(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155045
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20231013BHJP
H02P 5/46 20060101ALI20231013BHJP
B25B 25/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B25F5/00 G
H02P5/46 C
B25B25/00 A
B25F5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064775
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】板垣 修
【テーマコード(参考)】
3C031
3C064
5H572
【Fターム(参考)】
3C031BB01
3C064AA02
3C064AA03
3C064AA06
3C064AA08
3C064AA09
3C064AA10
3C064AA20
3C064AB03
3C064AC02
3C064BA01
3C064BA02
3C064BA06
3C064BA08
3C064BA37
3C064BB01
3C064BB02
3C064BB11
3C064BB48
3C064BB71
3C064BB89
3C064CA03
3C064CA07
3C064CA26
3C064CA31
3C064CA53
3C064CB17
3C064CB52
3C064CB62
3C064CB73
3C064CB75
3C064CB95
3C064EA01
5H572AA20
5H572BB03
5H572CC04
5H572CC08
5H572DD02
5H572EE04
5H572HB07
5H572HB18
5H572HC07
5H572JJ03
5H572LL32
5H572LL37
(57)【要約】
【課題】無線の通信機と複数の電動機を搭載可能な電動工具において、バッテリの重量及び電動工具の高さを抑制可能な電動工具を提供すること。
【解決手段】本開示に係る電動工具は、第1の電動機及び第2の電動機と、前記第1及び第2の電動機を制御するための第1制御部と、前記第1制御部が搭載された第1配線基板と、前記電動機と同時に動作可能に構成された通信機と、前記通信機を制御するための第2制御部と、前記第2制御部及び前記通信機のアンテナが搭載された第2配線基板と、前記電動機、前記第1配線基板、前記通信機及び前記第2配線基板を収容する筐体とを備え、前記第1の電動機の周囲に前記第1配線基板と、前記第2配線基板とを配置した。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電動機及び第2の電動機と、
前記第1及び第2の電動機を制御するための第1制御部と、
前記第1制御部が搭載された第1配線基板と、
通信機と、
前記通信機を制御するための第2制御部と、
前記第2制御部及び前記通信機のアンテナが搭載された第2配線基板と、
前記第1及び第2の電動機、前記第1配線基板、前記通信機及び前記第2配線基板を収容する筐体とを備える電動工具において、
前記第1の電動機の周囲に前記第1配線基板と、前記第2配線基板とを配置した電動工具。
【請求項2】
前記第1配線基板又は前記第2配線基板は、
第1方向に延伸する第1辺と、
前記第1方向と垂直な第2方向に延伸する第2辺とを備え、
前記第2配線基板は、前記筐体内の領域のうち、前記第1方向及び前記第2方向と垂直な第3方向の端部に配置されている
請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記アンテナは、
前記第1方向に延伸する第1アンテナと、
前記第1方向と垂直な前記第2方向に延伸する第2アンテナとを備える請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
ワイヤを収容するためのマガジンをさらに備え、
前記第1の電動機は、前記ワイヤを結束する結束部を駆動させる電動機であり、
前記第2の電動機は、前記ワイヤを前記第1方向の前方の端部から外方に送り出すための電動機であり、
前記電動工具は、前記ワイヤを用いて鉄筋を結束可能に構成された鉄筋結束機である請求項2に記載の電動工具。
【請求項5】
前記第1配線基板は、前記第2方向に略垂直に配置され、
前記第2配線基板は、前記第3方向に略垂直に配置されている請求項2に記載の電動工具。
【請求項6】
前記第1配線基板又は前記第2配線基板は、前記第2の電動機に対して前記第1方向の後方に離間した位置に配置されている請求項2に記載の電動工具。
【請求項7】
前記筐体は、
前記第2の電動機の少なくとも一部を覆い、少なくとも一部が前記第2の電動機と、前記通信機及び前記第2配線基板との間に配置されている第1筐体部と、
前記第1筐体部との間の領域に、前記通信機及び前記第2配線基板を収容する第2筐体部とを備える請求項1乃至6の何れか一項に記載の電動工具。
【請求項8】
前記第2配線基板は、第1方向及び前記第1方向と垂直な第2方向と垂直な第3方向に略垂直に配置されており、
前記第1方向に第1長さを有する第1辺と、
前記第2方向に前記第1長さの半分以下の第2長さを有する第2辺とを有し、
前記第2制御部は、前記第2長さの半分以上の長さを有する少なくとも一つの辺を有し、
前記アンテナの少なくとも一部は、前記第2制御部に対して前記第1方向の後方に離間した位置に配置されている
請求項1乃至6の何れか一項に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動工具本体に無線通信機を搭載することにより利便性を向上させた電動工具が知られている。
【0003】
