(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155206
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】自動運転支援システムのフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
G08G1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023061920
(22)【出願日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202210360147.6
(32)【優先日】2022-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.SIMULINK
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】インジー ユー
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181EE02
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181LL09
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】本発明は、自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定方法に関する。
【解決手段】本方法は、シミュレーション結果及び/又は完成車テスト結果を受信することであって、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果は、敏感なパラメータとフォールト継続時間との間の関係を含む、ことと、制御可能性の検討結果を受信することと、前記敏感なパラメータに関する安全目標に基づいて、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果並びに前記制御可能性の検討結果を含むデータベースから、前記フォールトトレランス時間間隔FTTIを決定することと、を含む。本発明は、さらに自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定デバイス、コンピュータ記憶媒体及びコンピュータプログラム製品に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定方法であって、
シミュレーション結果及び/又は完成車テスト結果を受信することであって、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果は、敏感なパラメータとフォールト継続時間との間の関係を含む、ことと、
制御可能性の検討結果を受信することと、
前記敏感なパラメータに関する安全目標に基づいて、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果並びに前記制御可能性の検討結果を含むデータベースから、前記フォールトトレランス時間間隔FTTIを決定することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果は、操舵支援を失った失効モードにおける横ずれLとフォールト継続時間tとの間の関係を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御可能性の検討結果は、運転者反応時間t1、運転者が手をハンドルに置いてから最大横ずれになるまでの運転者制御時間t2、及び、前記運転者制御時間t2期間の車両横ずれdを含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記敏感なパラメータに関する安全目標に基づいて、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果並びに前記制御可能性の検討結果を含むデータベースから、前記フォールトトレランス時間間隔FTTIを決定することは、
前記安全目標に基づいて目標横ずれ値を決定することと、
前記目標横ずれ値に基づいて、前記データベースにおいて前記フォールトトレランス時間間隔FTTIを決定することと、
を含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記安全目標に基づいて目標横ずれ値を決定することは、
前記安全目標に基づいて、危険イベントを、車両が車線境界を跨いでいることであると決定することと、
W_laneは車線幅、W_vehicleは車両幅であるとして、下記式
L_target=(W_lane-W_vehicle)/2
に従って、前記目標横ずれ値L_targetを決定することと、
を含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記安全目標に基づいて目標横ずれ値を決定することは、
前記安全目標に基づいて、危険イベントを、運転者が車両を現在の車線に保持するように制御し得ないことであると決定することと、
W_laneは車線幅、W_vehicleは車両幅、dは前記運転者制御時間t2期間の車両横ずれであるとして、下記式
L_target=(W_lane-W_vehicle)/2-d
に従って、前記目標横ずれ値L_targetを決定することと、
を含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定デバイスであって、
