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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155200
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】包装袋、及び、包装袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/25 20060101AFI20231013BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20231013BHJP
   B31B 70/81 20170101ALI20231013BHJP
   B31B 160/10 20170101ALN20231013BHJP
【FI】
B65D33/25 A
B65D30/02
B31B70/81
B31B160:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060409
(22)【出願日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2022063963
(32)【優先日】2022-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】図師 良明
(72)【発明者】
【氏名】梅津 和良
(72)【発明者】
【氏名】登尾 英浩
(72)【発明者】
【氏名】節田 征矢
【テーマコード(参考)】
3E064
3E075
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064BA01
3E064BA26
3E064BA29
3E064BA30
3E064BA54
3E064BB03
3E064BC18
3E064EA30
3E064FA01
3E064HM01
3E064HN05
3E064HN13
3E064HP01
3E064HP02
3E075BA42
3E075DD12
3E075DD42
3E075DD45
3E075DE17
3E075DE22
3E075GA05
(57)【要約】
【課題】紙としてリサイクル可能な包装袋を実現する。
【解決手段】包装袋(100)は、紙基材(21)と、ヒートシール剤層(22)と、ヒートシール剤層(22)を介して紙基材(21)に接着されたチャック(20)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、
ヒートシール剤層と、
前記ヒートシール剤層を介して前記紙基材に接着されたチャックと、を備えた包装袋。
【請求項2】
前記ヒートシール剤層は、水性コーティング剤からなる、請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記ヒートシール剤層の厚さは、1μm以上15μm以下である、請求項1または2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記チャックを前記包装袋から切り離すための切り離し部を備えている、請求項1に記載の包装袋。
【請求項5】
紙基材にヒートシール剤を塗布する工程と、
塗布された前記ヒートシール剤を乾燥させる工程と、
乾燥された前記ヒートシール剤の層を介して前記紙基材にチャックを熱接着する工程と、を含む包装袋の製造方法。
【請求項6】
前記ヒートシール剤を塗布する工程では、フレキソ印刷又はグラビア印刷により前記ヒートシール剤を前記紙基材に塗布する、請求項5に記載の包装袋の製造方法。
【請求項7】
前記紙基材に印刷層を形成する工程をさらに含み、
前記印刷層の形成と、前記ヒートシール剤の塗布とを同一の印刷機にて行う、請求項5または6に記載の包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紙としてリサイクル可能な包装袋、及び、該包装袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、及び各種雑貨等の流通又は保管等に用いられるチャック付きパウチ(袋状容器)が知られている。多くの場合、チャック付きパウチは、密封状態で流通し、内容物が取り出されるときに上部の密封シール部が切除され、開封される。内容物の取り出しが終わると、チャック付きパウチは、内面に設けられたチャックにより再密封される。
【0003】
特許文献1は、チャック付き包装袋を開示する。該チャック付き包装袋は、袋体とチャックとを備える。袋体は、チャックが熱融着されるシーラント層を含め、複数のプラスチックフィルムが紙層に積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-15183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年は、環境問題に対する意識の高まりから、プラスチックの使用量及び廃棄量の削減が望まれている。この点に関して、特許文献1のチャック付き包装袋では、複数のプラスチックフィルムが紙層に積層されている。さらに、袋体の紙層をリサイクルするためにはプラスチックフィルムを除去する必要があるところ、プラスチックフィルムは容易に除去されず、紙層を紙としてリサイクルするうえで課題であった。
【0006】
本開示の一態様は、紙としてリサイクル可能な包装袋、及び、該包装袋の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る包装袋は、紙基材と、ヒートシール剤層と、前記ヒートシール剤層を介して前記紙基材に接着されたチャックと、を備える。
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る包装袋の製造方法は、紙基材にヒートシール剤を塗布する工程と、塗布された前記ヒートシール剤を乾燥させる工程と、乾燥された前記ヒートシール剤の層を介して前記紙基材にチャックを熱接着する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、紙としてリサイクル可能な包装袋、及び、該包装袋の製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示に係る包装袋の正面図である。
