(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155252
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】シース型塞栓形成装置
(51)【国際特許分類】
A61L 31/06 20060101AFI20231013BHJP
A61B 17/12 20060101ALI20231013BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20231013BHJP
A61L 31/02 20060101ALI20231013BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
A61L31/06
A61B17/12
A61L31/04 110
A61L31/02
A61L31/14 400
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023126683
(22)【出願日】2023-08-03
(62)【分割の表示】P 2020520286の分割
【原出願日】2018-10-10
(31)【優先権主張番号】62/570,333
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510162539
【氏名又は名称】ザ テキサス エーアンドエム ユニバーシティ システム
【氏名又は名称原語表記】THE TEXAS A&M UNIVERSITY SYSTEM
【住所又は居所原語表記】3369 TAMU College Station, Texas 77843-3369, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】メイトランド,ダンカン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】オレンデイン,アダム エム.
(57)【要約】
【課題】一実施形態は、熱硬化性SMPを含む、外表面を備える形状記憶ポリマー(SMP)発泡体、及び熱可塑性ポリマーを含む、SMP発泡体の外表面の少なくとも50%をカプセル封入する膜、を備える装置である。
【解決手段】他の実施形態は、本明細書中で取り扱われる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性形状記憶ポリマー(SMP)発泡体、及び
膜、及び
形状記憶(SM)金属
を備える血管内装置であって、ここで、前記膜は、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、押出成形PTFE(ePTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリウレタン、ポリ(p-キシリレン)、ナイロン、ポリウレタン、ポリ(p-キシリレン)、ナイロン、ポリカーボネート、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの部材を含む、血管内装置。
【請求項2】
SMP発泡体は、ヒドロキシプロピルエチレンジアミン(HPED)、トリエタノールアミン(TEA)、及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の反応生成物を含み、かつ、多孔質であり、
前記膜は、HPED、TEA、HDIを含むが、発泡体ではない、
請求項1に記載の血管内装置。
【請求項3】
前記膜には穿孔があり、前記穿孔は各々前記膜の対向する表面を互いに結合している、請求項1又は2に記載の血管内装置。
【請求項4】
(a)前記膜はSMP発泡体に直接接触し、かつ、(b)前記膜はSM金属に直接接触する、請求項1~3のいずれか一項に記載の血管内装置。
【請求項5】
前記膜はSM金属の部分を完全に囲んでいる、請求項1~4のいずれか一項に記載の血管内装置。
【請求項6】
前記膜はSMP発泡体を完全にカプセル封入している、請求項1~5のいずれか一項に記載の血管内装置。
【請求項7】
前記膜はSMP発泡体を完全に密封している、請求項1~5のいずれか一項に記載の血管内装置。
【請求項8】
SM金属は、ストラットがあるフレームを含み、
SMP発泡体は前記ストラットを取り囲んでいる、
請求項1~7のいずれか一項に記載の血管内装置。
【請求項9】
SMP発泡体は、前記膜とSM金属との間にある、請求項5~8のいずれか一項に記載の血管内装置。
【請求項10】
SMP発泡体はSM金属を取り囲み、前記膜は前記SMP発泡体を取り囲んでいる、請求項1~9のいずれか一項に記載の血管内装置。
【請求項11】
SMP発泡体は、SM金属を完全に取り囲んでいる、請求項1~9のいずれか一項に記載の血管内装置。
【請求項12】
SM金属に結合した複数の機械的アンカーを備える、請求項1~11のいずれか1項に記載の血管内装置であって、前記複数の機械的アンカーは、前記血管内装置を組織内に埋め込むように構成される、血管内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]関連出願の相互参照:本出願は、米国特許仮出願第62/570,333号(発明の名称「膜付き塞栓装置」2017年10月10日出願)の優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
[0002]連邦政府資金による研究に関する声明:米国政府は、NSF LSAMPブリッジによる医師(BTD)フェローシップ(助成金番号HRD-1406755)の支援に基づき、本発明に一定の権利を有しうる。
【0002】
[0003]本発明は、医療装置、特に血管内塞栓装置の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
[0004]ポリウレタン形状記憶ポリマー(SMP)発泡体は、血管内適用の魅力的な材料である。SMP発泡体を圧縮してカテーテル内に適合させてから、体熱及び血管内水に曝露して作動させると、体積を最大70倍まで膨張させることができる。SMPは、形状変化を担うネットポイントと交換セグメントからなる。SMPのプログラミングとしては、材料をガラス転移温度(Tg)以上で加熱し、外部応力を印加して二次形状に変形させる。その後、一定負荷下で材料を冷却して、二次形状を固定する。刺激を受けると、材料は一次形状に戻る。
【0004】
[0005]発泡体の多孔質構造は、表面積が広いため、急速に凝固し、かつ結合組織が浸潤する。ポリウレタン系SMP発泡体はまた、ブタ動物モデルでは生体適合性であり、縫合材料(シルク及びポリプロピレン)、細胞浸潤、及び内皮化と比較して、炎症反応を低減することが示される。当該材料はまた、高度に調整可能であり、特定の血管内用途に適合して、5分以内に完全閉塞を達成する。
【0005】
[0006]左心耳(LAA)閉鎖は、心房細動患者の脳卒中リスクを低下させる治療選択肢のひとつである。心房細動(AF)は、有意な罹患率及び死亡率にいたる不整脈である。米国では約610万人が罹患しており、2050年までに1200万人に増加すると予測されている。AF患者の心拍リズムは不規則であるため、心房に血液が貯留し、左心耳に血餅が形成される。血餅が形成されると、米国における第3の死因である脳卒中のリスクが高まる。全脳卒中の15%がAFに起因することが示唆される。1950年代半ば、AF患者の多くの血餅がLAAで形成されることが明らかになった。
【0006】
[0007]AF患者の脳卒中予防の従来の治療法は経口抗凝固療法である。しかし、経口抗凝固療法は、他の薬物との相互作用、出血の可能性、狭い治療域のため、患者の忍容性は良好でない。AF患者の50%未満が経口抗凝固療法の候補と考えられ、LAAが心房血栓の90%の原因であることから、LAA閉鎖は望ましい治療である。LAA閉鎖は、心外膜又は心内膜装置を用いて外科的又は経皮的に行うことができる。
【0007】
[0008]本発明の実施形態の特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲、1又はそれ以上の実施形態の以下の詳細な説明、及び対応する図から明らかであろう。適当な場合、図中の参照ラベルを繰り返して、対応する要素又は類似の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】[0009]H40 SMP発泡体の内径の増加を示す図である。
【
図2】[0010]実験を行ったH40発泡体を示す表である。
【
図3】[0011](A)連続気泡孔SMP発泡体の画像であり、(B)部分的独立気泡孔の画像である。
【
図4】[0012]発泡体バッチの軸及び横方向の孔径を示す表である。
【
図5】[0013]小孔、中孔、及び大孔発泡体の乾式及び湿式Tg温度を示す表である。
【
図6】[0014]孔径と内径の関数としての最終圧着径を示すグラフである。
【
図7】[0015]孔径と内径の関数としてのH40発泡体の平均膨張比±標準偏差(N≧3)を示す表である。
【
図8】[0016]孔径と内径の関数としての膨張プロファイルを示すグラフA及びB:である。
【
図9】[0017]実施形態の開発用設計の考慮事項を示す表である。
【
図11】[0019]実施形態で用いられる医療繊維及びバイオ繊維を示す表である。
【
図12】[0020]実験で用いた膜材料の比較を示す表である。
【
図13】[0021]一実施形態の製造方法を示す写真A、B、C、及びDである。
【
図14】[0022]一実施形態の送達脱離構成要素を示す図である。
【
図15】[0023]圧着時及び拡張時の実施形態を示す写真である。
【
図16】[0024]実施形態組成物の概略を示す表である。
【
図17】[0025]一実施形態の製造を示す写真A、B、C、D及びEである。
【
図18】[0026]レーザーを用いて作製した細孔の画像を示すTPUフィルムによる写真A及びBである。
【
図19】[0027]H40純粋フィルム及びTPUフィルムのATR-FTIRスペクトルを示すグラフである。
【
図20】[0028]最初の加熱サイクルを示すDSCサーモグラムを示すグラフである。
【
図21】[0029]ウシ血液の実験で用いられる実施形態の説明する表である。
【
図22】[0030]実施形態の内径の関数としての圧着直径を示すグラフである。
【
図23】[0031]ウシ血液の浸漬実施形態の結果を示す表である。
【
図24】[0032]計数粒子の平均値±標準偏差を示す表である。
【
図25】[0033]無粒子含有水、SMP発泡体、非孔(非気孔質)実施形態、及び多孔性(気孔質)実施形態から計数された粒子の数を示すグラフである。
【
図26】[0034]濾過材膜の画像を示す写真A及びBである。
【
図27】[0035]SED製造用TPUフィルム組成物の機械的特性を示すグラフである。
【
図28】[0036]H40発泡体の機械的特性を示すグラフA、B、C及びDである。
【
図29】[0037]形状記憶金属結合膜に包まれた発泡体の一実施形態を示す図である。
【発明の概要】
【0009】
[0038]図面を参照し、図面において、同様の構造に同様の接尾辞の参照が付与される。本明細書に含まれる図面は、概略図であり、様々な実施形態の構造をより明確に示す。したがって、例えば写真で見ると、製造された回路構造の実際の外観は、図示する実施形態のクレームされた構造が組み込まれると、異なって見える場合がある。さらに、図面は、例示の実施形態を理解するのに有用な構造のみを示しうる。図面の明確性を維持するため、当該技術分野で公知のさらなる構造が省かれる場合がある。「一実施形態」、「様々な実施形態」、及び類似の実施形態は、特定の特徴、構造、又は特徴を含みうるが、全ての実施形態が必ずしも特定の特徴、構造、又は特徴を含むわけではない。いくつかの実施形態には、他の実施形態で記載された特徴の一部、その全てがあってよく、又は全く備えなくてもよい。「第1の」、「第2の」、「第3の」等は、物として共通であるが、類似する異なる例が参照されることを示す。このように記載される形容詞は、所定の順序で、時間的に、空間的に、順位付けにより、又はその他の方法で表されるべきである。「接触された」とは、要素が互いに直接、物理的又は電気的に接触することを示し、「結合」とは、要素が直接、物理的又は電気的に接触することだけでなく、要素が互いに協同又は相互作用することも示してよい。
【0010】
