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特開2023-155220セパレータおよびそれを含む電気化学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155220
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】セパレータおよびそれを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/451 20210101AFI20231013BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20231013BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20231013BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20231013BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20231013BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20231013BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20231013BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/489
H01M50/443 B
H01M50/414
H01M50/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063720
(22)【出願日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】10-2022-0043964
(32)【優先日】2022-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0039491
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ボン
(72)【発明者】
【氏名】オ ウン ジ
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョ キュ ヨン
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE03
5H021EE05
5H021EE06
5H021EE11
5H021EE21
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高温熱収縮率などの十分な耐熱性を確保するとともに電極接着性を向上させたセパレータおよびそれを含む電気化学素子を提供する。
【解決手段】多孔性基材と、前記多孔性基材の片面または両面上に備えられたコーティング層と、を含むセパレータであって、前記コーティング層は、無機粒子、粒子状高分子バインダー、および水溶性高分子バインダーを含み、下記式(1)で示されるGa/Gcの値が0.2~0.75である、セパレータとする。
(1)Ga/Gc(式(1)中、Gaは、前記コーティング層の表面光沢度であり、Gcは、平均粒径100~500nm、BET15~20m/g、かさ密度200~300kg/mの無機粒子を90.0~99.9重量%、および水溶性高分子バインダーを0.1~10重量%含むコーティング層が厚さ3μm以下に多孔性基材上に備えられたセパレータのコーティング層の表面光沢度である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基材と、前記多孔性基材の片面または両面上に備えられたコーティング層と、を含むセパレータであって、
前記コーティング層は、無機粒子および高分子バインダーを含み、
下記式(1)で示されるGa/Gcの値が0.2~0.75である、セパレータ。
(1)Ga/Gc
(前記式(1)中、前記Gaは、前記コーティング層の表面光沢度であり、前記Gcは、平均粒径100~500nm、BET 15~20m/g、かさ密度200~300kg/mの無機粒子を90.0~99.9重量%、および水溶性高分子バインダーを0.1~10重量%含むコーティング層が厚さ3μm以下に多孔性基材上に備えられたセパレータのコーティング層の表面光沢度である。)
【請求項2】
前記Ga値は16~55GUである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記高分子バインダーは、粒子状高分子バインダーおよび水溶性高分子バインダーのいずれか一つ以上を含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記コーティング層が粒子状高分子バインダーを含む場合、前記コーティング層の厚さに対する前記粒子状高分子バインダーの粒径D50の比が1~5である、請求項3に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記コーティング層が粒子状高分子バインダーを含む場合、前記粒子状高分子バインダーの粒径D50が1μm超過10μm以下である、請求項3に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記コーティング層が粒子状高分子バインダーを含む場合、前記粒子状高分子バインダーのガラス転移温度(Tg)が50~70℃である、請求項3に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記コーティング層が粒子状高分子バインダーおよび水溶性高分子バインダーの両方を含む場合、前記コーティング層は、重量%で、無機粒子:88%以上、粒子状高分子バインダー:1.6~8%、および水溶性高分子バインダー:0%超過5%以下で含む、請求項3に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記水溶性高分子バインダーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methylcellulose、HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(hydroxyethyl methylcellulose、HEMC)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose、HEC)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose、CMC)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリアクリレート(polyacrylate、PA)、およびポリアクリルアミド(polyacrylamide、PAM)のいずれか1つまたは2つ以上を含む、請求項3に記載のセパレータ。
【請求項9】
