IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニューヴェイジヴ,インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特開-インプラント可能な延長装置 図1
  • 特開-インプラント可能な延長装置 図2
  • 特開-インプラント可能な延長装置 図3
  • 特開-インプラント可能な延長装置 図4
  • 特開-インプラント可能な延長装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155271
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】インプラント可能な延長装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/66 20060101AFI20231013BHJP
   A61F 2/28 20060101ALN20231013BHJP
【FI】
A61B17/66
A61F2/28
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023129671
(22)【出願日】2023-08-09
(62)【分割の表示】P 2020547306の分割
【原出願日】2018-11-30
(31)【優先権主張番号】17306662.2
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】15/947,495
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508296440
【氏名又は名称】ニューヴェイジヴ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァリエ,エリック
(57)【要約】
【課題】骨切り術により分離された骨区域(2、2’)を延長するためのインプラント可能な骨延長装置を提供する。
【解決手段】骨切り術により分離された骨区域(2、2’)を延長するためのインプラント可能な骨延長装置(1)は、第1のブロック(3)と、第2のブロック(3’)と、第1の骨区域(2)と第2の骨区域(2’)との間の延長を可能にする2つのブロック間のスペースを調節するための手段を含むアクチュエータ(4)とを備える。インプラント可能な骨延長装置(1)は、第1のブロック(3)と第2のブロック(3’)との間に存在する領域内に配置され、インプラント可能な骨延長装置(1)を含む媒体の振動応答を測定するように配向された、少なくとも1つの振動センサ(6)をさらに備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延長インジケータを生成するための医療モニタリング装置が行うモニタリング方法であって:
前記医療モニタリング装置の受信器が、インプラント可能な骨延長装置から、少なくとも1つの振動センサによって測定される前記インプラント可能な骨延長装置を含む媒体の機械的振動応答に対応するデータを受信することと;
前記医療モニタリング装置の計算器が、受信した前記データから、少なくとも:
前記少なくとも1つの振動センサによって測定された前記振動応答から前記媒体の少なくとも1つの振動パターンを求めるステップと;
第1の期間中の前記測定された振動応答から求めた前記媒体の前記少なくとも1つの振動パターンの第1の値の推移を解析するステップと;
前記第1の値の関数としての延長インジケータを生成するステップと:
を通じて延長インジケータを計算することと;を含む、
方法。
【請求項2】
前記受信したデータから前記延長インジケータを計算することは:
前記少なくとも1つの振動センサによって測定された前記振動応答から前記媒体の少なくとも1つの振動パターンを求めるステップと;
第1の期間中の前記測定された振動応答から求めた前記媒体の前記少なくとも1つの振動パターンの第1の値の推移を解析するステップと;
第2の期間中の前記測定された振動応答から求めた前記媒体の前記少なくとも1つの振動パターンの第2の値の推移を解析するステップと:
前記第1の値と前記第2の値との間の比較を行うステップと;
前記比較の関数としての延長インジケータを生成するステップと;を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の値と前記第2の値との間の比較が所定の閾値を超えるときに前記延長インジケータを生成することが行われる、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の閾値は、前記第1の値の約0.5%から約10%の範囲である、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記所定の閾値は、前記第1の値の約1%から約7%の範囲である、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記所定の閾値は、前記第1の値の約1%から約20%の範囲である、
請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの振動センサは、患者にインプラントされる、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
時間にわたる前記振動データの推移の関数として受信された前記振動データから延長インジケータを計算することをさらに含み、前記振動データの前記推移は、第1の骨区域と第2の骨区域との間の仮骨形成のインジケータである、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記延長インジケータが生成されるとき、延長をもたらすために前記インプラント可能な骨延長装置に命令を送信することをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記延長インジケータが生成されるとき、2つの分離した骨区域の間のスペースを、前記スペースを増加させることによって調整することをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記延長インジケータが生成されるとき、2つの分離した骨区域の間のスペースを、前記スペースを減少させることによって調整することをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記インプラント可能な骨延長装置は、約20ヘルツ(Hz)~約10000Hzの周波数範囲で前記媒体の振動応答を測定するように構成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記インプラント可能な骨延長装置は、約30Hz~約7000Hzの周波数範囲で前記媒体の振動応答を測定するように構成される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記インプラント可能な骨延長装置は、約40Hz~約5000Hzの周波数範囲で前記媒体の振動応答を測定するように構成される、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記媒体の前記少なくとも1つの振動パターンを求めるステップは、連続的又は半連続的に行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記振動パターンの前記第1の値が求められるとき、前記第1の値は基準になる、