[0039]LAAの経皮的閉鎖は、その手段はより侵襲性が低く、回復時間がより早く、かつ出血リスクが低いことと関連する。一般に、経皮的閉鎖用装置は、自己拡張型ニチノールフレーム及び突起又はアンカーで構成され、LAAを排除しつつ、周囲の組織と係合して、移動を妨げる。当該装置による合併症としては、空気塞栓症、心嚢液貯留、タンポナーデ、組織断裂、装置塞栓、及び脳卒中があげられる。
【0011】
[0040]発明者は、単に左心耳への入口を封鎖するのでなく、LAA腔の部分的から完全な容積的閉塞が、予後を改善する場合があることを見出した。本明細書に記載する実施形態は、LAAを閉塞しうるSMP発泡体から構成される塞栓形成装置に関する。実施形態は、ニチノール等の硬質材料と一体化する発泡体を含んでよく、蛍光透視誘導及び腔密封を改善する。硬質材料からSMP発泡体を保護する方法についても考察する。
【0012】
[0041] 粒子状物質
[0042]本明細書中で用いられる粒子は、媒体中に意図せず存在する可動性未溶解粒子である。脳血管系の上流に埋め込まれた装置は、一過性の脳虚血発作又は脳卒中の原因となりうる微粒子を生成する固有かつ重大な危険をもたらす。従って、当該危険を緩和するために、適用される所定の手順又は装置が管理される必要がある。
【0013】
[0043]塞栓形成装置は有害微粒子を発生するおそれがある。装置関連粒子のリスクと発生を緩和すべく、一実施形態は、SMP発泡体をカプセル封入し、バリア及び塞栓プロテクタとして機能するポリマー薄膜を提供する。
【0014】
[0044] アプローチ
[0045]LAA閉鎖装置にSMP発泡体を組み込むと、迅速な凝固、内皮形成、及び左心耳内に当該装置を生物学的に固定する組織内成長がおこる。その結果、装置血栓症、装置移動、不完全閉塞等の有害事象が軽減されうる。本発明に関する装置は、一般に、容積的充填閉塞部材を備えず、LAAの小孔を密封して脳卒中を予防する機能を果たす。
【0015】
[0046]一実施形態では、膜内にSMP発泡体がカプセル封入された装置を含み、容積的閉塞が改善される。シース型SMP閉塞装置は、既存の装置に組み込むことができ、又は、様々な実施形態で、個々に用いて血管を塞栓することができる。カプセル封入SMP発泡体を、近位及び遠位マーカーバンドに取り付けると、蛍光透視が誘導され、かつ装置が送達されうる。膜は、SMP発泡体と周囲環境との間の濾過材として機能し、送達中に生成されるあらゆる発泡体粒子を捕捉する。膜はまた、装置の内皮化に寄与しうる。さらなる特徴には、送達ケーブルに接触しうる脱離メカニズムがある。本明細書に記載される実施形態は、塞栓時間を改善し、微粒子生成を低減し、前提(predicate)閉塞装置の補助的機能を担う。
【0016】
[0047]より具体的には、実施形態としては、装置関連塞栓が発生しない、硬質材料と一体化しうるSMP系塞栓形成装置があげられる。SMP発泡体及びニチノールを備える塞栓形成装置の適用は、LAAの閉鎖である。これに留意して、実施形態としては、LAAを閉塞し、装置関連塞栓の発生を緩和するシース型塞栓形成装置があげられる。
【0017】
[0048] 1.SMPの特徴
[0049]発明者は、いくつかの血管内閉塞の実施形態に用いるための、SMP発泡体の特定の実施形態が備えるべき特性を、第2構成への保存能、刺激曝露時の腔への容積的充填能、正の血液及び組織相互作用、及び/又は個別作動プロファイルと見出した。いくつかの特性化技術を用いて、SMP発泡体形状変化を調節する熱特性、及びSMP発泡体の幾何学的構造を特徴付けた。
【0018】
[0050]特性化技術は、LAAを閉塞する塞栓形成装置の設計及び開発に役立つ。一実施形態は、LAA腔を合理的な方法で容積的に充填すると、腔内で血栓が迅速かつ安定して形成される。いくつかの実施形態では、90日間でSMP発泡体の露出表面が内皮化され、LAA小孔に新生内膜が形成されうる。SMP発泡体には、30日目及び90日目に不連続及び連続の内皮層形成能がある。さらに、細胞接触顆粒組織の浸潤がSMP発泡体足場内で観察され、活発な治癒反応が示唆された。本明細書では、いくつかのSMP発泡体形状が開示され、大型LAAを充填する様々な処置技術を介して送達されうる。
【0019】
[0051] 1.1 材料及び方法
[0052] SMP合成
[0053]ポリウレタンSMP発泡体を3段階プロトコルに従って合成した。簡潔には、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(HPED、99%;Sigma-Aldrich Inc.,St.Louis,MO)、トリエタノールアミン(TEA、98% Sigma-Aldrich Inc.)、及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、TCI America Inc.,Portland,OR)を適当なモル比で、イソシアネートプレポリマーを合成した。次いで、イソシアネートプレポリマーを、HPED及びTEAの残りのモル当量と混合されたヒドロキシル混合物と反応させる。ヒドロキシル混合物はまた、触媒(T-131及びBL-22、Air Products and Chemicals Inc.,Allentown,PA)及び脱イオン(DI)水を含んでいた。発泡体を作製するために、イソシアネートプレポリマー及びヒドロキシル混合物を、界面活性剤(DC198及びDC5943、Air Products and Chemicals Inc.,)及び物理的発泡剤Enovate(Honeywell International,Inc.,Morristown,NJ)と組み合わせて、SMP発泡体を作製した。
【0020】
[0054]発泡体配合物をHXXと示すが、「XX」は、HPED対TEA等量の比に対応する。TEAに対するHPEDの比を変化させて、発泡体の熱機械的特性を調整しうる。以前の内部調査と在庫に基づいて、H40の泡組成を試験した。本明細書で用いるH40発泡体の機械的性質を以下に示す。
【0021】
[0055] 発泡体加工
[0056]発泡体合成後、バルク発泡体を、熱線カッターを用いて、長さ7cm、幅6cm、及び厚さ2cmの長方形に切断した。次いで、発泡体の矩形ブロックを固定具内に配置し、低振幅の高周波数摂動でピンのアレイにより貫通させた。形成された網状化という当該プロセスにより、泡沫マトリックス全体に血液及び細胞を浸潤させる連続気泡ネットワークが形成されうる。
【0022】
[0057]次いで、直径3cmの円筒状発泡体を、3Dプリント穴パンチャを用いて網状発泡体長方形から切断した。発泡体直径が3cmのものを選択して、大きなLAA腔を処理し、大型LAA閉鎖装置のサイズに近似させた。大型LAA閉鎖装置に近似させることで、本発明では、送達に関する「最悪の場合」のシナリオを想定し、業界標準に適合させた。LAA閉鎖装置は、通常、LAA小孔の最大径に対して9~30%大きいため、外径3cm(OD)のSEDは約23~27.5mmの小孔がLAAを閉塞することがある。
【0023】
[0058]その後、使い捨て生検パンチ(Sklar Surgical Instruments,West Chester,PA,USA)又はカスタムホールパンチャーで円筒状発泡体の中心を穿孔し、中空シリンダーを作製した(
図1)。中心は、より小さなカテーテルを介して送達できるように、最大の膨張比を得るための内径とした。
図2は、発泡体の幾何学的形状の概要を示す。
【0024】
[0059]発泡体を最終形状に切断後、洗浄して未反応モノマー、可塑剤、及び粒子を除去した。99%イソプロピルアルコール(IPA,VWR,Radnor,PA)に発泡体を浸漬し、超音波処理をしながら逆浸透(RO)水で洗浄する洗浄サイクルを実施した。用いた溶媒量は、発泡体体積の約20倍であった。洗浄後、発泡体をRO水と共にアルミニウムトレイに投入し、-20℃の冷凍庫で12時間凍結後、フリーゾーン凍結乾燥機(Labconco,Kansas City,MO)で24時間凍結乾燥した。
[0060] 示差走査熱量測定(DSC)
[0061]合成された発泡体の各バッチについて、Q-200動的走査熱量計(DSC)(TA Instruments Inc.,NewCastle,DE)を用いて、乾式及び湿式ガラス転移(Tg)温度を特徴付けた。発泡体の乾式及び湿式Tgは、乾燥及び湿潤条件下で発泡体が作動する温度を調べるのに役立つ。発明者らは、当該温度は、発泡体試料の保存、及び発泡体が体内にある場合の膨張動力学を理解するのに重要と判断した。換言すれば、乾式及び湿式Tgは、発泡体が体内で早期に膨張するか、又は体内で一度膨張するかを決定する。
【0025】
[0062]発泡体試料(3~10mg、N=3)は、既に処理された発泡体シリンダーから採取した。乾式Tg分析用試料を密封し、アルミニウム皿に充填した。DSCプロトコルでは、最初の試料を-40℃に10℃/分の速度で冷却し、その後2分間等温的に保持すると規定する。冷却サイクル後、10℃/分~120℃の速度で熱ランプが発生した。次に、冷却及び加熱サイクルを2回繰り返し、最後の加熱サイクルを分析し、発泡体の乾式Tg値を定量した。TAインスツルメントソフトウェアを用いて熱遷移曲線の変曲点に基づいてTg測定を行った。
【0026】
[0063]湿式Tg用発泡体試料をRO水中に50℃で15分間浸漬し、完全に可塑化した。次に、試料を水から取り出し、キムワイプ(Kimberly-Clark Professionals,Roswell,GA)で挟み、機械圧縮で圧縮乾燥(2トン、30秒)した。次いで、試料を秤量し(3~10mg)、通気蓋を備えたアルミニウム皿に入れた。DSCプロトコルにより温度を10℃/分で-40℃に下げ、2分間等温に保持した。その後、温度を10℃/分で80℃に上昇させた。湿式Tg測定はTA Instrumentsソフトウェアを用いて熱遷移曲線の変曲点に基づて行った。
【0027】
[0064] イメージング
[0065]高解像度光学顕微鏡(VHX-5000、キーエンス、大阪、日本)及び走査型電子顕微鏡(SEM、Joel NeoScope JCM-5000,Nikon Instruments Inc.,Melville,NY)を用いて、発泡体の孔径、ストラットの厚さ、及び気泡構造を、薄切片の拡大画像を撮影して分析した。カミソリ状メスで発泡体を切断して、発泡体の横断剥片及び軸方向剥片を作製した。発泡体試料を光学顕微鏡ステージにマウントし、異なる倍率(20~200倍)で画像化した。キーエンスソフトウェアにより、発泡体試料のリアルタイムの奥行き合成と2D/3Dステッチを行うと、明瞭な画像が提供されうる。さらに、発泡体の長さを、Keyenceソフトウェアを用いて測定し、孔径を最大径とした。孔径のばらつきを考慮して測定は10個で行った。
【0028】
[0066]SEM試料は、まず、カミソリ状の鋭いメスを用いてバルク発泡体から切片を薄く剥片化して調製した。その後、当該薄剥片を、カーボンテープを用いてSEMプラット発泡体上にマウントし、室温で一晩真空下に放置した。次いで、試料を、クレシントン・スパッタ・コーター(Ted Pella Inc.,Redding,CA)を用いて、20mAで60秒間、金でスパッタコートした。そして、試料をSEMチャンバーに入れ、10又は15kVの電圧の高真空下でイメージングした。
【0029】
[0067] SMP発泡体作動
[0068]作動化、すなわち拡張に関する試験を行い、SMP発泡体の体内における膨張速度とその程度を特徴付ける。いくつかの実施形態では、SMP発泡体は、送達カテーテル内の早期膨張を防ぎ、体腔内で完全膨張するのに適当な時間に膨張する。
【0030】
[0069]作動試験を実施する前に、圧着発泡体試料を調製した。
図2に記載の処理済SMP発泡体シリンダーを、SC250ステントクリンパー(Machine Solutions Inc.,Flagstaff,AZ,AA)を用いて、0.008”ニチノールワイヤ上で圧着した。SC250ステントクリンパーを、100℃で80ポンド/平方インチの圧着圧力に設定した。発泡体試料を100℃に平衡化させ、圧着前にゴム状にした。平衡化後、SC250ステントクリンパーを閉じて、室温に冷却した。その後、発泡体試料を除去し、キャリパで圧着直径を測定した。
【0031】
[0070]圧着試料を固定具に装着し、加熱水浴中に浸漬し、特定の時間点でイメージングして作動試験を行った。試料を固定具に装填して、ねじ状ニチノールワイヤと試料をピンと張った伸張緊張状態を維持した。水浴をほぼ体温(37.5℃)まで加熱した。その後、試料を水浴中に入れ、デジタルカメラ(PowerShot SX230 HS,Canon Inc.,Tokyo,Japan)を用いて、発泡体が完全に膨張するまで30秒毎にイメージングした。次いで、画像を、画像J(NIH,Bethesda,MD)又は対話型MATLABプログラム(MathWorks Inc.,Natick,MA,USA)のいずれかで分析した。