図2】本開示に係る包装袋の断面模式図(図1におけるAA線断面模式図)を示す。
図3】本開示に係る他の包装袋の断面模式図を示す。
図4】本開示に係る他の包装袋の断面模式図を示す。
図5】本開示に係る包装袋の製造方法を示すフローチャートである。
図6】本開示に係る包装袋を説明するための図である。
図7】切り離し部の上部側を切り離した後の、切り離し部及びチャックの位置関係を説明するための図である。
図8】本開示に係る包装袋を説明するための図である。
図9】本開示に係る包装袋を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について、図1等を参照しながら詳細に説明する。図1は、本開示に係る包装袋100の正面図である。図1において、XY座標が記載されている。X軸は、包装袋100の横方向(幅方向)を示す。Y方向は、包装袋100の縦方向(高さ方向)を示す。Y軸方向において、図面上方側を「上側」、図面下方側を「下側」と規定する。包装袋100の外面側を「外側」、内面側を「内側」と規定する。「下限値XXX~上限値YYY」で表される数値範囲は、下限値XXX以上上限値YYY以下を意味する。
【0012】
(包装袋)
図1および図2を参照して、包装袋100の構成について説明する。図1は、包装袋100の正面図である。図2は、包装袋100の断面模式図(図1におけるAA線断面模式図)を示す。図1および図2は、内容物が封入される前の状態の包装袋100を示している。包装袋100は、袋本体10及びチャック20を有する。
【0013】
袋本体10は、包装袋100の本体を構成する。図1において、袋本体10は、縦長の矩形状で図示されているが、包装袋のデザイン性を高めるために、多角形(正方形、台形三角形、又は五角形等)、楕円形又は瓢箪型等の曲線部を有する形状で形成されていてもよい。以下の説明では、袋本体10は、縦長の矩形状であるものとして説明する。
【0014】
袋本体10は、第1シート1及び第2シート2により構成される。第1シート1及び第2シート2は、互いに対向し、同形である。第1シート1及び第2シート2は、Y軸に平行な、右端部4a及び左端部4b、並びに、X軸方向に平行な下端部5において互いに接着する。右端部4a、左端部4b、及び下端部5における第1シート1と第2シート2との接着幅は、例えば5~20mmであるが、接着が維持されるのであれば適宜の幅でよく、幅が変化するものであってもよい。第1シート1及び第2シート2は、X軸方向に平行な上端部6を有している。袋本体10に内容物が充填された後、上端部6が接着されることにより、袋本体10が密封される。
【0015】
図1において、第1シート1及び第2シート2は、下端部5において互いに接着する。しかしながら、袋本体10に内容物が充填される前の時点において、第1シート1及び第2シート2は、下端部5ではなく、上端部6において互いに接着していてよい。この場合、袋本体10に内容物が充填された後で、第1シート1及び第2シート2を下端部5において接着することにより袋本体10を密封できる。
【0016】
袋本体10は、4つの角部を有する。角部は、直角及び曲線の何れで構成されてもよい。袋本体10は、底マチを有し、自立型に構成されてもよい。袋本体10は、左右にマチを有するサイドガセット型であってもよい。
【0017】
第1シート1及び第2シート2は、1枚のシートを折り曲げて構成したものであってもよいし、2枚のシートを互いに重ね合わせて構成したものであってもよい。1枚のシートを折り曲げて第1シート1及び第2シート2を構成する場合には、下端部5(または上端部6)において第1シート1と第2シート2とを接着する必要はなくなる。
【0018】
第1シート1及び第2シート2は、内面の対向する位置にチャック20を有する。チャック20は、右端部4aから左端部4bに至るまで、X軸に平行に設けられている。図1において、チャック20は、包装袋100の上方側に設けられているが、包装袋100の中央付近、又は下方側に設けられてもよい。以下の説明では、チャック20は、包装袋100の上方側に設けられているものとして説明する。
【0019】
包装袋100は、チャック20の下方に切り離し部7を有してよい。切り離し部7は、第1シート1及び第2シート2に設けられ、第1シート1における切り離し部7と、第2シート2における切り離し部7とは、互いに対向する位置に設けられる。切り離し部7は、ハーフカット線7A、又は切欠き部7B等であってよい。切り離し部7は、チャック20を含む包装袋100の上部側を切り離すことを容易にするための形状又は構造を有する部分であればよい。
【0020】
図1では、切り離し部7の一例として、X軸方向に平行なハーフカット線7A及びV字状の切欠き部7B(所謂Vノッチ)を示している。切欠き部7Bは、右端部4aの外縁及び/又は左端部4bの外縁に設けられてもよい。切欠き部7Bは、右端部4a及び左端部4bにおける第1シート1と第2シート2との接着幅を超えない程度に形成される。また、ハーフカット線7A及び切欠き部7Bの両方を設ける場合には、切欠き部7Bは、ハーフカット線7Aの右端部及び/又は左端部に設けられることが好ましい。包装袋100は、切欠き部7Bに替えて、切込み(所謂Iノッチ)を有してもよい。
【0021】
ハーフカット線7Aは、第1シート1及び第2シート2の表面側に、例えばシート厚みの5%~30%程度の深さで切込みを施すことで設けられる。ハーフカットは破線状であってもよい。
【0022】
切り離し部7は、チャック20の下縁に沿って、該下縁の下方近傍1mm~20mm程度、好ましくは1mm~10mmの位置に形成される。
【0023】
包装袋100は、切り離し部7において、または切り離し部7を起点としてチャック20を含む上部側を切り離すことができ、これにより、包装袋100における切り離し部7の下側部分を再生可能紙としてリサイクルすることが容易になる。特に、前述したように切り離し部7がチャック20の下方近傍に形成されることにより、チャック20を含む上部側をチャック20とともに掴むことで、チャック20を含む上部側を包装袋100から容易に切り離すことができる。
