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特開2023-155196コーリャン酒醸造の発酵方法及び副原料としてのコーリャン酒蒸留残渣の用途
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  • 特開-コーリャン酒醸造の発酵方法及び副原料としてのコーリャン酒蒸留残渣の用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155196
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】コーリャン酒醸造の発酵方法及び副原料としてのコーリャン酒蒸留残渣の用途
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/02 20190101AFI20231013BHJP
   C12H 6/02 20190101ALI20231013BHJP
【FI】
C12G3/02
C12H6/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060280
(22)【出願日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】111113322
(32)【優先日】2022-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】520322347
【氏名又は名称】阿里山製酒股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003443
【氏名又は名称】弁理士法人TNKアジア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】歐陽港生
(72)【発明者】
【氏名】王伯綸
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115AG02
4B115AG07
4B115NB02
4B115NG02
4B115NG07
4B115NP02
4B115NP06
(57)【要約】
【課題】 コーリャン酒醸造の発酵方法及び副原料としてのコーリャン酒蒸留残渣の用途を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、コーリャン酒醸造の発酵方法及び副原料としてのコーリャン酒の蒸留残渣の用途を提供し、従来の籾殻副原料を添加する代わりに、ソルガム蒸留残渣を添加して醸造用原料と混合して調合する。籾殻副原料を添加しない条件の下で酒の醸造・発酵を行うことで、従来の籾殻副原料に必要な前処理工程を省くことができるだけではなく、蒸留して取り出した酒内に異臭・雑味をもたらすこともなく、残留農薬の問題を避け、また調合に使用される蒸留残渣は発酵を経た材料であるため、醸造・発酵の進行に役立ち、発酵を経た材料を再利用することで、発酵後に発生する廃材を大幅に削減させることもできる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーリャン酒醸造の発酵方法であって、以下の工程:
(1) 裂開後の醸造用原料を得るため、醸造用原料を蒸きょうする工程、
(2) 蒸留残渣を前記裂開後の醸造用原料に加えて混合させ、調合材を得る裂開後の醸造用原料の調合工程、
(3) 発酵に使用するため、前記調合材の温度を調整する前記調合材放冷工程、及び
(4) 前記調合材を麹と混合させて、糖化・発酵を開始する温度調整後の前記調合材発酵工程
を含むコーリャン酒醸造の発酵方法。
【請求項2】
前記醸造用原料は、ソルガムである請求項1に記載のコーリャン酒醸造の発酵方法。
【請求項3】
前記蒸留残渣の原料は、コーリャン酒粕である請求項1に記載のコーリャン酒醸造の発酵方法。
【請求項4】
前記蒸留残渣は、圧力をかけながら余分な水分を搾って含水率を20%以下とされる請求項3に記載のコーリャン酒醸造の発酵方法。
【請求項5】
前記蒸留残渣は、前記裂開後の醸造用原料の大きさに相当する体積を得るため、粉砕処理を施す請求項3又は4に記載のコーリャン酒醸造の発酵方法。
【請求項6】
前記醸造用原料は、蒸きょう工程の前に洗浄・浸漬の前処理工程を施す請求項1に記載のコーリャン酒醸造の発酵方法。
【請求項7】
前記蒸留残渣は、調合工程の前に、先に麹粉末と混合する請求項1に記載のコーリャン酒醸造の発酵方法。
【請求項8】
コーリャン酒の蒸留残渣をコーリャン酒醸造の発酵工程中の副原料とする用途。
【請求項9】
前記コーリャン酒の蒸留残渣の含水率は、20%以下である請求項8に記載の用途。
【請求項10】
