(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155174
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/30 20060101AFI20231013BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B60N2/30
B60N2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045406
(22)【出願日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】63/362,687
(32)【優先日】2022-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】目黒 司
(72)【発明者】
【氏名】冨田 佳弘
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB02
3B087BD01
3B087CA12
(57)【要約】
【課題】係合ストライカの支持剛性の向上を図る。
【解決手段】背もたれ部となるシートバックと着座部となるシートクッションとを有するシート本体を、着座者が着座可能な使用位置と使用位置から移動した移動位置との間で切り替え可能な乗物用シート1であって、乗物のフロアに固定されるロアレール31と、ロアレールによって移動可能に支持されるアッパレール32と、シート本体に設けられ、使用位置と移動位置とを切り替えるロック装置56と、アッパレール側に設けられ、使用位置と移動位置とを切り替える際にロック装置によって係合と解除が行われるストライカ51,52とを備え、ロアレール、アッパレール及びストライカは、アッパレールの移動方向に対する交差方向における両側に一対で設けられ、一対のストライカが互いに接近する方向に向かって延出されると共に、一対のストライカを連結する連結部材55を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれ部となるシートバックと着座部となるシートクッションとを有するシート本体を、着座者が着座可能な使用位置と前記使用位置から移動した移動位置との間で切り替え可能な乗物用シートであって、
乗物のフロアに固定されるロアレールと、
前記ロアレールによって移動可能に支持されるアッパレールと、
前記シート本体に設けられ、前記使用位置と前記移動位置とを切り替えるロック装置と、
前記アッパレール側に設けられ、前記使用位置と前記移動位置とを切り替える際に前記ロック装置によって係合と解除が行われるストライカとを備え、
前記ロアレール、前記アッパレール及び前記ストライカは、前記アッパレールの移動方向に対する交差方向における両側に一対で設けられ、
一対の前記ストライカが互いに接近する方向に向かって延出されると共に、前記一対のストライカを連結する連結部材を備えることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記連結部材は、前記ストライカと別体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記連結部材は、閉断面形状であることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記連結部材は、円筒形状であることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
一対の前記ストライカは、いずれも、延出方向の少なくとも一部分を支持するストライカ支持ブラケットを介して前記アッパレールに設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記連結部材は、一対の前記ストライカ支持ブラケットにも連結されていることを特徴とする請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記ストライカ支持ブラケットは、起伏部を有し、
前記ストライカは、前記起伏部の下側に接合されていることを特徴とする請求項5に乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートクッション及びシートバックからなる乗物用シートにおいて、前端部を回動可能に支持されたシートバックが後端部を跳ね上げるように回動し、シート本体を前傾姿勢にして、シート本体の後側のスペースを広く空ける技術が適用されている。
特許文献1の乗物用シートでは、シート本体を前後にスライド移動を可能とする左右一対のレールの上部に個別に丸棒状の係合ストライカが固定装備されている。そして、シート本体の後端部に設けられたロック装置が係合ストライカと係合することで、解除操作が行われない限りは、シート本体が前傾姿勢とならないように保持されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗物用シートは、必要に応じて、シート本体の後側のスペースを広く確保することが便利である。しかし、それ以外の時、特に、シート本体に人が着座している場合などには、シート本体が前傾とならないよう、強固に保持されることが要求される。
このため、シート本体を保持する係合ストライカの支持剛性の向上が望まれている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、係合ストライカの支持剛性の向上を図ることが可能な乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
背もたれ部となるシートバックと着座部となるシートクッションとを有するシート本体を、着座者が着座可能な使用位置と前記使用位置から移動した移動位置との間で切り替え可能な乗物用シートであって、
乗物のフロアに固定されるロアレールと、
前記ロアレールによって移動可能に支持されるアッパレールと、
前記シート本体に設けられ、前記使用位置と前記移動位置とを切り替えるロック装置と、
前記アッパレール側に設けられ、前記使用位置と前記移動位置とを切り替える際に前記ロック装置によって係合と解除が行われるストライカとを備え、
前記ロアレール、前記アッパレール及び前記ストライカは、前記アッパレールの移動方向に対する交差方向における両側に一対で設けられ、
一対の前記ストライカが互いに接近する方向に向かって延出されると共に、前記一対のストライカを連結する連結部材を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の乗物用シートにおいて、
前記連結部材は、前記ストライカと別体で構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項に記載の乗物用シートにおいて、
前記連結部材は、閉断面形状であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の乗物用シートにおいて、
前記連結部材は、円筒形状であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の乗物用シートにおいて、
一対の前記ストライカは、いずれも、延出方向の少なくとも一部分を支持するストライカ支持ブラケットを介して前記アッパレールに設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の乗物用シートにおいて、
前記連結部材は、一対の前記ストライカ支持ブラケットにも連結されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の乗物用シートにおいて、
前記ストライカ支持ブラケットは、起伏部を有し、
前記ストライカは、前記起伏部の下側に接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明は、一対のストライカを連結部材で連結するので、シート本体から受ける荷重を二つのストライカに分散することができ、それぞれのストライカの支持剛性の向上を図ることが可能となる。
また、それぞれのストライカが片持ち状態で延出されている場合でも、それぞれのストライカを連結部材が連結することにより、一対のストライカが両持ちでの支持状態となり、支持剛性の向上を図ることが可能となる。
【0014】
請求項2記載の発明は、連結部材がストライカと別体で構成されているので、既設のストライカに対して補強的に連結部材を取り付けることが可能となる。また、連結部材が別体であるため、取付の際に配置を調整することが容易となり、スペースを確保する点で有利となる。
【0015】
請求項3記載の発明は、連結部材が閉断面形状であるため、一対のストライカの支持剛性を向上しつつも軽量化を図ることが可能となる。
【0016】
請求項4記載の発明は、連結部材が円筒形状であるため、当該連結部材を中心とする周囲のいずれの方向に対しても高い剛性を得ることができ、一対のストライカの支持剛性の向上を図ることが可能となる。
【0017】
請求項5記載の発明は、一対のストライカが、いずれも、ストライカ支持ブラケットを介してアッパレールに設けられている。このため、アッパレールの取り付けに適した形状、構造とすることにより、一対のストライカの支持剛性の向上を図ることが可能となる。
また、ストライカ支持ブラケットをアッパレールに対して分離可能とすることにより、ストライカの取付位置の変更やストライカの交換等を容易に行うことが可能となる。