特許文献1には、このような無線の通信機を搭載することができる電動工具が開示されている。この電動工具は、電動機と、通信機と、着脱可能に構成されたバッテリとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の電動工具は、バッテリに通信機が設けられているため、バッテリが重くなってしまうとともに、電動工具全体の高さが嵩んでしまうという問題を有する。特に複数の電動機を搭載する電動工具は、バッテリが大容量になるため、通信機を設けることにより一層バッテリが重くなるとともに、電動工具全体の高さが大きく嵩んでしまい、操作性が悪くなるという問題も生じる。
【0006】
そこで本発明は、無線の通信機と複数の電動機を搭載可能な電動工具において、バッテリの重量及び電動工具の高さを抑制可能な電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、電動工具を開示する。この電動工具は、第1の電動機及び第2の電動機と、前記第1及び第2の電動機を制御するための第1制御部と、前記第1制御部が搭載された第1配線基板と、通信機と、前記通信機を制御するための第2制御部と、前記第2制御部及び前記通信機のアンテナが搭載された第2配線基板と、前記電動機、前記第1配線基板、前記通信機及び前記第2配線基板を収容する筐体とを備える。そして、前記第1の電動機の周囲に前記第1配線基板と、前記第2配線基板とを配置した。
ここで通信機は、無線により外部機器との情報の送受信を実行可能に構成された通信部を備えてよい。
本発明の「電動工具」は、動力源として電気を利用する、機械加工その他の工作に用いる道具のことをいい、本発明の「電動工具」は、単体で使用される製品の他、他の装置の一部を構成する部品乃至モジュールを含む。例えば本発明の「電動工具」は、ロボットアーム等の設備機器に取り付けられるモジュールであってもよい。また本発明の「電動工具」は、複数の機能を有する工作機械の一部を構成する部品であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電動工具の斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る電動工具の断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る電動工具の電気回路構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る電動工具の平面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る電動工具の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る電動工具の通信機を搭載する配線基板を含む構成の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。
【0010】
なお、便宜上、
図2における紙面左右方向を前後方向X(「第1方向」の一例)、特に紙面左方向を前方X1、紙面右方向を後方X2と呼び、紙面上下方向を上下方向Z(「第2方向の一例」、特に紙面上方向を上方Z1、紙面下方向を下方Z2と呼び、前後方向X及び上下方向Zに垂直な方向を左右方向Y(「第3方向」の一例)、特に前方X1を向いたときに右方向を右方Y1、左方向を左方Y2と呼ぶ場合がある。これらは相対的な方向関係を説明する目的で使用され、絶対的な方向を示すものではない。
【0011】
以下、本発明を電動工具である鉄筋結束機に適用した実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係る電動工具である鉄筋結束機10の斜視図であり、
図2は鉄筋結束機10を左右方向Yに垂直な断面で電動工具を切断した断面図である。
【0012】
ただし本発明は、通信機能を有し、かつ、電動機(モータ)を用いて作業を行う電動工具に広く適用可能であり、例えば、ドリル、インパクトドライバ、ネイラ、グラインダ、レシプロソー、ポリッシャー等に適用可能である。なおモータは、ブラシレスモータでも、ブラシ付きモータでもよい。
【0013】
[電動工具の基本構成]
本実施形態に係る鉄筋結束機10は、ワイヤWを前方X1の端部から外方に送り出すことにより、二本又は三本以上の鉄筋RBを結束可能に構成されている。
【0014】
具体的には鉄筋結束機10は、作業者が把持するためのハンドル10Hと、ワイヤWを収容するためのマガジン10Mと、ワイヤWを前方X1の端部から外方に送り出すためのワイヤ送り部12と、鉄筋RBの周囲にワイヤWを巻き回すためのワイヤWの進行経路を構成するカール形成部14と、鉄筋RBに巻き付けられたワイヤWを切断するための切断部16と、鉄筋RBに巻き付けられたワイヤWを捩じるための結束部18と、ワイヤ送り部12及び結束部18がそれぞれ備える送りモータ12M(「第2の電動機」の一例)及び結束モータ18M(「第1の電動機」の一例)を制御するための駆動制御部22を含む工具制御部と、鉄筋結束機10が外部と通信するための通信機32及び通信機32を制御するための通信制御部34とを備える通信部30と、鉄筋結束機10の外面を構成し、少なくとも2つの電動機(本実施形態においては送りモータ12M及び結束モータ18M)、駆動制御部22、通信機32及び通信制御部34を収容するための筐体10Cとを備える。
【0015】
本実施形態の鉄筋結束機10においてカール形成部14、切断部16、結束部18、工具制御部及び通信部30は、鉄筋結束機10の本体部10Bを構成する。マガジン10Mは、本体部10Bの前方X1の下部から下方Z2に延在して設けられる。ハンドル10Hは、本体部10Bの後方X2の下部から下方Z2に延在して設けられる。よってマガジン10Mは、ハンドル10Hに対して前方X1に設けられ、ハンドル10Hは、マガジン10Mに対して後方X2に設けられる。さらにマガジン10Mの下部とハンドル10Hの下部とは接続されている。以下、各構成について説明する。
【0016】