【0024】
より具体的に、切り離し部7の形成位置を境目として、第1シート1は第1シート下部1aと第1シート上部1bにより構成され、第2シート2は第2シート下部2aと第2シート上部2bにより構成される。チャック20を含む包装袋100の上部側が切り離し部7を利用して切り離されたとき、第1シート下部1a及び第2シート下部2aはリサイクルに供される。チャック20を含む第1シート上部1b及び第2シート上部2bは廃棄されてよい。
【0025】
なお、包装袋100は、切り離し部7を有していなくてもよい。チャック20の下側部分を再生可能紙としてリサイクルするときには、例えばハサミを使ってチャック20の下側を切断してよい。ただし、包装袋100に切り離し部7が設けられていることにより、ハサミ等を使用することなく、チャック20の下側部分を容易に切り離すことができる。
【0026】
また、切り離し部7(包装袋100が切り離し部7を有さない場合は、チャック20の下方)の近傍には、切り離し位置を示す、破線等の線状の印刷を施してよい。さらに、該近傍に、「切り離すことにより下方側を紙としてリサイクルできます。」、「リサイクルする場合は、チャック部分を切り離してください。」といった文章を印刷してよい。これにより、チャック20を含む上部側を除去することにより、下側部分を紙としてリサイクル可能である旨のリサイクル手順表示を分かり易く示すことができる。
【0027】
次に、包装袋100の詳細を図2により説明する図2に示すように、第1シート1及び第2シート2はそれぞれ、紙基材21と、紙基材21の内側にヒートシール剤層22と、を有する。第1シート1及び/又は第2シート2は、紙基材21の外側の全体又は一部に印刷層23を有してもよい。
【0028】
第1シート1及び第2シート2は、内面の対向する位置にチャック20を有する。図2は、チャック20が閉じたときの様子を示す。以下、紙基材21等について具体的に説明する。
【0029】
(紙基材)
紙基材21は、袋本体10に強度を与える、包装袋100の主構造体である。紙基材21は、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されてよい。抄紙条件は特に限定されない。製紙用天然繊維は、針葉樹パルプ若しくは広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、又はそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等であってよい。紙基材21は、ノンコート紙、基材の片側が処理されている片艶クラフト紙、晒しクラフト紙、又は未晒しクラフト紙等から選定されてよい。紙基材21は、例えば40g/m~120g/mの坪量であってよい。
【0030】
紙基材21は、透明性を有する硫酸紙、グラシン紙又は叩解を繰り返し繊維の隙間を少なくし透明性を向上させた紙、水溶性等の樹脂を含侵又は塗工し、紙粉等の発生を抑制した無塵紙等から選定されてもよい。
【0031】
(ヒートシール剤層)
ヒートシール剤層22は、紙基材21の内面に形成される。ヒートシール剤層22は、紙基材21の内面全面に形成されてよい。ヒートシール剤層22は、水性コーティング剤を紙基材21に塗布し、その後に水性コーティング剤を乾燥させることで形成される。水性コーティング剤は、ヒートシール性の樹脂等が水に分散した状態(ディスパージョン、サスペンション、又はエマルションの状態)で紙基材21に塗布されることが好ましい。これにより、ヒートシール剤層22が塗布された紙基材21を紙としてリサイクルするときに、ヒートシール剤層22の再離解性を高めることができる。
【0032】
水性コーティング剤の樹脂成分として、オレフィン系共重合樹脂を含むものが使用できる。オレフィン系共重合樹脂は、ポリエチレン系樹脂が好ましく、例えば、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン‐(メタ)アクリル共重合樹脂、エチレン‐塩化ビニル共重合樹脂、エチレン‐酢酸ビニル‐塩化ビニル共重合樹脂、エチレン‐酢酸ビニル‐アクリル共重合樹脂である。水性コーティング剤の主成分は、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂が好適である。エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂は、アクリル酸エステル、又はアクリル酸等の他の重合成分を含んでもよい。
【0033】
水性コーティング剤の主成分として、エチレン‐アクリル酸共重合体を用いるものであってもよい。また、当該主成分として、エチレンメタクリル酸共重合物の金属塩、エチレン・アクリル系共重合物の金属塩、又はエチレン・ウレタン系共重合物の金属塩等のアイオノマーを用いるものであってもよい。また、当該主成分として、ポリ塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性のポリエステル系樹脂を単独又は前記の各樹脂をそれぞれ組み合わせて用いるものであってもよい。
【0034】
水性コーティング剤は、ブロッキング防止剤として、カオリン、タルク、重炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ等の顔料、中空等のビーズ、又はマイクロカプセル等が添加されてもよい。水性コーティング剤は、滑剤として、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミドワックス等の合成ワックス、又は、カルバナワックス等の天然ワックスが添加されてもよい。
【0035】
水性コーティング剤は、例えば、「三井化学株式会社製 ケミパールSタイプ、Vタイプ」、「東洋インキ株式会社アクワTOP HSワニス」、「東洋モートン株式会社EA-H700」、又は、「DIC株式会社 HYDBAR、HYDRECT」が用いられてよい。
【0036】
