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特開2023-155096石や岩による自然の土砂堆積を利用する洗掘防止工法
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  • 特開-石や岩による自然の土砂堆積を利用する洗掘防止工法 図1
  • 特開-石や岩による自然の土砂堆積を利用する洗掘防止工法 図2
  • 特開-石や岩による自然の土砂堆積を利用する洗掘防止工法 図3
  • 特開-石や岩による自然の土砂堆積を利用する洗掘防止工法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155096
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】石や岩による自然の土砂堆積を利用する洗掘防止工法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/02 20060101AFI20231013BHJP
   E02B 3/08 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
E02B3/02 Z
E02B3/08 301
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022071943
(22)【出願日】2022-04-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】309036737
【氏名又は名称】杉村 和高
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉村 和高
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA05
2D118BA01
2D118BA05
2D118CA07
2D118FA06
2D118GA32
2D118GA51
(57)【要約】
【課題】石や岩による自然の土砂堆積を利用する洗掘防止工法である。
【解決手段】 洗掘状態が発生している建造物の前面に、周囲にある中での大きめな石や岩を、流れが来る方向に向けて縦に並べ、それらを複数の列状にして間隔を開けてその場に設置し、それぞれ個別の留め具により水底に直接に固定する。同時に、それらの列と列の間及びその脇で建造物に接した場所に、同じく周囲にある中での大きめな石や岩の列を、水流の方向を横断して設置しそれぞれ個別の留め具により水底に直接に固定する。
これによって、建造物の前面に自然の土砂堆積を実現して建造物への洗堀を防ぐ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中において洗掘が生じている又は生じる可能性がある橋脚や護岸や堤防やその他の建造物の前面に、その周囲にある中での大きめな石や岩を又はそれらに似せた人造の石や岩を、水流が来る方向に向かって単独又は複数で縦に並べた列状にして、
単独あるいは複数のそれらの列を間隔を開けて設置し、留め具をそれぞれ個別に水底に直接埋設する事により、石や岩とその列をその場に確実に押しとどめ固定することを特徴とする洗掘防止工法
【請求項2】
前記の、周囲にある中での大きめな石や岩またはそれらに似せた人造の石や岩が、留め具によって個別に直接にとどめる事が出来ない大きさである場合において、その中を水流が自由に通過するよう、金網、鉄材を籠状または袋状に細長く形成した中にそれらの石や岩を入れ、水流が来る方向に向かって単独または複数の列状にして間隔を開けて設置し、留め具をそれぞれ個別に水底に直接埋設する事により、石や岩とその列をその場に確実に押しとどめ固定することを特徴とする請求項1記載の洗掘防止工法。
【請求項3】