鉄筋結束機10は、本体部10Bから下方Z2に延在するハンドル10Hを備える。ハンドル10Hは、作業者が鉄筋結束機10を把持する部分に相当する。ハンドル10Hの下端は、メインのバッテリ10BPが着脱可能に取り付け可能に形成されている。ハンドル10Hの前方X1を向いた面には、トリガ10HTが設けられる。鉄筋結束機10は、作業者がトリガ10HTを後方X2に押下すると後述するように工具制御部が制御動作を開始し、結束作業が始まるように構成されている。
【0017】
マガジン10Mは、線状のワイヤWが巻回されたリールRLを回転可能、かつ、着脱可能に収納する。ここでリールRLは、1本、または、複数本のワイヤWを同時に送り出し可能に構成される。なおワイヤWは、長尺に形成された可塑性を有する金属線(被覆されたものを含む)その他の鉄筋RBを結束するために適した線状体である。
【0018】
ワイヤ送り部12は、ワイヤWを挟んだ状態で互いに異なる方向に回転することによりワイヤWを進行可能に構成される一対のギア12Gと、ギア12Gを駆動する送りモータ12Mとを備えている。送りモータ12Mは回転子と固定子とを備えている。ワイヤ送り部12は、送りモータ12Mの回転子を正方向に回転させることによりワイヤWを外方に送り出すとともに、逆方向に回転させることにより、ワイヤWを引き戻し可能に構成されている。ワイヤ送り部12の送りモータ12Mを制御する工具制御部については後述する。
【0019】
カール形成部14は、ワイヤ送り部12により送られるワイヤWを湾曲させて巻き癖をつけるカールガイド14Aと、カールガイド14Aにより巻き癖を付けられたワイヤWを結束部18に誘導するための誘導ガイド14Bとを備える。カールガイド14Aは、内壁面に沿ってワイヤWを進行させることによりループ状にワイヤWを湾曲可能に構成されている。このため、カールガイド14Aと誘導ガイド14Bとの間の空間に複数の鉄筋RBが左右方向Yに延伸するように配置された状態でワイヤWを送り出すことにより、ワイヤWを鉄筋RBの周囲に巻き回させることが可能となる。
【0020】
切断部16は、固定刃と、固定刃との協働でワイヤWを切断する可動刃と、結束部18の動作を可動刃に伝達する伝達機構16Aを備える。切断部16は、固定刃を支点軸とした可動刃の回転動作でワイヤWを切断可能に構成されている。伝達機構16Aは、結束部18の動作を可動刃に伝達し、結束部18による結束動作と連動して可動刃部を回転させるように構成されている。このため、伝達機構16Aは、結束部18の動作と連動して可動刃を回転動作させることにより、後述するように所定のタイミングにおいてワイヤWを切断可能に構成されている。
【0021】
結束部18は、ワイヤWを挟持するために開閉可能に構成された一対のフック18Hと、一対のフック18Hを、前後方向Xを回転軸として回転させるための回転シャフトと、回転シャフトを回転軸方向(前後方向X)に移動させ、かつ、前方X1に移動した回転シャフトを回転させるための減速機及び回転軸AXを基準に回転可能に構成された結束モータ18Mとを備える。
【0022】
結束部18の回転シャフトは、結束モータ18Mの正方向への回転により正回転に回転する。回転シャフトの周囲には摺動部が設けられ、摺動部は回転シャフトが正回転することで前方X1に移動可能に構成される。一対のフック18Hが開いた状態において送りモータ12Mによって送り出されたワイヤWは、カールガイド14A及び誘導ガイド14Bの内壁面に沿って湾曲しながら進行し、ワイヤWの先端が開いている一対のフック18Hの間隙を通過するように構成されている。この状態で結束モータ18Mが正方向に回転して回転シャフトが正回転に回転すると摺動部が前方X1に移動して、一対のフック18Hは閉じるように構成されている。このため一対のフック18HはワイヤWを挟持可能に構成されている。さらに結束モータ18Mが正方向に回転して回転シャフトが正方向に回転することで摺動部が前方X1に移動すると、伝達機構16Aにより可動刃が回転してワイヤWを切断する。さらに結束モータ18Mが正方向に回転すると、一対のフック18HがワイヤWを挟持した状態で、結束部18は、切断されたワイヤWの先端を折り曲げる。さらに結束モータ18Mが正方向に回転すると、回転シャフトは摺動部と共に、前後方向Xを回転軸として回転するように構成されている。一対のフック18HがワイヤWを挟持した状態で、回転シャフトが回転することにより、一対のフック18Hは、ワイヤWを捩じるように構成されている。
【0023】
[電動工具の電気回路構成]
図3は、本実施形態に係る鉄筋結束機10の電気回路構成を示すブロック図である。鉄筋結束機10の電気回路構成のうち、送りモータ12Mを制御するための構成と、通信機32を制御するための構成と、これら構成に電力(電圧)を供給するための構成が本実施形態の電源装置40を構成する。
【0024】
具体的には、本実施形態に係る電源装置40は、バッテリ10BP(「駆動用バッテリ」又は「第1バッテリ」と呼ばれる場合がある。)から電力(電圧)の供給を受けるためのバッテリ接続部40CNと、バッテリ接続部40CNから供給される電力(電圧)の供給をオン乃至オフするための電源スイッチ40Sと、電源スイッチ40Sを介してバッテリ10BPから電力(電圧)の供給を受け、バッテリ10BPから供給される第1電源電圧に基づいて、駆動制御部22(「第1制御部」の一例)を動作させるための第1動作電圧を供給する第1電力制御部41PC(「第1電圧供給部」の一例)と、第1動作電圧に基づいて動作して、送りモータ12Mを制御するための制御信号を生成する駆動制御部22と、駆動制御部22により生成された制御信号に基づいて送りモータ12Mの固定子に流す電流を制御するモータ制御部24とを備える。
【0025】
バッテリ10BPは、少なくとも駆動制御部22、モータ制御部24、送りモータ12M及び結束モータ18M、後述する通信制御部34、無線通信機32及び位置情報取得部36を動作させるための電力を供給可能に構成される。バッテリ10BPは、例えば、充電可能に構成されるリチウムイオン二次電池であり、所定の定格容量、定格電圧及び定格電流を有する。例えばバッテリ10BPは、5.0Ahの定格容量を有し、定格が14.4Vの直流電圧を供給可能に構成されている。ただし後述するように、バッテリ10BPから供給される直流電圧は、バッテリ10BPの電力消費に伴って次第に低下する。
