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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155085
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】燃料電池および燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1213 20160101AFI20231013BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20231013BHJP
   H01M 8/1226 20160101ALI20231013BHJP
   H01M 8/1253 20160101ALI20231013BHJP
   H01M 8/248 20160101ALI20231013BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20231013BHJP
【FI】
H01M8/1213
H01M8/12 101
H01M8/1226
H01M8/12 102A
H01M8/1253
H01M8/248
H01M8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064835
(22)【出願日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆誠
(72)【発明者】
【氏名】笹子 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 憲之
(72)【発明者】
【氏名】横山 夏樹
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126AA22
5H126BB06
5H126DD05
5H126GG02
5H126GG08
5H126GG12
5H126JJ03
5H126JJ05
(57)【要約】
【課題】
高出力密度を得ると共に、スタック組立時のセルへの応力印加および破損を防ぐ燃料電池を提供することを目的とする。
【解決手段】
アノード電極層およびカソード電極層で電解質層を挟んだ構造を含む単位セルを搭載する燃料電池であって、前記単位セルは、第1の部材と第2の部材の間に配置され、前記第1の部材と前記第2の部材の間に、中間基板が配置されており、前記単位セルは外周部を前記中間基板で支持され、前記電解質層の幅は、前記第1の部材および前記第2の部材の少なくとも一つと前記単位セルの間に形成された空洞部の最大幅以下であることを特徴とする燃料電池である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード電極層およびカソード電極層で電解質層を挟んだ構造を含む単位セルを搭載する燃料電池であって、
前記単位セルは、第1の部材と第2の部材の間に配置され、
前記第1の部材と前記第2の部材の間に、中間基板が配置されており、
前記単位セルは外周部を前記中間基板で支持され、
前記電解質層の幅は、前記第1の部材および前記第2の部材の少なくとも一つと前記単位セルの間に形成された空洞部の最大幅以下であることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
アノード電極層およびカソード電極層で電解質層を挟んだ構造を含む単位セルを搭載する燃料電池であって、
前記単位セルは、第1の部材と第2の部材の間に配置され、
前記第1の部材と前記第2の部材の間に、中間基板が配置されており、
前記単位セルは外周部を前記中間基板で支持され、
前記電解質層の厚さは1μm以下であることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池であって、前記電解質層がイットリア安定化ジルコニアであることを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池であって、前記アノード電極層の厚さが1μm以下であり、かつ、アノード電極に接して多孔質サポート層があることを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池であって、前記多孔質サポート層が酸化アルミニウムであることを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