150℃で1時間放置後に測定されたMD方向およびTD方向の熱収縮率がいずれも5%以下である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記無機粒子は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属カーボネート、金属水酸化物、および金属炭窒化物からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記粒子状高分子バインダーは、アクリル系高分子を含む、請求項3に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記表面光沢度は、コーティング層の表面20°~95°での表面光沢度である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のセパレータを含む、電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セパレータおよびそれを含む電気化学素子に関する。具体的には、高温熱収縮率などの十分な耐熱性を確保するとともに電極接着性を向上させたセパレータおよびそれを含む電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
セパレータの高温安定性の問題を解決するための方法として、耐熱性を向上させるために、従来のセパレータの片面や両面に、無機粒子と高分子バインダーのスラリー組成物を多孔性基材にコーティングする方法が提案されている。上記の方法により多孔性基材の片面または両面に、無機粒子が互いに連結されて形成され、無機粒子間に気孔が形成される多孔性無機粒子層が形成されたセラミックコーティングセパレータ(Ceramic Coated Separator、CCS)は、高温熱収縮率が低く、耐熱性に優れるという長所があり、EV用大型電池システムに適用されている。
【0003】
しかしながら、前記セラミックコーティングセパレータは、電極との接着性が不足しており、セル組み立て工程中にセパレータと電極が分離し、電極組立体構造の歪み、変形などが発生する恐れがある。具体的に例を挙げると、セルスタッキング(cell stacking)時にゼリーロール(jelly roll)内で電極とセパレータとの間に整列不良(misalignment)の問題が発生する恐れがある。整列不良の問題を有するスタックセル(stack cell)を用いた電池駆動時には、電極間の短絡が発生し、火災などの安全性の問題があるため、電池の安定性のために必ず改善されなければならない問題である。
【0004】
セパレータの接着性を向上させるための方法の中でも代表的に、前記無機粒子層の他に接着性有機物層(熱融着層)をさらに備える方法が提案されている。しかし、このような方法は、別に接着性有機物層をさらに備えなければならないという煩わしい問題があるだけでなく、コーティング工程を複数回行わなければならないという点で、設備および工程費用が過度に発生する恐れがあり、十分な高温熱収縮率を確保できない可能性もある。
【0005】
すなわち、セラミックコーティングセパレータの長所である低い高温熱収縮率の耐熱性など、従来のセパレータと比べて同等レベル以上の物性を確保可能であるとともに電極接着性を向上可能なセパレータに関する研究は未だに不十分な状況である。特に、無機粒子層の他に別に接着性有機物層(熱融着層)をさらに備えなくても、優れた耐熱性および電極接着性の両方を満たすセパレータに関する開発が切実な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1330675号公報(公告日:2013年11月18日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した問題を解決するために、一実施形態は、高温熱収縮率などの十分な耐熱性を確保するとともに電極接着性を向上させたセパレータおよびそれを含む電気化学素子を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するための一手段として、一実施形態によると、多孔性基材と、前記多孔性基材の片面または両面上に備えられたコーティング層と、を含むセパレータであって、前記コーティング層は、無機粒子および高分子バインダーを含み、下記式(1)で示されるGa/Gcの値が0.2~0.75である、セパレータを提供することができる。
【0009】
(1)Ga/Gc
前記式(1)中、前記Gaは、前記コーティング層の表面光沢度であり、前記Gcは、平均粒径100~500nm、BET 15~20m/g、かさ密度200~300kg/mの無機粒子を90.0~99.9重量%、および水溶性高分子バインダーを0.1~10重量%含むコーティング層が厚さ3μm以下に多孔性基材上に備えられたセパレータのコーティング層の表面光沢度である。
【0010】
また、一実施形態によると、前記Ga値は16~55GUであってもよい。
また、一実施形態によると、前記高分子バインダーは、粒子状高分子バインダーおよび/または水溶性高分子バインダーを含んでもよい。
【0011】
一実施形態に係るセパレータのコーティング層が粒子状高分子バインダーを含む場合、
前記コーティング層の厚さに対する前記粒子状高分子バインダーの粒径D50の比が1~5であってもよく、
前記粒子状高分子バインダーの粒径D50が1μm超過10μm以下であってもよく、
前記粒子状高分子バインダーのガラス転移温度(Tg)が50~70℃であってもよい。
【0012】
また、一実施形態に係る前記コーティング層が高分子バインダーとして粒子状高分子バインダーおよび水溶性高分子バインダーの両方を含む場合、前記コーティング層は、重量%で、無機粒子:88%以上、粒子状高分子バインダー:1.6~8%、および水溶性高分子バインダー:0%超過5%以下で含んでもよい。
【0013】
また、一実施形態によると、前記水溶性高分子バインダーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methylcellulose、HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(hydroxyethyl methylcellulose、HEMC)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose、HEC)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose、CMC)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリアクリレート(polyacrylate、PA)、およびポリアクリルアミド(polyacrylamide、PAM)のいずれか1つまたは2つ以上を含んでもよい。
【0014】
また、一実施形態に係るセパレータは、150℃で1時間放置後に測定されたMD方向およびTD方向の熱収縮率がいずれも5%以下であってもよい。
また、一実施形態によると、前記無機粒子は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属カーボネート、金属水酸化物、および金属炭窒化物からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含んでもよい。
また、一実施形態によると、前記粒子状高分子バインダーは、アクリル系高分子を含んでもよい。