【0026】
バッテリ接続部40CNは、バッテリ10BPから直流電圧の供給を受けて、第1電力制御部41PCに供給する。電源装置40は、バッテリ接続部40CNと第1電力制御部41PCとを接続する第1電圧線41を備え、バッテリ10BPから供給される直流の第1電源電圧は、この第1電圧線41に印加される。
【0027】
電源スイッチ40Sは、鉄筋結束機10の主電源スイッチ(不図示)の操作に従って、バッテリ接続部40CNを介してバッテリ10BPから第1電力制御部41PCに供給される電力(電圧)の供給をオン乃至オフする。したがって作業者が主電源スイッチをオフにすると、電源スイッチ40Sはバッテリ10BPから第1電力制御部41PCへの電力(電圧)の供給を遮断(オフ)し、オンにすると、電源スイッチ40Sはバッテリ10BPから第1電力制御部41PCへの電力(電圧)の供給を許可(オン)する。
【0028】
第1電力制御部41PCは、バッテリ10BPから供給される第1電源電圧に基づいて駆動制御部22を含む各回路素子を動作させるための電圧を生成し各回路素子等に供給する。例えば、バッテリ10BPから供給される14.4Vの第1電源電圧に基づいて駆動制御部22の動作電圧である3.3Vの電圧(「第1動作電圧」の一例)を生成し駆動制御部22に供給し、また、第1電源電圧(14.4V)をそのままモータ制御部24、モータ制御部26及び各モータの固定子に供給可能に構成される。ここで、電圧を供給することは、電圧を生成して供給することと、電圧を生成することなくパススルーしてそのまま供給することを含む。第1電力制御部41PCは、第1動作電圧より大きく第1電源電圧より小さい中間電圧をさらに生成し、異なる回路素子に供給可能に構成されている。なお、第1電力制御部41PCは、第1電源電圧より大きい電圧を生成し、異なる回路素子に供給可能な昇圧回路を備えてもよい。
【0029】
駆動制御部22は、例えば3.3Vの電圧に基づいて動作して、送りモータ12Mを制御するための制御信号を生成し、モータ制御部24に供給する。また駆動制御部22は、鉄筋結束機10の他のアクチュエータ等を制御可能に構成されている。さらに駆動制御部22は、第1電力制御部41PCから供給された第1電源電圧をモータ制御部24(の例えば正極電源線)に供給する。駆動制御部22は、さらに、トリガ10HTが押下されたことを検出する信号を受信し、これに基づいてモータの制御動作を開始可能に構成されている。くわえて駆動制御部22は、サーミスタから電動工具(鉄筋結束機10)の温度を示す信号を受信し、これに基づいて送りモータ12Mを制御するように構成されてよい。例えば駆動制御部22は、電動工具が相対的に高温の場合と、低温の場合で、異なる制御信号を生成してモータ制御部24に供給してもよい。
【0030】
駆動制御部22は、集積回路(IC)により実現される単一、又は、複数個のプロセッサと、このプロセッサにより実行され、本実施形態に記載される各処理を実行するコンピュータ命令を含むファームウェアを格納するメモリ(非一時的(Non-transitory)に情報を記憶する不揮発性半導体メモリを含む)から構成されてよい。駆動制御部22は、ASIC、FPGA、マイクロコントローラ等と呼ばれるICから実現される場合もある。なお、駆動制御部22は工具制御部の一部としても機能する。
モータ制御部24は、駆動制御部22により生成された制御信号に基づいて送りモータ12Mの固定子に流す電流を制御する。例えばモータ制御部24は、正極の電源線と、負極となるグランド(基準電位)の電源線との間に三相ブリッジ接続された複数個(例えば6個)の半導体素子と、各半導体素子のゲート(又はベース)にゲート信号(又はベース信号)を生成して供給するためのドライバ回路を備えてよい。
【0031】
なお本実施形態における電動機である送りモータ12Mは、例えば、モータ制御部24の三相の出力に接続された三相の巻線から構成される固定子と、固定子の巻線に電流が流れることによって生じる回転磁界に従って正方向及び逆方向のいずれの方向にも回転可能に構成された回転子とを備える。送りモータ12Mはさらに回転子の位置を検出するための例えばホール素子を備え、駆動制御部22は、ホール素子からの位置信号を受信し、これに基づいて制御信号を生成可能に構成されてよい。
【0032】
電源装置40は、同様に、結束モータ18Mについても結束モータ18Mを制御するための制御信号を生成し結束モータ18Mのモータ制御部26に供給する駆動制御部と、この駆動制御部により生成された制御信号に基づいて結束モータ18Mの固定子に流す電流を制御するモータ制御部26を備える(詳細な説明を省略する)。なお結束モータ18Mの駆動制御部と送りモータ12Mの駆動制御部22は同一の半導体チップ内に設けられるように構成されてもよい。
【0033】
電源装置40はさらに、少なくとも第1電力制御部41PC、駆動制御部22、モータ制御部24及びモータ制御部26が搭載される第1配線基板41PCBを備える。第1配線基板41PCBには、後述する第2配線基板42PCBとケーブル40CBを介して接続するための第1接続部41CN(「第1コネクタ」の一例)が設けられる。
図3に示されるとおり、第1電圧線41は、バッテリ接続部40CNと第1電力制御部41PCを接続する第1配線部41Aと、この第1配線部41Aから分岐して第1接続部41CNに接続する第2配線部41Bを備える。さらに電源装置40は、第1電力制御部41PCによって生成される第1動作電圧(3.3V)が印加可能に構成され、第1電力制御部41PCと第1接続部41CNとを接続する第2電圧線42を備える。なお
図3において第1配線基板41PCBは、概念的に描かれているが実際の第1配線基板41PCBは平行な2つの長辺と長辺の端部同士を接続する平行な2つの短辺を有する矩形状に形成される。
【0034】
以上のような構成により、電動工具としての機能を実現するための電力の供給が可能となる。次いで電動工具の通信機能に関する構成について説明する。