【0032】
[0071] 1.2 結果
[0072] イメージング
[0073]光学顕微鏡観察及びSEMイメージングにより、発泡体構造及び網状化が発泡体加工に及ぼす影響が明らかになった。発明者らは連続気泡発泡体、並びに部分的独立気泡及び連続気泡発泡体を画像化した(
図3A及び3B)。
【0033】
[0074]発泡プロセスにより、残留薄膜がストラット間に観察される。膜は、主として独立気泡構造を形成し、加水分解、酸化、熱、プラズマエッチング、又は機械的処理等の二次的な物理的プロセスで除去されうる。いくつかの実施形態では、加熱時に、相互接触する孔が欠如し、細胞浸潤が制限されるため、独立気泡の微細構造は塞栓材料を補助しないかもしれない。さらに、独立気泡微細構造は、体内で展開すると圧力勾配が大きくなるおそれがあり、展開後に材料が移動する可能性がある。これらの理由から、機械的網状化を行い、
図3A及び3Bのように、主として連続気泡微細構造が成功裏にもたらされた。
【0034】
[0075]機械的網状化では膜は完全に除去されず、代わりに偽連続気泡構造が生じた。
図3Bは、膜貫通して穿孔された微小孔を備える膜を示す。発明者は、LAAの閉塞の適用に関して、連続気泡の完全欠如は、深刻な問題足りえないと判断した。LAAは下流に脈管構造がない終末腔であり、装置が下流へ移動するおそれはなく、独立気泡構造からの圧力勾配の危険性は低い。発明者が本発明を連続気泡微細構造と見出した主要な利点としては、相互接触する発泡体マトリクスを介した流れが停滞し、かつ再循環すると、血栓が安定して形成されて、閉塞が迅速にもたらされること、及び治癒応答を改善する細胞浸潤があげられる。本明細書に記載の実施形態では、0.008”インチのニチノールワイヤで膜を穿孔し、連続気泡構造を高めた。膜を完全に除去しなかったが、0.008”インチの穿孔は、発泡体マトリクス全体に細胞が浸透するのに十分な大きさである。
【0035】
[0076]網状化はまた、SMP発泡体の全体的な物理的性質に影響を及ぼす。網状発泡体は、機械的圧迫に対する耐性が低下する。圧縮に対する抵抗が低下すると、発泡体の圧着がより堅固となり、発泡体の圧着直径が短くなる。臨床医にとって、薄型カテーテルで送達させるには、発泡体がより圧縮されるのは有益である。網状化は、非網状発泡体と比較すると、有意に高いレベルの粒子をもたらす。いくつかの実施形態では、濾過材膜による発泡体のカプセル化を含む、機械的網状化による粒子放出を緩和するアプローチが含まれる。
【0036】
[0077] 孔径
[0078]8つの発泡体バッチを横方向及び軸方向に画像化し、小孔(S)、中孔(M)、又は大孔(L)に分類した。
図4に、各発泡体バッチの孔径及び孔の分類をまとめた。
図4の結果に基づいて、発泡体を軸方向又は横方向のいずれかに切断して、適当な孔径を達成した。細孔気泡が異方性であることは、吹き付け発泡体に典型的に見られる、軸方向と横方向の剥片間の孔径の相違からも明らかであった。
【0037】
[0079]発明者によれば、孔径は、発泡体の性能のいくつかの重要な特性に影響を及ぼすと考えられる。孔径に関するいくつかの機械的解析では、孔径が小さい発泡体では、発泡体密度が高まるため、半径方向の力が高まることを示す。半径方向力が低すぎると発泡体が移動するリスクがあるが、半径方向力が高すぎても血管が破裂又は穿孔するリスクがあり、臨床的に重要である。幸いにも、高半径方向力による容器破断は、本発明に関する発泡体組成物の現実的なリスクではないが、それは、標的容器よりも50%大きい、類似の発泡体を事前に試験して、半径方向力が、必要な破断力よりも有意に低かったことから考慮された。しかしながら、いくつかの実施形態では、低半径方向力による装置の移動が懸念される。ニチノールフレームを用いて発泡体を血管壁に固定すると、LAAから発泡体が移動するリスクが軽減される。
【0038】
[0080]孔径、すなわち発泡密度も膨張速度に影響する。孔径が小さいほど、又は発泡密度が高いほど、水が発泡体に浸透して、可塑化が遅くなる。その結果、発泡体は、より大孔の発泡体と比較して、膨張がそれほど速くない場合がある。
【0039】
[0081] 熱的性質
[0082]湿潤及び乾燥環境における熱硬化性SMP発泡体の熱特性を特徴付けるのにDSCを用いる。特に、発泡体が形状変化を受ける転移温度は、Tgに対応する。
図5は、試験したすべての発泡体の平均乾式Tgが59℃~64℃、最大偏差は±2.4℃であることを示す。周囲の環境が乾燥している場合、乾燥容積的に基づいて、発泡体を室温で保存できる。湿式Tgは13~16℃で、体内に入ると発泡体が変形することを示す。
【0040】
[0083]孔径は発泡体の転移温度に有意な影響を及ぼさなかった。これは、発泡体の組成がすべて同一であった(すなわち、H40)ためと考えられる。遷移温度を正確に制御するには、発泡体配合物のTEAに対するHPEDの比を変化させればよい。発明者は、HPEDの第二級ヒドロキシル基がウレタン結合のまわりの回転運動の立体障害を呈しうること、及びHPEDが提供しうる架橋密度はTEAと比較してより高いこと;すなわち、Tgを高めることを見出した。発明者は、H20組成物のTg20℃は、HPED含有量がより高いH60組成物よりも低いことが示された。
【0041】
[0084] 拡張プロファイル
[0085]膨張速度及び最終的な圧着直径を特徴付けることは、塞栓形成装置の性能に重要である。圧着された直径は、適当な大きさの送達カテーテルを調節するが、通常、より多くの血管系にアクセスできる、プロファイルの低い送達カテーテルが望ましい。SMP発泡体の膨張速度は、早期膨張又は遅延膨張のどちらが処置結果に影響するかを決定する。早期膨張では、装置がカテーテルを閉塞し、展開が妨げられることがある。不完全な又は遅延膨張により、血管系の閉塞が不完全となり、処置時間が長くなり、又は装置が移動する場合がある。
【0042】
[0086]
図6は、内径及び孔径の関数として、発泡体の実施形態の最終圧着直径を示す。内径及び孔径はいずれも最終的な圧着直径に影響を及ぼした。一般に、内径及び孔径が長くなるにつれて、圧着直径が短くなる傾向が観察された。内径及び孔径が長くなるにつれて、発泡体密度は低下することにより、発泡体の圧着直径はより短くなりうる。
【0043】
[0087]Tuleyの事後多重比較による二元分散分析(ANOVA)を行い、SMP発泡体の圧着直径に及ぼす内径及び孔径の影響を試験した。主効果解析では、内径及び孔径の増加が有意に圧着直径を減少させたことが示された。しかし、内径及び孔径の間に有意な相互作用はなかった。テューキーの対乗比較は、孔径を一定に保つと、内径の大部分の間で有意差が示された。しかし、孔径間に有意差はなかった。双方向ANOVAは、グラフパッドプリズム7(Graphpad Software,Inc,La Jolla,CA)を用いて行った。
【0044】
[0088]
図7は、内径及び孔径の増大により発泡体の膨張比が高まることを示し、膨張比は以下のように定義される:
膨張比=(30mm)/(圧着直径(mm))
最大膨張比が10より大きく、体積膨張が61倍であることが記録された。
【0045】
[0089]内径及び孔径の関数としてのSMP発泡体の膨張速度を、
図8(A)及び8(B)に示す。発泡体のほとんどは、体温水中で10分以内に元の直径まで膨張できた。各データセットについてインデックスを選択し、比較して、データの傾向を特定した。この指数は、発泡体が膨張直径の半分に膨張するのに要した時間とみなした。統計的、定性的傾向は認められなかった。
【0046】
[0090]観察可能な傾向がない理由としては、形状記憶に影響を及ぼす発泡体の窄孔による機械的特性の低下、不規則な圧着、温度変動、画像解析誤差などが考えられる。
【0047】
[0091]受動的に作動される塞栓形成装置の潜在的な合併症は、送達カテーテルの早期拡張である。塞栓形成装置を含む送達カテーテルを生理食塩水で洗浄し、空気をパージし、リスクを増大させる空気塞栓を予防するのが一般的である。Tgを適当に調整して、発泡体の早期膨張を緩和することができる。さらに、SMP発泡体を膜又はニチノールフレーム内へカプセル封入すると、臨床医が装置を送達しうるのに十分な発泡体を含ませることができる。
【0048】
[0092] 2. シース型塞栓形成装置の設計及び製作
[0093]SMP発泡体は塞栓装置の有望な材料であるが、発泡体粒子が塞栓として血流に入るため、意図しない虚血のリスクがある。発明者は、SMP発泡体がニチノールメッシュ、ワイヤ、又は低密度発泡体のチャンクを機械的に剪断できる他の硬質材料と接触すると、このリスクが複合化されることを見出した。SMP発泡体及び塞栓捕捉膜を備える独立型装置の製造により、発泡体系塞栓が血流に入るのを防止し、SMP発泡体の商業的及び臨床的有用性を高めうる。一実施形態では、首尾よくSMP発泡体を備えるシース型塞栓形成装置を金属又は前提装置と一体化して、現在の塞栓形成処置の標準的なケアを改善する。
【0049】
[0094]独立型SEDの開発におけるさらなる懸念には、透視下画像診断と同様に、送達及び展開のメカニズムが含まれる。いくつかの実施形態では、送達ケーブルに固定され、送達ケーブルのネジを外して展開されうる。当該装置は、送達システム内に予め装填されてよく、送達カテーテルをゆっくりと引き抜く一方で、送達ケーブルを固定したままで、装置を押し込まずに、展開させることができる。いくつかの実施形態では、蛍光透視的イメージングは、適当な装置配置に不可欠であり、送達システム上のマーカーバンド(すなわち、アクセスシース及び送達カテーテル)を介して、及びLAAC装置のバルクを構成するニチノールの固有の放射線不透過性から達成される。
【0050】
[0095]以下に記載するように、主要な塞栓物質としてSMP発泡体を利用するSEDと、塞栓を保護するカプセル封入化薄膜が開発されている。SEDプロトタイプはまた、装置の位置決めを蛍光透視画像が補助しうる送達メカニズムを組み込む。本章では、材料及び設計の理論的根拠、ならびにSED製造の詳細を記載する。最後に、SEDの構成要素を特徴付けてそれを用いる正当性を示す。
【0051】
[0096] 2.1 設計上の考慮事項
[0097]臨床的有用性、性能、安全性、及び製造上の懸念を考慮したSEDを設計して、最終的な装置の品質を向上させることができる。いくつかの実施形態のための設計基準及び要件は、
図9に特定される。
【0052】
[0098] 2.2 装置作製
[0099] 装置設計・作製概要
[0100]SMP発泡体閉塞部材、塞栓捕捉膜、及び送達システムからなる実施形態を
図10及び
図14に示す。装置の全体の幾何学的形状は、長さが約2cm、直径が3cmであるシリンダーであり、大型LAAを閉塞する。いくつかの実施態様では、膜は、SMP発泡体を完全にカプセル化して、できるだけ多くの発泡体粒子を捕捉する。装置の端部には、装置のイメージングに寄与するマーカーバンドがあり、放射線不透過性充填剤が非充填のSMP発泡体は、放射線不透過性が限られており、装置のイメージングに寄与する。最後に、単純なスクリュー分離メカニズムにより、臨床医は、位置決めされた装置を展開することができる。
【0053】
[0101] 膜選択性
[0102]いくつかの膜について、SEDの開発に用いる試験を行った。様々な実施形態で用いられる材料として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリウレタン(PU)があげられる(
図11)。
【0054】
[0103]最終的に、熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルムは、いくつかの実施形態では、塞栓を濾過しつつ、SMP発泡体を剪断力から保護する膜として機能するため、選択された。
図12は、試験した材料の比較を示す。膜材料との共通の問題としては、材料の厚さ、弾性の欠如、及び材料を円筒形又は他の形状に加工することの困難さがあげられた。
【0055】
[0104] 熱成形