【0015】
また、上述した目的を達成するための他の一手段として、一実施形態によると、前述した実施形態のうち一実施形態に係るセパレータを含む、電気化学素子を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
一実施形態に係るセパレータは、式(1)による表面光沢度比を満たすことで、高温熱収縮率などの十分な耐熱性を確保するとともに電極接着性を向上可能であるという効果がある。特に、別に接着性有機物層(熱融着層)をさらに備えなくても、優れた耐熱性および電極接着性の両方を満たすことができるという効果がある。
【0017】
一実施形態によると、多孔性基材と、前記多孔性基材の片面または両面上に備えられたコーティング層と、を含むセパレータであって、前記コーティング層は、無機粒子および高分子バインダーを含み、下記式(1)で示されるGa/Gcの値が0.2~0.75であるセパレータは、耐熱性および電極接着性に優れる。
【0018】
(1)Ga/Gc
前記式(1)中、前記Gaは、前記コーティング層の表面光沢度であり、前記Gcは、平均粒径100~500nm、BET 15~20m/g、かさ密度200~300kg/mの無機粒子を90.0~99.9重量%、および水溶性高分子バインダーを0.1~10重量%含むコーティング層が厚さ3μm以下に多孔性基材上に備えられたセパレータのコーティング層の表面光沢度である。
【0019】
一実施形態に係るセパレータは、高温での十分な熱収縮率を確保することができる。一実施形態に係るセパレータは、150℃で1時間放置後に測定されたMD方向およびTD方向の熱収縮率がいずれも5%以下であってもよい。
一実施形態に係るセパレータは、上記のように高温での十分な熱収縮率を確保するとともに電極接着性を向上させることができる。
【0020】
また、一実施形態に係るセパレータは、十分な熱収縮率および向上した電極接着性を確保するとともに、従来のセパレータと比べて同等レベル以上の通気度を確保することができる。
【0021】
上述した効果のように、一実施形態によると、別に接着性有機物層(熱融着層)をさらに備えなくても、高温熱収縮率などの十分な耐熱性、十分な通気度など、従来のセパレータと比べて同等レベル以上の物性を確保可能であるとともに電極接着性を向上可能であるという効果がある。
【0022】
上記のように高温熱収縮率などの十分な耐熱性、十分な通気度など、従来のセパレータと比べて同等レベル以上の物性を確保可能であるとともに電極接着性を向上可能であるという結果から、一実施形態に係るセパレータは、セルスタッキング(cell stacking)時にゼリーロール(jelly roll)内で電極とセパレータとの間に発生し得る整列不良(misalignment)の問題を解決することができ、電極とセパレータとの間の整列不良により発生し得る電池寿命の劣化問題も解決することができ、電池の作動時にも優れた安定性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一実施形態の利点および特徴、ならびにそれらを達成する方法は、詳細に後述する実施形態を参照すると明らかになるであろう。ただし、一実施形態は、以下に開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現できるものである。以下、一実施形態を実施するための具体的な内容について詳細に説明する。
【0024】
他の定義がなければ、本明細書で用いられる全ての用語(技術および科学的用語を含む)は、本明細書に開示された技術分野における通常の知識を有する者に共通に理解できる意味として用いられてもよい。明細書の全体にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とする際、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。また、単数形は、語句において特に言及しない限り、複数形も含む。
【0025】
本明細書において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上部に」または「上に」存在するとする際、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合も含む。
【0026】
本明細書において、「粒子状高分子バインダーの粒径」または「平均粒径」は、D50を意味し得、前記D50は、Coulter原理を用いた粒度分布測定において、小さい粒径から累積体積が50%となるときの粒子の粒径を意味する。ここで、D50は、測定対象となる粒子に対し、KS A ISO 13320-1規格に準じて、試料を採取し、Beckman coulter社製のMultisizer 4e Coulter counterを用いて分析された粒度分布結果から導出することができる。
【0027】
本明細書において、「セパレータの厚さ」は、製造されたコーティング層-多孔性基材セパレータの全厚さを指してもよく、次の方法により測定することができる。一実施形態によると、前記「セパレータの厚さ」は、セパレータを10重に重ねた後、TD方向に任意の5ポイントでMitutoyo社製の厚さ測定器により厚さをそれぞれ測定した後、5で割って10重のセパレータの平均厚さを導出し、再び10で割って単一のセパレータの平均厚さを導出することができる。
【0028】
一実施形態によると、多孔性基材と、前記多孔性基材の片面または両面上に備えられたコーティング層と、を含むセパレータであって、前記コーティング層は、無機粒子および高分子バインダーを含み、下記式(1)で示されるGa/Gcの値が0.2~0.75である、セパレータを提供することができる。
【0029】
(1)Ga/Gc
前記式(1)中、前記Gaは、前記コーティング層の表面光沢度であり、前記Gcは、平均粒径100~500nm、BET 15~20m/g、かさ密度200~300kg/mの無機粒子(例えば、ベーマイト(boehmite)粒子)を90.0~99.9重量%、および水溶性高分子バインダー(例えば、ポリアクリルアミド(polyacryl amide、PAM))を0.1~10重量%含むコーティング層が厚さ3μm以下に多孔性基材上に備えられたセパレータのコーティング層の表面光沢度である。
【0030】
一実施形態において、前記高分子バインダーは、粒子状高分子バインダーおよび水溶性高分子バインダーのいずれか一つ以上を含んでもよい。
発明者らが研究を重ねた結果、無機粒子および高分子バインダーを含むコーティング層を含むセパレータにおいて、前記コーティング層の表面光沢度が特定のGa/Gc値の範囲を満たす場合、高温熱収縮率などの十分な耐熱性、十分な通気度など、従来のセパレータと比べて同等レベル以上の物性を確保可能であるとともに電極接着性を向上可能であることを確認した。
【0031】
