(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155146
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】標準ウェハ、標準ウェハを製造する方法、および較正方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20231013BHJP
C30B 25/20 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
C30B29/06 504Z
C30B25/20
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022207754
(22)【出願日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】202210368791.8
(32)【優先日】2022-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】516145552
【氏名又は名称】上海新昇半導體科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】曹 共柏
(72)【発明者】
【氏名】潘 帥
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB01
4G077BA04
4G077DB01
4G077EF01
4G077TA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法、標準ウェハ、および低コストで便利な標準ウェハを提供する較正方法を提供する。
【解決手段】第1の導電種を有するシリコン基板10を提供するステップと、シリコン基板10を覆い、第1の導電種とは反対の第2の導電種を有し、抵抗率が10Ω/cm以下である反転エピタキシ層11を形成するステップと、反転エピタキシ層11を覆い、第1の導電種を有し、抵抗率が50Ω/cm超であり、厚さが35μm超である対象エピタキシ層12を形成するステップと、4点プローブ法により、対象エピタキシ層12の抵抗率の測定値を測定するステップであって、前記測定値は、標準抵抗率として利用され、対象エピタキシ層12の第1の導電種は、標準ウェハの導電種として利用される、ステップと、を有する、抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法である。
【選択図】
図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法であって、
前記標準ウェハは、第1の導電種を有するエピウェハの抵抗率を測定する前の較正に利用され、
当該方法は、
前記第1の導電種を有するシリコン基板を提供するステップと、
前記シリコン基板を覆う反転エピタキシ層を形成するステップであって、前記反転エピタキシ層は、前記第1の導電種とは反対の第2の導電種を有し、前記反転エピタキシ層の抵抗率は、10Ω/cm以下である、ステップと、
前記反転エピタキシ層を覆う対象(target)エピタキシ層を形成するステップであって、前記対象エピタキシ層は、前記第1の導電種を有し、前記対象エピタキシ層の抵抗率は、50Ω/cm超であり、前記対象エピタキシ層の厚さは、35μm超である、ステップと、
4点プローブ法により、前記対象エピタキシ層の抵抗率の測定値を測定するステップであって、前記測定値は、前記標準ウェハの標準抵抗率として利用され、前記対象エピタキシ層の前記第1の導電種は、前記標準ウェハの導電種として利用される、ステップと、
を有する、方法。
【請求項2】
前記対象エピタキシ層の抵抗率の測定値を測定するステップは、QC表面電荷プロファイラにより実施される、請求項1に記載の標準ウェハを製造する方法。
【請求項3】
さらに、前記反転エピタキシ層を形成する前に、前記シリコン基板を清浄化するステップを有する、請求項1に記載の標準ウェハを製造する方法。
【請求項4】
前記反転エピタキシ層の抵抗率は、0.1~10Ω/cmの範囲内にある、請求項1に記載の標準ウェハを製造する方法。
【請求項5】
前記反転エピタキシ層の厚さは、5~10μmの範囲内にある、請求項4に記載の標準ウェハを製造する方法。
【請求項6】
前記対象エピタキシ層の抵抗率は、50~500Ω/cmの範囲内にある、請求項1に記載の標準ウェハを製造する方法。
【請求項7】
前記対象エピタキシ層の厚さは、35~50μmの範囲内にある、請求項6に記載の標準ウェハを製造する方法。
