(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155211
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】有機半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
H10K 71/70 20230101AFI20231013BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231013BHJP
H10K 50/81 20230101ALI20231013BHJP
H10K 50/82 20230101ALI20231013BHJP
H10K 85/00 20230101ALI20231013BHJP
H10K 71/40 20230101ALI20231013BHJP
H10K 50/11 20230101ALI20231013BHJP
H10K 30/81 20230101ALI20231013BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20231013BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20231013BHJP
H10K 39/30 20230101ALI20231013BHJP
【FI】
H10K71/70
H10K59/10
H10K50/81
H10K50/82
H10K85/00
H10K71/40
H10K50/11
H10K30/81
H10K50/15
H10K50/16
H10K39/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023062357
(22)【出願日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2022064756
(32)【優先日】2022-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022191594
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023026380
(32)【優先日】2023-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】沼田 智子
(72)【発明者】
【氏名】尾坂 晴恵
(72)【発明者】
【氏名】川上 祥子
(72)【発明者】
【氏名】新宮 崇史
(72)【発明者】
【氏名】夛田 杏奈
(72)【発明者】
【氏名】吉安 唯
(72)【発明者】
【氏名】新倉 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】青山 絵梨子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直明
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
【テーマコード(参考)】
3K107
5F149
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
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3K107CC35
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(57)【要約】
【課題】高精細且つ信頼性が良好な有機半導体デバイスを提供する。
【解決手段】絶縁層上に形成された複数の発光デバイスのうちの一つであって、第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層を有し、前記有機化合物層は、第1の電極と、第2の電極との間に位置し、前記有機化合物層は、第1の化合物を含む層を有し、前記第1の化合物は、示差走査熱量測定において、第1の加熱により溶融した状態から冷却を行い、続けて第2の加熱を行った際、前記冷却過程において発熱ピークが観測されず、且つ、前記第2の加熱過程において発熱ピークと融点ピークが観測されない物質である有機半導体デバイス。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層上に形成された複数の有機半導体デバイスのうちの一つであって、
第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層を有し、
前記有機化合物層は、前記第1の電極と、前記第2の電極との間に位置し、
前記有機化合物層は、前記複数の有機半導体デバイス各々が独立して有する第1の層を含み、
前記第1の層は、第1の化合物を含み、
前記第2の電極は、前記複数の有機半導体デバイスが共有する連続した層であり、
前記第1の電極は、前記複数の有機半導体デバイス各々において独立した層であり、
前記第1の化合物は、
示差走査熱量測定において、25℃以下から第1の加熱を行い、
450℃および示差熱天秤装置で測定した3%重量減少温度(℃)より50℃減じた温度のうち低い方の温度で3分間保持し、
40℃/min以上の冷却速度で冷却を行い、
25℃以下において3分間保持し、
40℃/min以上の昇温速度で前記第1の加熱後の保持温度まで第2の加熱を行った際、
前記冷却過程において観測される発熱ピークのエネルギーが0J/g以上20J/g以下、且つ、前記第2の加熱過程において観測されるベースラインシフトを伴わない吸熱ピークのエネルギーが0J/g以下-20J/g以上となる化合物である有機半導体デバイス。
【請求項2】
絶縁層上に形成された複数の有機半導体デバイスのうちの一つであって、
第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層を有し、
前記有機化合物層は、前記第1の電極と、前記第2の電極との間に位置し、
前記有機化合物層は、前記複数の有機半導体デバイス各々が独立して有する第1の層を含み、
前記第1の層は、第1の化合物を含み、
前記第2の電極は、前記複数の有機半導体デバイスが共有する連続した層であり、
前記第1の電極は、前記複数の有機半導体デバイス各々において独立した層であり、
前記第1の電極と、前記複数の有機半導体デバイスのうち隣接する有機半導体デバイスの有する前記第1の電極との間隔は、2μm以上5μm以下であり、
前記第1の化合物は、
示差走査熱量測定において、
25℃以下から第1の加熱を行い、
450℃および示差熱天秤装置で測定した3%重量減少温度(℃)より50℃減じた温度のうち低い方の温度で3分間保持し、
40℃/min以上の冷却速度で25℃以下まで冷却を行い、
25℃以下において3分間保持し、
40℃/min以上の昇温速度で前記第1の加熱後の保持温度まで第2の加熱を行った際、
前記冷却過程において発熱ピークが観測されず、且つ、前記第2の加熱過程において発熱ピークと融点ピークが観測されない化合物である、
有機半導体デバイス。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1の化合物が、
前記示差走査熱量測定における前記第2の加熱過程において、
0J/g以上20J/g以下の発熱ピークが観測される物質である有機半導体デバイス。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記第1の化合物が、前記第2の加熱過程において、示差走査熱量測定におけるベースラインの吸熱側へのシフトが観測され、且つ前記ベースラインシフトにともない吸熱ピークが検出される物質である有機半導体デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記第1の層は電子を輸送する領域を有し、前記電子を輸送する領域は前記第一の化合物を有する有機半導体デバイス。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項の有機半導体デバイスにおいて、
前記第1の層が形成された後、加熱工程を経て作製された有機半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、有機半導体デバイスに関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、電子機器、照明装置、入力装置(例えば、タッチセンサ)、入出力装置(例えば、タッチパネル)、それらの駆動方法、またはそれらの製造方法を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
近年、表示装置は様々な用途への応用が期待されている。例えば、大型の表示装置の用途としては、家庭用のテレビジョン装置(テレビまたはテレビジョン受信機ともいう)、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、及び、PID(Public Information Display)等が挙げられる。また、携帯情報端末として、タッチパネルを備えるスマートフォン及びタブレット端末などの開発が進められている。
【0004】
また、同時に、表示装置の高精細化も求められている。高精細な表示装置が要求される機器として、例えば、仮想現実(VR:Virtual Reality)、拡張現実(AR:Augmented Reality)、代替現実(SR:Substitutional Reality)、及び、複合現実(MR:Mixed Reality)向けの機器が、盛んに開発されている。
【0005】
表示装置としては、発光デバイス(発光素子ともいう)を有する発光装置が開発されている。エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence、以下ELと記す)現象を利用した発光デバイス(ELデバイス、EL素子ともいう)は、薄型軽量化が容易である、入力信号に対し高速に応答可能である、直流定電圧電源を用いて駆動可能である等の特徴を有し、表示装置に応用されている。
【0006】
有機ELデバイスを用い、より高精細な発光装置を得るために、メタルマスクを用いた蒸着法に代わって、フォトレジストなどを用いたフォトリソグラフィ法による有機層のパターニングが研究されている。フォトリソグラフィ法を用いることによって、EL層の間隔が数μmという高精細な表示装置を得ることができる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のようにフォトリソグラフィ法により加工を行う過程においては、どうしてもある程度の熱をかける工程が必要となる。しかし、有機化合物層の耐熱性が低いことから十分な熱がかけられず、性能(特に表示性能、効率および信頼性)の高い有機半導体デバイスを得ることが困難であった。
【0009】
そこで本発明の一態様は、有機化合物を用いた有機半導体デバイスにおいて、製造工程中における加熱に強い有機半導体デバイスを提供することを目的の一つとする。または、本発明の一態様は、製造工程中における加熱に強い発光デバイスを提供することを目的の一つとする。または、本発明の一態様は、製造工程中における加熱に強いフォトダイオードセンサを提供することを目的の一つとする。
【0010】
または、本発明の一態様は、耐熱性の良好な有機半導体デバイスを提供することを目的の一つとする。本発明の一態様は、耐熱性の良好な発光デバイスを提供することを目的の一つとする。本発明の一態様は、耐熱性の良好なフォトダイオードセンサを提供することを目的の一つとする。または、本発明の一態様は、表示性能の良好な有機半導体デバイスを提供することを目的の一つとする。本発明の一態様は、表示性能の良好な発光デバイスを提供することを目的の一つとする。
【0011】
または、本発明の一態様は、高密度に配置することが可能であり且つ耐熱性または表示性能の良好な発光デバイスを提供することを目的の一つとする。または、本発明の一態様は、高精細な表示装置を提供することが可能であり且つ耐熱性または表示性能の良好な発光デバイスを提供することを目的の一つとする。
【0012】
または、本発明の一態様は、表示性能の高い表示装置を提供することを目的の一つとする。または、本発明の一態様は、高解像度であり且つ表示性能が良好な表示装置を提供することを目的の一つとする。または、本発明の一態様は、表示品質が良好であり且つ表示性能の良好な表示装置を提供することを目的の一つとする。
【0013】
または、新規な表示装置、新規な表示モジュール、新規な電子機器を提供することを目的の一つとする。
【0014】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで本発明の一態様では、特定の測定方法により示差走査熱量測定を行った際、冷却過程において発熱ピークが観測されず、且つ、二度目の加熱過程において発熱ピークと融点ピークが観測されない化合物を用いた有機半導体デバイスを提供する。このような有機半導体デバイスは、作製工程中の加熱に強いため、特性の良好な有機半導体デバイスとすることが可能である。
【0016】
すなわち、本発明の一態様は、絶縁層上に形成された複数の有機半導体デバイスのうちの一つであって、第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層を有し、前記有機化合物層は、第1の電極と、第2の電極との間に位置し、前記有機化合物層は、前記複数の有機半導体デバイス各々が独立して有する第1の層を含み、前記第1の層は、第1の化合物を含み、前記第2の電極は、前記複数の有機半導体デバイスが共有する連続した層であり、前記第1の電極は、前記複数の有機半導体デバイス各々において独立した層であり、前記第1の化合物は、示差走査熱量測定において、25℃以下から第1の加熱を行い、450℃および示差熱天秤装置で測定した3%重量減少温度(℃)より50℃減じた温度のうち低い方の温度で3分保持し、40℃/min以上の冷却速度で25℃以下まで冷却を行い、25℃以下において3分保持し、40℃/min以上の昇温速度で前記第1の加熱後の保持温度まで第2の加熱を行った際、前記冷却過程において発熱ピークが観測されず、且つ、前記第2の加熱過程において発熱ピークと融点ピークが観測されない化合物である、有機半導体デバイスである。
【0017】
または、本発明の他の一態様は、絶縁層上に形成された複数の有機半導体デバイスのうちの一つであって、第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層を有し、前記有機化合物層は、第1の電極と、第2の電極との間に位置し、前記有機化合物層は、前記複数の有機半導体デバイス各々が独立して有する第1の層を含み、前記第1の層は、第1の化合物を含み、前記第2の電極は、前記複数の有機半導体デバイスが共有する連続した層であり、前記第1の電極は、前記複数の有機半導体デバイス各々において独立した層であり、前記第1の化合物は、示差走査熱量測定において、25℃以下から第1の加熱を行い、前記第1の加熱において450℃および示差熱天秤装置で測定した3%重量減少温度(℃)より50℃減じた温度のうち低い方の温度で3分保持し、40℃/min以上の冷却速度で冷却を行い、25℃以下において3分保持し、40℃/min以上の昇温速度で前記第1の加熱後の保持温度まで第2の加熱を行った際、前記冷却過程において発熱ピークが観測されず、且つ、前記第2の加熱過程において観測される融点ピークのエネルギーが0J/g以上20J/g以下となる化合物である有機半導体デバイスである。
【0018】
または、本発明の他の一態様は、絶縁層上に形成された複数の有機半導体デバイスのうちの一つであって、第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層を有し、前記有機化合物層は、第1の電極と、第2の電極との間に位置し、前記有機化合物層は、前記複数の有機半導体デバイス各々が独立して有する第1の層を含み、前記第1の層は、第1の化合物を含み、前記第2の電極は、前記複数の有機半導体デバイスが共有する連続した層であり、前記第1の電極は、前記複数の有機半導体デバイス各々において独立した層であり、前記第1の化合物は、示差走査熱量測定において、25℃以下から第1の加熱を行い、450℃および示差熱天秤装置で測定した3%重量減少温度(℃)より50℃減じた温度のうち低い方の温度で3分保持し、40℃/min以上の冷却速度で冷却を行い、25℃以下において3分保持し、40℃/min以上の昇温速度で前記第1の加熱後の保持温度まで第2の加熱を行った際、前記冷却過程において観測される発熱ピークのエネルギーが0J/g以上20J/g以下、且つ、前記第2の加熱過程において観測されるベースラインシフトを伴わない吸熱ピークのエネルギーが0J/g以下-20J/g以上となる化合物である有機半導体デバイスである。
【0019】
または、本発明の他の一態様は、表示装置に搭載された複数の有機半導体デバイスのうちの一つであって、第1の電極と、第2の電極と、有機化合物層を有し、前記有機化合物層は、第1の電極と、第2の電極との間に位置し、前記有機化合物層は、第1の化合物を含み、前記第2の電極は、前記複数の有機半導体デバイスが共有する連続した層であり、前記第1の電極は、前記複数の有機半導体デバイス各々において独立した層であり、前記第1の化合物は、示差走査熱量測定において、25℃以下から第1の加熱を行い、前記第1の加熱において450℃以下、または示差熱天秤装置で測定した3%重量減少温度(℃)より50℃減じた温度のどちらか低い方の温度で3分の時間保持し、40℃/min以上の冷却速度で冷却を行い、25℃以下において3分の時間保持し、40℃/min以上の昇温速度で前記第1の加熱後の保持温度まで第2の加熱を行った際、前記冷却過程において発熱ピークが観測されず、且つ、前記第2の加熱過程において発熱ピークと融点ピークが観測されない化合物である、有機半導体デバイスである。
【0020】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の電極と、前記複数の有機半導体デバイスのうち隣接する有機半導体デバイスの有する前記第1の電極との間隔が、2μm以上5μm以下である有機半導体デバイスである。
【0021】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記有機化合物層が、前記第1の層と、第2の層との積層構造を有し、前記第2の層は、前記複数の有機半導体デバイスが有する有機化合物層の一部と一続きの連続した層として共有される有機半導体デバイスである。
【0022】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の電極と、前記複数の有機半導体デバイスのうち隣接する有機半導体デバイスの有する前記第1の電極との間隔が、2μm以上5μm以下であり、開口率が30%以上である有機半導体デバイスである。
【0023】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、上記複数の有機半導体デバイスが表示素子として設けられている表示装置の解像度が500ppi以上、開口率が30%以上である有機半導体デバイスである。
【0024】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の化合物が、前記示差走査熱量測定における前記第2の加熱過程において、0J/g以上20J/g以下の発熱ピークが観測される物質である有機半導体デバイスである。
【0025】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の化合物が、前記第2の加熱過程において、示差走査熱量測定におけるベースラインの吸熱側へのシフトが観測される物質である有機半導体デバイスである。
【0026】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の化合物が、前記第2の加熱過程において、示差走査熱量測定におけるベースラインの吸熱側へのシフトが観測され、且つ前記ベースラインシフトにともない吸熱ピークが検出される物質である有機半導体デバイスである。
【0027】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の化合物が、前記第2の加熱過程において、示差走査熱量測定におけるベースラインの吸熱側へのシフトが観測され、且つ前記ベースラインシフトにともない1J/g以上の吸熱ピークが検出される物質である有機半導体デバイスである。
【0028】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の化合物が、前記第2の加熱過程において、示差走査熱量測定におけるベースラインの吸熱側へのシフトが観測され、且つ前記ベースラインシフトにともない吸熱ピークが検出され、前記ピークの温度での前記ベースライン同士の熱量差を1とした場合、前記低温側のベースラインを前記ピークの温度まで伸長した位置と、前記ピークの極大値までの熱量差が2以上である有機半導体デバイスである。
【0029】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の化合物を含む層の膜厚が、10nm以上2000nm以下である有機半導体デバイスである。
【0030】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の層における電子を輸送する領域に、前記第1の化合物を含む層を有する有機半導体デバイスである。
【0031】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の化合物が、ピリミジン環、ピリジン環、ピラジン環、ベンゾフロピリミジン環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、キノキサリン環、ジベンゾキノキサリン環、カルバゾール環、ジベンゾカルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ナフトビスベンゾフラン環、ナフタレン環、フルオレン環、スピロフルオレン環、トリフェニレン環、アントラセン環、アミン、アルミニウム元素、リチウム元素、フッ素、の少なくとも一を有する有機化合物である有機半導体デバイスである。
【0032】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記有機化合物層における正孔を輸送する領域に、前記第1の化合物を含む層を有する有機半導体デバイスである。
【0033】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の化合物が、フェナントレン環、ナフタレン環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、フルオレン環、トリフェニレン環、カルバゾール環、9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]環、スピロ[9H-フルオレン-9,9’-[9H]キサンテン]環、スピロ[9H-フルオレン-9,9’-[9H]チオキサンテン]環、スピロ[アクリジン-9(2H),9’-[9H]フルオレン]環の少なくとも1を有する有機化合物である有機半導体デバイスである。
【0034】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の化合物を含む層は前記第2の層と接する層である有機半導体デバイスである。
【0035】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の層が、さらに第2の化合物を有し、前記第2の化合物が、前記第1の化合物と同様の性質を有する有機半導体デバイスである。
【0036】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の層がさらに第3の化合物を有し、前記第3の化合物が、前記第1の化合物と同様の性質を有する有機半導体デバイスである。
【0037】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の層に含まれる化合物のうち3つ以上の化合物が、前記第1の化合物と同様の性質を有する有機半導体デバイスである。
【0038】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の層の膜厚の半分以上に含まれる化合物が、前記第1の化合物と同様の性質を有する有機半導体デバイスである。
【0039】
または、本発明の他の一態様は、上記いずれかに記載の有機半導体デバイスにおいて、前記第1の化合物を含む層が形成された後、加熱工程を経て作製された有機半導体デバイスである。
【0040】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記第1の化合物のガラス転移温度(Tg)が120℃以上である有機半導体デバイスである。
【0041】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記加熱工程における加熱温度(℃)の値が、Tg(℃)の値の80%以上の値である有機半導体デバイスである。
【0042】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記加熱工程における加熱温度が、(Tg-20)℃以上である有機半導体デバイスである。
【0043】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記有機化合物層が光電変換層を有するフォトダイオードセンサである。
【0044】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、前記有機化合物層が発光層を有する発光デバイスである。
【0045】
または、本発明の他の一態様は、上記の表示装置と、コネクタ及び集積回路のうち少なくとも一方と、を有する、表示モジュールである。
【0046】
または、本発明の他の一態様は、上記の表示モジュールと、筐体、バッテリ、カメラ、スピーカ、及びマイクのうち少なくとも一つと、を有する、電子機器である。
【発明の効果】
【0047】
そこで本発明の一態様では、有機化合物を用いた有機半導体デバイスにおいて、製造工程中における加熱に強い有機半導体デバイスを提供することができる。また、本発明の一態様では、製造工程中における加熱に強い発光デバイスを提供することができる。また、本発明の一態様では、製造工程中における加熱に強いフォトダイオードセンサを提供することができる。
【0048】
また、本発明の一態様では、耐熱性の良好な有機半導体デバイスを提供することができる。また、本発明の一態様では、耐熱性の良好な発光デバイスを提供することができる。また、本発明の一態様では、耐熱性の良好なフォトダイオードセンサを提供することができる。また、本発明の一態様では、表示性能の良好な有機半導体デバイスを提供することができる。また、本発明の一態様では、表示性能の良好な発光デバイスを提供することができる。
【0049】
また、本発明の一態様では、高密度に配置することが可能であり且つ耐熱性または表示性能の良好な発光デバイスを提供することができる。また、本発明の一態様では、高精細な表示装置を提供することが可能であり且つ耐熱性または表示性能の良好な発光デバイスを提供することができる。
【0050】
また、本発明の一態様は、信頼性の高い表示装置を提供することができる。また、本発明の一態様では、高解像度であり且つ表示性能の良好な表示装置を提供することができる。また、本発明の一態様では、表示品質が良好であり且つ表示性能の良好な表示装置を提供することができる。
【0051】
または、新規な表示装置、新規な表示モジュール、新規な電子機器を提供することができる。
【0052】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1(A)はmPPhen2PのDSCにおける降温過程の測定結果、
図1(B)はmPPhen2PのDSCにおける第2の加熱過程の測定結果である。
【
図2】
図2は
図1(B)における110℃乃至200℃の結果を拡大して示した図である。
【
図3】
図3(A)乃至
図3(C)は、発光デバイスについて表す図である。
【
図4】
図4は、発光デバイスについて表す図である。
【
図5】
図5(A)および
図5(B)は、発光装置の上面図および断面図である。
【
図6】
図6(A)乃至
図6(E)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7(A)乃至
図7(D)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
【
図8】
図8(A)乃至
図8(D)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
【
図9】
図9(A)乃至
図9(C)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
【
図21】
図21は、サンプル1およびサンプル2の光学顕微鏡写真である。
【
図22】
図22はmPPhen2PのTG測定より得られた重量減少率を表すグラフである。
【
図23】
図23(A)は2mPCCzPDBqのDSCにおける降温過程の測定結果、
図23(B)は2mPCCzPDBqのDSCにおける第2の加熱過程の測定結果である。
【
図24】
図24(A)はNBPhenのDSCにおける降温過程の測定結果、
図24(B)はNBPhenのDSCにおける第2の加熱過程の測定結果である。
【
図25】
図25(A)はサンプル11(mPPhen2P)の、
図25(B)はサンプル12(2mPCCzPDBq)の、
図25(C)はサンプル13(NBPhen)の顕微鏡写真である。
【
図26】
図26(A)はmTpPPhenのDSCにおける降温過程の測定結果、
図26(B)はmTpPPhenのDSCにおける第2の加熱過程の測定結果である。
【
図27】
図27(A)はPh-TpPhenのDSCにおける降温過程の測定結果、
図27(B)はPh-TpPhenのDSCにおける第2の加熱過程の測定結果である。
【
図28】
図28(A)はPnNPhenのDSCにおける降温過程の測定結果、
図28(B)はPnNPhenのDSCにおける第2の加熱過程の測定結果である。
【
図29】
図29(A)はpTpPPhenのDSCにおける降温過程の測定結果、
図29(B)はpTpPPhenのDSCにおける第2の加熱過程の測定結果である。
【
図30】
図30(A)はPCBFpTP-02のDSCにおける降温過程の測定結果、
図30(B)はPCBFpTP-02のDSCにおける第2の加熱過程の測定結果である。
【
図31】
図31(A)はPCCzPTznのDSCにおける降温過程の測定結果、
図31(B)はPCCzPTznのDSCにおける第2の加熱過程の測定結果である。
【
図32】
図32(A)は4PCCzPBfpmのDSCにおける降温過程の測定結果、