前記の、水流が来る方向に向かって設置した単独または複数の石や岩の列と列の間およびその脇において、周囲にある中での大きめな石や岩を又はそれらに似せた人造の石や岩を、水流が来る方向に対して横断方向に並べた列にして建造物の直前に設置し、留め具をそれぞれ個別に水底に直接埋設する事により、その場に確実に押しとどめ固定することを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の洗掘防止工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石や岩が多い流域、水域での橋脚や堤防や護岸やその他の建造物の前面に生じている洗掘を防ぐ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川において、橋の橋脚や護岸などの建造物に水流が直接あたる場所が深く浸食されることがあり、それは洗掘(センクツ)と呼ばれている。時として洗掘は、橋脚を破壊して橋を流失させる事も、護岸された堤防を破壊する事もあり、河川の水中に接する建造物では避けなければならない現象である。しかし、洗掘自体は全くの自然現象で、河川の岸辺にある岸壁に水流が直接ぶつかれば必ず発生している現象であり、海岸でも水流や波が直接に大きな建造物に当たる場所では同様の現象が発生している。
【0003】
河川の上流中流には大小様々な大きさの石や岩が多く有り、それらより小さな砂利や砂や土も多くある。そして、上流中流では大きな石や岩がある場所は深く流れ、小石や砂が多い場所は浅く流れているのが普通である。洗掘現象は、大きな石や岩と小さな石や砂や土など、大きさが大きく異なる土砂と、強い水流がある場所で発生している。
洗掘現象は河川の上流中流の屈曲部でも多く見る事が出来て、その場所が深く掘れた淵になっている事が多く、それは屈曲部の岩が巨大であるからだと言える。屈曲部でなくても巨大な岩が水流に接している場合にも、その前が深い淵になっている事がある。
また、上流中流には川岸に自然の岸壁が連続している場所があるが、それらの場所でも岸壁の前は深く流れ、川底には砂利や砂など小さな土砂が多い。これらの場所では岸壁に並行して水流が流れているので、屈曲部の淵ほどには深くは無いが、屈曲部と同様に洗掘現象が発生していると言える。
【0004】
日本では上流中流の普段の流れは透明である事が普通で、その時には土砂の流下がほとんど発生していない。洗堀現象は、石や岩やその他多くの土砂が甚だしく流下する事によって生じているから、増水時で水量が多くなる時ほど発生し易い。
普通の水量の時には河川敷の中央付近を蛇行していた水流が、増水時には流量が増加して流れの位置を変え、護岸された岸辺を洗掘する事がある。水流は、増水時に深く流れた場所を流れようとする傾向が強いので、普通の水量に戻ってもその岸辺が深く流れ続け、コンクリート護岸の前に洗掘状態が継続する事がある。この場合には、広い河川敷であっても、水流の位置が両岸に限られた光景になることも多い。
【0005】
上流中流に大量にある大小様々な大きさの土砂は、一見、全く不規則に流下し堆積しているかのように見えるが、そこには明らかな規則性がある。上流中流では石や岩の大きさが上流に至るほど大きくなっている。これは日本では多くの人に知られている事で、小学校で習ったと言う人もいる。例えば、上流には一抱えほどの石や岩がある河川であっても、その中流部で握りこぶしより大きな石を見る事が出来なくても誰も不思議には思わないのである。
この現象を正確に言うと、上流中流のそれぞれの場所にある土砂の中での大きな石や岩の大きさは、上流に至るほど大きく下流に近付くほど小さくなっていると言う事である。それぞれの場所にある全ての石や岩が大きくなっている事は無いのであり、それぞれの場所には大きな石や岩よりも小さな石や岩も多くあり、それらはそれぞれの場所の上流側や下流側にある小さな石や岩の大きさと違いは無い。
【0006】
河川では大きな石や岩であるほど流れ難く小さな土砂ほど流れ易いので、それぞれの場所にある大きな石や岩は長い間その場所に止まり続けるのが普通で、小さな土砂であるほど頻繁に流下して来て頻繁に流下して行くことが多い。石や岩の大きさが上流に至るほど大きくなる現象は、河川に発生する増水がその規模ごとに発生頻度が異なっている事が関係している。
特別規模が大きな増水は数十年や十年に一度くらいにしか発生しない。規模が大きな増水は数年に一度くらいは発生し、大きな増水は一年に一度くらいに発生する。普通の増水は一年に幾度か、それより小さな増水は幾度も発生している。
【0007】
河川にあるほとんどの石や岩が流下するのは特別規模が大きな増水の時に限られ、その時であっても最大の水量が流れるのは短い時間の間に限られているから、流下する最大の石や岩であっても何処までも流下し続ける訳では無い。