[0105]一実施形態では、膜は、体腔の形態をとる。膜が適当に形成されず、その形状が理想的でない場合、SEDは、体腔で適当に膨張せず、完全に閉塞しえない可能性がある。熱成形はプラスチック膜を成形・加工する方法として考えられた。ストック膜材料は、通常、ロール又はフラットシートとして供給され、発泡体を収容できる形状に加工する必要がある。熱成形は、熱可塑性が溶融状態である場合に生じる一次成形プロセスとは異なり、使用時に、固体が軟化した、熱可塑性状態でプラスチックを成形しうる二次成形プロセスである。機械的熱成形は、通常、プラスチックフィルムを正又は負の型で圧着し、次いで、プラスチックを各々、アモルファス又は半結晶性に応じて、その融点近傍か又Tgより高い温度で加熱することを含む。型にプラスチックを変形又延伸後、その軟化範囲以下に冷却して三次元形状を凍結させる。
【0056】
[0106]雌型と雄型形成体からなる取付具を、プラスチック膜をクローズドエンド円筒形状に成形するSolidWorks(Dassaut Systemes,Waltham,MA)で設計した(
図13)。アルミニウム固定具を、設計に従ってCNCを介して機械加工した。膜で雄型を包み、雌型に入れ、圧着後、炉に投入した。膜材料の熱特性に応じて、膜はティーバッグ等のクローズドエンドの円筒形に成形され、余分な材料を切り落とした。
【0057】
[0107] 熱密封
[0108]いくつかの実施態様では、熱密封は、SEDの膜の密封方法であった。2つの熱密封法を検討した。第一の方法は、膜の融点まで加熱されたはんだごてを用いて、密封される領域に一定の力を印加する方法であった。しかしながら、この方法では接触力と温度制御が困難であり、信頼性が極めて低かった。第二の方法は、膜を固定具に入れ、密封領域を圧着して膜を炉に入れる方法であった。これは、発泡体の周囲を膜で包み、
図13(B)に示す固定具内に注意深く放置して達成された。次いで、圧着された固定具を、設定時間及び設定温度で、炉に入れ、除去し、室温で冷却した。圧着膜の継ぎ目は密封され、残りの膜と発泡体も熱損傷を受けなかった。その結果、完全にカプセル化された発泡体が得られた。過剰な膜材料をハサミ又はレーザーでトリミングした。
【0058】
[0109] 膜孔形成
[0110]Gravograph LS100 40W CO2レーザー(Gravotch Inc.,Duluth,GA)を用いて膜材料に孔をあけた。これには、コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアを用いて孔の二次元パターンを作製し、レーザーカッターソフトウェアにエクスポートした。TPUフィルムのパワー及び速度設定は各々、1%及び100%に設定した。解像度を1200DPIに設定した。
【0059】
[0111] 脱離メカニズムとマーカーバンド
[0112]単純な脱離メカニズムは、送達カテーテルから装置を展開、再配置、及び放出するのに役立つ。簡便なねじ切り放出システムを構築した(
図14)。ステンレス鋼(SS)を用いて、経済的、適用可能、かつ放射線不透過性である分離システムを構築した。SSは放射線不透過性物質であり、治療介入中の画像化が可能である。SEDの両端にSSチューブを配置すると、臨床医が装置を適当に位置決めするマーカーバンドとして役立つ。
【0060】
[0113]SSチューブ(0.115-0.125”OD)を内部でネジ止めした(#4-40又は#0-80)。SEDの端部にエポキシ化して、当該SSチューブを、マーカーバンドとして、かつ送達ケーブルとのインターフェースとして機能させた。送達ケーブルは、iWeld 990(LaserStar,Riverside,RI)を用いて遠位端にSSチューブレーザーを溶接したトルクケーブルからなっていた。充填ワイヤ及び/又はSSスペーサを用いて、送達ケーブルとSSチューブの間の溶接を安定化した。ねじ切りSSロッドを、送達ケーブル/SSチューブアセンブリの遠位端でレーザー溶接し、SED上のSSマーカーバンドとインターフェースした。臨床医は、近位端の送達ケーブルをねじるだけでSEDを解放しうる。
【0061】
[0114] 2.3 装置の特性評価
[0115]最終装置の組成と作製
[0116]一実施形態のための最終的な装置構造及び組成を、
図15及び16に概略する。SEDを製造して、組み立てる一実施形態の工程を
図17に示す。簡潔には、熱可塑性薄膜フィルムで発泡体を包む。当該発泡体をアルミニウム固定具に入れる。次いで、アルミニウム固定具をともに圧着し、フィルムの融点に近い炉内に配置する。炉内では、フィルム端部もともに熱密封する。その後、固定具を炉から取り外し、室温に冷却させる。そして、当該固定具をあけて、余分なフィルムをレーザーによりトリミング又は除去する。さらに、ラップされた発泡体を取り除き、端部を圧着する。そして、SSマーカーバンドを圧着端部上に置き、エポキシ化する。
【0062】
[0117]膜の特性評価
[0118]熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルム(AU25、EU28、及びEU29;SWM International Inc.,Alpharetta,GA)を、様々な実施形態において、SMP発泡体をカプセル化する膜材料として選択した。当該材料は、SMP発泡体に伴う圧縮能及び膨張能を呈した。さらに、その圧着材料の厚さと弾性により、圧着直径が改善された。このセクションでは、TPU膜の形態、熱及び化学的性質を試験した。TPUフィルムの他の特性は、以下に示す。
【0063】
[0119]TPUフィルム表面を、SEMで受け取ってイメージングした。製造者が記載するように、モノリシック表面にはテクスチャ領域がみられる。テクスチャ領域(いくつかは孔があるように見える)は、おそらく粗雑な取り扱いの結果である。TPUフィルムは、非多孔性及び水耐性にもかかわらず、水蒸気が透過でき、通気性もあり、創傷包帯としての用途がある。当該用途の性能には、血液及び細胞の通過が重要であるため、TPUフィルムをレーザー切断して細孔を作製した。
【0064】
[0120]直径261±21μmの平滑な同心細孔をCO
2レーザーで作製した(
図18)。細孔端に沿ってレーザー誘起融解のエビデンスが観察された。当該孔の大きさは、血液及び細胞浸潤に十分である一方、マクロ粒子を捕捉できる。膜の理論的多孔率は10.54%であり、次式:
多孔率=(体積
細孔/体積
フィルム)で計算した。
【0065】
[0121]受領したTPUフィルム及び未処理のH40試料についてATR-FTIRを実施した(
図19)。H40純試料は、H40発泡体と組成的に同一である、非発泡非多孔性プラスチックをいう。ATR-FTIRスペクトルは、ダイヤモンドATR結晶を備えるブルッカーアルファ赤外分光計(Bruker,Billerica,MA)を用いて得られ、OPUSソフトウェア(Bruker,Billerica,MA)で分析した。空のチャンバーの32回のバックグラウンド走査の後、4cm
-1の解像度、吸収モードで64回の試料走査を行った。
【0066】
[0122]ATR-FTIRにより、TPU膜と同様にH40純膜に対して1689cm1のウレタンピークの存在が確認された。全てのプラスチックで強いC=Oピークが観察され、ポリウレタンポリマーの特性である水素結合ウレタンが示唆された。合成中のイソシアネートと水の反応のため、H40組成物中に、約1647cm1の尿素肩がみられた。従来のポリウレタン発泡では水が化学発泡剤として用いられていたため、H40発泡体には尿素肩が予想された。EU28及びEU29のTPUフィルムには、ポリエステルの存在のため、約1730cm1で肩がみられた。ポリエステルポリウレタンは体内に埋め込まれると急速に加水分解されることが報告されており、ポリエーテルポリウレタンは酸化により分解される。内皮化の後に非毒性副産物に分解する膜を、いくつかの実施他形態で用いられうる。AU25TPUフィルムには1730cm1肩がないため、ポリエーテルポリウレタンである。
【0067】
[0123]
図20は、フィルムのDSCサーモグラムを示す。受領したTPU試料(3~10mg;N=1)をアルミニウム皿に密封した。DSCプロトコルでは、-80℃に10℃/分の速度で初期試料を冷却し、その後2分間等温的に保持することが規定される。最初の冷却後、10℃/分~180℃の速度での熱ランプが進行した後、試料を同じ速度で-80℃に冷却した。このサイクルを2回繰り返した。Tgはサイクル間で変化しなかったが、疑わしい融点は最初のサイクルの後で消去した。
【0068】
[0124]TPUフィルムのTgは凍結以下(-35~-38℃)であるため、当該材料は体内条件下では、ゴム状である。Tg温度が超低温であるため、当該フィルムは熱成形できず、室温又は体温で固定された形状を保持できない。その結果、当該材料は、SMP発泡体、ニチノール、又は体内バルーンのいずれかにより膨張される必要がある。一実施形態では、TPUフィルムは軟質であり、その柔軟性は、SMP発泡体で膨張させるのに十分である。当該TPU膜の熱的性質の他の欠点は、圧着幾何学がそれほど保持されないことである。換言すれば、当該TPUフィルムをSMP発泡体上で圧着すると、弛緩する場合があり、送達カテーテルを詰まらせる可能性がある。従って、他の実施形態では、膜形成に他の材料を用いることができる。当該材料としては、例えば、Tgが37℃以上(又は30、32、34、36、39、41℃以上)の熱可塑性膜、Tgが37以上(又は30、32、34、36、39、41℃以上)のSMP発泡体膜があげられる。SMP発泡体膜では、膜のTgは、主要塞栓発泡体のTgとは異なってよい。例えば、SMP発泡体膜のTgは、塞栓発泡体のTgよりも低くてよい。例えば、SMP発泡体膜のTgは、塞栓発泡体のTgよりも高くてよい。SMP発泡体膜の材料組成は、塞栓発泡体と同一でも、異なってもよい。
【0069】
[0125]例えば、一実施形態では、膜は芳香族ポリマーを含んでもよく、一方、塞栓発泡体は脂肪族ポリマーを含んでもよく、塞栓発泡体よりも膜が堅牢となる。例えば、膜と塞栓発泡体の組成は同一であるが、膜は塞栓発泡体よりも堅牢であってよい。例えば、膜は、塞栓発泡体が硬化すると(パンの耳に類似する)塞栓発泡体の表面に「スキン」が自然形成されてよい。当該スキンの作製にあたっては、最終装置の幾何学的形状で発泡体を作製して、当該スキンを利用しうる。
【0070】
[0126]他の実施形態では、ダクロン、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、パリレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、布、メッシュ、縫合糸等から作製された膜を含むことができる。
【0071】
[0127]一実施形態では、膜のTgは、体温か又は体温に近い。これより、膜は、保存条件下(つまり、低湿度の室温)でその圧着幾何学的形状を保持でき、一方、体内条件下で膨張しうる。
【0072】
[0128]送達システム
[0129]トルクケーブルをSEDのマーカーバンドにねじ込んだ。SSネジ付ロッドとチューブをトルクケーブルに溶接し、ネジを取り外しできるようにした。2本のネジ(#0-80及び#4-40)を用いて装置を取り外した。小型ネジ(#0~#80)は、装置の取り外しにかかる労力が少なく、性能が向上した。装置の取り外しが困難である場合もあった。これは、レーザー溶接の不良、スレッディング不備、装置配置不備、及びトルクケーブルの損傷に起因する可能性がある。
【0073】
[0130] 3. シース型塞栓形成装置の試験
[0131]3.1 材料及び方法
[0132]SED拡張
[0133]SEDは媒質細孔SMP発泡体から作製し、TPU膜でカプセル封入した。装置を0.008インチのニチノールワイヤ上にねじ込んだ。装置を、80℃での圧着圧力が80PSIであるSC250ステントクリンパーで圧着した。SEDには多孔質膜がなく、末端にはエポキシ化SSマーカーバンドがなかった。その後、SEDの圧着直径をキャリパで24時間後に記録した。
[0134]ウシ血液相互作用
[0135]ウシ血液は、組織共有プログラムの一環としてローゼンタール食肉科学技術センター(テキサスA&M大学、テキサスカレッジステーション、テキサス)から入手した。ここで用いた血液は、本研究とは無関係の目的で安楽死させた動物から採取した。血液を3.2%クエン酸ナトリウム溶液中でクエン酸処理して凝固を防止し、使用前は4℃で保存した。
【0074】
[0136]いくつかのSEDを調製して、ウシ血液がその成績にどのように影響するかを試験した。
図21は、本明細書で用いられるSEDの概要である。全てのSEDに用いられたSMP発泡体は、非洗浄の非網状H40発泡体であった。SEDの両端にはマーカーバンドは付着しなかった。各SEDを圧着し、試験前に乾燥重量を記録した。ポリプロピレン容器をPBS(0.1M;7.4pH)で洗浄し、ウシ血液50mLを充填した。その後、容器を水浴中に入れ、37.5±0.5℃で保温した。
