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特開2023-15521高純度含フッ素ジエポキシ化合物及び含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015521
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】高純度含フッ素ジエポキシ化合物及び含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 303/08 20060101AFI20230125BHJP
【FI】
C07D303/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119332
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】久米 健太郎
【テーマコード(参考)】
4C048
【Fターム(参考)】
4C048AA01
4C048BB05
4C048CC02
4C048KK09
4C048UU10
4C048XX03
4C048XX04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光学材料や電子材料等に好適に使用することができ、かつ材料のバラつきが減少し生産効率が向上し、それにより最終製品の製造コストといった経済性の点でも有利である含フッ素ジエポキシ化合物を含む組成物、並びに、該組成物を簡便に得る含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)

(式中、nは1~8の整数を示す)で表される含フッ素ジエポキシ化合物を、亜鉛又は亜鉛を含む金属および水および酸無水物を加え処理することで目的とするヨウ素を含む不純物および不飽和な不純物を同時に除去し、高純度含フッ素ジエポキシ化合物および前記化合物を簡便に得る、含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記、一般式(1)
【化36】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ジエポキシ化合物が、94重量%以上(GC面積百分率基準)、
下記一般式(2)
【化37】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物が2.5重量%以下(GC面積百分率基準)、
下記一般式(3)
【化38】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物が1.5重量%以下(GC面積百分率基準)、かつ、
下記一般式(4)
【化39】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ヨウ素化合物が0.5重量%以下(GC面積百分率基準)である、高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
【請求項2】
前記一般式(1)で表される含フッ素ジエポキシ化合物が、95重量%以上(GC面積百分率基準)、前記一般式(2)で表される含フッ素不飽和アルコール化合物が2重量%以下(GC面積百分率基準)、前記一般式(3)で表される含フッ素不飽和アルコール化合物が1重量%以下(GC面積百分率基準)、かつ、前記一般式(4)で表される含フッ素ヨウ素化合物が0.2重量%以下(GC面積百分率基準)含有する、高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
【請求項3】
nが4及び/又は6であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
【請求項4】
nが4であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
【請求項5】
nが6であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
【請求項6】
下記、一般式(1)
【化40】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ジエポキシ化合物100重量部に対し、
下記一般式(2)
【化41】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)、
下記一般式(3)
【化42】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~40重量部(GC面積百分率基準)、かつ、
下記一般式(4)
【化43】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ヨウ素化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)含有する、含フッ素ジエポキシ混合物を、
亜鉛又は亜鉛を含む金属および酸無水物を加え処理することにより得られる請求項1~5のいずれか一項に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
【請求項7】
下記、一般式(1)
【化44】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ジエポキシ化合物100重量部に対し、
下記一般式(2)
【化45】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)、
下記一般式(3)
【化46】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~40重量部(GC面積百分率基準)、
下記一般式(4)
【化47】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ヨウ素化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)含有する、含フッ素ジエポキシ化合物を、
亜鉛又は亜鉛を含む金属および酸無水物を加え処理したのちに蒸留することにより得られる請求項1~6のいずれか一項に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
【請求項8】
下記、一般式(1)
【化48】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ジエポキシ化合物100重量部に対し、
下記一般式(2)
【化49】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)、
下記一般式(3)
【化50】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~40重量部(GC面積百分率基準)、かつ、
下記一般式(4)
【化51】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ヨウ素化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)含有する、含フッ素ジエポキシ化合物を、
亜鉛又は亜鉛を含む金属および酸無水物及び水を加え処理することにより得られる請求項1~7のいずれか一項に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物を得る、含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法。
【請求項9】
下記、一般式(1)
【化52】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ジエポキシ化合物100重量部に対し、
下記一般式(2)
【化53】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)、
下記一般式(3)
【化54】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~40重量部(GC面積百分率基準)、かつ、
下記一般式(4)
【化55】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ヨウ素化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)含有する、含フッ素ジエポキシ化合物を、
