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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155184
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】カバー部材
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20231013BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H02G1/02
F16L57/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053493
(22)【出願日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2022063990
(32)【優先日】2022-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000220642
【氏名又は名称】東京電設サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 恒明
(72)【発明者】
【氏名】片山 文則
(72)【発明者】
【氏名】秋元 良一
(72)【発明者】
【氏名】祓川 靖己
【テーマコード(参考)】
3H024
5G352
【Fターム(参考)】
3H024AA03
3H024AB02
3H024AC03
5G352AC01
5G352AC03
5G352AD04
5G352AM03
(57)【要約】
【課題】装着時の風対策がされていると共に、装着しやすい構造を有するカバー部材を提供する。
【解決手段】カバー部材は、シート材により筒状に形成され、軸方向に延在して設けられた対象物を被覆する被覆部と、筒状の状態の前記被覆部を展開可能とすると共に、展開された状態の前記被覆部を切れ目なく筒状に封止可能に設けられたファスナー部と、前記被覆部の一端側に着脱自在に設けられ、径方向に展開可能に形成された筒状体と、前記筒状体に設けられ径方向に分割するために設けられた分割部を係止可能に設けられた係止部材と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材により筒状に形成され、軸方向に延在して設けられた対象物を被覆する被覆部と、
筒状の状態の前記被覆部を展開可能とすると共に、展開された状態の前記被覆部を切れ目なく筒状に封止可能に設けられたファスナー部と、
前記被覆部の一端側に着脱自在に設けられ、径方向に展開可能に形成された筒状体と、
前記筒状体に設けられ径方向に分割するために設けられた分割部を係止可能に設けられた係止部材と、を備える、カバー部材。
【請求項2】
前記筒状体は、前記被覆部に固定された端部側から開口側に向かうほど径が拡大する拡大部を備える、
請求項1に記載のカバー部材。
【請求項3】
前記筒状体は、前記対象物の配置位置に応じた色に着色されている、請求項1または2に記載のカバー部材。
【請求項4】
前記被覆部は、切欠き部が形成され、
前記切欠き部に引っ掛けて前記筒状体を吊り下げて保持する保持部材を有し、前記筒状体を前記対象物の手前側から離間する方向に送出する操作棒を備える、請求項1または2に記載のカバー部材。
【請求項5】
前記対象物は、鉄塔に設けられ、軸方向に連続して配列された複数の碍子である、請求項1または2に記載のカバー部材。
【請求項6】
前記対象物は、柱状構造体である、
請求項1または2に記載のカバー部材。
【請求項7】
前記筒状体は、前記筒状体の内面に突出し、前記軸方向に延びる複数の案内部材を備える、
請求項1または2に記載のカバー部材。
【請求項8】
前記複数の案内部材のそれぞれの開口側の端部は、前記被覆部側から前記開口側に向かうほど前記筒状体の径方向外側に折れ曲がる折曲部を備える、