請求項4に記載の燃料電池であって、前記多孔質サポート層が鉄を50%以上含有する合金であることを特徴とする燃料電池。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料電池であって、前記多孔質サポート層に空隙を有する金属材料が接することを特徴とする燃料電池。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池であって、前記中間基板に第1の導電領域および第2の導電領域が設けられていることを特徴とする燃料電池。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料電池であって、前記カソード電極層と前記第2の導電領域とが、ボンディングワイヤにより電気的に接続されることを特徴とする燃料電池。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池であって、カソード電極層に空隙を有する金属材料が接することを特徴とする燃料電池。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池であって、前記中間基板の貫通穴を分割するようにセル支持部が設けられていることを特徴とする燃料電池。
【請求項12】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池であって、1つの前記中間基板に複数の前記単位セルが搭載されることを特徴とする燃料電池。
【請求項13】
請求項12に記載の燃料電池であって、燃料ガス流路の下流側に設置されている前記単位セルは、上流側に設置されている単位セルと比較して、同一条件下で動作させた場合の発電電力が大きいことを特徴とする燃料電池。
【請求項14】
請求項12に記載の燃料電池であって、 1つの前記中間基板に搭載された複数の前記単位セルのうち、少なくとも1つの前記単位セルのアノード電極層は、同一の前記中間基板に搭載されている他の前記単位セルのカソード電極層と電気的に接続されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項15】
請求項1に記載の燃料電池であって、前記空洞部は、前記第1の部材と前記単位セルの間、および、前記第2の部材と前記単位セルの間の両方に形成されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項16】
請求項1に記載の燃料電池であって、前記電解質層の厚さは1μm以下であることを特徴とする燃料電池。
【請求項17】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池を有し、前記燃料電池全体の上下から圧縮応力を印加することを特徴とする燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質を用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素等の燃料を用いた、二酸化炭素の排出がない発電システムとして燃料電池が注目を集めている。燃料電池は、アノード及びカソードの2つの電極で電解質を挟む構造とし、アノード側に燃料ガス、カソード側に空気等の酸素を含むガスを供給することにより発電動作が行われる。
【0003】
発電電力を安全かつ効率的に外部に取り出すことを目的とし、電気的接続とガス透過を兼ねたメッシュ構造金属である集電体、燃料ガスと空気の流路を分離するセパレータ、外部へのガス漏れを防止するためのガスケット等を構成部品としたスタックが組立てられ、ネジの締め付け等により上下から圧縮応力を印加することで、密閉性の向上および接触電気抵抗の低減が図られる。
【0004】
また、2つの支持基板により燃料電池セルを収納して集電性能を向上させる技術も知られている(特許文献1)。
【0005】
また、支持基板に形成された開口部を覆う位置に電極層を備えるとともに、1000nm以下の厚さを有する固体電解質層を備え、電極層のうち開口部を覆う領域の少なくとも一部が多孔質である電池セルも知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-205534号公報
【特許文献2】WO2021/090441 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃料電池セルの出力は電解質層を薄くするほど向上するが、機械的強度は低下するためクラック等の破損が発生しやすくなる。
【0008】
特許文献1は、セルの下面が全面支持基板に接触している状態で上面の外周部にも別の支持基板が接触する構造であるため、電解質層を例えば1μm以下の薄膜として高出力密度の取得を図った場合に、スタック組立時の圧縮応力で電解質が破損する恐れがある。電解質層の破損はセルの故障に直結するため、これは避けなければならない。
