(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155113
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
C22B 7/04 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
C22B7/04 A
C22B7/04 B
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104217
(22)【出願日】2022-06-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】202210367824.7
(32)【優先日】2022-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520340167
【氏名又は名称】▲ろん▼▲鉱▼▲環▼保科技(上海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】Greenore Cleantech (Shanghai) Co., Ltd
【住所又は居所原語表記】Room 6A7, Building No.15, 481 Guiping Road, Xuhui District, Shanghai 200233, China
(71)【出願人】
【識別番号】522260687
【氏名又は名称】上海源▲ハン▼能源技▲術▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Yuanhan Energy & Chemical Technology Co.,Ltd
【住所又は居所原語表記】N0.14, Lane 1502, Luoshan Road, China (Shanghai) Pilot Free Trade Zone, Pudong District, Shanghai, China
(71)【出願人】
【識別番号】522260698
【氏名又は名称】▲レイ▼▲礦▼科技(上海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】GreenOre Technology (Shanghai) Co.,Ltd
【住所又は居所原語表記】Room 101-102, Building No.54, 248 Guanghua Road, Minhang District, Shanghai, China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】周小舟
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼云峰
(72)【発明者】
【氏名】崔睿
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA09
4K001AA10
4K001BA12
4K001BA22
4K001DA05
4K001DB02
4K001HA09
4K001KA02
4K001KA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO
2鉱化との結合方法及びシステムを提供する。
【解決手段】銅スラグを取得するステップと、
前記銅スラグによって滓化処理を行うステップと、
滓化処理によって改質スラグを取得するステップと、
前記改質スラグによって海綿鉄を取得するステップと、
取得された前記改質スラグを固形産業廃棄物によるCO
2鉱化プロセスに結合するステップと、
上記の海綿鉄取得過程で生成されたCO
2を固形産業廃棄物によるCO
2鉱化プロセスに結合するステップと、を含む銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO
2鉱化との結合方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅スラグを取得するステップと、
前記銅スラグによって滓化処理を行うステップと、
上記滓化処理によって改質スラグを取得するステップと、
前記改質スラグによって海綿鉄を取得するステップと、
取得された前記改質スラグを固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスに結合するステップと、
上記海綿鉄取得過程で生成されたCO2を固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスに結合するステップと、を含むことを特徴とする、銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法。
【請求項2】
上記滓化処理過程で生成されたCO2を固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスに結合することを特徴とする、請求項1に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法。
【請求項3】
固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスで取得された炭酸塩生成物が上記滓化処理に部分的に参加することを特徴とする、請求項1に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法。
【請求項4】
前記改質スラグによって海綿鉄を取得する上記ステップは、合成ガス又はCO又はH2又はCO、H2の混合物を導入するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法。