図32(B)は4PCCzPBfpmのDSCにおける第2の加熱過程の測定結果である。
【
図33】
図33(A)および
図33(B)は、PCBFpTP-02の
1H-NMR測定結果である。
【
図34】
図34は、発光デバイス1および比較発光デバイス1の電流密度-電圧特性を表す図である。
【
図35】
図35は、発光デバイス1および比較発光デバイス1のブルーインデックス(BI)-電流密度特性を表す図である。
【
図36】
図36は、発光デバイス1および比較発光デバイス1の電流密度50mA/cm
2における定電流駆動時の駆動時間に対する輝度の変化を測定した結果を表す図である。
【
図37】
図37は、発光デバイス2および比較発光デバイス2の電流密度-電圧特性を表す図である。
【
図38】
図38は、発光デバイス2および比較発光デバイス2のブルーインデックス(BI)-電流密度特性を表す図である。
【
図39】
図39は、発光デバイス2および比較発光デバイス2の電流密度50mA/cm
2における定電流駆動時の駆動時間に対する輝度の変化を測定した結果を表す図である。
【
図40】
図40は、発光デバイス3および比較発光デバイス3の電流密度-電圧特性を表す図である。
【
図41】
図41は、発光デバイス3および比較発光デバイス3のブルーインデックス(BI)-電流密度特性を表す図である。
【
図42】
図42は、発光デバイス3および比較発光デバイス3の電流密度50mA/cm
2における定電流駆動時の駆動時間に対する輝度の変化を測定した結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0055】
なお、本明細書等において、メタルマスク、またはFMM(ファインメタルマスク、高精細なメタルマスク)を用いて作製されるデバイスをMM(メタルマスク)構造のデバイスと呼称する場合がある。また、本明細書等において、メタルマスク、またはFMMを用いることなく作製されるデバイスをMML(メタルマスクレス)構造のデバイスと呼称する場合がある。
【0056】
(実施の形態1)
有機半導体膜を所定の形状に作製する方法の一つとして、メタルマスクを用いた真空蒸着法(マスク蒸着)が広く用いられている。しかし、高密度化、高精細化が進む昨今、マスク蒸着は、合わせ精度の問題、基板との配置間隔の問題に代表される種々の理由により、これ以上の高精細化は限界に近付いている。一方、フォトリソグラフィ法を用いて有機半導体膜の形状を加工することで、より緻密なパターンを有する有機半導体デバイスの実現が期待されている。さらに、フォトリソグラフィ法はマスク蒸着に比べて大面積化も容易であることから、フォトリソグラフィ法を用いた有機半導体膜の加工に関する研究が進められている。
【0057】
しかし、フォトリソグラフィ法を用いて有機半導体膜の形状を加工するためには、多くの問題を乗り越える必要がある。これらの問題としては、例えば、有機半導体膜の大気暴露の影響、感光性樹脂を露光する際の光照射の影響、露光した感光性樹脂を現像する際に曝される現像液および水などの影響を挙げることができる。
【0058】
これらの影響を低減させるために、有機半導体膜上に保護膜を形成する方法がある。この場合、当該保護膜成膜時にある程度の加熱(約80℃から120℃)を行うことで、当該保護膜を緻密でバリア性の高い膜、または面内均一性の高い膜とすることができる。逆にいうと、低温で形成された保護膜の性能は十分とは言い難いものである。
【0059】
しかし、有機半導体材料、特に蒸着により成膜を行うことが可能な化合物は、蒸着後に熱工程がなければ良好な特性のデバイスが得られていた化合物であっても、上述のように蒸着後に熱が加わるような作製工程を経るデバイスにおいては、膜が変質し、良好な特性を有する有機半導体デバイスが得られないことがあった。
【0060】
一般に有機ELデバイス、有機フォトダイオードセンサなどの有機半導体デバイスでは、その耐熱性は、用いられる有機化合物のガラス転移温度(Tg)によって評価されることが多い。しかしTgが高くとも、有機層が電極に挟まれていない状態で加熱工程を経ると、それがそのTgよりも十分低い温度であっても、デバイスの特性が悪化してしまう場合がある。また、逆にTgが比較的低くともTg以下なら加熱による特性変化が起きにくい化合物も存在するため、単にTgのみで耐熱性の良好な有機半導体デバイスを得ることが可能な化合物を判断するのは難しい。つまり有機層に自由界面が存在する状態における加熱工程が必要である有機半導体デバイスでは、用いられる有機化合物のTgとデバイスの耐熱性の乖離が大きい。
【0061】
そこで本発明者らは、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry:DSC)法を用い、特定の手順で測定を行った際、特定の測定結果を示す化合物(第1の化合物)を用いた有機半導体デバイスが、製造工程中における加熱に強く良好な特性を有する有機半導体デバイスとできることを見出した。
【0062】
なおここでいう加熱に強いとは、加熱に対する耐性があることを示し、主に形状変化、膜質変化、電気特性変化が小さいことをさす。
【0063】
具体的には、固体(粉末)状態の化合物でDSC測定を行い、少なくとも加熱(第1の加熱)により十分に溶融させた状態から冷却し、再度加熱(第2の加熱)を行う。この際、冷却過程において
図1(A)のように発熱ピークが観測されず、且つ第2の加熱過程において
図1(B)のように発熱ピークと融点ピークとが観測されない化合物(第1の化合物)を用いることによって、製造工程中における加熱に強く、また、良好な特性を有する有機半導体デバイスを得ることができる。なお、第1の加熱過程における測定結果は、これまでの様々な熱履歴を反映した結果が現れることがあり、評価が困難になるため、本発明における判断には用いていない。
【0064】
上記DSCの結果において冷却過程における発熱ピークは溶融状態からの結晶化を、第2の加熱過程における発熱ピークは冷結晶化を、融点ピークは結晶の溶融をそれぞれ示唆するシグナルである。このようなピークが観測されない化合物を用いることによって、加熱および冷却によって有機半導体膜に大きな構造変化が起きにくく、加熱工程に強い、耐熱性が良好な有機半導体デバイスを作製することが可能となる。
【0065】
なお、冷却過程における発熱ピークの観測において、冷却開始直後のピークは、装置起因のピークであるため除外し、25℃以下まで冷却しても発熱ピークが観測されない場合に観測されないと判断する。なお、発熱ピークが観測されないとは、発熱ピークのエネルギーが0J/gである場合の他に、0J/gより大きく20J/g以下のエネルギーの発熱ピークが存在する場合も含むものとする。なお、発熱ピークが存在する場合、0J/gより大きく5J/g以下だとより好ましく、発熱ピークは存在しないことが最も好ましい。また、特に冷却速度が速い場合に、60℃以下の領域において吸熱側へのピークがみられる場合があるが、これは装置の冷却能の問題で、冷却プログラム速度に実試料温度が追従できない場合に現れる意味のないピークであるため、本発明の一態様においては無視するものとする。その場合は、冷却速度を小さくし、ピークがないことを確認しておくとよい。
【0066】
ピークのエネルギーは、ピークの始めと終わりをつなぎ、仮定のベースラインを想定し、当該仮定したベースラインとピークとに囲まれた部分の面積から算出することができる。
【0067】
また、第2の加熱において、融点ピークが観測されないとは、融点ピークのエネルギーが0J/gである場合の他に、-20J/g以上0J/g未満のエネルギーの融点ピークが存在する場合も含むものとする。なお、融点ピークが存在する場合、-5J/gより大きく0J/g以下であることが好ましく、融点ピークは存在しないことが最も好ましい。また、第2の加熱において、発熱ピークが観測されないとは、発熱ピークのエネルギーが0J/gである場合の他に、0J/gより大きく20J/g以下のエネルギーの発熱ピークが存在する場合も含むものとする。5J/g以下だとより好ましく、0J/gが最も好ましい。
【0068】
また、DSCを行う際の、冷却過程における降温速度、および第2の加熱過程における昇温速度は各々40℃/min以上200℃/min以下として測定するものとする。なお、冷却過程における降温速度は40℃/min以上200℃/min以下であることが好ましい。
【0069】
なお、上記DSCにおいて、第1の加熱過程および第2の加熱過程の最高温度は、高すぎると気化、昇華、分解などに伴うピークが発生し次の加熱工程において正確な判断ができなくなる懸念がある。そのため、DSCの最高温度は、対象とする化合物を熱重量測定(Thermogravimetry:TG測定)して得られた3%重量減少温度よりも50℃以上低い温度、好ましくは3%重量減少温度よりも100℃以上低い温度とすることが好ましい。代表的には3%重量減少温度よりも50℃低い温度で測定すればよい。この温度であれば、大気圧下ではおおむね昇華しない温度と判断できる。また、3%重量減少温度-150℃よりは高い温度までは測定しておくことが好ましい。
【0070】
なお、TG測定を行わない場合、DSCの最高温度については、測定を行う化合物のガラス転移点の温度(℃)の値の3倍の値の温度(℃)以下を目安としておくと良い。また、有機化合物の真空蒸着温度の上限を考慮すると、450℃まで測定すれば十分である。また、同様に金属錯体は350℃まで測定すれば十分である。ただし、前記450℃未満、あるいは350℃未満で昇華、蒸発、分解などが起きる有機化合物または有機金属錯体は、昇華、蒸発、分解などが起きる温度よりも30℃以上、好ましくは50℃以上低い温度までを測定温度範囲とする事が好ましい。代表的には昇華、蒸発、分解などが起きる温度より30℃低い温度で測定すればよい。ある温度範囲の測定において、昇華、蒸発、分解などが起こっているかいないか判断する場合は、測定後に同一サンプルを用いて引き続き同じ測定条件(昇温条件および測定温度範囲)で再測定し、サイクル特性が直前の測定と同じであるか、つまりベースラインが重なるかを確認すると良い。重ならない場合は、直前の測定で昇華、蒸発、分解などが起こった可能性があるため、測定温度範囲の上限温度をより低い温度として再測定する必要があると考えられる。
【0071】
なお、DSCの測定温度範囲における最高温度は、上述のようにTG測定をあらかじめ行うことによって判断することが好ましい。
【0072】
また、上記DSCにおいて、冷却過程における最低温度は、ガラス転移温度(Tg)以下であることが好ましく、例えば25℃以下、好ましくは-10℃である。
【0073】
上記DSCにおいて、十分に溶融した状態から冷却過程に入るために、第1の加熱過程と冷却過程との間で上記最高温度における保持時間を設けることが好ましい。この際の保持時間としては、1分以上10分以下が好ましく、3分がより好ましい。
【0074】
また、同様に、測定対象の化合物の温度が均一になった状態から第2の加熱過程に入るために、冷却過程と第2の加熱過程との間で上記最低温度における保持時間を設けることが好ましい。この際の保持時間としては1分以上10分以下が好ましく、3分がより好ましい。
【0075】
DSC測定を実施する場合の、測定対象の化合物の質量は、一定の昇温速度において均一な熱伝導を得るために、適した量とするのが好ましい。測定対象となる内部の化合物の温度ムラを低減させるにはより少ないサンプル量が好まれるが、一方で感度を得るためにサンプル量が多い方が好ましい。これらの理由から、具体的には、5mm乃至10mmφのサンプル容器に0.1mg以上、10mg以下が好ましく、明確にピークを得るためには1mg以上5mg以下が、更に好ましい。適した量の化合物を用いてDSCを測定することで、融点やガラス転移点、結晶化温度のピークが明確に再現性良く観測することができると考えられる。
【0076】
本明細書におけるDSC測定では、測定対象となる化合物はDSC測定において重量変化を伴わない温度範囲および環境で測定を行う。従って、DSC測定は、酸素などの大気成分との反応を抑制するために、窒素など不活性雰囲気下で測定し、また、分解温度よりも十分に低い温度、例えば分解温度の50℃以上低い温度以下において測定をするのが好ましい。
【0077】
上記DSCの結果において、第1の化合物は第2の加熱過程で、ベースラインの吸熱側へのシフトが観測される化合物であることが好ましい。当該シフトが起きる温度はガラス転移温度(Tg)であり、すなわち、第1の化合物はTgが観測される化合物であることが好ましい。なお、Tgが高い方が、耐熱性が良好となる傾向があるため好ましい。具体的には、第1の化合物のTgは100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。
【0078】
また、第1の化合物はこのベースラインのシフトに伴って1J/g以上、好ましくは3J/g以上、より好ましくは5J/g以上の吸熱ピークが観測される化合物であることが好ましい。このピークはエンタルピー緩和を示唆するピークである。このようなエンタルピー緩和を示す材料は、示さない材料に比べ、よりエネルギー的に安定なガラスを形成することが可能であるため、膜質が安定化し、フォトリソグラフィー工程に必要な加熱工程およびパターニング加工に強い膜となるため好ましい材料である。
【0079】
エンタルピー緩和のエネルギーは、
図2のようにシフト後のベースラインを延長した線とDSCチャートの曲線に囲まれた領域の面積により算出することができる。なお、複数のピークがある場合はそれらを全て合算したものをエンタルピー緩和のエネルギーとみなすものとする。
【0080】
以上のような第1の化合物を用いた有機半導体デバイスは、製造工程中における加熱に強い有機半導体デバイスとすることが可能である。有機半導体デバイスとしては例えば、TFT、発光デバイス、フォトダイオードセンサなどを挙げることができる。
【0081】
なお、有機半導体デバイスは、少なくとも、一対の電極(第1の電極、第2の電極)と、当該一対の電極間に挟まれた有機化合物層を有するが、第1の化合物は、当該有機化合物層に含まれる。
【0082】
ここで、有機半導体デバイスが平面上に複数並べて設けられた半導体装置(例えば表示装置またはイメージセンサ)において、画素電極と共通電極を有する場合には、第1の電極が複数の有機半導体デバイス各々において独立した画素電極、第2の電極が複数の有機半導体デバイスにおいて一続きの連続した層として共有される共通電極であるものとする。この際、有機化合物層が、個々の有機半導体デバイス毎に独立して設けられた第1の層と、複数の有機半導体デバイスに渡って連続して設けられている第2の層との積層構造を有する場合には、当該第1の化合物は第1の層に含まれていることが好ましい。
【0083】
なお、有機化合物層または第1の層が、隣接する半導体デバイス間において重なりを有さない構成、すなわち隣り合う半導体デバイスの有機化合物層間、または隣り合う半導体デバイスの第1の層間に間隙を有する構成である場合、隣接する半導体デバイスへのクロストークを抑制できるため、本構成は特に有効であり好ましい。それは隣接する半導体デバイス間が2μm以下と非常に近い場合に特に有効である。
【0084】
また、第1の層は第1の電極側に設けられ、第2の層は第2の電極側に設けられる。また、第1の層は、第1の電極に接することが好ましく、第2の層は第2の電極に接することが好ましく、第1の層と第2の層は接していることが好ましい。
【0085】
なお、第1の化合物は、有機化合物層および第1の層内において、層状に分布し、第1の化合物を含む層が形成されていることが好ましい。
【0086】
また、有機化合物層を、フォトリソグラフィ法により加工する場合、有機半導体デバイスを非常に高密度(第1の電極の間隔が2μm乃至5μm程度)に配置することができる。当該有機半導体デバイスが表示デバイス(発光デバイス)の場合、500ppi以上且つ開口率30%以上の非常に高精細な表示装置を提供することができる。また、100ppi以上且つ開口率40%以上の非常に高精細な表示装置を提供することができる。また3000ppi以上且つ開口率30%以上、さらには50%以上の非常に高精細な表示装置を提供することができる。
【0087】
なお、有機化合物層は、フォトリソグラフィ法により加工される際、保護膜の形成、レジストの焼成、脱水ベークなどの工程において、熱が加えられる。また、高性能な保護膜の形成または確実な脱水のためには、なるべく高い温度をかける必要があるため、第1の化合物は、フォトリソグラフィ法により加工される層である有機化合物層または第1の層に含まれていることが好ましい。
【0088】
また、加熱の際に自由表面となる面を有する膜は、当該表面に位置する原子のエネルギーが高いことからバルクの膜よりも熱の影響を受けやすい傾向があるため、加熱の際に自由表面となる面を有する膜、すなわち有機化合物層の最も第2の電極側の層、または第1の層と第2の層を有する場合には、第1の層における第2の層と接する層に第1の化合物が含まれていることが好ましい。この第2の層と接する第1の化合物を含む層は、発光層または活性層ではないことが、パターニング工程のダメージを低減でき、効率または信頼性が良好となり、好ましい。
【0089】
なお、自由表面を有する有機化合物層は、膜質不良や特性不良を避けるため、この自由表面へのゴミの付着を可能な限り避けるのが好ましい。例えば、自由表面を有する有機化合物層が形成された基板はクリーンルームなどで作製・保管するのが好ましく、クリーンルームのクリーン度の目安はクラス1000以下の高い清浄度が好ましく、より好ましくはクラス100以下の高い清浄度である。また、自由表面を有する有機化合物層は、膜質不良(膜質変化や膜の形状変化)や、最終的に得られる有機半導体素子の特性不良を避けるため、空気(酸素や水分)にさらす時間を可能な限り短くすることが好ましく、空気にさらさないことが最も好ましい。また、自由表面を有する有機化合物層上に設ける保護層または上部電極は、自由表面を有する有機化合物層形成後に迅速に積層するのが好ましい。自由表面を有する有機化合物層形成後に、保護層または上部電極の形成を行うまでの間の時間が長くなる場合は、自由表面を有する有機化合物層が形成された基板を、窒素などの不活性雰囲気下で保存する事が好ましい。また、保管の期間は7日間以下とするのが好ましい。換言すると、本発明の一態様の構成であれば、数日間、有機化合物層の自由表面がある状態にあっても、良好な膜質を維持することができる。
【0090】
また、第1の化合物が含まれている層数、または層に含まれている量が多い方が、第1の層が自由表面を有する場合の加熱の際に、加熱に強くなり、好ましい。
【0091】
以上のような第1の化合物を用いた有機半導体デバイスは、製造工程中における加熱に強く良好な特性(特に表示性能、効率および信頼性)を有する有機半導体デバイスとすることができる。
【0092】
具体的には、加熱工程における加熱温度が、第1の化合物のTg-20℃程度の加熱またはTgの80%以上の加熱を行っても不都合が起きにくい有機半導体デバイスとすることができる。
【0093】
また、第1の化合物は、有機化合物層内または第1の層内において発光層よりも第2の電極側に設けられていることが好ましく、電子輸送性を有する有機化合物であることが好ましい。電子輸送性を有する有機化合物としては、π電子不足型複素芳香環骨格を有する有機化合物を挙げることができる。π電子不足型複素芳香環骨格を有する有機化合物としては、含窒素複素芳香族骨格を有する化合物、例えばポリアゾール骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物およびトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物が好ましい。
【0094】
中でも、含窒素複素六員環骨格を有する化合物が、電子輸送性が高く安定であり好ましく、特に、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)を有する複素芳香環を含む有機化合物またはピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。さらに、ピリミジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ピラジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物およびトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0095】
また、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾオキサゾール骨格、キノリン骨格、キノキサリン骨格、ジベンゾキノキサリン骨格、カルバゾール骨格、ジベンゾカルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、スピロフルオレン骨格、トリフェニレン骨格、アントラセン骨格、アミン、アルミニウム元素、リチウム元素、フッ素、の少なくとも一を有する有機化合物であることが好ましい。
【0096】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の有機半導体デバイス、特に発光デバイスについて詳しく説明する。
【0097】
図3(A)は、本発明の一態様の発光デバイスの模式図である。発光デバイスは絶縁体175上に、第1の電極101が設けられており、第1の電極101と、第2の電極102との間に有機化合物層103を有している。有機化合物層103には、実施の形態1で説明したような第1の化合物が含まれており、また、少なくとも発光層113を有している。発光層113は、発光物質を含む層であり、第1の電極101と第2の電極102との間に電圧をかけることによって発光する。
【0098】
第1の化合物は、有機化合物層103のいずれの層に含まれていてもよいが、発光デバイスの作製工程中の加熱処理が行われる際に、自由表面となる層に含まれていることが好ましい。具体的には、電子輸送層114または正孔ブロック層に含まれていることが好ましい。
【0099】
なお、実施の形態1で説明したような第1の化合物と同様の性質を有する第2の化合物、第3の化合物が有機化合物層103にさらに含まれていてもよい。別言すると、第1の化合物は複数の異なる化合物であってもよい。また、有機化合物層103を構成する物質の全てが実施の形態1で説明したような第1の化合物と同様の性質を有する化合物で構成されていてもよい。
【0100】
第1の化合物の特性をもつ化合物は、有機化合物層103の膜厚の30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは100%の層に含まれると好ましい。この場合、それぞれの化合物を含む層の膜厚は、飛行時間型二次イオン質量分析法(ToF-SIMS)で基板に対して深さ方向で解析するなどで見積もることができる。また各層での第1の化合物の特性をもつ化合物の含有量は、50%以上、さらに好ましくは80%以上含まれると好ましい。また同様に、有機化合物層に対する含有量では、30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上含まれると好ましい。この場合、含有量は溶液として高速液体クロマトグラフィー(HPLC)での吸収強度比、屈折率強度比などで見積もることができる。
【0101】
有機化合物層103は発光層113の他に、
図3(A)に示したように、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層114および電子注入層115などの機能層を有していることが好ましい。なお、有機化合物層103には、正孔ブロック層、電子ブロック層、励起子ブロック層、電荷発生層など、上述した機能層以外の機能層が含まれていてもよい。また、逆に、上述した層のいずれかの層が設けられていなくてもよい。
【0102】
なお、本実施の形態においては、第1の電極101は陽極を含む電極、第2の電極102は陰極を含む電極であるものとして記載しているが、これは逆でも構わない。また、第1の電極101および第2の電極102は、単層構造または積層構造として形成され、積層構造を有する場合、有機化合物層103に触れる層が陽極または陰極として機能する。電極が積層構造である場合、有機化合物層103に触れる層以外の層に仕事関数に関する制約はなく、抵抗値、加工利便性、反射率、透光性および安定性など要求される特性に応じて材料を選択すればよい。
【0103】
陽極は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム-酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化スズ(ITSO:Indium Tin Silicon Oxide)、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル-ゲル法などを応用して作製しても構わない。作製方法の例としては、酸化インジウム-酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1~20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成する方法などがある。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5~5wt%、酸化亜鉛を0.1~1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することもできる。この他に、陽極に用いられる材料は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、アルミ(Al)または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。またこれらを積層した層を陽極としても良い。例えば、Ti上にAl、Ti、ITSOの順に積層した膜は、反射率が良好なため高効率で、数千ppiの高精細化が可能なため、好ましい。又は、陽極に用いられる材料として、グラフェンも用いることができる。なお、後述する正孔注入層111を構成することが可能な複合材料を陽極と接する層(代表的には正孔注入層)として用いることで、仕事関数に関わらず、電極材料を選択することができるようになる。
【0104】
正孔注入層111は、陽極に接して設けられ、正孔を有機化合物層103に注入しやすくする機能を有する。正孔注入層111は、フタロシアニン(略称:H2Pc)等のフタロシアニン系の化合物、銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の錯体化合物、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、またはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/(ポリスチレンスルホン酸)(略称:PEDOT/PSS)等の高分子等によって形成することができる。
【0105】
また、正孔注入層111は電子のアクセプタ性を有する物質により形成してもよい。アクセプタ性を有する物質としては、電子吸引基(ハロゲン基、シアノ基など)を有する有機化合物を用いることができ、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)、2-(7-ジシアノメチレン-1,3,4,5,6,8,9,10-オクタフルオロ-7H-ピレン-2-イリデン)マロノニトリル等を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基、シアノ基など)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。アクセプタ性を有する物質としては以上で述べた有機化合物以外にも、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の遷移金属酸化物を用いることができる。
【0106】
また、正孔注入層111は、上記アクセプタ性を有する材料と、正孔輸送性を有する有機化合物とを含む複合材料により形成することが好ましい。
【0107】
複合材料に用いる正孔輸送性を有する有機化合物としては、芳香族アミン化合物、複素芳香族化合物、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる正孔輸送性を有する有機化合物としては、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する有機化合物であることが好ましい。複合材料に用いられる正孔輸送性を有する有機化合物は、縮合芳香族炭化水素環、または、π電子過剰型複素芳香環を有する化合物であることが好ましい。縮合芳香族炭化水素環としては、アントラセン環、ナフタレン環等が好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環としては、ピロール骨格、フラン骨格、チオフェン骨格の少なくともいずれか1を環に含む縮合芳香環が好ましく、具体的にはカルバゾール環、ジベンゾチオフェン環あるいはそれらにさらに芳香環または複素芳香環が縮合した環が好ましい。
【0108】
このような正孔輸送性を有する有機化合物としては、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格のいずれかを有していることがより好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであっても良い。なお、これら正孔輸送性を有する有機化合物が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有する物質であると、寿命の良好な発光デバイスを作製することができるため好ましい。
【0109】