一実施形態により実現された電極の耐熱性および電極接着性は、前記コーティング層の表面光沢度比が式(1)を満たすようにすることで達成されるものであって、前記式(1)のような表面光沢度を実現する手段には特に制限がない。例えば、コーティング層に含まれる高分子バインダーを用いて、前記式(1)を満たすように調節することができる。例えば、コーティング層に粒子状高分子バインダーを用いる場合、粒子状高分子バインダーの形状(球状、非球状)、単量体の種類、粒径、コーティング層の厚さとの比、ガラス転移温度などを調節して前記式(1)を達成してもよく、または水溶性高分子バインダーを用いる場合、単量体の種類、官能基の種類、重合方法などを調節して前記式(1)を達成してもよい。または、例えば、コーティング層に含まれる無機物の粒子サイズ、無機物の粒子サイズによる表面粗さ(roughness)を調節して前記式(1)を達成してもよい。
【0032】
例えば、コーティング層が粒子状高分子バインダーを含む場合、粒子状高分子バインダーのコーティング層中での分布、粒子状高分子バインダーの大きさ、コーティング層の表面外に突出して備えられる粒子状高分子バインダーの比重および分布、高温熱収縮率などの耐熱性への寄与度が大きい無機粒子のコーティング層中での分布、大きさなどが前記Ga/Gc値に影響を与えることができる。
【0033】
一実施形態において、前記Ga/Gc値が低いほど、電極接着性が良くなる傾向があるが、前記Ga/Gc値が低すぎれば、耐熱性に劣る傾向がある。したがって、上述したことを考慮して、前記Ga/Gc値を適宜調節する必要がある。一実施形態によると、前記Ga/Gc値が0.75を超過すれば、電極接着性に劣り、前記Ga/Gc値が0.2未満であれば、耐熱性、熱収縮率に劣り得る。上述したことを考慮して、Ga/Gc値は0.25~0.75、0.2~0.7、0.2~0.5、0.2~0.4、0.25~0.5、または0.25~0.4であってもよいが、特に制限されない。
【0034】
一実施形態によると、前記Ga、Gc値の表面光沢度は、表面光沢度Gloss測定装置(BYK社製、Micro TRI-Gloss)を用いて、セパレータコーティング層の表面の任意の5ポイント(points)でそれぞれ測定した後に平均値を導出することができる。
【0035】
前記表面光沢度の測定は、例えば、表面20°~95°、30°~90°、40°~90°、60°~90°、70°~90°、80°~90°、または約85°で測定されてもよい。ただし、これは一例示にすぎず、特に制限されない。
【0036】
前記Gaは、上述したGa/Gc値の範囲を満たせば十分であり、特に制限されないが、一実施形態によると、前記Gaは16~55GU、18~55GU、16~52GU、または18~52GUであってもよい。
【0037】
前記Gcは、平均粒径100~500nm、BET 15~20m/g、かさ密度200~300kg/mの無機粒子を90.0~99.9重量%、および水溶性高分子バインダーを0.1~10重量%含むコーティング層が厚さ3μm以下に多孔性基材上に備えられたセパレータのコーティング層の表面光沢度であればよく、特に制限されない。ただし、一実施形態によると、前記コーティング層は、次のような方法により備えられたセパレータのコーティング層であってもよく、前記セパレータは、無機粒子として平均粒径100~500nm、BET 15~20m/g、かさ密度200~300kg/mのベーマイト(boehmite)粒子を90.0~99.9重量%、および水溶性高分子バインダーとしてポリアクリルアミド(polyacrylamide、PAM)を0.1~10重量%で混合した混合物に水を添加し撹拌してコーティング液スラリーを製造した後、多孔性基材として厚さ9μm、ガーレー透気度126sのポリオレフィン微多孔性基材を用い、上記で製造されたコーティング液スラリーを5m/minの速度で前記多孔性基材上の両面をバーコーティング(bar coating)した後、40℃の熱風乾燥器により乾燥し、ロール状に巻き取って備えられたセパレータであってもよい。
【0038】
前記Gc値を導出するためのセパレータのコーティング層に含まれる無機粒子は95~99.9重量%、95~99重量%、または約97重量%で含まれてもよく、水溶性高分子バインダーは1~10重量%、1~5重量%、または約3重量%で含まれてもよい。
【0039】
以下、一実施形態に係るセパレータの各構成について説明する。
前記多孔性基材は、一実施形態によると、ポリオレフィン系多孔性基材であってもよい。前記多孔性基材は、他の一実施形態によると、シート、織布、不織布、紙など、内部気孔または表面に無機粒子を含む多孔性構造を有し、かつ、電池に適用可能な多孔性基材であれば、特に制限なくいずれを用いてもよい。
【0040】
前記多孔性基材の素材は、特に制限されないが、具体的に例を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、環状オレフィンコポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート、ガラス繊維、テフロン(登録商標)、およびポリテトラフルオロエチレンのいずれか1つ以上または2つ以上の樹脂を含んでもよい。
【0041】
一実施形態によると、前記多孔性基材は、当該分野で通常用いられるものであり、ポリオレフィン系多孔性基材であってもよいが、これに制限されない。より具体的に、前記多孔性基材は、気孔の微細化のために調整可能なポリオレフィン系多孔性基材がより好ましいが、これに制限されないことに留意する必要がある。
【0042】
前記ポリオレフィン系多孔性基材は、通常、フィルム状に製造され、リチウム二次電池のセパレータとして一般的に用いられるものであれば制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらの共重合体などが挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0043】
一実施形態によると、前記多孔性基材は、ポリオレフィン系樹脂の単独、またはポリオレフィン系樹脂を主成分とし、無機粒子または有機粒子をさらに含んでもよい。また、前記多孔性基材は、ポリオレフィン系樹脂が多層で構成されてもよく、多層で構成された多孔性基材のいずれか1層または2以上の層が無機粒子または有機粒子を含むポリオレフィン系樹脂であってもよい。
【0044】
前記多孔性基材の厚さは、特に制限されないが、例えば、5~30μm、または5~20μmであってもよい。前記多孔性基材は、一実施形態によると、延伸して製造された多孔性高分子基材であってもよい。
【0045】
前記コーティング層は、一実施形態によると、無機粒子および高分子バインダーを含んでもよい。例えば、前記コーティング層は、無機粒子および粒子状高分子バインダーを含むか;無機粒子および水溶性高分子バインダーを含むか;または無機粒子、粒子状高分子バインダー、および水溶性高分子バインダーを含んでもよい。
【0046】
前記コーティング層は、一実施形態によると、前記コーティング層中の無機粒子が高分子バインダーを介して互いに連結されて備えられ、無機粒子間に複数の気孔が形成される多孔性コーティング層であってもよい。また、特に制限されないが、前記コーティング層は、無機粒子を主成分とする無機粒子コーティング層であってもよい。特に制限されないが、前記多孔性コーティング層の気孔率は、非限定的な例として20~80%、または30~70%であってもよい。
【0047】
前記コーティング層の厚さは、電池の高いエネルギー密度を確保するために適宜調節されることが好ましく、一実施形態によると、前記コーティング層の厚さは5μm以下、4μm以下、3μm以下、または2.8μm以下であってもよく、耐熱性および電極接着性を向上させるために0.1μm以上、0.5μm以上、1μm以上、1.5μm以上であってもよいが、特に制限されない。