水性コーティング剤は、フレキソ印刷によって紙基材21に塗布されることが好ましい。水性コーティング剤の塗布方法は、フレキソ印刷に限定されず、グラビア印刷等他の方法であってもよい。フレキソ印刷は、2ロール方式、ドクター方式、又はドクターチャンバー方式が用いられてよい。例えば、ドクター方式又はドクターチャンバー方式のフレキソ印刷が使用される場合、次のように紙基材21に水性コーティング剤が塗布される。最初に、表面にセルが形成されたアニロックスロールに水性ヒートシール剤を供給する。次に、アニロックスロール表面の余分な水性ヒートシール剤をドクターブレードにより掻き落とす。その後、樹脂製の凸版を通して、紙基材21にヒートシール剤層22を印刷(塗布)する。
【0037】
水性ヒートシール剤をフレキソ印刷方式で紙基材21に塗布することにより、表面の粗い紙基材21に対してもムラ等が少なく適切に水性ヒートシール剤を塗布できる。
【0038】
ヒートシール剤層22は、乾燥後の塗布量が1g/m~15g/m程度で厚みが1μm~15μm、特に2μm~15μmであることが好ましい。ヒートシール剤層22の厚みが2μm以上であると、紙基材21に対するチャック20の接着力を高く保持できる。ヒートシール剤層22の厚みは15μm以上であってもよいが、水性ヒートシール剤の材料費又は包装袋100の樹脂成分の比率等を考慮すると、15μm以下であることが好ましい。
【0039】
ヒートシール剤層22は、ヒートシール性の樹脂等を有機溶剤に溶解した溶液をフレキソ印刷方式又はグラビア印刷方式により紙基材21に塗布乾燥させことにより形成されてもよい。この場合であっても、前記の水性ヒートシール剤と同程度の塗布量とすることが好ましい。
【0040】
(印刷層)
紙基材21の外面に印刷層23が形成されてよい。印刷層23は、フレキソ印刷又はグラビア印刷によって形成されてよい。印刷層23は、包装袋100に包装される商品を識別するための商品説明、各種デザイン、又は識別コードなどが印刷された層である。印刷層23は、第1シート1又は第2シート2の一方の外面のみに形成されていてもよい。
【0041】
(チャック)
チャック20は、ヒートシール剤層22を介して紙基材21に接着する。チャック20は、例えば、線状の突起部が設けられたチャック突起部20aと、線状の溝部が設けられたチャック溝部20bとから構成される。チャック突起部20aは第1シート1の内面に貼り付けられ、チャック溝部20bは第2シート2の内面に貼り付けられている。
【0042】
チャック突起部20a及びチャック溝部20bは、チャック突起部20aの突起部とチャック溝部20bの溝部とが互いに対向する位置に位置決めされている。チャック突起部20aの突起部とチャック溝部20bの溝部とが嵌合することで包装袋100は密封され、チャック突起部20aの突起部とチャック溝部20bの溝部との嵌合が解除されることで包装袋100は開封される。
【0043】
チャック20は、ヒートシール剤層22に対してヒートシール可能な材料により構成される。一例として、ヒートシール剤層22がポリエチレン系樹脂からなる場合、チャック20もポリエチレン系樹脂から形成される。すなわち、ヒートシール剤層22の材質とヒートシール剤層22へ貼り付けられるチャック20の面の材質とが、同じ系統の樹脂であることが好ましい。例えば、ヒートシール剤層22がポリプロピレン系樹脂の場合、ヒートシール剤層22へ貼り付けられるチャック20の面の材質はポリプロピレン系樹脂である。また、ヒートシール剤層22がポリエステル系樹脂の場合、ヒートシール剤層22へ貼り付けられるチャック20の面の材質はポリエステル系樹脂である。この点は、本質的には、ヒートシール剤層22とチャック20の接着面が溶融又は加熱軟化した状態で親和性が高いことを意味する。
【0044】
なお、チャック20の互いに咬合する突起部は、咬合しやすい柔軟性を有する樹脂により形成されていることが好ましく、チャック20におけるヒートシール剤層22へ貼り付けられる面の材質とは異なる材質で形成されてよい。例えば、チャック20の互いに咬合する突起部は、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂、又は各種エストラマーを含む樹脂等で形成されてよい。
【0045】
ポリエチレン系樹脂は、熱接着性を有し、ヒートシール時の加熱温度が比較的低温であっても軟化しやすい。そのため、包装袋100の周縁部(右端部4a、左端部4b、及び下端部5)にもヒートシール剤層22を形成しておけば、第1シート1と第2シート2とでチャック20を挟んだ状態で加熱することにより、包装袋100の周縁部についてもシールすることができる。
【0046】
チャック20は、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、及びエチレン酢酸ビニル共重合体から選択される一種以上を混合し、そこに各種添加剤を加えた原材料を、雄型(チャック突起部20a)、雌型(チャック溝部20b)それぞれの形状に溶融押出ししてテープ状に成型して形成される。
【0047】
実施形態(図2等)では、チャック突起部20aとチャック溝部20bとを簡易に表したチャック20を例示したが、チャック20は、各種公知の形態を使用してよい。チャック20は、咬合する突起部、溝部の形状、接着面を広幅にした形状、又は、突起部と溝部とを2列設けた形状など、種々の形態を使用してよい。
【0048】
ヒートシール剤層22がポリプロピレン系樹脂からなる場合、チャック20もポリプロピレン系樹脂から形成されてもよい。ただし、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを比較した場合、ポリエチレン系樹脂は、融点が低く、低温での熱接着性が高く、ヒートシール時の加熱で軟化しやすい。このため、ポリエチレン系樹脂は、後述する製法によって熱伝導性に劣る紙基材21を介してヒートシールバー等で加熱圧着する場合においても、ヒートシールし易く好適である。
【0049】
袋本体10とチャック20は、ヒートシールバー等で押圧する熱接着が好ましいが、超音波接着などの公知の方法により接着されてよい。
【0050】
(アンカーコート層)
本開示に係る包装袋は、紙基材21とヒートシール剤層22の間にアンカーコート層を有してもよい。その一例を図3により説明する。図3は、本開示に係る包装袋300の断面模式図を示す。なお、既に説明した内容についてはその説明を省略する。