以上のような正孔輸送性を有する有機化合物としては、具体的には、N-(4-ビフェニル)-6,N-ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BnfABP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)、4,4’-ビス(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:BnfBB1BP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-アミン(略称:BBABnf(6))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf(8))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン-4-アミン(略称:BBABnf(II)(4))、N,N-ビス[4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-4-アミノ-p-ターフェニル(略称:DBfBB1TP)、N-[4-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-N-フェニル-4-ビフェニルアミン(略称:ThBA1BP)、4-(2-ナフチル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)、4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNBi)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7-フェニル)ナフチル-2-イルトリフェニルアミン(略称:BBAPβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(4;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(5;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB-02)、4-(4-ビフェニリル)-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNB)、4-(3-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:mTPBiAβNBi)、4-(4-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNBi)、4-フェニル-4’-(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBA1BP)、4,4’-ビス(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBB1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]トリフェニルアミン(略称:YGTBi1BP)、4’-[4-(3-フェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]トリス(1,1’-ビフェニル-4-イル)アミン(略称:YGTBi1BP-02)、4-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:YGTBiβNB)、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBNBSF)、N,N-ビス([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:BBASF)、N,N-ビス([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:BBASF(4))、N-(1,1’-ビフェニル-2-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:oFBiSF)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ジベンゾフラン-4-アミン(略称:FrBiF)、N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-N-[3-(6-フェニルジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-1-ナフチルアミン(略称:mPDBfBNBN)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-[4-(9-フェニルフルオレン-9-イル)フェニル]トリフェニルアミン(略称:BPAFLBi)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-4-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-3-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-2-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-1-アミン、N-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAFLP(2))、N-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-2-アミン(略称:PCAFLP(2)-02)等を挙げることができる。
【0110】
また、正孔輸送性を有する材料としては、その他芳香族アミン化合物として、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を用いることもできる。
【0111】
正孔注入層111を形成することによって、正孔の注入性が良好となり、駆動電圧の小さい発光デバイスを得ることができる。
【0112】
なお、アクセプタ性を有する物質の中でもアクセプタ性を有する有機化合物は蒸着が容易で成膜がしやすいため、用いやすい材料である。
【0113】
なお、正孔注入層111に用いられる材料が第1の化合物であってもよい。
【0114】
正孔輸送層112は、正孔輸送性を有する有機化合物を含んで形成される。正孔輸送性を有する有機化合物としては、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有していることが好ましい。
【0115】
上記正孔輸送性を有する材料としては、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:TPD)、N,N’-ビス(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、9,9’-ビス(ビフェニル-4-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:BisBPCz)、9,9’-ビス(1,1’-ビフェニル-3-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:BismBPCz)、9-(1,1’-ビフェニル-3-イル)-9’-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:mBPCCBP)、9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)、9-(3-ビフェニル)-9’-(2-ナフチル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:βNCCmBP)、9-(4-ビフェニル)-9’-(2-ナフチル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:βNCCBP)、9,9’-ジ-2-ナフチル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール(略称:BisβNCz)、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-3-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-3-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-5’-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-フェニル-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール(略称:PCCzTp)、9,9’-ビス(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(4-ビフェニル)-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(トリフェニレン-2-イル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、などのカルバゾール骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。なお、正孔注入層111の複合材料に用いられる正孔輸送性を有する材料として挙げた物質も正孔輸送層112を構成する材料として好適に用いることができる。
【0116】
なお、正孔輸送層112に用いられる材料が第1の化合物であってもよい。この際、当該第1の化合物としては、フェナントレン環、ナフタレン環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、フルオレン環、トリフェニレン環、カルバゾール環、9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]環、スピロ[9H-フルオレン-9,9’-[9H]キサンテン]環、スピロ[9H-フルオレン-9,9’-[9H]チオキサンテン]環、スピロ[アクリジン-9(2H)、9’-[9H]フルオレン]環の少なくとも1を有する有機化合物であることが好ましく、特に下記一般式(G1)乃至(G3)で表される化合物であることが好ましい。
【0117】
【0118】
ただし、上記一般式(G1)において、Ar1は置換もしくは無置換の炭素数6乃至13のアリーレン基、または置換もしくは無置換の炭素数2乃至14のヘテロアリーレン基を表し、Ar2は、置換または無置換の炭素数6乃至12のアリール基、置換または無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、および置換または無置換の炭素数3乃至20のシクロアルキル基のいずれか一を表し、A1及びA2は、それぞれ独立に水素、重水素、置換または無置換の炭素数1乃至20のアルキル基、置換または無置換の炭素数1乃至20のシクロアルキル基、および置換または無置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基のいずれか一を表し、A1とA2は互いに結合して環を形成していてもよい。なお、A1およびA2が、水素および重水素以外であることによって、立体性が増すため一般式(G1)で表される有機化合物のアモルファス性が向上する。A1およびA2はアルキル基であることが、よりアモルファス性が向上するため好ましい。また、A1およびA2はアルキル基であることで溶媒への溶解性または昇華性が向上し、高純度な化合物を得やすいという効果もある。
【0119】
また、R1、R2、R4乃至R26及びR28は、それぞれ独立に水素、重水素、置換または無置換の炭素数6乃至30のアリール基、置換または無置換の炭素数1乃至20のアルキル基、置換または無置換の炭素数3乃至20のシクロアルキル基、および置換または無置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基のいずれか一を表す。なお、R3がアリール基であると、アモルファス性が低下し、熱物性が悪化するため、R3は、水素、重水素、置換または無置換の炭素数1乃至20のアルキル基、置換または無置換の炭素数3乃至20のシクロアルキル基、および置換または無置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基のいずれか一を表し、特に重水素は励起状態が安定となり、信頼性の観点から好ましい。例外として、R3が炭素数11乃至30の縮環構造を有するアリール基である場合は、立体性が増すため好ましい構成である。nは1乃至4のいずれかの整数を表す。
【0120】
【0121】
ただし、上記一般式(G2)において、Ar1は置換もしくは無置換の炭素数6乃至13のアリーレン基、または置換もしくは無置換の炭素数2乃至14のヘテロアリーレン基を表し、Ar2は、置換または無置換の炭素数6乃至12のアリール基、置換または無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、および置換または無置換の炭素数3乃至20のシクロアルキル基のいずれか一を表し、A1及びA2は、それぞれ独立に水素、重水素、置換または無置換の炭素数1乃至20のアルキル基、置換または無置換の炭素数1乃至20のシクロアルキル基、および置換または無置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基のいずれか一を表し、A1とA2は互いに結合して環を形成していてもよい。なお、A1およびA2が、水素および重水素以外であることによって、立体性が増すため一般式(G1)で表される有機化合物のアモルファス性が向上する。A1およびA2はアルキル基であることが、よりアモルファス性が向上するため好ましい。また、A1およびA2はアルキル基であることで溶媒への溶解性または昇華性が向上し、高純度な化合物を得やすいという効果もある。
【0122】
また、R1、R2、R4乃至R26及びR28は、それぞれ独立に水素、重水素、置換または無置換の炭素数6乃至30のアリール基、置換または無置換の炭素数1乃至20のアルキル基、置換または無置換の炭素数3乃至20のシクロアルキル基、および置換または無置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基のいずれか一を表す。なお、R3がアリール基であると、アモルファス性が低下して熱物性が悪化するため、R3は、水素、重水素、置換または無置換の炭素数1乃至20のアルキル基、置換または無置換の炭素数3乃至20のシクロアルキル基、および置換または無置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基のいずれか一を表し、特に重水素は励起状態が安定となり、信頼性の観点から好ましい。例外として、R3が炭素数11乃至30の縮環構造を有するアリール基である場合は、立体性が増すため好ましい構成である。nは1乃至4のいずれかの整数を表す。
【0123】
【0124】
ただし、上記一般式(G3)において、Ar1は置換もしくは無置換の炭素数6乃至13のアリーレン基、または置換もしくは無置換の炭素数2乃至14のヘテロアリーレン基を表し、Ar2は、置換または無置換の炭素数6乃至12のアリール基、置換または無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、および置換または無置換の炭素数3乃至20のシクロアルキル基のいずれか一を表し、A1及びA2はそれぞれ独立に、水素、重水素、置換または無置換の炭素数1乃至20のアルキル基、置換または無置換の炭素数1乃至20のシクロアルキル基、および置換または無置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基のいずれか一を表し、A1とA2は互いに結合して環を形成していてもよい。なお、A1およびA2が、水素および重水素以外であることによって、立体性が増すため一般式(G1)で表される有機化合物のアモルファス性が向上する。A1およびA2はアルキル基であることが、よりアモルファス性が向上するため好ましい。また、A1およびA2はアルキル基であることで溶媒への溶解性または昇華性が向上し、高純度な化合物を得やすいという効果もある。
【0125】
また、R1、R2、R4乃至R26及びR28は、それぞれ独立に水素、重水素、置換または無置換の炭素数6乃至30のアリール基、置換または無置換の炭素数1乃至20のアルキル基、置換または無置換の炭素数3乃至20のシクロアルキル基、および置換または無置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基のいずれか一を表す。なお、R3がアリール基であると、アモルファス性が低下して熱物性が悪化するため、R3は、水素、重水素、置換または無置換の炭素数1乃至20のアルキル基、置換または無置換の炭素数3乃至20のシクロアルキル基、および置換または無置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基のいずれか一を表し、特に重水素は励起状態が安定となり、信頼性の観点から好ましい。例外として、R3が炭素数11乃至30の縮環構造を有するアリール基である場合は、立体性が増すため好ましい構成である。nは1乃至4のいずれかの整数を表す。
【0126】
なお、上記一般式(G1)乃至一般式(G3)において、R1、R2、R4乃至R26及びR28は、水素、重水素および炭素数1乃至6のアルキル基のいずれか一が好ましく、R1乃至R24及びR26乃至R28は全て水素であることがより好ましい。
【0127】
また、上記一般式(G1)乃至一般式(G3)において、Ar1は、置換または無置換の炭素数6乃至13のアリーレン基が好ましく、置換または無置換のフェニレン基がより好ましく、フェニレン基がさらに好ましい。
【0128】
また、上記一般式(G1)乃至一般式(G3)において、Ar2は、置換または無置換の炭素数6乃至12のアリール基が好ましく、置換または無置換のフェニル基であることがより好ましく、フェニル基であることがさらに好ましい。
【0129】
また、上記一般式(G1)乃至一般式(G3)において、A1およびA2は各々独立に水素、重水素、および置換または無置換の炭素数1乃至6のアルキル基のいずれか一が好ましく、炭素数1乃至6のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0130】
発光層は発光物質とホスト材料を有していることが好ましい。なお、発光層は、その他の材料を同時に含んでいても構わない。また、組成の異なる2層の積層であってもよい。
【0131】
発光物質は蛍光発光物質であっても、りん光発光物質であっても、熱活性化遅延蛍光(TADF)を示す物質であっても、その他の発光物質であっても構わない。
【0132】
発光層において、蛍光発光物質として用いることが可能な材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。また、これ以外の蛍光発光物質も用いることができる。
【0133】
5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、5,12-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、N,N’-ジフェニル-N,N’-(1,6-ピレン-ジイル)ビス[(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-03)、3,10-ビス[N-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)-02)、3,10-ビス[N-(ジベンゾフラン-3-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10FrA2Nbf(IV)-02)などが挙げられる。特に、1,6FLPAPrnおよび1,6mMemFLPAPrn、1,6BnfAPrn-03のようなピレンジアミン化合物に代表される縮合芳香族ジアミン化合物は、ホールトラップ性が高く、発光効率または信頼性に優れているため好ましい。
【0134】
発光層において、発光物質としてりん光発光物質を用いる場合、用いることが可能な材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0135】
トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(mpptz-dmp)3])、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz)3])、トリス[4-(3-ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrptz-3b)3])のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1-mp)3])、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1-Me)3])のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、fac-トリス[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrpim)3])、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmpimpt-Me)3])のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CF3ppy)2(pic)])、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。これらは青色のりん光発光を示す化合物であり、450nmから520nmまでの波長域において発光のピークを有する化合物である。
【0136】
また、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)3])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)3])、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[6-(2-ノルボルニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(nbppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpmppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)2(acac)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-Me)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-iPr)2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)3])、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)2(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)2(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)3])、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)3])、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)2(acac)])、[2-d3-メチル-8-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(5-d3-メチル-2-ピリジニル-κN2)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(5mppy-d3)2(mbfpypy-d3))、[2-(メチル-d3)-8-[4-(1-メチルエチル-1-d)-2-ピリジニル-κN]ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-7-イル-κC]ビス[5-(メチル-d3)-2-[5-(メチル-d3)-2-ピリジニル-κN]フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(5mtpy-d6)2(mbfpypy-iPr-d4))、[2-d3-メチル-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)2(mbfpypy-d3))、[2-(4-メチル-5-フェニル-2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)2(mdppy))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは主に緑色のりん光発光を示す化合物であり、500nmから600nmまでの波長域において発光のピークを有する。なお、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性または発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。
【0137】
また、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dibm)])、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dpm)])、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(d1npm)2(dpm)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(acac)])、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(piq)3])、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)2(acac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)3(Phen)])、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは、赤色のりん光発光を示す化合物であり、600nmから700nmまでの波長域において発光のピークを有する。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られる。
【0138】
また、以上で述べたりん光性化合物の他、公知のりん光性化合物を選択し、用いてもよい。
【0139】
TADF材料としてはフラーレン及びその誘導体、アクリジン及びその誘導体、エオシン誘導体等を用いることができる。またマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、以下の構造式に示されるプロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(SnF2(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(PtCl2OEP)等も挙げられる。
【0140】
【0141】
また、以下の構造式に示される2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:PCCzTzn)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)、等のπ電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環の一方または両方を有する複素環化合物も用いることができる。該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が共に高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ピリジン骨格、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、およびトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため好ましい。特に、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格はアクセプタ性が高く、信頼性が良好なため好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の少なくとも一を有することが好ましい。なお、フラン骨格としてはジベンゾフラン骨格が、チオフェン骨格としてはジベンゾチオフェン骨格が、それぞれ好ましい。また、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、インドロカルバゾール骨格、ビカルバゾール骨格、3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格が特に好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環の電子供与性とπ電子不足型複素芳香環の電子受容性が共に強くなり、S1準位とT1準位のエネルギー差が小さくなるため、熱活性化遅延蛍光を効率よく得られることから特に好ましい。なお、π電子不足型複素芳香環の代わりに、シアノ基のような電子吸引基が結合した芳香環を用いても良い。また、π電子過剰型骨格として、芳香族アミン骨格、フェナジン骨格等を用いることができる。また、π電子不足型骨格として、キサンテン骨格、チオキサンテンジオキサイド骨格、オキサジアゾール骨格、トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、アントラキノン骨格、フェニルボラン、ボラントレン等の含ホウ素骨格、ベンゾニトリルまたはシアノベンゼン等のニトリル基またはシアノ基を有する芳香環、複素芳香環、ベンゾフェノン等のカルボニル骨格、ホスフィンオキシド骨格、スルホン骨格等を用いることができる。このように、π電子不足型複素芳香環およびπ電子過剰型複素芳香環の少なくとも一方の代わりにπ電子不足型骨格およびπ電子過剰型骨格を用いることができる。
【0142】
【0143】
なお、TADF材料とは、S1準位とT1準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起エネルギーから一重項励起エネルギーへエネルギーを変換することができる機能を有する材料である。そのため、三重項励起エネルギーをわずかな熱エネルギーによって一重項励起エネルギーにアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態を効率よく生成することができる。また、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる。
【0144】
また、2種類の物質で励起状態を形成する励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスまたはExciplexともいう)は、S1準位とT1準位との差が極めて小さく、三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換することが可能なTADF材料としての機能を有する。
【0145】
なお、T1準位の指標としては、低温(例えば77Kから10K)で観測されるりん光スペクトルを用いればよい。TADF材料としては、その蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS1準位とし、りん光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをT1準位とした際に、そのS1とT1の差が0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以下であることがさらに好ましい。
