、第2配線基板42PCBを結束モータ18Mの左右方向Y(例えば右方Y1)に、基板が左右方向Yと略垂直となるように配置してもよい。このような構成により2つの配線基板を互いに略垂直な状態でモータ(結束モータ18M又は送りモータ12Mの一方)を包囲するように配置することが可能となる。ここでモータ(例えば結束モータ18M)の回転軸(例えば結束モータ18Mの回転軸AX)と第1配線基板41PCBとの距離よりも、モータの回転軸と第2配線基板42PCBとの距離が大きくなるように2つの配線基板を配置してもよい。このような構成により、第1配線基板41PCBと比較して、第2配線基板42PCBをモータから離れた位置に配置することが可能となるからモータの回転に伴うノイズにより通信に悪影響を及ぼす可能性を低減し、第2配線基板42PCBと比較して、第1配線基板41PCBをモータに近接した位置に配置することが可能となるから、モータ制御部24(又はモータ制御部26)とモータの固定子との距離を小さくすることが可能となる。
【0057】
さらに電源装置は、電動工具10の電動機である送りモータ12M及び結束モータ18Mを制御するために第1配線基板41PCBに搭載された駆動制御部22と、通信機32を制御するために第2配線基板42PCBに搭載された通信制御部34とを備えている。このような構成により電動工具は、駆動制御部22が電動機を制御しながら、同時かつ並列的に、通信制御部34が無線通信を行うことが可能となる。このため通信制御部34は、リアルタイムに、電動工具の稼働情報及び位置情報等を外部機器に提供することが可能である。また、通信制御部34の通信により、駆動制御部22による電動機の制御が妨げられることもない。
【0058】
本出願の発明者らは、駆動制御部22と通信制御部34とを別チップとして設けることにより、通信制御部34が制御不能となる可能性がある点に着目した。
【0059】
すなわち通信制御部34は、メインのバッテリ10BPが外された場合であっても第2バッテリ42BPから供給される第2電源電圧に基づいて動作可能に構成されており、かつ、第2バッテリ42BPはメインのバッテリ10BPが取り付けられているときに充電可能に構成されているため、通信制御部34は、常に動作可能に構成されている。このためたとえ通信制御部34が制御不能状態に陥った場合であっても、電源スイッチ40のオンまたはオフに伴って通信制御部34をリセットすることができない。
【0060】
そこで本出願の通信制御部34は、所定条件が満足された際に、能動的にリセット動作を実行するように構成されている。
【0061】
具体的には、駆動制御部22は、通信制御部34に所定の信号を送信可能に構成され、通信制御部34は、駆動制御部22から所定の信号を受信すると、所定の信号に対する所定の応答信号を駆動制御部22に送信可能に構成されている。さらに駆動制御部22は、通信制御部34に所定の信号を送信した後に、所定期間内に通信制御部34から所定の応答信号を受信しなかった場合に、通信制御部34にリセット動作を実行させるためのリセット信号を送信するように構成されている。
【0062】
このような構成により、駆動制御部22が所定の信号に対する応答信号を通信制御部34から受信しないことに基づいて、通信制御部34が制御不能状態に陥ったことを判断することが可能となる。また、駆動制御部22が制御不能状態に陥った通信制御部34にリセット信号を送信することにより、通信制御部34はリセット動作を実行することが可能となる。
【0063】
[鉄筋結束機の動作]
以下、鉄筋結束機10の動作について説明する。なお上述したように本実施形態は、鉄筋結束機10以外の電動工具に適用可能である。
【0064】
図4は、鉄筋結束機10のリセット動作を示すフローチャートである。
まず駆動制御部22は、メインのバッテリ10BPから電源が供給されているか否か判断する(ステップS10)。作業者がメインのバッテリ10BPをハンドル10Hの下端に取り付け主電源スイッチをオンにしている場合、駆動制御部22は、メインのバッテリ10BPから電源が供給されていると判断する(YES)。鉄筋結束機10は作業を実行可能な状態にある。この状態において所定条件が満足されると、駆動制御部22は通信制御部34とハンドシェイクを実行可能に構成されている(ステップS12)。
【0065】
鉄筋結束機10は作業を実行可能な状態において、第1電圧線41には第1バッテリからの直流電圧が印加されるから、第1電圧線41は14.4Vである。この状態で作業者がトリガ10HTを押下すると、駆動制御部22は、モータ(結束モータ18M及び送りモータ12M)の駆動制御を開始する。
【0066】