【0035】
同じく
図3に示されるように電源装置40は、通信用の第2バッテリ42BP(「通信用バッテリ」と呼ばれる場合もある。)と、メインのバッテリ10BPから供給される第1電源電圧に基づいて通信制御部34(「第2制御部」の一例)を動作させるための第2動作電圧を供給可能に構成され、かつ、メインのバッテリ10BPが外されたとき等には第2バッテリ42BPから供給される第2電源電圧に基づいて通信制御部34を動作させるための第2動作電圧を供給可能に構成される第2電力制御部42PC(「第2電圧供給部」の一例)と、第2電力制御部42PCから供給される第2動作電圧に基づいて無線通信機32(「通信機32」の一例)及び位置情報取得部36を制御する通信制御部34とを備える。
【0036】
さらに電動工具は、通信部30として電動工具の位置情報を取得して通信制御部34に供給する位置情報取得部36と、外部機器と無線で情報の送受信を行うための無線通信機32とを備える。
【0037】
位置情報取得部36は、例えば、GPS(又はGLONASSその他のGNSS)の測位衛星からの信号を受信可能に構成されているアンテナと、アンテナが受信した信号に基づいて電動工具の位置情報を取得する受信回路を備えている。
【0038】
無線通信機32は、例えば、LPWA技術に基づいてライセンスバンド乃至アンライセンスバンドの周波数帯を用いて所定の規格に基づいて、遠隔にある基地局と情報を送受信可能に構成されているアンテナ32A(
図7)と、アンテナ32Aが受信したアナログ信号を復調してベースバンドICに供給し、かつ、ベースバンドICから供給された信号をアナログ信号に変調してアンテナ32Aから送信させるためのRFICと、RFICから取得した信号を規格に規定されるプロトコルに従ってデコード乃至エンコード処理して情報を送受信するベースバンドICとを備えている。なお、通信機32は、Bluetooth(登録商標。)又は無線LAN等の近距離無線通信方式に対応していてもよい。
【0039】
以上のような構成により通信制御部34は、例えば、位置情報取得部36が取得した位置情報を、無線通信部30を介して送信することにより電動工具の位置情報を外部に提供可能に構成されている。本実施形態において、通信制御部34とRFICとベースバンドICは、同一の半導体パッケージ内に積層されてもよい。また、通信制御部34とベースバンドICは、同一の半導体チップから構成されてもよい。
【0040】
さらに電源装置40は、少なくとも第2電力制御部42PC、通信制御部34、通信機32及び位置情報取得部36が搭載される第2配線基板42PCBを備える。第2配線基板42PCBには、第1配線基板41PCBとケーブル40CBを介して接続するための第2接続部42CN(「第2コネクタ」の一例)が設けられる。
図3に示されるとおり、第1電圧線41の第1配線部41Aと第2配線部41Bとは第1配線基板41PCB上に形成される一方で、第1配線部41A及び第2配線部41Bとコネクタを介して電気的に接続される第3配線部41Cは第2配線基板42PCB上に形成される。また、第2電圧線42の第1接続部41CNと第1電力制御部41PCを接続する配線部は第1配線基板41PCB上に形成される一方で、この配線部とコネクタを介して電気的に接続されて第2電力制御部42PCに接続する配線部は第2配線基板42PCB上に形成される。
【0041】
電源装置40がさらに備える第2バッテリ42BPは、少なくとも通信制御部34、無線通信機32及び位置情報取得部36を動作させるための電力を供給する。第2バッテリ42BPは、例えば、充電可能に構成されるリチウムイオン二次電池であり、所定の定格容量、定格電圧及び定格電流を有する。例えば第2バッテリ42BPは、メインのバッテリ10BPよりも小さい定格容量を有し、定格が3.6V(「第2電源電圧」の一例)の直流電圧を供給可能に構成されている。加えて第2バッテリ42BPは、電動工具の本体部10Bを構成する筐体10C内に収納されているため、メインのバッテリ10BPと異なり、容易に着脱可能には設けられておらず、第2配線基板42PCBと一体的に固定されている。なお、第2バッテリ42BPは、第2配線基板42PCBと一体的に固定されなくてもよく、例えば、第2配線基板42PCBに対して着脱可能に設けられてもよい。
【0042】
第2電力制御部42PCは、バッテリ10BPから供給される電源電圧に基づいて通信制御部34及び駆動制御部22を含む各回路素子を動作させるための電圧を生成し各回路素子等に供給可能に構成される。例えば、バッテリ10BPから供給される14.4Vの電源電圧に基づいて通信制御部34を動作電圧である3.3Vの電圧(「第2動作電圧」の一例)を生成し、第2電力制御部42PCと通信制御部34とを接続する第3電圧線43によって通信制御部34に供給し、かつ、同様に所定の動作電圧を生成して位置情報取得部36及び無線通信部30に供給する。
【0043】
加えて第2電力制御部42PCは、第2バッテリ42BPから供給される第2電源電圧に相当する3.6Vの直流電圧に基づいて、各回路素子等を動作させるための動作電圧を生成し、通信制御部34及び駆動制御部22を含む各回路素子等に供給可能に構成されている。ここで第2電力制御部42PCは、アンテナ32Aを動作させるために、第2電源電圧より大きい電圧を生成可能な昇圧回路を備えている。ただし、鉄筋結束機10は昇圧回路を必ずしも備えなくてもよい。本実施形態においては、アンテナの動作電圧が第2電源電圧よりも高いため、鉄筋結束機10は、チャージポンプ回路等の昇圧回路を備えている。しかしながら、例えば、第2バッテリ42BPの電力で駆動する回路素子の動作電圧が、第2電源電圧以下となるように回路素子が選択される場合、又は、第2電源電圧が設定される場合、鉄筋結束機10は昇圧回路を必ずしも備えなくてもよい。
【0044】