【請求項5】
取得された前記改質スラグを固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスに結合する上記ステップの前に、前記改質スラグに対して脱硫処理を行うステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法。
【請求項6】
上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスは、
固形産業廃棄物と、補助試薬と、CO2とによる混合反応過程と、
上記混合反応過程で生成されたスラリーによって固液分離処理を行うステップと、
上清及び未反応の固体粒子を取得するステップと、を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法。
【請求項7】
上記取得された上清によって炭酸塩生成物を製造し、及び/又は、上記未反応の固体粒子を上記混合反応過程に循環させることを特徴とする、請求項6に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法。
【請求項8】
前記炭酸塩生成物は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム又は炭酸カルシウムマグネシウムを含むことを特徴とする、請求項6に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法。
【請求項9】
取得された銅スラグを滓化処理して改質スラグを取得するための滓化処理装置と、
上記改質スラグを二次処理して海綿鉄を取得し導出する二段処理装置と、
上記取得された改質スラグを上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置内に輸送するための第1結合装置と、
上記二段処理装置で生成されたCO2を上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置内に輸送するための第2結合装置と、を含むことを特徴とする、銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合システム。
【請求項10】
前記第1結合装置は、前記滓化処理装置で生成されたCO2も上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置内に輸送することを特徴とする、請求項9に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合システム。
【請求項11】
上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置で生成された炭酸塩生成物の一部を前記滓化処理装置内に輸送するための第3結合装置をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合システム。
【請求項12】
前記改質スラグに対して脱硫処理を行ってから上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置内に輸送するための脱硫装置をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合システム。
【請求項13】
上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置は混合反応装置及び固液分離装置を含み、固形産業廃棄物と、補助試薬と、CO2とは前記混合反応装置内で混合反応し、上記混合反応で生成されたスラリーは前記固液分離装置内で固液分離されることを特徴とする、請求項9又は10又は11又は12に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合システム。
【請求項14】
前記固液分離装置で分離された清澄液によって炭酸塩生成物を製造する生成物製造装置をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は湿式製錬技術、二酸化炭素捕捉、利用及び貯蔵(Carbon Capture, Utilization and Storage)、固形廃棄物の再資源化利用の分野に属し、具体的には銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
銅製錬は中国非鉄金属分野の重要な産業であり、クリーンな銅製錬方法の開発、有価金属の総合的な回収、資源の有効利用は、銅製錬発展の方向である。銅スラグは製銅過程で生成されるスラグであり、非鉄金属スラグの1つである。反射炉法で製銅して排出されるスラグは反射炉銅スラグであり、溶鉱炉で製銅して排出されるスラグは溶鉱炉銅スラグである。1トンあたりの銅を製錬するには、反射炉法では10~20トンのスラグが生成され、溶鉱炉法では50~100トンの銅スラグが生成される。スラグ中の主要鉱物は鉄含有鉱物であり、鉄の品位は一般に40%超で、鉄鉱石の29.1%の平均品位より遥かに高い。これらの銅スラグの高効率で環境に優しいリサイクル方法は、従来から当業者全員の関心を集めていた。回転炉床炉プロセスは近40年以来、鋼圧延環状加熱炉プロセスから進化した直接還元プロセスであり、その利点は反応速度が速く、原料の適合性が高い等の特徴にある。当然、比較的新規な酸素富化底吹による溶湯溶融プロセスもあり、それは高効率で環境に優しいという利点を有する。
【0003】