【請求項8】
抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法であって、
前記標準ウェハは、第1の導電種を有するエピウェハの抵抗率を測定する前の較正に利用され、
当該方法は、
前記第1の導電種と反対の第2の導電種を有するシリコン基板を提供するステップと、
前記シリコン基板を覆う対象エピタキシ層を形成するステップであって、前記対象エピタキシ層は、前記第1の導電種を有し、前記対象エピタキシ層の抵抗率は、50Ω/cm超であり、前記対象エピタキシ層の厚さは、35μm超である、ステップと、
4点プローブ法により、前記対象エピタキシ層の抵抗率の測定値を測定するステップであって、前記測定値は、前記標準ウェハの標準抵抗率として利用され、前記対象エピタキシ層の前記第1の導電種は、前記標準ウェハの導電種として利用される、ステップと、
を有する、方法。
【請求項9】
抵抗率測定用の標準ウェハであって、
請求項1に記載の標準ウェハを製造する方法により製造される、標準ウェハ。
【請求項10】
請求項9に記載の標準ウェハまたは抵抗率測定により、エピウェハの抵抗率を測定する前に較正が実施される、較正方法であって、
エピウェハの導電種および予測される抵抗率の範囲を取得するステップと、
前記標準ウェハの少なくとも2つを選択するステップであって、前記標準ウェハの導電種は、前記エピウェハの前記導電種と同じであり、前記標準ウェハの標準抵抗率の範囲は、前記予測される抵抗率の範囲と重複する、ステップと、
前記標準ウェハを利用して、前記エピウェハの抵抗率を測定する前に較正を実施するステップと、
を有する、較正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般に、半導体技術分野に関し、具体的には、抵抗率測定用の標準ウェハの製造方法、標準ウェハ、および較正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多形シリコンエピウェハ(エピタキシ層)の抵抗率の測定法には、主として、4点プローブ法(4PP)、水銀プローブキャパシタンス‐電圧測定(Hgプローブ)、拡散抵抗プロファイル(SRP)、エアギャップキャパシタンス電圧(ACV)、およびQC表面電荷プロファイラ(QCS)が含まれる。QCS法は、非接触の測定法であり、エピウェハの汚染が抑制され、再利用が容易となり、比較的大きな測定範囲を有し、高インピーダンスのエピウェハの抵抗率の測定に適応できるため、QCS法は、全ての方法に比べて利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エピウェハのQCSを測定する前に標準ウェハが使用され、QCS機器が較正(キャリブレーション)される。標準ウェハの抵抗率は、できる限りエピウェハの抵抗率に近づけられ、抵抗率の測定の精度が高められ得る。現在の標準ウェハは、通常、単結晶で構成され、これは、通常、インゴットの上端または後端である。しかしながら、一般に、インゴットの上端または後端の抵抗率は、極めて低く、高いまたは比較的高い抵抗率(例えば、50Ω/cm超)を有する標準ウェハを提供することが制限される。単結晶をカスタマイズして標準ウェハを製造した場合、コストは、これに呼応して極めて高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法、標準ウェハ、および低コストで便利な標準ウェハを提供する較正方法に関する。
【0005】
本発明の一態様では、本発明の一実施形態により、抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法であって、
前記標準ウェハは、第1の導電種を有するエピウェハの抵抗率を測定する前の較正に利用され、
当該方法は、
前記第1の導電種を有するシリコン基板を提供するステップと、
前記シリコン基板を覆う反転エピタキシ層を形成するステップであって、前記反転エピタキシ層は、前記第1の導電種とは反対の第2の導電種を有し、前記反転エピタキシ層の抵抗率は、10Ω/cm以下である、ステップと、
前記反転エピタキシ層を覆う対象(target)エピタキシ層を形成するステップであって、前記対象エピタキシ層は、前記第1の導電種を有し、前記対象エピタキシ層の抵抗率は、50Ω/cm超であり、前記対象エピタキシ層の厚さは、35μm超である、ステップと、
4点プローブ(4PP)法により、前記対象エピタキシ層の抵抗率の測定値を測定するステップであって、前記測定値は、前記標準ウェハの標準抵抗率として利用され、前記対象エピタキシ層の前記第1の導電種は、前記標準ウェハの導電種として利用される、ステップと、