以上のような構成により第2電力制御部42PCは、メインのバッテリ10BPが外されたときは、第2バッテリ42BPから供給される第2電源電圧に基づいて駆動制御部22、通信制御部34、位置情報取得部36及び無線通信部30を動作させることにより、外部機器と無線で情報の送受信を実行可能に構成されている。従って通信制御部34は、メインのバッテリ10BPが外されているときであっても、位置情報取得部36が取得した位置情報を、無線通信部30を介して送信することにより電動工具の位置情報を外部機器に提供可能に構成され、また、無線通信部30を介して受信した駆動制御部22のファームウェアを更新するための更新データを、駆動制御部22を構成する例えば不揮発性半導体メモリに格納可能に構成されている。
【0045】
さらに第2電力制御部42PCは、メインのバッテリ10BPから供給される電源電圧に基づいて第2バッテリ42BPを充電するための充電電圧を生成し、第2バッテリ42BPを充電可能に構成されている。従って本実施形態に係る電源装置40は、バッテリ10BPが取り付けられているときは、バッテリ10BPから供給される電力に基づいて、駆動制御部22、モータ制御部24及びモータ制御部26、モータ(送りモータ12M及び結束モータ18M)、通信制御部34、位置情報取得部36及び無線通信部30を動作可能に、かつ、第2バッテリ42BPを充電可能に構成され、メインのバッテリ10BPが外されたときは、第2バッテリ42BPから供給される電力に基づいて駆動制御部22、通信制御部34、位置情報取得部36及び無線通信部30を動作可能に構成されている。なお上述したとおり、電圧を供給することは、電圧を生成することなくパススルーしてそのまま供給することを含むから、第2バッテリ42BPからの出力電圧が印加される配線を、直接、通信制御部34等の電源端子に接続することにより電源となる電圧を通信制御部34等に供給してもよいし、第2電力制御部42PCからの出力電圧が印加される配線を直接、駆動制御部22等の電源端子に接続することにより電源となる電圧を駆動制御部22等に供給してもよい。
【0046】
電源装置40はさらに、少なくとも第2電力制御部42PC、通信制御部34、位置情報取得部36及び無線通信部30が搭載される第2配線基板42PCBを備える。第2配線基板42PCBには、第1配線基板41PCBとケーブル40CBを介して接続するための第2接続部42CN(「第2コネクタ」の一例)が設けられる。
【0047】
図3に示されるとおり、バッテリ10BPからの電源電圧が印加される第1電圧線41は、電源スイッチ40Sを介して第1電力制御部41PCに電圧を供給するのみならず、第1配線基板41PCBの第1接続部41CN、ケーブル40CB及び第2配線基板42PCBの第2接続部42CNを介して第2電力制御部42PCに接続する配線を備えることにより、第2電力制御部42PCに電圧を供給する。
【0048】
さらに第1電力制御部41PCによって生成される第1動作電圧(3.3V)が印加される第2電圧線42は、第1配線基板41PCBの接続部、ケーブル40CB及び第2配線基板42PCBの接続部を介して第2電力制御部42PC及び通信制御部34に接続される配線部を備えることにより、メインのバッテリ10BPが取り付けられているときは、第1電力制御部41PCから第2電力制御部42PCに向かう方向に電力(電圧及び電流)を供給可能に構成される一方で、メインのバッテリ10BPが外されたときには、第2電力制御部42PCから第1電力制御部41PCに向かう方向に電力(電圧及び電流)を供給可能に構成されている。
【0049】
ここで第1電圧線41のうち、第2配線基板42PCBに設けられる第3配線部41Cには、第1電力制御部41PCから第2電力制御部42PCへ電流が流れることを許可可能であって、かつ、第2電力制御部42PCから第1電力制御部41PCへ電流が流れることを防止可能に構成される回路として、例えば、アノードが第1電力制御部41PC側に接続されカソードが第2電力制御部42PCに接続されるダイオード(「逆流防止回路」の一例)が設けられている。なお、逆流防止回路は、第1電圧線41のうち、第1配線基板41PCBに設けられる第2配線部41Bに設けられてもよい。
【0050】
逆流防止回路を設けることにより、第2バッテリ42BPから第2電力制御部42PCを介して第1電力制御部41PCに流れることを抑制することが可能となったので、メインのバッテリ10BPと第2バッテリ42BPとを有効に利用することが可能となる。
【0051】
なお、第2電圧線42は、第1電力制御部41PC(第1電圧供給部)から第2電力制御部42PC(第2電圧供給部)へ電流が流れることを許可可能であって、かつ、第2電力制御部42PC(第2電圧供給部)から第1電力制御部41PC(第1電圧供給部)へ電流が流れることを許可可能に構成されることが好ましい。
【0052】
このような構成により、通信基板である第2配線基板42PCB、第2コネクタ、第1コネクタ、第1電力制御部41PCを接続する第2電圧線42を介して、第1配線基板41PCBの駆動制御部22の電源端子に電力(電圧)を供給することが可能となる。
【0053】
このためメインのバッテリ10BPが取り外されているときに、駆動制御部22を動作させることが可能となる。例えば駆動制御部22は、制御プログラムであるファームウェアの更新等を実行することが可能となる。したがって作業者は、駆動制御部22のファームウェアの更新等のために作業を中断しなければならない事態を抑制できるから、作業効率を向上することが可能となる。
【0054】
なお、第2電圧線42は、第1電力制御部41PCを介さず直接に、第1コネクタと第1配線基板41PCBの駆動制御部22の電源端子とを接続するように設けてもよい。
【0055】
[配線基板の配置構成]
本実施形態に係る電源装置40は、(第1電圧線41の一部を構成する配線及び第2電圧線42の一部を構成する配線を含む)ケーブル40CBを介して第1配線基板41PCBと第2配線基板42PCBとを接続する構成を備えている。このため、ケーブル40CBを長くすることによって、第1配線基板41PCBと第2配線基板42PCBとを異なる位置に配置することも可能となる。
【0056】
図4は、