亜鉛又は亜鉛を含む金属および酸無水物及び水を加え処理したのちに蒸留することにより得られる請求項1~7のいずれか一項に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物を得る含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法。
【請求項10】
下記、一般式(5)
【化56】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表されるパーフルオロジヨージドを、ラジカル開始剤存在下、アリルアルコールと反応させた後、塩基性化合物で脱ヨウ化水素することにより得られる、粗含フッ素ジエポキシ化合物を亜鉛または亜鉛を含む金属および酸無水物及び水を加え処理することにより得られる請求項1~7のいずれか一項に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物を得る、含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法。
【請求項11】
酸無水物の使用量が含フッ素ジエポキシ化合物に対し0.01モル%~100モル%であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
【請求項12】
酸無水物の使用量が含フッ素ジエポキシ化合物に対し0.01モル%~100モル%であることを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物を得る、含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法。
【請求項13】
水の量が含フッ素ジエポキシ化合物に対し0.01モル%~50モル%であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
【請求項14】
水の量が含フッ素ジエポキシ化合物に対し0.01モル%~50モル%であることを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物を得る、含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法。
【請求項15】
亜鉛又は亜鉛を含む金属中に含まれる亜鉛の量が含フッ素ジエポキシ化合物に対し0.01モル%~200モル%であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
【請求項16】
亜鉛又は亜鉛を含む金属中に含まれる亜鉛の量が含フッ素ジエポキシ化合物に対し0.01モル%~200モル%であることを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物を得る、含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度含フッ素ジエポキシ化合物に関する。含フッ素ジエポキシ化合物は、単独又は様々なエポキシ基、アミノ基を有する化合物との重合が可能であり、また重合性のアクリル酸エステル誘導体へ誘導可能で、光学材料や電子材料の製造中間体として有用な化合物である。
含フッ素エポキシ化合物より得られる重合体は低屈折率・耐光耐久性といったフッ素に由来する高度な物性を持っており、光学材料では反射防止膜、プラスチック光導波路およびその関連材料原料を含め様々な用途に活用されている。電子材料では耐熱性・耐光耐久性などが求められる太陽電池用やLED光源用の封止剤等に使用されている。
【背景技術】
【0002】
含フッ素エポキシ化合物は通常、特許文献1で開示されているようにヨウ化フルオロアルキルと不飽和アルコールとをラジカル触媒の存在下にて不飽和アルコール-ヨウ化フルオロアルキル付加体を得る第1反応段階、および得られた付加体を塩基性化合物と反応させて含フッ素エポキシ化合物を得る第2反応段階を経て製造されている。そのため、通常微量存在しても着色原因となりうるヨウ素原子を含む不純物が存在する。しかしながら、ヨウ素原子を含む不純物を含む含フッ素エポキシ化合物の簡便な精製方法は知られていない。
【0003】
また、含フッ素エポキシ化合物は、通常、蒸留で精製される。ここで、含フッ素ジエポキシ化合物の製造プロセスの中で、不純物として不飽和アルコールが存在することが知られており(非特許文献1)、この不飽和アルコールの沸点は目的物である含フッ素エポキシ化合物の沸点と近いため両者の分離が難しいという課題があった。
さらに不飽和結合は紫外線吸収を持つため、上記不飽和アルコールのような不飽和結合を有する化合物がエポキシ樹脂中に含まれると、光劣化による着色原因となることが知られている(特許文献2)。
しかしながら、不飽和アルコールを有する不純物を含む含フッ素エポキシ化合物の簡便な精製方法は知られていなかった。このため、高純度の目的化合物を得るためには精密蒸留などの精製工程に多大な時間をかける必要があり、かつその場合の収率は低くなってコストが高くなるという課題があった。
【0004】
具体的には、次の方法を施すことが考えられる。
1)目的とする含フッ素ジエポキシ化合物と合成時に副生する含フッ素不飽和アルコール化合物及び含フッ素ヨウ素化合物を含む混合物とを繰り返して蒸留する。しかしながら蒸留を繰り返すことで目的とする含フッ素ジエポキシ化合物の収量は大きく減ぜられることになってしまう。
2)蒸留工程において還流比を上げる。しかしながら還流比を上げるためには時間をかけて蒸留する必要があり、目的とする含フッ素ジエポキシ化合物を得るには効率が悪くなってしまう。
【0005】
以上の2つの方法のいずれかあるいは両方を採用するにしても、いずれの場合も時間がかかることに変わりがなく、反応物が重合してしまい、製造装置に重合物が付着するなど支障を生じることも考えられる。
このため、用途に応じた含フッ素ジエポキシ化合物を、簡便、かつ効率的に得る方法が要望されていた。
【0006】
特に近年、部材に必要な機能や性能がますます高度化しており、わずかな着色や屈折率等の違い、およびその経時変化も許されなくなってきている。そのため着色防止、屈折率等の安定のために不純物の量を抑えた高純度な含フッ素エポキシ化合物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-67687号公報。
【特許文献2】特開2007-106795号公報。
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】オルドリッチ パレタ(Oldrich Paleta)ら,Jounal of Fluorine Chemistry (2000),102,349-361。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記の従来技術を鑑み、光学材料や電子材料等に好適に使用することができ、かつ材料を成型して部材とするときの歩留まりが向上し、それにより最終製品の製造コストなどの経済性の点でも有利である、高純度含フッ素ジエポキシ化合物、及び、該化合物を簡便に得る含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは前述の問題を解決するために、含フッ素ジヨード化合物を原料として粗製含フッ素ジエポキシ化合物を得た後、これを精製するため含まれる不純物を減ずる方法について鋭意検討を行った。その結果、目的物の合成の過程で生じた、目的物以外の化合物、特に含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物を含む粗製含フッ素ジエポキシ化合物に、亜鉛又は亜鉛を含む金属および酸無水物と水を加えて処理し、さらにこれを蒸留することで、製造時に存在していた含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物の両方を同時に、著しく減ずることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、以下の発明に係る。
[1] 下記、一般式(1)
【化1】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ジエポキシ化合物が、94重量%以上(GC面積百分率基準)、
下記一般式(2)
【化2】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物が2.5重量%以下(GC面積百分率基準)、
下記一般式(3)
【化3】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物が1.5重量%以下(GC面積百分率基準)、かつ、