【0051】
図3に示すように、包装袋300は、紙基材21、紙基材21上に形成されたアンカーコート層24、及び、アンカーコート層24上に形成されたヒートシール剤層22を含む。
【0052】
アンカーコート剤は、例えば、塩酢ビ系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、又はアクリル系樹脂等を主成分にするものであってよい。アンカーコート剤は、紙基材21及び/又はヒートシール剤層22に合わせて選定されてよい。アンカーコート剤は、水に分散した状態(ディスパージョン、サスペンション、又はエマルションの状態)で紙基材21に塗布されるのが好ましい。
【0053】
アンカーコート層24は、フレキソ印刷又はグラビア印刷で形成されてよい。アンカーコート層24は、紙基材21へのヒートシール剤の浸透を防ぎ、かつ、紙基材21とヒートシール剤との接着性を向上することで、ヒートシール剤の性能を活かすことができる。アンカーコート剤は、それ自身が紙基材21の塗布面に含侵してもよいため、塗布乾燥後のアンカーコート層24の塗布量は、1g/m~10g/m程度で、厚みは、実質的に0でも良く、例えば0.1μm~5μmであってよい。
【0054】
なお、アンカーコート剤は、水に分散された状態に限らず、有機溶剤溶液の状態でもよく、塗布方法もフレキソ印刷やグラビア印刷に限らず、ロールコーティングやスプレーコーティング等により紙基材の表面に塗布するものでもよい。
【0055】
(変形例)
包装袋200の一変形例である、本開示に係る包装袋400を図4により説明する。図4は、本開示に係る包装袋400の断面模式図を示す。なお、既に説明した内容についてはその説明を省略する。
【0056】
包装袋400は、紙基材21の内面にヒートシール剤層22が形成されているが、ヒートシール剤層22は、紙基材21の内面全面ではなく、紙基材21の内面の一部分のみに形成されている。具体的には、包装袋400では、ヒートシール剤層22aがチャック20と紙基材21との間に形成され、ヒートシール剤層22bが包装袋400の周縁部に形成され、その他の箇所にはヒートシール剤層22は形成されていない。ヒートシール剤層22aは、チャック20の縦方向の幅よりも少し広く形成されている。この構成によれば、ヒートシール剤層22が紙基材21の全面に形成された場合と比較して、チャック20の紙基材21に対する接着を維持しつつ、ヒートシール剤層22の材料費を低く抑えることができるとともに、包装袋400における樹脂成分の比率を低下させ、環境への負荷を低減できる。
【0057】
この変形例では、アンカーコート層を形成していないが、アンカーコート層を形成してもよく、アンカーコート層はヒートシール剤層と略同等の範囲に部分的に形成しても良く、全面に形成しても良い。
【0058】
(包装袋の製造方法)
次に、包装袋100の製造方法を説明する。図5は、本開示に係る包装袋100の製造方法を示すフローチャートである。
【0059】
最初に、S10にて、ロール状に巻かれた長尺の紙原反を繰り出し、紙基材21の外面に商品名、図柄、説明書き、及び/又は、前述のリサイクル手順等の印刷層23を形成する。続いて、S20にて、紙基材21の内面にヒートシール剤を塗布する。S10とS20は、順序が逆でもよい。印刷表示等が不要な場合、S10は省略してもよい。S10及び/又はS20は、フレキソ印刷により行われてよく、さらに、同一の印刷機により行われてよい。
【0060】
S20の後、塗布されたヒートシール剤を乾燥させる。ヒートシール剤を乾燥させたのち、紙原反をロール状に巻き取る。
【0061】
次に、前述のヒートシール剤が塗布された紙原反を所定寸法に切断した後、S30にて、乾燥されたヒートシール剤の層(ヒートシール剤層22)を介して紙基材21にチャック20を熱接着する。具体的には、第1シート1のヒートシール剤層22と第2シート2のヒートシール剤層22とによってチャック20を挟んだ状態で、第1シート1及び第2シート2の外側の面からチャック20の近傍をヒートシールバーで押圧しながら加熱する。
【0062】
このとき包装袋100の周縁部(右端部4a、左端部4b、及び下端部5)に対しても加熱及び押圧することにより、チャック20を含む、包装袋100の周縁部を熱接着することができる。この後、必要に応じて周縁の不要部分を切除してもよい。
【0063】
以上により、包装袋100を製造することができる。紙基材21等の材料等は上述したとおりであってよい。
【0064】
なお、包装袋100の製造後、包装袋100に内容物を封入し、熱接着されていない包装袋100の周縁部を熱接着することにより、包装袋100を密封できる。包装袋100を開封し、内容物を取り出すときは、図1における、チャック20の上方をX軸方向にハサミ等で切断すればよい。包装袋100を密封するには、チャック20を閉じればよい。
【0065】
(強度試験)
本願発明者らは、ヒートシール剤のコーティング(実施例1)がプラスチックフィルムのヒートシール層(比較例1)に比べても十分な強度を実現することを確認する強度試験を行った。この強度試験は、紙基材からチャックを引き剥がすときの力(N(ニュートン))を測定するものである。実施例1及び比較例1では、共通に、以下の条件を設定した。
・サンプル作成:ヒートシール試験機(テスター産業株式会社製、型番:TP‐701‐B ヒートシールテスター)
・ヒートシール条件:上下115℃、0.6秒、0.3MPa
・チャック:ポリエチレン系樹脂
・チャックの接着箇所:凸側(雄側)の平面部
・紙基材:坪量50g/mの未晒しクラフト紙(日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社 型番:東海クラフト)
・オートグラフ試験:オートグラフ試験機(株式会社島津製作所製、型番:AG-500NX Plus)
・オートグラフ試験条件:300m/min、試験すき間40mm、サンプル巾15mm、T型剥離
・試験回数:各2回
(実施例1)
アンカーコート剤(東洋インキ株式会社アクワTOP ACワニス)を塗布し、重ねてヒートシール剤(東洋インキ株式会社アクワTOP HSワニス)を使用した。アンカーコート剤の膜厚は0.5μm~3μm、ヒートシール剤層の膜厚は1μm~6μmに設定した。チャックは、ポリエチレン系樹脂製である。