【0009】
特許文献2は、1000nm以下の厚さを有する電解質層を備えるセルについて開示するが、セパレータを介して電解質層に印加される応力についての検討はされていなかった。
【0010】
本発明は、上記のような課題を鑑みてなされたものであり、高出力密度を得ると共に、スタック組立時のセルへの応力印加および破損を防ぐ燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面は、アノード電極層およびカソード電極層で電解質層を挟んだ構造を含む単位セルを搭載する燃料電池であって、前記単位セルは、第1の部材と第2の部材の間に配置され、前記第1の部材と前記第2の部材の間に、中間基板が配置されており、前記単位セルは外周部を前記中間基板で支持され、前記電解質層の幅は、前記第1の部材および前記第2の部材の少なくとも一つと前記単位セルの間に形成された空洞部の最大幅以下であることを特徴とする燃料電池である。
【0012】
本発明の他の一側面は、アノード電極層およびカソード電極層で電解質層を挟んだ構造を含む単位セルを搭載する燃料電池であって、前記単位セルは、第1の部材と第2の部材の間に配置され、前記第1の部材と前記第2の部材の間に、中間基板が配置されており、前記単位セルは外周部を前記中間基板で支持され、前記電解質層の厚さは1μm以下であることを特徴とする燃料電池である。
【0013】
本発明の他の一側面は、上記の燃料電池を有し、前記燃料電池全体の上下から圧縮応力を印加することを特徴とする燃料電池スタックである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高出力密度を得ると共に、スタック組立時のセルへの応力印加および破損を防ぐ燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1の燃料電池の断面図。
図2】実施例における空洞部の幅の定義を示す断面図。
図3】実施例1の燃料電池の各構成部品の斜視図。
図4】実施例1の燃料電池スタックの断面図。
図5】実施例2の燃料電池スタックの断面図。
図6】実施例4の燃料電池の断面図。
図7】実施例5の燃料電池の断面図。
図8】実施例6の燃料電池の断面図。
図9】実施例7の燃料電池の断面図。
図10】実施例8の燃料電池の断面図。
図11】実施例10の燃料電池の断面図。
図12A】実施例11の燃料電池の断面図。
図12B】実施例11の中間基板の斜視図。
図13】実施例12の燃料電池の各構成部品の斜視図。
図14】実施例13の中間基板の斜視図。
図15】実施例14の燃料電池の断面図。
図16A】実施例15の燃料電池の断面図。
図16B】実施例15の中間基板の斜視図。
図17】実施例16の燃料電池の断面図。
図18】実施例17の燃料電池の断面図。
図19A】実施例18の燃料電池の断面図。
図19B】実施例18の中間基板の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、図を見やすくするために、断面図相互において同一機能を有するものは同一の形状に同一のハッチングを付して符号を省略する場合がある。
【0017】
実施例に係る燃料電池の一つは、アノード電極層およびカソード電極層で電解質層を挟んだ構造を含む単位セルを搭載する燃料電池であって、単位セルは外周部を中間基板で支持され、電解質層の幅は空洞部の最大幅以下であることを特徴とする。
【0018】
実施例に係る燃料電池の一つは、アノード電極層およびカソード電極層で電解質層を挟んだ構造を含む単位セルを搭載する燃料電池であって、単位セルは外周部を中間基板で支持され、電解質層の厚さは1μm以下であることを特徴とする。
【実施例0019】
図1は本発明の実施例1の燃料電池の構造の一例を示す断面図である。実施例1の燃料電池1は、中間基板2上に少なくとも1つの単位セル3(以降、単にセルとも言う)が搭載されたものである。単位セル3は、多孔質サポート層4、アノード電極層5、電解質層6、カソード電極層7で構成されており、電解質層6はアノード電極層5およびカソード電極層7で挟まれている。場合により、多孔質サポート層4が省略される場合もある。
【0020】
中間基板2は絶縁体であり、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化珪素等の高温でも一定の機械的強度を有する材料が望ましい。中間基板2には、金や銀の金属材料を印刷配線技術で形成する等により、第1の導電領域8および第2の導電領域9が設けられる。
【0021】