シミュレーション結果及び/又は完成車テスト結果を受信するための第1の受信装置であって、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果は、敏感なパラメータとフォールト継続時間との間の関係を含む、第1の受信装置と、
制御可能性の検討結果を受信するための第2の受信装置と、
前記敏感なパラメータに関する安全目標に基づいて、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果並びに前記制御可能性の検討結果を含むデータベースから、前記フォールトトレランス時間間隔FTTIを決定するための決定装置と、
を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項8】
前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果は、操舵支援を失った失効モードにおける横ずれLとフォールト継続時間tとの間の関係を含む、
請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記制御可能性の検討結果は、運転者反応時間t1、運転者が手をハンドルに置いてから最大横ずれになるまでの運転者制御時間t2、及び、前記運転者制御時間t2期間の車両横ずれdを含む、
請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記決定装置は、
前記安全目標に基づいて目標横ずれ値を決定するための第1の決定ユニットと、
前記目標横ずれ値に基づいて、前記データベースから前記フォールトトレランス時間間隔FTTIを決定するための第2の決定ユニットと、
を含む、
請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1の決定ユニットは、
前記安全目標に基づいて、危険イベントを、車両が車線境界を跨いでいることであると決定し、
W_laneは車線幅、W_vehicleは車両幅であるとして、下記式
L_target=(W_lane-W_vehicle)/2
に従って、前記目標横ずれ値L_targetを決定する
ように構成される、
請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1の決定ユニットは、
前記安全目標に基づいて、危険イベントを、運転者が車両を現在の車線に保持するように制御し得ないことであると決定し、
W_laneは車線幅、W_vehicleは車両幅、dは前記運転者制御時間t2期間の車両横ずれであるとして、下記式
L_target=(W_lane-W_vehicle)/2-d
に従って、前記目標横ずれ値L_targetを決定する
ように構成される、
請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
命令を含むコンピュータ記憶媒体であって、前記命令は、実行されたときに請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法を実施するためのものである、ことを特徴とするコンピュータ記憶媒体。
【請求項14】
コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されたときに請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法を実施するためのものである、ことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両機能安全の分野に関し、より具体的には、自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定方法及びデバイス、コンピュータ記憶媒体及びコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
インテリジェントコネクテッドビークル(Intelligent Connected Vehicle)と自動運転車の急速な発展に伴い、信頼性と安全性の高い自動車電子システムを設計することは、ますます注目されており、その中で機能安全は、自動運転車システムの設計に不可欠な一部である。ISO26262は、自動車電子/電気システムの機能安全の業界標準である。機能安全とは、「電子電気システムの機能異常発生に起因する危険による不合理なリスクが存在しないこと」であり、即ち、機能安全は、システムの本来の機能又は性能ではなく、システムが失効した後に、安全状態に入ってより大きい危険を回避し得るか否か、又は、安全対策によって危険発生確率を低減し得るか否かに注目している。したがって、自動運転支援システムの信頼性及び安全性のために、関連する支援機能は、上記の標準を満たす必要がある。
【0003】
機能安全において、フォールトトレランス時間間隔FTTIは、非常に重要な概念であり、機能安全概念における時間要求(セキュリティメカニズムの検出と反応時間を含む)を導出するために重要なガイダンスを提供している。ISO26262の第2版においては、FTTIについて、セキュリティメカニズムが活性化されていないと、関連要素でフォールトが発生してから危険イベントが発生し得るまでの最短時間幅である、と定義している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の自動運転支援システムのフォールトトレランス時間間隔FTTIは、主に経験に基づいて決定されており、明確にするための定量化指標がないため、決定されたフォールトトレランス時間間隔FTTIには、大きな誤差がある。また、異なる元デバイスメーカーについて、フォールトトレランス時間間隔の終点には、異なる理解が存在する可能性があり、これもフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定に支障をもたらしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定方法を提供し、前記方法は、