下記一般式(4)
【化4】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ヨウ素化合物が0.5重量%以下(GC面積百分率基準)である、高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
[2] 前記一般式(1)で表される含フッ素ジエポキシ化合物が、95重量%以上(GC面積百分率基準)、前記一般式(2)で表される含フッ素不飽和アルコール化合物が2重量%以下(GC面積百分率基準)、前記一般式(3)で表される含フッ素不飽和アルコール化合物が1重量%以下(GC面積百分率基準)、かつ、前記一般式(4)で表される含フッ素ヨウ素化合物が0.2重量%以下(GC面積百分率基準)である、高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
[3] nが4及び/又は6であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
[4] nが4であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
[5] nが6であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
[6] 下記、一般式(1)
【化5】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ジエポキシ化合物100重量部に対し、
下記一般式(2)
【化6】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)、
下記一般式(3)
【化7】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~40重量部(GC面積百分率基準)、かつ、
下記一般式(4)
【化8】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ヨウ素化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)含有する、含フッ素ジエポキシ化合物を、
亜鉛又は亜鉛を含む金属および酸無水物を加え処理することにより得られる[1]~[5]のいずれかに記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
[7] 下記、一般式(1)
【化9】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ジエポキシ化合物100重量部に対し、
下記一般式(2)
【化10】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)、
下記一般式(3)
【化11】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~40重量部(GC面積百分率基準)、かつ、
下記一般式(4)
【化12】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ヨウ素化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)含有する、含フッ素ジエポキシ化合物を、
亜鉛又は亜鉛を含む金属および酸無水物を加え処理したのちに蒸留することにより得られる[1]~[6]のいずれかに記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
[8] 下記、一般式(1)
【化13】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ジエポキシ化合物100重量部に対し、
下記一般式(2)
【化14】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)、
下記一般式(3)
【化15】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~40重量部(GC面積百分率基準)、かつ、
下記一般式(4)
【化16】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ヨウ素化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)含有する、含フッ素ジエポキシ化合物を、
亜鉛又は亜鉛を含む金属および酸無水物及び水を加え処理することにより得られる[1]~[7]のいずれかに記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物を得る、含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法。
[9] 下記、一般式(1)
【化17】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ジエポキシ化合物100重量部に対し、
下記一般式(2)
【化18】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)、
下記一般式(3)
【化19】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~40重量部(GC面積百分率基準)、かつ、
下記一般式(4)
【化20】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表される含フッ素ヨウ素化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)含有する、含フッ素ジエポキシ化合物を、
亜鉛又は亜鉛を含む金属および酸無水物及び水を加え処理したのちに蒸留することにより得られる[1]~[7]のいずれかに記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物を得る、含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法。
[10] 下記、一般式(5)
【化21】
(式中、nは1~8の整数を示す)
で表されるパーフルオロジヨージドを、ラジカル開始剤存在下、アリルアルコールと反応させた後、塩基性化合物で脱ヨウ化水素することにより得られる、粗含フッ素ジエポキシ化合物を亜鉛または亜鉛を含む金属および酸無水物及び水を加え処理することにより得られる[1]~[7]いずれかに記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物を得る、含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法。
[11] 酸無水物の使用量が含フッ素ジエポキシ化合物に対し0.01モル%~100モル%であることを特徴とする[6]又は[7]に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
[12] 酸無水物の使用量が含フッ素ジエポキシ化合物に対し0.01モル%~100モル%であることを特徴とする[8]~[10]のいずれかに記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物を得る、含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法。
[13] 水の量が含フッ素ジエポキシ化合物に対し0.01モル%~50モル%であることを特徴とする[6]又は[7]に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
[14] 水の量が含フッ素ジエポキシ化合物に対し0.01モル%~50モル%であることを特徴とする[8]~[10]のいずれかに記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物を得る、含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法。
[15] 亜鉛又は亜鉛を含む金属中に含まれる亜鉛の量が含フッ素ジエポキシ化合物に対し0.01モル%~200モル%であることを特徴とする[6]又は[7]に記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物。