多孔質サポート層4は、高出力密度セルの製造を目的として、アノード電極層5、電解質層6、カソード電極層7を例えば1μm等の薄膜とする場合に、セル全体を支持する役割を担う。多孔質サポート層4の材料としては酸化アルミニウムなどのセラミック材料が用いられ、また、多孔質構造とすることでアノード電極層5に燃料ガスが到達するようにしている。アノード電極層5は、ニッケルと安定化ジルコニアのサーメット等の材料からなり、導電性ペースト等により第1の導電領域8に電気的に接続される。
【0022】
図1のように、電解質層6およびカソード電極層7の範囲をアノード電極層5よりも狭めることで、カソード電極層7を下に向けてアノード電極層5を第1の導電領域8に接触させること、カソード電極層7を第1の導電領域8に接触させないこと、およびセルを中間基板2のザグリ部に収めることも可能となる。アノード電極層5の下面が露出される場合は、空気に触れることのないようガラスシール材等で遮へいすることが望ましい。
【0023】
電解質層6は、イットリアの組成比を8%とした安定化ジルコニア(イットリア安定化ジルコニア)等の材料からなる。スパッタリング等の成膜プロセスにより1μm以下の薄膜とすれば、高出力密度の発電を得ることも可能である。カソード電極層7は、白金や、白金とGDC(Gadolinium Doped Ceria)のサーメット、LSC((La,Sr)CoO3)等の材料からなり、ボンディングワイヤ10等により第2の導電領域9と電気的に接続される。
【0024】
第1の導電領域8と第2の導電領域9のそれぞれに、集電体11が接触して配置される。これはニッケルや銀などの導電材料からなるが、空気流路側に配置されるものは高温においても酸化されない材料とするのが望ましい。集電体11の外側にはガスケット12が配置される。中間基板2の上下方向に配置された集電体11およびガスケット12を、2つのセパレータ13で挟み圧縮応力を印加することにより、外部へのガス漏れを防止する。集電体11を空隙のあるメッシュ構造とすれば、圧縮された際にガスケット12と同じ厚さとなり、密閉性の向上が見込めると同時に導電領域との良好な電気的接続も図ることができる。なお上下方向とは各層が積層されている方向をいうものとし、上方向と下方向は転置可能とする。
【0025】
セパレータ13はステンレス鋼等の材料からなり、集電体11を介して第1の導電領域8および第2の導電領域9にそれぞれ電気的に接続され、単位セル3の発電電力の外部への取出しを実現する。この時、集電体11が重なる部分は中間基板2のみとし、電解質層6の幅が空洞部の最大幅以下の状態にすることで、燃料電池1を上下から加圧した際、セルへの応力印加、ひいてはセルの破損を防ぐことができる。
【0026】
図2は、実施例における燃料電池1の空洞部の幅の定義を示したものである。単位セル3の上下には構成部品が配置されておらず空洞部201,202となっている。空洞部の任意の断面それぞれにおいて、断面中にある空洞の幅の最大値をW1とする。また、同じ断面における電解質層6の幅の最大値をW2とする。スタック組立て時には上下のセパレータ13から圧縮応力を受けるが、応力印加方向に平行ないかなる断面においてもW2の値がW1以下であれば電解質層6に応力が印加されることはなく、破損を防ぐことができる。
【0027】
例えば、図2で示す断面において、上部空洞部201の最大幅より電解質層6の最大幅が小さいので、上から下に加わる力は電解質層6に加わらない。また下部空洞部202の最大幅より電解質層6の最大幅が小さいので、下から上に加わる力は電解質層6に加わらない。
【0028】
図3は本発明の実施例1の燃料電池の構造の一例を示す斜視図である。単位セル3はカソード電極層を下に向け、図1のように電解質層6およびカソード電極層7の範囲をアノード電極層5よりも狭めることで、アノード電極層5を第1の導電領域8に接触させることができる。そのようにした場合、単位セル3の上側には燃料を、下側には空気を供給する必要がある。この説明では、中間基板2の上に配置するガスケット12をアノード側ガスケット12′、中間基板2の下に配置するガスケット12をカソード側ガスケット12′′として区別する。
【0029】
中間基板2には、燃料流入口2a、燃料流出口2b、空気流入口2c、空気流出口2dがある。同様にガスケット12′には、燃料流入口12′a、燃料流出口12′b、空気流入口12′c、空気流出口12d′が、ガスケット12′′には、燃料流入口12′′a、燃料流出口12′′b、空気流入口12′′c、空気流出口12′′dが、セパレータ13には、燃料流入口13a、燃料流出口13b、空気流入口13c、空気流出口13dが設けられている。
【0030】