規模が大きな増水の時には周囲の中での最も大きな石や岩よりも小さい石や岩が流下するが、やはり何処までも流下し続ける訳では無い。それらより小さな石や岩や小さな土砂は上記の増水や大小の増水がある度に流下している。しかし、それらの小さな石や岩であっても、そのほとんどは、何処までも流下し続ける事は無い。それらいずれの増水の機会であっても、流下している中での大きな石や岩、大きな土砂ほど早く停止し堆積し始める。
【0008】
河川にある全ての石や岩は、それぞれの大きさと重量に相応しい場所以上に流下する事が無い。であるから、それぞれの場所にある大きな石や岩は、増水の機会が多くあっても容易に流下移動する事が無い。その傾向は、石や岩の大きさがより大きくなる上流ほど顕著だと言える。つまり、上流にある大きな石や岩であるほど長い年月を掛けて少しずつ下って行く。
石や岩が全般に小さくなる中流では、大きな石や岩の大きさの場所ごとの変化は長い距離を経て生じているが、やはり大きな石や岩であるほど容易に流下しない。これらの現象は、永い年月を経ても変わる事なく各地の幾多の河川で続いてきた。であるから、上流ほど石や岩が大きい事を誰でも確かめる事が出来るのである。但し、地形や支流により河川の流れの水量や傾斜が均一に変化している事は無いので、石や岩の大きさが上流に至るほど大きくなる現象も一様に変化している事は無い。
【0009】
上流中流ではそれらの事を確かめ易くなる状況も発生している。発生頻度が多くない特別規模が大きな増水や規模が大きな増水の時には、水位が上昇して河川敷であった場所も水流になるから、大量の土砂も川幅いっぱいに流れて、水流が弱く流れる川岸には大きな石や岩が堆積する事が多くある。それに対して、回数が多い大小の増水では、水位の上昇もそれほどではないから高い位置の河川敷に水流が届くことも無く、流下して来て堆積する石や岩や小さな土砂は河川の中央でU字型に掘れた水底やその近くにばかり堆積する。
これらの事情から、それぞれの場所にある大きな石や岩は、流下する機会が少なく、河川敷や岸辺にとどまり堆積し続ける事が多いのでそれらの場所で目立って多く見える。それらの石や岩は、形がそれぞれに異なっていても似通った大きさである事が特徴である。
【0010】
ここでの記述は、現実に生じている幾つかの現象を単純化しているが、実際の河川で生じている状況はもう少し複雑である。また、近年は上流中流でも多くの工事が行われているので、上記の現象がそのまま発生しているとは言い切れない事もある。しかし、石や岩の大きさが上流に至るほど大きくなる現象が発生している事は多くの人に知られている。また、それぞれの場所にある大きな石や岩が容易に流下しない事も明らかな事実であり、それ等の現象は各地の河川で普遍的に発生している。
【0011】
河川の上流中流では水流が直接に当たる屈曲部に巨大な岩である岸壁があり、その場所が深くなっている事が多いのであるが、全ての屈曲部に岸壁があるのでは無く、場所によっては、強い水流が当たっても巨岩では無く大小の石や岩や小さな土砂が多く堆積して、洗掘が生じることなく水流が屈曲し流下している状況を見る事がある。
【0012】
従来から考えられてきた様々な洗掘防止方法では、その原因である強い水流を直接に制御する構造物をその場所に設置して洗掘現象を防止するのが普通である。(例えば、特許文献1~3参照)。
従来からの洗掘防止工事のほとんどは、石や岩など土砂が多い河川での土砂流下と堆積の規則性を考える事が必ずしも充分では無かった。本発明は、上流中流での土砂流下と堆積の規則性と、それぞれの場所での大きな石や岩の重要性を考え、また、水流が直接当たっても巨岩や岸壁が無く洗掘が発生していない場所を観察し考えた発明であり、自然の土砂流下と堆積作用を利用して、洗掘が発生しない土砂堆積状況を、建造物の前面に形成する事を意図した発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許6986119
【特許文献2】特許5022500
【特許文献3】特許5936356
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
河川では橋脚に限らず堤防のコンクリート護岸においても洗掘が発生している。しかし、従来の種々の技術では洗掘を真に防ぐことが無く、多くの工事を重ね出費を増大させるばかりであったから、これらの問題を恒久的に改善することが望まれて来た。
【0015】