【0018】
請求項6記載の発明は、連結部材が一対のストライカ支持ブラケットにも連結されているため、一対のストライカの支持剛性をさらなる向上を図ることが可能となる。
【0019】
請求項7記載の発明は、ストライカがストライカ支持ブラケットの起伏部の下側に接合されている。このため、起伏部によってストライカ支持ブラケットの剛性が高められた位置にストライカが接合されるため、一対のストライカの支持剛性をさらなる向上を図ることが可能となる。
また、ストライカ支持ブラケットが上からストライカを覆った状態となるので、ストライカに対する上方への荷重に対する支持剛性を効果的に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態にかかるシート本体が使用位置にある乗物用シートの斜視図である。
【
図2】使用位置にある乗物用シートの側面図である。
【
図3】移動位置にある乗物用シートの斜視図である。
【
図4】移動位置にある乗物用シートの側面図である。
【
図5】
図1と異なる方向から見た、移動位置にある乗物用シートの斜視図である。
【
図6】使用位置にある乗物用シートの平面図である。
【
図12】ストライカの支持構造の他の例を示す斜視図である。
【
図13】ストライカと他のストライカ支持ブラケットを示す斜視図である。
【
図14】ストライカと他のストライカ支持ブラケットの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[発明の実施形態の概略]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0022】
本実施形態は、乗物用シートである。以下に示す乗物用シートを備える乗物は、船舶、飛行体、車両等、人間が搭乗して移動を行うあらゆる乗物を含むが、本実施形態では、車両、特に、自動車の車両用シートを例示する。
本実施形態は、特に、着座者である乗員が着座可能な使用位置と移動位置の間で切り替え可能な乗物用シート1を例示する。
【0023】
乗物用シート1は、シート本体、レール装置3、支持機構4、保持機構5を有する。
レール装置3は、シート本体を所定方向に沿って移動可能とする。
支持機構4は、レール装置3に対してシート本体を、着座者が着座可能な使用位置と当該使用位置から移動した移動位置との間で移動可能に支持する。
保持機構5は、シート本体を使用位置に保持する。
【0024】
シート本体は、人の大腿部及び臀部を支持するシートクッションと、下端部がシートクッションに支持され、かつ背凭れとなるシートバックと、シートバックの上端部に設けられたヘッドレストと、シートフレームと、シートクッションに対してシートバックを傾動させるためのリクライニング機構とを備える。
さらに、シートフレームは、シートクッションの骨格を形成するクッションフレームと、下端部がシートクッションに支持され、かつ背凭れとなるシートバックの骨格を形成するシートバックフレームと、ヘッドレストの骨格を形成するヘッドレストフレームとを備える。
クッションフレーム、シートバックフレーム及びヘッドレストフレームには、クッションパッドが設けられ、当該クッションパッドが表皮によって覆われてシート本体を構成している。
【0025】
以下に示す乗物用シート1の説明では、シート本体の周知の構成については、図示及び詳細な説明は省略する。
そして、乗物用シート1における特徴的な構成であるレール装置3と支持機構4と保持機構5とその周辺の構成について図面を用いて詳細に説明するものとする。
【0026】
図1は実施形態にかかるシート本体が使用位置にある乗物用シート1の斜視図、
図2はその側面図、
図3はシート本体が移動位置にある乗物用シート1の斜視図、
図4はその側面図である。さらに、
図5は
図1と異なる方向から見た移動位置にある乗物用シート1の斜視図、
図6は使用位置にある乗物用シート1の平面図、
図7は
図6のA-A線に沿った断面図である。
なお、本実施形態に示す各図において、上下左右前後の各方向は、車両に取り付けられた状態での方向を示し、車両前進方向を「前」、その反対方向を「後」、前方を向いた状態で左手側を「左」、右手側を「右」とする。
なお、以下の乗物用シート1の説明では、特に言及がない場合には、シート本体が使用位置にある前提で、各部の配置、向き、方向を説明するものとする。
【0027】
[クッションフレーム]
クッションフレーム2は、
図1~
図7に示すように、互いに間隔を空けて配置された左右のクッションサイドフレーム20,21と、各クッションサイドフレーム20,21の後端部に連結された左右のパイプフレーム支持ブラケット22,23と、左右のクッションサイドフレーム20,21を連結するパイプフレーム24,25と、左右のパイプフレーム支持ブラケット22,23を連結するパイプフレーム26とを有する。
【0028】
図1及び
図2に示すように、左右のクッションサイドフレーム20,21は、互いに内側に向かって開放された断面略U字状の開断面構造で形成されている。
左のクッションサイドフレーム20は、クッションフレーム2の左側面となる平板状のウェブ200と、ウェブ200の上下にそれぞれ一体的に形成されたフランジ201,202とを有する。
右のクッションサイドフレーム21は、クッションフレーム2の右側面となる平板状のウェブ210と、ウェブ210の上下にそれぞれ一体的に形成されたフランジ211,212とを有する。左右のクッションサイドフレーム20,21は、各々が一枚の金属板からプレス加工により形成されている。
【0029】
左右のウェブ200,210は、前後上下方向に沿った平板状であって側面視で同一形状である。左右のウェブ200,210は、側面視の全体形状が概ね前後方向に長尺である。左右のウェブ200,210の前端部側は、上下幅が他の部位よりも幾分狭く、前方よりも幾分斜め上に向かって延出されている。また、左右のウェブ200,210の後端部は、後斜め下方向に沿ってカットされた形状となっている。さらに、当該カット部分の中央には、後述するパイプフレーム26を避けるための円弧状の切り欠きからなる逃げ部が形成されている。
左右のウェブ200,210の前端部と後端部とには、前述したフランジ201,202,211,212が形成されていない。
【0030】
さらに、左右のウェブ200,210の前端部側は、途中で屈曲し、屈曲部よりも前側では、斜め上側への傾斜角度が幾分低減している。
そして、左右のウェブ200,210の前端部と屈曲部とには、円形の貫通孔が形成されており、パイプフレーム24,25の左端部と右端部とが挿入されている。パイプフレーム24,25は、左右のクッションサイドフレーム20,21の前側部分を連結している。パイプフレーム24,25と左右のウェブ200,210とは、例えば、溶接等によって接合されているが、他の接合方法で連結してもよい。パイプフレーム24,25は、左右方向に平行に向けられている。
なお、以下の記載において、「溶接等によって接合」という場合には、接合方法は溶接を例示するが溶接以外でもよいことを示す。
【0031】
左のクッションサイドフレーム20の後端部における、ウェブ200の右側面(内側面)には、パイプフレーム支持ブラケット22が設けられている。また、クッションサイドフレーム20の後端部における、ウェブ200の左側面(外側面)には、図示しないシートバック支持ブラケットが設けられている。
【0032】
パイプフレーム支持ブラケット22は、フランジ201,202が形成されていないクッションサイドフレーム20の後端部におけるフランジ201とフランジ202の間から後斜め上に向かって延出されている。
パイプフレーム支持ブラケット22は、開口側を左方に向けた断面略U字状であって、一枚の金属板からプレス加工により形成されている。
【0033】
パイプフレーム支持ブラケット22は、前後上下方向に沿った平板状のウェブ221と、ウェブ221の前側縁部と後側縁部とに、左方に向かって立ち上げられたフランジ222とを有する。さらに、パイプフレーム支持ブラケット22の上端部には、左方に向かって膨出した略矩形の凸部223が形成されている。パイプフレーム支持ブラケット22は、前後のフランジ222と凸部223とにより、剛性が高められており、左右方向の撓みを抑制する構造となっている。
【0034】
パイプフレーム支持ブラケット22は、複数のボルト等の締結部材によってクッションサイドフレーム20の後端部に固定されている。なお、パイプフレーム支持ブラケット22の前後それぞれのフランジ222の外側面は、クッションサイドフレーム20のそれぞれのフランジ201,202の内側面に当接し、各々の複数個所で溶接等により接合される構造としてもよい。
クッションサイドフレーム20とパイプフレーム支持ブラケット22は、いずれも断面略U字状であって、各々の開放側を向かい合わせて一体的に接合されている。このため、クッションサイドフレーム20とパイプフレーム支持ブラケット22とにより、閉断面構造の角筒状の構造が形成され、剛性が非常に高められている。
【0035】
また、パイプフレーム支持ブラケット22は、凸部223の下端部を左右方向に貫通するように円孔が形成され、そこにパイプフレーム26の左端部が挿入されている。パイプフレーム26とパイプフレーム支持ブラケット22とは、例えば、溶接等によって接合されているが、他の接合方法で連結してもよい。
凸部223によってウェブ221から起伏している部分は、板面の変形によって剛性が高められている。このため、凸部223の下端部に設けられた円孔にパイプフレーム26の左端部を接合することで、当該パイプフレーム26を高強度で支持することができる。
