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特開2023-155198レンズ駆動装置、カメラ装置及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155198
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置、カメラ装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20231013BHJP
   G03B 19/02 20210101ALI20231013BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G02B7/04 E
G03B19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060305
(22)【出願日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】202210359808.3
(32)【優先日】2022-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210779623.8
(32)【優先日】2022-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211077789.1
(32)【優先日】2022-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】316006783
【氏名又は名称】新思考電機有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 一嘉
【テーマコード(参考)】
2H044
2H054
【Fターム(参考)】
2H044BD11
2H044BE01
2H054BB02
(57)【要約】
【課題】落下衝撃時におけるダメージを受けにくく、レンズキャリアのスムーズな移動を確保できるレンズ駆動装置、カメラ装置及び電子機器を提供すること。
【解決手段】レンズ駆動装置10は、ベース底壁44を有するベース18と、レンズ12を保持し、レンズ12の光軸方向及びベース底壁44に平行であり且つベース底壁44に対向するキャリア底壁26を有するレンズキャリア14と、レンズキャリア14をベース18に対してレンズ12の光軸方向に案内支持する案内機構20と、を含み、案内機構20は、キャリア底壁26とベース底壁44のいずれか一方に固定され光軸方向に延在する金属製の案内軸40と、キャリア底壁26とベース底壁44の他方に形成され光軸方向に延在する摺動溝42と、を備え、案内軸40と摺動溝42が摺動する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース底壁を有するベースと、
レンズを保持し、前記レンズの光軸方向及び前記ベース底壁に平行であり且つ前記ベース底壁に対向するキャリア底壁を有するレンズキャリアと、
前記レンズキャリアを前記ベースに対して前記レンズの光軸方向に案内支持する案内機構と、を含み、
前記案内機構は、前記キャリア底壁と前記ベース底壁のいずれか一方に固定され前記光軸方向に延在する金属製の案内軸と、前記キャリア底壁と前記ベース底壁の他方に形成され前記光軸方向に延在する摺動溝と、を備え、前記案内軸と前記摺動溝が摺動する
レンズ駆動装置。
【請求項2】
前記案内軸は、前記キャリア底壁と前記ベース底壁のいずれか一方に、それが延在する方向と直交する方向に離れて1本ずつ設けられており、前記キャリア底壁の法線方向から見たときに、前記レンズの光軸は2本の前記案内軸の間にある請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記キャリア底壁と前記ベース底壁の他方に前記2本の案内軸に対応して2つの摺動溝が設けられており、一方の前記摺動溝は一方の前記案内軸に接触する非平行の2つの斜面を有し、他方の前記摺動溝は他方の前記案内軸に接触する底面を有し、前記底面は前記摺動溝が設けられている方の前記キャリア底壁又はベース底壁に平行である請求項2記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記光軸方向に直交する方向の断面において、前記案内軸は、前記摺動溝に接触する部分の形状が円弧状であり、一方の前記摺動溝の形状はV字形状であり、他方の前記摺動溝の形状は台形状である請求項3記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記キャリア底壁と前記ベース底壁の他方に前記2本の案内軸に対応して2つの摺動溝が設けられており、一方の前記摺動溝は、その延在方向の中央部以外がさらに深く掘られ、摺動部として前記中央部に一方の前記案内軸が接触・摺動し、他方の前記摺動溝は、摺動部としてその延在方向の少なくとも両端部に他方の前記案内軸が接触・摺動する請求項2記載のレンズ駆動装置。