【0146】
また、TADF材料を発光物質として用いる場合、ホスト材料のS1準位はTADF材料のS1準位より高い方が好ましい。また、ホスト材料のT1準位はTADF材料のT1準位より高いことが好ましい。
【0147】
発光層のホスト材料としては、電子輸送性を有する材料および/または正孔輸送性を有する材料、上記TADF材料など様々なキャリア輸送材料を用いることができる。
【0148】
正孔輸送性を有する材料としては、アミン骨格、π電子過剰型複素芳香環骨格を有する有機化合物などが好ましい。π電子過剰型複素芳香環としては、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格の少なくともいずれか1を環に含む縮合芳香環が好ましく、具体的にはカルバゾール環、ジベンゾチオフェン環あるいはそれらにさらに芳香環または複素芳香環が縮合した環が好ましい。
【0149】
このような正孔輸送性を有する有機化合物としては、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格のいずれかを有していることがより好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであっても良い。なお、これら正孔輸送性を有する有機化合物が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有する物質であると、寿命の良好な発光デバイスを作製することができるため好ましい。
【0150】
このような有機化合物としては、例えば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:TPD)、N,N’-ビス(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)などのカルバゾール骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物またはカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。また、正孔輸送層における、正孔輸送性を有する材料の例として挙げた有機化合物も用いることができる。
【0151】
電子輸送性を有する材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-7cm2/Vs以上好ましくは1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性が高い物質であれば、これら以外のものを用いることができる。
【0152】
電子輸送性を有する材料としては例えば、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物が好ましい。π電子不足型複素芳香環骨格を有する有機化合物としては、例えばポリアゾール骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物およびトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物を挙げることができる。
【0153】
中でも、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)を有する複素芳香環を含む有機化合物またはピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンまたはピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。また、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格はアクセプター性が高く、信頼性が良好なため好ましい。
【0154】
π電子不足型複素芳香環骨格を有する有機化合物としては、例えば、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)などのアゾール骨格を有する有機化合物、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)、バソフェナントロリン(略称:Bphen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、2,9-ジ(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBphen)、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)、2-[3-(2-トリフェニレニル)フェニル]-1,10-フェナントロリン(略称:mTpPPhen)、2-フェニル-9-(2-トリフェニレニル)-1,10-フェナントロリン(略称:Ph-TpPhen)、2-[4-(9-フェナントレニル)-1-ナフタレニル]-1,10-フェナントロリン(略称:PnNPhen)、2-[4-(2-トリフェニレニル)フェニル]-1,10-フェナントロリン(略称:pTpPPhen)などのピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3-(3’-ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-3,1’-ビフェニル-1-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mpPCBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、及び6-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq-II)、9-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mDBtBPNfpr)、9-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-4-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9pmDBtBPNfpr)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)、9,9’-[ピリミジン-4,6-ジイルビス(ビフェニル-3,3’-ジイル)]ビス(9H-カルバゾール)(略称:4,6mCzBP2Pm)、8-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8BP-4mDBtPBfpm)、3,8-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ベンゾフロ[2,3-b]ピラジン(略称:3,8mDBtP2Bfpr)、4,8-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4,8mDBtP2Bfpm)、8-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)(1,1’-ビフェニル-3-イル)]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8mDBtBPNfpm)、8-[(2,2’-ビナフタレン)-6-イル]-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8(βN2)-4mDBtPBfpm)、2,2’-(ピリジン-2,6-ジイル)ビス(4-フェニルベンゾ[h]キナゾリン)(略称:2,6(P-Bqn)2Py)、2,2’-(ピリジン-2,6-ジイル)ビス{4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-6-フェニルピリミジン}(略称:2,6(NP-PPm)2Py)、6-(1,1’-ビフェニル-3-イル)-4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニルピリミジン(略称:6mBP-4Cz2PPm)、2,6-ビス(4-ナフタレン-1-イルフェニル)-4-[4-(3-ピリジル)フェニル]ピリミジン(略称:2,4NP-6PyPPm)、4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニル-6-(1,1’-ビフェニル-4-イル)ピリミジン(略称:6BP-4Cz2PPm)、7-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)キナゾリン-2-イル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:PC-cgDBCzQz)などのジアジン骨格を有する有機化合物、2-[(1,1’-ビフェニル)-4-イル]-4-フェニル-6-[9,9’-スピロビ(9H-フルオレン)-2-イル]-1,3,5-トリアジン(略称:BP-SFTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn-02)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)、2-[3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-1,1’-ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mFBPTzn)、5-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-7,7-ジメチル-5H,7H-インデノ[2,1-b]カルバゾール(略称:mINc(II)PTzn)、2-{3-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mDBtBPTzn)、2,4,6-トリス(3’-(ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:TmPPPyTz)、2-[3-(2,6-ジメチル-3-ピリジニル)-5-(9-フェナントレニル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mPn-mDMePyPTzn)、11-[4-(ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル]-11,12-ジヒドロ-12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール(略称:BP-Icz(II)Tzn)、2-[3’-(トリフェニレン-2-イル)-1,1’-ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mTpBPTzn)、3-[9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-2-ジベンゾフラニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCDBfTzn)、2-[1,1’-ビフェニル]-3-イル-4-フェニル-6-(8-[1,1’:4’,1’’-ターフェニル]-4-イル-1-ジベンゾフラニル)-1,3,5-トリアジン(略称:mBP-TPDBfTzn)などのトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物が挙げられる。また、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物またはピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンまたはピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0155】
ホスト材料として用いることが可能なTADF材料としては、先にTADF材料として挙げたものを同様に用いることができる。TADF材料をホスト材料として用いると、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが、逆項間交差によって一重項励起エネルギーに変換され、さらに発光物質へエネルギー移動することで、発光デバイスの発光効率を高めることができる。このとき、TADF材料がエネルギードナーとして機能し、発光物質がエネルギーアクセプターとして機能する。
【0156】
これは、上記発光物質が蛍光発光物質である場合に、非常に有効である。また、このとき、高い発光効率を得るためには、TADF材料のS1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。また、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。したがって、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のT1準位より高いことが好ましい。
【0157】
また、蛍光発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈するTADF材料を用いることが好ましい。そうすることで、TADF材料から蛍光発光物質への励起エネルギーの移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため、好ましい。
【0158】
また、効率良く三重項励起エネルギーから逆項間交差によって一重項励起エネルギーが生成されるためには、TADF材料でキャリア再結合が生じることが好ましい。また、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが蛍光発光物質の三重項励起エネルギーに移動しないことが好ましい。そのためには、蛍光発光物質は、蛍光発光物質が有する発光団(発光の原因となる骨格)の周囲に保護基を有すると好ましい。該保護基としては、π結合を有さない置換基が好ましく、飽和炭化水素が好ましく、具体的には炭素数3以上10以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上10以下のトリアルキルシリル基が挙げられ、保護基が複数あるとさらに好ましい。π結合を有さない置換基は、キャリアを輸送する機能に乏しいため、キャリア輸送またはキャリア再結合に影響をほとんど与えずに、TADF材料と蛍光発光物質の発光団との距離を遠ざけることができる。ここで、発光団とは、蛍光発光物質において発光の原因となる原子団(骨格)を指す。発光団は、π結合を有する骨格が好ましく、芳香環を含むことが好ましく、縮合芳香環または縮合複素芳香環を有すると好ましい。縮合芳香環または縮合複素芳香環としては、フェナントレン骨格、スチルベン骨格、アクリドン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格等が挙げられる。特にナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格を有する蛍光発光物質は蛍光量子収率が高いため好ましい。
【0159】
蛍光発光物質を発光物質として用いる場合、ホスト材料としては、アントラセン骨格を有する材料が好適である。アントラセン骨格を有する物質を蛍光発光物質のホスト材料として用いると、発光効率、耐久性共に良好な発光層を実現することが可能である。ホスト材料として用いるアントラセン骨格を有する物質としては、ジフェニルアントラセン骨格、特に9,10-ジフェニルアントラセン骨格を有する物質が化学的に安定であるため好ましい。また、ホスト材料がカルバゾール骨格を有する場合、正孔の注入・輸送性が高まるため好ましいが、カルバゾールにベンゼン環がさらに縮合したベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾールよりもHOMOが0.1eV程度浅くなり、正孔が入りやすくなるためより好ましい。特に、ホスト材料がジベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾールよりもHOMOが0.1eV程度浅くなり、正孔が入りやすくなる上に、正孔輸送性にも優れ、耐熱性も高くなるため好適である。したがって、さらにホスト材料として好ましいのは、9,10-ジフェニルアントラセン骨格およびカルバゾール骨格(あるいはベンゾカルバゾール骨格またはジベンゾカルバゾール骨格)を同時に有する物質である。なお、上記の正孔注入・輸送性の観点から、カルバゾール骨格に換えて、ベンゾフルオレン骨格またはジベンゾフルオレン骨格を用いてもよい。このような物質の例としては、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン(略称:2mBnfPPA)、9-フェニル-10-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)ビフェニル-4’-イル]アントラセン(略称:FLPPA)、9-(1-ナフチル)-10-[4-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN-βNPAnth)、9-(1-ナフチル)-10-(2-ナフチル)アントラセン(略称:α,βADN)、2-(10-フェニルアントラセン-9-イル)ジベンゾフラン、2-(10-フェニル-9-アントラセニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン(略称:Bnf(II)PhA)、9-(2-ナフチル)-10-[3-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:βN-mβNPAnth)、1-[4-(10-[1,1’-ビフェニル]-4-イル-9-アントラセニル)フェニル]-2-エチル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:EtBImPBPhA)、等が挙げられる。特に、CzPA、cgDBCzPA、2mBnfPPA、PCzPAは非常に良好な特性を示すため、好ましい選択である。
【0160】
なお、ホスト材料は複数種の物質を混合した材料であっても良く、混合したホスト材料を用いる場合は、電子輸送性を有する材料と、正孔輸送性を有する材料とを混合することが好ましい。電子輸送性を有する材料と、正孔輸送性を有する材料を混合することによって、発光層113の輸送性を容易に調整することができ、再結合領域の制御も簡便に行うことができる。正孔輸送性を有する材料と電子輸送性を有する材料の含有量の重量比は、正孔輸送性を有する材料:電子輸送性を有する材料=1:19~19:1とすればよい。
【0161】
なお、上記混合された材料の一部として、りん光発光物質を用いることができる。りん光発光物質は、発光物質として蛍光発光物質を用いる際に蛍光発光物質へ励起エネルギーを供与するエネルギードナーとして用いることができる。
【0162】
また、これら混合された材料同士で励起錯体を形成しても良い。当該励起錯体は発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈する励起錯体を形成するような組み合わせを選択することで、エネルギー移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため好ましい。また、当該構成を用いることで駆動電圧も低下するため好ましい。
【0163】
なお、励起錯体を形成する材料の少なくとも一方は、りん光発光物質であってもよい。そうすることで、三重項励起エネルギーを逆項間交差によって効率よく一重項励起エネルギーへ変換することができる。
【0164】
効率よく励起錯体を形成する材料の組み合わせとしては、正孔輸送性を有する材料のHOMO準位が電子輸送性を有する材料のHOMO準位以上であると好ましい。また、正孔輸送性を有する材料のLUMO準位が電子輸送性を有する材料のLUMO準位以上であると好ましい。なお、材料のLUMO準位およびHOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定される材料の電気化学特性(還元電位および酸化電位)から導出することができる。
【0165】
なお、励起錯体の形成は、例えば正孔輸送性を有する材料の発光スペクトル、電子輸送性を有する材料の発光スペクトル、およびこれら材料を混合した混合膜の発光スペクトルを比較し、混合膜の発光スペクトルが、各材料の発光スペクトルよりも長波長シフトする(あるいは長波長側に新たなピークを持つ)現象を観測することにより確認することができる。あるいは、正孔輸送性を有する材料の過渡フォトルミネッセンス(PL)、電子輸送性を有する材料の過渡PL、及びこれら材料を混合した混合膜の過渡PLを比較し、混合膜の過渡PL寿命が、各材料の過渡PL寿命よりも長寿命成分を有する、あるいは遅延成分の割合が大きくなるなどの過渡応答の違いを観測することにより、確認することができる。また、上述の過渡PLは過渡エレクトロルミネッセンス(EL)と読み替えても構わない。すなわち、正孔輸送性を有する材料の過渡EL、電子輸送性を有する材料の過渡EL及びこれらの混合膜の過渡ELを比較し、過渡応答の違いを観測することによっても、励起錯体の形成を確認することができる。
【0166】
電子輸送層114は、電子輸送性を有する物質を含む層である。電子輸送性を有する材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-7cm2/Vs以上好ましくは1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性が高い物質であれば、これら以外のものを用いることができる。なお、上記有機化合物としてはπ電子不足型複素芳香環を有する有機化合物が好ましい。π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物としては、例えばポリアゾール骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物およびトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物のいずれかまたは複数であることが好ましい。
【0167】
上記電子輸送層114に用いることが可能な電子輸送性を有する有機化合物としては、上記発光層113における電子輸送性を有する有機化合物として用いることが可能な有機化合物を同様に用いることができる。中でも、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物またはピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンまたはピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。特に、mTpPPhen、PnNPhenおよびmPPhen2Pなどのフェナントロリン骨格を有する有機化合物が好ましく、mPPhen2Pなどのフェナントロリン二量体構造を有する有機化合物が安定性に優れより好ましい。
【0168】
なお、第1の化合物は、電子輸送層114に含まれていることが好ましく、上記例示または公知の材料の中から実施の形態1において、第1の化合物として説明したような特性を有する材料を、電子輸送層114を構成する材料として用いればよい。第1の化合物としては、例えば、mTpPPhen、PnNPhenおよびmPPhen2Pが好ましい。
【0169】
また、第1の化合物が電子輸送層に含まれる場合、下記一般式(G6)で表される有機化合物であることが好ましい。
【0170】
【0171】
ただし、前記一般式(G6)において、R1乃至R8は、それぞれ独立に水素、重水素、置換または無置換の炭素数6乃至30のアリール基、置換または無置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基、置換または無置換の炭素数1乃至10のアルキル基、置換または無置換の炭素数3乃至10のシクロアルキル基、置換または無置換の炭素数1乃至10のアルコキシ基、シアノ基、ハロゲン、および置換または無置換の炭素数1乃至10のハロゲン化アルキル基のいずれか一を表し、R1乃至R8の内少なくとも1は、下記一般式(g1)または(g2)との結合を表す。
【0172】
【0173】
ただし、前記一般式(g1)および(g2)において、R10およびR20は、前記一般式(G6)との結合を表し、R11乃至R13並びにR15、及び、R21乃至R22並びにR24乃至R27は、それぞれ独立に水素、重水素、置換または無置換の炭素数6乃至30のアリール基、置換または無置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基、置換または無置換の炭素数1乃至10のアルキル基、置換または無置換の炭素数3乃至10のシクロアルキル基、置換または無置換の炭素数1乃至10のアルコキシ基、シアノ基、ハロゲン、および置換または無置換の炭素数1乃至10のハロゲン化アルキル基のいずれか一を表し、R14およびR23はそれぞれ独立に置換または無置換の炭素数6乃至30のアリール基および置換または無置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0174】
また、第1の化合物は下記一般式(G6-1)または下記一般式(G6-2)で表される有機化合物であるとガラス転移点が高く、高い電子輸送性が期待できるため、より好ましい。
【0175】
【0176】
ただし、前記一般式(G6-1)または前記一般式(G6-2)において、R1乃至R7は、それぞれ独立に水素、重水素、置換または無置換の炭素数6乃至30のアリール基、置換または無置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基、置換または無置換の炭素数1乃至10のアルキル基、置換または無置換の炭素数3乃至10のシクロアルキル基、置換または無置換の炭素数1乃至10のアルコキシ基、シアノ基、ハロゲン、および置換または無置換の炭素数1乃至10のハロゲン化アルキル基のいずれか一を表し、R11乃至R13及びR15、及びR21乃至R22、及びR24乃至R27は、それぞれ独立に水素、重水素、置換または無置換の炭素数6乃至30のアリール基、置換または無置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基、置換または無置換の炭素数1乃至10のアルキル基、置換または無置換の炭素数3乃至10のシクロアルキル基、置換または無置換の炭素数1乃至10のアルコキシ基、シアノ基、およびハロゲン、置換または無置換の炭素数1乃至10のハロゲン化アルキル基のいずれか一を表し、R14またはR23は、置換もしくは無置換の炭素数6乃至30のアリール基、または置換もしくは無置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基を表す。
【0177】
なお、上記一般式(g1)および(g2)で表される基および前記一般式(G6-1)または前記一般式(G6-2)において、R14またはR23は置換または無置換の炭素数10乃至30のアリール基または置換または無置換のヘテロアリール基であることが熱による凝集を抑制できるため好ましく、無置換の炭素数14乃至30のアリール基であることが熱による凝集を抑制できるためより好ましい。上記一般式(g1)および(g2)で表される基および前記一般式(G6-1)または前記一般式(G6-2)における、R14またはR23としては、具体的には、置換または無置換のトリフェニレン、置換または無置換のフェナントレン、置換または無置換のナフタレン、置換または無置換のアントラセン、置換または無置換のテトラセン、置換または無置換のフェナントロリン、および置換または無置換の9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]のいずれかであることが好ましい。
【0178】
また、第1の化合物は、下記一般式(G7)で表される有機化合物であることが高い電子輸送性が期待できるため好ましい。
【0179】
【0180】
ただし前記一般式(G7)において、X1およびX2は各々独立に窒素原子または炭素原子を表す。また、R30乃至R32はそれぞれ独立に、置換または無置換の炭素数6乃至30のアリール基、置換または無置換の炭素数2乃至30のヘテロアリール基であり、R30乃至R32の内少なくとも1は、置換または無置換の炭素数14乃至30のアリール基、または置換または無置換の炭素数14乃至30のヘテロアリール基、置換または無置換の炭素数25乃至30のスピロ環構造を含むアリール基、置換または無置換の炭素数14乃至30のスピロ環構造を含むヘテロアリール基を表す。
【0181】
なお、電子輸送層114は積層構造を有していてもよい。また、積層構造を有する電子輸送層114における発光層113に接する層は、正孔ブロック層として機能してもよい。発光層に接する電子輸送層を正孔ブロック層として機能させる場合には、そのHOMO準位が、発光層113に含まれる材料のHOMO準位よりも0.5eV以上深い材料を用いることが好ましい。
【0182】
電子注入層115としては、8-ヒドロキシキノリナト-リチウム(略称:Liq)のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物もしくは錯体、または1,1’-ピリジン-2,6-ジイル-ビス(1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン)(略称:hpp2Py)などを含む層を設けても良い。電子注入層115は、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたものを用いてもよい。
【0183】
また、電子注入層115の代わりに電荷発生層116を設けても良い(
図3(B))。電荷発生層116は、電位をかけることによって当該層の陰極側に接する層に正孔を、陽極側に接する層に電子を注入することができる層のことである。電荷発生層116には、少なくともP型層117が含まれる。P型層117は、上述の正孔注入層111を構成することができる材料として挙げた複合材料を用いて形成することが好ましい。またP型層117は、複合材料を構成する材料として上述したアクセプタ材料を含む膜と正孔輸送材料を含む膜とを積層して構成しても良い。P型層117に電位をかけることによって、電子輸送層114に電子が、陰極に正孔が注入され、有機EL素子が動作する。また、本発明の一態様の有機化合物は屈折率が低い有機化合物であることから、P型層117に用いることによって、外部量子効率の良好な有機EL素子を得ることができる。
【0184】