上記プロセスは各々の優点を有するが、致命的な欠点によりいずれも広く応用できず、回転炉床炉技術は排煙処理と回収が難題であり、亜鉛、鉛、カリウム等の物質の融点が比較的低いため、回転炉床炉の排煙特性は通常の製錬排煙とは著しく異なり、処理とリサイクルが困難であり、中国国内のある製錬所では、運転開始1年もなかった2台の回転炉床炉から排煙システムを取り外さざるを得なかったことがある。それに加え、回転炉床炉は原料の成分が複雑で、炉における頻繁な吹き込みと吹き止めにより耐火材が急速に侵食され、連続生産が制限され、ある製錬所では、1年もない生産期間内に回転炉床炉に炉頂の局所的崩壊事故が2回発生したことがある。酸素富化底吹による溶湯溶融プロセスは回転炉床炉プロセスよりも新しく、基礎理論が弱く、指導が欠如し、付属プロセスの自動化レベルが低く、理論から各種課題の解決、実際に生産に入るまで、まだ見込みが薄い。
【発明の概要】
【0004】
上記従来技術の欠点又は短所について、本願が解決しようとする技術的課題は、銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法及びシステムを提供することである。
【0005】
上記技術的課題を解決するために、本願は以下の技術的解決手段によって実現される。
【0006】
本願は、
銅スラグを取得するステップと、
前記銅スラグによって滓化処理を行うステップと、
上記滓化処理によって改質スラグを取得するステップと、
前記改質スラグによって海綿鉄を取得するステップと、
取得された前記改質スラグを固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスに結合するステップと、
上記の海綿鉄取得過程で生成されたCO2を固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスに結合するステップと、を含む銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法を提案する。
【0007】
選択的に、上記滓化処理過程で生成されたCO2を固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスに結合する。
【0008】
選択的に、固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスで取得された炭酸塩生成物が上記滓化処理に部分的に参加する。
【0009】
選択的に、前記改質スラグによって海綿鉄を取得する上記ステップは、合成ガス又はCO又はH2又はCO、H2の混合物を導入するステップをさらに含む。
【0010】
選択的に、取得された前記改質スラグを固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスに結合する上記ステップの前に、前記改質スラグに対して脱硫処理を行うステップをさらに含む。
【0011】
選択的に、上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスは、
固形産業廃棄物と、補助試薬と、CO2とによる混合反応過程と、
上記混合反応過程で生成されたスラリーによって固液分離処理を行うステップと、
上清及び未反応の固体粒子を取得するステップと、を含む。
【0012】
選択的に、上記取得された上清によって炭酸塩生成物を製造し、及び/又は、上記未反応の固体粒子を上記混合反応過程に循環させる。
【0013】
選択的に、前記炭酸塩生成物は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム又は炭酸カルシウムマグネシウムを含む。
【0014】
本願の別の態様は、
取得された銅スラグを滓化処理して改質スラグを取得するための滓化処理装置と、
上記改質スラグを二次処理して海綿鉄を取得し導出する二段処理装置と、
上記取得された改質スラグを上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置内に輸送するための第1結合装置と、
上記二段処理装置で生成されたCO2を上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置内に輸送するための第2結合装置と、を含む銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合システムをさらに提案する。
【0015】
選択的に、前記第1結合装置は前記滓化処理装置で生成されたCO2も上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置内に輸送する。
【0016】
選択的に、上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置で生成された炭酸塩生成物の一部を前記滓化処理装置内に輸送するための第3結合装置をさらに含む。
【0017】
選択的に、前記改質スラグに対して脱硫処理を行ってから上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置内に輸送するための脱硫装置をさらに含む。
【0018】
選択的に、上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置は混合反応装置及び固液分離装置を含み、固形産業廃棄物と、補助試薬と、CO2とは前記混合反応装置内で混合反応し、上記混合反応で生成されたスラリーは前記固液分離装置内で固液分離される。
【0019】
選択的に、前記固液分離装置で分離された清澄液によって炭酸塩生成物を製造する生成物製造装置をさらに含む。
【0020】
従来技術に比べ、本願は以下の技術的効果を有する。
【0021】