【0075】
[0137]活性化血液をいくつかの試料に用いた。0.1M CaCl2の105μLをウシ血液1mLに添加し、活性化凝固時間(ACT)120~180秒で血液を活性化させた。カオリン活性化試験バイアルに血液2mLを添加し、Hemochron(登録商標)401(International Technidyne Corporation,Edison,NJ,USA)にバイアルを挿入し、ACTを確認した。
【0076】
[0138]血液を入れた容器でインキュベートする直前に、SEDをPBSですすいだ。SEDをクエン酸血中に1時間、活性化血液中に30分間浸漬した。次いで、SEDを除去し、PBSで穏やかにすすいで、非付着性血栓を洗浄して、画像化し、50℃のオーブン中で一晩乾燥した。対照発泡体を凝固装置とともにオーブンに入れて、当該装置を完全に乾燥させた。乾燥後、SEDを秤量し、装置上の凝血塊/血液の質量を定量した。次に、装置を再度イメージングし、SEM用に調製した。
【0077】
[0139]解剖学的モデルへの送達
[0140]ヒトLAAのコンピュータ断層撮影(CT)画像に基づく解剖学的モデルを作製し、SEDを試験した。ヒト心臓のCT画像データをOsiriX画像ライブラリーで取得した。次に、NIHが開発した3Dスライサープラット発泡体上の画像閾値ツールを用いて左心房とLAAを分離した。次に、モデルの表面メッシュを作製し、MeshLabソフトウェアでさらに処理した。表面メッシュは、防水性で、かつ最小壁厚でも確実に3D印刷ができることを検証した。
【0078】
[0141]分離した左心房とLAAメッシュを3D印刷した。次に、3D印刷モデルをアセトンで蒸気研磨した。次いで、3D印刷モデルを壁が平滑な箱に入れ、周囲をポリジメチルシロキサン(PDMS)で鋳造した。当該PDMSを圧力室で一晩硬化させた後、50℃に設定したオーブンで1時間、最終硬化させた。次いで、加熱したベースバス中に型を置いて、印刷材料をPDMSキャストから溶解させた。最終結果物は、所望の容器形状のPDMSモデルであった。
【0079】
[0142]SEDを、PTFEチューブに予め装填し、体温、最小流動下で解剖学的モデルに送達した。装置は、上記と同様の方法で展開した。装置が展開され、完全に作動したため、装置の再捕捉能を試験した。さらに、SEDからの送達ケーブルを緩めて装置の分解を、調べた。
【0080】
[0143]装置-小孔接合
[0144]解剖学的モデル内に配置された完全に作動した装置を画像化し、装置と左心耳小孔との間のギャップを定量化した。簡潔には、閉塞モデルを、装置及び小孔がカメラのレンズに対して垂直になるように配置した。縮小モデルの画像を、スケールと共に撮影した。次に、小孔及び装置の断面積をImageJで測定した。次に、装置小孔接合を、小孔と装置断面積の比をとって定量化した。
【0081】
[0145]粒子状物質の定量
[0146]SMP発泡体と、多孔質膜を備えるSED、及び非多孔質膜を備えるSED(N=2)とで、生成された粒子を定量して、光学顕微鏡による粒子計数を行った。機械的網状化された、未洗浄のSMP発泡体(30mm OD;20mm長)を試料として、SEDの作製に用いた。発泡体を染色して、粒子の可視化を改善した。本明細書で用いる粒子計数プロトコルは、USP 788顕微鏡粒子計数試験を適合させた。
【0082】
[0147]簡潔には、試料を圧着して、100mLの無粒子水と清浄なガラス器具に入れた。次に、試料を37℃に設定した水槽で1時間超音波処理して装置を作動させた。次いで、容器を除去し、20回反転させ、内容物を真空下でセルロース濾過材に通した。次いで、濾過材ホルダーを10mLの無粒子水でリンスして、濾過材ホルダー壁に付着した粒子を再懸濁した。濾過材から水が除去されたら、真空を停止し、濾過材を注意深く除去し、清浄なスライドガラス上に置き、さらなる分析を行った。
【0083】
[0148]濾過材を乾燥後、100倍の倍率のキーエンス光学顕微鏡で検査した。キーエンスシステムの「自動測定」ソフトウェアを用いて粒子を計測した。濾過材の大部分を系統的に移動させて分析した。次いで、いくつかの濾過材を、80℃で一晩乾燥させてSEM下で分析し、そして濾過材の表面を金でスパッターコーティングした。
【0084】
[0149]結果を、少量(100mL未満)の注射についてUSP788で規定された合格基準と比較した。USP788では、粒子計数法(例えば、光遮蔽法と顕微鏡的粒子計数法)に応じて異なる判定基準を設定する。
【0085】
[0150]試験環境が多量の無塵水からなる粒子状物質試料を計数した。粒子数が規定の限度値を超える場合、試験環境は粒子状物質の分析には適さない。
【0086】
[0151] 3.2 結果
[0152] SED拡張
[0153]SEDを圧着して、12Frカテーテル(ID≦3.75mm)内に収まらせることができた。TPUフィルム内にSMP発泡体をカプセル封入すると、圧着直径は平均して0.42±0.07mm増加した。圧着直径に対する内径の影響を
図22に示す。
【0087】
[0154]
図22に報告される圧着直径は、作動研究用装置に通した0.008インチのニチノールワイヤを含むが、ニチノールワイヤなしで作製した一実施形態では、圧着直径は0.008インチ(0.20mm)減少する。作動研究は、製造プロトコルが確立されていない非多孔性装置で行ったため、ここには含まれない。しかし、体外試験中のSED作動の定性的目視検査によれば、8分未満で完全に拡張した。
【0088】
[0155]装置と血液の相互作用
[0156]重量分析及び定性的画像は、SEDが凝血及び/又は血液成分の吸着が可能であることを示す。非多孔性膜が活性化ウシ血液に浸漬されたSEDを除き、すべての装置はウシ血液に浸漬され、完全に作動しえた。活性化血液中に浸漬された非多孔性SEDは、血液が装置を貫通できず、凝固前にTgを下げられなかったため、完全には作動しなかった。
【0089】
[0157]SMP発泡体と膜の間の隙間に血栓が形成される。これは、さらなる血栓が標的血管の容積的充填を改善し、SMP粒子が循環に入るのを防ぎうるため有益である。クエン酸血中に浸漬した装置上には血栓は形成されない。しかし、クエン酸血は装置全体に吸着された。
図23は、多孔性及び非多孔性SED上に形成された凝血塊の質量の主な違いを示す。浸水前に、対照発泡体の質量を記録し、凝固発泡体とともに乾燥させてから、全水分の除去を確認した。
【0090】
[0158]SEM分析では、活性化ウシ血液に浸漬されたSMP発泡体及びTPUフィルム上の血栓関連事象の徴候が見いだされた。SMP発泡体とTPUフィルム表面ともに液滴様物が出現した。当該液滴様形成は、オーブン乾燥法に関連すると考えられる。さらに、フィブリンと絡み合った血小板クラスタと思われるものが、SMP発泡体及びTPUフィルムの表面で観察される。
【0091】
[0159] 装置送達
[0160]半数以上の装置は合併症なく送達され、8分未満で左心耳小孔を満たすように拡張された。多くの合併症は、解剖学的モデルで、装置からの半径方向力が固定するには不十分であったためであった。その結果、装置は、展開中に分離メカニズムにより回転した。スクリューを#4-40から#0-80へ移すと結果は改善され、最終的に、いくつかの実施形態では、解剖学的構造で固定される固定メカニズムを用いることができる。これは、装置にニチノール、SMP、コイル、フック、バーブ、又はスクリューを組み込んで容器に固定すれば達成しうる。
【0092】
[0161]いくつかの実施形態では、送達カテーテルから装置を外すことが困難であることが判明した。装置の部品や送達ケーブルには柱強度がなく、その結果、送達ケーブルが座屈したり、曲がったりする。他の実施形態では、剛性の強い送達ケーブルに切替えると、結果が改善された。
【0093】
[0162]完全に拡張された装置を再捕獲する試みは、いくつかの実施形態では成功しなかった。装置が大きすぎて、送達カテーテル内に収まらなかった。部分的には再取り込み(すなわち、装置の半分を取り込む)できた。他の実施形態では、装置の周囲に金属又はポリマーのフレームを組み込んで、完全に再捕捉できる。
【0094】
[0163]装置・小孔接合
[0164]装置とLAA小孔との間のギャップを画像処理により定量化した。すべての装置の幾何学的形状は、小孔の少なくとも86%を閉塞でき、大部分の装置は小孔の約95%を閉塞できた。装置周囲の流れは患者の約32%で観察されており、漏出が5mm未満であれば有意ではないと考えられる。いくつかの実施形態では、装置と小孔との間にギャップはなく、塞栓が全身循環に入るのを防止し、内皮化を改善する。
【0095】
[0165]口腔内の形状がLAAC装置の有効性を制限する場合がある。「不規則性指数」を計算して、臨床症例と比較してベンチトップモデルの幾何学的形状が積極的に困難か否かを判定した。不整指数は、小孔の幾何形状と残存漏出との相関を示す。小孔の実面積及び理想面積を最初に記録して、不規則性指数を計算する。小孔の実面積は、画像処理ソフトウェアを用いて測定する。理想面積は、小孔の主軸と副軸を測定し、次式:
理想面積 =π・主半径・副半径 を用いて計算する。不規則性指数は次式:
不規則性 = abs[1-((理想面積)/(実面積))] を用いて計算する。
【0096】
[0166]94%の特異度で漏出を予測する閾値として、0.04の不規則性指数が同定された。本明細書で用いるベンチトップモデルの不規則性指数は約0.027であり、これは、ベンチトップモデルの幾何学的形状は特に不規則でないことを意味する。換言すれば、ベンチトップモデルの形状は治療に適するはずである。SEDは小孔を完全に閉鎖しなかったため、サイズアップして、小孔に適合させる必要があると思われる。
【0097】
[0167]ばいじん発生
[0168]粒子の分布を
図24及び25に示す。微粒子非含有水から生成される微粒子は少量であることから、試験環境が微粒子分析に適することが確認される(限度値≧10μm=40、≧25μm=10)。SMP発泡体を膜にカプセル封入すると、粒子数の有意な減少が観察された。多孔質SEDは、USP788の光遮蔽法で規定された限界値(限界値≧10μm=6000、≧25μm=600)に準拠した。しかし、多孔質SEDは、USP788顕微鏡法で規定された限界値(限界値≧10μm=3000、≧25μm=300)に近似したが、準拠はしなかった。装置を適合するには、装置を洗浄し、適当に取扱い、かつ膜孔径を261μmから小さくすればよい。さらに、画像解析ソフトウェアで、計数方法を実施したため、粒子計数が水増しされた可能性がある。
【0098】
[0169]この目的は、発泡体とSEDとの粒子レベルを比較し、粒子が減少したか否かの検証である。
図25は、発泡体と装置の粒子の顕著な減少を示し、発泡体のカプセル化の有用性が強調される。興味深いことに、非多孔性SED試料は多孔性SED試料よりも多くの粒子を生成した。非多孔性SEDがいかなるカプセル化発泡体粒子も漏出しないことを考慮すると、この結果は予想外であった。この矛盾の原因としては、試料の取扱いや膜の破損等が考えられる。全ての試料を周囲空気中で取り扱い、試料間で洗浄しなかった非滅菌ステントクリンパーで圧着した。さらに、非多孔性SEDは気密であり、バルーンの圧搾と同様、圧着されると破裂する可能性があった。破裂を防止するため、膜を針で数回穿孔したが、効果がなかった可能性がある。
【0099】
[0170]SEM及び光学顕微鏡画像に基づくと、最大粒子は細長い破断ストラットであった。SMP気泡薄膜で構成される多数の粒子も観察された(
図26(A)及び26(B))。SMP気泡膜は、典型的な台形であり、200μm未満の大きさのものが多くみられた。気泡膜から構成される粒子の量は、SMP発泡体が網状化され、十分な洗浄により、減少すると予想される。
【0100】
[0171]脳動脈の微小塞栓形成は、塞栓防護装置及び本明細書に記載のSEDに固有のリスクである。脳卒中患者を対象とした研究では、50~300μmの細動脈閉塞の病理学的証拠が報告されている。心臓手術後に神経機能不全を発症した一連の患者により、微小塞栓術の危険性が、支持される。当該患者は直後に死亡し、剖検の結果、脳微小血管系に沈着した塞栓と考えられる無細胞物質(<70μm)が見いだされた。微小塞栓形成のリスクにもかかわらず、SEDは非カプセル化SMP発泡体と比較してマクロ及び微小塞栓形成のリスクを低下させる。濾過材設計が改善され、適当な洗浄で、SEDの膜孔径孔の低減により、粒子捕捉の改善が期待される。
【0101】
[0172] 4. 結論
[0173] 4.1 要約