【請求項6】
前記摺動溝は、前記レンズキャリアに形成されて、前記レンズキャリアを前記光軸方向に貫き、その両端部分の溝深さが深く形成されている請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項7】
摺動範囲において、前記案内軸のその延在方向の端部は前記摺動溝に対して非接触である請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項8】
前記案内軸は、それが設けられている方の前記キャリア底壁又はベース底壁から突出して形成した案内軸固定部の表面を掘り下げて形成した固定溝に固定されており、前記光軸方向に直交する方向の断面において、前記案内軸固定部の前記表面は、前記摺動溝内にある請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項9】
前記レンズキャリア及び前記ベースは、前記光軸方向に平行且つそれぞれの底壁に直交する側壁を有し、前記レンズキャリアの前記側壁に駆動用磁石と駆動用コイルのいずれか一方が配置され、前記ベースの前記側壁にいずれか他方が配置され、駆動用磁石と駆動用コイルは互いに対向している請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項10】
請求項1記載のレンズ駆動装置と、前記レンズキャリアに固定されるレンズと、前記レンズの前記光軸方向において、前記レンズの前側に配置されるプリズムと、前記レンズの後側に配置される画像センサと、を備えたカメラ装置。
【請求項11】
請求項10記載のカメラ装置を備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ駆動装置、カメラ装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット型携帯端末装置等、カメラ装置を搭載した電子機器の小型化に伴い、電子機器の筐体に形成された開口から入射する入射光を折り曲げてレンズ及び画像センサに導く「潜望鏡」式のカメラ装置が開発されている。
【0003】
このような構造のカメラ装置に使用されるレンズ駆動装置の一例が下記特許文献1に開示されている。このレンズ駆動装置は、レンズの光軸方向に移動可能なレンズキャリアをサスペンションワイヤによってベースに吊下げ固定している。
【0004】
また、下記特許文献2は、レンズホルダをベース上で光軸方向及び光軸方向と直交する方向に移動可能に支持する駆動機構を開示している。この駆動機構は、レンズホルダとベースの間に可動中間フレームを配置した構造を採用している。レンズホルダと可動中間フレームにはそれぞれ光軸方向に沿って溝が形成され、これらの溝はボールを介して対向し、可動中間フレームとベースにもそれぞれ光軸方向に直交する方向に沿って溝が形成され、これらの溝もボールを介して対向している。
【0005】
このような構造のレンズ駆動装置は、落下等により衝撃が加わると、サスペンションワイヤによる吊下げ式の場合はレンズキャリアとベースが互いに衝突し、ボールを使用する場合はボールが点接触する溝内に衝撃によって凹みを生じるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国公開特許公報第110646915A号公報
【特許文献2】アメリカ合衆国公開特許公報第2019/0377155A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、落下衝撃時におけるダメージを受けにくく、レンズキャリアのスムーズな移動を確保できるレンズ駆動装置、カメラ装置及び電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様はレンズ駆動装置であり、このレンズ駆動装置は、ベース底壁を有するベースと、レンズを保持し、前記レンズの光軸方向及び前記ベース底壁に平行であり且つ前記ベース底壁に対向するキャリア底壁を有するレンズキャリアと、前記レンズキャリアを前記ベースに対して前記レンズの光軸方向に案内支持する案内機構と、を含み、前記案内機構は、前記キャリア底壁と前記ベース底壁のいずれか一方に固定され前記光軸方向に延在する金属製の案内軸と、前記キャリア底壁と前記ベース底壁の他方に形成され前記光軸方向に延在する摺動溝と、を備え、前記案内軸と前記摺動溝が摺動する。
【0009】
好適には、前記案内軸は、前記キャリア底壁と前記ベース底壁のいずれか一方に、それが延在する方向と直交する方向に離れて1本ずつ設けられており、前記キャリア底壁の法線方向から見たときに、前記レンズの光軸は2本の前記案内軸の間にある。
【0010】