鉄筋結束機10は作業を実行可能な状態において、メインのバッテリ10BPは、同時に、通信部30へ電力を供給する。具体的には、第1電力供給部は、バッテリ10BPから供給される第1電源電圧に相当する14.4Vの直流電圧に基づいて通信制御部34の動作電圧である3.3Vを生成し、第2電圧線42を介して、通信制御部34に供給可能に構成されている。したがって通信制御部34は、通信機32の制御を開始する。例えば、通信制御部34は、位置情報取得部36が取得した位置情報を、通信機32のアンテナから送信することにより鉄筋結束機10の位置情報を外部機器に送信し、また、駆動制御部22から受信した鉄筋結束機10の稼働情報を外部機器に送信する。
【0067】
このように鉄筋結束機10は、並列して、電動機の駆動制御と通信機の制御とを実行可能に構成されている。このとき、駆動制御部22と通信制御部34は、異なる配線基板に搭載されることにより、互いに離間しているから、電動機の回転に伴うノイズ等の影響が抑制された状態で、通信機32は通信を行うことが可能となる。
【0068】
一方で、作業が終了すると作業者は、メインのバッテリ10BPをハンドル10Hの下端から取り外す又は電源スイッチ40をオフする。メインのバッテリ10BPが取り外されているとき、又は、電源スイッチ40Sがオフされているとき、鉄筋結束機10の電動機(送りモータ12M及び結束モータ18M)は動作せず非動作の状態にある。このとき駆動制御部22は、メインのバッテリ10BPから電源が供給されていないと判断し(NO)、次いでサブの第2バッテリ42BPから電源が供給されているか否か判断する(ステップS14)。駆動制御部22がサブの第2バッテリ42BPから電源が供給されていると判断すると(YES)、鉄筋結束機10の通信機32はサブの第2バッテリ42BPを電源として通信可能な状態にある。この状態において所定条件が満足されると、駆動制御部22は通信制御部34とハンドシェイクを実行可能に構成されている(ステップS12)。
すなわち駆動制御部22は、鉄筋結束機10が作業可能であってメインのバッテリ10BPから電源が供給されている状態においても、鉄筋結束機10が通信可能であってサブの第2バッテリ42BPから電源が供給されている状態においても、所定条件が満足されたときに、リセット動作を実行可能に構成されている。
一方で、駆動制御部22がサブの第2バッテリ42BPから電源が供給されていないと判断すると(NO)、リセット信号が送信されないように構成されている(ステップS16)。
【0069】
次いでリセット動作の要否を判断するためのシェイクハンド動作が開始する。具体的には、第2電力制御部42PCは、バッテリ10BP(作業可能状態)又は第2バッテリ42BP(通信可能状態)から供給される第1電源電圧(作業可能状態)又は第2電源電圧(通信可能状態)に基づいて、第2電圧線42に駆動制御部22の動作電圧(3.3V)を印加し、駆動制御部22に電力を供給する(ステップS20)。同時に第2電力制御部42PCは、バッテリ10BP(作業可能状態)又は第2バッテリ42BP(通信可能状態)から供給される第1電源電圧(作業可能状態)又は第2電源電圧(通信可能状態)に基づいて、第3電圧線43に通信制御部34の動作電圧(3.3V)を印加し、同様に第2電力制御部42PCは、通信部30のアンテナ等の各回路素子等を動作させるための動作電圧を生成し、通信制御部34及び駆動制御部22を含む各回路素子等に供給する。通信可能状態であっても、第2バッテリ42BPから第1配線基板41PCB上の回路素子である駆動制御部22に電力が供給されるから、駆動制御部22は、通信部30と共に、動作可能に構成されている。鉄筋結束機10は、例えば所定時刻になったとき(「所定条件満足時」の一例)に、リセット動作の要否を判断するためのシェイクハンド動作を実行するように構成されてよい。
【0070】
次いで駆動制御部22は、通信制御部34に所定の信号を送信する。そして駆動制御部22は、通信制御部34から所定時間内に所定の応答信号を受信したか否か判断する(ステップS18)。
【0071】
駆動制御部22が通信制御部34から所定時間内に所定の応答信号を受信した場合(YES)、通信制御部34が制御不能状態に陥っていないと判断されるため、シェイクハンド動作は終了する(ステップS20)。その後、通信制御部34は通信を開始するように構成されてもよい。
【0072】
一方で、駆動制御部22が通信制御部34から所定時間内に所定の応答信号を受信しなかった場合(NO)、通信制御部34が制御不能状態に陥ったと判断されるため、駆動制御部22は、通信制御部34にリセット動作を実行させるためのリセットコマンドを送信する(ステップS22)。
【0073】
通信制御部34は、リセットコマンドを受信し、リセット動作を実行する(ステップS24)。
【0074】
以上のとおりであるから本実施形態によれば、ノイズの影響を受けにくく、リアルタイムに通信することが可能となる電動工具用電源装置及び電動工具を提供することが可能となる。
【0075】