請求項7に記載のカバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を養生するためのカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔等の電力設備には、絶縁体である碍子が設けられている。電力設備を塗装する場合、碍子に塗料が付着することを防止するため碍子を養生する必要がある。例えば、特許文献1には、碍子を養生するためのカバー部材が記載されている。このカバー部材は、弾性変形により開閉自在な環状の複数の骨組みと、複数の骨組みを覆う筒状のカバー部とを備え、カバー部には、展開可能にするための切れ目が設けられている。特許文献1に記載されたカバー部材によれば、碍子への装着時にカバー部の切れ目からカバー部材を展開して碍子に装着後、カバー部材を伸長して碍子全体を覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-175312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄塔に設けられている碍子を養生する際には、風に対する対策が必要である。特許文献1に記載されたカバー部材は、碍子を覆った状態においてカバー部材の切れ目から風が侵入し、風圧により骨組みが展開し、取付作業が困難となると共に、碍子から逸脱する虞がある。また、特許文献1に記載されたカバー部材によれば、碍子への装着時に碍子に引っ掛かる虞がある。
【0005】
本発明は、装着時の風対策がされていると共に、装着しやすい構造を有するカバー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、シート材により筒状に形成され、軸方向に延在して設けられた対象物を被覆する被覆部と、筒状の状態の前記被覆部を展開可能とすると共に、展開された状態の前記被覆部を切れ目なく筒状に封止可能に設けられたファスナー部と、前記被覆部の一端側に着脱自在に設けられ、径方向に展開可能に形成された筒状体と、前記筒状体に設けられ径方向に分割するために設けられた分割部を係止可能に設けられた係止部材と、を備えるカバー部材である。
【0007】
本発明は、被覆部にファスナー部が設けられていることにより、被覆部を切れ目なく封止することができ、作業時に被覆部に風が侵入することを低減することができる。筒状体が設けられていることにより、被覆作業時に筒状体を対象物に対して滑り易くすることができる。また、筒状体が展開可能に形成されている共に、係止部材により作業時における筒状体の展開を固定し風による逸脱を防止することができる。
【0008】
本発明の前記筒状体は、前記被覆部に固定された端部側から開口側に向かうほど径が拡大する拡大部を備えていてもよい。
【0009】
本発明によれば、筒状体が開口側に向かうほど径が拡大するように形成されているため、対象物への装着時に対象物に凹凸が生じていても、進行方向に進行しやすくなり、対象物に引っ掛かり難くすることができる。
【0010】
本発明の前記筒状体は、前記対象物の配置位置に応じた色に着色されていてもよい。
【0011】
本発明によれば、筒状体が対象物の設置位置に応じて色分けされているため、施工現場における管理を容易にし、施工効率を向上させることができる。
【0012】
本発明の前記被覆部は切欠き部が形成され、前記切欠き部に引っ掛けて前記筒状体を吊り下げて保持する保持部材を有し、前記筒状体を前記対象物の手前側から離間する方向に送出する操作棒を備えていてもよい。
【0013】
本発明によれば、操作棒を用いることにより、筒状体を遠方まで送出することができ、様々な姿勢において配置された対象物に対応して被覆部を被覆することができる。
【0014】
本発明の前記対象物は、鉄塔に設けられ、軸方向に連続して配列された複数の碍子であってもよい。
【0015】
本発明によれば、鉄塔の塗装作業をする際に、鉄塔に設けられた連続して配置された複数の碍子を被覆することができ、碍子への塗料が付着することを防止することができる。
【0016】
本発明の前記対象物は、柱状構造体であってもよい。
【0017】
本発明によれば、碍子だけでなく、柱状構造物に対して養生することができる。
【0018】
本発明の前記筒状体は、前記筒状体の内面に突出し、前記軸方向に延びる複数の案内部材を備えていてもよい。
【0019】
本発明によれば、対象物が案内部材と点接触(又は線接触)となるので、対象物が案内部材に案内されて筒状体の内側で滑り易くなり、かつ引っ掛かり難くなる。
【0020】