自然の河川ではそれぞれの場所にある大きな石や岩は幾多の増水があっても容易に移動流下する事が無く、また、岸辺にある事が多いそれらの大きな石や岩は、その周囲に洗掘現象を生じさせる事なくその他の石や岩と共に自然の土砂堆積状態で存在し続けている。
そして、洗掘現象は流れに接する石や岩が周囲の土砂に比べて大きすぎるから発生しているのである。したがって、洗掘現象が発生する橋脚や護岸や堤防などの建造物の前に、それぞれの場所での大きな石や岩を中心にした自然の土砂堆積を生じさせることが出来れば、増水時の強い水流が建造物や岸辺に直接及ぶことがなくなり、洗掘が生じる事も無くなる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
洗掘が発生している建造物の前面に、周囲にある中での大きめな石や岩を、水流が流れて来る方向に向かって幾つか縦に並べ、一つ或いは複数の列状にして間隔を開けて設置する。それらの石や岩やその列が、増水により水底自体が流動化した時でも移動しないように、それぞれに留め具を使用して水底に直接にとどめる。また、縦に設置した石や岩の列の間やその脇にある建造物に接して、同じく石や岩の列を水流の横断方向に設置する。そして、それらの石や岩やその列もそれぞれに留め具を用いて水底に直接にとどめる。
この時、石や岩あるいはそれらの列を水底にとどめる留め具は、それぞれ個別に直接に水底に埋設する必要がある。石や岩あるいはそれらの列の下にコンクリート等による基部の塊を設けそれらに留め具を埋設した場合では、その基部の塊が巨大な石や岩の役割を果たすので、新たな洗掘が生じてしまう。
周囲にある中での大きめな石や岩の数が少ない場合には、それらに似せた人工の石や岩を使用する事も可能であるが、人工のそれらは耐久性が極めて乏しいのでなるべく自然石を使用するべきである。
【0017】
その場にとどめるべき石や岩が留め具などによってもその場に直接にとどめる事が出来ない大きさである場合には、幾つものそれらの石や岩を金網や金具を用いて袋状、蛇篭状などにまとめた後、水流が石や岩の間を自由に通過できるような状態のまま幾つかの列にして、水流の方向に向かって間隔を開けて設置し、上記と同じように確実に水底にとどめる。また、縦に設置した石や岩の袋状、蛇篭状の列の間やその脇にある建造物に接して、同じく袋状、蛇篭状の石や岩の列を水流の横断方向に設置し同じように水底に確実にとどめる。これらの場合でも、石や岩とその列を水底にとどめる留め具は、それぞれ他の留め具とは別にして個別に直接に埋設する必要がある。
【0018】
新たな工事方法で重要な事は、縦列にまた横断方向にしてその場にとどめる石や岩の大きさである。その周囲にある中での大きめな石や岩は規模の大きな増水があった時でも容易に流下移動しないのであり、それらを留め具により水底に固定した新たな構造は幾多の増水があった時でも破壊される事が無い。
それらの石や岩が大きすぎれば、その石や岩の周囲に新たな洗掘状態を生じさせて他の石や岩や土砂の堆積を妨げ、小さ過ぎれば周囲に多くの土砂を堆積させる効果が少なく、また、流下してしまう可能性も多くなる。自然の石や岩による列状の構造の替わりにコンクリートを固めたり、コンクリートブロックを列状にとどめた場合でも同じ理由により、新たな構造物が成果を挙げる事が無くなる。
【0019】
新たな工事方法で設置する石や岩の列の長さはそれぞれの場所の状況によって変更する。列の石や岩の数が少なくても効果がある場合も考えられ、その時に参考になるのは周囲にある自然の岸辺の状況である。自然の河川では、岸辺の石や岩が大きい場所は岸辺の傾斜が急で、岸辺に小石や砂が多ければその傾斜は穏やかである。
石や岩の列の間隔も考慮する必要がある。間隔が狭すぎれば大きめな石や岩が流入して来る可能性が少なくなり、広すぎればその場所に新たに強い水流を生じさせて流下して来た石や岩を容易に排出してしまう。列と列の間の間隔は、設置する場所の水流の強さと流下して来る土砂の量によるが、設置した石や岩の列の幅を基準にして、その3倍ないし5倍程度に考えられ、これもその場の状況による。
【0020】
特許請求の範囲、及び明細書の一部では大きな石や岩の大きさを、周囲にある中での大きめな石や岩、と記述している。これは、工事の実施に当たって、それらの石や岩が大きいかそうでは無いかを数値をもって厳密に判断する事を要求していないからである。
