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  • 特開-印刷方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155047
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20231013BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231013BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20231013BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20231013BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B41J2/01 129
B41J2/01 125
B41M5/00 120
C09D11/30
C09D11/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064788
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】成澤 宗樹
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA19
2C056FA10
2C056FD20
2C056HA44
2C056HA46
2H186AB11
2H186AB12
2H186AB23
2H186BA08
2H186DA08
2H186FB44
4J039EA06
4J039EA48
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】臭気を低減させることのできる印刷技術を提供すること。
【解決手段】印刷方法は、被印刷物であるメディア(Me)に紫外線硬化型のインク(31a)を吐出して印刷を行う印刷工程と、印刷工程においてメディア(Me)に吐出されたインク(31a)に紫外線を照射してインク(31a)を硬化させるインク硬化工程と、を有する。硬化工程においてメディア(Me)に照射される単位面積あたりの積算光量は、222mJ/cm以上である。好ましくは、硬化工程において紫外線を照射する時間は、0.276秒以上であると共に、ピーク照度は、0.6W/cm以上である。さらに好ましくは、インク硬化工程の後に、インク(31a)が硬化されたメディア(Me)を加熱する加熱工程を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物であるメディアに紫外線硬化型のインクを吐出して印刷を行う印刷工程と、
前記印刷工程において前記メディアに吐出された前記インクに紫外線を照射して前記インクを硬化させるインク硬化工程と、を有し、
前記インク硬化工程において前記メディアに照射される単位面積あたりの積算光量が222mJ/cm以上であることを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記インク硬化工程において紫外線を照射する時間は、0.276秒以上である請求項1記載の印刷方法。
【請求項3】
前記インク硬化工程においてピーク照度は、0.6W/cm以上である請求項1又は請求項2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記インク硬化工程の後に、前記インクが硬化された前記メディアを加熱する加熱工程を有し、
前記加熱工程は、60℃で10分以上加熱する請求項1~3いずれか1項に記載の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型インクを用いる印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被印刷物であるメディアに印刷を行なう際に、紫外線硬化型インクを用いることがある。紫外線硬化型インクは、メディアへの吐出後に紫外線を照射することによりメディアの表面で硬化する。このような紫外線硬化型インクを用いた印刷技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-49787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が研究を行ったところ、紫外線硬化型インクを用いた印刷物の一部に、印刷直後や梱包後の開封時に臭気の強いものが含まれることが分かった。印刷物の商品性を高めるためにも、臭気を低減させることが望まれる。
【0005】
本発明は、臭気を低減させることのできる印刷技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、被印刷物であるメディアに紫外線硬化型のインクを吐出して印刷を行う印刷工程と、
前記印刷工程において前記メディアに吐出された前記インクに紫外線を照射して前記インクを硬化させるインク硬化工程と、を有し、
前記インク硬化工程において前記メディアに照射される単位面積あたりの積算光量が222mJ/cm以上であることを特徴とする印刷方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、臭気を低減させることのできる印刷技術を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例による印刷方法に用いられるプリンタ装置の正面図である。
図2図1に示されたプリンタ装置の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図中Frは前、Rrは後、Leは左、Riは右、Upは上、Dnは下を示している。