本発明の前記複数の案内部材のそれぞれの開口側の端部は、前記被覆部側から前記開口側に向かうほど前記筒状体の径方向外側に折れ曲がる折曲部を備えていてもよい。
【0021】
本発明によれば、対象物に対してより送り出しがし易く、かつより引っ掛かり難くなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、塗装作業において対象物を養生する際に装着時の風対策を行うと共に、装着し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係るカバー部材の構成を示す斜視図である。
図2】展開した状態の被覆部を示す図である。
図3】展開した状態から閉状態となった筒状体の状態を示す正面図である。
図4】様々な姿勢により取り付けられた碍子の状態を示す図である。
図5】操作棒の構成を示す図である。
図6】操作棒を用いて対象物を被覆する状態を示す図である。
図7】複数連の碍子を同時被覆する状態を示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るカバー部材の構成を示す斜視図である。
図9図8に示す筒状体の展開した状態を示す図である。
図10図8に示す筒状体を軸方向から見た図である。
図11図8に示すカバー部材を碍子に被覆する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しつつ、カバー部材の実施形態について説明する。以下の説明では、カバー部材の中心軸Lを定義し、中心軸L方向を軸方向と呼び、軸方向に沿った両方向について軸方向一方側(一端側)、軸方向他方側(他端側)等と呼ぶ。
【0025】
図1及び図2に示されるように、カバー部材1は、筒状に形成された被覆部2と、被覆部の一端側に着脱自在に設けられた筒状の筒状体3とを備えている。カバー部材1は、軸方向に延在して設けられた対象物を被覆し、塗装時において対象物に塗料が付着することを防止する(養生するともいう)ものである。被覆部2は、例えば、布等のシート材により形成されている。シート材は、対象物への装着時に摩擦を低減するため化学繊維により紡織されていることがより好適である。被覆部2は、碍子の表面を被覆するものであり、碍子に塗料が付着することを防止する。被覆部2は、軸方向に延在して設けられた対象物を被覆するように筒状に形成されている。被覆部2の径は、対象物を被覆可能な径に形成されている。被覆部2の軸方向に沿った長さは、対象物の長さに応じて適宜調整されている。
【0026】
被覆部2には、筒状の状態を展開可能とすると共に、展開された状態を切れ目なく筒状に封止可能とするファスナー部2Fが設けられている。ファスナー部2Fは、例えば、複数のエレメント(務歯)を噛合させて封止する線ファスナーである。被覆部2は、ファスナー部2Fを解放した状態から対象物を覆い、ファスナー部2Fを封止することにより、対象物を覆うことができる。ファスナー部2Fに線ファスナーを用いることにより、対象物を被覆する際、或いは対象物を被覆した状態において被覆部2の内部に風が侵入して被覆部2が展開されることを防止することができる。被覆部2は、ファスナー部2Fを開放した状態では、矩形のシート体に形成されている。被覆部2は、ファスナー部2Fを封止した状態では、筒状となる。被覆部2においてファスナー部2Fの軸方向一方側の終端には、切欠き部2Cが形成されている。切欠き部2Cは、例えば、矩形に形成されている。
切欠き部2Cには、後述のように操作棒10の先端部が引っ掛けられる。被覆部2の軸方向一方側の一辺には、筒状体3と着脱自在とする複数の点ファスナー2Tが等間隔に配置されている。
【0027】
点ファスナー2Tは、例えば、凹状に形成された第1ボタン部材と、凸状に形成された第2ボタン部材とが噛合して着脱自在に形成された留め具である。点ファスナー2Tにより、被覆部2と筒状体3とが着脱自在に構成されている。被覆部2には、点ファスナー2Tの第1ボタン部材或いは第2ボタン部材のいずれか一方が設けられ、筒状体3の内周面には、被覆部2側と係止可能な点ファスナー2Tの第1ボタン部材或いは第2ボタン部材のいずれか他方が設けられている。上記構成により、カバー部材1は、筒状体3を被覆部2に対して着脱自在に構成することができ、被覆部2は、筒状体3に対して交換可能となる。