図2のC-C断面図である。
図5は、鉄筋結束機10を上方Z1から見た平面図である。
図6は、鉄筋結束機10の第2配線基板42PCBの組み付け方法を示す分解斜視図である。
図7は、第2配線基板42PCB及びこれに搭載される通信制御部34等を含む構成を示す分解斜視図である。
【0057】
図4に示されるように本実施形態に係る電源装置40の第1配線基板41PCB及び第2配線基板42PCBは、2つの電動機のうち少なくとも一方の電動機(本実施形態においては結束モータ18M)の周囲に配置されている。
【0058】
より具体的には、第1配線基板41PCBは、結束モータ18Mの回転軸AXに垂直で、結束モータ18Mを通過する断面(
図4)において、結束モータ18Mの上下方向Z(例えば上方Z1)に、基板が上下方向Zと略垂直となるように配置されている。一方で第2配線基板42PCBは、結束モータ18Mの回転軸AXに垂直で、結束モータ18Mを通過する断面(
図4)において、結束モータ18Mの左右方向Y(例えば右方Y1)に、基板が左右方向Yと略垂直となるように配置されている。
【0059】
このような構成により2つの配線基板を互いに略垂直な状態でモータ(結束モータ18M又は送りモータ12Mの一方)を包囲するように配置することが可能となる。
【0060】
このため電動工具(鉄筋結束機10)の上下方向Zの高さを抑制することが可能となる。さらに、配線基板が重ねられている場合と比較してモータの騒音を抑制することも可能となる。
【0061】
ここで、電動工具(鉄筋結束機10)は、結束モータ18Mの回転軸AXに垂直な少なくとも一つの断面において、回転軸AXと、回転軸AXとの間に第2配線基板42PCBが配置される回転軸AXの右方Y1(又は左方Y2)に位置する筐体10Cの外表面との距離D1が、回転軸AXと、回転軸AXとの間に第1配線基板41PCBが配置される回転軸AXの上方Z1(又は下方Z2)に位置する筐体10Cの外表面との距離D2よりも大きくなるように構成されている。
【0062】
このような構成によっても電動工具(鉄筋結束機10)の上下方向Zの高さを抑制することが可能となる。
【0063】
ここで第2配線基板42PCBは、同断面において、回転軸AXと、回転軸AXとの間に第2配線基板42PCBが配置される回転軸AXの右方Y1(又は左方Y2)に位置する筐体10Cの外表面とを結ぶ線分の中心よりも外方に配置されている。例えば第2配線基板42PCBは、筐体10C内の領域のうち、左右方向Y端部(本実施形態においては、右方Y1端部)に配置されている。
【0064】
このため第2配線基板42PCBに搭載される通信機32のアンテナ32A及び通信制御部34は、送りモータ12M及び結束モータ18Mの回転によって生じるノイズの影響を受けにくい。
【0065】
同様に第1配線基板41PCBは、同断面において、回転軸AXと、回転軸AXとの間に第1配線基板41PCBが配置される回転軸AXの上方Z1(又は下方Z2)に位置する筐体10Cの外表面とを結ぶ線分の中心よりも外方に配置されている。例えば第1配線基板41PCBは、筐体10C内の領域のうち、上下方向Y端部に配置されている。
【0066】
このため第1配線基板41PCBに搭載される駆動制御部28は、送りモータ12M及び結束モータ18Mの回転によって生じるノイズの影響を受けにくい。なお、第1配線基板41PCBと第2配線基板42PCBの位置を交換し、前者を電動機の左右方向(例えば筐体10Cに囲まれる領域の右方Y1又は左方Y2端部)に、後者を電動機の上下方向(例えば筐体10Cに囲まれる領域の上方Z1又は下方Z2端部)に配置してもよい。
【0067】
ただし第1配線基板41PCBは、筐体10Cに囲まれる領域の上方Z1に配置されることが好ましい。第1配線基板41PCBは、電動機の発熱による影響を受けやすいため、筐体10Cに囲まれる領域の上方Z1に配置することにより相対的に放熱を促進することが可能となる。
【0068】
さらに本実施形態において、第2配線基板42PCBは、あえて上下方向Zの高さを小さくした構成が採用されている。具体的には第2配線基板42PCBは、前後方向Xに延伸する第1辺42PCB1と、上下方向Zに延伸する第2辺42PCB2とを備える矩形状に形成される。また、上述したとおり、第2配線基板42PCBは、左右方向Yに略垂直である。本実施形態において、第1辺42PCB1の長さ(「第1長さ」の一例)は、第2辺42PCB2の長さ(「第2長さ」の一例)の2倍以上である。換言すると第2辺42PCB2の長さは、第1辺42PCB1の長さの半分以下である。
【0069】
また本実施形態においてアンテナ32Aは、前後方向Xに延伸する第1アンテナ32A1と、上下方向Zに延伸する第2アンテナ32A2とを備えている。また、通信制御部34は、第1アンテナ32A1と第2アンテナ32A2との間に配置されている。ここで通信制御部34の上下方向Zの辺の長さは、第2辺42PCB2の長さの半分以上である。
【0070】
換言すると、第2辺42PCB2の長さは、通信制御部34の上下方向Zの辺の長さに基づいて、通信制御部34の上下方向Zの辺である第2辺42PCB2の長さの2倍以下(好ましくは1.5倍以下)となるように構成されている。このように第2配線基板42PCBの第2辺42PCB2の長さを定めることにより、第2配線基板42PCBの上下方向Zの高さを抑制しひいては鉄筋結束機10の上下方向Zの高さを抑制することが可能となる。
【0071】
加えて異なる方向に延伸する2つのアンテナ(第1アンテナ32A1及び第2アンテナ32A2)の一方を通信制御部34に対して前方X1の領域に配置し、他方を通信制御部34に対して後方X2の領域に配置したから、双方のアンテナが共にノイズ等の影響を受ける可能性を抑えることが可能となる。しかも第2配線基板42PCBの第1辺42PCB1を長く設けているから、第1アンテナ32A1も長く設けることが可能となる。第1アンテナ32A1の前後方向Xの長さは、第2辺42PCB2の長さより大きくてもよい。
【0072】
以下、