【0010】
<実施例>
実施例を図面に基づいて説明する。
【0011】
(プリンタ装置10について)
図1及び図2を参照する。プリンタ装置10は、インクジェット式であり、印刷を行うことが可能な印刷部20と、この印刷部20において印刷されたメディアMeを加熱することが可能な加熱部40と、を有する。
【0012】
メディアMeは、印刷の対象としての被印刷物であり、例えば、紙を選択することができる。メディアMeは、紙以外のシート状の物や、3次元形状を呈するプラスチック製品等であっても良い。
【0013】
(印刷部20について)
印刷部20は、車輪としてのキャスター21aが設けられている一対の脚部21、21と、これらの脚部21、21に支持されメディアMeを置くことのできるテーブル部22と、このテーブル部22の上方において左右方向に延びるレール23と、このレール23上を移動可能に設けられているキャリッジ30と、左右の端部に設けられ上下方向にスイング可能な蓋部26、27と、を有する。
【0014】
レール23は、蓋部26、27によって覆われている部位まで延びており、キャリッジ30もテーブル部22の上方から蓋部26、27によって覆われている部位まで移動可能とされている。
【0015】
キャリッジ30は、紫外線硬化型のインク31aを吐出可能な複数の吐出部31、31と、メディアMeに吐出されたインク31aに紫外線を照射可能な紫外線照射部32と、を有する。
【0016】
それぞれの吐出部31、31には内部にインク31aが充填されている。インク31aは、紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化型のインクである。吐出部31、31に充填されているインク31aの色はそれぞれ異なる。
【0017】
紫外線照射部32には、例えば、紫外線を照射可能なランプが内蔵されており、メディアMeに向かって紫外線を照射することができる。紫外線照射部32が紫外線を照射する時間や照射する紫外線の光量の詳細については後述する。
【0018】
なお、紫外線照射部32は、メディアMeに吐出されたインク31aに紫外線を照射することができれば、ランプ以外のものを用いても良い。
【0019】
蓋部26、27に覆われている部位には、例えば、吐出部31、31の表面を保湿したり清掃するための装置が設けられる。
【0020】
(加熱部40について)
加熱部40は、下端にキャスター41aが設けられている一対の脚部41、41と、これらの脚部41、41に支持されメディアMeを加熱可能な加熱部本体42と、を有する。
【0021】
加熱部本体42には、電気式のヒータや温風を送風可能な送風機が設けられている。例えば、加熱部本体42は、メディアMeを60℃に加熱し、加熱した状態を保つことができる。メディアMeを加熱する理由については後述する。
【0022】
なお、印刷部20及び加熱部40は、それぞれ移動可能に設けられているが、移動不能であっても良い。また、脚部21、41を有さないものであっても良い。
【0023】
さらに、加熱部40は、印刷部20から離間した位置に配置され、印刷部20から独立したオーブン、乾燥器によって構成されてもよい。つまり、後述する加熱工程は、インク硬化工程を終えた後に異なる場所で行うことも可能である。
【0024】
(印刷方法について)
次に、プリンタ装置10を用いた印刷方法について説明する。図2を参照する。例えば、メディアMeはテーブル部22の上面を後方から前方(図面奥から手前)に向かって送られる。送られたメディアMeは、キャリッジ30の下方を通過する。キャリッジ30は、左右方向に移動し、吐出部31、31からメディアMeにインク31aを吐出して印刷を行う(印刷工程)。
【0025】
紫外線照射部32も吐出部31と共に左右方向に移動する。メディアMeに吐出されたインク31aは、紫外線照射部32から照射される紫外線によって硬化する(インク硬化工程)。これによりメディアMeに所定の模様等を印刷することができる。
【0026】
紫外線照射部32は、インク硬化工程において、単位面積あたりの積算光量が222mJ/cm以上となるように、インク31aに紫外線を照射する。また、インク硬化工程において紫外線を照射する時間は、0.276秒以上、且つ、ピーク照度は、0.6W/cm以上であることが好ましい。理由は後述する。
【0027】
図1を併せて参照する。インク31aが硬化したメディアMeは、さらに加熱部40に向かって送られる。加熱部40に送られたメディアMeは、加熱される(加熱工程)。加熱工程は、例えば、60℃で10分以上行なわれる。加熱工程が終了することにより、印刷は終了する。
【0028】
(実験)
本発明者が研究を行ったところ、紫外線硬化型インクを用いた印刷物の一部に、印刷直後や梱包後の開封時に臭気の強いものが含まれることが分かった。このため、本発明者は、メディアMe(図2参照)に発生する臭気を低減させるための実験を行なった。以下、実験について説明する。
【0029】
以下を用いて印刷工程、及び、インク硬化工程を行なった。
・印刷部:ローランド ディー.ジー.社製UV-IJプリンター
・加熱部:アズワン社製ETTAS真空乾燥機AVO-310NB-CR
・インク:ローランド ディー.ジー.社製ECO-UV EUV5
・メディア:きもと社製SP3AS
【0030】
インク硬化工程の際に、照射時間、ピーク照度、積算光量を変更して実験を行った。また、一部は、インク硬化工程の条件を同じにしつつ、加熱工程の有無を変更した。
【0031】
加熱工程は、以下の条件によって行なった。
・メディア表面の温度:60℃
・加熱時間:10分
【0032】
このようにして得たメディアを印刷直後と1日後にそれぞれ臭いを嗅ぐことにより評価した。メディアを1日保管する際には、印刷を行ったメディアの印刷面に、印刷を行っていないメディアを貼り合わせた状態で保管を行なった。実験について以下、詳細に説明する。