本願は銅スラグに対して滓化等の処理を行うことで、原料の分離及び脱硫を実現し、生成物の純度及び品質が保証されるとともに、環境に優しくて高効率な生産が保証される。また、本願は、銅スラグのリサイクルと従来の固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスとを結合することができ、改質スラグか排煙か等を問わず、様々な生産ラインを有機的に組み合わせることができ、クリーンで環境に優しいとともに、固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスのCO2供給源の選択範囲及び取得方式が拡張され、固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスのコストが削減される。
【0022】
本願における固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスで製造される炭酸塩生成物は、部分的に滓化処理過程に循環して、滓化剤として使用するか又は追加的な添加が必要な滓化剤の補充に用いることで、更なる内部循環システムを形成することができ、従来技術に比べて一定の優位性を有し、該循環プロセスは従来の固形産業廃棄物中のカルシウム及びマグネシウム元素を十分に利用し、資源の再利用を実現することができ、且つ、該内部循環プロセスは反応過程の連続性を保証し、反応効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下の図面を参照した非限定的実施例についての詳細な説明を閲覧することによって、本願の他の特徴、目的及び利点はより明確になる。
【
図1】本願の実施例に係る銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO
2鉱化との結合方法の構成図である。
【
図2】本願の実施例に係る銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO
2鉱化との結合システムの構造ブロック図である。
【
図3】本願の別の実施例に係る銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO
2鉱化との結合システムの構造ブロック図である。
【
図4】本願の実施例における固形産業廃棄物によるCO
2鉱化装置の構造ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下において、本願の実施例における図面を参照しながら、本願の実施例における技術的解決手段を明確に、完全に説明し、当然ながら、説明される実施例は本願の実施例の一部であり、全ての実施例ではない。本願における実施例に基づき、当業者が創造的な労力を要することなく得られた他の全ての実施例は、いずれも本願の保護範囲に属するものとする。
【0025】
図1に示すように、本願の1つの実施例において、銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO
2鉱化との結合方法は、
銅スラグを取得するステップ1と、
前記銅スラグによって滓化処理を行うステップ2と、
上記滓化処理によって改質スラグを取得するステップ3と、
前記改質スラグによって海綿鉄を取得するステップ4と、
取得された前記改質スラグを固形産業廃棄物によるCO
2鉱化プロセスに結合するステップ5と、
上記の海綿鉄取得過程で生成されたCO
2を固形産業廃棄物によるCO
2鉱化プロセスに結合するステップ6と、を含む。
【0026】
本実施例において、銅スラグに対して滓化等の処理を行うことで、原料の分離及び脱硫を実現し、生成物の純度及び品質が保証されるとともに、環境に優しくて高効率な生産が保証される。また、本実施例は銅スラグのリサイクルと従来の固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスとを結合することができ、改質スラグか排煙か等を問わず、様々な生産ラインを有機的に組み合わせることができ、クリーンで環境に優しいとともに、固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスのCO2供給源の選択範囲及び取得方式が拡張され、固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスのコストが削減される。
【0027】
上記反応ステップは実際の生産過程で連続的に又は同時に実行してもよく、上記ステップは例示のためのものに過ぎない。
【0028】
本実施例において、上記に係る銅スラグによって滓化処理を行うステップは、滓化処理の溶融による実現を含むが、それに限定されない。
【0029】
資源の内部循環及び再利用をさらに実現するために、好ましくは、上記滓化処理過程で生成されたCO2を固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスに結合する。即ち、本実施例において、上記に係る海綿鉄取得過程で生成されたCO2を固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスのCO2の1つの取得アプローチとする以外、上記滓化処理過程で生成されたCO2を固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスのCO2の別の取得アプローチとすることもできる。
【0030】
当然ながら、具体的な実施過程で、固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスのCO2供給源は、発電所の排煙、製鉄所の高炉、転炉、精錬炉、石灰窯の排煙、石炭化学産業もしくは石油化学産業による排気ガスとしてもよく、二酸化炭素の含有量は15%~98%とする。