前記コーリャン酒の蒸留残渣は、さらに麹粉末と混合される請求項9に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒醸造の発酵方法に関し、特に、コーリャン酒を醸造するための酒醸造の発酵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーリャン酒の醸造方法は、固体発酵による酒造りがよく見られ、固体発酵方法は固体を呈する酒醸造原料を利用して発酵させ、全株のソルガムの殼及び胚芽を一緒に発酵させる。酒醸造の固体発酵の生産を維持するため、従来のコーリャン酒を醸造する発酵工程中に副原料を加えることで、固体発酵過程の緩み具合を維持し、その後のコーリャン酒の醸造や生産を容易にする。
【0003】
現在、固体発酵の副原料は通常、一般的な米の殼である籾殻を用いる。籾殻は、一般的な副原料の作用以外に、テクスチャーが硬いため、酒の蒸留時原料の粘着性をさらに減らし、蒸気が出られないことを避け、醸造用原料を充分に発酵させる等の追加の利点を保つ。ただし、籾殻に含まれるペントサン、ペクチン、ケイ酸塩等の成分は、発酵後の酒内に雑味を含ませる可能性があるため、副原料として使用する前に一定時間籾殻を蒸きょうすることを必須とすることで、醸造後の酒の品質に悪影響をもたらすことを防ぐ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、籾殻を酒醸造の副原料として用いることには、まだ多くの疑問があることを見出した。まず、籾殻は、体積が比較的に大きく、大部分が必要な時にのみ購入されるため、その後の追加の倉庫保管コストが発生していた。また、仕入れから倉庫保管までの過程で籾殻はカビに汚染されやすく、検出することは困難であった。なお、稲作では、虫や雑草を防除するために農薬を散布することが多く、農薬が残留し、除去しにくいおそれがあるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の疑問に鑑み、本発明者らは、従来の籾殻副原料の添加を必要としない、コーリャン酒を醸造する発酵方法を提案する。具体的に本発明は、裂開後の醸造用原料を得るため、醸造用原料を蒸きょうする工程(1)と、蒸留残渣を前記裂開後の醸造用原料に加えて混合させ、調合材を得る裂開後の醸造用原料の調合工程(2)と、発酵に使用されるため、前記調合材の温度を調整する前記調合材放冷工程(3)と、前記調合材を麹と混合させて、糖化・発酵を開始する温度調整後の前記調合材発酵工程(4)とを含むコーリャン酒醸造の発酵方法を提供する。
【0006】
一実施形態において、前記醸造用原料は、ソルガムで、蒸留残渣の原料はコーリャン酒粕で、従来の籾殻副原料を加えない状況で醸造・発酵を行う。蒸留残渣は、圧力をかけながら余分な水分を搾って含水率を20%以下とし、前記裂開後の醸造用原料の大きさに相当する体積を得るため、粉砕処理を施す。
【0007】
醸造用原料は、蒸きょう工程の前に洗浄・浸漬の前処理工程を施し、かつ蒸留残渣は調合工程の前に、先に麹粉末と混合することができる。
【0008】
本発明の別の態様は、コーリャン酒の蒸留残渣をコーリャン酒醸造の発酵工程中の副原料とする用途を提供する。
【0009】
要するに、本発明中の発酵方法は、従来の籾殻副原料を蒸留残渣の添加により代替し、醸造用原料と混合して調合し、調合時に副原料として従来の籾殻を添加することなく、酒の醸造が籾殻副原料を添加しない条件で発酵させ、従来の籾殻副原料に必要な前処理工程を省くことができるだけではなく、蒸留して取り出した酒内に異臭・雑味をもたらすこともなく、残留農薬の懸念がなく、調合に使用される蒸留残渣は発酵を経た材料であるため、醸造・発酵の進行に役立ち、発酵を経た材料を再利用することで、発酵後に発生する廃材を大幅に削減させることもできるため、コーリャン酒の蒸留残渣をコーリャン酒醸造の発酵工程中の副原料とする新用途も提供する。
【0010】
図面上の各種特徴及び構成要素は、実際の寸法比率で描かれていないが、本発明に関連する具体的特徴及び構成要素を提示するために最適な方法で描かれている。また、異なる図面の間において同一又は類似の符号で類似の構成要素及び部材を表す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の好ましい実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の技術的意義をより詳細かつ完全にするため、本発明の実施態様及び具体的実施形態について以下の説明が与えられるが、以下の説明は、本発明の具体的実施形態を実施又は運用する唯一の形態ではなく、当業者は、以下の描写を通じて本発明の必要な技術的内容を容易に理解でき、その精神及び範囲から外れることなく、異なる用途及び状況に適応するため、本発明へ多種多様な変更及び潤色を行うことができ、かかる実施態様は本発明の特許請求の範囲にも属する。
【0013】
本発明の説明において、文脈が別段の指示をしない限り、「一」及び「前記」も複数形として解釈され得る。
【0014】
本発明の説明において、文脈が別段の指示をしない限り、用語「含む」、「含んでいる」、「備える」又は「含有する」は、包括的或いは開放的で、その他の説明されていない要素又は方法工程を排除しない。
【0015】