【0066】
(比較例1)
ヒートシール層として、プラスチックフィルム(低密度ポリエチレン製フィルム)30μmをラミネートした。チャックは、ポリエチレン系樹脂製である。
【0067】
前述の試験条件による試験結果を表1に示す。紙基材からチャックを引き剥がすときの強度は2N以上あれば十分であると考えられるところ、実施例1のヒートシール剤を用いた構成であっても、ヒートシール層としてポリエチレンフィルムを用いた比較例1と同様に強度3N以上の強度が得られた。この結果より、チャック付きの包装袋が複数回開閉された場合であっても、チャックの紙基材からの剥離を抑制可能であることが分かる。
【0068】
【表1】

〔実施形態2〕
本開示に係る他の実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。図6は、本開示に係る包装袋600を説明するための図である。図6の符号601に示す図は、包装袋600の正面図である。図6の符号602に示す図は、包装袋600の断面模式図(符号601の図におけるAA線断面模式図)である。図6は、包装袋600に内容物(不図示)を収容し、包装袋600を閉じた状態で表している。
【0069】
以下、図1等を参照して説明した包装袋100と共通する包装袋600の構成については説明を省略し、包装袋100との差異について説明する。
【0070】
包装袋600は、チャック20の上方に切り離し部8を有する。切り離し部8は、第1シート1及び第2シート2に設けられ、第1シート1における切り離し部8と、第2シート2における切り離し部8とは、互いに対向する位置に設けられる。切り離し部8は、ハーフカット線8A、又は切欠き部8B等であってよい。切り離し部8は、切り離し部8の上部側と下部側とを切り離すことを容易にするための形状又は構造を有しておればよい。
【0071】
切り離し部8は、チャック20の上縁に沿って、該上縁の上方1mm~10mm程度、好ましくは1mm~5mmの位置に形成される。
【0072】
次に、包装袋600が切り離し部8を備えることによる効果を図7により説明する。図7は、切り離し部8の上部側を切り離した後の、切り離し部8及びチャック20の位置関係を説明するための図である。
【0073】
図7に示すように、チャック20は、ヒートシールによりヒートシール剤層22に接着する、チャック突起部20a及びチャック溝部20bにより構成される。より具体的に、チャック突起部20aは、ベース部20c及び咬合部20dにより構成される。チャック溝部20bは、ベース部20e及び咬合部20fにより構成される。ヒートシールによりヒートシール剤層22に接着するのは、チャック突起部20aのベース部20c及びチャック溝部20bのベース部20eである。チャック突起部20aの咬合部20dとチャック溝部20bの咬合部20fとは互いに咬合する。前述したように、咬合部20d及び咬合部20fは、咬合しやすい柔軟性を有する樹脂により形成されるのが好ましく、ベース部20c及びベース部20eの材質とは異なる材質で形成されてよい。
【0074】
図7にはL1、L2が記載されている。L1は、切り離し部8の上部側を切り離した後の下部側の紙基材21の端部である切離部8Cとベース部20c又はベース部20eとの距離を示す。L1は、好ましくは1mm~5mmである。L2は、ベース部20eの上端と咬合部20fとの距離を示す。切離部8Cとベース部20c又はベース部20eとの距離を短くするため、ベース部20c又はベース部20eは切離部8Cの近くまで延在しており、L2は、好ましくは5mm以上である。L2が5mm以上であることにより、包装袋600の利用者は、チャック20を開閉するときに、チャック突起部20aのベース部20c又はチャック溝部20bのベース部20eを把持しやすくなる。
【0075】
一般に、紙パウチにおいて、チャックを何度も開閉すると紙基材が次第に弱くなり、終にはチャックが紙基材から剥離するという課題が考えられる。その課題を解決するために、包装袋600では、切り離し部8がチャック20の上縁近傍に形成されており、L1は好ましくは1mm~5mmに設定される。また、前述の課題を解決するために、チャック20のベース部20c及びベース部20eは、切り離し部8の近傍まで延在し、L2は好ましくは5mm以上に設定される。
【0076】
前記の構成によれば、ベース部20c及びベース部20eの近傍において、切り離し部8の上部側と下部側とが切り離される。これにより、包装袋600の利用者は、チャック20を開閉するときに、紙基材21を殆ど把持することなく、チャック突起部20aのベース部20c又はチャック溝部20bのベース部20eを把持することになる。それゆえ、チャック20の開閉の回数に拘わらず、チャック20と紙基材21との剥離の発生が軽減し、チャック20の繰り返しの開閉が可能となる。
【0077】
切り離し部8の近傍(包装袋600が切り離し部8を有さない場合は、チャック20の上方)には、切り離し位置を示す、破線等の線状の印刷を施してよい。また、利用者が切り離し部7と切り離し部8とを間違えて切り離さないように、切り離し部7及び切り離し部8の近傍にそれぞれの目的を印刷してよい。例えば、切り離し部7の近傍には、「ここを切り離すことにより下方側を紙としてリサイクルできます。」、「リサイクルする場合は、ここの線を切り離してください。」といった文章を印刷する。これにより、チャック20を含む切り離し部7の上部側を除去することにより、下側部分を紙としてリサイクル可能である旨のリサイクル手順表示を分かり易く示すことができる。また、切り離し部8の近傍には、開封位置であることを示すために、「ここを切り離すことにより中味を取り出せます。」、「袋を開封する場合は、ここの線を切り離してください。」といった文章を印刷する。これにより、切り離し部8の上部側を除去することにより、包装袋600を開封して、包装袋600の中味を取り出す方法を分かり易く示すことができる。
【0078】
〔実施形態3〕