下段のセパレータ13の燃料流入口13aより燃料ガスを供給した場合、燃料ガスはカソード側ガスケット12′′の燃料流入口12′′a、中間基板2の燃料流入口2aを通過しながら上へ向かう。この時、アノード側ガスケット12′の燃料流入口12′aに切り欠き部を設けることによって、単位セル3の上側に燃料ガスを供給することが可能である。その後燃料ガスは、ガスケット12の燃料流出口12b、中間基板2の燃料流出口2b、セパレータ13の燃料流出口13b、を経由して外部に排出される。また、上段のセパレータ13の更に上に同様の構造を繰り返す場合は、上段のセパレータ13の燃料流入口13aを通過して上方へ燃料ガスが供給される。
【0031】
同様に、下段のセパレータ13の空気流入口13cより空気を供給した場合、カソード側にガスケット12′′の空気流入口12′′cに切り欠き部を設けることによって単位セル3の下側に供給することが可能である。その後空気は、カソード側ガスケット12′′の空気流出口12′′dを経由してセパレータ13の燃料流出口13dより外部に排出される。また、上段のセパレータ13の更に上に同様の構造を繰り返す場合は、中間基板2の空気流入口2c、カソード側ガスケット12′′の空気流入口12′′c、を通過して上方へ空気が供給される。
【0032】
図4は本発明の実施例1の燃料電池スタックの構造の一例を示す断面図である。燃料電池スタック400は、燃料電池1、底面冶具401、2つのガスケット402、天面冶具403、支柱404、締付部材405により構成される。底面冶具401と天面冶具403の少なくともどちらか一方と、ガスケット402には、セパレータ13の燃料流入口13a、空気流入口13c、空気流出口13dとの間で燃料ガスと空気の移動ができるような流路や穴が必要である。
【0033】
燃料電池スタック400は、下から底面冶具401、ガスケット402、燃料電池1、ガスケット402、天面冶具403の順に積み重ねることで組立て可能である。支柱404の天面および底面には、締付部材405の形状に一致する穴を設ける。
【0034】
燃料ガスや空気の外部への漏れを防ぐため、底面冶具401および天面冶具403の外周部に貫通穴を開け、支柱404を通し、締付部材405を締付けることにより、燃料電池1に対して上下から圧縮応力を印加する。
【0035】
この時、電解質層6の幅は空洞部の最大幅以下であるため、締付部材405による圧縮応力は印加されず、破損を防ぐことができる。締付部材405による圧縮応力は、単位セル3を保持する中間基板2に作用することで、燃料電池1の封止を可能としつつ、例えば1μm以下の薄い電解質層6の破損を防いでいる。
【実施例0036】
図5は本発明の実施例2の燃料電池スタックの構造の一例を示す断面図である。燃料電池スタック500は、燃料電池501、底面冶具401、2つのガスケット402、天面冶具403、支柱404、締付部材405により構成される。
【0037】
実施例1との差異は、図1で示した燃料電池1の構造を縦方向に積層したことである。これにより、2つの単位セル3を直列接続でき、スタックの出力電圧が増加する。なお、図1の構造を単純に積層した場合は中段にセパレータ13が2枚配置されるが、これは1枚で共通することができ、単位セル3を直列接続する中継部材になると同時に燃料ガス流路と空気流路を分離する役割を担う。また、この構造を繰り返し積層することにより、3直列以上とすることも可能であり、積層数に応じてスタックの出力電圧も増加する。
【0038】
このように複数積層した場合も、実施例1と同様に電解質層6の幅を空洞部の最大幅以下にすることで、締付部材405によりスタックを締付けた際に応力が印加されず、破損を防ぐことができる。
【実施例0039】
実施例1および2では、多孔質サポート層4をセラミック材料としていたが、導電性のある金属材料とすることも可能である。例えば、鉄を50%以上含有する合金などを用いる。これにより、セラミック材料の場合はアノード電極層5のみで電流経路となっていたが、多孔質サポート層4にも電流が流れるようになり、寄生抵抗が減少するためスタック内部での電力損失が低減される。特に、電解質層6の膜厚が薄いほど電流は大きくなるため、電力損失低減効果も大きくなる。
【実施例0040】
図6は本発明の実施例4の燃料電池の構造の一例を示す断面図である。実施例1~3との差異は、単位セル3に多孔質サポート層4が無いことである。実施例1~3は多孔質サポート層4をベースとしてアノード電極層5、電解質層6,カソード電極層7を形成するセルとしていたが、アノード電極層5をベースとして電解質層6,カソード電極層7を形成することも可能である。この場合も、電解質層6の幅を空洞部の最大幅以下にすることで、スタック組立時に応力が印加されず、破損を防ぐことができる。
【実施例0041】