本発明の説明において、用語「中心」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」などが示した方位又は位置関係は、図面に基づいて示した方位又は位置関係であり、単に本発明を簡単に説明しやすくするためであり、示された装置又は要素が必ず特定の方位を有し、または特定の方位で構成され操作することと指示又は示唆するものではないので、本発明に対する限定と理解してはいけない。
【0016】
本発明の説明において、「設けられた」、「取り付けられた」、「結合された」、「接続された」、「固定」などは、広義に理解すべきであり、例えば固結、着脱可能に連結、機械的な接続、直接連結、中間媒体を介した間接連結などである。当業者であれば、具体的状況に応じて本発明における上記用語の具体的意味を理解することができる。
【0017】
図1を参照すると、図1は、本発明のコーリャン酒醸造の発酵方法のフローチャートである。
【0018】
本実施形態におけるコーリャン酒醸造の発酵方法は、固体発酵であり、選択された醸造用原料はソルガムで、前記発酵方法は以下の工程を含む。
【0019】
工程101:裂開後の醸造用原料を得るため、洗浄・浸漬を経た後の醸造用原料を蒸きょうする工程で、蒸きょう工程を経た後の醸造用原料は、表皮が受熱して裂開されたため、その後の発酵に役立つ。また、工程101の前に酒の醸造に使用する醸造用原料を先に洗浄、浸漬する前処理工程100をさきに行ってから蒸きょうすることができる。
【0020】
工程102:裂開後の醸造用原料を調合する工程で、蒸留残渣を前記裂開後の醸造用原料に加えて混合することで、調合材を得る。
【0021】
本明細書において、用語「蒸留残渣」又は「コーリャン酒の蒸留残渣」は、発酵・蒸留・酒の取り出し後に残ったコーリャン酒粕を意味し、原料内の含水率が高い場合、圧力をかけながら余分な水分を搾って蒸留残渣の含水率を20%以下(例えば20%、15%、10%、5%であるが、これらに限定されない)に下げることが好ましい。好ましい実施態様において、前記蒸留残渣を搾ってケーキ形状(すなわち、蒸留残渣ケーキ)を形成した場合、前記蒸留残渣ケーキに粉砕処理を施して、裂開後の醸造用原料の大きさに相当する体積の蒸留残渣を得る。蒸留残渣の体積は、実際のニーズに応じてその範囲を調整することもできる。
【0022】
副原料として本明細書内の蒸留残渣の使用量は、季節、粉砕度、デンプン含量、濁り酒の酸度と粘度等の違いにより異なる場合がある。一定の範囲内では、副原料の使用量が大きく、水を足す量も増え、より多くの酒が造られる。ただし副原料の使用量が多すぎる場合、設備の稼働率が低下するため、最適な使用量は酒の醸造用原料の重量の15%~28wt%である。
【0023】
醸造用原料が蒸留残渣に合わせて調合され、調合工程内に従来の副原料を添加しないため、本発明における発酵方法は、従来の副原料(例えば籾殻)を加えない状況で醸造・発酵を行うものである。
【0024】
調合工程において、蒸留残渣添加過程中の撹拌混合を通じて、裂開後の醸造用原料の冷却を補助でき、一方、体積を調整した調合材は、醸造用原料を支え、緩みに保つことで、その後の固体発酵を容易にする。
【0025】
調合工程の後、工程103:調合材を放冷する工程で、均一に混合された後の調合材の温度を調整して、調合材工程発酵に使用する。
【0026】
蒸きょう後の醸造用原料の温度は、非常に高いため、調合時に蒸留残渣との撹拌混合による初期冷却の以外に、放熱・降温の時間も必要で、かつその後の発酵に合わせるため、当日の気温、湿度などの実際の環境条件に応じて、均一に混合した後の調合材の温度を調整する。
【0027】
工程104:温度調整後の調合材を発酵させる工程で、前述の調合材を麹と混合させ、糖化・発酵を開始する。調整後の温度条件下で麹と蒸きょう後の調合材を加えて混合し、麹内の麹菌を適切な温度下で発酵させることができる。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記蒸留残渣は、調合工程の前に、醸造用原料と麹との混合の均一性を高めるため、まず麹粉末と混合することができ、かつ蒸留残渣の添加は発酵過程中の濁り酒の酸度の調整に用いることができる。
【0029】
要するに、先行技術と比較して、本発明における発酵方法は、蒸留残渣を添加して醸造用原料と混合して調合し、調合時従来の副原料を添加しないため、醸造酒は従来の副原料を添加しない条件下で発酵され、従来の籾殻副原料に必要な前処理工程を省くことができるだけではなく、蒸留して取り出した酒内に異臭・雑味をもたらすこともなく、残留農薬の懸念がなく、調合に使用される蒸留残渣は発酵を経た材料であるため、醸造・発酵の進行に役立ち、発酵を経た材料を再利用することで、発酵後に発生する廃材を大幅に削減させることもできる。
【0030】
以上、本発明を詳細に説明したが、以上の述べるものは本発明の好ましい実施態様と実施形態のみであって、本発明の実施範囲を限定することを意図するものではない。すなわち、当業者はその精神及び範囲から外れることなく、異なる用途及び状況に適応するため、本発明へ多種多様な変更及び潤色を行うことができ、かかる実施態様は本発明の特許請求の範囲にも属する。
【符号の説明】
【0031】
100~104 工程
図1