【0028】
筒状体3は、対象物を被覆する際の進行方向前側に配置される。筒状体3は、内周面に対象物を挿入する治具である。筒状体3は、例えば、板状の樹脂材料により円筒形に形成されている。筒状体3の表面は、例えば、化学繊維の布が貼り付けられている。これにより、筒状体3は、軽量に形成され、運搬性や作業性が向上する。筒状体3は、例えば、被覆部2の一端に固定された筒状部3Aと、筒状部3Aに連続して形成されている拡大部3Bとを備える。筒状部3Aは、被覆部2と略同径の円筒状に形成されている。拡大部3Bは、筒状部3A側の端部から軸方向一方側の開口側に向かうほど径が拡大するように形成されている。上記構成により、筒状体3は、対象物に凹凸が生じていても対象物を挿入する際に、対象物に引っ掛かることが防止され、対象物を被覆部2に案内し易くすることができる。筒状体3は、径方向に分割するための分割部3Dが形成されている。筒状体3は、分割部3Dから径方向に展開可能に形成されている。展開した筒状体3は、矩形の板状である。展開した筒状体3は、丸めて弾性変形させ、分割部3Dにおいて係合させることにより筒状に変形する。筒状体3は、1枚の樹脂材料の板状体から形成されるだけでなく、周方向に沿って2つ以上に分割して形成されていてもよい。これにより、筒状体3は、折り畳み可能に形成され、運搬性や作業性が向上する。
【0029】
筒状体3には、分割部3Dを係止可能とする係止部材3Fが設けられている。係止部材3Fは、第1部材3A側に設けられた第1係止部材3F1と、第2部材3B側に設けられた第2係止部材3F2とを備えている。係止部材3Fは、例えば、第1係止部材3F1を第2係止部材3F2に設けられた係合部に係合させることで分割部3Dを係止し、第1係止部材3F1を第2係止部材3F2から解除することで分割部3Dを解放する。
【0030】
図3に示されるように、筒状体3は、対象物Gに取り付ける前は、径方向に展開されている状態である。筒状体3は、対象物Gを内周面側に収めた後、分割部3Dを合わせ、係止部材3Fにより分割部3Dを係止させる。
【0031】
図4に示されるように、対象物Gは、例えば、鉄塔等の電気設備に設けられ、軸方向に連続して配列された複数の碍子Pである。図4(A)~図4(C)に示されるように、一つの鉄塔において、複数の碍子Pは、配置位置に応じて設置角度が異なっている。また、複数の碍子Pは、配置位置に応じて配置数も異なっている。そのため、一つの鉄塔を塗装する現場において、異なる長さに形成された被覆部2を備える複数のカバー部材1を用意する必要がある。筒状体3は、例えば、対象物Gの配置位置に応じた色に着色されていてもよい。筒状体3は、例えば、対象物Gの配置位置に応じて被覆部2長さが調整され、被覆部2の長さに応じて異なる色に着色されていてもよい。筒状体3は、対象物Gの設置領域、及び被覆部2の長さ等の情報に応じて1つ以上の色を用いて色分けされていてもよい。筒状体3は、色分け、模様、文字等を組み合わせて設置位置における対象物Gに対応する情報を視認可能に構成されていてもよい。これにより、カバー部材1は、現場における施工上の管理や保管が容易となり、作業効率及び保管効率を向上させることができる。
【0032】
図5に示されるように、カバー部材1は、筒状体3を対象物Gの手前側から離間する方向に送出する操作棒10を用いて対象物Gに取り付けられてもよい。操作棒10は、例えば、棒状に形成された本体部11と、本体部11の先端部に設けられた保持部材12とを備えている。本体部11は、例えば、パイプ部材により形成されている。本体部11は、例えば、ステンレス鋼材により形成されている。本体部11は、先端側から作業者が把持する把持部側に向かうほど径が拡大するように複数のパイプが組み合わされて伸縮自在に形成されていてもよい。本体部11は、複数のパイプを継ぎ足し自在とすることで長さを調整するように構成されていてもよい。また、操作棒10は、必ずしも伸縮自在に形成されていなくてもよい。本体部11の先端部には、被覆部2に設けられた切欠き部2Cに引っ掛ける保持部材12が設けられている。
【0033】