【0036】
右のクッションサイドフレーム21の後端部における、ウェブ210の右側(外側面)には、パイプフレーム支持ブラケット23が設けられ、さらに、その右側にはシートバック支持ブラケット27が設けられている。
【0037】
パイプフレーム支持ブラケット23及びシートバック支持ブラケット27は、ウェブ210の後端部から後斜め上に向かって延出されている。
【0038】
シートバック支持ブラケット27は、右側に開放された断面略U字状であって、前後上下方向に沿った平板状のウェブ271と、ウェブ271の前縁部及び後側縁部とに、右方に向かって立ち上げられたフランジ272とを有する。シートバック支持ブラケット27は、一枚の金属板からプレス加工により形成されている。
【0039】
パイプフレーム支持ブラケット23及びシートバック支持ブラケット27は、右のクッションサイドフレーム21の後端部から同方向に延出されているが、シートバック支持ブラケット27の方がより上方まで延出されている。そして、シートバック支持ブラケット27は、図示しない左側のシートバック支持ブラケットと共に、各々の上端部が図示しないシートバックフレームの右下端部及び左下端部とに連結される。左のシートバック支持ブラケットと右のシートバック支持ブラケット27は、シートバックフレームの下端部を左右方向に沿った軸回りに回動可能に支持する。
【0040】
左右のシートバック支持ブラケットとシートバックフレームとの間には、図示しない周知のリクライニング機構が設けられている。
左右のリクライニング機構は、いずれも、左右方向に沿った回動軸と、シートバックフレームを前方に付勢する渦巻きバネとを有する。渦巻きバネは、一端部がシートバック支持ブラケットに保持され、他端部がシートバックフレームに保持されている。
リクライニング機構は、シートバックを所定角度の起立状態に固定する固定機構を有する。また、リクライニング機構は、不図示の操作レバーを操作することで固定状態が解除され、渦巻きバネによって左右のシートバック支持ブラケットに対してシートバックフレームを前方側に回転させてクッションフレーム2側に折り畳むことができる。
【0041】
シートバック支持ブラケット27は、概ね前後方向に沿った段差273を有し、ウェブ271の上半分が右方に落ち込む形状に形成されている。シートバック支持ブラケット27は、ウェブ271の段差273による変形と各フランジ272とによって剛性が高められている。
【0042】
パイプフレーム支持ブラケット23は、前後上下方向に沿った平板状のウェブ231と、ウェブ231の後側縁部に、右方に向かって立ち上げられたフランジ232とを有する。パイプフレーム支持ブラケット23は、一枚の金属板からプレス加工により形成されている。
ウェブ231の下部は、その左面がクッションサイドフレーム21のウェブ210の右面側に当接している。また、ウェブ231の右面は、シートバック支持ブラケット27のウェブ271の左面下部に当接している。
【0043】
パイプフレーム支持ブラケット23は、各ウェブ210,231,271を貫通する複数のボルト等の締結部材によって、シートバック支持ブラケット27と共にクッションサイドフレーム21の後端部に固定されている。なお、各ウェブ210,231,271の当接部を溶接等により接合してもよい。
また、パイプフレーム支持ブラケット23のフランジ232の前面を、シートバック支持ブラケット27の後側のフランジ272の後面に当接させて、これらを各々の複数個所で溶接等により接合してもよい。
【0044】
パイプフレーム支持ブラケット23のウェブ231は、当該ウェブ231の上端部が右方に落ち込む段差233を有している。そして、ウェブ231の上端部は二叉に分離しており、各々の先端部が、シートバック支持ブラケット27のウェブ271の段差273によって右方に落ち込んだ上半分の左面に接合されている。
パイプフレーム支持ブラケット23の段差233は、シートバック支持ブラケット27の段差273よりも上方に位置している。このため、パイプフレーム支持ブラケット23のウェブ231とシートバック支持ブラケット27のウェブ271とによって、前後方向に沿った四角柱状の閉断面形状の構造が形成される。これにより、パイプフレーム支持ブラケット23とシートバック支持ブラケット27の連結体は、高い剛性を有し、シートバック及びパイプフレーム26を強固に支持することができる。
【0045】
また、パイプフレーム支持ブラケット23のウェブ231の中央部とシートバック支持ブラケット27のウェブ271における段差273の形成位置とのそれぞれに、左右方向から見て重合する円孔が貫通形成されており、パイプフレーム26の右端部が挿入されている。パイプフレーム26は、パイプフレーム支持ブラケット23及びシートバック支持ブラケット27に対して、例えば、溶接等によって接合されているが、他の接合方法で連結してもよい。
ウェブ271における段差273の変形によって剛性が高められている位置であって、各ウェブ231,271の四角柱状の構造によって剛性が高められている位置に設けられた円孔にパイプフレーム26の右端部を接合することで、当該パイプフレーム26を高い強度で支持することができる。
【0046】
クッションフレーム2は、上記左右のクッションサイドフレーム20,21と三本のパイプフレーム24~26によって平面視で略矩形の枠体を構成する。
そして、クッションフレーム2には、前から二本目のパイプフレーム25と後のパイプフレーム26との間で、左右のクッションサイドフレーム20,21に懸架された受圧部材28が設けられている。
受圧部材28は、乗物用シート1に着座する人の荷重を受ける部材である。
【0047】
受圧部材28は、左右方向に長い矩形の樹脂製のシート材である。左右のクッションサイドフレーム20,21の上側のフランジ201,211には、いずれも前後に並んだ二箇所に、左右方向内側に向かって延出された受圧部材28の取付片(図示略)がフランジ201又は211と一体的に形成されている。
受圧部材28は、各取付片に対して左端部の前後二か所と右端部の前後二か所がボルト等の締結部材によって固定されている。
受圧部材28は、左右のクッションサイドフレーム20,21に連結された左右の端部に比べて中央部が下方に撓んでいる。シートクッションのクッションパッドは、この受圧部材28の上に配置される。
【0048】
なお、クッションフレーム2における受圧部材28の取り付けは、締結部材に限らず、接着や係止部材を設けて係止する等の方法を利用してもよい。
また、受圧部材28は、前後に長尺として、各パイプフレーム24~26に取り付けてもよい。
さらに、受圧部材28は、樹脂製のシート材に限らず、シート状、面状の形態をとることが可能なあらゆる素材を利用することができる。例えば、ネット、面状に曲成したワイヤー、面状に展開したバネ材等を使用してもよい。
【0049】
[レール装置]
レール装置3は、上下方向についてクッションフレーム2と乗物用シート1が設置される車体のフロア材Fとの間に配置される。
図1及び
図2に示すように、レール装置3は、車体のフロア材Fに固定される左右一対のロアレール31と、各ロアレール31に対して相対移動可能に支持される左右一対のアッパレール32と、一対のアッパレール32を移動不能に制止する制止部材33と、制止部材33の制止状態を解除する操作レバー34と、を主に備えている。
【0050】
各ロアレール31の前端部と後端部は、取付ブラケット35,36を介して車体のフロア材Fの上面に前後に設けられたブロック状の土台F1、F2に固定されている。各ロアレール31は、前後方向に沿った状態で固定される。
【0051】
前側の取付ブラケット35は、後半部が略水平、前半部が前斜め下に傾斜した長尺の金属板からなる。取付ブラケット35の左右には、上側に立ち上げられたフランジを有する。取付ブラケット35の前半部の下面が土台F1の前側の傾斜面に接する設置面となり、取付ブラケット35の後半部の上面がロアレール31を載置する載置面となっている。
取付ブラケット35は、前半部を貫通するボルト等の締結部材によって土台F1に固定されている。
さらに、取付ブラケット35の左右のフランジの内側の幅がロアレール31の外側の幅と略一致している。このため、フランジ間にロアレール31を嵌合させることができる。そして、取付ブラケット35とロアレール31とを貫通するボルト等の締結部材によって、ロアレール31の前端部がフロア材Fに固定されている。
取付ブラケット35とロアレール31とを連結する締結部材を通す、取付ブラケット35側又はロアレール31側のいずれか一方の貫通孔を、前後方向に沿った長孔とすることで、ロアレール31の取付位置を前後方向に調節可能としてもよい。
取付ブラケット35を土台F1に固定する締結部材を通す貫通孔を、傾斜面に沿った長孔とすることで、ロアレール31の設置高さを調節可能としてもよい。
【0052】
後側の取付ブラケット36は、上側に立ち上げられたフランジを左右両側に有し、前後方向に沿った長尺の金属板からなる。取付ブラケット36の後半部の下面が土台F2の上面に載置される略水平な設置面となり、前半部の上面がロアレール31を載置する略水平な載置面となっている。
取付ブラケット36は、後半部を貫通するボルト等の締結部材によって土台F2に固定されている。
さらに、取付ブラケット36の左右のフランジの内側の幅がロアレール31の外側の幅と略一致している。このため、フランジ間にロアレール31を嵌合させることができる。そして、取付ブラケット36とロアレール31とを貫通するボルト等の締結部材によって、ロアレール31の後端部がフロア材Fに固定されている。