それぞれの場所にある大きな石や岩の大きさはそれぞれの場所ごとに異なっている。また、河川にある石や岩はその形が様々であるのが普通で、この状況でそれぞれの大きさを厳密に規定し判断するのは不可能である。さらに、現実の河川にあるそれぞれの場所の大きな石や岩の場合でも、その大きさが厳密に同じ大きさである事は無い。
したがって、大きな石や岩を現実的に判断する事が可能になるように、周囲にある中での大きめな石や岩、としている。実際、それは、現場で工事を行う施工者の裁量の範疇内の事柄である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に基づき設置し固定した石や岩の列は、建造物の前にあり、周囲にある中での大きめな石や岩によって形成されている。したがって、増水した強い水流が直接に建造物に当たる事が無く、建造物の周囲に洗掘状態が発生する事が無い。そして、流下して来た大小様々な石や岩や土砂も普通の岸辺と同じように、石や岩の列の間やその脇やその上に堆積し重なり合う。
特別規模が大きな増水や規模が大きな増水が発生した時に本発明の構造物では、最も水量が多い時に流下して来た大量の土砂の中での大きめな石や岩やそれに近い大きさの石や岩は、石や岩の列による間隔の間に入り込むが、その大きさや重さ故に設置された石や岩の列を乗り越える事が出来なくて石や岩の列の間に残る事が多い。その他の土砂のほとんどは多く流れて来ても石や岩の列を乗り越え通り過ぎて流下するのがほとんどで、増水以前に列の石や岩の間に堆積していた大きめではない石や岩もまた流下して行く。増水の水量が減少してくれば、大きめな石や岩よりも小さな石や岩もその場に堆積し、その後、水量が減少するにしたがって、その場に堆積する土砂はさらに小さくなっていく。
【0022】
河川の岸辺に堆積した大小様々な大きさの土砂は、増水があった時に、小さな砂や砂利、小さな石や岩から順に流下して行き、全ての土砂がいちどきに流下する事は無い。本発明による新たな構造物でも、特別規模が大きな増水や規模が大きな増水など幾多の増水が発生しても、その場に堆積した土砂が直ちに流下して行く事が無く、設置した大きめな石や岩あるいは後から堆積した大きめな石や岩が流下する事は無いので、強い水流が建造物に直接に当たる可能性は極めて少ない。
本発明による構造物では、増水がある度に流下して来る様々な大きさの石や岩や土砂の内で、その場にある大きめな石や岩よりも小さな土砂の更なる流下を妨げる事が無い。新たな構造物は、さまざまな規模の増水のたびに、流下するべき石や岩を流下させ流下できない大きさの石や岩はその場にとどめ続け、増水が減水期になれば、減水の程度により様々な大きさの石や岩や土砂を順次堆積させる。
【0023】
本発明の方法による構造物は、河川において自然に見られる土砂流下と堆積の現象をそのまま利用した方法であり、構造が簡単で環境に負荷をかけること無く、使用する材料もその周囲にある石や岩を利用するのでその設置も容易である。また、この工事方法は、護岸など建造物が無い岸辺の場合でも応用する事が可能である。
そして、新たに形成されたその光景は自然に調和した自然の風景、自然の環境そのものになる。自然に集積した石や岩は、人工的な石や岩あるいはコンクリートに比べて格段に耐久性が強く長い年月の間その状況が保たれ、また、土砂堆積を形成している多くの土砂も幾多の増水によって自然に交換交代していくから、新たな構造物の維持も極めて容易である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の石や岩を縦の列状にして橋脚の両側と中央に留め具を使用して設置固定し、流れの横断方向にも橋脚に沿って同様に石や岩の列を留め具を使用して設置固定した例の平面図である。
図2】本発明を護岸において実施した場合の平面図で、本発明の石や岩を袋状、籠状にまとめて列状にして間隔を開けて留め具を使用して設置固定し、流れの横断方向にも護岸に沿って同様に留め具を使用して設置固定した例の平面図である。
図3】本発明の、石や岩を袋状、籠状にまとめて列状にした時、それらを固定する留め具に、左右に連結してU字型構造のものを使用した平面図である。
図4図4図3の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の方法による構造物を河川上流中流域の橋脚に設置した例として、図1の平面図を説明する。橋脚6において、流れが来る方向1に向けて橋脚に接する両側とその中央部に、周囲にある中での大きめな石や岩2を列状に縦に並べ、それらの移動を防ぐために、それぞれに留め具4を水底に直接に埋設してその場所にとどめ固定している。この図では留め具として杭または柱を想定している。