【0031】
さらに、本実施例は、固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスで取得された炭酸塩生成物が上記滓化処理に部分的に参加することをさらに含む。上記炭酸塩生成物は滓化剤として使用するか又は追加的な添加が必要な滓化剤(例えば、石灰岩等)の補充に用いることで、更なる内部循環システムを形成し、従来技術に比べて一定の優位性を有し、該循環プロセスは従来の固形産業廃棄物中のカルシウム及びマグネシウム元素を十分に利用し、資源の再利用を実現することができ、且つ、該内部循環プロセスは反応過程の連続性を保証し、反応効率を向上させることができる。
【0032】
前記改質スラグによって海綿鉄を取得する上記ステップは、合成ガス又はCO又はH2又はCO、H2の混合物を導入するステップをさらに含む。直接還元鉄プロセスにおいて、上記ガスを導入することで、改質スラグとの反応によって高純度の海綿鉄を取得する。
【0033】
製鉄及び滓化過程には、通常、SiO2、S等が含まれ、一般的には滓化剤(例えば石灰岩等であり、本実施例における炭酸塩生成物でも可)を施すことで滓化処理を行い、滓化処理による生成物の一部はSを含有し、上記不純物と石灰岩は反応して、例えばケイ酸カルシウム、硫化カルシウム等を生成し(下記に記載の改質スラグはケイ酸カルシウム、硫化カルシウム等を含むが、それらに限定されない)、上記不純物と炭酸塩生成物はケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム又はケイ酸カルシウムマグネシウムを生成し、不純物にSも含まれている場合、反応生成物は硫化カルシウム、硫化マグネシウム又は硫化カルシウムマグネシウムをさらに含み、したがって、取得された前記改質スラグを固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスに結合する上記ステップの前に、前記改質スラグに対して脱硫処理を行うステップをさらに含み、それにより、固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスに対するSの影響を軽減する。当然、さらに説明すべきことは、上記脱硫処理は必要でなく、上記改質スラグにSが含有されず又はS含有量が極めて低いならば、上記脱硫処理を行う必要がなく、これは原料の具体的な成分に応じて選択することができる点である。
【0034】
さらに、本実施例において、上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスは、
固形産業廃棄物と、補助試薬と、CO2とによる混合反応過程と、
上記混合反応過程で生成されたスラリーによって固液分離処理を行うステップと、
上清及び未反応の固体粒子を取得するステップと、を含む。
【0035】
本実施例において、前記固形産業廃棄物は、製鋼スラグ、鉱石原料もしくは尾鉱、他の産業廃棄物等を含むが、それらに限定されず、前記鉱石原料はカルシウムマグネシウム類鉱石を含み、他の産業廃棄物は、製鉄スラグ、フライアッシュ、ボトムアッシュ、赤泥、建設廃材/廃セメント、尾鉱等を含む。
【0036】
上記取得された上清によって炭酸塩生成物を製造し、前記炭酸塩生成物は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム又は炭酸カルシウムマグネシウムを含む。上記炭酸塩生成物は上記滓化処理に部分的に参加してもよい。炭酸塩生成物は滓化剤として使用するか又は追加的な添加が必要な滓化剤(例えば石灰岩等)の補充に用いることで、更なる内部循環システムを形成する。
【0037】
さらに、上記未反応の固体粒子を上記混合反応過程に循環させ、それにより、上記未反応の固体粒子中の有効成分を十分に抽出し再利用する。
【0038】
本実施例において、関わる補助試薬は、少なくとも1つの有機酸基の酸又は塩又は組成物を含み、上記有機酸基の酸は、シュウ酸、クエン酸、ピコリン酸、グルコン酸、グルタミン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、乳酸、コハク酸、リン酸、ピロリン酸、アスコルビン酸又はフタル酸を含むが、それらに限定されない。本実施例は二酸化炭素の圧力、補助試薬の配合比率及び反応温度を調整することで、強酸又は高腐食性酸(硝酸、塩酸、硫酸、フッ化水素酸)の使用を省略し、目標成分の連続浸出を実現する。
【0039】
図2に示すように、本実施例の別の態様は、
取得された銅スラグを滓化処理して改質スラグを取得するための滓化処理装置10と、
上記改質スラグを二次処理して海綿鉄を取得し導出する二段処理装置20と、
上記取得された改質スラグを上記固形産業廃棄物によるCO
2鉱化装置50内に輸送するための第1結合装置30と、
上記二段処理装置20で生成されたCO
2を上記固形産業廃棄物のCO
2鉱化装置50内に輸送する第2結合装置40と、を含む銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO
2鉱化との結合システムをさらに提案する。
【0040】
該結合システムにおける上記結合方法についての技術的特徴は上記の記載を参照すればよく、ここでは説明を省略する。
【0041】
本実施例は上記第1結合装置30及び第2結合装置40によって二重の内部循環を実現でき、それにより、銅スラグのリサイクルと従来の固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスとを結合することができ、改質スラグか排煙か等を問わず、様々な生産ラインを有機的に組み合わせることができ、クリーンで環境に優しい。
【0042】
