(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155049
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】ミシンの押え
(51)【国際特許分類】
D05B 29/08 20060101AFI20231013BHJP
D05B 29/02 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
D05B29/08
D05B29/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064791
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100191145
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 整博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悟拡
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA08
3B150CC05
3B150CE01
3B150CE27
3B150EA01
3B150EA04
3B150EA14
(57)【要約】
【課題】 布送り方向と直交する方向に移動可能なメスを備えるミシンにおいて、被縫製物を押える押え部がメスの移動に従って、メスの移動方向に移動可能な押えを提供すること。
【解決手段】 布送り方向と直交する方向に移動可能なメス2を備えるミシンに使用する押えAであって、前記ミシンの押え棒4に着脱される押えホルダーBと、前記押えホルダーBに対して全体または一部分が前記メス2の移動方向に沿って移動可能に連結され、被縫製物を押える押え部Cと、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布送り方向と直交する方向に移動可能なメスを備えるミシンに使用する押えであって、
前記ミシンの押え棒に着脱される押えホルダーと、
前記押えホルダーに対して全体または一部分が前記メスの移動方向に沿って移動可能に連結され、被縫製物を押える押え部と、を備える押え。
【請求項2】
前記押え部は、前記押えホルダーとの連結箇所または前記押え部の一部分とその他部分との間の連結箇所に連結軸を有する請求項1に記載の押え。
【請求項3】
前記押え部は、前記連結軸に沿って前記押え部の全体または一部分を前記メスに向けて押圧する水平付勢部材を有する請求項2に記載の押え。
【請求項4】
前記押え部は、前記連結軸に沿って前記押え部の全体または一部分を前記メスに向けて移動させるねじ部材を有する請求項2に記載の押え。
【請求項5】
前記押え部は、前記メスと接触する箇所に突起部を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の押え。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバロックミシンなどの布切断用のメスを備えるミシンに使用する押えに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からオーバロックミシンのように、布送り方向に沿って、布の端縁をメスの上下動により切断しながら、切断した端縁をかがり縫いするミシンが知られている。
【0003】
オーバロックミシンの押えで、ミシン運転中に押え部が布を充分に押えられない状態になり易いのを防ぐために、押え部の上面に、ばねの一端が当接することにより、ばね付勢される構造の押えが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のオーバロックミシンの押えは、布の切断の際に、メスの上下動に伴い、布も上下動するため、メスと布を押える押え部とが離れていると、縫製に不具合が生じることがあるため、なるべく押え部をメスの近くに配置する必要がある。
【0006】
特に、メスの位置を調節して布の切り幅を大きくした場合に、メスと押えとの間隔が大きくなるため、布を確実に押えることができず、布の切断不良および縫製不良につながるおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、布送り方向と直交する方向に移動可能なメスを備えるミシンにおいて、被縫製物(布)を押える押え部がメスの移動に従って、メスの移動方向に移動可能な押えを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、押えとして、布送り方向と直交する方向に移動可能なメスを備えるミシンに使用する押えであって、前記ミシンの押え棒に着脱される押えホルダーと、前記押えホルダーに対して全体または一部分が前記メスの移動方向に沿って移動可能に連結され、被縫製物を押える押え部と、を備える構成を採用する。
【0009】