シミュレーション結果及び/又は完成車テスト結果を受信することであって、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果は、敏感なパラメータとフォールト継続時間との間の関係を含む、ことと、
制御可能性の検討結果を受信することと、
前記敏感なパラメータに関する安全目標に基づいて、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果並びに前記制御可能性の検討結果を含むデータベースから、前記フォールトトレランス時間間隔FTTIを決定することと、
を含む。
【0006】
上記形態の補足又は代替として、上記方法において、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果は、車両が操舵支援を失った失効モードにおける横ずれLとフォールト継続時間tとの間の関係を含む。
【0007】
上記形態の補足又は代替として、上記方法において、前記制御可能性の検討結果は、運転者反応時間t1、運転者が手をハンドルに置いてから最大横ずれになるまでの運転者制御時間t2、及び、前記運転者制御時間t2期間の車両横ずれdを含む。
【0008】
上記形態の補足又は代替として、上記方法において、前記敏感なパラメータに関する安全目標に基づいて、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果並びに前記制御可能性の検討結果を含むデータベースから、前記フォールトトレランス時間間隔FTTIを決定することは、
前記安全目標に基づいて目標横ずれ値を決定することと、
前記目標横ずれ値に基づいて、前記データベースにおいて前記フォールトトレランス時間間隔FTTIを決定することと、
を含む。
【0009】
上記形態の補足又は代替として、上記方法において、前記安全目標に基づいて目標横ずれ値を決定することは、
前記安全目標に基づいて、危険イベントを、車両が車線境界を跨いでいることであると決定することと、
W_laneは車線幅、W_vehicleは車両幅であるとして、下記式
L_target=(W_lane-W_vehicle)/2
に従って、前記目標横ずれ値L_targetを決定することと、
を含む。
【0010】
上記形態の補足又は代替として、上記方法において、前記安全目標に基づいて目標横ずれ値を決定することは、
前記安全目標に基づいて、危険イベントを、運転者が車両を現在の車線に保持するように制御し得ないことであると決定することと、
W_laneは車線幅、W_vehicleは車両幅、dは前記運転者制御時間t2期間の車両横ずれであるとして、下記式
L_target=(W_lane-W_vehicle)/2-d
に従って、前記目標横ずれ値L_targetを決定することと、
を含む。
【0011】
本発明の他の態様によれば、自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定デバイスを提供し、前記デバイスは、
シミュレーション結果及び/又は完成車テスト結果を受信するための第1の受信装置であって、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果は、敏感なパラメータとフォールト継続時間との間の関係を含む、第1の受信装置と、
制御可能性の検討結果を受信するための第2の受信装置と、
前記敏感なパラメータに関する安全目標に基づいて、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果並びに前記制御可能性の検討結果を含むデータベースから、前記フォールトトレランス時間間隔FTTIを決定するための決定装置と、
を含む。
【0012】
上記形態の補足又は代替として、上記デバイスにおいて、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果は、操舵支援を失った失効モードにおける横ずれLとフォールト継続時間tとの間の関係を含む。
【0013】
上記形態の補足又は代替として、上記デバイスにおいて、前記制御可能性の検討結果は、運転者反応時間t1、運転者が手をハンドルに置いてから最大横ずれになるまでの運転者制御時間t2、及び、前記運転者制御時間t2期間の車両横ずれdを含む。
【0014】
上記形態の補足又は代替として、上記デバイスにおいて、前記決定装置は、
前記安全目標に基づいて目標横ずれ値を決定するための第1の決定ユニットと、
前記目標横ずれ値に基づいて、前記データベースにおいて前記フォールトトレランス時間間隔FTTIを決定するための第2の決定ユニットと、
を含む。
【0015】
上記形態の補足又は代替として、上記デバイスにおいて、前記第1の決定ユニットは、
前記安全目標に基づいて、危険イベントを、車両が車線境界を跨いでいることであると決定し、
W_laneは車線幅、W_vehicleは車両幅であるとして、下記式
L_target=(W_lane-W_vehicle)/2
に従って、前記目標横ずれ値L_targetを決定する
ように構成される。
【0016】
上記形態の補足又は代替として、上記デバイスにおいて、前記第1の決定ユニットは、
前記安全目標に基づいて、危険イベントを、運転者が車両を現在の車線に保持するように制御し得ないことであると決定し、