また、その石や岩の縦の列の間に、同じく周囲にある中での大きめな石や岩2を流れの横断方向に列状に並べて橋脚の直前に設置し、留め具4を水底に直接に埋設してそれぞれその場にとどめ固定している。
これらの構造によって、増水時に流れてきた多くの土砂の内で、先ず大きめな石や岩が石や岩の列の間にとどまり、それらより小さな石や岩および小さな土砂も減水の進行により次第にその場にとどまるようになる。したがって、橋脚に強い水流が直接に及ぶ事が無くなり洗掘も無くなる。橋脚の場合では、流れに対して長大な横幅の橋脚を建設する事は無いので、流れに向かって設置する石や岩の列は数多くを必要としないが、橋脚の両側にそれらを設置する事は必須である。
【0026】
図2は、本発明を上流中流域の護岸7において実施した場合の平面図で、周囲にある中での大きめな石や岩2を数多く入れて袋状、籠状3にまとめ列状の構造にして、水流が来る方向1に向けて複数のそれらを間隔を開けて設置し、留め具4を水底に直接に埋設しそれぞれの場にとどめ固定している。また、それらの列と列の間とその脇には、袋状、籠状3の石や岩の列を、流れの横断方向に護岸に沿ってその直前に同じく設置固定している。
河川の上流中流でも、全ての岸辺で洗掘状態が発生しているのではないので、全ての岸辺に洗掘防止工事を行う必要は無い。洗掘防止工事を施工する必要があるのは増水時に流心の強い流れが当たっている岸辺に限られる。それらの場所に洗掘防止工事を行い、増水によっても流下しない土砂堆積を生じさせる事ができれば、その周囲や下流側にも自然の土砂堆積が生じると考えられる。
【0027】
図3は、周囲にある中での大きめな石や岩2を数多く袋状また籠状3にまとめた場合に、それらを固定するのに左右に連結したU字型の留め具5を使用した例の平面図である。
【0028】
図4は、上記の図3の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 水流の方向。
2 周囲にある中での大きめな石や岩。
3 大きめな石や岩を集めて入れた袋状や籠状の構造
4 大きめな石や岩を、又はそれらを入れた袋状や籠状の構造を、その場に押し止めるための留め具。
5 大きめな石や岩を、又はそれらを入れた袋状や籠状の構造を、その場に押し止めるための左右に連結したU字型の留め具。
6 橋脚。
7 護岸。
8 水底。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-03-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中において洗掘が生じている又は生じる可能性がある橋脚や護岸や堤防やその他の建造物の前面に、その周囲の河川内にある中での大きめな石や岩を又はそれらに似せた人造の石や岩を、水流が来る方向に向かって縦に並べた列を、単独あるいは間隔を開けて複数設置し、留め具をそれぞれ個別に水底に直接埋設する事により、石や岩とその列をその場に確実に押しとどめ固定することを特徴とする洗掘防止工法
【請求項2】
前記の、周囲の河川内にある中での大きめな石や岩またはそれらに似せた人造の石や岩が、留め具によって個別に直接にとどめる事が出来ない大きさである場合において、その中を水流が自由に通過するよう、金網を籠状または袋状に細長く形成した中に入れ、水流が来る方向に向かって縦に並べた列を、単独あるいは間隔を開けて複数設置し、留め具をそれぞれ個別に水底に直接埋設する事により、石や岩とその列をその場に確実に押しとどめ固定することを特徴とする請求項1記載の洗掘防止工法。
【請求項3】
前記の、水流が来る方向に向かって設置した石や岩の列と列の間、および、水流が来る方向に向かって設置した石や岩の列の脇において、その周囲の河川内にある中での大きめな石や岩を又はそれらに似せた人造の石や岩を、水流が来る方向に対して横断方向に並べた列にして建造物の直前に設置し、留め具をそれぞれ個別に水底に直接埋設する事により、その場に確実に押しとどめ固定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の洗掘防止工法。