上記第1結合装置30は、上記滓化処理装置10で生成されたCO2を上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置50内に輸送することをさらに含む。
【0043】
図3に示すように、本実施例は、上記固形産業廃棄物によるCO
2鉱化装置50で生成された炭酸塩生成物の一部を前記滓化処理装置10内に輸送するための第3結合装置60をさらに含む。即ち、上記第1結合装置30、第2結合装置40の基に、第3結合装置60を追加設置することで、三重の内部循環が実現され、上記第3結合装置60は、滓化剤として使用するか又は追加的な添加が必要な滓化剤の補充に用いるために、固形産業廃棄物によるCO
2鉱化プロセスで製造される炭酸塩生成物を滓化処理過程に部分的に循環させることができ、該循環プロセスは従来の固形産業廃棄物中のカルシウム及びマグネシウム元素を十分に利用し、資源の再利用を実現することができ、且つ、該内部循環プロセスは反応過程の連続性を保証し、反応効率を向上させることができる。
【0044】
本実施例は、前記改質スラグに対して脱硫処理を行ってから上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置50内に輸送するための脱硫装置をさらに含む。当然、上記設けられた脱硫装置は必要でなく、上記改質スラグにSが含有されず又はS含有量が極めて低いならば、上記脱硫装置を設ける必要がなく、これは原料の具体的な成分に応じて選択することができる。
【0045】
本実施例において、
図4に示すように、上記固形産業廃棄物によるCO
2鉱化装置50は、混合反応装置51及び固液分離装置52を含み、固形産業廃棄物と、補助試薬と、CO
2とは前記混合反応装置51内で混合反応し、上記混合反応で生成されたスラリーは前記固液分離装置52内で固液分離される。上記混合反応及び固液分離等の過程によって、目標生成物の炭酸塩生成物、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム又は炭酸カルシウムマグネシウムを取得することができる。
【0046】
本実施例は、前記固液分離装置52で分離された清澄液によって炭酸塩生成物を製造する生成物製造装置53をさらに含む。上記分離された清澄液中に目標イオンのカルシウムイオン、マグネシウムイオン又はカルシウムマグネシウムイオン混合物が含有され、前記目標生成物は炭酸カルシウムマグネシウム、炭酸カルシウム又は炭酸マグネシウム等である。
【0047】
本実施例は回収水循環装置54をさらに含み、上記分離された清澄液で生成物が生成された後の回収水が前記回収水循環装置54によって前記混合反応装置51に循環され、ここで、前記回収水の循環回数m≧2である。
【0048】
さらに、前記混合反応装置51に製鋼スラグ、補助試薬及び水も加えられており、一定の配合比率で連続的に投入して十分に混合し、十分に混合した後にスラリーを取得し、二酸化炭素を一定の圧力で前記混合反応装置51内に連続的に圧入して前記スラリーと反応させ、前記混合反応装置51から反応後のスラリーを連続的に排出する。前記製鋼スラグは他の産業廃棄物、例えば、製鉄スラグ、フライアッシュ、ボトムアッシュ、赤泥、建設廃材/廃セメント、尾鉱等に取り替えてもよく、前記製鋼スラグは鉱石原料又は尾鉱に取り替えてもよく、前記鉱石原料はカルシウムマグネシウム類鉱石を含む。
【0049】
前記補助試薬の具体的な分類は上記の記載を参照すればよい。本実施例では二酸化炭素の圧力、補助試薬の配合比率及び反応温度を調整することで、強酸又は高腐食性酸(硝酸、塩酸、硫酸、フッ化水素酸)の使用を省略し、目標成分の連続浸出を実現する。
【0050】
前記混合反応装置51で反応したスラリーを前記固液分離装置52によって少なくとも1段の固液分離処理を行い、固液分離によって取得された未反応の固体粒子は原料として循環利用されて次の段階の反応及び分離に用いられる。
【0051】
前記固液分離装置52は好ましくは二段固液分離を採用し、具体的には、前記固液分離装置52は、粒径≧5~10μmの固体粒子を除去するための一段粗分離ユニット、及び粒径≦1~5μmの固体粒子を除去するための二段微細分離ユニットを含む。上記多段分離、及び異なる粒径区間の粒子について最適化された分離手段によって、分離装置が最適負荷条件で連続的に固液分離を安定して永続的に行うことを保証し、効果的に総分離時間を短縮し且つ分離システムの連続安定運転時間を延長し、効果的に単段分離による技術的課題を解決する。
【0052】
さらに好ましくは、前記固液分離装置52は上記二段固液分離の基に三段固液分離ユニットがさらに設けられており、ディスク遠心分離機、複式フィルタープレス又はフィルター等を用いて絶え間なく分離して目標イオン含有の清澄液を連続的に取得する。上記取得された目標イオン含有の清澄液は上記に記載の生成物製造装置53に輸送される。
【0053】
前記三段固液分離ユニットで分離された清澄液に鉄元素が多く含有される場合、濃縮によって水酸化第二鉄沈殿を収集し、それにより、上記含有量が多い鉄元素を合理的に効果的に回収及び利用する。
【0054】
以上の実施例は本願の技術的解決手段を説明するためのものに過ぎず、限定するためのものではなく、好ましい実施例を参照しながら本願は詳細に説明されていた。当業者であれば、本願の技術的解決手段の精神及び範囲から逸脱することなく、本願の技術的解決手段に対して修正又は同等置換を行うことができ、それらはいずれも本願の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅スラグを取得するステップと、
前記銅スラグによって滓化処理を行うステップと、
上記滓化処理によって改質スラグを取得するステップと、