好適には、前記キャリア底壁と前記ベース底壁の他方に前記2本の案内軸に対応して2つの摺動溝が設けられており、一方の前記摺動溝は一方の前記案内軸に接触する非平行の2つの斜面を有し、他方の前記摺動溝は他方の前記案内軸に接触する底面を有し、前記底面は前記摺動溝が設けられている方の前記キャリア底壁又はベース底壁に平行である。
【0011】
好適には、前記光軸方向に直交する方向の断面において、前記案内軸は、前記摺動溝に接触する部分の形状が円弧状であり、一方の前記摺動溝の形状はV字形状であり、他方の前記摺動溝の形状は台形状である。
【0012】
好適には、前記キャリア底壁と前記ベース底壁の他方に前記2本の案内軸に対応して2つの摺動溝が設けられており、一方の前記摺動溝は、その延在方向の中央部以外がさらに深く掘られ、摺動部として前記中央部に一方の前記案内軸が接触・摺動し、他方の前記摺動溝は、摺動部としてその延在方向の少なくとも両端部に他方の前記案内軸が接触・摺動する。
【0013】
好適には、前記摺動溝は、前記レンズキャリアに形成されて、前記レンズキャリアを前記光軸方向に貫き、その両端部分の溝深さが深く形成されている。
【0014】
好適には、摺動範囲において、前記案内軸のその延在方向の端部は前記摺動溝に対して非接触である。
【0015】
好適には、前記案内軸は、それが設けられている方の前記キャリア底壁又はベース底壁から突出して形成した案内軸固定部の表面を掘り下げて形成した固定溝に固定されており、前記光軸方向に直交する方向の断面において、前記案内軸固定部の前記表面は、前記摺動溝内にある。
【0016】
好適には、前記レンズキャリア及び前記ベースは、前記光軸方向に平行且つそれぞれの底壁に直交する側壁を有し、前記レンズキャリアの前記側壁に駆動用磁石と駆動用コイルのいずれか一方が配置され、前記ベースの前記前記側壁にいずれか他方が配置され、駆動用磁石と駆動用コイルは互いに対向している。
【0017】
本発明の他の態様はカメラ装置であり、このカメラ装置は、上記態様のレンズ駆動装置と、前記レンズキャリアに固定されるレンズと、前記レンズの前側に配置されるプリズムと、前記レンズの後側に配置される画像センサと、を備える。
【0018】
本発明の他の態様は電子機器であり、この電子機器は、上記態様のカメラ装置を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、キャリア底壁とベース底壁のいずれか一方に固定された金属製の案内軸と他方に形成されてそれに対向する摺動溝とが摺動する。したがって、案内軸と摺動溝が光軸方向に長い距離に亘って接触しているため、衝撃が加わった際にも変形しにくく安定した動作を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1(A)は、本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置を斜め上方から見た斜視図であり、図1(B)は、本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置を斜め下方から見た斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置を分解して斜め上方から見た分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置を分解して斜め下方から見た分解斜視図である。
図4図4(A)は、本発明の実施形態のベースを上方から見た場合の斜視図であり、図4(B)は、図4(A)のIVB部分の拡大図である。
図5】本発明の実施形態のレンズキャリアの底面部分とそれに関連する部材を、下方側から見た部分斜視図である。
図6図6(A)は、本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置の上面図、図6(B)は、図6(A)のVIB-VIB線断面図、図6(C)は、図6(A)のVIC-VIC線断面図である。
図7図6(A)のVII-VII線断面図である。
図8】本発明の実施形態のレンズ駆動装置を、図6(A)のVIC-VIC線で切断して図6(C)とは反対側から見た場合の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態は、本発明のレンズ駆動装置、カメラ装置及び電子機器を例示して示すものであり、本発明を以下の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0022】
図1から図8には、本発明のレンズ駆動装置10の実施形態が示されている。レンズ駆動装置10は、レンズ12、プリズム16、及び画像センサ(図示せず)と共にスマートフォン等の電子機器に搭載されるカメラ装置に用いられる。レンズ12は略円柱形状を有しており、この円柱の軸方向がレンズ12の光軸方向である。