また、通信制御部が意図せずに制御不能状態に陥ることを抑制することが可能となる。さらに、メインとなるバッテリが外された後に、サブとなるバッテリを用いてリセット動作の要否を判断するための動作(例えばシェイクハンド動作)を実行するように構成したので、作業者による作業を妨げることがない。
【0076】
なお本実施形態は種々変形可能である。例えば、以下の条件の少なくとも1つがさらに満足されているときに、通信制御部34は、リセット動作を実行するように構成されてよい。
【0077】
条件1は、電動工具の作業回数(例えば、結束回数)又はトリガ(例えば、トリガ10HT)を押下した回数が所定の閾値以上であること、である。例えば駆動制御部22は、鉄筋結束機10による結束回数又はトリガを押下した回数の少なくとも一方をカウント可能に構成されており、結束回数又は押下回数が所定の閾値以上のときに、通信制御部34にリセットコマンドを送信可能に構成されてよい。
【0078】
条件2は、トリガ(例えば、トリガ10HT)が押下されていないこと、である。駆動制御部22は、トリガ10HTが押下されていないとき(トリガ10HTが押下された後の所定時間内を含む)に、通信制御部34にリセットコマンドを送信可能に構成されてよい。
【0079】
条件3は、メモリに格納されている電動工具の稼働情報のデータ数又はデータ量が所定の閾値以上であること、である。上述したとおり駆動制御部22は、揮発性又は不揮発性のメモリを備えている。そこで駆動制御部22は、メモリに格納されている電動工具の稼働情報のデータ数又はデータ量が所定の閾値以上のときに、通信制御部34にリセットコマンドを送信可能に構成されてよい。
【0080】
条件4は、電動工具が使用する消耗品(例えば、ワイヤ)が全て又は一部使用されたこと、である。例えば駆動制御部22は、鉄筋結束機10に搭載される消耗品の量(ワイヤWの残量)を検出可能に構成されており、駆動制御部22は、消耗品が全て使用されたときに、通信制御部34にリセットコマンドを送信可能に構成されてよい。
【0081】
条件5は、電動工具の動作エラーが生じたこと、である。例えば、鉄筋結束機10は、カールガイド14A又は誘導ガイド14Bにより所望の巻き癖が付けられないエラーを検出可能に構成されている。そこで例えば駆動制御部22は、動作エラーを検出したときに、通信制御部34にリセットコマンドを送信可能に構成されてよい。
【0082】
条件6は、電動工具の動作条件が変更されたこと、である。例えば、鉄筋結束機10は、結束力を変更するためのトルク調整部を備えている。そこで例えば駆動制御部22は、電動工具の動作条件が変更されたとき(トルク調整により結束力が変更されたとき)に、通信制御部34にリセットコマンドを送信可能に構成されてよい。
【0083】
条件7は、電動工具が一定時間動作されないことにより電源がオフされていること、である。例えば鉄筋結束機10は、一定時間動作されないときに、電源スイッチ40Sが自動的にオフとなるように構成されてよい。このとき、駆動制御部22は、電動工具が一定時間動作されないことにより電源がオフされているときに、通信制御部34にリセットコマンドを送信可能に構成されてよい。
【0084】
条件8は、メインのバッテリ10BPが電力を供給しないこと、である。駆動制御部22は、メインのバッテリ10BPが取り外されているとき、又は、取り付けられているが電力量が残存していないために電力を供給しないときに、通信制御部34にリセットコマンドを送信可能に構成されてよい。
【0085】
[変形例1]
以下上記実施形態の変形例について説明する。なお上記実施形態と同一又は同様の構成又は機能を発揮する要素ならびに効果については、同様の符号又は名称を付して適宜説明を省略乃至簡略化し異なる部分を中心に説明する。上記実施形態及びこれら変形例をさらに当業者の通常の創作能力の発揮内で変更することも可能である。
【0086】
上記実施形態においては、通信制御部34は、駆動制御部22からリセットコマンドを受信することにより、リセット動作を実行可能に構成されていた。本変形例に係る電動工具の通信機32は外部機器が送信したリセットコマンドを受信し、通信制御部34は通信機32が受信したリセットコマンドに基づいてリセット動作を実行可能に構成されている。
【0087】
例えば外部機器は、作業が行われない時刻(例えば午前2時)に電動工具にリセットコマンドを送信するように構成されてよい。通信機32は、メインとなるバッテリが外された後に外部機器からリセットコマンドを受信し、通信制御部34は通信機32が受信したリセットコマンドに基づいてリセット動作を実行可能に構成されてよい。
【0088】
以上のような構成によっても、通信制御部が意図せずに制御不能状態に陥ることを抑制することが可能となる。また、通信機32は、作業が行われない時刻にリセットコマンドを受信するように構成されているから、作業者による作業を妨げることがない。