[16] 亜鉛又は亜鉛を含む金属中に含まれる亜鉛の量が含フッ素ジエポキシ化合物に対し0.01モル%~200モル%であることを特徴とする[8]~[10]のいずれかに記載の高純度含フッ素ジエポキシ化合物を得る、含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、高純度含フッ素ジエポキシ化合物および前記高純度含フッ素ジエポキシ化合物を効率的に得る、工業的な含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】合成例1で得られた反応液のGCチャートであり、X軸(横軸)は保持時間(単位はmin(分))、Y軸(縦軸)は強度(Intensity、単位は任意)を示す。図中に記載のそれぞれのピークの帰属を化合物名または記号で示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の高純度含フッ素ジエポキシ化合物は前記一般式(1)で表され、具体例としてはビス(2’,3’-エポキシプロピル)-ジフルオロメタン、1,2-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロエタン、1,3-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロプロパン、1,4-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロブタン、1,5-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロペンタン、1,6-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロヘキサン、1,7-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロヘプタン、1,8-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロオクタンが挙げられる。
【0015】
本発明の高純度含フッ素ジエポキシ化合物は、含有することがある下記に示す成分が特定の重量割合以下で存在することを特徴とする。
【0016】
本発明の含フッ素ジエポキシ化合物は純度が、94重量%以上(GC面積百分率基準)である。より好ましくは95重量%以上(GC面積百分率基準)である。ここで「重量%」とは、含フッ素ジエポキシ化合物を、ガスクロマトグラフィー(GC)で分析もしくは測定したときに、含フッ素ジエポキシ化合物に含まれる各成分に帰属する各ピークの合計のGC面積に対する含フッ素ジエポキシ化合物のGC面積の割合、すなわちGC百分率を意味する。本明細書においては、この「重量%」を、「GC面積百分率基準」または単に「GC百分率」としている。
【0017】
本発明の含フッ素ジエポキシ化合物に含有されうる第一の成分は、前記一般式(2)で表される不飽和アルコール化合物である。本発明の高純度含フッ素ジエポキシ化合物における前記一般式(2)で表される不飽和アルコール化合物の含有量は2.5重量%以下(GC面積百分率基準)であり、好ましくは2重量%以下(GC面積百分率基準)である。
【0018】
本発明の高純度含フッ素ジエポキシ化合物に含有されうる第二の成分は、前記一般式(3)で表される不飽和アルコール化合物である。本発明の高純度含フッ素ジエポキシ化合物における前記一般式(3)で表される不飽和アルコール化合物の含有量1.5重量%以下(GC面積百分率基準)であり、好ましくは1重量%以下(GC面積百分率基準)である。
【0019】
本発明の高純度含フッ素ジエポキシ化合物に含有されうる第三の成分は、前記一般式(4)で表される含フッ素ヨウ素化合物である。本発明の高純度含フッ素ジエポキシ化合物における前記一般式(4)で表される含フッ素ヨウ素化合物の含有量は0.5重量%以下(GC面積百分率基準)であり、好ましくは0.2重量%以下(GC面積百分率基準)である。
【0020】
前記一般式(2)で表される不飽和アルコール化合物の具体例としては2-(1-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1-ジフルオロメチル)-2-プロペン-1-オール、2-(2-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1,2,2-テトラフルオロエチル)-2-プロペン-1-オール、2-(3-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロピル)-2-プロペン-1-オール、2-(4-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブチル)-2-プロペン-1-オール、2-(5-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-デカフルオロペンチル)-2-プロペン-1-オール、2-(6-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-ドデカフルオロヘキシル)-2-プロペン-1-オール、2-(7-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-テトラデカフルオロヘプチル)-2-プロペン-1-オール、2-(8-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-ヘキサデカフルオロヘキシル)-2-プロペン-1-オールが挙げられる。
【0021】
前記一般式(3)で表される不飽和アルコール化合物の具体例としては4-(2’,3’-エポキシプロピル)-4,4-ジフルオロ-2-ブテン-1-オール、5-(2’,3’-エポキシプロピル)-4,4,5,5-テトラフルオロ-2-ペンテン-1-オール、6-(2’,3’-エポキシプロピル)-4,4,5,5,6,6-ヘキサフルオロ-2-ヘキセン-1-オール、7-(2’,3’-エポキシプロピル)-4,4,5,5,6,6,7,7-オクタフルオロ-2-ヘプテン-1-オール、8-(2’,3’-エポキシプロピル)-4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-デカフルオロ-2-オクテン-1-オール、9-(2’,3’-エポキシプロピル)-4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ドデカフルオロ-2-ノネン-1-オール、10-(2’,3’-エポキシプロピル)-4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10-テトラデカフルオロ-2-デセン-1-オール、11-(2’,3’-エポキシプロピル)-4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11-ヘキサデカフルオロ-2-ウンデセン-1-オールが挙げられる。
【0022】
前記一般式(4)で表される含フッ素ヨウ素化合物の具体例としては(2’,3’-エポキシプロピル)-ジフルオロヨードメタン、1-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1,2,2-テトラフルオロ-2-ヨードエタン、1-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロ-3-ヨードプロパン、1-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロ-4-ヨードブタン、1-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-デカフルオロ-5-ヨードペンタン、1-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-ドデカフルオロ-6-ヨードヘキサン、1-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-テトラデカフルオロ-7-ヨードヘプタン、1-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-テトラデカフルオロ-8-ヨードオクタンが挙げられる。
【0023】