本開示に係る他の実施形態について、図8を参照して説明する。図8は、本開示に係る包装袋800を説明するための図である。図8の符号801に示す図は、包装袋800の正面図である。図8の符号802に示す図は、包装袋800の要部に係る断面模式図(符号801の図におけるAA線断面模式図)である。図8は、包装袋800に内容物(不図示)を収容し、包装袋800を閉じた状態で表している。
【0079】
以下、図1等を参照して説明した包装袋100及び図7を参照して説明した包装袋600と共通する包装袋800の構成については説明を省略し、包装袋100及び包装袋600との差異について説明する。
【0080】
図8の符号801に示す図を参照して、包装袋800は、チャック20の上方に切離部9を有する。切離部9は、直線状切離機構9A及び切欠き部9Bにより構成される。切欠き部9Bは、先述の切欠き部7Bと同様と考えてよい。直線状切離機構9Aは、包装袋800の右端部4aから左端部4bに至るまで、X軸に平行に設けられた切離促進樹脂9a(後述)が形成された領域に対応する。
【0081】
図8の符号802に示す図を参照して、切離促進樹脂9aは、ベース部20c及びベース部20eの互いに対向する位置にそれぞれ形成されている。切離促進樹脂9aが形成された領域には、ベース部20c及びベース部20eは形成されていない。
【0082】
切離促進樹脂9aは、引き裂きに対し脆弱な樹脂であり、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系に対し他の樹脂成分や無機質の微粒子成分等を混合して得られる。切離促進樹脂9aは、例えば、結晶性の低密度ポリエチレンに非晶性の環状オレフィン共重合体を混合した樹脂により構成される。
【0083】
切離促進樹脂9aは、前記の組成によって構成されることにより、切離促進樹脂9aが形成された領域における包装袋800の切り離しを容易にする。これにより、包装袋800は、包装袋800の利用者の手によるX軸に沿った直線状の切り離しを確実かつ容易にできる。また、包装袋800は、X軸に沿って直線状に切り離されることにより、切離促進樹脂9aにおいて紙基材21が上下に切り離された後の包装袋800の意匠性も向上させる。
【0084】
さらに、前記の構成によれば、包装袋800は、切離促進樹脂9aにおいて上下に切り離されるが、その切り離し位置を、咬合部20d及び咬合部20fの上方に位置させられる。これにより、包装袋800の利用者は、チャック20を開閉するときに、紙基材21を殆ど把持することなく、チャック突起部20aのベース部20c又はチャック溝部20bのベース部20eを把持することになる。それゆえ、チャック20の開閉の回数に拘わらず、チャック20と紙基材21との剥離の発生が軽減し、チャック20の繰り返しの開閉が可能となる。
【0085】
なお、直線状切離機構9Aとしては、切離促進樹脂9aに替えて、ベース部20c及びベース部20eの一部を薄肉(例えば50%~10%の厚さ)に形成し、引き裂き強度を弱くした部分として形成してもよい。
【0086】
〔実施形態4〕
本開示に係る他の実施形態について、図9を参照して説明する。図9は、本開示に係る包装袋900を説明するための図である。図9の符号901に示す図は、包装袋900の正面図である。図9の符号902に示す図は、包装袋900の断面模式図(符号901の図におけるAA線断面模式図)である。図9は、包装袋900に内容物(不図示)を収容し、包装袋900を閉じた状態で表している。
【0087】
以下、図1等を参照して説明した包装袋100及び図7を参照して説明した包装袋600と共通する包装袋900の構成については説明を省略し、包装袋100及び包装袋600との差異について説明する。
【0088】
包装袋900は、切り離し部7の上方に表面開封部90を有する。表面開封部90は、表面開封機構91及びタブ94により構成されている。
【0089】
図9の符号902に示す図を参照して、表面開封機構91は、チャック92及び切裂片93を含む。チャック92は、チャック突起部92a及びチャック溝部92bにより構成されている。チャック突起部92a及びチャック溝部92bは、図7を参照して説明したチャック突起部20a及びチャック溝部20bと同様の構成及び機能を有する。ただし、チャック突起部20a及びチャック溝部20bとの差異として、チャック突起部92a及びチャック溝部92bは何れも、第1シート1の内面に形成されたヒートシール剤層22にそれぞれのベース部が接着する点が挙げられる。チャック溝部92bのベース部は、切裂片93を挟んで、チャック突起部92aのベース部の反対側に位置する。
【0090】
切裂片93は、第1シート1の内面に形成されたヒートシール剤層22にヒートシールにより接着する。切裂片93は、チャック92と同じ材質により形成されてよい。
【0091】
図9の符号901に示す図を参照して、包装袋900では、左端部4bの近傍に形成されたタブ94を利用者が右端部4aの方向に引っ張る。これにより、タブ94に連結された切裂片93によって第1シート1の表面がX軸方向に切り裂かれ、その結果、第1シート1の表面に開口が形成される。その開口を介してチャック92を開閉でき、チャック92の開閉によって、包装袋900への収容物の出し入れが可能となる。
【0092】
さらに、前記の構成によれば、包装袋900では、チャック突起部92aのベース部の近傍において、前記の開口が形成される。これにより、包装袋900の利用者は、チャック92を開閉するときに、紙基材21を殆ど把持することなく、チャック突起部92aのベース部又はチャック溝部92bのベース部を把持することになる。それゆえ、チャック92の開閉の回数に拘わらず、チャック92と紙基材21との剥離の発生が軽減し、チャック92の繰り返しの開閉が可能となる。
【0093】
〔共通構成〕
本開示に係る包装袋において、切り離し部は、好ましくは、切り離ししやすい方向に紙基材21の紙目が方向付けされている。紙目とは、紙の繊維が流れる方向を言う。紙は、パルプなどの原料と水とを混合し、製造機の中を流れてゆく。このとき、紙の流れる方向に向かって繊維が揃うため、紙には繊維の流れる向き(紙目)が生じる。紙は、紙目に沿って裂けやすい性質を有する。そこで、本開示に係る切り離し部は、切り離しする方向に紙目を方向付けることにより、チャックに沿う方向に切り離しをしやすくしている。
【0094】