【0023】
レンズ駆動装置10は、レンズ12を保持するレンズキャリア14と、このレンズキャリア14を内部に収容するベース18と、レンズキャリア14をベース18に対してレンズ12の光軸方向に移動自在に案内支持する案内機構20と、を含む。本実施形態において、プリズム16は、ベース18に取り付けられる。
【0024】
なお、以下の説明では、レンズ12の光軸方向を前後方向、特に光がレンズ12に入射する側を前、出射する側を後と呼ぶこととする。また、レンズ12の光軸方向に対して直交し、プリズム16に光が入射してくる被写体の側を上、反対方向を下と呼ぶこととする。さらに、光軸方向と上下方向の両方に直交する方向を幅方向と呼ぶこととする。
【0025】
レンズキャリア14は、対向する2つの側壁(キャリア側壁)24、24と2つの側壁24、24を繋ぐ底壁(キャリア底壁)26を有している。2つの側壁24、24と底壁26に囲まれた空間に、レンズ12の光軸方向に対して直交する断面形状がU字形状のレンズ収容部22が光軸方向に沿って設けられている。2つの側壁24、24と底壁26はレンズ12の光軸方向に平行であり、各側壁24と底壁26は互いに直交する。レンズ収容部22は、直方体形状であるレンズキャリア14の本体上面及び前後面に開口している。2つの側壁24、24の上部には取付け突起24Aが設けられる。レンズ収容部22に収容されたレンズ12はレンズカバー28によってレンズ収容部22内に保持される。レンズカバー28の四隅には下方に向けて突出した取付け部28Aが形成され、この取付け部28Aには四角形状の取付け孔28Bが形成されている。この取付け突起24Aに取付け孔28Bが嵌ることにより、レンズカバー28がレンズキャリア14に固定される。
【0026】
ベース18は、対向する2つの側壁(ベース側壁)36、36と2つの側壁36、36を繋ぐ底壁(ベース底壁)44、プリズム載置壁30、後壁38A、及び前壁38Bを有し、上方が開口した中空の箱形状である。後方側にはレンズキャリア14を収容するレンズキャリア収容空間32が2つの側壁36、36と底壁44と後壁38Aにより形成されている。前方側にはプリズム16を収容するプリズム収容空間34が2つの側壁36、36とプリズム載置壁30により形成されている。2つの側壁36、36と底壁44はレンズ12の光軸方向に平行であり、各側壁36と底壁44は互いに直交する。後壁38Aと前壁38Bはレンズ12の光軸方向に直交する。レンズキャリア収容空間32にレンズキャリア14が収容されると、キャリア側壁24、24とベース側壁36、36が平行に対向し、キャリア底壁26とベース底壁44が平行に対向する。
【0027】
プリズム載置壁30は、前方側が上側となるように傾斜している。また、プリズム収容空間34には、3つのプリズム載置部30Aがプリズム載置壁30からわずかに突出して形成され、側壁36、36から内側に向けて突出した複数のプリズム固定部30Bが形成されている。プリズム16は、反射面がプリズム載置部30Aに載置され、側面がプリズム固定部30Bに接着固定される。
【0028】
レンズキャリア14をベース18に対して案内支持する案内機構20は、金属製の案内軸40と、樹脂製のレンズキャリア14に形成された摺動溝42と、を含む。案内軸40と摺動溝42が接触・摺動する。摺動溝42は少なくとも案内軸40に接触・摺動する部分は樹脂で構成されていることが望ましい。
【0029】
案内軸40は、ベース18の光軸方向に平行に広がるベース底壁44の上面(ベース上面)44Aに形成された固定溝46A内に、光軸方向に延在するように固定される。案内軸40は、ベース上面44Aの幅方向両端に近い位置、即ち案内軸40が延在する方向と直交する方向に離れて1本ずつ設けられている。このとき、キャリア底壁26の法線方向から見たときに、レンズ12の光軸は2本の案内軸40、40の間にある。案内軸40は円柱状であり、固定溝46Aはベース上面44Aから案内軸40の半径よりも小さな高さで上方に突出した案内軸固定部46の上面を掘り下げて形成されており、この固定溝46Aに案内軸40の下側が長さ方向全体にわたって嵌り込んでいる。案内軸40は、少なくとも上側半分が固定溝46Aから上方に露出している。また、案内軸40の前後方向の両端は固定溝46Aの前後方向の両端部分に接着されて固定されている。
【0030】
なお、本実施形態では案内軸40の形状を円柱形状として説明したが、固定溝46Aから露出し、摺動溝42に接触する部分の形状が、案内軸40の延在方向、即ち光軸方向に直交する断面において、円弧状であればよい。例えば、固定溝46Aに嵌り込む部分の断面形状が四角形状、多角形状、楕円形状等であってもよい。また、例えば、案内軸40の形状が楕円柱形状であってもよい。
【0031】