を有する、方法が提供される。
【0006】
必要な場合、前記対象エピタキシ層の抵抗率の測定値を測定するステップは、QC表面電荷プロファイラにより実施される。
【0007】
必要な場合、前記反転エピタキシ層を形成する前に、前記シリコン基板を清浄化するステップが実施されてもよい。
【0008】
必要な場合、前記反転エピタキシ層の抵抗率は、0.1~10Ω/cmの範囲内にあってもよい。
【0009】
必要な場合、前記反転エピタキシ層の厚さは、5~10μmの範囲内にあってもよい。
【0010】
必要な場合、前記対象エピタキシ層の抵抗率は、50~500Ω/cmの範囲内にあってもよい。
【0011】
必要な場合、前記対象エピタキシ層の厚さは、35~50μmの範囲内にあってもよい。
【0012】
本発明の別の態様では、本発明の一実施形態により、抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法であって、
前記標準ウェハは、第1の導電種を有するエピウェハの抵抗率を測定する前の較正に利用され、
当該方法は、
前記第1の導電種と反対の第2の導電種を有するシリコン基板を提供するステップと、
前記シリコン基板を覆う対象エピタキシ層を形成するステップであって、前記対象エピタキシ層は、前記第1の導電種を有し、前記対象エピタキシ層の抵抗率は、50Ω/cm超であり、前記対象エピタキシ層の厚さは、35μm超である、ステップと、
4点プローブ法により、前記対象エピタキシ層の抵抗率の測定値を測定するステップであって、前記測定値は、前記標準ウェハの標準抵抗率として利用され、前記対象エピタキシ層の前記第1の導電種は、前記標準ウェハの導電種として利用される、ステップと、
を有する、方法が提供される。
【0013】
本発明の別の態様では、本発明の一実施形態により、抵抗率測定用の標準ウェハであって、前述の標準ウェハを製造する方法により製造される、標準ウェハが提供される。
【0014】
本発明の別の態様では、本発明の一実施形態により、前述の標準ウェハまたは抵抗率測定により、エピウェハの抵抗率を測定する前に較正が実施される、較正方法であって、
エピウェハの導電種および予測される抵抗率の範囲を取得するステップと、
前記標準ウェハの少なくとも2つを選択するステップであって、前記標準ウェハの導電種は、前記エピウェハの前記導電種と同じであり、前記標準ウェハの標準抵抗率の範囲は、前記予測される抵抗率の範囲と重複する、ステップと、
前記標準ウェハを利用して、前記エピウェハの抵抗率を測定する前に較正を実施するステップと、
を有する、較正方法が提供される。
【0015】
本発明では、シリコン基板上に反転エピタキシ層および対象エピタキシ層を順次形成すること、シリコン基板と対象エピタキシ層との間に反転エピタキシ層による電気的絶縁を形成すること、またはシリコン基板上に直接、対象エピタキシ層を形成し、その後50Ω/cm超の対象エピタキシ層の抵抗率を提供すること、による解決策が提供される。対象エピタキシ層の抵抗率の測定は、4点プローブ法により得られてもよく、この抵抗率は、標準ウェハの標準的な抵抗率として利用され、より高い抵抗率を有し低コストで便利な方法で製造される標準ウェハが提供される。
【0016】
本発明の各種目的および利点は、添付図面と併せて読まれる以下の詳細な説明から、より容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法のフローチャートを示した図である。
【
図2A】本発明の一実施形態による抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法のステップに対応する構造の斜視図を示した図である。
【
図2B】本発明の一実施形態による抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法のステップに対応する構造の斜視図を示した図である。
【
図2C】本発明の一実施形態による抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法のステップに対応する構造の斜視図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面と共に以下の例を参照して、本発明の実施形態について説明する。また、本願に記載の数値は、単なる一例に過ぎないことが留意される。ここには、本発明に関連する要素のみが示されている。実際の数、形状、サイズ、タイプ、および比率は、実施の際に変更されてもよい。レイアウトまたは配置は、より複雑であってもよい。