本発明の押えの実施形態として、前記押え部は、前記押えホルダーとの連結箇所または前記押え部の一部分とその他部分との間の連結箇所に連結軸を有する構成を採用し、また、前記押え部は、前記連結軸に沿って前記押え部の全体または一部分を前記メスに向けて押圧する水平付勢部材を有する構成を採用し、また、前記押え部は、前記連結軸に沿って前記押え部の全体または一部分を前記メスに向けて移動させるねじ部材を有する構成を採用し、また、前記押え部は、前記メスと接触する箇所に突起部を有する構成を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の押えは、前記構成を採用することにより、布送り方向と直交する方向に移動可能なメスを備えるミシンにおいて、被縫製物を切断するメスが移動すると、被縫製物を押える押え部は、メスの移動に合わせて移動することができる。そのため、移動するメスと押えとの間隔が大きくなる不具合が解消され、メスがどのような位置にあっても、押えが確実に布を押えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施例に係る押えを示す全体斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施例に係る押えの押え前部の左右移動を示す上面図であり、(a)は切り幅が大の場合、(b)は切り幅が小の場合である。
【
図3】本発明の第1実施例に係る押えを示す上面図である。
【
図4】
図1の押えを示す分解図であり、(a)は押え全体、(b)は押え前部である。
【
図5】本発明の第1実施例に係る押えの上下動作を示す側面図であり、(a)は押え前部の水平時、(b)は押え前部の乗り上げ時、(c)は押え前部の下り時である。
【
図6】本発明の第1実施例に係る押えについて、押え前部の乗り上げ時の角度規制を示す図であり、(a)は押え前部の上面側斜視図、(b)は押え前部の背面側斜視図、(c)は押え前部の水平時、(d)は押え前部の乗り上げ時である。
【
図7】本発明の第2実施例に係る押えを示す全体斜視図である。
【0012】
次に、本発明の実施形態に係るミシンの押えについて、実施例に示した図面を参照して説明する。
以下の説明では、
図1の斜視図でみて、縦方向を「上下」、右下から左上方向を「前後」、左下から右上方向を「左右」とする。
【実施例0013】
図2において、Aはオーバロックミシンなどの布送り方向(「前後」)と直交する(「左右」)方向に移動可能なメス機構Dを備えるミシンの押えであり、押え棒4に着脱される押えホルダーBと、押えホルダーBに連結され、被縫製物を押える押え部Cと、を備えている。
【0014】
図2に示すように、前記オーバロックミシンの被縫製物載置部には、針板1が装着され、オーバロックミシンのメス機構Dは、前記針板1の側面に隣接されるメス2が布送り方向と直交する左右方向に移動可能となっている。
【0015】
前記押えホルダーBは、ミシン機枠(図示せず)に支持される押え棒4に着脱される取付部10と、取付部10の下部から前方に延設される脚部11と、から構成されている。
【0016】
図1および2に示すように、前記取付部10は、その頂部に所定深さの縦溝12が穿設されるとともに、前記縦溝12に隣接して、これと連通するU形溝13が形成されている。前記縦溝12中には、押え棒4の下端部が着脱自在に挿通され、前記U形溝13を介して挿通した締めねじ5により、前記押えホルダーBの押え棒4への固定がなされる。
【0017】
図4に示すように、前記取付部10の側面には、深底部15と浅底部16とからなる二段底の凹所14が設けられている。前記凹所14の浅底部16の側面には、前記押えホルダーBに開口部17が形成される。前記凹所14の深底部15には、ばね支持軸18と、凹所14の側面から後方に向けて切欠かれた切欠き部19と、が形成されている。
【0018】
前記深底部15には、上下付勢ばねとしてのコイル状ばね6が前記ばね支持軸18と同心状に装着され、コイル状ばね6の一端から伸延する短端部7を前記切欠き部19に係合させて深底部15からの脱落を防止し、他端から伸延する長端部8を前記浅底部16の側面に当接させながら開口部17から前方に突出させ、押えホルダーBに押え部Cが連結されている状態で、コイル状ばね6の長端部8の先端を押え部C(押え前部40)の上面に当接させている。
【0019】
前記凹所14の浅底部16には、上下に垂直な上壁部21および下壁部22が形成され、前記上壁部21および下壁部22は、コイル状ばね6の長端部8のストッパとなっている。また、脚部11には、押え部Cを連結するための後部軸25を挿通する後部軸孔20が穿設されている。
【0020】
前記押え部Cは、押えホルダーBに後部軸25を介して連結される押え後部30と、押え後部30に前部軸26を介して連結される押え前部40と、を備えている。
【0021】
図3に示すように、前記押え後部30は、針(図示せず)が貫通するように切欠かれた針落ち部31と、針落ち部31の左側方に、対向するように間隔を開けて形成される右直立壁32および左直立壁33が設けられ、右直立壁32と左直立壁33との間には、前記押えホルダーBの脚部11に開口された後部軸孔20内に挿通される後部軸25が固定されている。
【0022】
前記押え後部30には、前記針落ち部31に隣接して押え爪34が形成され、押え爪34は、
図2に示すように、前記針板1上に形成された爪部3の上で被縫製物を押圧する。さらに、前記針落ち部31の後方に、空環案内用ガイド部35が形成されている。
【0023】
図3に示すように、前記押え後部30は、前方両端に、対向するように間隔を開けて形成される右支持壁36および左支持壁37が設けられ、右支持壁36と左支持壁37との間には、前部軸26が固定されている。前部軸26には、押え前部40をメス2に押しつけるために、水平付勢部材としての圧縮ばね27が巻装されている。
【0024】