[0174]SMP発泡体は、カテーテルを介した展開後に、体腔を容積的充填しうるため、血管内に適用されて用いられてきた。しかしながら、当該発泡体は、意図しない虚血を発症させうる有害粒子を発生するリスクをもたらす。有害粒子が生じるリスクは、SMP発泡体がニチノール、又は血管内装置に一般的な他の硬質材料と接触する場合にさらに高まる。従って、本明細書に記載した実施形態の目的は、微粒子を発生するSMP発泡体のリスクの軽減であった。このため、SEDを設計し、作製し、LAAを閉鎖する状況で試験した。左心耳閉鎖(LAAC)は、前提装置がニチノールから構成され、この装置が前提装置と統合されうるため、装置(いくつかの実施形態ではあるが、すべての実施形態ではない)の意図される用途として選択した。
【0102】
[0175]SEDの開発に用いたSMP発泡体を特徴付けした。LAACのSEDの開発で注力した点は、SMP発泡体の直径を10倍膨張させる方法を見出すことであった。いくつかの実施形態では、SMP発泡体は、12Frカテーテルからの送達後、ほぼ直径の10倍の膨張に対応する、ODが30mmに膨張することを要する。このため、SMP発泡体を、同心円状に穿孔し、又は中空にして、膨張比を高めた。その結果、SMP発泡体は、20mmの穴を中心に穿孔すると、膨張が10倍に達しうることが示された。孔径及び内径が大きくなる、発泡体密度が低下して、SMP発泡体の膨張比が高まった。孔径及び内径に関係なく、体温水に入れると、すべてのSMP発泡体は圧縮状態から30mm以上膨張しえた。
【0103】
[0176]一実施形態では、選択された最終設計は、両端にエポキシ化されたステンレス鋼チューブを備える多孔質TPUフィルム中にカプセル封入されたSMP発泡体からなる。簡単なスクリューメカニズムを設計し、作製して、SEDを送達し、展開した。TPU膜を化学的、熱的、及び形態学的に特徴付けた。ATR-FTIRによりTPU膜中のポリウレタンの存在が確認され、また膜の一つはポリエーテル‐ポリウレタン膜であったことがわかった。DSCは、TPU膜のTgが凍結温度より低いことを見出した。Tgが低い場合、体内に存置されると、SMP発泡体と並行してフィルムを膨張させるが、これはまた、フィルムが圧着された幾何学的形状を保持しないことを意味する。受領したままのTPU膜のSEM分析により、モノリシックで水に対して不透過性であることが見いだされた。従って、CO2レーザーによれば、血液及び細胞がSMP発泡体を透過しうる、TPUフィルム内に均一な261μmの孔を生成できる。フィルムで発泡体の周囲を包み、端部を熱密封して、クローズドエンドシリンダで成形した。装置の端部に塞栓されたステンレス鋼管により、蛍光透視イメージングが可能となり、装置の送達が促進される。
【0104】
[0177]12Frカテーテルを介して送達され、LAAを閉塞し、粒子を還元し、血液及び吸着血液において作動を受ける実施形態の機能を評価した。装置は、12Frカテーテル内に適合しえた。圧着装置をクエン酸処理及び活性化ウシ血液に浸漬すると、優れた動作を呈したため、生体内条件下では装置が実際に拡張して腔を閉塞することが示唆された。装置は吸着血液中の重さも2倍にした。目視試験の結果、SMP発泡体とTPUフィルムの間に凝固したウシ血液が認められ、血液は発泡体内の深部に浸透しえた。これらの結果から、血栓とSMP発泡体が、体腔の閉塞を補助しうることが示唆される。
【0105】
[0178]装置は、解剖学的モデルに良好に送達しえた。装置送達を改善しうるいくつかの観察を行った。そこで、実施形態は、左心耳への装置の固定、より剛性の高い装置の作製、及びより剛性の高い送達ケーブルの使用を含む。LAA小孔と装置間のギャップを画像処理により測定した。装置と小孔の隙間は小孔表面積の4~14%を占めた。
【0106】
[0179]USP788に基づくプロトコルを適用して、膜付き又は膜なしで作動させたSMP発泡体として生成された粒子の数及びサイズを計数した。その結果、TPU膜にSMP発泡体をカプセル封入すると粒子数が有意に減少した。粒子のSEMは、長細い発泡体ストラット、及び細胞薄膜から構成される厄介な粒子であった。
【0107】
[0180] 4.2 考察
[0181]これらの実施形態の開発では多くの制限があった。発泡体の圧着直径を最小限にするために、中心を穿孔した。発泡体材料を切断すると、処置が阻害され、動作が制限され、発泡体の半径方向膨張力が減少する可能性がある。作動力及び半径方向の膨張力が制限されると、密封が不十分となり、かつ、体内で発泡体が移動する可能性がある。従って、他の実施形態は、発泡体の穿孔が省略できる。一実施形態は、圧着圧力を高める発泡体の穿孔の代替を含む。様々な圧力を、様々な実施形態に用いて、水又は血液の発泡体可塑化能を維持する。
【0108】
[0182]SMP発泡体をカプセル化するのに適した材料を見出すのは困難な課題であった。最初に、PET(すなわち、Dacron)を調べた。しかしながら、PETを用いる実施形態は、圧着状態から膨張しない硬質の非弾性材料であった(しかし、いくつかの実施形態では適しうる)。TPUフィルムも試験したが、その目的に寄与し、いくつかの実施形態では適当でありうる。受領したTPUフィルムは多孔性ではなく、その圧着幾何学的形状を長時間保持できなかった。さらに、TPUフィルムを加工して多孔性シリンダーを形成すると、縫合線、粗縁部、及び大孔が生じた。しかしながら、当該実施形態は、様々な臨床シナリオでは適当でありうる。いくつかの実施態様では、転移温度を調整しうる合成多孔質SMP膜があげられる。SMPフィルムの実施例には、熱硬化性フィルムがあげられる。様々な実施形態では、最適多孔率は様々である。いくつかの実施態様では、当該フィルムは、非血栓形成性であるか、又は薬物若しくは成長因子を負荷するように表面修飾される。
【0109】
[0183]ベンチトップモデルにおけるSEDの展開後、装置は固定されず、容易に左心耳から移動しうることが観察された。装置移動を防止するため、装置の実施形態は、超弾性合金、ポリマー、又はコイルで補強される。
【0110】
[0184]実施形態の動機付けは、ニチノール及び硬質材料との相互作用により、発泡体粒子の発生を低減させることであった。実施形態は、SEDをニチノールと一体化させる。
【0111】
[0185]一実施形態は、独立して、又は他の技術と協同して用いられる装置を含み、血管欠損を選択的に遮断する。一実施形態は、SMP発泡体(又はヒドロゲル等の他の実施形態でのいくつかの他の膨張剤)をカプセル封入する可撓性のポリマー薄膜を含む。当該実施形態は、カテーテルを介して血管内で欠損部に送達でき、展開され、受動的に拡張されて、周囲容積的に充填する。可撓性膜は穿孔されることができ、多孔質SMP発泡体へ血液及び細胞が浸透しうる。当該可撓性膜はまた、大きな塞栓が全身循環に入るのを妨げることがある。用途としては、閉塞性中隔欠損、動脈瘤、LAA、及び他の血管欠損がありうる。当該技術は、SMP発泡体と既存の技術、又は金属/ポリマー成分との一体化を可能にするが、塞栓発生のリスクを高めることはない。
【0112】
[0186]血管内技術と治療は、技術革新、補強、最低侵襲手術への指向により、極めて大きな成長を遂げてきた。本明細書に記載される実施形態は、血管欠損を閉塞する装置を改良することにより、この成長市場に貢献しうる。一実施形態では、SMP発泡体は、一度展開されると、直径の10倍膨張でき、血管欠損の容積的充填を改善して、閉塞時間、処置時間を短縮し、治癒を改善しうる。一実施形態は、SMP発泡体を取り囲み、発泡体の潜在的有害粒子の生成を阻止する薄膜を包含する。その結果、当該技術により、形状記憶ポリマー発泡体が、公知技術及び/又は金属/ポリマー成分と一体化できるが、そうでなければ、SMP発泡体は剪断され、粒子が発生する可能性がある。従って、当該技術は、SMP発泡体の商業的有用性を可能にし、血管欠損の閉塞を改善し、かつ、粒子が患者の体循環に入るリスクを軽減する。
【0113】
[0187]本明細書に記載する実施形態には、多数の新規な態様がある。
【0114】
[0188]第一に、一実施形態では、膜により、膨張する発泡体が、全体の発泡体が膨張し得るよりも大きな体積膨張を可能にするボイド(例えば、中空発泡体シェル)を備えうる。発泡体のチャンネルの中空化、又はコア構造化すると、体積膨張が高まる。発泡体中のボイドと、膜で被覆された発泡体の外表面積とを組み合わせると、血流に直接曝露されるチャネルがある発泡体と比較して、ボイドがより効率的に凝固しうる。100倍の体積膨張が発泡体全体で容易に達成可能な場合、膜で被覆された発泡体は1000倍以上を達成しうる。発泡体の形状回復は、膜を膨張させるため、体積充填膨張にとって重要である。いくつかの実施形態では、たとえ材料が形状記憶系であっても、膜単独で膨張する力を備えうる。
【0115】
[0189]第二に、膜は、微小凝血塊を含む粒子が発泡体から漏出するのを妨げる。発泡体が金属ストラットに接触するコンビナトリアル装置で発泡体のみを用いても、特に金属ストラットが移動する場合、発泡体は剪断されて粒子を形成しうる。発泡体を被覆する膜は、粒子が閉塞体積から出るのを防止するバリアとして機能する。
【0116】
[0190]第三に、膜は、血液及び流体が装置内に流入しうるが、より大きい粒子が容積的から出られないような多孔質とすることができる。いかなる数の製造方法を用いても、膜に均一又は異なる直径の孔を作ることができる。さらに、孔は、ランダム又は特定のパターンで作製されてもよい。これらの孔の主な目的は、血液を容易に体積に流入させることである。しかしながら、副次的には、薬物又は治療薬を容積的から流出させることである。
【0117】
[0191]第四に、SMP発泡体の可撓性薄膜によるカプセル化により、血管欠損が安定して閉塞される。SMP発泡体及び可撓性薄膜は、送達カテーテル内に適合するように半径方向に圧縮でき、その後、一度血管系で展開されると、膨張できる。この装置は、直径で10倍の拡張を受け、血管欠損を容積的に閉塞し、塞栓リスクを軽減しうる。血管用膜を包含する同様の装置として、塞栓防護濾過材及び血管閉鎖装置(例えば、LAAC装置)があげられる。しかし、当該装置は、容積的に腔を充填して血管系を閉塞するのではない。さらに、膜は、形状記憶合金(例えば、ニチノール)又はバルーンにより膨張される。当該技術は、微粒子発生のリスクも軽減する血管閉塞用にSMP発泡体で作製された装置の技術間隙を克服する。
【0118】
[0192]一実施形態では、SMP発泡体と、それをカプセル封入する可撓性薄膜とを含む。SMP発泡体は、イソシアネート及びアルコールモノマーから合成され、加工されてポリウレタン発泡体を形成する。次いで、発泡体を機械的網状化し、相互接触する多孔質構造を形成し、血液及び細胞浸潤を可能にし、治癒応答に寄与する。次いで、発泡体を所望の形状に切断し(すなわち、中空及び非中空の円筒)、洗浄して、潜在的な有害化学的残留物及び粒子を除去する。次いで、発泡体を凍結乾燥し、乾燥条件下で保存する。発泡体の目的は、体腔を容積的に充填し、積極的な治癒反応を促進することである。
【0119】
[0193]可撓性薄膜は、合成でき、又は第三者の供給業者から購入できる。一実施形態では、熱可塑性ポリウレタンフィルム(TPU;厚さ<30ミクロン)を、膜として機能させて用いる。TPUフィルムは穿孔されてメッシュ状にする。これは、レーザー(孔径~=260ミクロン;多孔率=10.5%)を用いて、膜上に孔をパターン形成して行う。次いで、膜を所望の幾何学的形状に熱密封する。一実施形態では、処理済みSMP発泡体の周囲を膜で包むことで実施される。発泡体の周囲を膜で包んだ後、包まれた膜が重なる部分で縫合される。その後、シームは、アルミニウム板と共に膜を圧縮し、特定の時間及び温度で炉内に配置すると熱密封される。炉から取り出し、カプセル封入されたSMP発泡体を作製する。次いで、余分な膜材料をトリミングする。膜の目的は、発泡体を保護し、潜在的に危険な塞栓を捕捉することである。
【0120】
[0194]次いで、カプセル封入されたSMP発泡体を特定の温度及び圧力で半径方向に圧縮(すなわち、圧着)する。その後、半径方向圧縮後、装置(すなわち、カプセル封入されたSMP発泡体)を送達カテーテルに予め装填できる。そして、装置は、押し込みケーブル(すなわち、ガイドワイヤ、トルクケーブル等)を用いて体腔内に押し込まれ、その際、当該装置は受動的に作動して体腔を拡張し、充填することができる。
【0121】