【0019】
本開示では、各種方法で実施可能な、本発明による実施形態の各種態様が示される。本願に記載の構造および/または機能は、単なる説明用であり、当業者には、任意の態様が単独または組み合わせて実施され得ることが理解される必要があることが留意される。例えば、装置および/または方法は、任意の数またはフィールドで実施されてもよい。また、他の構造および/または機能を用いて、装置および/または方法が実施されてもよい。
【0020】
本願で使用される用語は、単に特定の実施形態を記載する目的で用いられ、本願を限定することを意図するものではない。「a」、「an」、および「the」の単数形は、文脈が他のことを明確に示していない限り、複数の形態も同様に含むことが意図される。「または」という用語は、通常、「および/または」を有する。「いくつかの」という用語は、通常、「少なくとも1つ」を含む。「少なくとも2つ」という用語は、通常、「2つまたは3つ以上」を含む。また、「第1」、「第2」および「第3」という用語は、単なる一例であって、特徴の相対的な重要性や、特徴の実際の量を示すことを意図するものではないことが理解される。従って、「第1」、「第2」および「第3」により限定される特徴は、明示的な説明が特定されていない限り、特徴の1つまたは少なくとも2つを含んでもよい。
【0021】
(実施例1)
図1には、本発明の一実施形態による抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法のフローチャートを示す。
【0022】
図1に示すように、抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法であって、前記標準ウェハは、第1の導電種を有するエピウェハの抵抗率を測定する前に、較正のために使用される、方法は、
ステップS01:第1の導電種を有するシリコン基板を提供するステップと、
ステップS02:シリコン基板を覆う反転エピタキシ層を形成するステップであって、前記反転エピタキシ層は、前記第1の導電種とは反対の第2の導電種を有し、反転エピタキシ層の抵抗率は、10Ω/cm以下である、ステップと、
ステップS03:前記反転エピタキシ層を覆う対象エピタキシ層を形成するステップであって、前記対象エピタキシ層は、第1の導電種を有し、対象エピタキシ層の抵抗率は、50Ω/cmを超え、対象エピタキシ層の厚さは、35μmを超える、ステップと、
ステップS04:4点プローブ(4PP)法により、対象エピタキシ層の抵抗率の測定値を測定するステップであって、前記測定値は、標準ウェハの標準抵抗率として利用され、対象エピタキシ層の第1の導電種は、標準ウェハの導電種として利用される、ステップと、
を有する。
【0023】
エピウェハは、エピタキシャルシリコンウェハ、または抵抗率測定用の基板であってもよく、その表面は、厚さがより厚い(通常、1μm超の)エピタキシャル層により被覆される。ここで、QC表面電荷プロファイラ(QCS)のような、抵抗率を測定する方法が適用されてもよい。抵抗率の測定を行う前に、QCS機器の較正用に標準ウェハを使用し、測定の精度が確保されてもよい。
【0024】
図2A乃至
図2Cには、本発明の一実施形態による抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法のステップに対応する構造の斜視図を示す。
図2A乃至
図2Cを参照して、抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法がさらに詳述される。
【0025】
まず、
図2Aに示すように、ステップS01が実施され、シリコン基板10が提供され得る。シリコン基板10は、第1の導電種を有する。
【0026】
シリコン基板10は、任意の好適な結晶方向、サイズ、厚さ、および抵抗率を有する単結晶であってもよく、好ましくは、シリコン基板10の厚さおよびサイズは、被測定用エピウェハの厚さおよびサイズと同じであってもよく、これにより測定前または測定中の較正および調整が低減され、移動が簡単になり、精度を高めることが容易となる。
【0027】
本実施形態では、シリコン基板10の一例として、直径300mmのシリコン基板が用いられる。シリコン基板10は、被測定エピウェハと同じ導電種、すなわち第1の導電種を有する。第1の導電種は、N型またはP型であってもよい。
【0028】
次に、
図2Bを参照すると、ステップS02が実施され、反転エピタキシ層11が形成される。反転エピタキシ層11は、シリコン基板10を覆い、反転エピタキシ層11は、第2の導電種を有し、該第2の導電種は、第1の導電種とは反対であり、反転エピタキシ層11の抵抗率は、10Ω/cm以下である。