前記一般式(1)におけるnに入る数字と前記一般式(2)に入るnの数字と前記一般式(3)に入るnの数字と前記一般式(4)に入るnの数字は同じものが入る。例えば、高純度含フッ素エポキシ化合物が1,4-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロブタンである場合は、含まれる不純物の組み合わせは2-(4-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブチル)-2-プロペン-1-オール、7-(2’,3’-エポキシプロピル)-4,4,5,5,6,6,7,7-オクタフルオロ-2-ヘプテン-1-オール、1-(2’,3’-エポキシプロピル)-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロ-4-ヨードブタンとなる。
【0024】
本発明の高純度含フッ素ジエポキシ化合物は、前記一般式(2)で表される不飽和アルコール化合物および前記一般式(3)で表される不飽和アルコール化合物および前記一般式(4)で表される含フッ素ヨウ素化合物を含有する前記一般式(1)で表される粗製含フッ素ジエポキシ化合物に、亜鉛又は亜鉛を含む金属および酸無水物と水を加え、処理した後に蒸留することでヨウ素を含む不純物および不飽和アルコールを含む不純物を同時に除去できて、効率的に得ることが出来る。
【0025】
前記処理を行うことで、前記一般式(2)および一般式(3)で表される不飽和アルコール化合物におけるアルコール部位のアシル化が進行し、対応するエステル化合物が生成する。前記処理を行うことで、前記一般式(4)で表される含フッ素ヨウ素化合物は分解が進行し下記一般式(6)
【化22】
(式中、nは1~8の整数を示す)または下記一般式(7)
【化23】
(式中、nは1~8の整数を示す)で表される化合物等が生成する。生成した化合物は蒸留により含フッ素ジエポキシ化合物から容易に分離することができて、高純度な含フッ素ジエポキシ化合物を得ることができる。
【0026】
前記粗製含フッ素ジエポキシ化合物は、周知の方法にて製造することができる。例えば特許文献1で開示されているようにヨウ化フルオロアルキルとアリルアルコールとをラジカル触媒の存在下にて不飽和アルコール-ヨウ化フルオロアルキル付加体を得る第1反応段階、および得られた付加体を塩基性化合物と反応させて含フッ素エポキシ化合物を得る第2反応段階を経て製造することができる。
【0027】
本発明の含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法は、前記粗製含フッ素ジエポキシ化合物のみならず再結晶や蒸留等の周知の方法により精製された含フッ素ジエポキシ化合物に対して適用することができる。
本発明の含フッ素ジエポキシ化合物の精製方法が適用できる粗含フッ素ジエポキシ化合物については、含フッ素ジエポキシ化合物の重量部を基準とし、含有する他の成分を重量部で示す。すなわち、含フッ素ジエポキシ化合物100重量部に対し、一般式(2)で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)、好ましくは1~10重量部(GC面積百分率基準)、一般式(3)で表される含フッ素不飽和アルコール化合物を0.1重量部~40重量部(GC面積百分率基準)、好ましくは1~20重量部(GC面積百分率基準)かつ、一般式(4)で表される含フッ素ヨウ素化合物を0.1重量部~20重量部(GC面積百分率基準)、好ましくは1~10重量部(GC面積百分率基準)含有する場合は適用可能である。
ここで「重量部」とは、所定量の含フッ素ジエポキシ化合物をガスクロマトグラフィー(GC)で分析もしくは測定したときに、含フッ素ジエポキシ化合物に含まれる各成分に帰属する各ピークの合計のGC面積と各成分のGC面積の割合、すなわちGC百分率を基準とする。本明細書においては、この「重量部」を、「GC面積百分率基準」または単に「GC百分率」としている。
【0028】
本発明の含フッ素ジエポキシ化合物の精製に適用可能な酸無水物としては特に制限は無いが、好ましくはカルボン酸無水物である。複数の酸無水物を組み合わせて使用しても良い。酸無水物の具体例として酢酸無水物、4-メトキシフェニル酢酸無水物、フェニル酢酸無水物、ジフェニル酢酸無水物、2-メトキシ酢酸無水物、フェノキシ酢酸無水物、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、吉草酸酸無水物、ヘキサン酸無水物、ヘプタン酸無水物、オクタン酸無水物、ノナン酸無水物、デカン酸無水物、ドデカン酸無水物、モノクロロ酢酸無水物、ジクロロ酢酸無水物、トリクロロ酢酸無水物、クロロジフルオロ酢酸無水物、ジフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、ペンタフルオロプロピオン酸無水物、ヘプタフルオロ酪酸無水物、ブロモ酢酸無水物、ジブロモ酢酸無水物、トリブロモ酢酸無水物、ブロモジフルオロ酢酸無水物、イソ酪酸無水物、イソ吉草酸無水物、ピバル酸無水物、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、クロトン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物、1,1-シクロペンタン二酢酸無水物、1,1-シクロヘキサン二酢酸無水物、コハク酸無水物、フェニルコハク酸無水物、グルタル酸無水物、3-メチルグルタル酸無水物、3,3-ジメチルグルタル酸無水物、イタコン酸無水物、アリルコハク酸無水物、ジグリコール酸無水物、フタル酸無水物、3-クロロフタル酸無水物、4-クロロフタル酸無水物、4,5-ジクロロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、テトラブロモフタル酸無水物、テトラフルオロフタル酸無水物、3‐ブロモフタル酸無水物、4‐ブロモフタル酸無水物、3-フルオロフタル酸無水物、4-フルオロフタル酸無水物、3-ニトロフタル酸無水物、4-ニトロフタル酸無水物、2-メチルフタル酸無水物、3-メチルフタル酸無水物、4-メチルフタル酸無水物、4-tert-ブチルフタル酸無水物、3-メチルシクロヘキサン‐1,2‐ジカルボン酸無水物、4-メチルシクロヘキサン‐1,2‐ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン‐1,2‐ジカルボン酸無水物、トリメット酸無水物、ピロメリット酸無水物、3,4’-ビフタル酸無水物、4,4’-ビフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、1-シクロヘキセン‐1,2‐ジカルボン酸無水物、4-シクロヘキセン‐1,2‐ジカルボン酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、ヘット酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、4,4’-カルボニルジフタル酸無水物、マレイン酸無水物、フェニルマレイン酸無水物、2,3-ジフェニルマレイン酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、安息香酸無水物、3,4,5-トリメトキシ安息香酸無水物、2-トリフルオロメチル安息香酸無水物、3-トリフルオロメチル安息香酸無水物、4-トリフルオロメチル安息香酸無水物、2-メチル安息香酸無水物、3-メチル安息香酸無水物、4-メチル安息香酸無水物、2-メチル-6-ニトロ安息香酸無水物、2-メトキシ安息香酸無水物、3-メトキシ安息香酸無水物、4-メトキシ安息香酸無水物、3,4-ジクロロ安息香酸無水物、2-クロロ安息香酸無水物、3-クロロ安息香酸無水物、4-クロロ安息香酸無水物、2-フルオロ安息香酸無水物、3-フルオロ安息香酸無水物、4-フルオロ安息香酸無水物、2-ブロモ安息香酸無水物、3-ブロモ安息香酸無水物、4-ブロモ安息香酸無水物、1,2‐ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8‐ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3‐ナフタレンジカルボン酸無水物、4-クロロ-1,8-ナフタル酸無水物、4-ブロモ-1,8-ナフタル酸無水物、ベンゾ[de]イソクロメン-1,3-ジオン、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0029】
本発明の含フッ素ジエポキシ化合物の精製に適用可能な酸無水物の使用量は、処理に用いる不純物を含む粗製含フッ素ジエポキシ化合物に対して、0.01モル%~100モル%が好ましい。特に好ましくは0.1モル%~100モル%であり、さらに好ましくは9モル%~90モル%である。処理に用いる粗製含フッ素ジエポキシ化合物中に含まれる一般式(2)および(3)で表される不飽和アルコール不純物の合計量に対して0.5モル倍以上の使用が望ましい。酸無水物の量が少なすぎる場合は不純物を除くことが困難で、酸無水物の量が多すぎる場合は含フッ素ジエポキシ化合物が一部損壊するおそれがある。