また、本開示に係る包装袋において、切り離し部8のハーフカット線又はミシン目線は、第1シート1及び第2シート2において、正面視で同じ位置ではなく、変位した位置に入れられることが好ましい。これにより、包装袋を開封するときにチャックを開けやすくできる。
【0095】
また、実施形態2~4では、包装袋の利用者は、チャックを開閉するときに、紙基材を殆ど把持することなく、チャックのベースを把持することになる。それゆえ、チャックの開閉の回数に拘わらず、チャックと紙基材との剥離の発生が軽減し、チャックの繰り返しの開閉が可能となる。この効果は、本開示に係る包装袋が紙基材を主構造とするゆえの工夫と言える。
【0096】
さらに、本開示に係る包装袋は、包装袋の上部(例えば、図1の上端部6)に、自包装袋を吊り下げるための吊り下げ孔を有してよい。このとき、耐荷重を高めるために、少なくとも吊り下げ孔の周囲において、第1シート1及び/又は第2シート2を折り重ねる、あるいは、別の補強用の紙基材を挟み込む等で重ねる、といった構成が採用されてよい。また、吊り下げ孔は、包装袋の上部に限定されず、包装袋の下部などにも形成されてよい。何れの位置に吊り下げ孔が形成されたとしても、その吊り下げ孔の周囲に、補強用の紙基材が使用されてよい。
【0097】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る包装袋は、紙基材と、ヒートシール剤層と、前記ヒートシール剤層を介して前記紙基材に接着されたチャックと、を備える。
【0098】
前記の構成によれば、本開示の態様1に係る包装袋は、除去が困難なフィルムを使用せずに、紙基材、ヒートシール剤層、及びチャックという新規な組み合わせで構成される。これにより、本開示の態様1に係る包装袋は、紙基材を再生紙として容易にリサイクルできる。
【0099】
さらに、本開示の態様1に係る包装袋は、従来の包装袋とは異なり、プラスチックフィルムを必要としないことから、プラスチックの使用量及び廃棄量を削減できる。
【0100】
こういった効果は、世界的な潮流であるSDGs(持続可能な開発目標)が求める持続循環経済に沿うものであり、本開示の態様1に係る包装袋は、リサイクル性を有し、プラスチック使用量の削減に貢献することもできる。
【0101】
本開示の態様2に係る包装袋は、前記の態様1において、前記ヒートシール剤層が、水性コーティング剤からなる。
【0102】
前記の構成によれば、本開示の態様2に係る包装袋は、従来のプラスチックフィルム又は樹脂の押出ラミネート層ではなく、水性コーティング剤を用いて、紙基材にチャックを接着させる。これにより、リサイクル時のプラスチックフィルム又は押出ラミネート層の除去という従来の課題を克服し、紙基材のリサイクルを促進できる。さらに、本開示の態様2に係る包装袋は、従来のプラスチックフィルムを必要としないため、プラスチック比率を下げることができる。
【0103】
本開示の態様3に係る包装袋は、前記の態様1又は2において、前記ヒートシール剤層の厚さが、1μm以上15μm以下である。
【0104】
前記の構成によれば、本開示の態様3に係る包装袋は、紙基材に対するチャックの接着力を高く維持することができる。さらに、本開示の態様3に係る包装袋は、ヒートシール剤層に係る材料費を低く抑えることができるとともに、包装袋における樹脂成分の比率を低下させ、環境への負荷を低減できる。
【0105】
本開示の態様4に係る包装袋は、前記の態様1において、前記チャックを前記包装袋から切り離すための切り離し部を備えている。
【0106】
前記の構成によれば、本開示の態様4に係る包装袋は、チャックを容易に切り取ることができるため、チャックを除く部分を再利用しやすくできる。
【0107】
本開示の態様5に係る包装袋の製造方法は、紙基材にヒートシール剤を塗布する工程と、塗布された前記ヒートシール剤を乾燥させる工程と、乾燥された前記ヒートシール剤の層を介して前記紙基材にチャックを熱接着する工程と、を含む。
【0108】
前記の構成によれば、本開示の態様5に係る包装袋の製造方法は、紙基材を再生紙として容易にリサイクル可能な包装袋を製造することができる。
【0109】
本開示の態様6に係る包装袋の製造方法は、前記の態様5において、前記ヒートシール剤を塗布する工程では、フレキソ印刷又はグラビア印刷により前記ヒートシール剤を前記紙基材に塗布する。
【0110】
前記の構成によれば、本開示の態様6に係る包装袋の製造方法は、フレキソ印刷によってヒートシール剤を紙基材に塗布することにより、表面の粗い紙基材に対してもムラ等が少なく適切に水性ヒートシール剤を塗布できる。また、本開示の態様6に係る包装袋の製造方法は、グラビア印刷によってヒートシール剤を紙基材に塗布することにより、フレキソ印刷に比べ、一回の印刷でより多くのヒートシール剤を紙基材に塗布できる。
【0111】
本開示の態様7に係る包装袋の製造方法は、前記の態様5又は6において、前記紙基材に印刷層を形成する工程をさらに含み、前記印刷層の形成と、前記ヒートシール剤の塗布とを同一の印刷機にて行う。
【0112】
前記の構成によれば、本開示の態様7に係る包装袋の製造方法は、製造コストを下げ、かつ、効率よく包装袋を製造することができる。
【0113】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
1 第1シート
1a 第1シート下部
1b 第1シート上部
2 第2シート
2a 第2シート下部
2b 第2シート上部
4a 右端部
4b 左端部
5 下端部
6 上端部
7、8 切り離し部
7A、8A ハーフカット線
7B、8B 切欠き部
8C 切離部
9 切離部
9a 切離促進樹脂
9A 直線状切離機構
10 袋本体
20、92 チャック
20a、92a チャック突起部
20b、92b チャック溝部
20c、20e ベース部
20d、20f 咬合部
21 紙基材
22、22a、22b ヒートシール剤層
23 印刷層
24 アンカーコート層
90 表面開封部
91 表面開封機構
93 切裂片
94 タブ
100、200、300、400、600、800、900 包装袋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9