【0033】
【表1】
【0034】
実験番号1では、照射時間0.037[秒]、ピーク照度0.6[W/cm]、積算光量22mJ/cmの条件でインク硬化工程を行なった。加熱工程は行なわなかった(×)。このような条件で印刷を行った実験番号1では、印刷直後において簡単に臭いが感知できた(△)。また、1日後に臭いを嗅いだ際にも簡単に臭いが感知できた(△)。印刷直後、及び、1日後共に△であった実験番号1の評価は、不合格である×であった。
【0035】
実験番号2では、実験番号1の条件に対してピーク照度を2.4[W/cm]、積算光量を89mJ/cmに変更してインク硬化工程を行なった。加熱工程は行なわなかった(×)。このような条件で印刷を行った実験番号2では、印刷直後、1日後共に簡単に臭いが感知できた(△)。このため、実験番号2の評価は、不合格(×)であった。
【0036】
実験番号3では、実験番号1の条件に対して照射時間を0.37[秒]、積算光量を222mJ/cmに変更してインク硬化工程を行なった。加熱工程は行なわなかった(×)。このような条件で印刷を行った実験番号3では、印刷直後においてほぼ無臭であった(○)。一方、1日後に臭いを嗅いだ際には簡単に臭いが感知できた(△)。実験番号3では、印刷直後にほぼ無臭であったため、評価は、合格(○)であった。
【0037】
実験番号4では、実験番号3と同じ条件でインク硬化工程を行なった。そして、インク硬化工程後に加熱工程を行なった(○)。実験番号4では、インク硬化工程の直後に加熱工程を行なったため、インク硬化工程の直後には評価を行うことができなかった。一方、1日後においてほぼ無臭であった(○)。加熱工程の1日後においてほぼ無臭であったため、インク硬化工程の直後においてもほぼ無臭であったことが推認できる。実験番号4では、評価は、特に良好な合格(◎)であった。
【0038】
実験番号5では、実験番号2の条件に対して照射時間を0.276[秒]、積算光量を662mJ/cmに変更してインク硬化工程を行なった。加熱工程は行なわなかった(×)。このような条件で印刷を行った実験番号5では、印刷直後においてほぼ無臭であった(○)。一方、1日後に臭いを嗅いだ際には簡単に臭いが感知できた(△)。実験番号5では、評価は、合格(○)であった。
【0039】
実験番号6では、実験番号5と同じ条件でインク硬化工程を行なった。そして、インク硬化工程後に加熱工程を行なった(○)。このような条件で印刷を行った実験番号6では、1日後においてほぼ無臭であった(○)。実験番号6では、評価は、特に良好な合格(◎)であった。
【0040】
実験番号7では、実験番号2の条件に対して照射時間を0.37[秒]、積算光量を887mJ/cmに変更してインク硬化工程を行なった。加熱工程は行なわなかった(×)。このような条件で印刷を行った実験番号7では、印刷直後においてほぼ無臭であった(○)。一方、1日後に臭いを嗅いだ際には簡単に臭いが感知できた(△)。実験番号7では、評価は、合格(○)であった。
【0041】
実験番号8では、実験番号7と同じ条件でインク硬化工程を行なった。そして、インク硬化工程後に加熱工程を行なった(○)。このような条件で印刷を行った実験番号8では、1日後においてほぼ無臭であった(○)。実験番号8では、評価は、特に良好な合格(◎)であった。
【0042】
評価が合格(○)又は特に良好な合格(◎)となった実験番号3~8では、積算光量の値が222mJ/cm以上であった。一方、積算光量の値が222mJ/cmよりも小さな実験番号1、2では、印刷直後から容易に臭いを感知することができた。以上より、積算光量を222mJ/cm以上とした場合に、印刷直後における臭気の低減を図ることができるものと考えられる。
【0043】
また、評価が合格(○)又は特に良好な合格(◎)となった実験番号3~8では、照射時間が0.276[秒]以上であり、ピーク照度が0.6[W/cm]であった。
【0044】
さらに、評価が特に良好な合格(◎)となった実験番号4、6、8では、インク硬化工程の後に加熱工程を行なっていた。インク硬化工程の後に加熱工程を行うことにより、1日後においてもほぼ無臭であり、臭気を低減させた状態を継続できるものと考えられる。
【0045】
以上に説明した印刷方法について纏める。
【0046】
図2を参照する。印刷方法は、被印刷物であるメディアMeに紫外線硬化型のインク31aを吐出して印刷を行う印刷工程と、印刷工程においてメディアMeに吐出されたインク31aに紫外線を照射してインク31aを硬化させるインク硬化工程と、を有する。インク硬化工程においてメディアMeに照射される単位面積あたりの積算光量は、222mJ/cm以上である。
【0047】
インク硬化工程における紫外線の積算光量を222mJ/cm以上とすることにより、印刷直後におけるメディアMeから生じ得る臭気を低減させることができることが分かった。臭気を低減させることのできる印刷技術を提供することできる。
【0048】
また、インク硬化工程において紫外線を照射する時間は、0.276秒以上であることが好ましい。これにより、紫外線を十分に照射することができ、より臭気を低減させることができる。
【0049】
また、インク硬化工程においてピーク照度は、0.6W/cm以上であることが好ましい。これにより、紫外線を十分に照射することができ、より臭気を低減させることができる。
【0050】
また、インク硬化工程の後に、インク31aが硬化されたメディアMeを加熱する加熱工程を有することが好ましい。このとき、加熱工程は、60℃で10分以上加熱する。加熱工程を経ることにより臭気を低減させた状態を継続でき、より好ましい。
【0051】
尚、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
10…プリンタ装置
31…吐出部、31a…インク
32…紫外線照射部
40…加熱部
Me…メディア
図1
図2