図7は本発明の実施例5の燃料電池の構造の一例を示す断面図である。本実施例ではボンディングワイヤ10を使用せず、空隙のあるメッシュ金属構造の集電体11によりカソード電極層7がセパレータ13に電気的に接続されている。
【0042】
実施例1では電流がボンディングワイヤ10に向かうためカソード電極層7の内部で横方向への電子の移動があり、カソード電極層7のシート抵抗に相当する寄生抵抗が発生するため、電力損失を低減するにはカソード電極層7の膜厚を厚くする必要があり、これは製造コストの増加やスループットの低下を招く。
【0043】
本実施例はカソード電極層7全面で接続することができるため、カソード電極層7のシート抵抗を考慮する必要が無く、スループットの維持と電力損失低減の両立が可能となる。この効果は、電解質層6を薄くし電流出力を大きくするほど顕著になる。
【0044】
この場合も、電解質層6の幅を空洞部の最大幅以下にすることで、スタック組立時に応力が印加されず、破損を防ぐことができる。集電体11は空孔のあるメッシュ構造であり、その伸縮性により良好な電気的接触を図るものであるが、本発明実施例により単位セル3の上面には何も配置されていないため、導電性ペースト等により接着した中間基板2と単位セル3の剥離が発生する可能性はある。このため、剥離しないよう集電体11の厚さは十分に設計することが望ましい。また、実施例3と同様に多孔質サポート層4を導電材料とすることで、アノード側の電力損失を低減することも可能である。
【実施例0045】
図8は本発明の実施例6の燃料電池の構造の一例を示す断面図である。本実施例は単位セル3に多孔質サポート層4が無いが、実施例5と同様に空隙のあるメッシュ金属構造の集電体11によりカソード電極層7がセパレータ13に電気的に接続する構成が適用可能である。
【実施例0046】
図9は本発明の実施例7の燃料電池の構造の一例を示す断面図である。これまでの実施例との差異は、多孔質サポート層4を下、カソード電極層7を上に向けて単位セル3を設置していることである。従って、単位セル3の上側を空気、単位セル3の下側を燃料ガスが流れるよう、カソード側ガスケット12′′を中間基板2の上に、アノード側ガスケット12′を中間基板2の下に配置する。
【0047】
この場合も、電解質層6の幅を空洞部の最大幅以下にすることで、スタック組立時に応力が印加されず、破損を防ぐことができる。
【実施例0048】
図10は本発明の実施例8の燃料電池の構造の一例を示す断面図である。本実施例では多孔質サポート層4を導電材料としている。このため、単位セル3の下面はアノード電極層5と電気的に接続されており、例えば図8のように、単位セル3の直下に空隙のあるメッシュ金属構造の集電体11を配置することによりセパレータ13との電気的接続を図ることができる。
【0049】
この場合も電解質層6の幅を空洞部の最大幅以下にすることで、スタック組立時に応力が印加されず、破損を防ぐことができる。また、中間基板2と単位セル3は導電性ペースト等により接着し、剥離が発生しないようにすることが望ましい。
【実施例0050】
実施例8では多孔質サポート層を金属材料としていたが、セラミック材料を用いた場合も、多孔質サポート層中のガス流路孔内に金属を形成することにより、図10のように単位セル3の下面から集電体11を介してセパレータ13への電気的接続が可能である。ガス流路孔内への金属形成は、流路孔を埋めないよう表面のみに金属膜を形成する、あるいは、選択的に流路孔を金属で埋め下面への電気的接続を担う箇所と単位セル3への燃料ガス供給を担う箇所に分けるなどがある。
【実施例0051】
図11は本発明の実施例10の燃料電池の構造の一例を示す断面図である。本実施例は、実施例8における多孔質サポート層4が無い場合である。アノード電極層5が導電材料であるため、実施例8と同様に単位セル3の直下に集電体11を配置することによりセパレータ13との電気的接続を図ることができる。
【実施例0052】
図12Aは本発明の実施例11の燃料電池の構造の一例を示す断面図である。本実施例では、1つの中間基板2に複数の単位セル3が搭載されている。出力密度の観点では面積の大きな単位セル3を1枚のみ搭載することが望ましいが、面積が大きいほど破損のリスクが増大してしまう。特に、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の場合は、動作温度が600度以上であることから、昇降温時の熱応力による破損も懸念される。これに対し本実施例では、単位セル3の面積を小さくすることによって破損のリスクを抑えることができる。また、製造歩留向上の効果も得られる。
【0053】
図12Bは本発明の実施例11の中間基板の構造の一例を示す斜視図である。このように、中間基板2に複数の貫通穴とザグリ部を設けることにより、1つの中間基板2に複数の単位セル3を実装することができる。