なお、電荷発生層116はP型層117の他に電子リレー層118及び電子注入バッファ層119のいずれか一又は両方がもうけられていることが好ましい。
【0185】
電子リレー層118は少なくとも電子輸送性を有する物質を含み、電子注入バッファ層119とP型層117との相互作用を防いで電子をスムーズに受け渡す機能を有する。電子リレー層118に含まれる電子輸送性を有する物質のLUMO準位は、P型層117におけるアクセプタ性物質のLUMO準位と、電子輸送層114における電荷発生層116に接する層に含まれる物質のLUMO準位との間であることが好ましい。電子リレー層118に用いられる電子輸送性を有する物質におけるLUMO準位の具体的なエネルギー準位は-5.0eV以上、好ましくは-5.0eV以上-3.0eV以下とするとよい。なお、電子リレー層118に用いられる電子輸送性を有する物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属-酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0186】
電子注入バッファ層119には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウム、炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0187】
また、電子注入バッファ層119が、電子輸送性を有する物質とドナー性物質を含んで形成される場合には、ドナー性物質として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウム、炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性を有する物質としては、先に説明した電子輸送層114を構成する材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0188】
第2の電極102は、陰極を含む電極である。第2の電極102は、積層構造を有していてもよく、その場合、有機化合物層103と接する層が陰極として機能する。陰極を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、リチウム(Li)またはセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等の元素周期表の第1族または第2族に属する元素、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、化合物(フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)など)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、第2の電極102と電子輸送層との間に、電子注入層115または上述仕事関数の小さい材料の薄膜を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化スズ等様々な導電性材料を陰極として用いることができる。
【0189】
なお、第2の電極102を可視光に対し透過性を有する材料で形成した場合、第2の電極102側から光を発する発光デバイスとすることができる。
【0190】
これら導電性材料は、真空蒸着法またはスパッタリング法などの乾式法、インクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である。また、ゾル-ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペーストを用いて湿式法で形成してもよい。
【0191】
また、有機化合物層103の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法またはスピンコート法など用いても構わない。
【0192】
また上述した各電極または各層を異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0193】
続いて、複数の発光ユニットを積層した構成の有機ELデバイス(積層型素子、タンデム型素子ともいう)の態様について、
図3(C)を参照して説明する。この有機EL素子は、陽極と陰極との間に、複数の発光ユニットを有する有機EL素子である。一つの発光ユニットは、
図3(A)で示した有機化合物層103とほぼ同様な構成を有する。つまり、
図3(C)で示す有機EL素子は複数の発光ユニットを有する有機EL素子であり、
図3(A)又は
図3(B)で示した有機EL素子は、1つの発光ユニットを有する有機EL素子であるということができる。
【0194】
図3(C)において、第1の電極501と第2の電極502との間には、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512が積層されており、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512との間には電荷発生層513が設けられている。第1の電極501と第2の電極502はそれぞれ
図3(A)における第1の電極101と第2の電極102に相当し、
図3(A)の説明で述べたものと同じものを適用することができる。また、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512は同じ構成であっても異なる構成であってもよい。
【0195】
電荷発生層513は、第1の電極501と第2の電極502に電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入する機能を有する。すなわち、
図3(C)において、陽極の電位の方が陰極の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電荷発生層513は、第1の発光ユニット511に電子を注入し、第2の発光ユニット512に正孔を注入するものであればよい。
【0196】
電荷発生層513は、
図3(B)にて説明した電荷発生層116と同様の構成で形成することが好ましい。有機化合物と金属酸化物の複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。なお、発光ユニットの陽極側の面が電荷発生層513に接している場合は、電荷発生層513が発光ユニットの正孔注入層の役割も担うことができるため、発光ユニットは正孔注入層を設けなくとも良い。
【0197】
また、電荷発生層513に電子注入バッファ層119を設ける場合、当該電子注入バッファ層119が陽極側の発光ユニットにおける電子注入層の役割を担うため、陽極側の発光ユニットには必ずしも電子注入層を形成する必要はない。
【0198】
図3(C)では、2つの発光ユニットを有する有機EL素子について説明したが、3つ以上の発光ユニットを積層した有機EL素子についても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る有機EL素子のように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層513で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さらに長寿命な素子を実現できる。また、低電圧駆動が可能で消費電力が低い発光装置を実現することができる。
【0199】
また、それぞれの発光ユニットの発光色を異なるものにすることで、有機EL素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光ユニットを有する有機EL素子において、第1の発光ユニットで赤と緑の発光色、第2の発光ユニットで青の発光色を得ることで、有機EL素子全体として白色発光する有機EL素子を得ることも可能である。
【0200】
また、上述の有機化合物層103、第1の発光ユニット511、第2の発光ユニット512及び電荷発生層などの各層および電極は、例えば、蒸着法(真空蒸着法を含む)、液滴吐出法(インクジェット法ともいう)、塗布法、グラビア印刷法等の方法を用いて形成することができる。また、それらは低分子材料、中分子材料(オリゴマー、デンドリマーを含む)、または高分子材料を含んでも良い。
【0201】
図4には、本発明の一態様の表示装置に含まれる、隣り合う二つの発光デバイス(発光デバイス130a、発光デバイス130b)の図を示した。
【0202】
発光デバイス130aは、絶縁層175上の第1の電極101aと、対向する第2の電極102との間に有機化合物層103aを有している。有機化合物層103aは、正孔注入層111a、正孔輸送層112a、発光層113a、電子輸送層114a、電子注入層115を有する構成を示したが、異なる積層構造を有する層であってもよい。
【0203】
発光デバイス130bは、絶縁層175上の第1の電極101bと、対向する第2の電極102との間に有機化合物層103bを有している。有機化合物層103bは、正孔注入層111b、正孔輸送層112b、発光層113b、電子輸送層114b、電子注入層115を有する構成を示したが、異なる積層構造を有する層であってもよい。
【0204】
なお、電子注入層115および第2の電極102は発光デバイス130aおよび発光デバイス130bで一続きの共有された層であることが好ましい。また、電子注入層115以外の有機化合物層103aと有機化合物層103bは、電子輸送層114aが形成された後と、電子輸送層114bが形成された後に各々フォトリソグラフィ法により加工されているため互いに独立している。また、電子注入層115以外の有機化合物層103aの端部(輪郭)は、フォトリソグラフィ法により加工されているため基板に対して垂直方向に概略一致している。また、電子注入層115以外の有機化合物層103bの端部(輪郭)は、フォトリソグラフィ法により加工されているため基板に対して垂直方向に概略一致している。この際、フォトリソグラフィ工程に伴う加熱工程は、電子輸送層114aおよび電子輸送層114bが形成された後に行われることから、第1の化合物は、電子輸送層114aおよび電子輸送層114bに含まれていることが好ましい。
【0205】
また、第1の電極101aと第1の電極101bとの間の距離dは、有機化合物層をフォトリソグラフィ法により加工することからマスク蒸着を行う際よりも小さくすることができ、2μm以上5μm以下とすることができる。
【0206】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の有機半導体デバイスが、表示装置の表示素子として用いることが可能な発光デバイスである形態について説明する。
【0207】
発光デバイス130は
図5(A)および
図5(B)に例示したように、絶縁層175上に複数形成され表示装置100を構成する。
【0208】
表示装置100は、複数の画素178がマトリクス状に配列された画素部177を有する。画素178は、副画素110R、副画素110G、及び副画素110Bを有する。
【0209】
本明細書等において、例えば副画素110R、副画素110G、及び副画素110Bに共通する事項を説明する場合には、副画素110と呼称して説明する場合がある。アルファベットで区別する他の構成要素についても、これらに共通する事項を説明する場合には、アルファベットを省略した符号を用いて説明する場合がある。
【0210】
副画素110Rは赤色の光を呈し、副画素110Gは緑色の光を呈し、副画素110Bは青色の光を呈する。これにより、画素部177に画像を表示することができる。なお、本実施の形態では、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の副画素を例に挙げて説明するが、その他の色の副画素の組み合わせを用いてもよい。また、副画素は3つに限られず、4つ以上としてもよい。4つの副画素としては、例えば、R、G、B、白色(W)の4色の副画素、R、G、B、Yの4色の副画素、及び、R、G、B、赤外光(IR)の4つの副画素、等が挙げられる。
【0211】
本明細書等において、行方向をX方向、列方向をY方向という場合がある。X方向とY方向は交差し、例えば垂直に交差する。
【0212】
図5(A)では、異なる色の副画素がX方向に並べて配置されており、同じ色の副画素が、Y方向に並べて配置されている例を示す。なお、異なる色の副画素がY方向に並べて配置され、同じ色の副画素が、X方向に並べて配置されていてもよい。
【0213】
画素部177の外側には、接続部140が設けられ、領域141が設けられていてもよい。領域141は画素部177と接続部140の間に設けられる。また、接続部140には、導電層151Cが設けられる。
【0214】
図5(A)では、領域141、及び接続部140が画素部177の右側に位置する例を示すが、領域141、及び接続部140の位置は特に限定されない。また、領域141、及び接続部140は、単数であっても複数であってもよい。
【0215】
図5(B)は、
図5(A)における一点鎖線A1-A2間の断面図の例である。
図5(B)に示すように、表示装置100は、絶縁層171と、絶縁層171上の導電層172と、絶縁層171上、及び導電層172上の絶縁層173と、絶縁層173上の絶縁層174と、絶縁層174上の絶縁層175と、を有する。絶縁層171は、基板(図示せず)上に設けられる。絶縁層175、絶縁層174、及び絶縁層173には、導電層172に達する開口が設けられ、当該開口を埋め込むようにプラグ176が設けられている。
【0216】
画素部177において、絶縁層175及びプラグ176上に、発光デバイス130が設けられる。また、発光デバイス130を覆うように、保護層131が設けられている。保護層131上には、樹脂層122によって基板120が貼り合わされている。また、隣り合う発光デバイス130の間には、無機絶縁層125と、無機絶縁層125上の絶縁層127と、が設けられていることが好ましい。
【0217】
図5(B)では、無機絶縁層125及び絶縁層127の断面が複数示されているが、表示装置100を上面から見た場合、無機絶縁層125及び絶縁層127は、それぞれ1つに繋がっていることが好ましい。つまり、絶縁層127は、第1の電極上に開口部を有する絶縁層であることが好ましい。
【0218】
図5(B)では、発光デバイス130として、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bを示している。発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bは、互いに異なる色の光を発するものとする。例えば、発光デバイス130Rは赤色の光を発することができ、発光デバイス130Gは緑色の光を発することができ、発光デバイス130Bは青色の光を発することができる。また、発光デバイス130R、発光デバイス130G、又は発光デバイス130Bは、他の可視光又は赤外光を発してもよい。
【0219】
本発明の一態様の表示装置は、例えば発光デバイスが形成されている基板とは反対方向に光を射出する上面射出型(トップエミッション型)とすることができる。なお、本発明の一態様の表示装置は、下面射出型(ボトムエミッション型)であってもよい。
【0220】
発光デバイス130Rは、実施の形態1または実施の形態2に示したような構成を有する。導電層151Rと導電層152Rとからなる第1の電極(画素電極)と、第1の電極上の第1の層104Rと、有機化合物層(第1の層104R上の第2の層105)と、第2の層105上の第2の電極(共通電極)102と、を有する。第2の層105は、発光層よりも第2の電極(共通電極)側にあることが好ましく、ホールブロック層、電子輸送層または電子注入層であることが好ましい。このような構成であることで、フォトリソグラフィ工程での発光層または活性層へのダメージを抑えることができ、良好な膜質および電気特性が期待できる。
【0221】
発光デバイス130Gは、実施の形態1または実施の形態2に示したような構成を有する。導電層151Gと導電層152Gとからなる第1の電極(画素電極)と、第1の電極上の第1の層104Gと、第1の層104G上の第2の層105と、第2の層105上の第2の電極(共通電極)102と、を有する。第2の層105は、電子注入層であることが好ましい。
【0222】
発光デバイス130Bは、実施の形態1または実施の形態2に示したような構成を有する。導電層151Bと導電層152Bとからなる第1の電極(画素電極)と、第1の電極上の第1の層104Bと、第1の層104B上の第2の層105と、第2の層105上の第2の電極(共通電極)102と、を有する。第2の層105は、電子注入層であることが好ましい。
【0223】
発光デバイスが有する画素電極(第1の電極)と共通電極(第2の電極)のうち、一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。本実施の形態では、特に断りが無い場合は、画素電極が陽極として機能し、共通電極が陰極として機能するものとして説明する。
【0224】
第1の層104R、第1の層104G、及び第1の層104Bは、各々または、発光色毎に島状に独立している。なお、第1の層104R、第1の層104G、及び第1の層104Bは、互いに重なりを有さないことが好ましい。第1の層104を発光デバイス130ごとに島状に設けることで、高精細な表示装置においても隣接する発光デバイス130間のリーク電流を抑制できる。これにより、クロストークを防ぐことができ、コントラストの極めて高い表示装置を実現できる。特に、低輝度における電流効率の高い表示装置を実現できる。
【0225】
島状の第1の層104は、EL膜を成膜し、当該ELをフォトリソグラフィ法を用いて加工することにより形成する。
【0226】
第1の層104は、発光デバイス130の第1の電極(画素電極)の上面及び側面を覆うように設けられることが好ましい。これにより、第1の層104の端部が画素電極の端部よりも内側に位置する構成に比べて、表示装置100の開口率を高めることが容易となる。また、発光デバイス130の画素電極の側面を第1の層104で覆うことで、画素電極と第2の電極102とが接することを抑制できるため、発光デバイス130のショートを抑制できる。
【0227】
また、本発明の一態様の表示装置では、発光デバイスの第1の電極(画素電極)を、積層構成とすることが好ましい。例えば、
図5(B)に示す例では、発光デバイス130の第1の電極を、絶縁層171側に設けられた導電層151と、有機化合物層側に設けられた導電層152と、の積層構成としている。
【0228】
導電層151として、例えば金属材料を用いることができる。具体的には、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)等の金属、及びこれらを適宜組み合わせて含む合金を用いることもできる。
【0229】
導電層152として、インジウム、錫、亜鉛、ガリウム、チタン、アルミニウム、及びシリコンの中から選ばれるいずれか一又は複数を有する酸化物を用いることができる。例えば、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを含む酸化亜鉛、酸化チタン、ガリウムを含むインジウム亜鉛酸化物、アルミニウムを含むインジウム亜鉛酸化物、シリコンを含むインジウム錫酸化物、及びシリコンを含むインジウム亜鉛酸化物等のいずれか一又は複数を含む導電性酸化物を用いることが好ましい。特に、シリコンを含むインジウム錫酸化物は仕事関数が大きい、例えば仕事関数が4.0eV以上であるため、導電層152として好適に用いることができる。
【0230】
導電層151は、異なる材料を有する複数の層の積層構成であってもよく、導電層152は、異なる材料を有する複数の層の積層構成であってもよい。この場合、導電層151が、導電性酸化物等の導電層152に用いることができる材料を用いた層を有してもよく、また、導電層152が、金属材料等の導電層151に用いることができる材料を用いた層を有してもよい。例えば、導電層151が2層以上の積層構成である場合は、導電層152と接する層は、導電層152に用いることができる材料を用いた層とすることができる。
【0231】
なお、導電層151の端部は、テーパ形状を有することが好ましい。具体的には、導電層151の端部は、テーパ角90°未満のテーパ形状を有することが好ましい。この場合、導電層151の側面に沿って設けられる導電層152もテーパ形状を有する。導電層152の側面をテーパ形状とすることで、導電層152の側面に沿って設けられる第1の層104の被覆性を高めることができる。
【0232】
続いて
図5(A)に示す構成を有する表示装置100の作製方法例を
図6乃至
図11を用いて説明する。
【0233】
[作製方法例1]
表示装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び、導電膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、又はALD法等を用いて形成できる。
【0234】
また、表示装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び、導電膜等)は、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ法、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、又はナイフコート等の湿式の成膜方法により形成できる。
【0235】
また、表示装置を構成する薄膜を加工する際には、例えばフォトリソグラフィ法を用いて加工できる。
【0236】
フォトリソグラフィ法において、露光に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、又はこれらを混合させた光を用いることができる。そのほか、紫外線、KrFレーザ光、又はArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外(EUV:Extreme Ultra-violet)光、又はX線を用いてもよい。また、露光に用いる光に換えて、電子ビームを用いることもできる。
【0237】
薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、又はサンドブラスト法等を用いることができる。
【0238】
まず、
図6(A)に示すように、基板(図示せず)上に絶縁層171を形成する。続いて、絶縁層171上に導電層172、及び導電層179を形成し、導電層172、及び導電層179を覆うように絶縁層171上に絶縁層173を形成する。続いて、絶縁層173上に絶縁層174を形成し、絶縁層174上に絶縁層175を形成する。
【0239】
基板としては、少なくとも後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有する基板を用いることができる。例えばガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板、又は有機樹脂基板、シリコン又は炭化シリコン等を材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板等の半導体基板を用いることができる。
【0240】
続いて、
図6(A)に示すように、絶縁層175、絶縁層174、及び絶縁層173に、導電層172に達する開口を形成する。続いて、当該開口を埋め込むように、プラグ176を形成する。
【0241】
続いて、
図6(A)に示すように、プラグ176上、及び絶縁層175上に、後に導電層151R、導電層151G、導電層151B、及び導電層151Cとなる導電膜151fを形成する。導電膜151fとして、例えば金属材料を用いることができる。
【0242】
続いて、
図6(A)に示すように、導電膜151f上にレジストマスク191を形成する。レジストマスク191は、感光性材料(フォトレジスト)を塗布し、露光及び現像を行うことで形成できる。
【0243】
続いて、
図6(B)に示すように、例えばレジストマスク191と重ならない領域の導電膜151fを除去する。これにより、導電層151が形成される。
【0244】
続いて、
図6(C)に示すように、レジストマスク191を除去する。レジストマスク191は、例えば、酸素プラズマを用いたアッシングにより除去できる。
【0245】
続いて、
図6(D)に示すように、導電層151R上、導電層151G上、導電層151B上、導電層151C上、及び絶縁層175上に、後に絶縁層156R、絶縁層156G、絶縁層156B、及び絶縁層156Cとなる絶縁膜156fを形成する。
【0246】
絶縁膜156fには、酸化絶縁膜、窒化絶縁膜、酸化窒化絶縁膜、又は窒化酸化絶縁膜等の無機絶縁膜、例えば、酸化窒化シリコンを用いることができる。
【0247】
続いて、
図6(E)に示すように、絶縁膜156fを加工することにより、絶縁層156R、絶縁層156G、絶縁層156B、及び絶縁層156Cを形成する。
【0248】
続いて、
図7(A)に示すように、導電層151R上、導電層151G上、導電層151B上、導電層151C上、絶縁層156R上、絶縁層156G上、絶縁層156B上、絶縁層156C上、及び絶縁層175上に、導電膜152fを形成する。
【0249】
導電膜152fとして、例えば導電性酸化物を用いることができる。導電膜152fは積層であってもよい。
【0250】
続いて、
図7(B)に示すように、導電膜152fを加工し、導電層152R、導電層152G、導電層152B、及び導電層152Cを形成する。
【0251】
続いて、
図7(C)に示すように、有機化合物膜103Rfを、導電層152R上、導電層152G上、導電層152B上、及び絶縁層175上に形成する。なお、
図7(C)に示すように、導電層152C上には、有機化合物膜103Rfを形成していない。
【0252】
続いて、
図7(C)に示すように、犠牲膜158Rf、マスク膜159Rfを形成する。
【0253】
有機化合物膜103Rf上に犠牲膜158Rfを設けることで、表示装置の作製工程中に有機化合物膜103Rfが受けるダメージを低減し、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0254】
犠牲膜158Rfには、有機化合物膜103Rfの加工条件に対する耐性の高い膜、具体的には、有機化合物膜103Rfとのエッチングの選択比が大きい膜を用いる。マスク膜159Rfには、犠牲膜158Rfとのエッチングの選択比が大きい膜を用いる。
【0255】
また、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfは、有機化合物膜103Rfの耐熱温度よりも低い温度で形成する。犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfを形成する際の基板温度としては、それぞれ、代表的には、100℃以上200℃以下、好ましくは100℃以上150℃以下、より好ましくは100℃以上120℃以下である。本発明の一態様の発光デバイスは、第1の化合物を含むことから、より高い温度での加熱工程を経ても表示品質の良好な表示装置を提供することができる。
【0256】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、ウェットエッチング法またはドライエッチング法により除去できる膜を用いることが好ましい。
【0257】
なお、有機化合物膜103Rf上に接して形成される犠牲膜158Rfは、マスク膜159Rfよりも、有機化合物膜103Rfへのダメージが少ない形成方法を用いて形成されることが好ましい。例えば、スパッタリング法よりも、ALD法(Atomic Layer Deposition法)又は真空蒸着法が好ましい。
【0258】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfとしては、それぞれ、例えば、金属膜、合金膜、金属酸化物膜、半導体膜、有機絶縁膜、及び、無機絶縁膜等のうち一種又は複数種を用いることができる。
【0259】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、それぞれ、例えば、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、チタン、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、及びタンタル等の金属材料、又は該金属材料を含む合金材料を用いることができる。特に、アルミニウム又は銀等の低融点材料を用いることが好ましい。犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfの一方又は双方に紫外線を遮蔽することが可能な金属材料を用いることで、有機化合物膜103Rfにパターン露光時の紫外線が照射されることを抑制でき、有機化合物膜103Rfの劣化を抑制できるため、好ましい。
【0260】
また、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、それぞれ、In-Ga-Zn酸化物、酸化インジウム、In-Zn酸化物、In-Sn酸化物、インジウムチタン酸化物(In-Ti酸化物)、インジウムスズ亜鉛酸化物(In-Sn-Zn酸化物)、インジウムチタン亜鉛酸化物(In-Ti-Zn酸化物)、インジウムガリウムスズ亜鉛酸化物(In-Ga-Sn-Zn酸化物)、シリコンを含むインジウムスズ酸化物等の金属酸化物を用いることができる。
【0261】
なお、上記金属酸化物においてガリウムに代えて元素M(Mは、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムから選ばれた一種又は複数種)を用いてもよい。
【0262】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfとしては、例えば、シリコン又はゲルマニウム等の半導体材料を用いることが、半導体の製造プロセスと親和性が高いため好ましい。又は、上記半導体材料を含む化合物を用いることができる。
【0263】
また、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfとしては、それぞれ、各種無機絶縁膜を用いることができる。特に、酸化絶縁膜は、窒化絶縁膜に比べて有機化合物膜103Rfとの密着性が高く好ましい。
【0264】
続いて、
図7(C)に示すように、レジストマスク190Rを形成する。レジストマスク190Rは、感光性材料(フォトレジスト)を塗布し、露光及び現像を行うことで形成できる。
【0265】
レジストマスク190Rは、導電層152Rと重なる位置に設ける。レジストマスク190Rは、導電層152Cと重なる位置にも設けることが好ましい。これにより、導電層152Cが表示装置の作製工程中にダメージを受けることを抑制できる。
【0266】
続いて、