摺動溝42は、ベース底壁44の上面44Aに対向し光軸方向に平行に広がるキャリア底壁26の下面(キャリア下面)48に、光軸方向に延在するように形成されている。摺動溝42は、レンズキャリア14を光軸方向に貫いており、その前後端部分42AC、42AC、42BC、42BCの溝深さが深く形成されているので、この前後端部分42AC、42AC、42BC、42BCにダメージがあってもスムーズな移動を確保できる。摺動溝42は、溝形状が異なる摺動溝42Aと摺動溝42Bとを有し、2本の案内軸40、40に対応してキャリア下面48の幅方向両端に近い位置に設けられる。摺動溝42Aの形状は、延在方向に直交する断面においてV字形状であり、溝底に向かって幅が減少するような非平行の2つの斜面を有している。この2つの斜面が案内軸40に接触し、摺動する。本実施形態において、摺動溝42Aは、長さ方向全体が摺動部42AAとして機能しているが、長さ方向の両端部を摺動部42AAとし、中央部は掘り下げて非接触としても構わない。
【0032】
摺動溝42Bの形状は、延在方向の中央部の断面形状が台形状となっていて、この台形状の下辺、即ち摺動溝42Bの底面が案内軸40に接触し、摺動する。延在方向の中央部以外の部分はさらに断面コ字状に掘り下げられており、この中央部が摺動部42BAとして機能し、それ以外の部分は接触しない非接触部42BBである。摺動溝42A、42Bは、案内軸40の半径を超える深さとなるように形成される。前記光軸方向に直交する方向の断面において、案内軸固定部46の表面は、摺動溝42A、42B内にある。また、案内軸40の長さ方向の端部は、摺動溝42に対して非接触としている。これにより、衝撃が加えられたときに金属製の案内軸40の端部が樹脂で構成された摺動溝42にダメージを与えることを抑制でき、スムーズにレンズキャリア14を移動させることができる。
【0033】
レンズキャリア14をベース18のレンズキャリア収容空間32に挿入すると、案内軸40の固定溝46Aから上方に突出した半円形状の部分が摺動溝42A、42Bに嵌り込んで摺動支持される。このとき、光軸方向に直交する断面において、案内軸40の弧状の部分と摺動溝42Aの直線状の部分とが互いに2点で接触し、この点より先の案内軸40の弧状の部分と摺動溝42Aの溝底との間には空間が形成される。摺動部42AAにおいては、摺動溝42Aの長さ方向全体が同時に案内軸40と接触するので、案内軸40と摺動溝42Aは線接触している。一方、光軸方向に直交する断面において、案内軸40と摺動溝42Bの摺動部42BAとは、案内軸40の弧状の部分と摺動溝42Bの台形の底面部分とが互いに1点で接触する。摺動部42BAにおいては、摺動溝42Bの長さ方向全体が同時に案内軸40と接触するので、案内軸40と摺動溝42Bは線接触している。これにより、レンズキャリア14の摺動溝42、ベース18の固定溝46A、及び案内軸40に製造上の誤差があっても組み立て、動作させることができ、スムーズにレンズキャリア14を移動させることができる。
【0034】
図3に示すように、レンズキャリア14のキャリア下面48には凹部(磁石装着凹部)52、52が摺動溝42A、42Bの幅方向内側に形成されており、ここに板状の予圧用磁石50が配置される。一方、ベース18のベース底壁44の下面(ベース下面)54には凹部(ヨーク装着凹部)58が案内軸固定部46、46に対応する位置の幅方向内側に形成されており、ここに板状の予圧用ヨーク56が予圧用磁石50に対向するように配置される。これにより、レンズキャリア14がベース18に対して下方に引き寄せられるように予圧が与えられ、摺動溝42が案内軸40に常に接触状態となる。なお、本実施形態では、レンズキャリア14に予圧用磁石50を装着し、ベース18に予圧用ヨーク56を装着した場合を説明したが、これらを入れ替えて、レンズキャリア14に予圧用ヨーク56を装着し、ベース18に予圧用磁石50を装着してもよい。
【0035】
図2図3に示すように、レンズキャリア14の2つのキャリア側壁24、24の中央部分には、凹部(駆動部材装着凹部)64が形成されており、この駆動部材装着凹部64には、レンズキャリア14を駆動するための駆動用ヨーク60及び駆動用磁石62が配置される。駆動用磁石62はその板面が光軸方向と直交する方向を向くように駆動部材装着凹部64に固定されている。この駆動用磁石62は、前後方向の前側と後側に2分割されており、幅方向を向く板面にS極とN極が設けられ、その極性は前側の磁石と後側の磁石で逆になるように配置されている。
【0036】
ベース18の2つのベース側壁36、36には貫通孔66が形成され、側壁36、36の外側にフレキシブルプリント基板68が配置される。フレキシブルプリント基板68の内面には駆動用コイル70が配置され、駆動用コイル70は貫通孔66内に位置し、レンズキャリア14に固定された駆動用磁石62と対向する。2つの駆動用コイル70の少なくとも一方の内周側には位置検出センサ72が設けられ、レンズキャリア14の光軸方向の移動を検知する。
【0037】