【0030】
本発明の含フッ素ジエポキシ化合物の精製に適用可能な水の存在量としては一般式(1)で表される含フッ素ジエポキシ化合物に対し、0.01モル%~50モル%が好ましい。特に好ましくは0.1モル%~50モル%であり、さらに好ましくは1モル%~45モル%である。水の存在量が少なすぎる場合はヨウ素を含む不純物を除くことが困難で、水の存在量が多すぎる場合は不飽和アルコールを含む不純物を除くことが困難である。水分が処理に用いる不純物を含む含フッ素ジエポキシ化合物中に十分含まれている場合は加える必要はない。
【0031】
本発明の含フッ素ジエポキシ化合物の精製に適用可能な亜鉛を含む金属は特に制限が無く、真鍮や洋白やJIS H5301:2009で規定された亜鉛合金ダイカスト等の亜鉛合金、トタンやJIS H8641:2007で規定された亜鉛メッキなど亜鉛を含む種々の金属を適用可能である。
【0032】
本発明の含フッ素ジエポキシ化合物の精製に適用可能な亜鉛または亜鉛を含む金属中に含まれる亜鉛の使用量は、処理に用いる粗製含フッ素ジエポキシ化合物に含まれる一般式(4)で表されるヨウ素を含む不純物に対して、1.0モル倍量以上で良い。処理に用いる含フッ素ジエポキシ化合物に対しては0.01モル%~200モル%が好ましい。特に好ましくは0.1モル%~200モル%であり、さらに好ましくは1モル%~200モル%である。亜鉛が少なすぎる場合はヨウ素を含む不純物を除くことが困難である。多すぎる場合は残存する亜鉛を除去する操作が必要となり作業が煩雑になる。
【0033】
本発明の含フッ素ジエポキシ化合物の精製では、溶剤を技術常識等に基づき反応に不活性なものであればあらゆるもの、例えばトルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族系溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤、アセトニトリル等のニトリル系溶剤などを用いて良いし、複数の溶剤を組み合わせても良く、無溶剤でも良い。操作の簡便さ及び経済的な面でできるだけ溶剤含量が少ない方が好ましく、より好ましくは無溶剤である。
【0034】
本発明の含フッ素ジエポキシ化合物の精製においては前記一般式(2)で表される不飽和アルコール化合物および前記一般式(3)で表される不飽和アルコール化合物および前記一般式(4)で表される含フッ素ヨウ素化合物を含有する前記一般式(1)で表される含フッ素ジエポキシ化合物に、亜鉛又は亜鉛を含む金属および酸無水物と水を加え、処理を行う。その際の好ましい処理温度および時間としては、25℃~150℃の温度範囲で0.5時間~72時間である。より好ましい処理時間および時間としては、50℃~120℃の温度範囲で1時間~24時間である。
【0035】
本発明の含フッ素ジエポキシ化合物の精製においては前記一般式(2)で表される不飽和アルコール化合物および前記一般式(3)で表される不飽和アルコール化合物および前記一般式(4)で表される含フッ素ヨウ素化合物を含有する前記一般式(1)で表される含フッ素ジエポキシ化合物に、亜鉛又は亜鉛を含む金属および酸無水物と水を加え、処理した後に蒸留を行うが、処理後の操作に特に規定はなく周知の方法で実施可能である。例えば、処理後に15%炭酸水素カリウム水溶液を加え撹拌し、有機層を回収し、回収した有機層に水15gを加えて水洗し有機層を取得し、得られた有機層を蒸留等で精製し、高純度な一般式(1)で表される含フッ素ジエポキシ化合物を得る。
【実施例0036】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
なお、分析には下記機器を使用した。
H-NMR(400MHz),19F-NMR(376MHz),13C-NMR(100MHz):ブルカー製アバンス400(BurukerAvance400)。
GC:島津製作所製GC-2025
【0038】
実施例中の記号及び略称は、以下の意味で用いられる。
GC:ガスクロマトグラフィー
GC%:GCArea%(GC面積百分率)
Ph:フェニル基
化合物1-4a:1,4-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロブタン
化合物1-6a:1,6-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロヘキサン
化合物1-4aは前記一般式(1)においてn=4の化合物である。
化合物1-6aは前記一般式(1)においてn=6の化合物である。
以下同様に化合物X-Yaは前記一般式(X)においてn=Yの化合物であることを表す。前記一般式(2)および前記一般式(3)で表される不飽和アルコール化合物は処理によって対応するエステル化合物となるため、化合物X-Yaを処理して生成した化合物はX-Yb、X-Yc、X-Yd、のような形で必要に応じ定義する。
化合物2-4a:次式(2-4a)で表される化合物
【化24】
化合物2-6a:次式(2-6a)で表される化合物
【化25】
化合物2-4b:次式(2-4b)で表される化合物
【化26】
化合物2-6b:次式(2-6b)で表される化合物
【化27】
化合物3-4a:次式(3-4a)で表される化合物
【化28】
化合物3-6a:次式(3-6a)で表される化合物
【化29】
化合物3-4b:次式(3-4b)で表される化合物
【化30】
化合物3-6b:次式(3-6b)で表される化合物
【化31】
化合物4-4a:次式(4-4a)で表される化合物
【化32】
化合物4-6a:次式(4-6a)で表される化合物
【化33】
化合物6-4a:次式(6-4a)で表される化合物
【化34】
化合物6-6a:次式(6-6a)で表される化合物
【化35】
【0039】
GCの測定条件は、以下の通りである。
カラム:DB-5(アジレント・テクノロジー社、内径0.25mm、膜厚1.0μm、長さ30m)
キャリアガス:ヘリウム、1.7mL/min
注入条件:220℃、スプリット比1/50
検出条件:FID方式、280℃
カラム温度条件:120℃で3分保持、10℃/minで280℃まで昇温
【0040】
<含フッ素ジエポキシ化合物の合成>
合成例1 粗製1,6-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロヘキサンの合成
1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン802g(1.44 mol)と水392gを混合し、反応温度が80~100℃になるようにラジカル開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル10g(60.9 mmol)をアリルアルコール220g(3.78 mol)に溶解させた液を滴下した。滴下後5時間撹拌し、得られた1,6-ジヨードパーフルオロヘキサンのアリルアルコール付加体を含む溶液に1-プロパノール362gを加えた後、60℃まで冷却した。反応温度が30~60℃となるように20%水酸化カリウム水溶液848g(水酸化カリウムとして3.02 mol)を加えた。30分撹拌後、有機層を取得し、水層はジエチルエーテルにて抽出し、有機層を合わせて硫酸ナトリウム上で乾燥、ろ過、濃縮することにより化合物(1-6a)の粗製物596g(化合物(1-6a)を1.10 mol含む)を得た。
【0041】
得られた粗製物をGC法にて分析すると、分析結果は以下の通りであった。図1には分析例としてピークの帰属も示した。
化合物(1-6a):76.9GC%、
化合物(6-6a):1.0GC%、
化合物(4-6a):1.7GC%、
化合物(2-6a):3.8GC%、
化合物(3-6a):4.3GC%、
1-プロパノール:0.7GC%
また、カールフィッシャー水分計にて水分値を図ると215ppmであった。
【0042】
分析結果は以下の通りであった。

【0043】
合成例2 粗製1,4-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロブタンの合成