【0029】
例えば、気相エピタキシプロセスをシリコン基板10に適用して、反転エピタキシ層11が形成されてもよい。反転エピタキシ層11は、シリコン基板10(またはエピウェハ)とは反対の導電種を有し、反転エピタキシ層11とシリコン基板10との間に電気的絶縁が形成される。具体的には、気相エピタキシプロセスでは、SiHCl3およびH2を含むガスが利用され、PCl3、PH3またはAsCl3を含むN型ドーパントが利用され、BCl3、BBr3またはB2H6を含むP型ドーパントが利用され、800℃~1300℃のような反応温度が設定されてもよい。前述の材料および設定は、単なる一例であり、形態反転エピタキシ層11は、他の好適なエピタキシプロセスにより、形成されてもよいことが留意される。
【0030】
好ましくは、反転エピタキシ層11は、比較的低い抵抗率(すなわち、比較的高いドーピング量)を有してもよく、薄い反転エピタキシ層11とシリコン基板10により、より良好な電気的絶縁性が形成され、生産の歩留りが高まり、製造コストが低下してもよい。本実施形態では、反転エピタキシ層11の抵抗率は、0.1Ω/cm~10Ω/cmであり、反転エピタキシ層11の厚さは、5μm~10μmであり、反転エピタキシ層11の抵抗率は、シリコン基板10の抵抗率よりも低くてもよく、2つの抵抗率が近くなると、反転エピタキシ層11は、より厚くなる。当然のことながら、反転エピタキシ層11の厚さは、10μmよりも大きくてもよい。
【0031】
エピタキシプロセスを実施する前に、シリコン基板10を清浄化するステップが実施され、シリコン基板10上の不純物および酸化物層が除去されてもよい。
【0032】
次に
図2Cを参照すると、ステップS03が実施され、対象エピタキシ層12が形成されてもよい。対象エピタキシ層12は、反転エピタキシ層11の上に配置され、対象エピタキシ層12は、第1の導電種を有し、対象エピタキシ層12の抵抗率は、50Ω/cmよりも大きく、対象エピタキシ層12の厚さは、35μmよりも大きくてもよい。
【0033】
エピタキシプロセスにより形成される対象エピタキシ層12は、エピウェハの導電種と同じ導電種を有する。これは、反転エピタキシ層11の導電種とは反対であり、すなわち第1の導電種である。対象エピタキシ層12を形成するエピタキシプロセスは、例えば、気相エピタキシプロセスであってもよく、これは、反転エピタキシ層11を形成するプロセスを表してもよい。
【0034】
対象エピタキシ層12の抵抗率は、被測定用エピウェハの抵抗率の範囲を参照してもよく、0~500Ω/cmのような、QCS機器の測定範囲内の任意の好適な値として設定されてもよい。従って、エピウェハ用の標準ウェハとして、抵抗率が50Ω/cm未満の一般的な低抵抗単結晶シリコンウェハが用いられてもよいが、本実施形態では、特に、高抵抗率、高インピーダンスのエピウェハ用の標準ウェハが用いられ、すなわち対象エピタキシ層12の抵抗率は、50Ω/cm~500Ω/cmであってもよい。実際の抵抗率測定の間、標準ウェハは、被測定用のエピウェハの抵抗率の予測範囲に応じて、選択されてもよい。精度を高めるため、好ましくは、標準ウェハは、被測定用のエピウェハの抵抗率の予測範囲を満たすように製造されてもよい。
【0035】
本実施形態では、対象エピタキシ層12の厚さは、35μm超であってもよく、厚い対象エピタキシ層12により、対象エピタキシ層12の抵抗率の測定の精度および安定性が改善される一方、対象エピタキシ層12と反転エピタキシ層11との間に、より良好な電気的絶縁が形成され得る。好ましくは、対象エピタキシ層12の厚さは、35μm ~50μmであり、形成速度が高められ、QCS機器に適合されてもよい。
【0036】
次に、ステップS04が実施され、4PP法により、対象エピタキシャル層12の抵抗率の測定が実施される。測定結果は、標準ウェハの標準抵抗率として利用され、対象エピタキシャル層12の導電種は、標準ウェハの導電種として利用されてもよい。
【0037】
反転エピタキシ層11は、シリコン基板10と対象エピタキシ層12を電気的に絶縁し得るため、4PP法により測定される抵抗率の測定結果は、実際には対象エピタキシ層12の抵抗率であり、対象エピタキシ層12の抵抗率は、標準ウェハの標準抵抗率として採用され、対象エピタキシ層12の導電種は、標準ウェハの導電種として採用されてもよい。4PP法により、対象エピタキシ層12の抵抗率の測定結果を得る場合、多点測定が利用され、測定値の平均が計算され、精度が高められてもよい。
【0038】
(実施例2)