保持部材12は、例えば、金属材料によりフック状に形成されている。保持部材12は、切欠き部2C内に挿入し、引っ掛けることにより、筒状体3を吊架させる。操作棒10において、保持部材12に筒状体3を吊架させた状態により、作業者から見て手前側から遠方に向かって筒状体3を送出することができる。操作棒10は、例えば、対象物Gが図4(A)、図4(B)のように、筒状体3が落下しない姿勢により配置されている場合に用いられる。
【0034】
図6(A)に示されるように、養生が必要な対象物Gにカバー部材1がセットされる。
この際、筒状体3は、展開状態から対象物を覆い係止部材3Fを係止することにより閉状態に保持される(図3参照)。また、被覆部2は、展開状態から対象物Gを覆い、ファスナー部2Fを封止することにより、筒状体3となる。このとき、被覆部2は、作業者側に短縮された状態に保持されている。作業者は、短縮状態の操作棒10の先端の保持部材12を被覆部2に設けられた切欠き部2Cに引っ掛ける。図6(B)に示されるように、作業者は、操作棒10送り出し、筒状体3を作業者側から見て対象物Gの手前側から遠方に離間する方向に送出する。このとき、被覆部2は、操作棒10に引っ張られて伸長する。
【0035】
図6(C)に示されるように、作業者は、操作棒10を更に送出し、対象物Gを超えた位置まで筒状体3を移動させる。このとき、被覆部2は、筒状体3に引っ張られて伸長し、対象物Gを完全に被覆する。作業者は、保持部材12を切欠き部2Cから外し、操作棒10を回収する。筒状体3は、対象物Gが碍子Pである場合、碍子Pの先端に引っ掛かり後退し難くなる。カバー部材1の被覆作業において、操作棒10は、対象物Gの上側だけでなく、下側に吊架されるようにして操作するようにしてもよい。対象物Gが、上下方向に沿って配置されている場合(図3(C)参照)、作業者は、筒状体3を下方に落下させ、被覆部2を対象物Gに被覆させればよい。カバー部材1を回収する際には、被覆部2を作業者側に引張し、筒状体3を対象物に滑らせて作業者側に引き寄せればよい。
【0036】
図7に示されるように、対象物Gが2列に配置された碍子Pである場合、カバー部材1の筒状体3をバンドBにより連結してもよい。バンドBは、帯状に形成され、隣接する筒状体3の間の距離を調整可能に形成されている。この場合、作業者は、バンドBに操作棒10の保持部材12を引っ掛けてカバー部材1を送り出してもよい。
【0037】
上述したように、カバー部材1によれば、被覆部2にファスナー部2Fが設けられていることにより、被覆部2を切れ目なく封止することができ、作業時において被覆部2に風が侵入することを低減することができる。カバー部材1によれば、筒状体3が設けられていることにより、対象物Gへの被覆時に筒状体3が対象物G上を滑り、被覆部2を対象物Gに被覆し易くすることができる。カバー部材1によれば、筒状体3が開口部に向かうほど径が拡大されている拡大部3Bを備えるため、対象物Gへの被覆時に対象物Gに凹凸が生じていても、筒状体3が対象物Gに引っ掛かり難くなり、進行方向に進行しやすくすることができる。カバー部材1によれば、筒状体3が展開可能に形成されている共に、係止部材3Fにより作業時における筒状体3の展開を固定し風による逸脱を防止することができる。
【0038】
カバー部材1によれば、筒状体3が被覆部2に対して着脱自在に設けられていることにより、対象物Gに合わせて長さを調整された被覆部2に交換することができる。カバー部材1によれば、筒状体3が樹脂材料により形成され、被覆部2がシート体により形成され軽量に形成されているため、運搬性や作業性が向上する。カバー部材1によれば、筒状体3が対象物Gの設置位置に応じて色分けされているため、施工現場における管理を容易にし、施工効率を向上させることができる。カバー部材1によれば、操作棒10を用いることにより、筒状体3を遠方まで送出することができ、様々な姿勢において配置された対象物Gに対応して被覆部2を被覆することができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態によるカバー部材1Aの構成について、図8図11を用いて説明する。図8図10に示すように、第2実施形態によるカバー部材1Aは、上述した第1実施形態と同様の筒状体3にガイドパイプ4(案内部材)を設けた構成である。すなわち、カバー部材1Aは、筒状に形成された被覆部2と、被覆部2の一端側に着脱自在に設けられた筒状の筒状体3と、筒状体3の内面3aに突出して設けられ軸方向に延びる複数(図示では6本)のガイドパイプ4と、を備えている。