【実施例0054】
図13は本発明の実施例12の燃料電池の構造の一例を示す斜視図である。実施例11と同様に1つの中間基板2に複数の単位セル3が搭載されるものであるが、本実施例では特性の異なる単位セル3が搭載されることを特徴とする。3種類の特性の異なる単位セル3があるものとし、区別するためそれぞれ、第1の単位セル3a、第2の単位セル3b、第3の単位セル3cとする。また、同一条件下で動作させた場合には、第1の単位セル3aは第2の単位セル3bよりも発電電力が大きく、第2の単位セル3bは第3の単位セル3cよりも発電電力が大きいものとする。
【0055】
燃料ガスおよび空気の流路を実施例1と同じとすると、各単位セル3の下には空気、単位セル3の上には燃料ガスが流れる。空気の流れを矢印1301で、燃料ガスの流れを矢印1302で示す。
【0056】
燃料電池を動作させた際、化学反応により燃料ガス中の水素や空気中の酸素は消費され、下流に向かうほどその濃度は低くなる。従って、全ての単位セル3で特性が揃っている場合、下流に配置される単位セル3は発電量が低くなる。そこで、下流側に特性の良いものを配置することによりその不均衡を緩和することができる。
【0057】
本実施例の場合、左側と上側の2つは水素濃度が、右側と上側の2つは酸素濃度が低くなるため、同一条件下で動作させた場合の発電電力が最も小さい単位セル3cを下側、同一条件下で動作させた場合の発電電力が最も大きい単位セル3aを上側に配置することにより、燃料電池動作時の各単位セル間の発電電力のばらつきを抑えることができる。
【0058】
単位セル3の特性を制御する手段としては、電解質層6の膜厚を変更するなどがある。電解質層6を厚くした場合には発電電力が低下する。
【実施例0059】
図14は本発明の実施例13の中間基板の構造の一例を示す斜視図である。1つの中間基板2に複数の単位セル3を実装する場合、単位セル3の無い箇所にも燃料が流れるため燃料利用効率の低下を招く。
【0060】
本実施例では、燃料ガス流路に合わせ中間基板2の貫通穴およびザグリ部を長方形にすることにより、複数の単位セル3を実装する場合の効率低下を抑えることができる。中間基板2の背面の空気の流れを矢印1301で示す。燃料ガスの流れを矢印1302で示す。
【0061】
単位セル3の形状も中間基板2のザグリ部に合わせ長方形となるが、長辺側および短辺側双方において、電解質層6の幅を空洞部の最大幅以下にすることで、スタック組立時に応力が印加されず、破損を防ぐことができる。
【実施例0062】
図15は本発明の実施例14の燃料電池の構造の一例を示す断面図である。実施例1との差異はカソード電極層7が分割されていることであり、単位セル3の製造歩留管理策としてカソード電極層7を分割することも有効である。成膜時の遮蔽物等により容易に寸法や形状が変更できるため、多孔質サポート層4の形状を変更する場合と比較して自由度が高い利点がある。
【実施例0063】
図16Aは本発明の実施例15の燃料電池の構造の一例を示す断面図、図16Bは中間基板の斜視図である。本実施例では1つの中間基板2に実装する単位セルは1つであるが、アノード電極層5と電解質層6、カソード電極層7を分割し、中間基板2にセル支持部1601を設けている。これにより単位セル3の支持面積が増加し、温度変化等により下方向に曲がる応力が発生した際に変形を防ぐことができ、破損のリスクを低減することができる。
【0064】
アノード電極層5は必ずしも分割する必要はなく、例えば実施例4のように多孔質サポート層4が無い場合は、電解質層6とカソード電極層7のみを分割することで本実施例を適用できる。また、実施例7のようにカソード電極層7を上に向ける場合は、電解質層6とカソード電極層7も分割する必要はない。
【0065】
本実施例ではカソード電極層7からのセパレータ13への電流経路が外周部のみとなっているが、
セル支持部1601に第2の導電領域9を、更にその下に集電体11を設けることにより寄生抵抗を低減することも可能である。ただし、セル支持部1601の専有面積が大きくなるほど単位セル3の発電面積が減少するため、その点は注意が必要である。
【実施例0066】
図17は本発明の実施例16の燃料電池の構造の一例を示す断面図である。本実施例の燃料電池1は、同一の中間基板2に複数の単位セル3を搭載しており、中間基板2に貫通電極1701を設けることにより直列接続としている。
【0067】
本実施例によれば、燃料電池1に出力電圧を引き上げて出力電流を引き下げることができるため、電力損失を低減することができる。一般に、寄生抵抗による電力損失は電流値の2乗に比例するため、特に電解質層6が1μm以下の薄膜の場合は出力電流が大きく、この効果は顕著になる。