取付ブラケット36とロアレール31とを連結する締結部材を通す、取付ブラケット36側又はロアレール31側のいずれか一方の貫通孔を、前後方向に沿った長孔とすることで、ロアレール31の取付位置を前後方向に調節可能としてもよい。或いは、取付ブラケット36を土台F2に固定する締結部材を通す貫通孔を、前後方向に沿った長孔とすることで、ロアレール31の取付位置を前後方向に調節可能としてもよい。
【0053】
ロアレール31は、全長に渡って上方に開放された開断面形状の長尺部材である。ロアレール31は、一枚の金属板からプレス加工により形成されている。ロアレール31は、全長に渡って断面形状が略U字状である。即ち、ロアレール31は、長尺な帯状の底板部311と、当該底板部311の左右両側から上方に立ち上げられた左右の側壁部とを有する。左右の側壁部の上端部には、上端部から内側に向かい、さらに下方に折り返された返し部が全長に渡って形成されている。
【0054】
アッパレール32は、全長に渡って下方に開放された開断面形状の長尺部材である。アッパレール32は、一枚の金属板からプレス加工により形成されている。アッパレール32は、全長に渡って断面形状が逆さの略U字状である。即ち、アッパレール32は、長尺な帯状の天板部321と、当該天板部321の左右両側から下方に垂下された左右の側壁部とを有する。左右の側壁部の下端部には、下端部から外側に向かい、さらに上方に折り返された返し部が全長に渡って形成されている。
【0055】
アッパレール32は、ロアレール31の一端部から内側に挿入されると、天板部321が全長に渡って、ロアレール31の左右の側壁部の間から上方に突出する。また、ロアレール31の内側において、アッパレール32の左右の返し部がロアレール31の左右の返し部によって上から拘束され、ロアレール31に対するアッパレール32の上側への脱落が防止されつつ、アッパレール32の前後の滑動が可能となっている。
【0056】
制止部材33と操作レバー34は、シート本体の前後方向のスライドを規制するスライド制止機構を構成する。制止部材33と操作レバー34は、左右のアッパレール32の天板部321の前後方向中間位置にそれぞれ個別に搭載されている。
操作レバー34は、操作入力が行われる回動端部が前方に向かって延出された長尺体であり、制止部材33は、操作レバー34の長手方向中間部に設けられ、下方に向かって延出されている。制止部材33と操作レバー34は、一体化された一部材からなる。
左右の操作レバー34の後端部は、それぞれ、左右方向に沿った連動軸341の左端部と右端部とに固定されている。連動軸341は、左右のアッパレール32の天板部321の前後方向中間位置にそれぞれ固定装備された左右の軸ブラケット342により左右の端部が回動可能に支持されている。
従って、左右の操作レバー34は、いずれか一方に回動操作を行うと、連動軸341によって双方が連動して回動を行う。
【0057】
制止部材33は、アッパレール32の天板部321に形成された矩形の長穴に遊挿されており、その下端部をロアレール31の底板部311に当接させることができる。
底板部311には、前後方向に沿って一定の間隔で嵌合孔が形成され、個々の嵌合孔に対して制止部材33の下端部が挿入される。これにより、制止部材33が上から底板部311に当接すると、ロアレール31に対するアッパレール32の前後方向の滑動を規制する。なお、制止部材33がアッパレール32の前後方向の滑動を規制するための構成については、上述の例に限定されず、アッパレール32の滑動を規制可能なあらゆる構成を採用することができる。
【0058】
連動軸341の左右方向中央部には、例えば、抱き締めによって、連動軸341から上方に延出された入力腕343が固定装備されている。入力腕343の上方に延出された回動端部には、入力腕343に前方への張力を付与する張力ワイヤー344が連結されている。これにより、連動軸341から制止部材33に対して、下方への加圧力が付与され、制止部材33がアッパレール32の前後方向の滑動を規制することができる。
また、張力ワイヤー344による張力に抗して左右いずれか一方の操作レバー34を引き上げる方向に回動させることにより、左右両側の制止部材33による制止状態を解除することができる。
【0059】
[支持機構]
支持機構4は、左側のアッパレール32の上でクッションフレーム2の左側を支持する左側の支持機構40Aと、右側のアッパレール32の上でクッションフレーム2の右側を支持する右側の支持機構40Bとを有する。
【0060】
左側の支持機構40Aは、左側のアッパレール32の天板部321の前端側の上面に設置されている。
左側の支持機構40Aは、支持アーム41Aと、支軸42Aと、第1支持ブラケット43Aと、第2支持ブラケット44Aとを有する。
【0061】
第1支持ブラケット43Aは、左側のアッパレール32の天板部321の前端側の上面に載置状態で固定される基板部431Aと、基板部431Aの右端部から垂直に立ち上げられた側壁部432Aとを有する。
第2支持ブラケット44Aは、左側のアッパレール32の天板部321の前端側の上面に第1支持ブラケット43Aの基板部431Aを介して固定される基板部441Aと、基板部441Aの右端部から垂直に立ち上げられた側壁部442Aとを有する。
第1支持ブラケット43Aと第2支持ブラケット44Aは、いずれも、一枚の金属板からプレス加工により形成されている。
【0062】
第1支持ブラケット43Aの基板部431Aは、前後方向に長尺な矩形であり、その右端部が天板部321の右端部よりも右方に延出されている。従って、側壁部432Aは、天板部321の右端部よりも右方に立設されている。
側壁部432Aは、側面視において、左右方向中央部が最も高くなるように上端が円弧状に突出している。この円弧状の突出部位の中心に支軸42Aの右端部を支持する円孔が左右方向に貫通形成されている。側壁部432Aは、上端円弧状の部位から後端部にかけて、右方に向かって立ち上げられたフランジが形成されている。このフランジによって、円孔の周囲の剛性が高められ、側壁部432Aの撓みが抑制され、支軸42Aの支持強度が高められている。
【0063】
第2支持ブラケット44Aの基板部441Aは、前後方向に長尺な矩形であり、前述した基板部431Aよりも左右幅が狭い。そして、基板部441Aは、基板部431Aの上に重ねて載置され、基板部441A、基板部431A及びアッパレール32の天板部321を貫通する複数のボルト等の締結部材により、第1支持ブラケット43A及び第2支持ブラケット44Aがアッパレール32の天板部321上に固定されている。
【0064】
側壁部442Aは、側面視において、前述した側壁部432Aと概ね等しい形状である。側壁部442Aは、側壁部432Aの左側で一定の間隔をあけて平行に対向している。
側壁部442Aは、円弧状の突出部位の中心に支軸42Aの左端部を支持する円孔が左右方向に貫通形成されている。円孔の周囲は、側壁部442Aの右面において右方に突出し、左面において右方に窪んだ突出部が形成されている。この突出部によって、円孔の周囲の剛性が高められ、側壁部442Aの撓みが抑制され、支軸42Aの支持強度が高められている。
【0065】
また、支軸42Aの下側の周囲の三か所には、対向する側壁部432Aと側壁部442Aに懸架された連結ピン46Aが設けられている。各連結ピン46Aは、各側壁部432A,442Aに対して左右の端部が、それぞれ、かしめ或いは溶接等の接合によって固定されており、各側壁部432A,442Aの左右方向の間隔を一定に維持する。また、各連結ピン46Aの連結により、各側壁部432A,442Aの剛性が高められ、各側壁部432A,442Aの撓みが抑制され、支軸42Aの支持強度が高められている。
【0066】
また、三つの連結ピン46Aの内、支軸42Aの前方に位置する連結ピン46Aは、後述する支持アーム41Aによって回動可能に支持されたクッションフレーム2の後端部が起伏回動したときに、支持アーム41Aの前端部が当接し、
図3及び
図4に示す角度よりも起伏回動しないように規制するストッパとしても機能する。
【0067】
支持アーム41Aは、側面視エルボ状の金属の厚板から形成されている。支持アーム41Aは、支軸42Aによって支持される基端部から後斜め上に向かって延出され、途中の屈曲部で屈曲して、基端部とは逆側の回動端部が略水平に延出されている。
支持アーム41Aの回動端部は、クッションサイドフレーム20の前後方向中間部で、図示しないスペーサブロックを介してウェブ200の右面側に複数のボルト等の締結部材によって連結されている。
また、支持アーム41Aの基端部には、支軸42Aが挿通される円孔が左右方向に貫通形成されている。そして、支持アーム41Aの基端部は、第1及び第2支持ブラケット43A,44Aのそれぞれの側壁部432A,442Aの間で支軸42Aにより回動可能に支持されている。
なお、支軸42Aを第1及び第2支持ブラケット43A,44Aに対して回動可能とすることで支持アーム41Aを回動可能に支持してもよいし、支軸42Aに対して支持アーム41Aを回動可能に支持してもよい。
【0068】
左側の支持機構40Aは、第1支持ブラケット43Aと第2支持ブラケット44Aがいずれも、側壁部432A,442Aをアッパレール32よりも右側に配置することで、支持機構40Aの各構成を左のクッションサイドフレーム20と干渉しないようにオフセットさせることを可能としている。