本発明では、抵抗率測定用の標準ウェハを製造する別の方法が提供される。
【0039】
本実施形態の抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法では、標準ウェハは、第1の導電種を有するエピウェハの抵抗率を測定する前の較正に利用され、当該方法は、前記第1の導電種とは反対の第2の導電種を有するシリコン基板を提供するステップと、前記シリコン基板を覆う対象エピタキシ層を形成するステップであって、前記対象エピタキシ層は、第1の導電種を有し、前記対象エピタキシ層の抵抗率は、50Ω/cm超であり、前記対象エピタキシ層の厚さは、35μm超である、ステップと、4点プローブ法を用いて、前記対象エピタキシ層の抵抗率の測定値を測定するステップであって、前記測定値は、前記標準ウェハの標準抵抗率として利用され、前記対象エピタキシ層の第1の導電種は、前記標準ウェハの導電種として利用される、ステップと、を有してもよい。
【0040】
特に、本実施形態では、シリコン基板は、第2の導電種を有し、被測定用のエピウェハおよび対象のエピタキシ層の両方は、第1の導電種を有するため、第1の実施形態で述べられたように、反転エピタキシ層を形成するステップは、省略され、シリコン基板の表面上にシリコン基板を覆う対象のエピタキシ層が形成されてもよい。第1の実施形態で説明された、シリコン基板および対象エピタキシ層の詳細が参照されるが、ここでは、これ以上繰り返さない。
【0041】
標準ウェハを製造する場合、エピタキシ層(被測定用エピウェハ)の導電種およびシリコン基板の導電種に応じて、ステップが簡略化されてもよい。
【0042】
(実施例3)
本実施形態では、抵抗率測定用の標準ウェハが提供され、該標準ウェハは、第1または第2実施形態に示したような、抵抗率測定用の標準ウェハを製造する方法により製造され得る。標準ウェハは、エピウェハの抵抗率測定前にQCS機器を較正するために使用されてもよい。
【0043】
(実施例4)
本実施形態では、前述の標準ウェハまたは抵抗率測定によりエピウェハの抵抗率を測定する前に較正が実施される、較正方法が提供される。当該較正方法は、
エピウェハの導電種、および予測される抵抗率の範囲を取得するステップと、
標準ウェハの少なくとも2つを選択するステップであって、その導電種は、前記エピウェハの導電種と等しく、標準ウェハの標準抵抗率の範囲は、前記予測される抵抗率の範囲と重複する、ステップと、
標準ウェハを用いて、エピウェハの抵抗率を測定する前に較正を実施するステップと、を有し得る。
【0044】
標準抵抗率が測定範囲内にある標準ウェハは、QCS機器の較正に利用されてもよく、その後、いくつかのエピウェハの抵抗率が測定され、エピタキシ層の予測される抵抗率の範囲が保証される。
【0045】
エピウェハの予測される抵抗率の範囲および導電種に応じて、同じ導電種ではあるが、異なる標準抵抗率を有するいくつかの標準ウェハが選択され得る。最小の標準抵抗率は、予測される抵抗率の範囲の最小値またはそれ以下であってもよく、最大の標準抵抗率は、予測される抵抗率の範囲の最大値またはそれ以上であってもよい。当然のことながら、1または2以上の標準ウェハが、予測される抵抗率の範囲の最小値と最大値の間に均等に属し、これを用いて精度が改善されてもよい。
【0046】
QCS機器の較正は、共通の作動に従って、標準ウェハを用いて実施されてもよい。これは、ここでは必要とされない。
【0047】
以上まとめると、本発明では、シリコン基板上に、反転エピタキシ層および対象エピタキシ層を順次形成し、シリコン基板と対象エピタキシ層との間の反転エピタキシ層により電気的絶縁を形成し、または、シリコン基板上に直接、対象エピタキシ層を形成し、その後、50Ω/cmよりも大きい対象エピタキシ層の抵抗率を提供する、解決策が提供される。対象エピタキシ層の抵抗率の測定値は、4点プローブ法により得られ、標準ウェハの標準抵抗率として利用され、より高い抵抗率を有する標準ウェハが提供され、低コストで便利な方法が得られる。
【0048】
これらの実施形態は、本発明を限定することを意味するものではなく、ある特定の実施形態に関する、本発明の単なる一例の記載にすぎないことが理解される。実際、当業者には、添付の特許請求の範囲から逸脱しない、異なる適用が明らかである。例えば、必要な場合、特定のデータバスに、バスバッファを追加することができる。また、直列にカスケード接続された複数のバスバッファを有することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 シリコン基板
11 反転エピタキシ層
12 対象エピタキシ層
【外国語明細書】