W_laneは車線幅、W_vehicleは車両幅、dは前記運転者制御時間t2期間の車両横ずれであるとして、下記式
L_target=(W_lane-W_vehicle)/2-d
に従って、前記目標横ずれ値L_targetを決定する
ように構成される。
【0017】
本発明のさらに他の態様によれば、命令を含むコンピュータ記憶媒体を提供し、当該命令は、実行されたときに前述の方法を実施するためのものである。
【0018】
本発明のさらに他の態様によれば、コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品を提供し、当該コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されたときに前述の方法を実施するためのものである。
【0019】
本発明の実施例に係る自動運転支援システムに対するFTTIの決定形態は、異なる顧客ニーズ(例えば、敏感なパラメータに関する異なる安全目標)に基づいて、シミュレーション結果及び/又は完成車テスト結果並びに制御可能性の検討結果を含むデータベースから、適当なフォールトトレランス時間間隔FTTIを適応的に選択する。当該形態は、異なる顧客ニーズを満たし、FTTIを決定するために一定の柔軟性を提供することができる。そして、従来技術における経験に基づいてFTTIを決定する方式に比較して、本発明の実施例に係る自動運転支援システムに対するFTTIの決定形態は、より合理的で明確であり、操作性が強い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面と関連した以下の詳細な説明から、本発明の上記及び他の目的及び利点がより完全に明らかになり、ここで、同一又は類似の要素は、同一の符号により示されている。
【
図1】本発明の一実施例に係る自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定方法のフロー模式図を示す。
【
図2】本発明の一実施例に係る自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定デバイスの構造模式図を示す。
【
図3】本発明の一実施例に係る自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定方法のフロー模式図を示す。
【
図4】本発明の一実施例に係る自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定デバイスの構造模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の各例示的な実施例に係る自動運転支援システムに対する安全制御形態を詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施例に係る自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定方法1000のフロー模式図を示す。
図1に示すように、自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定方法1000は、以下のステップを含む。
【0023】
ステップS110においては、シミュレーション結果及び/又は完成車テスト結果を受信し、ただし、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果は、敏感なパラメータとフォールト継続時間との間の関係を含む。
【0024】
ステップS120においては、制御可能性の検討結果を受信する。
【0025】
ステップS130においては、前記敏感なパラメータに関する安全目標に基づいて、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果並びに前記制御可能性の検討結果を含むデータベースから、前記フォールトトレランス時間間隔FTTIを決定する。
【0026】
本発明の関連において、「自動運転支援システム」は、ADASシステム、即ち、高度運転支援システム又は先進運転支援システムであるものとしてもよく、車両に取り付けられた様々なセンサ(ミリ波レーダ、レーザレーダ、単眼/両眼カメラ及び衛星ナビゲーション)を利用し、自動車の走行過程でいつでも周囲の環境を感知し、データを収集し、静的、動的な物体の識別、検出及び追跡を行い、ナビゲーションマップデータを参照してシステムの演算及び分析を行うことにより、発生し得る危険を運転者に事前に察知させ、自動車運転の快適性及び安全性を効果的に向上させる。
【0027】
「フォールトトレランス時間間隔(FTTI,Fault Tolerance Time Interval)」とは、セキュリティメカニズムが活性化されていない場合、関連要素の内部でフォールトが発生してから危険イベントが発生し得るまでの最短時間間隔である。例えば、システムが正常に運転しているときに突然フォールトが発生し、システムのセキュリティメカニズムがこのフォールトを検出した後に、システムは安全状態に置かれる。フォールトが発生してからシステムが安全状態になる(又は危険が発生し得る時間)までの時間が、いわゆるFTTIである。
【0028】