さらに、第1支持ブラケット43Aと第2支持ブラケット44Aは、それぞれの基板部431A,441Aを重ねて配置すると共に、それぞれの側壁部432A,442Aが連結ピン46Aによって相互の間隔を一定に維持するよう連結されている。これらの構造によって、左側の支持機構40Aは、アッパレール32よりも右側にオフセットされた位置からシート本体の左側を高い支持剛性且つ高強度で支持することが可能となっている。
【0069】
右側の支持機構40Bは、右側のアッパレール32の天板部321の前端側の上面に設置されている。
右側の支持機構40Bは、支持アーム41Bと、支軸42Bと、支持ブラケット43Bと、起伏バネ45Bとを有する。
【0070】
支持ブラケット43Bは、右側のアッパレール32の天板部321の前端側の上面に載置状態で固定される基板部431Bと、基板部431Bの左右両端部から垂直に立ち上げられた一対の側壁部432Bとを有する。支持ブラケット43Bは、上方に開放された開断面形状を呈する。支持ブラケット43Bは、一枚の金属板からプレス加工により形成されている。
【0071】
支持ブラケット43Bの基板部431Bは、前後方向に長尺な矩形であり、左右の幅がアッパレール32の天板部321より広い。支持ブラケット43Bは、左右方向について天板部321が基板部431Bの中央に位置するように当該天板部321に載置されている。支持ブラケット43Bは、基板部431Bと天板部321とを貫通する複数のボルト等の締結部材によってアッパレール32に固定されている。
【0072】
一対の側壁部432Bは、いずれも、側面視において、左右方向中央部が最も高くなるように上端が円弧状に突出している。各側壁部432Bの円弧状の突出部位の中心に支軸42Bの左右の端部を個別に支持する円孔が左右方向に貫通形成されている。
【0073】
支持アーム41Bは、基板部411Bと、基板部411Bの左右両端部から垂直に立ち上げられた一対の側壁部412Bとを有し、上方に開放された開断面形状を呈する。支持アーム41Bは、一枚の金属板からプレス加工により形成されている。
【0074】
シート本体が使用位置にある場合に、基板部411Bは、前端部が下方に傾斜し、前端部以外は略水平な平板状である。
クッションサイドフレーム21の下側のフランジ212には、左右方向内側に向かって延出された取付片(図示略)がフランジ212と一体的に形成されている。基板部411Bの平板状の部位は、フランジ212から延出された取付片に対して前後二か所がボルト等の締結部材によって連結されている。
【0075】
一対の側壁部412Bは、前端部を除いて側面視長尺の矩形であり、前端部は略円弧状である。各側壁部412Bの円弧状の部位の中心に支軸42Bを挿通する円孔が左右方向に貫通形成されている。
【0076】
支持アーム41Bの左右方向の幅は、支持ブラケット43Bの一対の側壁部432Bの互いに対向する面の間隔と略一致している。そして、支持ブラケット43Bの一対の側壁部432Bの間に、支持アーム41Bの前端部が格納され、支軸42Bによって支持ブラケット43Bと支持アーム41Bとが連結されている。
支軸42Bは、左右方向に平行に向けられている。支持アーム41Bは、右側のクッションサイドフレーム21と共に支軸42Bを中心として回動を行う。
なお、支軸42Bを支持ブラケット43Bに対して回動可能とすることで支持アーム41Bを回動可能に支持してもよいし、支軸42Bに対して支持アーム41Bを回動可能に支持してもよい。
【0077】
起伏バネ45Bは、いわゆるねじりコイルバネであり、コイル部分が支軸42Bに挿通支持されている。また、起伏バネ45Bのバネ材であるワイヤーの一端部が支持ブラケット43Bに連結され、他端部が支持アーム41Bに連結されている。起伏バネ45Bは、支持アーム41Bの回動端部、即ち、クッションフレーム2の後端部側が上方に持ち上げられる方向に弾性力を付与している。
【0078】
支持ブラケット43Bの内側における起伏バネ45Bの前側には、起伏バネ45Bの一端部を保持するブロック材46Bが設けられている。このブロック材46Bは、起伏バネ45Bによりクッションフレーム2の後端部が起伏回動したときに、支持アーム41Bの前端部が当接し、
図3及び
図4に示す角度よりも起伏回動しないように規制するストッパとしても機能する。
【0079】
また、左側の支持機構40Aの第1支持ブラケット43Aの側壁部432Aと右側の支持機構40Bの支持ブラケット43Bの左側の側壁部432Bとの間には、連結フレーム47が懸架されている。連結フレーム47は、左右方向と前後方向に平行な天板部と、左右方向と上下方向に平行な前後一対の側板部とを有する、下方に開放された開断面形状のフレーム材である。連結フレーム47は、左右方向に沿っている。連結フレーム47は、天板部と一対の側板部とをそれぞれ左右方向に延長した板状突起を左右両端部に有している。そして、側壁部432Aと側壁部432Bとには、それぞれ、各板状突起を挿入するスリット状の開口部が形成されている。
連結フレーム47は、両端部の各板状突起を側壁部442Aと側壁部432Bの開口部に挿入した状態で組付けられている。連結フレーム47の各板状突起は、側壁部442A及び側壁部432Bに対して、溶接等により接合してもよい。
連結フレーム47によって左側の支持機構40Aの第1支持ブラケット43Aと右側の支持機構40Bの支持ブラケット43Bとが連結されることにより、シート本体からの荷重を支持機構40A,40Bが分散して受けるので、シート本体を高い支持強度で支持することが可能となる。
【0080】
支持機構4は、左側の支持機構40Aの支軸42Aと右側の支持機構40Bの支軸42Bとが同心であり、これによって、シート本体を良好に回動可能に支持することができる。
また、支持機構4は、上記回動により、シート本体を着座者が着座可能な使用位置からシート本体の後端部を上方に跳ね上げた移動位置までの範囲で回動可能としている。
シート本体の移動位置は、前述した連結ピン46Aとブロック材46Bとにより回動が制止される位置である。シート本体の使用位置は、後述する保持機構5により保持される位置である。
支持機構4は、起伏バネ45Bによりシート本体を移動位置側への回動が常に付勢されているが、保持機構5によってシート本体を使用位置に保持され、保持機構5が解放することによって、移動位置に切り替えることができる。
【0081】
[保持機構]
保持機構5は、左右のストライカ51,52と、左右のストライカ支持ブラケット53,54と、連結部材55と、左右のロック装置56,56とを有する。
図8は左右のストライカ51,52の周辺の斜視図、
図9は
図8のB-B線に沿った断面図である。また、
図10はロック装置56の側面図、
図11は分解斜視図である。
図8及び
図9において、符号Wは溶接等による接合箇所を示している。
【0082】
図8及び
図9に示すように、左右のストライカ51,52は、ストライカ支持ブラケット53,54を介して個別に左右のアッパレール32の天板部321の後端部近傍の上面に取り付けられている。
左右のストライカ51,52は、いずれも、略U字状に形成された剛性の高いワイヤーからなる。
【0083】
左のストライカ51は、U字の開口側を左方に向け、開口側に延びるワイヤーの一端部511と他端部512とが左のストライカ支持ブラケット53の上面に溶接等によって接合されている。また、ストライカ51は、U字の底部に相当する連結部513をストライカ支持ブラケット53の右端部よりも右方(左右方向内側)に延出した状態で支持される。
同様に、右のストライカ52は、U字の開口部を左方に向け、開口側に延びるワイヤーの一端部521と他端部522とが右のストライカ支持ブラケット54の上面に溶接等によって接合されている。また、ストライカ52は、U字の底部に相当する連結部523をストライカ支持ブラケット54の左端部よりも左方(左右方向内側)に延出した状態で支持される。
従って、左右のストライカ51,52は、連結部513,523側を互いに接近する方向に向かって延出させている。
【0084】
各ストライカ51,52は、それぞれ左右のアッパレール32上において、ワイヤーの一端部511,521と他端部512,522とが左右方向に平行な状態となる。そして、各ストライカ51,52のワイヤーの一端部511,521と他端部512,522とは、前後に並んで配置される。
各ストライカ51,52は、後側に位置するワイヤーの端部512,522であって、ストライカ支持ブラケット53,54よりも左右方向内側に延出した部位に対して、各ロック装置56,56による保持と解放とが行われる。
【0085】
左右のストライカ支持ブラケット53,54は、いずれも、一枚の金属平板からなる。左右のストライカ支持ブラケット53,54は、アッパレール32の天板部321に載置される載置部531,541と当該載置部531,541から左右方向内側に延出された延出部532,542とを有する。左右のストライカ支持ブラケット53,54の載置部531,541は、延出部532,542よりも幾分前後方向に長く、例えば、載置部531,541の後端が延出部532,542よりも後方まで延出されている。
【0086】
左右のストライカ51,52は、ワイヤーの一端部511,521と他端部512,522とが、ストライカ支持ブラケット53,54の載置部531,541と延出部532,542とを横切ってその上面に載置されている。そして、左右のストライカ51,52のワイヤーの一端部511,521と他端部512,522とについて、平面視でストライカ支持ブラケット53,54に重合するほぼ全域に渡って、溶接等によって接合されている。各ストライカ51,52は、ストライカ支持ブラケット53,54に対して重合する全域を接合することにより、高い強度でストライカ支持ブラケット53,54に接合され、シート本体から受ける荷重に対して高い支持強度を有する。