【0068】
同一の中間基板2に搭載された複数の単位セル3全てを直列接続とした場合は配線の複雑化や、燃料電池1の構造を鉛直方向に繰り返し積層したスタックの出力電圧が高くなることによる絶縁不良の恐れがあるが、単位セル3の配置を図12Bのように直交する2方向に規則的に並ぶようにすれば、各列ごとに並列接続した上で列間は直列接続にすることができ、配線の複雑化を防ぐと同時にスタック組立て後の各層の出力電圧および出力電流の調整も可能となる。
【実施例0069】
図18は本発明の実施例17の燃料電池の構造の一例を示す断面図である。本実施例では中間基板2が導電体を主体としたものとなっており、絶縁層1801によってアノードとカソード間の短絡を防ぐ3層構造となっている。この他は実施例1と同様であり、アノードを第1の導電層1802、カソードを第2の導電層1803に接続することによって、集電体11を介してセパレータ13に発電電力が送られる。この場合も、電解質層6の幅を空洞部の最大幅以下にすることで、スタック組立時に応力が印加されず、破損を防ぐことができる。
【実施例0070】
図19Aは本発明の実施例18の燃料電池の構造の一例を示す断面図、図19Bは斜視図である。図19A図19B中の破線A-A′の断面であり、図19Bにおいて最上段セパレータ13は背面の状態を示すため角度を変えている。また、最上段のセパレータ13と最下段のセパレータ13を区別する必要がある場合には、最上段に配置するセパレータ13をアノード側セパレータ13′、最下段に配置するセパレータ13をカソード側セパレータ13′′として説明する。
【0071】
本実施例ではセパレータ13に流路溝部1901が設けられている。これにより、ガスケット12に切り欠き部を設けなくても単位セル3に燃料ガスおよび空気を供給することができ、ガスケット12の流路が円形の穴のみになったことによって密閉性が向上する。また、単位セル3の厚みに対して中間基板2のザグリ部が浅い場合や、集電体11やガスケット12が薄い場合に、単位セル3やボンディングワイヤ10がセパレータ13と接触するリスクを低減することも可能である。
【0072】
カソード側セパレータ13′′の空気流入口13′′cより空気を供給すると、空気は流路溝部1901を通って単位セル3に供給され、その後空気流出口13′′dより外部に排出される。燃料ガスは、カソード側セパレータ13′′の燃料流入口13′′a、ガスケット12の燃料流入口12a、中間基板2の燃料流出口2bを通ってアノード側セパレータ13′に至り、流路溝部1901により単位セル3に供給される。その後ガスケット12の燃料流出口12b、中間基板2の燃料流出口2b、カソード側セパレータ13′の燃料流出口13′′bを経由して外部に排出される。
【0073】
図4のように同様の構造を繰り返し積層する場合は、各段のセパレータ13に燃料流入口13a、燃料流出口13b、空気流入口13c、空気流出口13dを設け、更に両面に流路溝部1901を設ける。この時、流路溝部1901の深さは、セパレータ13の厚さの半分未満である必要がある。
【0074】
以上説明した実施例によれば、単位セルをセパレータとは別の中間基板に実装し、中間基板を介してセパレータとの電気的接続を図る。実施例によれば、スタック組立時のセルへの応力印加を防ぐことができる。ひいては,電解質層の破損等を起因とするセルの故障を防ぐことができる。また、電解質層を薄くすることにより出力密度の向上も可能となる。
【0075】
実施例によれば、高性能な燃料電池が実現でき、炭素排出量を減らし、地球温暖化を防止、持続可能な社会の実現に寄与することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 燃料電池
2 中間基板
2a 燃料流入口
2b 燃料流出口
2c 空気流入口
2d 空気流出口
3 単位セル
4 多孔質サポート層
5 アノード電極層
6 電解質層
7 カソード電極層
8 第1の導電領域
9 第2の導電領域
10 ボンディングワイヤ
11 集電体
12 ガスケット
12′ アノード側ガスケット
12′′ カソード側ガスケット
13 セパレータ
13′ アノード側セパレータ
13′′ カソード側セパレータ
400 燃料電池スタック
401 底面冶具
402 ガスケット
403 天面冶具
404 支柱
405 締付部材
500 燃料電池スタック
501 燃料電池
1601 セル支持部
1701 貫通電極
1801 絶縁層
1802 第1の導電層
1803 第2の導電層
1901 流路溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19A
図19B