前記改質スラグによって海綿鉄を取得するステップと、
取得された前記改質スラグを固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスに結合するステップと、
上記海綿鉄取得過程で生成されたCO2を固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスに結合するステップと、を含むことを特徴とする、銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法。
【請求項2】
上記滓化処理過程で生成されたCO2を固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスに結合することを特徴とする、請求項1に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法。
【請求項3】
固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスで取得された炭酸塩生成物が上記滓化処理に部分的に参加することを特徴とする、請求項1に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法。
【請求項4】
前記改質スラグによって海綿鉄を取得する上記ステップは、合成ガス又はCO又はH2又はCO、H2の混合物を導入するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法。
【請求項5】
取得された前記改質スラグを固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスに結合する上記ステップの前に、前記改質スラグに対して脱硫処理を行うステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法。
【請求項6】
上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化プロセスは、
固形産業廃棄物と、補助試薬と、CO2とによる混合反応過程と、
上記混合反応過程で生成されたスラリーによって固液分離処理を行うステップと、
上清及び未反応の固体粒子を取得するステップと、を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法。
【請求項7】
上記取得された上清によって炭酸塩生成物を製造し、及び/又は、上記未反応の固体粒子を上記混合反応過程に循環させることを特徴とする、請求項6に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法。
【請求項8】
前記炭酸塩生成物は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム又は炭酸カルシウムマグネシウムを含むことを特徴とする、請求項3に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合方法。
【請求項9】
取得された銅スラグを滓化処理して改質スラグを取得するための滓化処理装置と、
上記改質スラグを二次処理して海綿鉄を取得し導出する二段処理装置と、
上記取得された改質スラグを固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置内に輸送するための第1結合装置と、
上記二段処理装置で生成されたCO2を上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置内に輸送するための第2結合装置と、を含むことを特徴とする、銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合システム。
【請求項10】
前記第1結合装置は、前記滓化処理装置で生成されたCO2も上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置内に輸送することを特徴とする、請求項9に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合システム。
【請求項11】
上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置で生成された炭酸塩生成物の一部を前記滓化処理装置内に輸送するための第3結合装置をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合システム。
【請求項12】
前記改質スラグに対して脱硫処理を行ってから上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置内に輸送するための脱硫装置をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合システム。
【請求項13】
上記固形産業廃棄物によるCO2鉱化装置は混合反応装置及び固液分離装置を含み、固形産業廃棄物と、補助試薬と、CO2とは前記混合反応装置内で混合反応し、上記混合反応で生成されたスラリーは前記固液分離装置内で固液分離されることを特徴とする、請求項9又は10又は11又は12に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合システム。
【請求項14】
前記固液分離装置で分離された清澄液によって炭酸塩生成物を製造する生成物製造装置をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の銅スラグのリサイクルと、固形産業廃棄物によるCO2鉱化との結合システム。