図7を用いて本実施形態における通信機32を含む構成の実装例について説明する。上記したように第2バッテリ42BPは、アンテナ32A等が搭載される第2配線基板42PCBと一体的に固定されており、具体的には、第2バッテリ42BPは、第2配線基板42PCBと略平行に、かつ、第2配線基板42PCBに対して内方(本実施形態においては左方Y2であり、回転軸AXに第2配線基板42PCBよりも接近した位置に相当する)に配置されている。このため第2バッテリ42BPをシールドとして機能させることが可能となる。よって、通信機32のアンテナ32A等は、送りモータ12M及び結束モータ18M等の駆動によって生じるノイズの影響を受けにくい。
【0073】
加えて、このように隣接して平行に配置される第2配線基板42PCB及び第2バッテリ42BPは、第2配線基板42PCBを包囲して保護する基板カバー42PCBCと、バッテリーカバー42BPCとによって挟まれる。このように2つのカバーに挟持されることによって通信部30をユニット化することが可能になる(
図6)。このため通信機能を有さない電動工具のモータ部分に係る構成と、通信機能を有する電動工具のモータ部分に係る構成を共通化することが可能となる。
【0074】
さらに、第2配線基板42PCBと第2バッテリ42BPとの間には、板状の緩衝部材CUSが挿入される。緩衝部材CUSを挿入することによって、第2バッテリ42BPが熱膨張しても、第2配線基板42PCBに当接して横に長い第2配線基板42PCBを反らせてしまうことを抑制することが可能となる。加えて緩衝部材CUSを挿入することで、作業に伴ってユニット内の第2バッテリ42BPが動いてしまうことを抑制し、第2バッテリ42BPを位置決めすることも可能となる。
【0075】
以上のようにアンテナ32A及び通信制御部34が搭載される第2配線基板42PCB2は、
図6及び
図7に示されるように、送りモータ12Mの後方X2に離間した位置に配置される。例えば、前後方向Xに投影したときに、第2配線基板42PCBと、送りモータ12Mの回転子が通過する領域とが一部において重複するように第2配線基板42PCBを送りモータ12Mの後方X2に配置してもよい。
【0076】
このような配置を実現するために筐体10Cは、送りモータ12Mの少なくとも一部を覆うモーターカバー10C1(「第1筐体部」の一例)と、モーターカバー10C1との間に第2配線基板42PCB2及びこれに搭載されるアンテナ32A及び通信制御部34を収容する第2筐体部10C2とを備える。
【0077】
モーターカバー10C1は、外表面(本実施形態においては右方Y1を向いた表面)の前方X1部分が外方(本実施形態においては右方Y1)に膨出した構成を備えているため、その内部に送りモータ12Mの少なくとも一部を収容可能に構成されている。一方でモーターカバー10C1は、後方X2部分が前方X1部分と比較して内方(本実施形態においては左方Y2)に窪んだ構成を備えているため、モーターカバー10C1の後方X2部分と第2筐体部10C2との間であって、送りモータ12Mの後方X2に位置する領域に、第2配線基板42PCBを配置することが可能となる。よってモーターカバー10C1の少なくとも一部は、送りモータ12Mと、第2配線基板42PCB及び通信機32との間に配置される。
【0078】
なお第2配線基板42PCBには、第2配線基板42PCBを包囲して保護する基板カバー42PCBCが設けられてよい。
【0079】
以上のとおりであるから、本実施形態に係る電動工具によれば、バッテリに通信機を搭載していないからバッテリの重量を抑えることが可能となる。加えて、配線基板を2つに分割すると共に両者を電動機の周囲に配置したから、無線の通信機と複数の電動機を搭載するにもかかわらず、電動工具の高さを抑制することが可能となる。また、2つの電動機のうち、一方の電動機の後方のスペースに配線基板の少なくとも一方を配置したから、電動工具が左右方向に大きくなってしまうことも抑制することが可能となる。
【0080】
なお本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。たとえば、上述したように第1配線基板41PCBと第2配線基板42PCBの位置関係を交換してもよい。また、少なくとも一方の配線基板を上下方向Zに対して傾斜して搭載してもよい。当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素に、他の知られた要素技術を追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の知られた要素技術と置換することができる。例えば、駆動制御部と通信制御部は異なる電圧で動作可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 鉄筋結束機
10C 筐体
10C1 モーターカバー(第1筐体部)
10C2 第2筐体部
10H ハンドル
10HT トリガ
10M マガジン
10B 本体部
10BP バッテリ(バッテリパック)
12 ワイヤ送り部
12G ギア
12M 送りモータ(第2の電動機)
14 カール形成部
14A カールガイド
14B 誘導ガイド
16 切断部
16A 伝達機構
18 結束部
18H フック
18M 結束モータ(第1の電動機)
22 駆動制御部(第1制御部)
24 モータ制御部
26 モータ制御部
30 通信部
32 通信機
32A アンテナ
32A1 第1アンテナ
32A2 第2アンテナ
34 通信制御部(第2制御部)
36 位置情報取得部
40 電源装置
40CB ケーブル
40CN バッテリ接続部
40D ダイオード(逆流防止回路)
40S 電源スイッチ
41 第1電圧線
41A 第1配線部
41B 第2配線部
41C 第3配線部
41PCB 第1配線基板
41PC 第1電力制御部
41CN 第1接続部
42 第2電圧線
42CN 第2接続部
42PC 第2電力制御部
43 第3電圧線
42PCB 第2配線基板
42BP 第2バッテリ
RL リール
W ワイヤ
RB 鉄筋