【0040】
複数本(6本)のガイドパイプ4は、筒状体3の周方向に一定の間隔をあけて配置される。ガイドパイプ4は、円形断面をなし、例えば塩ビパイプが採用される。これら6本のガイドパイプ4は、例えば鉄線等の連結線(図示省略)によって連結され、円周上の位置が維持されるとともに筒状体3の円形も維持されている。
【0041】
ガイドパイプ4は、長手方向の両端部(入口部4a、出口部4b)を残した中央部分4cに長手方向に延びるスリット40を有する。スリット40は、断面視してガイドパイプ4を径方向に貫通し、径方向に対向するスリット40同士を結ぶ線がガイドパイプ4の中心を通るように配置されている。すなわち、筒状体3の内側には、ガイドパイプ4の半円部4Aが配置される。ガイドパイプ4は、スリット40に筒状体3を通過させることで筒状体3に取り付けられる。なお、ガイドパイプ4の半円部4Aの内周部同士を結ぶ仮想円K(図10参照)は、碍子P(図11参照)より大きく設定される。これにより、碍子Pが通過し易くなる。
【0042】
ガイドパイプ4の両端部は、それぞれ筒状体3から突出する。ガイドパイプ4の送り出し時の碍子Pの挿入側の端部(入口部4a)は、被覆部2側から開口側に向かうほど筒状体3の径方向外側に折れ曲がる第1折曲部41を備える。ガイドパイプ4の被覆部2側の端部(出口部4b)は、開口側から被覆部2側に向かうほど筒状体3の径方向外側に折れ曲がる第2折曲部42を備える。このように6本のガイドパイプ4は入口部4aの第1折曲部41において開口側に向けて径が広がっているので、軸方向に連続して配列される複数の碍子Pに対して送り出しがし易く、かつ引っ掛かり難くなっている。すなわち、上述した第1実施形態のようにガイドパイプ4が設けられていない場合に比べて複数の碍子Pが筒状体3内により挿入し易く、かつより引っ掛かり難くなっている。また、6本のガイドパイプ4は出口部4bの第2折曲部42において被覆部2側に向けて径が広がっているので、複数の碍子Pに対して筒状体3を引き込み易く、かつ引っ掛かり難くなっている。また、本実施形態のカバー部材1Aでは、碍子Pがガイドパイプ4の半円部4Aと点接触(又は線接触)となるので、碍子Pが軸方向に滑り易くなっている。
【0043】
第2実施形態によるカバー部材1Aを使用して碍子Pを覆う場合も、上述した第1実施形態と同様の手順により行われる。すなわち、作業者は、図11(A)に示すように養生が必要な対象物Gにカバー部材1Aがセットした後、図11(B)に示すように操作棒10送り出し、筒状体3を作業者側から見て碍子Pの手前側から遠方に離間する方向に送出する。このとき、ガイドパイプ4によって碍子Pが案内されて筒状体3の内側に滑るように進入し、被覆部2は操作棒10に引っ張られて伸長する。そして、操作棒10を更に送出し、碍子Pを超えた位置まで筒状体3を移動させて碍子Pを完全に被覆する。なお、カバー部材1Aを回収する際には、被覆部2を作業者側に引張し、筒状体3を碍子Pに滑らせて作業者側に引き寄せればよい。
【0044】
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、カバー部材1は、碍子Pだけでなく、柱状構造体に形成された対象物Gに適用されてもよい。対象物Gは、直線状の柱状構造物だけでなく、湾曲していてもよい。筒状体3は、樹脂材料により形成されているだけでなく、金属材料により形成されていてもよい。この場合、筒状体3には、ヒンジ部を設けるにより展開可能に形成されていてもよい。またカバー部材は、塗装の養生だけでなくブラスト作業におけるメディアの飛散防止や対象物の保護に用いてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1、1A カバー部材
2 被覆部
2C 切欠き部
2F ファスナー部
3 筒状体
3A 筒状部
3B 拡大部
3D 分割部
3F 係止部材
4 ガイドパイプ(案内部材)
10 操作棒
12 保持部材
40 スリット
41 第1折曲部
42 第2折曲部
G 対象物
P 碍子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11