図7(D)に示すように、レジストマスク190Rを用いて、マスク膜159Rfの一部を除去し、マスク層159Rを形成する。マスク層159Rは、導電層152R上と、導電層152C上と、に残存する。その後、レジストマスク190Rを除去する。続いて、マスク層159Rをマスク(ハードマスクともいう)に用いて、犠牲膜158Rfの一部を除去し、犠牲層158Rを形成する。
【0267】
ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfの加工時に、有機化合物膜103Rfに加わるダメージを低減できる。ウェットエッチング法を用いる場合、例えば、現像液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)などのアルカリ水溶液、希フッ酸、シュウ酸、リン酸、酢酸、硝酸、又はこれらの混合液体を用いた薬液等の酸水溶液を用いることが好ましい。
【0268】
また、犠牲膜158Rfの加工においてドライエッチング法を用いる場合は、エッチングガスに酸素を含むガスを用いないことで、有機化合物膜103Rfの劣化を抑制できる。
【0269】
レジストマスク190Rは、レジストマスク191と同様の方法で除去できる。
【0270】
続いて、
図7(D)に示すように、有機化合物膜103Rfを加工して、有機化合物層103Rを形成する。例えば、マスク層159R及び犠牲層158Rをハードマスクに用いて、有機化合物膜103Rfの一部を除去し、有機化合物層103Rを形成する。
【0271】
これにより、
図7(D)に示すように、導電層152R上に、有機化合物層103R、犠牲層158R、及び、マスク層159Rの積層構造が残存する。また、導電層152G及び導電層152Bは露出する。
【0272】
有機化合物膜103Rfの加工は、異方性エッチングにより行うことが好ましい。特に、異方性のドライエッチングが好ましい。又は、ウェットエッチングを用いてもよい。
【0273】
ドライエッチング法を用いる場合は、エッチングガスに酸素を含むガスを用いないことで、有機化合物膜103Rfの劣化を抑制できる。
【0274】
また、エッチングガスに酸素を含むガスを用いてもよい。エッチングガスが酸素を含むことで、エッチングの速度を速めることができる。したがって、エッチング速度を十分な速さに維持しつつ、低パワーの条件でエッチングを行うことができる。このため、有機化合物膜103Rfに与えるダメージを抑制できる。さらに、エッチング時に生じる反応生成物の付着等の不具合を抑制できる。
【0275】
ドライエッチング法を用いる場合、例えば、H2、CF4、C4F8、SF6、CHF3、Cl2、H2O、BCl3、又はHe、Ar等の第18族元素のうち、一種以上を含むガスをエッチングガスに用いることが好ましい。又は、これらの一種以上と、酸素を含むガスをエッチングガスに用いることが好ましい。又は、酸素ガスをエッチングガスに用いてもよい。
【0276】
続いて、
図8(A)に示すように、後に有機化合物層103Gとなる有機化合物膜103Gfを形成する。
【0277】
有機化合物膜103Gfは、有機化合物膜103Rfの形成に用いることができる方法と同様の方法で形成できる。また、有機化合物膜103Gfは、有機化合物膜103Rfと同様の構成とすることができる。
【0278】
続いて、
図8(A)に示すように犠牲膜158Gfとマスク膜159Gfとを順に形成する。その後、レジストマスク190Gを形成する。犠牲膜158Gf及びマスク膜159Gfの材料及び形成方法は、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfに適用できる条件と同様である。レジストマスク190Gの材料及び形成方法は、レジストマスク190Rに適用できる条件と同様である。
【0279】
レジストマスク190Gは、導電層152Gと重なる位置に設ける。
【0280】
続いて、
図8(B)に示すように、レジストマスク190Gを用いて、マスク膜159Gfの一部を除去し、マスク層159Gを形成する。マスク層159Gは、導電層152G上に残存する。その後、レジストマスク190Gを除去する。続いて、マスク層159Gをマスクに用いて、犠牲膜158Gfの一部を除去し、犠牲層158Gを形成する。続いて、有機化合物膜103Gfを加工して、有機化合物層103Gを形成する。
【0281】
続いて、
図8(C)に示すように、有機化合物膜103Bfを形成する。
【0282】
有機化合物膜103Bfは、有機化合物膜103Rfの形成に用いることができる方法と同様の方法で形成できる。また、有機化合物膜103Bfは、有機化合物膜103Rfと同様の構成とすることができる。
【0283】
続いて、
図8(C)に示すように、犠牲膜158Bfとマスク膜159Bfとを順に形成する。その後、レジストマスク190Bを形成する。犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfの材料及び形成方法は、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfに適用できる条件と同様である。レジストマスク190Bの材料及び形成方法は、レジストマスク190Rに適用できる条件と同様である。
【0284】
レジストマスク190Bは、導電層152Bと重なる位置に設ける。
【0285】
続いて、
図8(D)に示すように、レジストマスク190Bを用いて、マスク膜159Bfの一部を除去し、マスク層159Bを形成する。マスク層159Bは、導電層152B上に残存する。その後、レジストマスク190Bを除去する。続いて、マスク層159Bをマスクに用いて、犠牲膜158Bfの一部を除去し、犠牲層158Bを形成する。続いて、有機化合物膜103Bfを加工して、有機化合物層103Bを形成する。例えば、マスク層159B及び犠牲層158Bをハードマスクに用いて、有機化合物膜103Bfの一部を除去し、有機化合物層103Bを形成する。
【0286】
これにより、
図8(D)に示すように、導電層152B上に、有機化合物層103B、犠牲層158B、及び、マスク層159Bの積層構造が残存する。また、マスク層159R、及びマスク層159Gは露出する。
【0287】
なお、有機化合物層103R、有機化合物層103G、有機化合物層103Bの側面は、それぞれ、被形成面に対して垂直又は概略垂直であることが好ましい。例えば、被形成面と、これらの側面との成す角度を、60度以上90度以下とすることが好ましい。
【0288】
上記のように、フォトリソグラフィ法を用いて形成した有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bのうち隣接する2つの間の距離は、8μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下、又は、1μm以下にまで狭めることができる。ここで、当該距離とは、例えば、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bのうち、隣接する2つの対向する端部の間の距離で規定できる。このように、島状の有機化合物層の間の距離を狭めることで、高い精細度と、大きな開口率を有する表示装置を提供できる。また、隣り合う発光デバイス間における第1の電極同士の距離も、狭めることができ、例えば10μm以下、8μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下とすることができる。なお、隣り合う発光デバイス間における第1の電極同士の距離は2μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0289】
続いて、
図9(A)に示すように、マスク層159R、マスク層159G、及びマスク層159Bを除去することが好ましい。
【0290】
マスク層の除去工程には、マスク層の加工工程と同様の方法を用いることができる。特に、ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、マスク層を除去する際に、有機化合物層103に加わるダメージを低減できる。
【0291】
また、マスク層を、水又はアルコール等の極性溶媒に溶解させることで除去してもよい。アルコールとしては、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、又はグリセリン等が挙げられる。
【0292】
マスク層を除去した後に、表面に吸着する水を除去するため、乾燥処理を行ってもよい。例えば、不活性ガス雰囲気又は減圧雰囲気下における加熱処理を行うことができる。加熱処理は、基板温度として50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上120℃以下の温度で行うことができる。減圧雰囲気とすることで、より低温で乾燥が可能であるため好ましい。
【0293】
続いて、
図9(B)に示すように、無機絶縁膜125fを形成する。
【0294】
続いて、
図9(C)に示すように、無機絶縁膜125f上に、後に絶縁層127となる絶縁膜127fを形成する。
【0295】
無機絶縁膜125f及び絶縁膜127fを形成する際の基板温度としては、それぞれ、60℃以上、80℃以上、100℃以上、又は、120℃以上、かつ、200℃以下、180℃以下、160℃以下、150℃以下、又は140℃以下であることが好ましい。
【0296】
無機絶縁膜125fとしては、上記の基板温度の範囲で、3nm以上、5nm以上、又は、10nm以上、かつ、200nm以下、150nm以下、100nm以下、又は、50nm以下の厚さの絶縁膜を形成することが好ましい。
【0297】
無機絶縁膜125fは、例えば、ALD法を用いて形成することが好ましい。ALD法を用いることで、成膜ダメージを小さくすることができ、また、被覆性の高い膜を成膜可能なため好ましい。無機絶縁膜125fとしては、例えば、ALD法を用いて、酸化アルミニウム膜を形成することが好ましい。
【0298】
絶縁膜127fは、前述の湿式の成膜方法を用いて形成することが好ましい。絶縁膜127fは、例えば、スピンコートにより、感光性材料を用いて形成することが好ましく、より具体的には、アクリル樹脂を含む感光性の樹脂組成物を用いて形成することが好ましい。
【0299】
続いて、露光を行って、絶縁膜127fの一部に、可視光線又は紫外線を感光させる。絶縁層127は、導電層152R、導電層152G、及び導電層152Bのいずれか2つに挟まれる領域、及び、導電層152Cの周囲に形成される。
【0300】
絶縁膜127fへの露光領域によって、後に形成する絶縁層127の幅を制御できる。本実施の形態では、絶縁層127が導電層151の上面と重なる部分を有するように加工する。
【0301】
露光に用いる光は、i線(波長365nm)を含むことが好ましい。また、露光用いる光は、g線(波長436nm)、及びh線(波長405nm)の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0302】
続いて、
図10(A)に示すように、現像を行って、絶縁膜127fの露光させた領域を除去し、絶縁層127aを形成する。
【0303】
続いて、
図10(B)に示すように、絶縁層127aをマスクとして、エッチング処理を行って、無機絶縁膜125fの一部を除去し、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの一部の膜厚を薄くする。これにより、絶縁層127aの下に、無機絶縁層125が形成される。また、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの膜厚が薄い部分の表面が露出する。なお、以下では、絶縁層127aをマスクに用いたエッチング処理を、第1のエッチング処理ということがある。
【0304】
第1のエッチング処理は、ドライエッチング又はウェットエッチングによって行うことができる。なお、無機絶縁膜125fを、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bと同様の材料を用いて成膜していた場合、第1のエッチング処理を一括で行うことができるため、好ましい。
【0305】
ドライエッチングを行う場合、塩素系のガスを用いることが好ましい。塩素系ガスとしては、Cl2、BCl3、SiCl4、及びCCl4等を、単独又は2以上のガスを混合して用いることができる。また、上記塩素系ガスに、酸素ガス、水素ガス、ヘリウムガス、及びアルゴンガス等を、単独又は2以上のガスを混合して、適宜添加できる。ドライエッチングを用いることにより、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの膜厚が薄い領域を、良好な面内均一性で形成できる。
【0306】
ドライエッチング装置としては、高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置を用いることができる。高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置は、例えば、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。又は、平行平板型電極を有する容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。
【0307】
また、第1のエッチング処理をウェットエッチングで行うことが好ましい。ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに加わるダメージを低減できる。例えば、ウェットエッチングは、アルカリ溶液を用いて行うことができる。例えば、酸化アルミニウム膜のウェットエッチングには、アルカリ溶液であるTMAHを用いることができる。また、フッ化物を含む酸溶液を用いることもできる。この場合、パドル方式でウェットエッチングを行うことができる。なお、無機絶縁膜125fを、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bと同様の材料を用いて成膜していた場合、上記エッチング処理を一括で行うことができるため、好ましい。
【0308】
第1のエッチング処理では、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを完全に除去せず、膜厚が薄くなった状態でエッチング処理を停止する。このように、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103B上に、対応する犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを残存させておくことで、後の工程の処理で、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bが損傷することを防ぐことができる。
【0309】
続いて、基板全体に露光を行い、可視光線又は紫外線を絶縁層127aに照射することが好ましい。当該露光のエネルギー密度は、0mJ/cm2より大きく、800mJ/cm2以下とすることが好ましく、0mJ/cm2より大きく、500mJ/cm2以下とすることがより好ましい。現像後にこのような露光を行うことで、絶縁層127aの透明度を向上させることができる場合がある。また、後の工程における、絶縁層127aをテーパ形状に変形させる加熱処理に必要とされる基板温度を低下させることができる場合がある。
【0310】
ここで、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bとして、酸素に対するバリア絶縁層(例えば、酸化アルミニウム膜等)が存在することで、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに酸素が拡散することを低減できる。
【0311】
続いて、加熱処理(ポストベークともいう)を行う。加熱処理を行うことで、絶縁層127aを、側面にテーパ形状を有する絶縁層127に変形させることができる(
図10(C))。当該加熱処理は、有機化合物層の耐熱温度よりも低い温度で行う。加熱処理は、基板温度として50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上130℃以下の温度で行うことができる。加熱雰囲気は、大気雰囲気であってもよく、不活性ガス雰囲気であってもよい。また、加熱雰囲気は、大気圧雰囲気であってもよく、減圧雰囲気であってもよい。これにより、絶縁層127と無機絶縁層125との密着性を向上させ、絶縁層127の耐食性も向上させることができる。
【0312】
第1のエッチング処理にて、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを完全に除去せず、膜厚が薄くなった状態の犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを残存させておくことで、当該加熱処理において、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bがダメージを受けて劣化することを防ぐことができる。したがって、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0313】
続いて、
図11(A)に示すように、絶縁層127をマスクとして、エッチング処理を行って、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの一部を除去する。これにより、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bそれぞれに開口が形成され、有機化合物層103R、有機化合物層103G、有機化合物層103B、及び導電層152Cの上面が露出する。なお、以下では、このエッチング処理を、第2のエッチング処理ということがある。
【0314】
無機絶縁層125の端部は絶縁層127で覆われている。また、
図11(A)では、犠牲層158Gの端部の一部(具体的には、第1のエッチング処理により形成されたテーパ形状の部分)を絶縁層127が覆い、第2のエッチング処理により形成されたテーパ形状の部分は露出している例を示す。
【0315】
第2のエッチング処理はウェットエッチングで行う。ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに加わるダメージを低減できる。ウェットエッチングは、例えばアルカリ溶液または酸性溶液を用いて行うことができる。有機化合物層103が溶けないように、水溶液であることが好ましい。
【0316】
続いて、
図11(B)に示すように、有機化合物層103R上、有機化合物層103G上、有機化合物層103B上、導電層152C上、及び絶縁層127上に共通電極155を形成する。共通電極155は、スパッタリング法、又は真空蒸着法等の方法で形成できる。
【0317】
続いて、
図11(C)に示すように、共通電極155上に保護層131を形成する。保護層131は、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、又はALD法等の方法で形成できる。
【0318】
続いて、樹脂層122を用いて、保護層131上に、基板120を貼り合わせることで、表示装置を作製できる。前述のように、本発明の一態様の表示装置の作製方法では、導電層151の側面と重なる領域を有するように絶縁層156を設け、且つ導電層151及び絶縁層156を覆うように導電層152を形成する。これにより、表示装置の歩留まりを高め、また不良の発生を抑制できる。
【0319】
以上のように、本発明の一態様の表示装置の作製方法では、島状の有機化合物層103R、島状の有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bは、ファインメタルマスクを用いて形成されるのではなく、膜を一面に成膜した後に加工することで形成されるため、島状の層を均一の厚さで形成できる。そして、高精細な表示装置又は高開口率の表示装置を実現できる。また、精細度又は開口率が高く、副画素間の距離が極めて短くても、隣接する副画素において、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び、有機化合物層103Bが互いに接することを抑制できる。したがって、副画素間にリーク電流が発生することを抑制できる。これにより、クロストークを防ぐことができ、コントラストの極めて高い表示装置を実現できる。また、フォトリソグラフィ法を用いて作製されたタンデム型の発光デバイスを有する表示装置であっても、良好な特性の表示装置を提供することができる。
【0320】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置について説明する。
【0321】
本実施の形態の表示装置は、高精細な表示装置とすることができる。したがって、本実施の形態の表示装置は、例えば、腕時計型、及び、ブレスレット型等の情報端末機(ウェアラブル機器)の表示部、並びに、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)等のVR向け機器、及び、メガネ型のAR向け機器等の頭部に装着可能なウェアラブル機器の表示部に用いることができる。
【0322】
また、本実施の形態の表示装置は、高解像度な表示装置又は大型な表示装置とすることができる。したがって、本実施の形態の表示装置は、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用等のモニタ、デジタルサイネージ、及び、パチンコ機等の大型ゲーム機等の比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、及び、音響再生装置の表示部に用いることができる。
【0323】
[表示モジュール]
図12(A)に、表示モジュール280の斜視図を示す。表示モジュール280は、表示装置100Aと、FPC290と、を有する。なお、表示モジュール280が有する表示装置は表示装置100Aに限られず、後述する表示装置100B乃至表示装置100Eのいずれかであってもよい。
【0324】
表示モジュール280は、基板291及び基板292を有する。表示モジュール280は、表示部281を有する。表示部281は、表示モジュール280における画像を表示する領域であり、後述する画素部284に設けられる各画素からの光を視認できる領域である。
【0325】
図12(B)に、基板291側の構成を模式的に示した斜視図を示している。基板291上には、回路部282と、回路部282上の画素回路部283と、画素回路部283上の画素部284と、が積層されている。また、基板291上の画素部284と重ならない部分に、FPC290と接続するための端子部285が設けられている。端子部285と回路部282とは、複数の配線により構成される配線部286により電気的に接続されている。
【0326】
画素部284は、周期的に配列した複数の画素284aを有する。
図12(B)の右側に、1つの画素284aの拡大図を示している。画素284aには、先の実施の形態で説明した各種構成を適用できる。
図12(B)では、画素284aが
図5に示す画素178と同様の構成を有する場合を例に示す。
【0327】
画素回路部283は、周期的に配列した複数の画素回路283aを有する。
【0328】
1つの画素回路283aは、1つの画素284aが有する複数の素子の駆動を制御する回路である。
【0329】
回路部282は、画素回路部283の各画素回路283aを駆動する回路を有する。例えば、ゲート線駆動回路、及び、ソース線駆動回路の一方又は双方を有することが好ましい。このほか、演算回路、メモリ回路、及び電源回路等の少なくとも一つを有していてもよい。
【0330】
FPC290は、外部から回路部282にビデオ信号又は電源電位等を供給するための配線として機能する。また、FPC290上にICが実装されていてもよい。
【0331】
表示モジュール280は、画素部284の下側に画素回路部283及び回路部282の一方又は双方が積層された構成とすることができるため、表示部281の開口率(有効表示面積比)を極めて高くすることができる。
【0332】
このような表示モジュール280は、極めて高精細であることから、HMD等のVR向け機器又はメガネ型のAR向け機器に好適に用いることができる。例えば、レンズを通して表示モジュール280の表示部を視認する構成の場合であっても、表示モジュール280は極めて高精細な表示部281を有するためにレンズで表示部を拡大しても画素が視認されず、没入感の高い表示を行うことができる。また、表示モジュール280はこれに限られず、比較的小型の表示部を有する電子機器に好適に用いることができる。
【0333】
[表示装置100A]
図13(A)に示す表示装置100Aは、基板301、発光デバイス130R、発光デバイス130G、発光デバイス130B、容量240、及び、トランジスタ310を有する。
【0334】
基板301は、
図12(A)及び
図12(B)における基板291に相当する。トランジスタ310は、基板301にチャネル形成領域を有するトランジスタである。基板301としては、例えば単結晶シリコン基板等の半導体基板を用いることができる。トランジスタ310は、基板301の一部、導電層311、低抵抗領域312、絶縁層313、及び、絶縁層314を有する。導電層311は、ゲート電極として機能する。絶縁層313は、基板301と導電層311の間に位置し、ゲート絶縁層として機能する。低抵抗領域312は、基板301に不純物がドープされた領域であり、ソース又はドレインとして機能する。絶縁層314は、導電層311の側面を覆って設けられる。
【0335】
また、基板301に埋め込まれるように、隣接する2つのトランジスタ310の間に素子分離層315が設けられている。
【0336】
また、トランジスタ310を覆って絶縁層261が設けられ、絶縁層261上に容量240が設けられている。
【0337】
容量240は、導電層241と、導電層245と、これらの間に位置する絶縁層243を有する。導電層241は、容量240の一方の電極として機能し、導電層245は、容量240の他方の電極として機能し、絶縁層243は、容量240の誘電体として機能する。
【0338】
導電層241は絶縁層261上に設けられ、絶縁層254に埋め込まれている。導電層241は、絶縁層261に埋め込まれたプラグ271によってトランジスタ310のソース又はドレインの一方と電気的に接続されている。絶縁層243は導電層241を覆って設けられる。導電層245は、絶縁層243を介して導電層241と重なる領域に設けられている。
【0339】
容量240を覆って、絶縁層255が設けられ、絶縁層255上に絶縁層174が設けられ、絶縁層174上に絶縁層175が設けられている。絶縁層175上に発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び、発光デバイス130Bが設けられている。隣り合う発光デバイスの間の領域には、絶縁物が設けられる。
【0340】
導電層151Rの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Rが設けられ、導電層151Gの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Gが設けられ、導電層151Bの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Bが設けられる。また、導電層151R及び絶縁層156Rを覆うように導電層152Rが設けられ、導電層151G及び絶縁層156Gを覆うように導電層152Gが設けられ、導電層151B及び絶縁層156Bを覆うように導電層152Bが設けられる。有機化合物層103R上には、犠牲層158Rが位置し、有機化合物層103G上には、犠牲層158Gが位置し、有機化合物層103B上には、犠牲層158Bが位置する。
【0341】
導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bは、絶縁層243、絶縁層255、絶縁層174、及び絶縁層175に埋め込まれたプラグ256、絶縁層254に埋め込まれた導電層241、及び、絶縁層261に埋め込まれたプラグ271によってトランジスタ310のソース又はドレインの一方と電気的に接続されている。プラグには各種導電材料を用いることができる。
【0342】
また、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び、発光デバイス130B上には保護層131が設けられている。保護層131上には、樹脂層122によって基板120が貼り合わされている。発光デバイス130から基板120までの構成要素についての詳細は、実施の形態3を参照できる。基板120は、
図12(A)における基板292に相当する。
【0343】
図13(B)は、
図13(A)に示す表示装置100Aの変形例である。
図13(B)に示す表示装置は、着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを有し、発光デバイス130が着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bのうち一つと重なる領域を有する。
図13(B)に示す表示装置において、発光デバイス130は、例えば白色光を発することができる。また、例えば着色層132Rは赤色の光を透過し、着色層132Gは緑色の光を透過し、着色層132Bは青色の光を透過できる。
【0344】
[表示装置100B]
図14に、表示装置100Bの斜視図を示す。
【0345】
表示装置100Bは、基板352と基板351とが貼り合わされた構成を有する。
図14では、基板352を破線で示している。
【0346】
表示装置100Bは、画素部177、接続部140、回路356、及び配線355等を有する。
図14では表示装置100BにIC354及びFPC353が実装されている例を示している。このため、
図14に示す構成は、表示装置100Bと、IC(集積回路)と、FPCと、を有する表示モジュールということもできる。ここで、表示装置の基板に、FPC等のコネクタが取り付けられたもの、又は当該基板にICが実装されたものを、表示モジュールと呼ぶ。
【0347】
接続部140は、画素部177の外側に設けられる。接続部140は、単数であっても複数であってもよい。接続部140は、発光デバイスの共通電極と、導電層とが電気的に接続されており、共通電極に電位を供給できる。
【0348】
回路356としては、例えば走査線駆動回路を用いることができる。
【0349】
配線355は、画素部177及び回路356に信号及び電力を供給する機能を有する。当該信号及び電力は、FPC353を介して外部から、又はIC354から配線355に入力される。
【0350】
図14では、COG(Chip On Glass)方式又はCOF(Chip on Film)方式等により、基板351にIC354が設けられている例を示す。IC354は、例えば走査線駆動回路又は信号線駆動回路等を有するICを適用できる。なお、表示装置100B及び表示モジュールは、ICを設けない構成としてもよい。また、ICを、例えばCOF方式により、FPCに実装してもよい。