[0195]本装置の他の実施形態は、装置の両端にステンレス鋼バンドを一体化することを含む。これは、溶融処理または医用規格のエポキシを介して行いうる。一端部では、押し込みケーブルをステンレス鋼チューブにねじ込むことができる。その後、デバイスを確実に送達し、展開して、処置合併症を防ぎうる。展開後の送達カテーテルへ装置を引き込むこともできる。
【0122】
[0196]他の実施形態では、装置を、金属/ポリマー成分と一体化できる。これにより、装置の密封、血管壁の接合、装置の送達、及び装置の移動防止の達成に寄与しうる。
【0123】
[0197]一実施形態では、合成膜は、合成中に所望の幾何学的形状に加工されれば、膜の穿孔又はその熱密封の必要がなくなる。膜は、加工後の段階で穿孔されなくてもいいように穿孔形成されてよい。一実施形態では、熱可塑性材料は、ブロー成形又は熱処理(例えば、射出成形)され、所望の形状になる。膜の多孔性及び孔パターンは、さらに最適化されうる。一実施形態では、膜の密封には、溶媒溶接があげられる。
【0124】
[0198]実施形態の特徴付けは、体温ではガラス転移温度を超える膜が、圧縮後に膨張可能であることを示す。ポリエチレンテレフタレート等の、ガラス転移温度が体温超える材料は、硬すぎて、圧縮後に膨張できない可能性がある(しかし、いくつかの実施形態では、適当でありうる)。最初の試験は、圧縮装置(すなわち、カプセル化されたSMP発泡体)が直径で10倍の膨張を受けうることを示す。特定の装置の実施形態は、体温の水浴中では、圧縮外径は3mm未満で、30mmまで拡張する。プロトコル(USP 788)にしたがい、カプセル化装置を、未カプセル化装置と比較すると、生成粒子量を低減しえた。ステンレス鋼バンドを装置端部に配置すると、蛍光透視イメージングが可能になり、スクリュー-脱離メカニズムが可能になる。
【0125】
[0199]いくつかの実施態様では、塞栓性発泡体としては、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(HPED)、2,2’,2’-ニトリロトリエタノール(TEA)及び1,6-ジイソシアナトヘキサンからなるポリウレタンSMPがあげられる。触媒(例えば、T-131及びBL-22)及び界面活性剤(例えば、DC198及びDC5943)等の残留化学物質が存在してよい。いくつかの実施形態では、膜は、のTgには、同一材料組成のほかに、Tgが同じか、又は異なる塞栓性発泡体があってよい。一実施形態では、膜は熱可塑性エーテル及びエステルポリウレタンフィルムである。
【0126】
[0200]従って、本明細書に記載のように、血管内塞栓形成は、全身循環から罹患血管系を遮断する介入的処置である。SMP発泡体は、刺激を受けると形状が変化し、正の治癒反応を示し、急速な閉塞に寄与しうる有望な塞栓物質である。SMP発泡体は、装置の製造又は送達の間に粒子を生成するリスクがあるストラット及び膜を含む多孔質材料である。そこで、シース型塞栓形成装置(SED)を設計し、作製し、LAAを閉塞し、発泡体粒子の発生を軽減する試験した。
【0127】
[0201]一実施形態では、SEDは、SMP発泡体を完全にカプセル封入する(又は他の実施形態では発泡体を部分的にカプセル封入する)ポリウレタン薄膜からなり、圧縮状態から膨張状態への形状変化を受けることができる。装置の材料特性を示差走査熱量測定、走査電子顕微鏡、及びフーリエ変換赤外分光法で特徴付けした。SEDの、患者由来LAAモデルでの閉塞能、その送達度、及び粒子生成軽減能について試験した。
【0128】
[0202]当該 試験の結果は、送達が低侵襲で行われ、粒子が減少し、模擬血管系での閉塞能をもたらすSEDの機能を実証する。SEDを体温液体中で作動させると、拡張は直径10倍に達成され、血管内用途として理想的であった。当該結果は、SEDを用いると脈管構造の閉塞に寄与し、かつ粒子による装置系の意図しない虚血リスクが軽減される。また、この結果は、SEDをサードパーティ製装置又は部品と一体化させて、LAAC装置等の機能的塞栓形成装置の開発に貢献する。
【0129】
[0203]ここで、実施形態の様々な例を提供する。
【0130】
[0204] 例1:第1の形状記憶ポリマー(SMP)発泡体と、前記第1のSMP発泡体の外表面の少なくとも50%をカプセル封入する第2のSMPとを含む、装置。熱硬化性SMPを含
[0205] 例2:前記第1のSMP発泡体が熱硬化性SMPを含み、前記第2のSMPが熱可塑性SMPを含む実施例1に記載の装置。
【0131】
[0206] 例3:前記第2のSMPを包含する膜を含む、例2に記載の装置。
【0132】
[0207]用語「膜」は、境界、ライニング、又は仕切として作用する柔軟なシート状構造を含む。いくつかの実施形態では、第1のSMP発泡体の露出外表面の100%、75%、60%、35%又は20%を被覆する膜を含んでよい。
【0133】
[0208] 例4:第1及び第2のSMP発泡体に結合する形状記憶金属を含む、例3の装置。
【0134】
[0209]したがって、いくつかの実施形態としては、SMP発泡体及びSMP膜を含み、形状記憶金属を含まない第1ユニットがあげられ、他の実施形態では、ニチノールケージ又は骨格等の形状記憶金属に結合する同じ第1のユニット、又はより一般的には、構造があげられうる。
【0135】
[0210]いくつかの実施形態では、金属と発泡体との間に膜で塞栓性SMP発泡体を(部分的に完全に)取り囲む形状記憶金属があげられるが、他の実施形態はそれに限定されない。例えば、いくつかの実施態様では、塞栓性発泡体は、SM金属を(完全に又は部分的に)取り囲み、膜は、SM金属と発泡体との間にある。換言すると、膜が、最も摩耗しやすく、塞栓となりうる粒子を形成する可能性のあるSMP発泡体部分の保護に寄与しうる限り、膜は必ずしもフィルムを包囲しなくてよい。したがって、膜は、金属SMPが発泡体を摩耗させる可能性があることを考慮すると、単に金属SMPと塞栓性SMP発泡体の間にあればよいかもしれない。膜は、金属を塞栓性発泡体から分離できれば、必ずしも発泡体全体を囲む必要はない。膜が金属と塞栓性発泡体との間にある限り、金属は発泡体の内側、外側、又は隣接していてもよい。例えば、膜は、金属(例えば、SM金属のアーム又はスプライン)を覆うことで、塞栓性発泡体を金属から保護しうる。
【0136】
[0211]例えば、膜は、SM金属部分と塞栓性発泡体との間にあってよい。しかしながら、他の膜もまた、例えば、シース壁から、同一塞栓性発泡体(又は発泡体に結合した他の発泡体)の他の部分を保護してよい。この場合、例えば、発泡体の最も遠位の部分が展開導管(カテーテル又はシース)又はSM金属構造から受ける摩耗力がそれほど高くない場合、膜で覆われなくてよい。(塞栓発泡体を完全カプセル封入する膜の代わりに)部分膜を用いると、(塞栓発泡体を圧迫する力を低下させることにより)塞栓発泡体の展開(膨張)を助長する可能性がある。
【0137】
[0212]他の実施形態では、保護外膜は、反応性樹脂と発泡成形型が接触して形成されるSMP材料の「スキン」又は「シェル」から構成されうる。当該スキンは、無加工のままか、又は穴で穿孔して、バルク発泡体の液体灌流を高めることができる。
【0138】
[0213]スキンの化学組成は、塞栓性発泡体と同一であってよい。例えば、ともにHPED、TEA、及びHDIから形成されてよい。しかしながら、スキンは、非多孔性ポリマーの層を含み、この層は、塞栓発泡体の外周囲に形成される。スキンは、塞栓性発泡体と型(例えば、塞栓性発泡体が形成されている容器)または開放空気(例えば、発泡体が被覆されていない容器(例えば、ビーカー又はバケツ)に形成される場合、発泡体の気泡が合体して固体材料の層を形成するため、発泡体は成長中に界面する可能性がある)との間の境界層で形成される。
【0139】
[0214] 例5:前記形状記憶金属がニチノールを含む、例4に記載の装置。
【0140】
[0215] 例6:前記形状記憶金属から形成されるメッシュを含む、例4に記載の装置。
【0141】
[0216] 例7:膜の最外表面の少なくとも50%が穿孔される、例3に記載の装置。
【0142】
[0217]しかしながら、他の実施形態では、膜の外表面の30%、40%、60%、70%、80%、又は90%以上が穿孔されてよい。穿孔は、レーザー切断でよく、焼灼端を含んでよい。
【0143】
[0218] 例8:前記第2のSMPが発泡体を含む、例7に記載の装置。
【0144】
[0219] 例9:前記第1のSMP発泡体が網状連続気泡発泡体である、例3に記載の装置。
【0145】
[0220]例10:前記第1のSMP発泡体が、機械的網状化された連続気泡発泡体である、例9に記載の装置。
【0146】
[0221]例11:前記第1又は第2のSMP発泡体がともにウレタンを含む、例3に記載の装置。
【0147】
[0222]例12:(a)前記第1のSMPのガラス転移温度(Tg)が30℃を超え、(b)前記第2のSMPのTgが30℃未満である、例11に記載の装置
[0223]例13:前記形状記憶金属は、前記装置を組織に埋め込むように構成される複数のアンカーを含む、例4に記載の装置。
【0148】
[0224]例14:前記第1のSMP発泡体が円筒形に配置される、例3に記載の装置。
【0149】
[0225]例15:円筒形は、中空の中心空隙を備えるトロイダルである、例14の装置。
【0150】
[0226]例16:前記第2のSMPが、前記第2のSMPの第1及び第2の部分を互いに固定結合する熱密封されたシームを含む、例3に記載の装置。
【0151】
[0227]例17:前記メッシュの少なくとも一部がカップを形成し、前記膜の少なくとも一部が前記カップ内に含まれる、例6に記載の装置。
【0152】
[0228]例18:実施例6に記載の装置であって、前記メッシュの少なくとも一部は半球形を形成し、前記膜の少なくとも一部は前記半球形の中に含まれる、装置。
【0153】
[0229]例えば、半球形の形状はカップ様である。
【0154】
[0230]例19:軸が、(a)寛骨臼型メッシュの第1及び第2の部分、(b)膜の第1及び第2の部分、並びに(c)第1のSMP発泡体を横断する、例18に記載の装置。
【0155】
[0231]例20:膜厚さが10~40ミクロンである、例3に記載の装置。
【0156】
[0232]例21:2つの隣接する穿孔間のモード間距離は、20~90ミクロンである例7に記載の装置。
【0157】
[0233]例22:第1の形状記憶ポリマー(SMP)発泡体と、前記第1のSMP発泡体の外表面の少なくとも50%をカプセル封入する膜とを含み、前記膜は、ポリエステル、PTFE、FEP、UHMWPE、ポリウレタン、PET、ePTFE、ポリ(炭酸塩)、ナイロン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含む、装置。
【0158】
[0234]上記のように、膜と塞栓性発泡体の化学成分は同じであってよいが、膜は塞栓性発泡体よりも頑丈である。塞栓性発泡体及び/又は膜の靭性及び他の物理的特性に関し、熱可塑性ポリウレタン(TPU)フィルム、及び非洗浄、かつ非網状H40発泡体の機械的特性を調べた。発泡体の孔径は、各々1000、1500、及び1800μmの孔径に細孔サイズに対応する、小、中、及び大の範囲であった。TPUフィルムの機械的特性は製造業者のウェブサイトから得て、発泡体の機械的特性は非剛性試料をASTM D638規格に従って特徴付けた。
【0159】
[0235]発泡体を特徴付けするため、最初に厚さ4mm以下に剥片化した。校正し、認証されたASTM D638 IV型カッター(Pioneer-Dietecs Corporation,Weymouth,MA)を用いて、発泡体剥片からイヌの骨試料を破砕した。イヌ骨試料の端部を、引張試験機のグリップに取り付けられるように、木片にエポキシ化した。その後、イヌ骨試料を真空オーブンで一晩乾燥させた。そして、乾燥イヌ骨試料をインサイト30材料テスタ(Materials Testing Solutions,MTS Systems Corporation,Eden Prairie,MN)に装填し、破断するまで引張試験を行った。再現性のため、各組成物を少なくとも4回試験した。
【0160】
[0236]
図27及び28は各々、TPUフィルム及びH40発泡体の主要な機械的特性の概要である。TPUフィルムとH40発泡体の引張強さは同様であった。発泡体の孔径は破断時のひずみと発泡体の弾性率に大きく影響した。孔径の小さい発泡体は、孔の大きい発泡体と比較して、乾燥状態での弾性率が低く、より柔軟であった。したがって、孔が小さい発泡体は、解剖学的な蛇行構造を介して容易に送達でき、容易に破断しないかもしれない。破断は、発泡体がカテーテル内に引き込まれる際に発生する、発泡体が極度に歪められると発生する可能性がある。しかしながら、上記の結果は、乾燥した非加工発泡体の機械的特性を反映しており、臨床環境で用いられる湿潤加工発泡体の機械的特性を反映しておらず、現時点では結論を出すことはできない。