【0048】
特に制限されないが、前記コーティング層の厚さは、次の方法により導出することができる。一実施形態によると、前記コーティング層の厚さは、コーティング層-多孔性基材セパレータの全厚さを測定した後、多孔性基材の厚さを引くことで導出することができる。
【0049】
-コーティング層-多孔性基材セパレータの全厚さ(A):セパレータを10重に重ねた後、TD方向に任意の5ポイントでMitutoyo社製の厚さ測定器により厚さをそれぞれ測定した後、5で割って10重のセパレータの平均厚さを導出し、再び10で割って導出した単一のセパレータの平均厚さ
-多孔性基材の厚さ(B)
-コーティング層の厚さ:(A-B)/2(多孔性基材の両面にコーティング層をコーティングする場合)、または(A-B)(多孔性基材の片面にコーティング層をコーティングする場合)
【0050】
前記無機粒子は、コーティング層に含まれ、電池から排出される熱によりセパレータが変形または収縮する現象を抑制する役割を果たす。前記無機粒子としては、当該技術分野で通常用いられる無機粒子であればいずれを用いてもよく、特に制限されない。例えば、前記無機粒子は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属カーボネート、金属水酸化物、および金属炭窒化物のいずれか1つまたは2つ以上を含んでもよい。具体例として、前記無機粒子は、アルミナ(alumina)、水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)、シリカ(silica)、酸化バリウム(barium oxide)、酸化チタン(titanium oxide)、酸化マグネシウム(magnesium oxide)、水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)、粘土(clay)、ガラス粉末(glass powder)、ベーマイト(boehmite)、および擬ベーマイト(psuedo-boehmite)のいずれか1つまたは2つ以上を含んでもよい。前記擬ベーマイトは、化学式AlO(OH)で表され、水分含量が高く、微細結晶のベーマイト類似構造を有する物質を意味する。好ましい例として、前記無機粒子は、電池の安定性を考慮すると、ベーマイトまたは擬ベーマイトのような金属水酸化物であってもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0051】
前記一実施形態に係るセパレータのコーティング層に含まれる無機粒子および/またはGcの測定に用いられたセパレータのコーティング層に含まれる無機粒子の平均粒径は、特に制限されず、例えば、10nm~5μm、10nm~1μm、10nm~500nm、100nm~500nm、200nm~400nm、または約300nmであってもよい。
【0052】
前記粒子状高分子バインダーは、コーティング層に含まれる場合、セパレータに電極接着性を付与する役割を果たすことができる。前記粒子状高分子バインダーは、当該技術分野で通常用いられる粒子状高分子バインダーであればいずれを用いてもよく、特に制限されない。例えば、前記粒子状高分子バインダーは、粒子状アクリル系バインダーを含んでもよく、アクリル系バインダーの非限定的な例を挙げると、一部架橋した粒子状アクリル系バインダーであってもよく、一部架橋していない粒子状アクリル系バインダーであってもよく、またはコア-シェル構造の粒子状アクリル系バインダーであってもよい。前記コア-シェル構造の粒子状アクリル系バインダーは、例えば、コアのラバー(rubber)または架橋体粒子の表面上に、アクリル系単量体と、必要に応じて他のコモノマーおよび架橋剤が含まれて重合したものであってもよい。
【0053】
前記粒子状アクリル系バインダーは、アクリル系単量体に由来の繰り返し単位を含んでもよく、前記アクリル系単量体の非限定的な例としては、シアノ基を有するアクリル系単量体、カルボキシル基を有するアクリル系単量体、炭素数1~14のアルキル基を有するアクリル系単量体が挙げられる。
【0054】
前記シアノ基を有するアクリル系単量体の非限定的な例としては、(メタ)アクリロニトリル、2-(ビニルオキシ)エタンニトリル、および2-(ビニルオキシ)プロパンニトリルが挙げられる。
【0055】
前記カルボキシル基を有するアクリル系単量体の非限定的な例としては、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸、およびマレイン酸無水物が挙げられる。
【0056】
前記炭素数1~14のアルキル基を有するアクリル系単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0057】
前記粒子状アクリル系バインダーは、前記アクリル系単量体に由来の繰り返し単位の他に、非アクリル系単量体に由来の繰り返し単位を含んでもよく、非アクリル系単量体の非限定的な例としては、スチレン系単量体、ブタジエン系単量体、ビニル系単量体が挙げられる。
【0058】
一実施形態によると、前記粒子状高分子バインダーは、セパレータ技術分野で通常用いられる粒子状高分子バインダーと比べて大きく備えることで、セパレータにさらに優れた電極接着性を付与することができる。しかし、前記粒子状高分子バインダーが過度に大きい場合には、耐熱性に劣る可能性があり、コーティング層の厚さが過度に厚くなって電池のエネルギー密度の確保に不利になり、電極と熱融着後の厚さ変化によりスタックセル(stack cell)構造の形成に困難があり得るため、適宜調節する必要がある。一実施形態によると、前記粒子状高分子バインダーの粒径D50は1μm超過10μm以下であってもよい。前記粒子状高分子バインダーの粒径D50が1μm以下である場合には、薄膜のコーティング層中の無機物により粒子状高分子バインダーが埋没して十分な電極接着性の確保が難しくなり得、その逆に10μm超過である場合には、コーティング層の厚さが過度に増加する恐れがあり、熱融着後の厚さ変化によりスタックセル(stack cell)構造の形成が難しくなり得る。
【0059】
上記の観点から、粒子状高分子バインダーの粒径D50は、好ましくは1μm超過8μm以下、1μm超過7μm以下、1μm超過6μm以下、1.5μm以上10μm以下、1.5μm以上8μm以下、1.5μm以上7μm以下、1.5μm以上6μm以下、2μm以上10μm以下、2μm以上8μm以下、2μm以上7μm以下、2μm以上6μm以下、2.5μm以上10μm以下、2.5μm以上8μm以下、2.5μm以上7μm以下、2.5μm以上6μm以下、2.8μm以上10μm以下、2.8μm以上8μm以下、2.8μm以上7μm以下、または2.8μm以上6μm以下であってもよいが、特に制限されない。
【0060】