前記押え前部40は、後方に、前部軸26が挿通される前部軸孔42を有するスライド凸部41が突設され、前方に、先端が上方に反り返る先端爪先部43が形成されている。さらに、右側面からは、メス保護壁44が立設され、メス保護壁44の側面には、メス2と接触する箇所に、摩擦を軽減する半球状の突起部45が突設されている。
【0025】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
本実施例の押えAをオーバロックミシンに装着するには、まず、押え棒4を上げた状態で、押え棒4の下端部に、押えホルダーBの取付部10に形成される縦溝12を挿通し、取付部10のU形溝13を介して挿通した締めねじ5を締めることにより、押えAを押え棒4に固定する。
【0026】
被縫製物の端縁をメス2により切断しながら、かがり縫いを行う際には、針板1の上面に被縫製物を載置し、押え棒4を下げることにより、被縫製物が針板1の上面で押え部Cにより押えられる。このとき、
図3に示すように、押え部Cの押え前部40は、圧縮ばね27により前部軸26に沿って右方向(メス2に対向する側)に付勢されている。
【0027】
次に、被縫製物の端縁の切り幅を大きくするために、
図2(a)に示すように、矢印の方向(右方向)にメス2を移動すると、押えAは、押え前部40の突起部45がメス2の側面に接触し、押え後部30に対してαだけ左に位置するように移動する。
【0028】
次に、被縫製物の端縁の切り幅を小さくするために、
図2(b)に示すように、矢印の方向(左方向)にメス2を移動すると、押えAは、押え前部40の突起部45がメス2の側面に接触し、押え後部30に対してβだけ左に位置するように移動する。
【0029】
さらに、押え部Cは、メス2と接触する箇所に突起部45を形成することにより、接触時の摩擦を軽減するとともに、突起部45を除く押え部Cとメス2との間に若干の隙間ができ、メス2の刃部と接触するのを防ぐことができる。
【0030】
また、本実施例の押えAは、押え部Cが押え後部30と押え前部40とが前部軸26により回動自在なため、
図5(a)に示すように、被縫製物が平坦な場合、押え前部40は、コイル状ばね6の長端部8により下方に付勢され、水平状態を保ち、
図5(b)に示すように、被縫製物の段部を上る場合、押え前部40は、コイル状ばね6の長端部8による下方への付勢に抗して、押え後部30より先に乗り上げる。また、
図5(c)に示すように、被縫製物の段部を下る際も、押え前部40は、コイル状ばね6の長端部8により下方に付勢され、押え後部30より先に下る。
【0031】
さらに、本実施例の押えAは、変形例として
図6(a)および(b)に示すように、押え前部40の後方側に、スライド凸部41とメス保護壁44との間から上方に突出する規制部46が形成され、規制部46には、傾斜面47が形成されている。
このため、
図6(c)および(d)に示すように、押え前部40が押え後部30に対して、前部軸26を中心として上方に所定角度以上回動すると、規制部46の傾斜面47が押え後部30の右支持壁36に当接し、押え前部40が押え後部30に対して、これ以上回動するのを制限することができる。
【0032】
以上のように、本実施例の押えAでは、押え部Cの一部分(押え前部40)と、その他部分(押え後部30)との間の連結箇所に連結軸として前部軸26を有し、押え前部40は、押え後部30に対してメス2の移動方向に沿って移動可能に連結しているが、本実施例に限らず、押え部Cは、押え後部30と、押え後部30に前部軸26を介して連結される押え前部40と、を備えることなしに一体とし、押え部Cと押えホルダーBとの間の連結箇所の後部軸25を連結軸とし、押え部Cは、全体として押えホルダーBに対してメス2の移動方向に沿って移動可能に連結してもよい。その際、後部軸25には、押え部Cをメス2に押しつけるために、水平付勢部材としての圧縮ばね27が巻装されている。
また、押え部Cが、押え後部30と押え後部30に前部軸26を介して連結される押え前部40とから構成され、押え部Cと押えホルダーBとの間の連結箇所の後部軸25には、押え部Cをメス2に押しつけるために、水平付勢部材としての圧縮ばね27が巻装される構成をとってもよい。
前記押え後部50は、前方両端に、対向するように間隔を開けて形成される右支持壁56および左支持壁57が設けられ、左支持壁57には、調整ねじ54を螺合するねじ孔58が螺設され、右支持壁56には、前部軸52を圧入する圧入孔59が穿設されている。
メスを移動して切り幅を変更した場合には、押えAaは、調整ねじ54を回動し、押え前部60のスライド凸部61を左右動作ばね53に抗して押圧し、右方向に移動することにより、メス保護壁44がメスの側面に近接するように、押え部Caをメスの近くに配置することができる。
なお、実施例2においても実施例1と同様に、押え部Caは、押え後部50と押え後部50に前部軸52を介して連結される押え前部60とを備えることなしに一体とし、押え部Caと押えホルダーBとの間の連結箇所の後部軸25を連結軸とし、押え部Caは、押え部Caと押えホルダーBとの間の連結箇所に配置された調整ねじ54により全体として押えホルダーBに対してメス2の移動方向に沿って移動可能に連結してもよい。
また、押え部Caが、押え後部50と押え後部50に前部軸52を介して連結される押え前部60とから構成され、押え部Caと押えホルダーBとの間の連結箇所に調整ねじ54を配置する構成としてもよい。
さらに、左右動作ばね53を設けず、調整ねじ54とスライド凸部61とにねじ山を設け、調整ねじ54の回動によりスライド凸部61を左右方向に移動させてもよい。
その他の作用効果は、第1実施例と同様である。