【0351】
図15に、表示装置100Cとして表示装置100Bの、FPC353を含む領域の一部、回路356の一部、画素部177の一部、接続部140の一部、及び、端部を含む領域の一部をそれぞれ切断したときの断面の一例を示す。
【0352】
[表示装置100C]
図15に示す表示装置100Cは、基板351と基板352の間に、トランジスタ201、トランジスタ205、赤色の光を発する発光デバイス130R、緑色の光を発する発光デバイス130G、及び、青色の光を発する発光デバイス130B等を有する。
【0353】
発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bの詳細は実施の形態1乃至3を参照できる。
【0354】
発光デバイス130Rは、導電層224Rと、導電層224R上の導電層151Rと、導電層151R上の導電層152Rと、を有する。発光デバイス130Gは、導電層224Gと、導電層224G上の導電層151Gと、導電層151G上の導電層152Gと、を有する。発光デバイス130Bは、導電層224Bと、導電層224B上の導電層151Bと、導電層151B上の導電層152Bと、を有する。
【0355】
導電層224Rは、絶縁層214に設けられた開口を介して、トランジスタ205が有する導電層222bと接続されている。導電層224Rの端部よりも外側に導電層151Rの端部が位置している。導電層151Rの側面と接する領域を有するように絶縁層156Rが設けられ、導電層151R及び絶縁層156Rを覆うように導電層152Rが設けられる。
【0356】
発光デバイス130Gにおける導電層224G、導電層151G、導電層152G、絶縁層156G、及び発光デバイス130Bにおける導電層224B、導電層151B、導電層152B、絶縁層156Bについては、発光デバイス130Rにおける導電層224R、導電層151R、導電層152R、絶縁層156Rと同様であるため詳細な説明は省略する。
【0357】
導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bには、絶縁層214に設けられた開口を覆うように凹部が形成される。当該凹部には、層128が埋め込まれている。
【0358】
層128は、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bの凹部を平坦化する機能を有する。導電層224R、導電層224G、及び導電層224B及び層128上には、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bと電気的に接続される導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bが設けられている。したがって、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bの凹部と重なる領域も発光領域として使用でき、画素の開口率を高めることができる。
【0359】
層128は、絶縁層であってもよく、導電層であってもよい。層128には、各種無機絶縁材料、有機絶縁材料、及び導電材料を適宜用いることができる。特に、層128は、絶縁材料を用いて形成されることが好ましく、有機絶縁材料を用いて形成されることが特に好ましい。層128には、例えば前述の絶縁層127に用いることができる有機絶縁材料を適用できる。
【0360】
発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130B上には保護層131が設けられている。保護層131と基板352は接着層142を介して接着されている。基板352には、遮光層157が設けられている。発光デバイス130の封止には、固体封止構造又は中空封止構造等が適用できる。
図15では、基板352と基板351との間の空間が、接着層142で充填されており、固体封止構造が適用されている。又は、当該空間を不活性ガス(窒素又はアルゴン等)で充填し、中空封止構造を適用してもよい。このとき、接着層142は、発光デバイスと重ならないように設けられていてもよい。また、当該空間を、枠状に設けられた接着層142とは異なる樹脂で充填してもよい。
【0361】
図15では、接続部140が、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層224Cと、導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層151Cと、導電層152R、導電層152G、及び導電層152Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層152Cと、を有する例を示している。また、
図15では、導電層151Cの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Cが設けられる例を示している。
【0362】
表示装置100Cは、トップエミッション型である。発光デバイスが発する光は、基板352側に射出される。基板352には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。発光素子が赤外または近赤外の発光する場合は、それらに対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。画素電極は可視光を反射する材料を含み、対向電極(共通電極155)は可視光を透過する材料を含む。
【0363】
基板351上には、絶縁層211、絶縁層213、絶縁層215、及び絶縁層214がこの順で設けられている。絶縁層211は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層213は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層215は、トランジスタを覆って設けられる。絶縁層214は、トランジスタを覆って設けられ、平坦化層としての機能を有する。なお、ゲート絶縁層の数及びトランジスタを覆う絶縁層の数は限定されず、それぞれ単層であっても2層以上であってもよい。
【0364】
絶縁層211、絶縁層213、及び絶縁層215としては、それぞれ、無機絶縁膜を用いることが好ましい。
【0365】
平坦化層として機能する絶縁層214には、有機絶縁層が好適である。
【0366】
トランジスタ201及びトランジスタ205は、ゲートとして機能する導電層221、ゲート絶縁層として機能する絶縁層211、ソース及びドレインとして機能する導電層222a及び導電層222b、半導体層231、ゲート絶縁層として機能する絶縁層213、並びに、ゲートとして機能する導電層223を有する。
【0367】
基板351の、基板352が重ならない領域には、接続部204が設けられている。接続部204では、配線355が導電層166及び接続層242を介してFPC353と電気的に接続されている。導電層166は、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、導電層152R、導電層152G、及び導電層152Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、の積層構造である例を示す。接続部204の上面では、導電層166が露出している。これにより、接続部204とFPC353とを接続層242を介して電気的に接続できる。
【0368】
基板352の基板351側の面には、遮光層157を設けることが好ましい。遮光層157は、隣り合う発光デバイスの間、接続部140、及び、回路356等に設けることができる。また、基板352の外側には各種光学部材を配置できる。
【0369】
基板351及び基板352としては、それぞれ、基板120に用いることができる材料を適用できる。
【0370】
接着層142としては、樹脂層122に用いることができる材料を適用できる。
【0371】
接続層242としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、又は異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)等を用いることができる。
【0372】
[表示装置100D]
図16に示す表示装置100Dは、ボトムエミッション型の表示装置である点で、
図15に示す表示装置100Cと主に相違する。
【0373】
発光デバイスが発する光は、基板351側に射出される。基板351には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。一方、基板352に用いる材料の透光性は問わない。
【0374】
基板351とトランジスタ201との間、基板351とトランジスタ205との間には、遮光層1117を形成することが好ましい。
図16では、基板351上に遮光層1117が設けられ、遮光層1117上に絶縁層153が設けられ、絶縁層153上にトランジスタ201、205などが設けられている例を示す。
【0375】
発光デバイス130Rは、導電層112Rと、導電層112R上の導電層126Rと、導電層126R上の導電層129Rと、を有する。
【0376】
発光デバイス130Bは、導電層112Bと、導電層112B上の導電層126Bと、導電層126B上の導電層129Bと、を有する。
【0377】
導電層112R、112B、126R、126B、129R、129Bには、それぞれ、可視光に対する透過性が高い材料を用いる。共通電極155には可視光を反射する材料を用いることが好ましい。
【0378】
なお、
図16では、発光デバイス130Gを図示していないが、発光デバイス130Gも設けられている。
【0379】
また、
図16などでは、層128の上面が平坦部を有する例を示すが、層128の形状は、特に限定されない。
【0380】
[表示装置100E]
図17に示す表示装置100Eは、
図15に示す表示装置100Cの変形例であり、着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを有する点で、表示装置100Cと主に相違する。
【0381】
表示装置100Eにおいて、発光デバイス130は、着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bのうち一つと重なる領域を有する。着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bは、基板352の基板351側の面に設けることができる。着色層132Rの端部、着色層132Gの端部、及び着色層132Bの端部は、遮光層157と重ねることができる。
【0382】
表示装置100Eにおいて、発光デバイス130は、例えば白色光を発することができる。また、例えば着色層132Rは赤色の光を透過し、着色層132Gは緑色の光を透過し、着色層132Bは青色の光を透過できる。なお、表示装置100Eは、保護層131と接着層142の間に着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを設ける構成としてもよい。
【0383】
図15及び
図17等では、層128の上面が平坦部を有する例を示すが、層128の形状は、特に限定されない。
【0384】
本実施の形態は、他の実施の形態、又は実施例と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0385】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器について説明する。
【0386】
本実施の形態の電子機器は、表示部に本発明の一態様の表示装置を有する。本発明の一態様の表示装置は表示性能が高く、また高精細化及び高解像度化が容易である。したがって、様々な電子機器の表示部に用いることができる。
【0387】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用等のモニタ、デジタルサイネージ、パチンコ機等の大型ゲーム機等の比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、等が挙げられる。
【0388】
特に、本発明の一態様の表示装置は、精細度を高めることが可能なため、比較的小さな表示部を有する電子機器に好適に用いることができる。このような電子機器としては、例えば、腕時計型及びブレスレット型の情報端末機(ウェアラブル機器)、並びに、ヘッドマウントディスプレイ等のVR向け機器、メガネ型のAR向け機器、及び、MR向け機器等、頭部に装着可能なウェアラブル機器等が挙げられる。
【0389】
本実施の形態の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0390】
図18(A)乃至
図18(D)を用いて、頭部に装着可能なウェアラブル機器の一例を説明する。
【0391】
図18(A)に示す電子機器700A、及び、
図18(B)に示す電子機器700Bは、それぞれ、一対の表示パネル751と、一対の筐体721と、通信部(図示しない)と、一対の装着部723と、制御部(図示しない)と、撮像部(図示しない)と、一対の光学部材753と、フレーム757と、一対の鼻パッド758と、を有する。
【0392】
表示パネル751には、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0393】
電子機器700A、及び、電子機器700Bは、それぞれ、光学部材753の表示領域756に、表示パネル751で表示した画像を投影できる。光学部材753は透光性を有するため、使用者は光学部材753を通して視認される透過像に重ねて、表示領域に表示された画像を見ることができる。
【0394】
電子機器700A、及び、電子機器700Bには、撮像部として、前方を撮像することのできるカメラが設けられていてもよい。また、電子機器700A、及び、電子機器700Bは、それぞれ、ジャイロセンサ等の加速度センサを備えることで、使用者の頭部の向きを検知して、その向きに応じた画像を表示領域756に表示することもできる。
【0395】
通信部は無線通信機を有し、当該無線通信機により例えば映像信号を供給できる。なお、無線通信機に代えて、又は無線通信機に加えて、映像信号及び電源電位が供給されるケーブルを接続可能なコネクタを備えていてもよい。
【0396】
また、電子機器700A、及び、電子機器700Bには、バッテリが設けられており、無線及び有線の一方又は双方によって充電できる。
【0397】
筐体721には、タッチセンサモジュールが設けられていてもよい。
【0398】
タッチセンサモジュールとしては、様々なタッチセンサを適用できる。例えば、静電容量方式、抵抗膜方式、赤外線方式、電磁誘導方式、表面弾性波方式、又は光学方式等、種々の方式を採用できる。特に、静電容量方式又は光学方式のセンサを、タッチセンサモジュールに適用することが好ましい。
【0399】
図18(C)に示す電子機器800A、及び、
図18(D)に示す電子機器800Bは、それぞれ、一対の表示部820と、筐体821と、通信部822と、一対の装着部823と、制御部824と、一対の撮像部825と、一対のレンズ832と、を有する。
【0400】
表示部820には、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0401】
表示部820は、筐体821の内部の、レンズ832を通して視認できる位置に設けられる。また、一対の表示部820に異なる画像を表示させることで、視差を用いた3次元表示を行うこともできる。
【0402】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、レンズ832及び表示部820が、使用者の目の位置に応じて最適な位置となるように、これらの左右の位置を調整可能な機構を有していることが好ましい。
【0403】
装着部823により、使用者は電子機器800A又は電子機器800Bを頭部に装着できる。
【0404】
撮像部825は、外部の情報を取得する機能を有する。撮像部825が取得したデータは、表示部820に出力できる。撮像部825には、イメージセンサを用いることができる。また、望遠、及び広角等の複数の画角に対応可能なように複数のカメラを設けてもよい。
【0405】
電子機器800Aは、骨伝導イヤフォンとして機能する振動機構を有していてもよい。
【0406】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、入力端子を有していてもよい。入力端子には映像出力機器等からの映像信号、及び、電子機器内に設けられるバッテリを充電するための電力等を供給するケーブルを接続できる。
【0407】
本発明の一態様の電子機器は、イヤフォン750と無線通信を行う機能を有していてもよい。
【0408】
また、電子機器がイヤフォン部を有していてもよい。
図18(B)に示す電子機器700Bは、イヤフォン部727を有する。イヤフォン部727と制御部とをつなぐ配線の一部は、筐体721又は装着部723の内部に配置されていてもよい。
【0409】
同様に、
図18(D)に示す電子機器800Bは、イヤフォン部827を有する。例えば、イヤフォン部827と制御部824とは、互いに有線接続されている構成とすることができる。
【0410】
このように、本発明の一態様の電子機器としては、メガネ型(電子機器700A、及び、電子機器700B等)と、ゴーグル型(電子機器800A、及び、電子機器800B等)と、のどちらも好適である。
【0411】
図19(A)に示す電子機器6500は、スマートフォンとして用いることのできる携帯情報端末機である。
【0412】
電子機器6500は、筐体6501、表示部6502、電源ボタン6503、ボタン6504、スピーカ6505、マイク6506、カメラ6507、及び光源6508等を有する。表示部6502はタッチパネル機能を備える。
【0413】
表示部6502に、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0414】
図19(B)は、筐体6501のマイク6506側の端部を含む断面概略図である。
【0415】
筐体6501の表示面側には透光性を有する保護部材6510が設けられ、筐体6501と保護部材6510に囲まれた空間内に、表示パネル6511、光学部材6512、タッチセンサパネル6513、プリント基板6517、及びバッテリ6518等が配置されている。
【0416】
保護部材6510には、表示パネル6511、光学部材6512、及びタッチセンサパネル6513が接着層(図示しない)により固定されている。
【0417】
表示部6502よりも外側の領域において、表示パネル6511の一部が折り返されており、当該折り返された部分にFPC6515が接続されている。FPC6515には、IC6516が実装されている。FPC6515は、プリント基板6517に設けられた端子に接続されている。
【0418】
表示パネル6511には本発明の一態様の表示装置を適用できる。このため、極めて軽量な電子機器を実現できる。また、表示パネル6511が極めて薄いため、電子機器の厚さを抑えつつ、大容量のバッテリ6518を搭載することもできる。また、表示パネル6511の一部を折り返して、画素部の裏側にFPC6515との接続部を配置することにより、狭額縁の電子機器を実現できる。
【0419】
図19(C)にテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7100は、筐体7171に表示部7000が組み込まれている。ここでは、スタンド7173により筐体7171を支持した構成を示している。
【0420】
表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0421】
図19(C)に示すテレビジョン装置7100の操作は、筐体7171が備える操作スイッチ、及び、別体のリモコン操作機7151により行うことができる。
【0422】
図19(D)に、ノート型パーソナルコンピュータの一例を示す。ノート型パーソナルコンピュータ7200は、筐体7211、キーボード7212、ポインティングデバイス7213、及び外部接続ポート7214等を有する。筐体7211に、表示部7000が組み込まれている。
【0423】
表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0424】
図19(E)及び
図19(F)に、デジタルサイネージの一例を示す。
【0425】
図19(E)に示すデジタルサイネージ7300は、筐体7301、表示部7000、及びスピーカ7303等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子、各種センサ、マイクロフォン等を有することができる。
【0426】
図19(F)は円柱状の柱7401に取り付けられたデジタルサイネージ7400である。デジタルサイネージ7400は、柱7401の曲面に沿って設けられた表示部7000を有する。
【0427】
図19(E)及び
図19(F)において、表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0428】
表示部7000が広いほど、一度に提供できる情報量を増やすことができる。また、表示部7000が広いほど、人の目につきやすく、例えば、広告の宣伝効果を高めることができる。
【0429】
また、
図19(E)及び
図19(F)に示すように、デジタルサイネージ7300又はデジタルサイネージ7400は、使用者が所持するスマートフォン等の情報端末機7311又は情報端末機7411と無線通信により連携可能であることが好ましい。
【0430】
図20(A)乃至
図20(G)に示す電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有する。
【0431】
図20(A)乃至
図20(G)に示す電子機器は、様々な機能を有する。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像等)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻等を表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して処理する機能、等を有することができる。
【0432】
図20(A)乃至
図20(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0433】
図20(A)は、携帯情報端末9171を示す斜視図である。携帯情報端末9171は、例えばスマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9171は、スピーカ9003、接続端子9006、又はセンサ9007等を設けてもよい。また、携帯情報端末9171は、文字及び画像情報をその複数の面に表示できる。
図20(A)では3つのアイコン9050を表示した例を示している。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示することもできる。情報9051の一例としては、電子メール、SNS、電話等の着信の通知、電子メール又はSNS等の題名、送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、電波強度等がある。又は、情報9051が表示されている位置にはアイコン9050等を表示してもよい。
【0434】
図20(B)は、携帯情報端末9172を示す斜視図である。携帯情報端末9172は、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9172を収納した状態で、携帯情報端末9172の上方から観察できる位置に表示された情報9053を確認することもできる。
【0435】
図20(C)は、タブレット端末9173を示す斜視図である。タブレット端末9173は、一例として、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲーム等の種々のアプリケーションの実行が可能である。タブレット端末9173は、筐体9000の正面に表示部9001、カメラ9002、マイクロフォン9008、スピーカ9003を有し、筐体9000の左側面には操作用のボタンとしての操作キー9005、底面には接続端子9006を有する。
【0436】
図20(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9200は、例えばスマートウォッチ(登録商標)として用いることができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006により、他の情報端末と相互にデータ伝送を行うこと、及び、充電を行うこともできる。なお、充電動作は無線給電により行ってもよい。
【0437】
図20(E)乃至
図20(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。また、
図20(E)は携帯情報端末9201を展開した状態、
図20(G)は折り畳んだ状態、
図20(F)は
図20(E)と
図20(G)の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。例えば、表示部9001は、曲率半径0.1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0438】
本実施の形態は、他の実施の形態、又は実施例と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【実施例0439】
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイスを有する本発明の一態様の発光装置であるサンプル1に関して詳細な作製方法、特性および分析結果について説明する。
【0440】
本実施例において用いた主な化合物の構造式を以下に示す。
【0441】
【0442】
(サンプル1の作製方法)
まず、シリコン基板上に、反射電極として基板側からチタン(Ti)50nm、アルミニウム(Al)70nm、Ti 6nm、透明電極として酸化ケイ素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)10nmをスパッタリング法により順次積層した。この積層膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングし、第1の電極を形成した。なお、透明電極は陽極として機能し、上記反射電極と共に第1の電極とみなされる。
【0443】
続いて、第1の電極上に、スパッタリング法により酸化ケイ素を10nm成膜し、無機絶縁膜を形成した。当該絶縁膜をフォトリソグラフィ法により加工し、第1の電極と重なる複数の開口部を形成した。
【0444】
当該開口部は2mm四方の範囲に251個×251個の計63001個の画素が、マトリクス状に整列したストライプ配列を想定して形成した。また、当該開口部において第1の電極が露出する面積(すなわち副画素の発光面積)は約6.42μm×約1.14μmであり、この形状および配置は、3207ppiの画素密度に相当する。
【0445】
次に、基板上に発光デバイスを形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0446】
その後、約1×10-4Paまで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で60分間の真空焼成を行った後、基板を約30分放冷した。
【0447】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、基板を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定し、無機絶縁膜および第1の電極上に、蒸着法により上記構造式(i)で表されるN-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)と分子量672でフッ素を含む電子アクセプタ材料(OCHD-003)とを、重量比で1:0.03(=PCBBiF:OCHD-003)となるように10nm共蒸着して正孔注入層を形成した。
【0448】
正孔注入層上に、PCBBiFを100nm蒸着し、正孔輸送層を形成した。
【0449】
続いて、正孔輸送層上に、上記構造式(ii)で表される4,8-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4,8mDBtP2Bfpm)と、上記構造式(iii)で表される9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)と、上記構造式(iv)で表される[2-d3-メチル-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)2(mbfpypy-d3))とを、重量比で0.6:0.4:0.1(=4,8mDBtP2Bfpm:βNCCP:Ir(ppy)2(mbfpypy-d3))となるように40nm共蒸着して発光層を形成した。
【0450】
こののち、上記構造式(v)で表される2-{3-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mPCCzPDBq)を10nmとなるように蒸着したのち、上記構造式(100)で表される2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)を15nmとなるように蒸着して電子輸送層を形成した。
【0451】
電子輸送層形成後、減圧下(約60Pa)において80℃で60分加熱を行った。すなわちサンプル1において、自由表面となる層は、mPPhen2Pからなる層である。
【0452】
加熱後真空下(約1×10-4Pa)、70℃90分加熱を行った。フッ化リチウム(LiF)とイッテルビウム(Yb)とを重量比で1:0.5(=LiF:Yb)となるように1.5nm共蒸着して電子注入層を形成した。
【0453】
なおこの加熱工程は、有機半導体膜上に保護膜を形成する工程に生じる加熱を想定している。
【0454】
その後、銀(Ag)とマグネシウム(Mg)とを体積比1:0.1、膜厚25nmとなるように共蒸着し、インジウム錫酸化物(ITO)を70nmスパッタリング法により成膜して第2の電極を形成し、本発明の一態様の発光デバイスを作製した。続いて窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光デバイスが大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(UV硬化性のシール材を素子の周囲への塗布、発光デバイスには照射しないようにシール材のみにUVを照射する処理、大気圧下で80℃にて1時間熱処理)を行い、サンプル1を形成した。なお本実施例1は、クラス1000以下の環境で作製した。
【0455】
(サンプル2の作製方法)