一実施形態によると、前記粒子状高分子バインダーのガラス転移温度(Tg)は50~70℃、55~70℃、50~65℃、または55~65℃であってもよい。一実施形態によると、前記ガラス転移温度を満たす粒子状高分子バインダーは、常温でガラス状(glass state)で表面外に突出して存在するのに有利であるため、電極とセパレータとの間の電極接着性をさらに向上させることができる。また、前記ガラス転移温度を満たす粒子状高分子バインダーは、セパレータ-電極のゼリーロール(jelly roll)の電解液なしに乾式融着処理時に、乾式融着処理条件である温度範囲60~100℃、60~90℃、70~100℃、または70~90℃で、圧力条件1~20kgf、1~15kgf、5~20kgf、または5~15kgfで、ゴム状(rubbery state)で存在し、セパレータ-電極の融着処理時に、電極とセパレータとの間に歪みや浮き現象が発生するのを防止し、電極とセパレータとの間の整列不良の問題を解決することができる。これにより、電池の寿命特性および容量特性を最大限に発現できるようにする。
【0061】
前記水溶性高分子バインダーは、コーティング層に含まれる場合、セパレータの高温収縮率を低減させ、コーティング層中の無機粒子が脱離する現象を防止する役割を果たすことができる。前記水溶性高分子バインダーは、当該技術分野で通常用いられる水溶性高分子バインダーであればいずれを用いてもよく、特に制限されない。例えば、前記水溶性高分子バインダーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methylcellulose、HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(hydroxyethyl methylcellulose、HEMC)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose、HEC)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose、CMC)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリアクリレート(polyacrylate、PA)、およびポリアクリルアミド(polyacrylamide、PAM)のいずれか1つまたは2つ以上を含んでもよい。特に制限されないが、前記水溶性高分子バインダーは、一実施形態が目的とする優れた耐熱性および電極接着性を満たすためにポリアクリルアミドであってもよい。
【0062】
前記水溶性高分子バインダーの重量平均分子量(Mw)は200,000g/mol~300,000g/mol、250,000g/mol~300,000g/mol、または約270,000g/molであってもよい。
【0063】
前記粒子状高分子バインダーと水溶性高分子バインダーは、それぞれ独立して、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合、またはバルク重合などの公知の多様な方法により製造されてもよく、特に制限されない。
【0064】
一実施形態によると、前記コーティング層に粒子状高分子バインダーが含まれる場合、前記コーティング層の厚さに対する前記粒子状高分子バインダーの粒径D50の比が1~5であってもよい。一実施形態によると、前記コーティング層の厚さに対する前記粒子状高分子バインダーの粒径D50の比の範囲を満たす場合、コーティング層の表面外に突出して存在する粒子状高分子バインダーの比重を高めることができるため、電極接着性をさらに向上させることができる。上述したことを考慮すると、より好ましくは、前記コーティング層の厚さに対する前記粒子状高分子バインダーの粒径D50の比は1~3、1~2.5、1.5~5、1.5~3、または1.5~2.5であってもよい。
【0065】
一実施形態によると、前記コーティング層が高分子バインダーとして粒子状高分子バインダーおよび水溶性高分子バインダーの両方を含む場合、前記コーティング層は、重量%で、無機粒子:88%以上、粒子状高分子バインダー:1.6~8%、および水溶性高分子バインダー:0%超過5%以下で含んでもよい。上記の組成で、無機粒子、粒子状高分子バインダー、および水溶性高分子バインダーを含むコーティング層は、無機粒子により十分な耐熱性を確保可能であるとともに、粒子状高分子バインダーにより電極接着性を向上させることができる。前記無機粒子の含量は88~95.3重量%、90~95.3重量%、または90重量%超過95.3重量%以下であってもよいが、特に制限されない。前記粒子状高分子バインダーの含量は1.7~8重量%、1.8~8重量%、1.6~7重量%、1.7~7重量%、1.8~7重量%、1.6~6.5重量%、1.7~6.5重量%、または1.8~6.5重量%であってもよいが、特に制限されない。前記水溶性高分子バインダーの含量は0重量%超過4.5重量%以下、0重量%超過4重量%以下、0重量%超過3.5重量%以下、1~5重量%、1~4.5重量%、1~4重量%、1~3.5重量%、1.5~5重量%、1.5~4.5重量%、1.5~4重量%、1.5~3.5重量%、2~5重量%、2~4.5重量%、2~4重量%、または2~3.5重量%であってもよいが、特に制限されない。
【0066】
また、前記コーティング層は、必要に応じて、当該技術分野で公知の沈殿防止剤(anti-settling agent)をはじめとするその他の多様な成分を含んでもよく、特に言及していないその他の多様な成分を排除するのではないことに留意する必要がある。
【0067】
前記コーティング層は、当該技術分野で公知のコーティング層をセパレータ上に形成する通常の製造方法により製造されれば十分であり、特に制限されない。一実施形態によると、前記無機粒子および高分子バインダーの混合物に水を添加し撹拌してコーティング液スラリーに製造した後、製造されたコーティング液スラリーを、ロールコーティング(roll coating)、スピンコーティング(spin coating)、ディップコーティング(dip coating)、バーコーティング(bar coating)、ダイコーティング(die coating)、スリットコーティング(slit coating)、およびインクジェット印刷(inkjet printing)のいずれか1つまたはこれらの組み合わせられた方法で、多孔性基材の片面または両面にコーティングし、前記多孔性基材上にコーティング層を備えてもよい。
【0068】
特に制限されないが、一実施形態によると、多孔性基材と、前記多孔性基材の片面または両面上に備えられたコーティング層と、を含むセパレータの全厚さは10~30μm、または10~20μmであってもよい。
特に制限されないが、電極とセパレータを融着した後に測定されたセパレータの全厚さは10~20μm、または10~15μmであってもよい。
【0069】
上述した実施形態のうち一実施形態に係るセパレータは、高温熱収縮率などの十分な耐熱性、十分な通気度など、従来のセパレータと比べて同等レベル以上の物性を確保可能であるとともに電極接着性を向上可能であるという効果がある。特に、別に接着性有機物層(熱融着層)をさらに備えなくても、優れた耐熱性および電極接着性の両方を満たすことができるという効果がある。
【0070】
上記のように高温熱収縮率などの十分な耐熱性、十分な通気度など、従来のセパレータと比べて同等レベル以上の物性を確保可能であるとともに電極接着性を向上可能であるという結果から、一実施形態に係るセパレータは、セルスタッキング(cell stacking)時にゼリーロール(jelly roll)内で電極とセパレータとの間に発生し得る整列不良(misalignment)の問題を解決することができ、電極とセパレータとの間の整列不良により発生し得る電池寿命の劣化問題も解決することができ、電池の作動時にも優れた安定性を確保することができる。