フォールトトレランス時間間隔の定義によると、フォールトトレランス時間間隔FTTIの開始点は明確であり、即ち、フォールトが発生した後である。しかしながら、FTTIの終点には、異なる理解がある可能性があり、「危険イベント」自体は、デバイスメーカーによって複数の方式によって解釈可能である。より具体的には、横方向フォールト(例えば、操舵補助を失ったこと)を例にとると、「危険イベント」の発生時点は、車両が車線境界を越えた時であり得ると考える人がいる。しかし、運転者の制御可能性も考慮すべきであると考える見方もある。即ち、安全なバッファが必要であり、そして、車線境界に到達する20cm前が正しいと考える見方もある。さらに、隣接車両は、車線境界に近づくのではなく、その車線中心を走行する可能性が高いため、車線境界を越えることは危険イベントではないと考える人がいる。もちろん、異なる理解は、他の意見を簡単には説得することができず、それによって、フォールトトレランス時間間隔FTTIの決定に支障をもたらしている。
【0029】
本願において言及されている「フォールトトレランス時間間隔FTTI」は、上記のいずれかの意見を代表することを可能な限り回避し、異なる顧客ニーズ(例えば、異なる安全目標)について、複数のソリューションを提供する。これにより、異なる顧客のニーズに応じた自己の解決策を取得することができ、柔軟性が得られ、時間/金銭も節約することができる。
【0030】
ステップS110においては、シミュレーション結果及び/又は完成車テスト結果を受信する。1つ又は複数の実施例において、シミュレーションテストを行う目標は、一定の条件下で基本のフォールトトレランス時間間隔FTTIを取得することである。例えば、CarMaker又はSimulinkを用いてソフトウェアシミュレーションを行うものとしてもよい。シミュレーションを行う前に、まずは車速、車線半径、車線幅、失効モードなどを含む運転設計ドメインを設置する必要がある。
【0031】
本発明の関連において、シミュレーション結果は敏感なパラメータとフォールト継続時間との間の関係を含む。ここで、敏感なパラメータとは、安全目標に関する車両パラメータである。例えば、車両の横方向制御について、横ずれ(車線中心線に対して)は敏感なパラメータである。フォールト継続時間とは、フォールトが発生してからの継続時間である。例えば、操舵支援を失ったという失効モードにおいて、シミュレーション(例えば、車速120km/h、車線半径1500メートルなど)によって表1に示すような横ずれとフォールト継続時間の関係を得る。
【0032】
【0033】
表1においては、横ずれ値は、フォールト継続時間の増加につれて大きくなることを理解することができる。また、表1は、模式的なものとして使用されるものにすぎず、当業者は、必要に応じて当該表の精度を調整可能であることが理解される。
【0034】
完成車テストは、一般的に製品発売の最後の関門であり、完成車テストの十分性が高いほど、発売後に車両に発露する問題は少なくなる。1つ又は複数の実施例において、完成車テスト結果も敏感なパラメータとフォールト継続時間との間の関係を含む。ここで、敏感なパラメータとは、安全目標に関する車両パラメータである。例えば、車両の横方向制御について、横ずれ(車線中心線に対して)は敏感なパラメータである。フォールト継続時間とは、フォールトが発生してからの継続時間である。例えば、操舵支援を失ったという失効モードにおいて、完成車テスト(例えば、車速120km/h、車線半径1500メートルなど)によって表2に示すような横ずれとフォールト継続時間の関係を得る。
【0035】
【0036】
表2においては、横ずれ値は、フォールト継続時間の増加につれて大きくなることを理解することができる。また、表2は、模式的なものとして使用されるものにすぎず、当業者は、必要に応じて当該表の精度を調整可能であることが理解される。そして、シミュレーション結果と完成車テスト結果とを比較することにより、両者には一定の違いがあることが分かる。例えば、同様に横ずれL=0.85mに対して、シミュレーション結果で対応するフォールト継続時間は1.8sであり、完成車テスト結果で対応するフォールト継続時間は1.6sである。
【0037】
完成車テストとシミュレーションテストは、それぞれ利点と欠点を有し、例えば、完成車テストは多くの労力と場所を消耗する必要があるため、コストが高い。また、完成車テスト過程に外部から制御し得ない要因があるため、完成車テスト結果に多少のばらつきが存在する可能性がある。しかし、完成車テストは、異なる量産車の機械能力の違いを考慮に入れており、これは時間敏感テストにとって重要である。したがって、コストとテスト結果の精度のバランスをとるためには、まず、シミュレーション結果(その中で敏感なパラメータとフォールト継続時間との間の関係を含む)を取得し、次に(シミュレーション結果と比較してごく少量の)完成車テストを利用して、当該シミュレーション結果をクロスチェックし、最終的な結果(即ち、敏感なパラメータとフォールト継続時間との間の関係)を調整することが有利である。
【0038】
1つ又は複数の実施例において、シミュレーション結果と完成車テスト結果との間の違いは、さらに、シミュレーション結果のみを取得することができる場合に最終的な計算結果を調整するために用いられるものとしてもよい。
【0039】
ステップS120においては、制御可能性の検討結果を受信する。制御可能性の検討の目標は、対応する失効モードにおける運転者の反応時間及び制御時間を得るためである。例えば、(カーブ)で操舵支援を失ったという失効モードにおいて、横ずれはフォールトが発生してから発生する。フォールトが発生してから運転者が両手をハンドルに置くまでの時間帯をt1とし、両手がハンドルの上に置いてから最大横ずれになるまでの時間帯をt2とし、t2時間帯内の横ずれをdとすると、t1は、運転者の反応時間、t2は、運転者の制御時間である。
【0040】
したがって、一実施例において、制御可能性の検討結果は、運転者反応時間t1、運転者が手をハンドルに置いてから最大横ずれになるまでの運転者制御時間t2、及び、前記運転者制御時間t2期間の車両横ずれdを含むものとしてもよい。
【0041】