【0087】
左右のストライカ支持ブラケット53,54は、載置部531,541において、ストライカ51,52の後側の端部512,522を前後に挟む配置で、二つのボルト等の締結部材によって、各アッパレール32の天板部321に固定されている。
左右のストライカ支持ブラケット53,54の各ロック装置56,56に係合する端部512,522は、特にシート本体からの荷重を受けやすく、当該端部512,522を挟む配置で二つの締結部材によりストライカ支持ブラケット53,54をアッパレール32に固定している。これにより、左右のストライカ支持ブラケット53,54は、シート本体から受ける荷重に対して高い支持強度を有する。
【0088】
連結部材55は、左右方向に沿った状態で、左右のストライカ51,52を連結している。
具体的には、左のストライカ51の前側の端部511におけるストライカ支持ブラケット53の右端部より右方に延出された部位の外周下部に、連結部材55の左端部の外周上部を溶接等により接合している。
また、右のストライカ52の前側の端部521におけるストライカ支持ブラケット54の左端部より左方に延出された部位の外周下部に、連結部材55の左端部と右端部の外周上部を溶接等により接合している。
【0089】
連結部材55は、断面円形の閉断面形状のパイプ材からなる。左右のストライカ51,52は、ストライカ支持ブラケット53,54に対して片持ち状態で支持されている。これらを連結部材55によって連結することにより、左右のストライカ51,52は、一体となって両持ち状態での支持状態となり、また、荷重を左右で分散できるので、シート本体側からの荷重に対して高強度で支持することが可能となる。
また、連結部材55は、閉断面形状であるため、曲げ剛性が高く、変形が抑えられるため、左右のストライカ51,52の支持強度も高く維持することができる。
なお、連結部材55の断面形状は、円形に限らず、多角形状などの他の閉断面形状であってもよい。但し、円形の閉断面形状とした場合には、いずれの方向からの荷重に対しても効果的に曲げによる変形を抑制することができ、より好ましい。
【0090】
連結部材55は、左右のストライカ51,52の端部511,521の外周下部に接合されているが、周囲の構成と干渉しないのであれば、端部511,521の外周前部や外周上部に接合してもよい。端部511,521の外周前部に接合する場合には、ストライカ支持ブラケット53,54をより前側まで延出し、連結部材55を左右により長く伸長して、ストライカ支持ブラケット53,54の上面にも接合してもよい。それにより、左右のストライカ51,52の支持強度をさらに高めることができる。
【0091】
左右のロック装置56,56は、それぞれ、取付ブラケット57,58を介してクッションフレーム2の後部側のパイプフレーム26に垂下状態で支持されている。
左右の取付ブラケット57,58は、それぞれ、シート本体が使用位置にある状態で、左右のストライカ51,52の後側の端部512,522を真上から保持可能となる位置に配置されている。
左右の取付ブラケット57,58は、上方から見て開断面形状であって、前後上下方向に沿ったロック装置56の取付面部と、当該取付面部の前端部及び後端部から側方に向かって立ち上げられたフランジとを有する。左右の取付ブラケット57,58は、いずれも、一枚の金属板からプレス加工により形成されている。また、左右の取付ブラケット57,58は、互いの開放側を対向させた向きでパイプフレーム26に取り付けられている。
左右の取付ブラケット57,58は、前後のフランジが取付面部よりも上方まで延出されており、当該上方延出部の内側面がパイプフレーム26の外周面に溶接等によって接合されている。
【0092】
左右のロック装置56,56は、同一構造なので、一方のロック装置56について説明する。
図10及び
図11に示すように、ロック装置56は、支持板561と、カバー体562と、ラッチ部材563と、ラチェット部材564と、レバー部材565と、バネ566と、解除レバー567と、荷重受け部材568と、固定ブラケット569とを有する。
【0093】
支持板561は、ロック装置56が取付ブラケット57又は58に支持された状態で、前後上下に沿った金属平板からなる。支持板561は、側方視で略矩形であり、その前端部と後端部には、それぞれ、前方と後方とに延出された取付腕が形成されている。前後の取付腕は、貫通孔が設けられ、図示しないボルト等の締結部材が挿通されて取付ブラケット57又は58の取付面部の下端部に取り付けられる。
【0094】
支持板561の上端部には、折曲により左方に向かって立ち上げられたフランジが形成されている。
支持板561の下端部であって前後方向の中間位置には、上方に向かって切り欠き561aが形成されている。この切り欠き561aには、ストライカ51又は52の端部512又は522が下から挿入され、当該切り欠き561aの深部で保持される。
【0095】
カバー体562は、ロック装置56が取付ブラケット57又は58に支持された状態で、前後上下に沿った金属平板からなる。カバー体562は、側方視で略矩形であり、その前端部と後端部には、右方に向かって立ち上げられた側壁部有し、各側壁部の右端からはそれぞれ、前方と後方とに延出された取付腕が形成されている。カバー体562の前後の取付腕は、支持板561の前後の取付腕と重合させることができ、カバー体562の前後の取付腕にも、締結部材を挿通可能な貫通孔が形成されている。
これにより、支持板561の左側にカバー体562を配置し、支持板561とカバー体562の前後の取付腕を個別に重ね合わせた状態で、各貫通孔に締結部材を挿入し、これらを重合させた状態で取付ブラケット57又は58の取付面部の下端部に取り付けることができる。
また、カバー体562は、前後に側壁部を有するので、当該側壁部の長さに応じて、支持板561とカバー体562との間に隙間を形成し、ロック装置56の各構成を配置することができる。
【0096】
カバー体562の上端部には、折曲により左方に向かって立ち上げられ、さらに左方先端部が折曲されて上方に延出されたフランジが形成されている。カバー体562のフランジの上端部は、支持板561のフランジの下面に当接する。
カバー体562の下端部であって前後方向の中間位置には、上方に向かって切り欠き562aが形成されている。この切り欠き562aには、左右方向から見て、支持板561の切り欠き562aと重合する位置に設けられ、その幅と深さも支持板561の切り欠き562aと一致している。
支持板561の切り欠き561aとカバー体562の切り欠き562aとに同時にストライカ51又は52の端部512又は522が下から挿入される。そして、支持板561とカバー体562の間に配置されたロック装置56の各構成によって、ストライカ51又は52の端部512又は522の保持が行われる。
【0097】
図10は、ロック装置56がストライカ51又は52の端部512又は522を保持したロック状態を示している。
ラッチ部材563は、左右方向に沿った支軸563aにより支持板561とカバー体562の間で回動可能に支持される。ラッチ部材563は、回動により支持板561及びカバー体562の切り欠き561a,562aに重合させることが可能な切り欠き563bが形成されている。ラッチ部材563は、切り欠き563bが下方を向いた状態でストライカ51又は52の端部512又は522が挿入可能である。そして、
図10における時計方向に回動して、切り欠き563bが前方を向いた状態でストライカ51又は52の端部512又は522を保持したロック状態となる。
【0098】
ラッチ部材563は、ロック状態の姿勢における切り欠き563bの上側にラチェット部材564の係止突起564cに係止される凹部563cが設けられている。
また、ラッチ部材563は、ロック状態の姿勢における上端部にレバー部材565を軸支する支持突起563dが設けられている。支持突起563dは左方に延出されている。
【0099】
ラチェット部材564は、ラッチ部材563の前隣に配置され、下端部が左右方向に沿った支軸564aにより軸支されている。ラチェット部材564の上端部には、バネ566の前端部が連結される貫通穴564bが形成されており、バネ566によってラッチ部材563側に張力が付勢されている。また、ラチェット部材564の上端部には、バネ566と共に解除レバー567の後端部が連結されている。解除レバー567は、ラチェット部材564の上端部から前方に延びており、図示しない解除レバー567の前端部から手動操作によって前方へ引っ張る解除操作が入力される。
【0100】
ラチェット部材564の上下方向の中間部には、後方に突出した係止突起564cが形成されている。この係止突起564cは、バネ566によってラッチ部材563の凹部563c内に侵入する方向に付勢されており、侵入状態を維持する限り、ラッチ部材563のロック状態を解除する方向の回動(
図10における反時計方向)を規制する。
また、ラチェット部材564の係止突起564cの近傍には、レバー部材565に回動を付与する連動突起564dが設けられている。連動突起564dは左方に延出されている。
【0101】
レバー部材565は、前述したようにラッチ部材563の支持突起563dによって回動可能に支持されている。レバー部材565は、一端部が上方に延出されると共に前述したバネ566の後端部に連結されている。また、レバー部材565の他端部は、湾曲して前方に延出されている。そして、レバー部材565の他端部には、長穴565aが形成されており、ラチェット部材564の連動突起564dが遊挿されている。