【0089】
[変形例2]
本変形例に係る電動工具は、リセットボタン及びリセット回路を備えている。作業者がリセットボタンを押下すると、リセット回路は駆動制御部22及び通信制御部34にそれぞれリセットコマンドを送信し、駆動制御部22及び通信制御部34はリセット回路からそれぞれリセットコマンドを受信し、リセット動作を実行可能に構成されている。
【0090】
以上のような構成によっても、通信制御部が意図せずに制御不能状態に陥ることを抑制することが可能となる。また、確実にリセット動作を実行することが可能である。なお本変形例の構成を他の実施形態及び変形例の構成と併用して電動工具に適用してもよい。
【0091】
[変形例3]
本変形例に係る電動工具は、通信用のバッテリ46BPと第2電力制御部42PCとを接続する電源線に設けられた第2の電源スイッチを備える。また、通信制御部34は、パワーオンリセット回路(POR回路)を内蔵している。
【0092】
この電動工具においてリセット動作を実行する場合、第2の電源スイッチは、通信用のバッテリ46BPから、第2電力制御部42PCへの電力供給(「第2電源電圧の供給」の一例)を遮断するように構成されている。通信制御部34のPOR回路は、電力供給が遮断されることにより、リセット動作を実行するように構成されている。
【0093】
以上の実施形態及び変形例において、第1制御部である駆動制御部22がリセット動作を実行する条件及びタイミングと、第2制御部である通信制御部34がリセット動作を実行する条件及びタイミングは異なっていてよい。
【0094】
例えば、駆動制御部22がリセット動作を実行するときに、通信制御部34はリセット動作を実行しないように構成されてよい。一方で、通信制御部34がリセット動作を実行するときに、駆動制御部22はリセット動作を実行しないように構成されてよい。
【0095】
例えば、駆動制御部22は、バッテリ46BPが取り付けられて電力の供給が開始したときに、内蔵するPOR回路によりリセット動作を実行する一方で、このときに既に電力が供給されていた通信制御部34はリセット動作を実行しないように構成されてよい。また、第1実施形態のハンドシェイクの実施時に、通信制御部34はリセット動作を実行する一方で、このとき駆動制御部22はリセット動作を実行しないように構成されてよい。
【0096】
その他本発明は種々変形可能である。例えば、一定の時刻になるたびにリセット動作を実行可能に構成されてもよい。また、前記のリセット動作を実行してから所定時間経過したときにリセット動作を実行可能に構成されてもよい。また、通信制御部34は、電力の供給元が、バッテリ46Bからバッテリ10BPに切り替わったタイミングで、又は、バッテリ10BPからバッテリ46Bに切り替わったタイミングで実行するように構成されてよい。
【0097】
例えば、電力供給元が切り替わるタイミングで所定時間電力供給が遮断されるように構成するとともに、通信制御部34のPOR回路を内蔵することにより、電力の供給元が切り替わったタイミングでリセット動作が実行されるように構成されてもよい。
【0098】
なお本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。たとえば、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素に、他の知られた要素技術を追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の知られた要素技術と置換することができる。例えば、駆動制御部と通信制御部は異なる電圧で動作可能である。
【符号の説明】
【0099】
10 鉄筋結束機(電動工具)
10H ハンドル
10HT トリガ
10M マガジン
10B 本体部
10BP バッテリ(バッテリパック、第1バッテリ)
12 ワイヤ送り部
12G ギア
12M 送りモータ
14 カール形成部
14A カールガイド
14B 誘導ガイド
16 切断部
16A 伝達機構
18 結束部
18H フック
18M 結束モータ(電動機)
22 駆動制御部(第1制御部)
24 モータ制御部
26 モータ制御部
30 通信部
32 通信機
34 通信制御部(第2制御部)
36 位置情報取得部
40 電源装置
40CB ケーブル
40CN バッテリ接続部
40D ダイオード(逆流防止回路)
40S 電源スイッチ
41 第1電圧線
41A 第1配線部
41B 第2配線部
41C 第3配線部
41PCB 第1配線基板
41PC 第1電力制御部(第1電圧供給部)
41CN 第1接続部(第1コネクタ)
42 第2電圧線
42PC 第2電力制御部(第2電圧供給部)
42CN 第2接続部(第2コネクタ)
43 第3電圧線
42PCB 第2配線基板
42BP 第2バッテリ
RL リール
W ワイヤ
RB 鉄筋