1,4-ジヨードパーフルオロブタン800g(1.76 mol)と水476gを混合し、反応温度が75~95℃になるようにラジカル開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル11.6g(70.4 mmol)をアリルアルコール307g(5.28 mol)に溶解させた液を滴下した。滴下後5時間撹拌し、得られた1,4-ジヨードパーフルオロブタンのアリルアルコール付加体を含む溶液を60℃まで冷却した後、エタノール254gを加えた後、反応温度が30~60℃となるように20%水酸化カリウム水溶液1036g(水酸化カリウムとして3.70 mol)を加えた。30分撹拌後、有機層を取得し、水層はジエチルエーテルにて抽出し、有機層を合わせて10%食塩水にて洗浄、洗浄後の有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥、ろ過、濃縮することにより化合物(1-4a)の粗製物453g(化合物(1-4a)を1.12 mol含む)を得た。
【0044】
得られた粗製物をGC法にて分析すると、分析結果は以下の通りであった。
化合物(1-4a):78.3GC%、
化合物(6-4a):1.0GC%、
化合物(4-4a):0.8GC%、
化合物(2-4a):2.8GC%、
化合物(3-4a):2.7GC%、
エタノール:0.01GC%であった。
また、カールフィッシャー水分計にて水分値を図ると250ppmであった。
【0045】
分析結果は以下の通りであった。

【0046】
実施例1 粗製1,6-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロヘキサンの精製処理
合成例1で合成した粗製物50g(化合物(1-6a) 92.3 mmol)を反応器に加え、気相部を窒素で置換した後に亜鉛1.0g(14.8mmol)を加え、安息香酸無水物を5.2g(23.1 mmol)加え、水を50mg(2.8mmol)加え、100℃で3時間加熱処理を行った。室温まで冷却し15%炭酸水素カリウム水溶液93g(炭酸水素カリウムとして139.3mmol)を加え撹拌し、有機層を回収した。回収した有機層に水25gを加えて水洗し有機層53gを取得した。
【0047】
得られた有機層をGC法にて分析すると、分析結果は以下の通りであった。
化合物(1-6a):73.4GC%、
化合物(6-6a):0.7GC%、
化合物(4-6a):0.01GC%、
化合物(2-6a):1.3GC%、
化合物(3-6a):1.1GC%、
化合物(2-6b):4.5GC%、
化合物(3-6b):5.8GC%、
1-プロパノール:0.01GC%
【0048】
実施例1の結果から、ジヨード含フッ素化合物より得られた含フッ素ジエポキシ化合物および副生した含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物を含む粗製含フッ素ジエポキシ化合物を、亜鉛、水、および酸無水物を添加して精製すると、副生した含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物(化合物(6-6a)、化合物(4-6a)、化合物(2-6a)、化合物(3-6a))はいずれも減少することが分かる。
但しこの純度では不十分なため、次の実施例2によりさらに精製した。
【0049】
実施例2 高純度1,6-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロヘキサンの取得
実施例1で得られた有機層53gを単蒸留装置にて絶対圧力0.2kPaまで減圧し蒸留を行い、生成物を33g得た。
【0050】
得られた生成物をGC法にて分析すると、分析結果は以下の通りであった。
化合物(1-6a):95.1GC%、
化合物(6-6a):0.3GC%、
化合物(4-6a):0.002GC%、
化合物(2-6a):0.9GC%、
化合物(3-6a):0.7GC%、
化合物(2-6b):0.1GC%、
化合物(3-6b):0.1GC%、
1-プロパノール:未検出
【0051】
実施例2の結果から、亜鉛、水、および酸無水物を添加して精製したものを、減圧蒸留することで、含フッ素ジエポキシ化合物に含有する、含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物(化合物(6-6a)、化合物(4-6a)、化合物(2-6a)、化合物(3-6a))はいずれも十分に減少することが分かる。
また、実施例1の処理により生じた化合物(3-6b)および化合物(2-6b)についても十分に減少することが分かる。
【0052】
比較例1 粗製1,6-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロヘキサンの蒸留
合成例1で得られた粗生成物50gを単蒸留装置にて絶対圧力0.2kPaまで減圧し蒸留を行い生成物を28g得た。
【0053】
得られた生成物をGC法にて分析すると、分析結果は以下の通りであった。
化合物(1-6a):90.1GC%、
化合物(6-6a):0.6GC%、
化合物(4-6a):1.0GC%、
化合物(2-6a):3.1GC%、
化合物(3-6a):2.6GC%、
1-プロパノール:未検出
【0054】
比較例1の結果から、ジヨード含フッ素化合物より得られた含フッ素ジエポキシ化合物および副生した含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物を含む粗製含フッ素ジエポキシ化合物を減圧蒸留しただけでは、副生した含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物(化合物(6-6a)、化合物(4-6a)、化合物(2-6a)、化合物(3-6a))はまだかなり残存しており、さらなる精製処理が必要なことが分かる。
すなわち、含フッ素ジエポキシ化合物(1-6a)は90.1GC%と純度が低く、化合物(4-6a)が1.0GC%、化合物(2-6a)が3.1GC%、化合物(3-6a)が2.6GC%とかなり残存していることから、さらなる精製が必要であることがわかる。しかしながら精製の時間が長くなると含まれる成分が重合してしまう可能性があるため、効率的な精製ができないおそれがある。
【0055】
実施例3~13 高純度1,6-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロヘキサンの取得
[合成例1]で合成した粗製物25g(化合物(1-6a) 46.2 mmol)を反応器に加え、気相部を窒素で置換した後に亜鉛、酸無水物、水を表1に記載の所定量加え、表1記載の反応温度および反応時間にて加熱処理を行った。室温まで冷却し15%炭酸水素カリウム水溶液を炭酸水素カリウム換算で酸無水物使用量の4倍モル量となるように加え撹拌し、有機層を回収した。回収した有機層に水15gを加えて水洗し有機層を取得した。得られた有機層を単蒸留装置にて絶対圧力0.2kPaまで減圧し蒸留を行った。
【0056】
得られた生成物をGC法にて分析した。結果を表1中に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示した実施例3~13の結果から、ジヨード含フッ素化合物より得られた含フッ素ジエポキシ化合物および副生した含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物を含む粗製含フッ素ジエポキシ化合物を、まず亜鉛、水、および酸無水物を添加して精製した後、減圧蒸留することで、含フッ素ジエポキシ化合物に含有する、含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物(化合物(4-6a)、化合物(2-6a)、化合物(3-6a))はいずれも十分に減少することが分かる。
また含フッ素ジエポキシ化合物(化合物(1-6a))はいずれも94重量%以上(GC百分率基準)と、純度も十分に高いことが分かる。
【0059】
実施例14 蒸留した粗製1,6-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロヘキサンの精製処理
比較例1で得られた生成物25g(化合物(1-6a) 46.2 mmol)を反応器に加え、気相部を窒素で置換した後に亜鉛0.2g(3.1mmol)を加え、安息香酸無水物を2.6g(11.6 mmol)加え、水を54mg(1.4mmol)加え、100℃で2時間加熱処理を行った。室温まで冷却し15%炭酸水素カリウム水溶液29g(炭酸水素カリウムとして43.6mmol)を加え撹拌し、有機層を回収した。回収した有機層に水15gを加えて水洗し得られた有機層を単蒸留装置にて絶対圧力0.2kPaまで減圧し蒸留を行った。
【0060】
得られた生成物18gをGC法にて分析すると、分析結果は以下の通りであった。
化合物(1-6a):98.5GC%、
化合物(6-6a):0.5GC%、
化合物(4-6a):0.001%、
化合物(2-6a):0.01GC%、
化合物(3-6a):0.002GC%、
化合物(2-6b):0.04GC%、