【0161】
[0237]実施例1a:外表面を備える形状記憶ポリマー(SMP)発泡体、及び前記SMP発泡体の外側表面の少なくとも50%をカプセル封入する膜、とを備え、(a)前記SMP発泡体が熱硬化性SMPを含み、(b)前記膜が熱可塑性ポリマーを含む、装置。
【0162】
[0238]「カプセル封入(化)」により、当該実施形態は、例えば、SMP発泡体プラグの外周の一部又は全部を囲むバンドを含んでよく、プラグの近位端及び遠位端は、膜により被覆されないか、又はカプセル化されなくてよい。すなわち、「カプセル封入」は、必ずしも完全封入を意味しない。
【0163】
[0239]熱可塑性ポリマーは、いくつかの実施形態では、ほとんど又は全く形状記憶しない場合がある。
【0164】
[0240]実施例2a:SMP発泡体、及び膜と結合する形状記憶(SM)金属を含み、前記膜は、前記SMP発泡体と前記SM金属との間にある、例1aの装置。
【0165】
[0241]例えば、一実施形態は、ニッケル-チタン合金ステントを含んでよい。SMP発泡体は、ステントの外側にあってよい。膜は、ステントと発泡体との間にあって、ステントによる発泡体の磨耗を防止することができる。
【0166】
[0242]実施例3a:SMP発泡体、及び膜と結合する形状記憶(SM)金属を含み、前記SM金属は、前記SMP発泡体と前記膜との間にある、例1aの装置。
【0167】
[0243]例えば、
図29を参照のこと。
図29は、膜の外側にある(膜が塞栓発泡体の外側にある)ニッケル-チタン合金フレームを示す。フレームは、LAA内にフレームを固定するアンカーを含む。
【0168】
[0244]膜は、SM金属の一部のみ、及び/又は発泡体の一部のみを被覆できる。
【0169】
[0245]例4a:SMP発泡体、及び膜と結合する形状記憶(SM)金属を含み、前記SM金属は、前記SMP発泡体と前記膜との間にある、例1aの装置。
【0170】
[0246]例えば、発泡体は、SM金属ステントを取り囲むことができる。膜は、発泡体を囲むことができる。
【0171】
[0247]例5a:SM金属を含むステントを備える、例2a~4aのいずれか1項に記載の装置。
【0172】
[0248]例6a:フレームを備え、前記フレームはSM金属を含む、含む実施例2a~4aのいずれか1項に記載の装置。
【0173】
[0249]例7a:前記フレームは、メッシュを備える、例6aに記載の装置。
【0174】
[0250]例8a:前記フレームが腔を含み、前記腔がSMP発泡体を含む、例6aに記載の装置。
【0175】
【0176】
[0252]例9a:膜が穿孔される、例1a~8aのいずれかに記載の装置。
【0177】
[0253]例10a:少なくとも20個の穿孔を含み、少なくとも20個の穿孔各々が、膜の対向する表面を互いに結合する、例9aに記載の装置。
【0178】
【0179】
[0255]例11a:少なくとも20個の穿孔各々の直径が、150ミクロンを超える、例10aに記載の装置。
【0180】
[0256]例12a:少なくとも20の穿孔の、2つの隣接する穿孔間のモード間距離は、20~90ミクロンである、例11a~12aのいずれかに記載の装置。
【0181】
[0257]例13a:SMP発泡体は、網状連続気泡ポリウレタン発泡体であり、かつ、ヒドロキシプロピルエチレンジアミン(HPED)、トリエタノールアミン(TEA)、及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を含む、例1a~12aのいずれかに記載の装置。
【0182】
[0258]例14a:SM金属に結合する複数の機械的アンカーを備え、前記複数のアンカーは、組織内に装置を埋め込むように構成される、例2a~13aのいずれかに記載の装置。
【0183】
[0259]実施例15a:軸が、(a)SM金属の第1部分と第2部分、(b)膜の第1部分と第2部分、及び(c)前記SMP発泡体を横断し、ここで前記SMP発泡体は、SM金属の第1部分と第2部分の間にあり、かつ、前記膜の第1部分と第2部分の間にある、例2a~14aのいずれか1つに記載の装置。
【0184】
【0185】
[0261]例16a:膜の厚さが10~40ミクロンである、例2a~15aのいずれか1項に記載の装置。
【0186】
[0262]例17a:熱硬化性形状記憶ポリマー(SMP)発泡体と、膜と、形状記憶金属とを含み、ここで前記膜は、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、押出PTFE(ePTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリウレタン、ポリ(p-キシリレン)、ナイロン、ポリ(カーボネート)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1の部材を含む、装置。
【0187】
[0263]膜は、熱可塑性ポリマーであってもなくてもよい。
【0188】
[0264]例17aの他の態様:形状記憶材料と、膜と、形状記憶(SM)フレームとを含み、前記膜は、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、押出PTFE(ePTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリウレタン、ポリ(p-キシリレン)、ナイロン、ポリ(カーボネート)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含む、装置。
【0189】
[0265]従って、全ての実施形態で、塞栓要素がSMP、わずかなSMP発泡体を含むわけではない。さらに、すべての実施形態にSM金属製フレームが必要なわけではない。
【0190】
[0266]例18a:SMP発泡体がヒドロキシプロピルエチレンジアミン(HPED)、トリエタノールアミン(TEA)、及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を含み、膜がHPED、TEA、及びHDIを含み、前記SMP発泡体は多孔性であり、前記膜は発泡体ではない、実施例17aに記載の装置。
【0191】
[0267]例えば、膜は、上記スキンを含んでよい。前記スキンは塞栓性発泡体より硬くてよい。強度は、
図28(A)に示すように決定することができる。
【0192】
[0268]例19a:膜が穿孔を備え、穿孔が各々膜の対向する表面を互いに結合する、実施例17a~18aのいずれかに記載の装置。
【0193】
[0269]これらの穿孔は、膜に固有のものでなくてもよく、レーザー、針又はパンチによる機械的穿孔等を用いて形成されてよい。
【0194】
[0270]例20a:膜が繊維を含む、例17a~19aのいずれかに記載の装置。
【0195】
[0271]例21a:(a)膜がSMP発泡体に直接接触し、(b)膜がSM金属に直接接触する、例17a~20aのいずれかに記載の装置。
【0196】
[0272]例22a:前記膜が前記SM金属の部分を完全に取り囲む、例21aに記載の装置。
【0197】
[0273]例えば、膜はストラットを包囲してもよい。
図29では、膜はフレームのストラットを覆うことができる。他の膜は、発泡体を封入することができ、又は「他の膜」は、フレームのストラットを覆う膜を考慮する省略することができる。膜によってフレームを覆うことは、ビニルに蟹トラップで覆うのと同様の方法で行うことができる。
【0198】
[0274]例23a:ポリエステル、PTFE、ePTFE、UHMWPE、ポリウレタン、ポリ(p-キシリレン)、ナイロン、ポリ(カーボネート)、FEP、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエチレン、PET、ポリプロピレン、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの部材を含む、他の膜を備える、例17a~22aのいずれかに記載の装置。
【0199】
[0275]例24a:他の膜がSMP発泡体に直接接触する、例23a記載の装置。
【0200】
[0276]例25a:SM金属に結合する複数の機械的アンカーを備え、前記複数のアンカーは、組織内に装置を埋め込むように構成される、例17a~24aのいずれかに記載の装置。
【0201】
[0277]上記例は、いかなるSMP発泡体閉塞装置に適用しうる実施形態を例示し、特に、顕著な機械的応力を受ける装置に適用可能な実施形態を例示する。LAA閉塞等の構造的心臓用途、及び弁周囲漏出を低減する経カテーテル心臓弁上の発泡体は、顕著な機械的負荷を伴う血管用装置用途の例である。膜の機能は、急性送達中に粒子が下流に流出するのを制限することである。安定した血栓が発泡体に一体化されると、粒状化のリスクは著しく低下する。一実施形態では、膜の血液透過性は十分であり、多孔性も発泡体及び膜構造全体に血栓を形成するのに十分である。フィブリン架橋血餅は、発泡体及び膜の多孔質構造に物理的に組み込まれて、発達した血餅が破断して塞栓イベントを引き起こすのを防ぐ。
【0202】
[0278]粒子形成の制限に加えて、カテーテルを介した送達中、材料選択及び表面処理が膜に含まれると、圧縮装置の潤滑性が高まる。
【0203】
[0279]上記のように、膜は、発泡体をカプセル封入して微粒子を捕捉できるが、送達又は埋め込み中に潜在的に発泡体を磨耗又は損傷する可能性があるSMP発泡体と他の装置又は組織境界との間の保護インターフェースを形成してもよい。例えば、膜は、(a)発泡体アニュラスの内径及び外径上、(b)金属ステントと外側発泡体との間、又は(c)円筒状発泡体プラグ上にシースとして存在してよい。
【0204】
[0280]多孔性を、(a)多孔性電気紡糸繊維マットからフィルムを作製すること(例20aを参照)、(b)レーザー加工を用いて固体高分子膜に孔を導入すること、(c)機械的な膜穿孔、(d)熱可塑性膜の超臨界ガス発泡による多孔性の導入、又は(e)それらのいくつかの組み合わせにより、膜に導入できる。例えば、繊維としては、HDI、HPED、及びTEAを包含してよい。繊維を電気紡糸して、繊維が本質的に2つ以上の隣接する繊維間に細孔をもたらすことができる。また、「膜」は、製造中にSMPポリウレタン発泡体の表面に現れる天然のスキンであってよい。この皮膚は本質的に多孔性でなくても、例えば、上記機械的及びレーザー技術を用いて多孔性にすることができる。
【0205】
[0281]一実施形態では、膜被覆は、必ずしも形状記憶特性を要しない。特に適合性のある薄膜は、下地の膨張するSMP発泡体の機能を損なわない程度に柔軟である。これにより、従来技術(例えば、熱成形、フィルムブローイング、エレクトロスピニング、ディップコーティング等)で作製された熱可塑性膜及びフィルムが用いられるようになる。
【0206】
[0282]一実施形態では、膜は、ポリウレタン(熱可塑性、又は内部塞栓性SMP発泡体と同様の組成である熱硬化性のいずれか)、又はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ePTFE、PET、ポリアミド、ポリエーテル、又はそれらのいくつかの組み合わせを含む他の熱可塑性ポリマー組成物を含む。
【0207】
[0283]膜は、ポリウレタン系接着剤等の接着剤を介して、SMP発泡体及び/又はSM金属フレームに接着してもよい。
【0208】
[0284]様々な実施形態の説明では、多数の具体的な詳細が記載されているが、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施されてもよい。公知の構造及び技術は、この説明の理解が曖昧にならないように、詳細には示されない。「実施形態」、「様々な実施形態」等は、記載された実施形態が特定の特徴、構造、又は特徴を含むことができるが、必ずしもすべての実施形態が特定の特徴、構造、又は特徴を含むわけではない。いくつかの実施形態は、他の実施形態で記載された特徴の一部、すべてを備えてよいし、又は全く備えなくてもよい。「第1の」、「第2の」、「第3の」等は、共通の対象であるが、インスタンスは異なる対象が言及されていることを示す。当該形容詞は、そのように記載される対象が、時間的、空間的、序列、又は他のどのような方法でも、所定の順序でなければならないことを意味するものではない。
【外国語明細書】