なお、本実施形態では、レンズキャリア14に駆動用ヨーク60及び駆動用磁石62を配置し、ベース18に駆動用コイル70を配置した例を説明した。しかし、本発明はこれらの構成に限定されず、これらを入れ替えて、レンズキャリア14に駆動用コイル70を配置し、ベース18に駆動用ヨーク60と駆動用磁石62を配置してもよい。また、さらに駆動用コイル70を間に挟んで駆動用磁石62と反対側に駆動用ヨークを配置しても構わないし、駆動用ヨーク60を無くしてもよい。
【0038】
プリズム収容空間34には三角柱形状のプリズム16が配置され、ベース18には、ベース18の上方と幅方向の2面及び前方の1面を覆うカバー74が取り付けられる。カバー74には、上面のうちプリズム収容空間34の上方に位置する部分に入射口76が設けられている。ベース18の後壁38Aには出射口78が形成されている。したがって、上方から入射口76に入射した光は、プリズム16に入射してその反射面で直角に反射して出射し、レンズキャリア14に保持されたレンズ12を通過して出射口78から出射し、出射口78の後方に配置される画像センサ(図示せず)に到達する。
【0039】
以上説明した構成のレンズ駆動装置10において、駆動用コイル70に通電すると、駆動用コイル70には上下方向の電流が流れる。駆動用コイル70に対向する駆動用磁石62は幅方向に向かう成分を有する磁束を生じさせているから、駆動用コイル70には前後方向のローレンツ力が作用する。駆動用コイル70はフレキシブルプリント基板68を介してベース18に固定されているから、駆動用磁石62に働くその反作用がレンズキャリア14に対する駆動力となる。レンズキャリア14は、予圧用磁石50と予圧用ヨーク56による引力による案内軸40と摺動溝42との摩擦力に抗して、案内軸40上を前後方向に移動する。
【0040】
ここで、レンズ駆動装置10が上下方向に衝撃を受けたとする。案内軸40が摺動溝42A、42Bから離れたとしてもそれぞれわずかな距離だけ離れてすぐに元の位置に戻る。このとき、案内軸40と摺動溝42とは、互いの接触状態が線接触であるため、互いが再度接触する際の衝撃が分散し、案内軸40が摺動溝42A、42Bに与えるダメージはほぼ無い。
【0041】
また、上記のように、駆動用磁石62、62はキャリア側壁24、24に配置され、駆動用コイル70、70は、ベース側壁36、36に配置されている。これらの側壁24、24、36、36は、案内機構20が設けられているキャリア底壁26及びベース底壁44ではない。したがって、キャリア底壁26、ベース底壁44の厚みを肉薄にすることが可能となり、レンズ駆動装置10の上下方向の寸法が小さくなる。すなわち、これはレンズ駆動装置10を搭載するカメラ装置の上下方向の寸法が小さくできるということであり、これを搭載するスマートフォン等の電子機器の厚さを薄くできるということである。
【0042】
なお、本実施形態において、案内軸40は非磁性の金属、好適にはステンレス合金で形成される。また、案内軸40は樹脂製のベース18にインサート成型されてもよい。また、摺動溝42はレンズキャリア14の一部として樹脂、好適にはフッ素含有液晶ポリマー樹脂で形成される。案内軸40が金属製であり、摺動溝42が樹脂製であるため、案内軸40と摺動溝42の摩擦係数が小さく、樹脂同士の部材の摺動の場合と比べてスムーズなスライド移動が可能となり、長期間の使用でも摩耗が少なく安定した動作を行える。なお、案内軸40と摺動溝42の一方、あるいは両方にフッ素系の潤滑剤を塗布し、案内軸40と摺動溝42の摩擦係数がさらに低くなるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 レンズ駆動装置
12 レンズ
14 レンズキャリア
16 プリズム
18 ベース
20 案内機構
22 レンズ収容部
24 側壁(キャリア側壁)
24A 取付け突起
26 底壁(キャリア底壁)
28 レンズカバー
28A 取付け部
28B 取付け孔
30 プリズム載置壁
30A プリズム載置部
30B プリズム固定部
32 レンズキャリア収容空間
34 プリズム収容空間
36 側壁(ベース側壁)
38A 後壁
38B 前壁
40 案内軸
42、42A、42B 摺動溝
42AA、42BA 摺動部
42BB 非接触部
42AC、42BC 前後端部分
44 底壁(ベース底壁)
44A ベース上面
44A 上面(ベース上面)
46 案内軸固定部
46A 固定溝
48 下面(キャリア下面)
50 予圧用磁石
52 凹部(磁石装着凹部)
54 下面(ベース下面)
56 予圧用ヨーク
58 凹部(ヨーク装着凹部)
60 駆動用ヨーク
62 駆動用磁石
64 凹部(駆動部材装着凹部)
66 貫通孔
68 フレキシブルプリント基板
70 駆動用コイル
72 位置検出センサ
74 カバー
76 入射口
78 出射口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8