一実施例において、ステップS130は、前記安全目標に基づいて目標横ずれ値を決定することと、前記目標横ずれ値に基づいて、前記データベースにおいて前記フォールトトレランス時間間隔FTTIを決定することとを含む。
【0042】
特に、目標横ずれ値は、安全目標又は安全状態によって異なるものとしてもよい。一実施例において、安全目標に基づいて目標横ずれ値を決定することは、
安全目標に基づいて、危険イベントを、車両が車線境界を跨いでいることであると決定することと、
W_laneは車線幅、W_vehicleは車両幅であるとして、下記式
L_target=(W_lane-W_vehicle)/2
に従って、前記目標横ずれ値L_targetを決定することと、
を含む。
【0043】
例えば、車線幅が3.75m、車両幅が1.8m、車速が120km/h、車線半径が1500メートルであり、且つ、顧客のニーズ(又は安全目標)に応じてFTTIの終点に対する理解が「車線境界を跨いでいる」であるときに、上記式に従って、目標横ずれ値(横ずれの自由空間値と称されてもよい)を0.975mとして算出可能である。データベース(当該データベースは、例えば、開発プラットフォームに位置し、シミュレーション結果及び/又は完成車テスト結果並びに制御可能性の検討結果を含む)で検索することにより、対応するフォールト継続時間値を取得することができ、当該値は、FTTIである。完成車テスト結果の表2を例にとると、フォールトトレランス時間間隔は、1.9sであるものとして得られる。
【0044】
また、例えば、車線幅が3.5m、車両幅が1.8m、車速が120km/h、車線半径が1500メートルであり、且つ、顧客のニーズ(又は安全目標)に応じてFTTIの終点に対する理解が「車線境界を跨いでいる」であるときに、上記式に従って、目標横ずれ値(横ずれの自由空間値と称されてもよい)を0.85mとして算出可能である。データベース(当該データベースは、例えば、開発プラットフォームに位置し、シミュレーション結果及び/又は完成車テスト結果並びに制御可能性の検討結果を含む)で検索することにより、対応するフォールト継続時間値を取得することができ、当該値は、FTTIである。完成車テスト結果の表2を例にとると、フォールトトレランス時間間隔は、1.8sであるものとして得られる。
【0045】
他の実施例において、安全目標に基づいて目標横ずれ値を決定することは、
安全目標に基づいて、危険イベントを、運転者が車両を現在の車線に保持するように制御し得ないことであると決定することと、
W_laneは車線幅、W_vehicleは車両幅、dは前記運転者制御時間t2期間の車両横ずれであるとして、下記式
L_target=(W_lane-W_vehicle)/2-d
に従って、前記目標横ずれ値L_targetを決定することと、
を含む。
【0046】
例えば、車線幅が3.5m、車両幅が1.8m、車速が120km/h、車線半径が1500メートルであり、且つ、顧客のニーズ(又は安全目標)に応じてFTTIの終点に対する理解が「車線境界から一定の緩衝距離だけ離れ、当該距離は運転者の制御時間に対応する」であるときに、上記式に従って、目標横ずれ値(横ずれの自由空間値と称されてもよい)を0.85-0.3=0.55mとして算出可能である。データベース(その中にシミュレーション結果及び/又は完成車テスト結果並びに制御可能性の検討結果を含む)で検索することにより、完成車テスト結果の表2を例にとると、フォールトトレランス時間間隔は1.4sであるものとして得られる。
【0047】
前述のように、表2は、模式的なものとして使用されるものにすぎず、当業者は、必要に応じて当該表の精度を調整可能であることが理解される。データベースにおける表において記録された精度が小さいほど、各安全目標(異なる顧客ニーズに対応する)におけるフォールトトレランス時間間隔FTTIを柔軟な方式によって取得又は処理することができる。
【0048】
また、当業者は、本発明の上記1つ又は複数の実施例に係る自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定方法は、コンピュータプログラムにより実施可能であることが容易に理解される。例えば、当該コンピュータプログラムは、コンピュータプログラム製品に含まれ、当該コンピュータプログラムがプロセッサにより実行されたときに、本発明の1つ又は複数の実施例に係る自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定方法を実施するためのものである。また、例えば、当該コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ記憶媒体(例えば、USBメモリ)をコンピュータに接続したときに、当該コンピュータプログラムを実行すると、本発明の1つ又は複数の実施例に係る自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定方法を実施し得るためのものである。
【0049】
図2を参照すると、
図2は、本発明の一実施例に係る自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定デバイス2000の構造模式図を示す。
図2に示すように、当該自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定デバイス2000は、第1の受信装置210、第2の受信装置220及び決定装置230を含む。ただし、第1の受信装置210は、シミュレーション結果及び/又は完成車テスト結果を受信するために用いられ、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果は、敏感なパラメータとフォールト継続時間との間の関係を含み、第2の受信装置220は、制御可能性の検討結果を受信するために用いられ、決定装置230は、前記敏感なパラメータに関する安全目標に基づいて、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果並びに前記制御可能性の検討結果を含むデータベースから、前記フォールトトレランス時間間隔FTTIを決定するために用いられる。