【0071】
上述した実施形態のうち一実施形態に係るセパレータは耐熱性に優れる。一実施形態に係るセパレータは、150℃で1時間放置後に測定されたMD方向およびTD方向の熱収縮率がいずれも5%以下であってもよい。
【0072】
上述した実施形態のうち一実施形態に係るセパレータは電極接着性に優れる。一実施形態に係るセパレータは、正極と負極との間に配置した後、80℃、10kgfcm-2の温度および圧力条件で30秒間融着処理し、セパレータと電極との間の接着力をUTM装置(INSTRON社製のUTM3345)を用いて、幅15mmの試験片を300mm/minの速度で引っ張って剥離する際に示される接着力の平均値が2gf以上であってもよい。または、一実施形態に係るセパレータは、接着力が3.5gf超過、4.0gf以上、4.5gf以上、15.0gf以下、13.0gf以下、または10.0gf以下であってもよい。
【0073】
前記正極および負極は、当該技術分野で公知の全ての正極および負極を用いてもよく、特に制限されないが、次の正極および負極を用いてもよい。
前記正極は、非限定的な例として、正極活物質としてLiCoO94重量%、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド(Polyvinylidene fluoride)2.5重量%、導電材としてカーボンブラック(Carbon-black)3.5重量%を溶媒であるNMP(N-methyl-2-pyrrolidone)に添加して撹拌し、均一な正極スラリーを厚さ30μmのアルミニウム箔上にコーティングし、120℃の温度で乾燥後に圧着して備えられた厚さ150μmの正極が挙げられる。
【0074】
前記負極は、非限定的な例として、負極活物質として人造黒鉛95重量%、バインダーとしてTgが-52℃のアクリルラテックス(Acrylic latex、固形分:20重量%)(商品名:BM900B)3重量%、増粘剤としてCMC(carboxymethyl cellulose)2重量%を溶媒である水に添加して撹拌し、均一な負極スラリーを厚さ20μmの銅箔上にコーティングし、120℃の温度で乾燥後に圧着して備えられた厚さ150μmの負極が挙げられる。
【0075】
上述した実施形態のうち一実施形態に係るセパレータは通気度に優れる。一実施形態に係るセパレータは、ASTM D 726に準じて、ガーレー(Gurley)式透気度計(Toyoseiki社製のDensometer)を用いて、セパレータの1平方インチの面積を空気100mlが通過する時間が200s以下であってもよい。
【0076】
一実施形態によると、前述した実施形態のうち一実施形態に係るセパレータを含む、電気化学素子を提供することができる。前記電気化学素子は、公知の全てのエネルギー貯蔵装置であってもよく、特に制限されない。一実施形態によると、前記電気化学素子は、リチウム二次電池であってもよい。一実施形態に係るリチウム二次電池は、正極と負極との間に前述したセパレータを含んでもよい。この際、前記正極および負極は、リチウム二次電池に通常用いられるものであれば制限なく用いることができる。
【0077】
以下、実施例および比較例を記載する。ただし、下記の実施例は、一実施形態の一実施例にすぎないため、一実施形態が下記の実施例に限定されるのではない。
【0078】
{実施例}
実施例1
(コーティング液の製造)
無機粒子として平均粒径300nm、BET 18m/g、かさ密度270kg/mのベーマイト(boehmite)粒子を95重量%、粒子状高分子バインダーとしてアクリル系共重合体(D50:3μm、Tg:60℃)を2重量%、および水溶性高分子バインダーとして重量平均分子量が270,000g/molのポリアクリルアミド(polyacrylamide、PAM)を3重量%で混合した混合物に水を添加し撹拌してコーティング液スラリーを製造した。
【0079】
(セパレータの製造)
多孔性基材として厚さ9μm、ガーレー透気度126sのポリオレフィン微多孔性基材を用い、上記で製造されたコーティング液スラリーを5m/minの速度で前記多孔性基材上の両面をバーコーティング(bar coating)した後、40℃の熱風乾燥器により乾燥し、ロール状に巻き取ってセパレータを製造した。製造されたセパレータを長さ20cm×幅10cmに切断してサンプルとした。
【0080】
実施例2~4
コーティング液の製造時、無機粒子として平均粒径300nm、BET 18m/g、かさ密度270kg/mのベーマイト(boehmite)粒子、粒子状高分子バインダーとしてアクリル系共重合体(D50:表1に記載された「粒子状高分子バインダーの粒径D50」による、Tg:60℃)、および水溶性高分子として重量平均分子量が270,000g/molのポリアクリルアミド(polyacrylamide、PAM)を表1に記載された重量%で混合した混合物に水を添加し撹拌してコーティング液スラリーを製造したことを除いては、実施例1と同様の条件でセパレータを製造した。
【0081】
実施例5
コーティング液の製造時、無機粒子として平均粒径300nm、BET 20m/g、かさ密度250kg/mの水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide)粒子、粒子状高分子バインダーとしてアクリル系共重合体(D50:表1に記載された「粒子状高分子バインダーの粒径D50」による、Tg:60℃)、および水溶性高分子として重量平均分子量が270,000g/molのポリアクリルアミドを表1に記載された重量%で混合した混合物に水を添加し撹拌してコーティング液スラリーを製造したことを除いては、実施例1と同様の条件でセパレータを製造した。
【0082】
REF.
コーティング液の製造時、有機高分子粒子を添加せず、無機粒子として平均粒径300nm、BET 18m/g、かさ密度270kg/mのベーマイト(boehmite)粒子、および水溶性高分子バインダーとして重量平均分子量が270,000g/molのポリアクリルアミド(polyacrylamide、PAM)を表1に記載された重量%で混合した混合物に水を添加し撹拌してコーティング液スラリーを製造したことを除いては、実施例1と同様の条件でセパレータを製造した。
【0083】
比較例1~2
コーティング液の製造時、無機粒子として平均粒径300nm、BET 18m/g、かさ密度270kg/mのベーマイト(boehmite)粒子、粒子状高分子バインダーとしてアクリル系共重合体(D50:表1に記載された「有機高分子粒子の粒径D50」、Tg:60℃)、および水溶性高分子バインダーとして重量平均分子量が270,000g/molのポリアクリルアミド(polyacrylamide、PAM)を表1に記載された重量%で混合した混合物に水を添加し撹拌してコーティング液スラリーを製造したことを除いては、実施例1と同様の条件でセパレータを製造した。
【0084】
比較例3