ラチェット部材564は、上端部が前方に回動を行うと、連動突起564dがレバー部材565の長穴565aの上側の内縁部に摺接しながらラチェット部材564とは逆方向の回動動作をレバー部材565に付与する。
【0102】
荷重受け部材568は、カバー体562の左面に固定ブラケット569によって取り付けられている。
荷重受け部材568は、下端部がカバー体562の切り欠き562aの深部よりも幾分下に位置する配置で僅かに上下動可能となるように固定ブラケット569に支持されている。そして、荷重受け部材568は、上方に移動したときにその上端部がカバー体562のフランジの下面に当接するように、その配置が設定されている。
これにより、切り欠き562aにストライカ51又は52の端部512又は522が挿入されると、端部512又は522が荷重受け部材568の下端部に当接し、荷重受け部材568の上端部がカバー体562のフランジの下面に当接する。カバー体562のフランジの上端部は、支持板561のフランジの下面に当接しているので、端部512又は522からの衝突荷重が荷重受け部材568を通じてカバー体562及び支持板561の全体に伝達され、荷重を分散することができる。
【0103】
上記構成のロック装置56のロック解除動作とロック動作とを説明する。
図10は、前述したように、ロック装置56が、ストライカ51又は52の端部512又は522をロックした状態である。
この状態で、解除レバー567が前方に引かれると、ラチェット部材564の上端部が前方に回動し、係止突起564cがラッチ部材563の凹部563cの外側に引き出される。これにより、ラッチ部材563は、切り欠き563bを下方に向ける方向への回動が可能な状態となる。
一方、ラチェット部材564の回動により、連動突起564dを通じて、レバー部材565には、ラチェット部材564と逆方向の回動が入力される。これにより、ラチェット部材564の上端部とレバー部材565の上端部とが互いに離隔して、バネ566が引き伸ばされて蓄勢される。
【0104】
レバー部材565が上記の方向に回動すると、支持突起563dを通じてバネ566の張力によって、ラッチ部材563に対してラチェット部材564の回動と同方向の回動(
図10における反時計方向)が付勢される。このため、ラチェット部材564の上端部が凹部563cから引き出されて規制状態が解除されたときに、ラッチ部材563が回動して切り欠き563bが下方を向いた状態となる。
これにより、ロック装置56は、ストライカ51又は52の端部512又は522を下方に引き抜き可能なロック解除状態にすることができる。
【0105】
この状態で解除レバー567の引っ張りをやめると、ラチェット部材564の係止突起564cより下側の外縁部が
図10におけるラッチ部材563の上端の平らな外縁部にバネ圧で当接し、ラッチ部材563の切り欠き563bが下方を向いた状態で保持することができる。
【0106】
一方、ロック状態とするには、クッションフレーム2の後端部を下方に回動させて、支持板561とカバー体562の切り欠き561a,562aとラッチ部材563の切り欠き563b内にストライカ51又は52の端部512又は522を押し込ませる。これにより、バネ566の張力に抗して、ラッチ部材563が
図10の時計方向に回動され、切り欠き561a,562aの深部近傍にストライカ51又は52の端部512又は522が達すると、ラッチ部材563の凹部563c内にラチェット部材564の係止突起564cが進入し、ラッチ部材563の切り欠き563bが前方を向いた状態で回動が規制される。従って、ストライカ51又は52の端部512又は522が支持板561とカバー体562の切り欠き561a,562aから下方に移動できないロック状態に保持される。
【0107】
[乗物用シートの操作]
上記構成からなる乗物用シート1は、シート本体が使用位置にある状態で左右のロック装置56を操作して、左右のストライカ51,52のロック状態を解除すると、支持機構4の起伏バネ45Bにクッションフレーム2が付勢されてシートクッションの後端部が上方に跳ね上がる方向に回動し、移動位置としての前傾姿勢となる。このとき、レール装置3の操作レバー34を操作して、制止部材33による制止状態を解除すると、シート本体全体を前方に移動させることができる。これにより、乗物用シート1が前方に退避し、当該乗物用シート1の後側に広くスペースを確保することができる。例えば、乗物用シート1のすぐ後ろに他の乗物用シートが配置されている場合には、他の乗物用シートに対する乗り降りを容易に行うことが可能となる。また、乗物用シート1のすぐ後ろが荷物の配置スペースである場合には、当該配置スペースに対する荷物の出し入れを容易に行うことが可能となる。
【0108】
また、乗物用シート1を元に戻す場合には、レール装置3によってシート本体を元の位置に戻し、操作レバー34を操作して、制止部材33を制止状態に復帰させる。
さらに、起伏バネ45Bに抗して、シートクッションの後端部を押し下げると、左右のロック装置56の切り欠き561a,562aに左右のストライカ51,52の端部512,522が入り込み、ラッチ部材563によって保持され、シート本体が使用位置に保持される。
【0109】
なお、レール装置3にバネ等を設けて、シート本体に常に前進移動する方向にバネ圧を付与した状態とし、左右のロック装置56の解除操作とレール装置3の制止部材33によるロック状態の解除操作とをワイヤー等で連動する構成としてもよい。これにより、ロック装置56の解除操作又は制止部材33によるロック状態の解除操作を行うことにより、シート本体が前傾姿勢となる回動動作とシート本体の前進移動動作とを同時に行わせることが可能となる。
【0110】
[乗物用シートの製造方法]
ここで、上記乗物用シート1の製造方法を工程順に説明する。
上記製造方法は、乗物のフロアとしてのフロア材Fに固定される一対のロアレール31を用意する工程と、一対のアッパレール32を用意する工程と、左右のロック装置56,56を用意する工程と、左右のロック装置56,56によって係合と解除が行われる一対のストライカ51,52を用意する工程と、一対のストライカ51,52が互いに接近する方向に向かって延出されるように、一対のアッパレール32に設ける工程と、一対のストライカ51,52を連結部材55によって連結する工程とを有する。
【0111】
ロアレール31を用意する工程で用意された左右のロアレール31は、それぞれ、前後の取付ブラケット35,36によって、フロア材Fに取り付けが行われる。このロアレール31の取り付け工程は、ストライカ51,52を連結部材55によって連結する工程までに行えばよい。
【0112】
アッパレール32を用意する工程で用意された左右のアッパレール32は、それぞれ左右のロアレール31に対して一端部から挿入することでロアレール31に対する装着が行われる。このアッパレール32の装着工程は、ロアレール31の取り付け工程の前又は後に行えばよい。
【0113】
一対のストライカ51,52を一対のアッパレール32に設ける工程において、それぞれのストライカ51,52は、ストライカ支持ブラケット53,54を介して各アッパレール32に設けられる。
【0114】
アッパレール32の装着工程以降、各アッパレール32に対して、制止部材33及び操作レバー34を取り付ける工程、各アッパレール32に対して支持機構40A,40Bを取り付ける工程等が行われる。
さらに、支持機構40A,40Bを取り付ける工程以降に、クッションフレーム2等のシートフレームを支持機構40A,40Bを取り付ける工程、クッションフレーム2に左右のロック装置56を取り付ける工程等が行われる。
さらに、シートフレームを取り付ける工程に前後して、クッションパッド及びカバーを装着する工程が行われる。
【0115】
[発明の実施形態の技術的効果]
上記乗物用シート1は、ストライカ51,52がクッションフレーム2の左右方向における両側に一対で設けられ、当該一対のストライカ51,52が左右方向内側に向かって延出されると共に、連結部材55によって連結されている。
このため、シート本体から受ける荷重を二つのストライカ51,52に分散することができ、簡易な構成により、それぞれのストライカ51,52の支持剛性の向上を図ることが可能となる。
また、個々のストライカ51,52は、片持ち状態で左右のアッパレール32に個別に支持されているが、連結部材55によって、左右のストライカ51,52が一体となり、両持ちの状態で支持された状態となるので、支持剛性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0116】
また、連結部材55は、ストライカ51,52と別体で構成されているので、既設のストライカ51,52を利用することが可能となる。また、連結部材55の取付の際に配置を調整することが容易となり、組付けを容易に行うことが可能となる。さらに、連結部材55の取付スペースを確保する点で有利となる。
【0117】
また、連結部材55は、閉断面形状であるため、連結部材55そのそのものが高い剛性を有し、左右のストライカ51,52の支持剛性も効果的に向上させることが可能となる。また、連結部材55により軽量化を図ることが可能となる。
【0118】
また、連結部材55は、円筒形状であるため、周囲のいずれの方向に対しても高い剛性を有し、左右のストライカ51,52の支持剛性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0119】