化合物(3-6b):0.03GC%
【0061】
実施例14の結果から、比較例1に示した蒸留操作だけでは不十分であるところ、さらに亜鉛、水、および酸無水物を添加して精製した後、減圧蒸留することで、含フッ素ジエポキシ化合物に含有する、含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物(化合物(4-6a)、化合物(2-6a)、化合物(3-6a))はいずれも十分に減少することが分かる。
また実施例2と同様に、副生する化合物(2-6b)および化合物(3-6b)についても十分に減少することが分かる。
さらに含フッ素ジエポキシ化合物(化合物(1-6a))は98.5重量%(GC百分率基準)と、純度も極めて高いことが分かる。
【0062】
比較例2~4 粗製1,6-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロヘキサンの精製処理
合成例1で合成した粗製物25g(化合物(1-6a) 46.2 mmol)を反応器に加え、気相部を窒素で置換した後に亜鉛、酸無水物、水を表1に記載の所定量加え、表1記載の反応温度および反応時間にて加熱処理を行った。室温まで冷却し15%炭酸水素カリウム水溶液を表1記載量加え撹拌し、有機層を回収した。回収した有機層に水15gを加えて水洗し有機層を取得した。得られた有機層を単蒸留装置にて絶対圧力0.2kPaまで減圧し蒸留を行った。
【0063】
得られた生成物をGC法にて分析した。結果を表2中に示した。
【0064】
【表2】
【0065】
表2中、比較例2の結果から、ジヨード含フッ素化合物より得られた含フッ素ジエポキシ化合物および副生した含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物を含む粗製含フッ素ジエポキシ化合物について、亜鉛、および酸無水物を添加して精製した後、減圧蒸留しても、含フッ素ヨウ素化合物(化合物(4-6a))はまだかなり残存しており、さらなる精製処理が必要なことが分かる。これは最初の精製工程において、水の添加が必要であることが伺われる。
比較例3の結果から、ジヨード含フッ素化合物より得られた含フッ素ジエポキシ化合物および副生した含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物を含む粗製含フッ素ジエポキシ化合物について、亜鉛、水および酸無水物を添加して精製した後、減圧蒸留しても、含フッ素ジエポキシ化合物の純度は低く(91.2重量%)、含フッ素不飽和アルコール化合物(化合物(2-6a)、化合物(3-6a))はまだかなり残存しており、さらなる精製処理が必要なことが分かる。これは最初の精製工程において、水の添加量が過剰であったか、あるいは他の添加物とのバランスが悪かったことが伺われる。
比較例4の結果から、ジヨード含フッ素化合物より得られた含フッ素ジエポキシ化合物および副生した含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物を含む粗製含フッ素ジエポキシ化合物について、水、および酸無水物を添加して精製した後、減圧蒸留しても、含フッ素ジエポキシ化合物の純度は低く(93.5重量%)、含フッ素ヨウ素化合物(化合物(4-6a))はまだかなり残存しており、さらなる精製処理が必要なことが分かる。これは最初の精製工程において、亜鉛の添加が必要であることが伺われる。
【0066】
以上から、比較例2,3および4のいずれでも、実施例と同じ工程(添加物の添加による工程と蒸留工程)を行っても、その条件次第で含フッ素ジエポキシ化合物(1-6a)の純度や、副生物の含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物の残存に支障が生じることが分かる。このためさらなる精製が必要であるが、精製の時間が長くなると含まれる成分が重合してしまう可能性があるため、効率的な精製ができないおそれがある。
【0067】
実施例15 高純度1,4-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロブタンの取得
合成例2で合成した粗製物50g(化合物(1-4a) 123 mmol)を反応器に加え、気相部を窒素で置換した後に亜鉛1.3g(20.2mmol)を加え、安息香酸無水物を7.0g(30.9 mmol)加え、水を66mg(3.7mmol)加え、100℃で3時間加熱処理を行った。室温まで冷却し15%炭酸水素カリウム水溶液82.6g(炭酸水素カリウムとして123.8mmol)を加え撹拌し、有機層を回収し再度15%炭酸水素カリウム水溶液82.6g(炭酸水素カリウムとして123.8mmol)を加え撹拌し、有機層を回収した。回収した有機層に水25gを加えて水洗し有機層52gを取得した。取得した有機層51gを単蒸留装置にて絶対圧力0.2kPaまで減圧し蒸留を行い、生成物を34g得た。
【0068】
得られた生成物をGC法にて分析すると、分析結果は以下の通りであった。
化合物(1-4a):94.4GC%、
化合物(6-4a):0.3GC%、
化合物(4-4a):0.002GC%、
化合物(2-4a):0.5GC%、
化合物(3-4a):0.4GC%、
化合物(2-4b):0.2GC%、
化合物(3-4b):0.1GC%、
エタノール:未検出
【0069】
実施例15の結果から、粗製含フッ素ジエポキシ化合物に亜鉛、水、および酸無水物を添加して精製した後、減圧蒸留することで、含フッ素ジエポキシ化合物に含有する、含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物(化合物(4-4a)、化合物(2-4a)、化合物(3-4a))はいずれも十分に減少することが分かる。
また実施例2と同様に、副生する化合物(2-4b)および化合物(3-4b)についても十分に減少することが分かる。
さらに含フッ素ジエポキシ化合物(化合物(1-4a))は94.4重量%(GC百分率基準)と、純度も極めて高いことが分かる。
【0070】
また実施例2では粗製1,6-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロヘキサンの精製を行ったが、実施例15では粗製1,4-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロヘキサンであり、いずれも同じ傾向であることがわかる。
【0071】
比較例5 粗製1,4-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロヘキサンの蒸留
合成例2で得られた粗生成物50gを単蒸留装置にて絶対圧力0.2kPaまで減圧し蒸留を行い、生成物を36g得た。
【0072】
得られた生成物をGC法にて分析すると、分析結果は以下の通りであった。
化合物(1-4a):87.8GC%、
化合物(6-4a):0.2GC%、
化合物(4-4a):0.6GC%、
化合物(2-4a):2.6GC%、
化合物(3-4a):1.6GC%、
エタノール:未検出
【0073】
比較例5の結果から、ジヨード含フッ素化合物より得られた含フッ素ジエポキシ化合物および副生した含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物を含む粗製含フッ素ジエポキシ化合物を減圧蒸留しただけでは、副生した含フッ素不飽和アルコール化合物と含フッ素ヨウ素化合物(化合物(4-4a)、化合物(3-4a)、化合物(2-4a))はまだかなり残存しており、さらなる精製処理が必要なことが分かる。
すなわち、含フッ素ジエポキシ化合物(1-4a)は87.8GC%と純度が低く、化合物(4-4a)が0.6GC%、化合物(2-4a)が2.6GC%、化合物(3-4a)が1.6GC%とかなり残存していることから、さらなる精製が必要であることがわかる。しかしながら精製の時間が長くなると含まれる成分が重合してしまう可能性があるため、効率的な精製ができないおそれがある。
【0074】
また比較例1では粗製1,6-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロヘキサンの精製を行ったが、比較例5では粗製1,4-ビス(2’,3’-エポキシプロピル)-パーフルオロヘキサンであり、いずれも同じ傾向であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の方法で得られる高純度含フッ素ジエポキシ化合物は、光学材料、電子材料等の共重合用モノマーとして有用で、高品質が要求される様々な光学材料、電子材料への利用が可能である。
図1