【0050】
1つ又は複数の実施例において、上記デバイス2000において、前記シミュレーション結果及び/又は前記完成車テスト結果は、操舵支援を失った失効モードにおける横ずれLとフォールト継続時間tとの間の関係を含む。
【0051】
1つ又は複数の実施例において、前記制御可能性の検討結果は、運転者反応時間t1、運転者が手をハンドルに置いてから最大横ずれになるまでの運転者制御時間t2、及び、前記運転者制御時間t2期間の車両横ずれdを含む。
【0052】
1つ又は複数の実施例において、
図4に示すように(注:
図4において、
図2と同一の構成要素は、同一の符号により示されているので、ここでは説明を繰り返さない)、決定装置230は、前記安全目標に基づいて目標横ずれ値を決定するための第1の決定ユニット410と、前記目標横ずれ値に基づいて、前記データベースにおいて前記フォールトトレランス時間間隔FTTIを決定するための第2の決定ユニット420とを含む。
【0053】
一実施例において、第1の決定ユニット410は、
前記安全目標に基づいて、危険イベントを、車両が車線境界を跨いでいることであると決定し、
W_laneは車線幅、W_vehicleは車両幅であるとして、下記式
L_target=(W_lane-W_vehicle)/2
に従って、前記目標横ずれ値L_targetを決定する
ように構成されるものとしてもよい。
【0054】
他の実施例において、第1の決定ユニット410は、
前記安全目標に基づいて、危険イベントを、運転者が車両を現在の車線に保持するように制御し得ないことであると決定し、
W_laneは車線幅、W_vehicleは車両幅、dは前記運転者制御時間t2期間の車両横ずれであるとして、下記式
L_target=(W_lane-W_vehicle)/2-d
に従って、前記目標横ずれ値L_targetを決定する
ように構成されるものとしてもよい。
【0055】
1つ又は複数の実施例において、フォールトトレランス時間間隔FTTIを決定した後に、当該フォールトトレランス時間間隔FTTIに基づいて、ステアリングシステム、感知ユニット、アクチュエータ、プロセッサなどの各関連コンポーネントのセキュリティメカニズム(監視時間、反応時間などを含むが、これに限定されるものではない)を指示して割り当てることができる。
【0056】
図3を参照すると、
図3は、本発明の一実施例に係る自動運転支援システムに対するフォールトトレランス時間間隔FTTIの決定方法3000のフロー模式図を示す。
図3に示すように、方法3000はステップ310で開始する。フォールトトレランス時間間隔FTTIを取得するために、315に示すように、シミュレーションテストを行う必要がある。また、フォールトトレランス時間間隔FTTIを取得するために、320に示すように、制御可能性の検討がさらに必要である。制御可能性の検討320を行った後に、ステップ330において、車両が制御可能であるか否かを判断し、否である場合には、ステップ350を実行してパラメータ(例えば、車速、曲率など)を調整し、制御可能性の検討320をやり直す。ステップ330において、車両が制御可能であると判断した場合には、ステップ340において、運転者の反応時間t1、運転者の制御時間t2及び運転者の制御時間t2期間の横ずれdを得る。
【0057】
一方、315に示すシミュレーションテストに加えて、完成車テスト355を行うものとしてもよい。完成車テスト355は、シミュレーションテスト結果をクロスチェック及び/又は調節するために用いられるものとしてもよい。ステップ360においては、横ずれと時間との間の関係を決定する。
【0058】
このように、ステップ340において得られた制御可能性の検討結果(即ち、運転者の反応時間t1、運転者の制御時間t2及び運転者の制御時間t2期間の横ずれd)及びステップ360において決定した結果(即ち、横ずれと時間との間の関係)に基づいて、FTTI行列370を形成することができる。FTTI行列370は、異なる顧客ニーズ365に応じて適当なフォールトトレランス時間間隔FTTIを決定するために用いられるものとしてもよい。
【0059】
以上から、本発明の実施例に係る自動運転支援システムに対するFTTIの決定形態は、異なる顧客ニーズ(例えば、敏感なパラメータに関する異なる安全目標)に基づいて、シミュレーション結果及び/又は完成車テスト結果並びに制御可能性の検討結果を含むデータベースから、適当なフォールトトレランス時間間隔FTTIを適応的に選択する。当該形態は、異なる顧客ニーズを満たし、FTTIを決定するために一定の柔軟性を提供することができる。そして、従来技術における経験に基づいてFTTIを決定する方式に比較して、本発明の実施例に係る自動運転支援システムに対するFTTIの決定形態は、より合理的で明確であり、操作性が強い。
【0060】
以上の明細書においては、本発明のいくつかの実施形態についてのみ説明したが、当業者は、本発明がその趣旨と範囲を逸脱しない場合、他の多くの形態において実施し得ることを理解すべきである。したがって、示された例及び実施形態は、限定的ではなく例示的なものとみなされ、特許請求の範囲において特定された本発明の精神及び範囲から逸脱しない場合、本発明は、様々な修正及び置換を包含し得る。
【外国語明細書】