コーティング液の製造時、無機粒子として平均粒径300nm、BET 18m/g、かさ密度270kg/mのベーマイト(boehmite)粒子、粒子状高分子バインダーとしてアクリル系共重合体(D50:表1に記載された「有機高分子粒子の粒径D50」、Tg:60℃)(Hansol Chemical社製のHES-202)、および水溶性高分子バインダーとして重量平均分子量が270,000g/molのポリアクリルアミド(polyacrylamide、PAM)を表1に記載された重量%で混合した混合物に水を添加し撹拌してコーティング液スラリーを製造したことを除いては、実施例1と同様の条件でセパレータを製造した。
【0085】
評価例:熱収縮率および電極接着力の評価
下記表1中、「粒子状高分子バインダーの粒径D50」は、製造された粒子状高分子バインダーに対し、KS A ISO 13320-1規格に準じて、試料を採取し、Beckman coulter社製のMultisizer 4e Coulter counterを用いて分析された粒度分布結果から導出された結果である。
【0086】
下記表1中、「コーティングセパレータの厚さ」は、製造された各実施例および比較例のコーティング層-多孔性基材セパレータの全厚さを測定した結果であり、それぞれ製造されたセパレータを10重に重ねた後、TD方向に任意の5ポイントでMitutoyo社製の厚さ測定器により厚さをそれぞれ測定した後、5で割って10重のセパレータの平均厚さを導出し、再び10で割って単一のセパレータの平均厚さを求めた。
【0087】
下記表1中、「コーティング層の厚さ」は、製造された各実施例および比較例のセパレータの多孔性基材の両面にコーティングされたコーティング層の厚さをそれぞれ測定した結果であり、下記の方法により測定されたコーティング層-多孔性基材セパレータの全厚さから多孔性基材の厚さを引いた後、2で割ってコーティング層の厚さを求めた。
【0088】
-コーティング層-多孔性基材セパレータの全厚さ(A):それぞれ製造されたセパレータを10重に重ねた後、TD方向に任意の5ポイントでMitutoyo社製の厚さ測定器により厚さをそれぞれ測定した後、5で割って10重のセパレータの平均厚さを導出し、再び10で割って導出した単一のセパレータの平均厚さ
-多孔性基材の厚さ(B):9μm
-コーティング層の厚さ:(A-B)/2
【0089】
下記表1中、「コーティング層の表面85°表面光沢度(GU)」は、製造された各実施例および比較例のセパレータコーティング層の表面85°での表面光沢度である。表面光沢度Gloss測定装置(BYK社製、Micro TRI-Gloss)を用いて、セパレータコーティング層の表面の任意の5ポイント(points)でそれぞれ測定した後に平均値を導出した。
【0090】
下記表1中、「Ga/Gc」は、各実施例および比較例のセパレータコーティング層の表面85°での表面光沢度Gaと、有機高分子粒子を添加していないREF.セパレータコーティング層の表面85°での表面光沢度Gcとを代入して導出した。
【0091】
下記表1中、「ガーレー透気度」は、ASTM D 726に準じて、ガーレー(Gurley)式透気度計(Toyoseiki社製のDensometer)を用いて、製造された各実施例および比較例のセパレータの1平方インチの面積を空気100mlが通過する時間を秒単位で測定した。
【0092】
【表1】
【0093】
下記表2中、「150℃熱収縮率」は、各実施例および比較例のセパレータを10cm×10cmに切断した後、150℃で1時間放置する前後に測定されたセパレータの長さを以下の式に代入して導出した。MD方向(mechanical direction、機械方向)、TD方向(transverse direction、横方向)に熱収縮率をそれぞれ測定した。
熱収縮率(%)=((放置前の長さ-放置後の長さ)/放置前の長さ)×100
【0094】
下記表2中、「融着後のコーティングセパレータの厚さ」は、製造された各実施例および比較例のセパレータを正極と負極との間に配置した後、80℃、10kgfcm-2の温度および圧力条件で30秒間融着処理した後のコーティング層-多孔性基材セパレータの全厚さを意味し、下記表2中、「電極接着力」は、ASTM D 903に準じて、上記のように融着処理した後、セパレータと電極との間の接着力をUTM装置(INSTRON社製のUTM3345)を用いて、幅15mmの試験片を300mm/minの速度で引っ張って測定し、剥離時に示される接着力の平均値を導出した。
【0095】
前記正極としては、次のように備えられた正極を用いた。正極活物質としてLiCoO94重量%、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド(Polyvinylidene fluoride)2.5重量%、導電材としてカーボンブラック(Carbon-black)3.5重量%を溶媒であるNMP(N-methyl-2-pyrrolidone)に添加して撹拌し、均一な正極スラリーを製造した。製造された正極スラリーを厚さ30μmのアルミニウム箔上にコーティングし、120℃の温度で乾燥した後に圧着し、厚さ150μmの正極極板を製造した。
【0096】
前記負極としては、次のように備えられた負極を用いた。負極活物質として人造黒鉛95重量%、バインダーとしてTgが-52℃のアクリルラテックス(Acrylic latex、固形分:20重量%)(商品名:BM900B)3重量%、増粘剤としてCMC(carboxymethyl cellulose)2重量%を溶媒である水に添加して撹拌し、均一な負極スラリーを製造した。製造された負極スラリーを厚さ20μmの銅箔上にコーティングし、120℃の温度で乾燥した後に圧着し、厚さ150μmの負極極板を製造した。
【0097】
【表2】
【0098】
前記表1および表2の結果を参照すると、実施例1~5は、一実施形態により限定されるGa/Gc値の範囲を満たした結果、優れた熱収縮率および電極接着力を同時に達成した。
【0099】
これに対し、REF.セパレータは、粒子状高分子バインダーをコーティング層中に含まない結果、熱/圧力を加えた後の接着力の測定実験のために180度上部のzigに結束時に自然剥離が発生するため、接着力を測定することができなかった(接着力がない)。
【0100】
比較例1は、無機粒子に対する粒子状高分子バインダーの含量が低すぎる結果、Ga/Gc値が0.75を超過し、これにより、熱/圧力を加えた後の接着力の測定実験のために180度上部のzigに結束時に自然剥離が発生するため、接着力を測定することができなかった(接着力がない)。
【0101】
比較例2は、無機粒子に対する粒子状高分子バインダーの含量が高すぎる結果、Ga/Gc値が0.2未満であり、これにより、熱収縮率に劣るものであった。また、接着バインダーの脱離により、電極接着力が4.0以下に低下することを確認した。
【0102】
比較例3は、粒子状高分子バインダーの粒径D50が小さすぎる結果、Ga/Gc値が0.75を超過し、コーティング層の厚さに対する粒子状高分子バインダーの粒径D50の比が1未満であり、これにより、熱収縮率に劣り、熱/圧力を加えた後の接着力の測定実験のために180度上部のzigに結束時に自然剥離が発生するため、接着力を測定することができなかった(接着力がない)。
【0103】
以上、例示的な実施例について説明したが、一実施形態は、これに限定されず、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば、後述の請求範囲の概念と範囲から逸脱しない範囲内で多様な変更および変形が可能であることを理解することができる。