また、一対のストライカ51,52は、いずれも、延出方向の一部分を支持するストライカ支持ブラケット53,54を介して左右のアッパレールに設けられているので、ストライカ51,52をアッパレール32に直接接合する場合に比べて、接合方法や形状の適正化を図りやすく、ストライカ51,52の支持剛性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0120】
[保持機構の他の例]
ストライカ51,52は、ストライカ支持ブラケット53,54の上面に接合する実施形態を例示したがこれに限定されない。
図12はストライカ51,52の支持構造が異なる他の例としての保持機構5Aを示す斜視図、
図13はストライカ51,52と他のストライカ支持ブラケット53A,54Aを示す斜視図、
図14はその底面図である。
図12~
図14において、符号Wは溶接等による接合箇所を示している。
【0121】
図12の保持機構5Aに示すように、左右のストライカ51,52は、左右のストライカ支持ブラケット53A,54Aの下面側であって、ストライカ支持ブラケット53A,54Aと各アッパレール32の天板部321の上面との間に配置してもよい。
左側のストライカ支持ブラケット53Aには、その板面に対して左右方向に沿った凸条からなる起伏部533A,534Aが前後に並んで二つ形成されている。前側の起伏部533Aには、その後側に連接された突出高さの低い凸条535Aが設けられている。後側の起伏部534Aにも同様に、その前側に並んで突出高さの低い凸条536Aが設けられている。
右側のストライカ支持ブラケット54Aには、その板面に対して左右方向に沿った凸条からなる起伏部543A,544Aが前後に並んで二つ形成されている。前側の起伏部543Aには、その後側に連接された突出高さの低い凸条545Aが設けられている。後側の起伏部544Aにも同様に、その前側に並んで突出高さの低い凸条546Aが設けられている。
凸条535A,536A,545A,546Aは、その凹凸構造によって起伏部533A,534A,543A,544Aの剛性を高めている。
【0122】
左側のストライカ51は、
図14に示すように、端部511,512がそれぞれストライカ支持ブラケット53Aの起伏部533A,534Aの下面側に接合されている。
右側のストライカ52は、
図14に示すように、端部521,522がそれぞれストライカ支持ブラケット54Aの起伏部543A,544Aの下面側に接合されている。
【0123】
また、連結部材55は、
図13に示すように、左右の端部近傍がそれぞれ左右のストライカ51,52の前側の端部511,521の外周下側に溶接等によって接合されている。
さらに、連結部材55は、左右の端部の先端がストライカ支持ブラケット53A,54Aの下側まで延出されている。連結部材55の左端部の先端が、平らに圧縮されており、ストライカ支持ブラケット53Aの起伏部533A内のストライカ51の端部511とアッパレール32の天板部321との間に介挿されている。同様に、連結部材55の右端部の先端が、平らに圧縮されており、ストライカ支持ブラケット54Aの起伏部543A内のストライカ51の端部521とアッパレール32の天板部321との間に介挿されている。
そして、連結部材55の左右の端部は、
図14に示すように、ストライカ支持ブラケット53A,54Aのそれぞれの起伏部533A,543Aの下面側にも溶接等によって接合されている。
【0124】
このように、各ストライカ51,52は、ストライカ支持ブラケット53A,54Aと各アッパレール32との間に配置されることにより、端部511,521がストライカ支持ブラケット53A,54Aから離隔する方向への移動や変形が抑止され、接合箇所の剥離が抑制されることから、ストライカ51,52の支持強度を向上させることが可能となる。
さらに、連結部材55は、ストライカ51,52だけでなく、ストライカ支持ブラケット53A,54Aにも接合されているので、左右のストライカ51,52を高強度で連結し、左右のストライカ51,52の支持剛性のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0125】
上記
図12~
図14に示す保持機構5Aを備える乗物用シート1の製造方法については、一対のストライカ51,52を一対のアッパレール32に設ける工程において、一対のストライカ51,52が、それぞれのストライカ支持ブラケット53A,54Aが有する起伏部533A,543Aの下側に溶接により接合される。
また、一対のストライカ51,52を連結部材55によって連結する工程において、連結部材55は、一対のストライカ支持ブラケット53A,54Aにも溶接等による接合が行われる。
【0126】
[解決手段1]
背もたれ部となるシートバックと着座部となるシートクッションとを有するシート本体を、着座者が着座可能な使用位置と前記使用位置から移動した移動位置の間で切り替え可能な乗物用シートの製造方法であって、
乗物のフロアに固定される一対のロアレールを用意する工程と、
前記ロアレールによって移動可能に支持される一対のアッパレールを用意する工程と、
前記シート本体に設けられ、前記使用位置と前記移動位置とを切り替えるロック装置を用意する工程と、
前記アッパレール側に設けられ、前記使用位置と前記移動位置とを切り替える際に前記ロック装置によって係合と解除が行われる一対のストライカを用意する工程と、
一対の前記ストライカが互いに接近する方向に向かって延出されるように、一対の前記アッパレールに設ける工程と、
前記一対のストライカを連結部材によって連結する工程とを備えることを特徴とする乗物用シートの製造方法。
【0127】
解決手段1は、一対のストライカを連結部材によって連結する工程を有するので、一対のストライカが両持ちでの支持状態となる支持剛性の高い乗物用シートを良好に製造することが可能となる。
【0128】
[解決手段2]
前記一対のストライカを前記一対のアッパレールに設ける工程において、
それぞれの前記ストライカを、ストライカ支持ブラケットを介して前記アッパレールに設けることを特徴とする解決手段1に記載の乗物用シートの製造方法。
【0129】
解決手段2は、ストライカ支持ブラケットを介して各ストライカをアッパレールに設けるので、一対のストライカの支持剛性の高い乗物用シートを良好に製造することが可能となる。
【0130】
[解決手段3]
前記一対のストライカを前記連結部材によって連結する工程において、
前記連結部材を、一対の前記ストライカ支持ブラケットにも連結することを特徴とする解決手段2に記載の乗物用シートの製造方法。
【0131】
解決手段3は、連結部材を一対のストライカ支持ブラケットにも連結するので、一対のストライカの支持剛性の高い乗物用シートを良好に製造することが可能となる。
【0132】
[解決手段4]
前記一対のストライカを前記一対のアッパレールに設ける工程において、
前記一対のストライカを、それぞれの前記ストライカ支持ブラケットが有する起伏部の下側に接合することを特徴とする解決手段2に乗物用シートの製造方法。
【0133】
解決手段4は、一対のストライカを、それぞれのストライカ支持ブラケットが有する起伏部の下側に接合するので、一対のストライカの支持剛性の高い乗物用シートを良好に製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0134】
1 乗物用シート
2 クッションフレーム
20,21 クッションサイドフレーム
200,210 ウェブ
201,202,211,212 フランジ
22,23 パイプフレーム支持ブラケット
221 ウェブ
222 フランジ
223 凸部
231 ウェブ
232 フランジ
233 段差
24~26 パイプフレーム
27 シートバック支持ブラケット
271 ウェブ
272 フランジ
273 段差
28 受圧部材
3 レール装置
31 ロアレール
311 底板部
32 アッパレール
321 天板部
33 制止部材
34 操作レバー
341 連動軸
342 軸ブラケット
343 入力腕
344 張力ワイヤー
35,36 取付ブラケット
4 支持機構
40A,40B 支持機構
41A,41B 支持アーム
411B 基板部
412B 側壁部
42A,42B 支軸
43A 第1支持ブラケット
43B 支持ブラケット
431A 基板部
431B 基板部
432A 側壁部
432A 側壁部
432B 側壁部
44A 第2支持ブラケット
441A 基板部
442A 側壁部
45B 起伏バネ
46A 連結ピン
46B ブロック材
47 連結フレーム
5,5A 保持機構
51,52 ストライカ
511,521 端部
512,522 端部
513,523 連結部
53,54 ストライカ支持ブラケット
53A,54A ストライカ支持ブラケット
531,541 載置部
532,542 延出部
533A,534A,543A,544A 起伏部
535A,536A,545A,546A 凸条
55 連結部材
56 ロック装置
561 支持板
561a 切り欠き
562 カバー体
562a 切り欠き
563 ラッチ部材
563a 支軸
563b 切り欠き
563c 凹部
563d 支持突起
564 ラチェット部材
564a 支軸
564b 貫通穴
564c 係止突起
564d 連動突起
565 レバー部材
565a 長穴
566 バネ
567 解除レバー
568 荷重受け部材
569 固定ブラケット
57,58 取付ブラケット
F フロア材
F1、F2 土台