サンプル2は、サンプル1におけるmPPhen2Pを上記構造式(101)で表されるNBPhenに変えた他は、サンプル1と同様に作製した。
【0456】
サンプル1およびサンプル2に含まれる発光デバイスのデバイス構造を以下に示す。
【0457】
【0458】
図21に、緑色の発光デバイスを発光させた状態で、光学顕微鏡により撮影した、サンプル1およびサンプル2の写真を示す。
【0459】
この結果、サンプル1、サンプル2ともに、有機化合物層が電極で挟まれていない状態で80℃の加熱過程を経ているのにも関わらず、著しい表示不良が無く良好な表示を得られたことが分かった。
【0460】
しかし、一方で、電子輸送層にmPPhen2Pを用いたサンプル1は、目立った表示不良が起こらなかったのに対し、NBPhenを用いたサンプル2は発光デバイスの発光領域(陽極形成領域)中に、非発光の領域(写真矢印部)が複数存在することがわかった。なお、この本来駆動時には発光するはずの画素内にある非発光領域のことを本明細書中では画素欠けと言うことがある。
【0461】
これらサンプルの非通電状態(非発光状態)で同様に光学顕微鏡による観察をしたところ、サンプル2では糸状のムラが生じており、このムラの発生位置と上記非発光の領域の発生位置(発光面に対して同じ位置)が一致していることがわかった。また、サンプル2の上記非発光の領域の断面を走査型透過型電子顕微鏡(STEM)で確認したところ、陰極側の有機層が凝集し、発光領域よりも膜厚が厚くなっている膜質不良が生じていることを確認した。これに対して、サンプル1ではこの様な膜質不良はみられなかった。
【0462】
なお、サンプル1の電子輸送層形成後の条件を、80℃から100℃に変更したサンプル3と、120℃に変更したサンプル4を作製し、同じように観察を行った。その結果、サンプル1と同様に、これらの発光デバイスを発光させた状態では非発光の領域、すなわち画素欠けは確認されず、非通電状態で観察しても膜質不良が発生したサンプル2と同じムラは確認されなかった。
【0463】
また、サンプル1とサンプル2の電子輸送層形成後の加熱工程を省略し、それぞれ真空一貫で作製したサンプル5およびサンプル6も作製し、同様に観察をおこなった。この結果、サンプル5にもサンプル6にも、サンプル2の様な膜質不良または表示不良は確認されなかった。
【0464】
なお、上記サンプル3と、サンプル4と、サンプル5は、同等の初期特性と信頼性が得られた。このことからも、本発明の一態様のデバイスは、有機化合物の自由界面への加熱処理を経ても良好な表示性能および素子特性を示すことが分かった。
【0465】
ここで、mPPhen2P、2mPCCzPDBqおよびNBPhenの熱物性(高感度差動型示差熱分析を用いた熱重量測定-示差熱分析(Thermogravimetry-Differential Thermal Analysis:TG-DTA)および示差走査熱量測定(DSC))について分析を行った結果を示す。
【0466】
まず、DSCを行う際の最高温度を決定するために、mPPhen2PのTG測定を行い、熱重量減少率を測定した。分析は高感度差動型示差熱天秤装置(ブルカー・エイエックスエス製、型式:TG-DTA2410SA)を用いて行った。
【0467】
本測定では、5ミリグラムの粉末状のmPPhen2Pを、大気圧・窒素気流下、室温(25℃)から500℃まで40℃/分で昇温加熱した。なおこのmPPhen2Pの粉末サンプルは、真空蒸着で成膜する実際の有機半導体デバイスで用いる材料の純度および状態を想定して、あらかじめ昇華精製を行い、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で純度が99.9%以上であることを確認したサンプルを用いている。
【0468】
図22に、測定した重量減少率を表すグラフを示す。mPPhen2Pは490℃で約3%の重量減少がみられることが分かったが、440℃ではほとんど重量減少しておらず、400℃では重量減少は見られなかった。
【0469】
そのため、TG測定で求めた3%重量減少温度よりも50℃以上低い温度、好ましくは3%重量減少温度よりも100℃以上低い温度であれば、大気圧下ではおおむね昇華しない温度と判断できる。
【0470】
また、3%重量減少温度から150℃低い温度以上、好ましくは100℃低い温度以上を最高温度として測定を行うことにより、融点ピークの存在を見逃さず、且つ大気圧下ではおおむね昇華しない温度で示差走査熱量測定(DSC)を行うことができる。
【0471】
なお、TG測定を行わない場合、DSC測定の最高温度については、ガラス転移点の3倍の温度以下を目安としておくと良い。また、有機化合物の真空蒸着温度の上限を考慮すると、高くても450℃まで測定すれば十分と考えられる。錯体は高くても350℃まで測定すれば十分と考えられる。ただし、その温度まで測定すると昇華、蒸発、分解などが起きる場合、その温度よりも低い温度までとするのが好ましい。ある最高温度での測定における昇華、蒸発、分解の有無に関する判断は、サンプルを変えずに引き続き同じ昇温条件で再測定し、サイクル特性が前の測定と同じ、つまりベースラインが重なるかを確認すると良い。
【0472】
なお、DSCの最高温度は、上述のようにTG測定をあらかじめ行うことによって判断するのが好ましい。
【0473】
なお、以下のDSCでは、3%重量減少温度よりも130℃低い360℃をDSCの最高温度と設定しているが、360℃以上440℃以下の範囲において、mPPhen2Pに融点ピークが存在しないことは確認済みである。
【0474】
次に、mPPhen2Pの粉末を、示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー製、型式:DSC8500)を用い、熱物性を測定した。窒素気流下、まず5.0mgのmPPhen2P粉末をアルミ製の試料パン(品番:02190041)中で、室温から360℃まで昇温し(第1の加熱過程)、360℃で3分保持した。続いて360℃から-10℃まで40℃/分で降温した(降温過程)。そのまま3分保持し、360℃まで40℃/分で昇温した(第2の加熱過程)。
【0475】
図1(A)に降温過程での、
図1(B)に第2の加熱過程でのDSC曲線(温度-熱流図)を示す。mPPhen2Pは第2の加熱過程において135℃付近に、吸熱方向へのベースラインシフトが確認できた。これは、mPPhen2Pが粉末状態からガラス状態へ転移したことを意味し、mPPhen2Pはガラス転移点(Tg)の存在する化合物であることがわかった。なお、mPPhen2Pはこの温度以上では、過冷却液体状態、すなわち溶融状態を含んでいる状態となっている。
【0476】
また、通常Tgは吸熱方向へのベースラインシフトが起こった温度と定義される。
図2に、
図1(B)の拡大図を示す。
図2に示したように低温側のベースラインと、ベースラインの立ち上がりのラインとの交点の温度をTgとすることができる。
【0477】
またここで、mPPhen2Pのベースラインシフトは、図からもわかるように吸熱ピークを伴っていることがわかる。この吸熱ピークは、エンタルピー緩和に由来する吸熱ピークである。エンタルピー緩和があることによって、ガラス状態はより安定化する。mPPhen2Pにおける、エンタルピー緩和由来の吸熱ピークのエネルギー(立ち上がりの裾から立下りの裾まで(130℃付近から175℃付近)の積分値)は、3.6 J/gと大きく、mPPhen2Pは安定なガラス状態を維持しやすいことがわかった。そのため、エンタルピー緩和由来の吸熱ピークが存在する化合物を用いた発光デバイスは、より加熱工程に強く、表示品質の良好な発光デバイスとすることができる。エンタルピー緩和由来の吸熱ピークのエネルギーは1J/g以上であることが好ましく、3 J/g以上であることがより好ましく、5J/g以上であることがさらに好ましい。なお、エンタルピー緩和による安定化には限界があり、上限はおおむね20J/gであることから、エンタルピー緩和由来の吸熱ピークのエネルギーは20J/g以下であることが好ましい。
【0478】
また、
図2より、第2の加熱過程において130℃付近から175℃付近までにエンタルピー緩和の吸熱ピークが少なくとも3つ以上あることがわかる。このことから、mPPhen2Pは、当該温度範囲において複数種類のガラス状態が混在しており、アモルファス性が高いことがわかった。
【0479】
また第2の加熱過程には、このエンタルピー緩和由来のピーク以外の吸熱ピークはみられず、融点は確認できなかった。このことから、このサンプル中には結晶が存在しないことが示唆された。
【0480】
また、本DSC測定においては、第2の加熱過程にも、降温過程にも、目立った発熱ピークが見られなかった。つまり、本測定において、mPPhen2Pには目立った冷結晶化または、結晶化が見られなかった。
【0481】
また、サンプルを室温に戻した後に、その状態を確認すると、mPPhen2Pが試料パンの蓋側にもガラス状に固着しており、溶融していたことが確認された。
【0482】
以上の結果から、本発明の一態様のmPPhen2Pは結晶化しにくく、凝集しにくい材料であることが分かった。
【0483】
なお降温過程の350℃から360℃付近、加熱過程の-10℃から5℃付近のピークは、装置制御上現れるピークであり、mPPhen2P由来の熱物性ではない。
【0484】
また、2mPCCzPDBqの粉末を、mPPhen2Pと同様に熱物性の測定を行った。窒素気流下、まず5.0mgのm2mPCCzPDBq粉末をアルミ製の試料パン(品番:02190041)中で、室温から380℃まで昇温し(第1の加熱過程)、380℃で3分保持した。続いて380℃から-10℃まで40℃/分で降温した(降温過程)。そのまま3分保持し、380℃まで40℃/分で昇温した(第2の加熱過程)。
【0485】
図23(A)に降温過程での、
図23(B)に第2の加熱過程での2mPCCzPDBqのDSC曲線(温度-熱流図)を示す。2mPCCzPDBqは第2の加熱過程において159℃付近に、吸熱方向へのベースラインシフトが確認できた。これは、2mPCCzPDBqが粉末状態からガラス状態へ転移したことを意味し、2mPCCzPDBqはガラス転移点(Tg)の存在する化合物であることがわかった。なお、2mPCCzPDBqはこの温度以上では、過冷却液体状態、すなわち溶融状態を含んでいる状態となっている。
【0486】
またここで、2mPCCzPDBqのベースラインシフトは、図からもわかるように吸熱ピークを伴っていることがわかる。この吸熱ピークは、エンタルピー緩和に由来する吸熱ピークである。エンタルピー緩和があることによって、ガラス状態はより安定化する。このため、2mPCCzPDBqは安定なガラス状態を維持しやすいことがわかった。
【0487】
また、第2の加熱過程には、このエンタルピー緩和由来のピーク以外の吸熱ピークはみられず、融点は確認できなかった。このことから、このサンプル中には結晶が存在しないことが示唆された。
【0488】
また、本DSC測定においては、第2の加熱過程にも、降温過程にも、目立った発熱ピークが見られなかった。つまり、本測定において、2mPCCzPDBqには目立った冷結晶化または結晶化は見られなかった。
【0489】
また、サンプルを室温に戻した後に、その状態を確認すると、2mPCCzPDBqが試料パンの蓋側にもガラス状に固着しており、溶融していたことが確認された。
【0490】
以上の結果から、本発明の一態様の2mPCCzPDBqは結晶化しにくく、凝集しにくい材料であることが分かった。
【0491】
なお降温過程の370℃から380℃付近、加熱過程の-10℃から5℃付近のピークは、装置制御上現れるピークであり、2mPCCzPDBq由来の熱物性ではない。
【0492】
続いて、NBPhen粉末を、示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー製、型式:DSC8500)で熱物性を同様に測定した。窒素気流下、まず1.2mgのNBPhen粉末をアルミの試料パン中で、室温から360℃まで昇温し(第1の加熱過程)、360℃で3分保持し、360℃から-10℃まで40℃/分で降温した(降温過程)。そのまま3分保持し、360℃まで40℃/分で昇温した(第2の加熱過程)。
【0493】
図24(A)に降温過程、
図24(B)に第2の加熱過程のDSC曲線を示す。降温過程には、280℃から330℃付近に150J/gの大きな発熱ピークとして結晶化ピークがみられた。結晶化ピークが見られるということは、NBPhenは溶融状態から冷却する際に結晶が生成することがわかる。
【0494】
また、第2の加熱過程においては、340℃から360℃付近に157J/gの大きな吸熱ピークとして、融点ピークがみられた。融点ピークが見られたことで、このサンプル中に結晶が存在していたことがわかる。また、降温過程で見られた結晶化ピークの熱量(150J/g)と融点ピークの熱量(157J/g)がおおよそ同じであることから、降温時に生成した結晶が昇温時に溶融していることが示唆された。また測定試料を室温に戻した後、状態を確認すると、NBPhenが試料パンの蓋側にもガラス状に固着しており、溶融していたことが確認された。
【0495】
なお、第2の加熱過程において160℃付近に、吸熱方向へベースラインシフトを伴わない吸熱ピークが確認できた。これは、降温時に生成した結晶が他の結晶状態へ相転移したものと予測される。
【0496】
なお、降温過程の350℃から360℃付近、および第2の加熱過程の-10℃から5℃付近のピークは、装置制御上現れるピークであり、NBPhen由来の熱物性ではない。
【0497】
以上の結果から、NBPhenは結晶化しやすく、凝集しやすい材料であり、本発明の一態様における第1の化合物の熱物性条件を満たしていない化合物であることがわかった。
【0498】
続いて、4,8mDBtP2Bfpmおよび、βNCCPに、mPPhen2PおよびNBPhenと同様のDSC測定を行った。この結果、4,8mDBtP2Bfpmおよび、βNCCPは本発明の一態様における第1の化合物に相当する熱物性(示差走査熱量測定において、第1の加熱により溶融した状態から冷却を行い、続けて第2の加熱を行った際、冷却過程において発熱ピークが観測されず、且つ、第2の加熱過程において発熱ピークと融点ピークが観測されない)をもつことがわかった。
【0499】
また、ガラス転移点(Tg)は、2mPCCzPDBqが159℃、4,8mDBtP2Bfpmが135℃、βNCCPが135℃と、いずれも120℃以上と良好な特性を示した。
【0500】
また、mPPhen2P、2mPCCzPDBqおよびNBPhenをシリコン基板上に材料を成膜して、単層膜のサンプルを作製し、各サンプルに対して耐熱性試験を行った。
【0501】
サンプル11(mPPhen2P)、サンプル12(2mPCCzPDBq)、サンプル13(NBPhen)の作製方法を示す。
【0502】
まず、真空蒸着装置を用いて、シリコン基板上に試料層を形成し、ガラス基板で封止を行い、2cm×2cmの四角形状に切り出してサンプルを得た。この時、試料層が密閉されない様に、封止は一部切れた状態にした。また試料層とガラス基板が接しない様に、シリコン基板とガラス基板のギャップを調整して封止している(数十~数百μm程度)。なお、試料層にゴミが載らないように、試料層形成から封止まではクラス100以下の環境で作製した。封止後は、室温(25℃付近)で、窒素気流下(デシケーター内)で保管した。
【0503】
サンプル11の試料層は、シリコン基板上にmPPhen2Pを膜厚15nmとなるように蒸着し、形成した。
【0504】
サンプル12の試料層は、シリコン基板上に、2mPCCzPDBqを膜厚15nmとなるように蒸着し、形成した。
【0505】
サンプル13の試料層は、シリコン基板上にNBPhenを膜厚15nmとなるように蒸着し、形成した。
【0506】
次に、ベルジャー型加熱器(柴田科学(株)ベルジャー型バキュームオーブンBV-001)にサンプルを導入し、約10hPaまで減圧してから、80℃から120℃の範囲の設定温度で1時間焼成した。1時間経過後、基板を40度まで冷却し、大気解放の後、サンプルをピンセットで取り出した。なおこの焼成は、試料層作成から72時間以内に行った。
【0507】
このような方法で作製した各サンプルについて、目視および光学顕微鏡(オリンパス(株)大型測定顕微鏡 STM6-LM)にて観察を行った。なおこの観察は、焼成から72時間以内に行った。
【0508】
本実施例で作製した試料の写真(100倍または1000倍に拡大して明視野観察)を
図25に示す。なお、
図25(A)、(B)は、120℃で焼成した写真であり、
図25(C)は80℃で焼成した写真である。
【0509】
各サンプルの構造と、
図25に基づく結果を以下の表2に示す。なお、表2中、〇印は膜質異常がなかったこと(膜質異常なし)を示し、×印は、膜質異常があったこと(膜質異常あり)を示す。
【0510】
【0511】
以上の結果から、サンプル11 mPPhen2Pおよびサンプル12 2mPCCzPDBqでは、高い温度(120℃)で耐熱試験を行っても膜質異常が起こらないことがわかった。一方、サンプル13 NBPhenでは、低い温度(80℃)で膜質異常が起きたことを確認した。
【0512】
つまり、発熱ピークと融点ピークが観測されたNBPhenを用いたサンプル13では、低い温度(80℃)で有機膜全面に膜質異常が起き、発熱ピークと融点ピークが観測されなかったmPPhen2Pおよび2mPCCzPDBqを用いたサンプル11およびサンプル12では、高い温度(120℃)をかけても膜質異常が起こらないことがわかった。
【0513】
以上のように、特定の測定方法により示差走査熱量測定を行った際、冷却過程において発熱ピークが観測されず、且つ、二度目の加熱過程において発熱ピークと融点ピークが観測されない化合物よりなる膜は、耐熱性高いことがわかった。結果として、当該化合物を用いることで、製造工程における加熱に強く、表示品質の良好な発光デバイスを得ることができる。
【0514】
サンプル1およびサンプル2は共に、耐熱性の高い膜を形成する本発明の一態様における第1の化合物に相当する熱物性を有する2mPCCzPDBq、4,8mDBtP2Bfpmおよび、βNCCPを有機化合物層に用いていることから、加熱を行っても表示不良が少ない良好な特性有機半導体デバイスを作製することができる。
【0515】
一方で、サンプル1とサンプル2との結果の違いは、加熱時に自由表面となる電子輸送層の材料に、mPPhen2Pを用いたか、NBPhenを用いたかどうかに由来する。サンプル1は、有機化合物層の自由表面に本発明の一態様における第1の化合物の熱物性条件を満たしたmPPhen2Pが存在する状態で、80℃の加熱を行ったため、発光不良の発生が抑制され、逆にサンプル2は、当該自由表面に第1の化合物の熱物性条件を満たさないNBPhenを用いたことで当該NBPhen層が凝集したため発光不良が発生したと考えられる。
【0516】
ここで、サンプル2の素子と、サンプル12の膜とを比較すると、どちらもNBPhenを用いており、80℃、1時間の加熱過程を経ている。しかしながら、この2サンプルの光学顕微鏡による表面観察結果を比較するとサンプル2の方が、膜質異常が明らかに少ない結果であった。
【0517】
これは、サンプル2が有機化合物の積層構造を有し、サンプル12が単膜であることが原因と考えられる。すなわち、サンプル2では、NBPhenと第1の電極(無機層)との間、つまり有機化合物層に、2mPCCzPDBqと、4,8mDBtP2Bfpmと、βNCCPとを含むのに対し、サンプル12では、NBPhenとガラス基板(無機層)が直接接していることが原因と考えられる。
【0518】
なお、サンプル2においてNBPhenと第1の電極との間に存在する有機化合物には、第1の化合物の熱物性を有する有機化合物、すなわち第1の化合物が含まれていることが好ましい。
【0519】
本発明の一態様の第1の化合物の特性をもつ化合物が含まれる層の膜厚は、有機化合物層の膜厚の30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは100%であることが好ましい。この場合、それぞれの化合物を含む層の膜厚は、飛行時間型二次イオン質量分析法(ToF-SIMS)で基板に対して深さ方向で解析するなどで見積もることができる。また各層での第1の化合物の特性をもつ化合物の含有量は、50%以上、さらに好ましくは80%以上含まれると好ましい。また同様に、有機化合物層に対する含有量では、30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上含まれると好ましい。この場合、含有量は溶液として高速液体クロマトグラフィー(HPLC)での吸収強度比または屈折率強度比などで見積もることができる。
【0520】
なお、溶融状態の判断の他の目安としては、DSC測定後にサンプルを室温付近まで戻し、目視で見た時に、測定前の粉末と形状が異なっており、ガラス状に透明度のある状態となっていたら、溶融していたと判断できる。また測定中にサンプルを撮影できる機能のあるDSC装置を用いれば、加熱過程でサンプルが粉末状から透明度のある状態に変化することが観測できれば、溶融状態であることがわかる。
【0521】
また、DSC測定では、第1の加熱により溶融した状態からの冷却(降温過程)と、第2の加熱(昇温過程)との間に、温度保持時間を有している。サンプルを再現良く相対的に比較するために、この保持時間は同様とするのが好ましく、1分以上10分以内、好ましくは1分以上3分以内とするのが好ましい。なお同様の理由から、第1の加熱により溶融した状態と、冷却との間にも温度保持時間を有しており、1分以上10分以内、好ましくは1分以上3分以内とするのが好ましい。
【0522】
DSC測定において、融点ピーク、結晶化ピークおよび冷結晶化ピークの熱量は、このピークの立ち上がりの裾から立下りの裾までの積分値で求める。これらピークが存在しないと結晶化または凝集がおきにくく、最も好ましい。ただしピークが存在する場合は20J/g以下の化合物とするのが好ましい。
【0523】
以上の結果から、本発明の一態様における第1の化合物(DSCで融点ピークと、結晶化ピークと、冷結晶化ピークが観測されない化合物)を有機化合物層に用いることによって、加熱工程を経ても表示不良が少ない良好な特性有機半導体デバイスを作製することができる。また、特に有機化合物層の自由界面に、本発明の一態様における第1の化合物に相当するmPPhen2Pを用いて作製した有機半導体デバイスは、加熱工程由来の膜質不良を強く抑制し、表示品位が良好であることがわかった。すなわち、独立して形成される有機化合物層の自由界面に、第1の化合物を用いることが好ましいことがわかった。なお、この膜厚は、10nm以上であると、好ましく、15nm以上であるとより好ましい。またこの層は、発光層または活性層よりも第2の電極側に形成されるのが好ましい。この場合、良好な表示性能または、良好な効率または寿命が期待できる。
本実施例では、示差走査熱量測定において、第1の加熱により溶融した状態から冷却を行い、続けて第2の加熱を行った際、前記冷却過程において発熱ピークが観測されず、且つ、前記第2の加熱過程において発熱ピークと融点ピークが観測されない化合物についていくつか例示を行う。
本実施例では、実施例1で測定を行ったmPPhen2PおよびNBPhen以外の化合物についてDSC法により測定を行った結果を示す。測定方法については、実施例1のDSCと同様であるため、詳細な記載を省略する。
2-[3-(2-トリフェニレニル)フェニル]-1,10-フェナントロリン(略称:mTpPPhen)構造式(200)、2-フェニル-9-(2-トリフェニレニル)-1,10-フェナントロリン(略称:Ph-TpPhen)構造式(201)、2-[4-(9-フェナントレニル)-1-ナフタレニル]-1,10-フェナントロリン(略称:PnNPhen)構造式(202)、2-[4-(2-トリフェニレニル)フェニル]-1,10-フェナントロリン(略称:pTpPPhen)構造式(203)、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-[1,1’:4’,1’’-ターフェニル-2-イル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(PCBFpTP-02)構造式(300)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)構造式(400)、および4-[4-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzPBfpm)構造式(401)。
すなわち、mTpPPhen、PnNPhen、PCBFpTP-02、4PCCzPBfpm、およびPCCzPTznを用いることにより、加工工程における加熱に強い表示性能の良好な有機半導体デバイスを作製することができる。
なお、mTpPPhen、Ph-TpPhen、PnNPhen、およびpTpPPhenはいずれも類似の構造を有する電子輸送性を有する材料であり、一見しただけではどの化合物を用いれば耐熱性の良好な有機半導体デバイスが作製できるのかはわからない。しかし、第1の加熱により溶融した状態から冷却を行い、続けて第2の加熱を行った際、冷却過程において発熱ピークが観測されず、且つ、第2の加熱過程において発熱ピークと融点ピークが観測されない化合物を選択することによって、加工工程における加熱に強い表示性能の良好な有機半導体デバイスを作製することができる。
さらに、5,5’,5’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ-1,10-フェナントロリン(略称:Phen3P)、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、2-{3-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mPCCzPDBq)、3,6-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PC2PC)、3,9-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール(略称:PCCzPC)、2,4,6-トリス[3’-(ピリジン-3-イル)-5’-tert-ブチル-ビフェニル-3-イル]-1,3,5-トリアジン(略称:tBu-TmPPPyTz)、2,2’-(2,7-ナフタレンジイルジ-3,1-フェニレン)ビス[4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン](略称:mTznP2N)、9-(1-ナフチル)-10-[4-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN-βNPAnth)および2,2’-ビフェニル-4,4’-ジイルビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:PPhen2BP)について同様の測定を行った結果を表3に示す。また、これら化合物の構造式を以下に示す。
表3より、Phen3PからmTznP2Nまでが、示差走査熱量測定において、25℃以下から第1の加熱を行い、昇温最高温度で1分から10分(通常3分)保持し、40℃/min以上の冷却速度で25℃以下まで冷却を行い、25℃以下において1分から10分(通常3分)保持し、40℃/min以上の昇温速度で前記第1の加熱後の保持温度まで第2の加熱を行った際、前記冷却過程において発熱ピークが観測されず、且つ、前記第2の加熱過程において発熱ピークと融点ピークが観測されない化合物であり、αN-βNPAnthおよびPPhen2BPは第2の加熱過程において発熱ピーク(Tcc)と融点ピーク(Tm)が観測されている化合物となる。
すなわち、表3において、Phen3PからmTznP2Nの間に記載された化合物は本発明の一態様における第1の化合物であり、これらを用いることにより、加工工程における加熱に強い表示性能の良好な有機半導体デバイスを作製することができる。
これら化合物は、一見しただけではどの化合物を用いれば耐熱性の良好な有機半導体デバイスが作製できるのかはわからない。しかし、第1の加熱により溶融した状態から冷却を行い、続けて第2の加熱を行った際、冷却過程において発熱ピークが観測されず、且つ、第2の加熱過程において発熱ピークと融点ピークが観測されない化合物を選択することによって、加工工程における加熱に強い表示性能の良好な有機半導体デバイスを作製することができる。
なお表3中、Tgはガラス転移温度を示す。Tc(結晶化または冷結晶化)とTm(融点)は観測された吸熱または発熱ピークの比熱容量を示す。N.D.とはピークが観測されなかったことをす。
まず、真空蒸着装置を用いて、シリコン基板上に試料層を形成し、ガラス基板で封止を行い、2cm×2cmの四角形状に切り出してサンプルを得た。この時、試料層が密閉されない様に、封止は一部切れた状態にした。また試料層とガラス基板が接しない様に、シリコン基板とガラス基板のギャップを調整して封止している(数十~数百μm程度)。なお、試料層にゴミが載らないように、試料層形成から封止まではクラス100以下の環境で作製した。封止後は、室温(25℃付近)で、窒素気流下(デシケーター内)で保管した。
次に、ベルジャー型加熱器(柴田科学(株)ベルジャー型バキュームオーブンBV-001)にサンプルを導入し、約10hPaまで減圧してから、80℃から120℃の範囲の設定温度で1時間焼成した。1時間経過後、基板を40度まで冷却し、大気解放の後、サンプルをピンセットで取り出した。なおこの焼成は、試料層作成から72時間以内に行った。
このような方法で作製した各サンプルについて、目視および光学顕微鏡(オリンパス(株)大型測定顕微鏡 STM6-LM)にて観察を行った。なおこの観察は、焼成から72時間以内に行った。
以上の結果から、サンプル20 Phen3Pでは、120℃で耐熱試験を行っても膜質異常が起こらないことがわかった。一方、サンプル21 PPhen2BPでは、80℃から100℃までは膜質異常が起きなかったが120℃で蒸着膜のエッジ部分(シャドウマスク方式で蒸着した、蒸着エリアの端部)で膜質異常が起きたことを確認した。
つまり、発熱ピークと融点ピークが観測されたPPhen2BPを用いたサンプル21では、Tg(166℃)以下の加熱温度、つまり120℃でも膜質異常が起き、発熱ピークと融点ピークが観測されなかったPhen3Pを用いたサンプル20では、120℃をかけても膜質異常が起こらないことがわかった。発熱ピークと融点ピークが観測される材料が自由界面にあると、特に蒸着膜のエッジ部分が膜質異常が起きやすいことがわかった。そのため、エッジ部分が多い高精細な塗分け型の有機電界素子の場合、上記第1の化合物(発熱ピークと融点ピークが観測されない化合物)を自由界面とした加熱処理が有効であることが分かった。
以上のように、特定の測定方法により示差走査熱量測定を行った際、冷却過程において発熱ピークが観測されず、且つ、二度目の加熱過程において発熱ピークと融点ピークが観測されない化合物よりなる膜は、耐熱性高いことがわかった。結果として、当該化合物を用いることで、製造工程における加熱に強く、表示品質の良好な発光デバイスを得ることができる。