請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラント可能な骨延長装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
骨延長術は、様々な欠陥をもつ患者の新生骨を成長させるために用いられている技術である。例えば、肢延長術は、骨(例えば、大腿骨又は脛骨)の長さを増加させることができる技術である。骨にコルチコトミー、すなわち骨を切断する骨切り術を施すことにより、結果として生じる2つの骨区域が1日当たり1ミリメートルなどの特定の速度で離れ、2つの区域が離れるにつれてそれらの間に新生骨が再生することになる。この肢延長技術は、以前の骨折が正常に治癒しなかった患者又は成長板が成熟する前に疾患が生じた又は損傷した患者などで、一方の肢が他方よりも長い場合に用いられる。一部の患者では、身長を伸ばすことが望まれ、これは患者の身長を増加させるべく両大腿骨及び/又は両脛骨を延長することによって達成される。
【0003】
従来技術には、インプラント可能な骨延長装置及び関連する方法を開示する米国特許第5,364,396号がある。この植込み可能な骨装置は、それぞれ、分離した骨区域に固定され、回転可能な駆動ロッド及び駆動ロッドアクチュエータに連結される、2つのブロックを備える。駆動ロッドアクチュエータの作動により、回転可能な駆動ロッドが回転し、これにより2つのブロックが引き離される。
【0004】
しかしながら、結果として生じる2つの骨区域の移動速度又は速度が重要である。実際、骨切り術により、2つの分離した骨区域間に間隙が生じる。本明細書では、2つの分離した骨区域の間隙での骨形成又は骨治癒の過渡段階に関係する異質組織を説明するために、仮骨が用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
速度が速すぎると、前述の仮骨が分断され、骨治癒プロセスが生じなくなる場合がある。速度が遅すぎると、骨治癒プロセスが進行しすぎて2つの骨区域を引き離すことができず、新たに骨切り術が必要になる場合がある。
【0006】
したがって、本発明は、インプラント可能な骨延長装置と、分離した骨区域間の骨治癒プロセスを連続的に又は半連続的にモニタリング及び識別するための医療モニタリング装置を提供することを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、第1の態様において、骨切り術により分離された骨区域を延長するためのインプラント可能な骨延長装置であって、
第1の骨区域にインプラントしかつ取り付けるための、第1のチャンバボアを画定する第1のブロックと、
骨切り術により第1の骨区域から分離された第2の骨区域にインプラントしかつ取り付けるための、第2のチャンバボアを画定する第2のブロックと、
作動時に第1の骨区域と第2の骨区域との間の延長を可能にする第1のブロックと第2のブロックとの間のスペースを調節するための手段を含む、アクチュエータと、
第1のブロックと第2のブロックとの間に存在する領域内に配置され、インプラント可能な骨延長装置を含む媒体の振動応答を測定するように配向された、少なくとも1つの振動センサと、
を備えるインプラント可能な骨延長装置に関係する。
【0008】
一実施形態において、インプラント可能な骨延長装置は、前記第1のチャンバボア内に受け入れられる第1の端と、前記第1の端とは反対の、前記第2のチャンバボア内に受け入れられる第2の端とを有する駆動ロッドを備え、前記駆動ロッドは、第1のブロックと第2のブロックとの間のスペースを調節することができる。
【0009】
一実施形態において、前記少なくとも1つの振動センサは、駆動ロッドの方向のインプラント可能な骨延長装置を含む媒体の振動応答を測定するように配向される。
【0010】
本発明の装置の利点は、オペレータ又は医師にインジケータを与えるべく仮骨の形成の基準を測定できることであり、前記インジケータは癒合の状態を表す。振動センサの配置は、関連するインジケータの生成に寄与する。
【0011】
一実施形態によれば、少なくとも1つの振動センサは、圧電素子又は加速度計である。一実施形態によれば、少なくとも1つの振動センサは、機械的振動に対応する振動応答を測定するように配置される。
【0012】
一実施形態によれば、媒体は、第1の分離した骨区域と、第2の分離した骨区域をさらに含む。
【0013】
一実施形態によれば、少なくとも1つの振動センサは、骨癒合プロセスの推移のモニタリングを可能にする媒体の振動応答の推移を測定するように配置される。
【0014】
一実施形態によれば、インプラント可能な骨延長装置は、作動時に第1の骨区域と第2の骨区域との間の延長を可能にする第1のブロックと第2のブロックとの間のスペースを調節するべく前記駆動ロッドと協働する駆動ロッドアクチュエータを備える。
【0015】
一実施形態によれば、第1のチャンバボアは、駆動チャンバボアであり、第2のチャンバボアは、ねじ付きボアであり、駆動ロッドの第2の端は、第2のブロックのねじ付きボア内にねじ込むことにより受け入れられるねじ付き端であり、アクチュエータは、前記駆動ロッドを回転させるべく前記駆動ロッドと協働し、前記駆動ロッドは、回転により第1のブロックと第2のブロックとの間のスペースを調節することができる。
【0016】
一実施形態によれば、インプラント可能な骨延長装置は、駆動ロッドの方向の媒体の振動応答を測定するように配向された少なくとも1つの振動センサを備える。
【0017】
一実施形態によれば、インプラント可能な骨延長装置は、駆動ロッドの長手方向の媒体の振動応答を測定するための第1の振動センサと、駆動ロッドの長手方向に垂直な方向の媒体の振動応答を測定するための第2の振動センサとを含む、少なくとも2つの振動センサを備える。
【0018】
一実施形態によれば、インプラント可能な骨延長装置は、少なくとも1つの振動センサによって測定されるデータを送信するための無線インターフェースをさらに備える。
【0019】
一実施形態によれば、インプラント可能な骨延長装置は、振動励起トランスデューサを備えない。
【0020】
一実施形態によれば、インプラント可能な骨延長装置は、少なくとも1つの振動センサによって測定されるデータを記憶するためにメモリをさらに備える。
【0021】
第2の態様において、本発明は、医療モニタリング装置であって、
インプラント可能な骨延長装置から、少なくとも1つの振動センサによって測定されるインプラント可能な骨延長装置を含む媒体の機械的振動応答に対応するデータを受信するための受信器と、
受信器によって受信されたデータから、少なくとも、
少なくとも1つの振動センサによって測定された振動応答から前記媒体の少なくとも1つの振動パターンを求めるステップと、
第1の期間中の少なくとも1つの振動センサによって測定される測定された振動応答から求めた前記媒体の少なくとも1つの振動パターンの第1の値の推移を解析するステップと、
第1の値の関数としての延長インジケータを生成するステップと、
を通じて延長インジケータを計算するための計算器と、
を備える医療モニタリング装置に関する。
【0022】
一実施形態によれば、延長インジケータを生成するステップは、第1の値が所定の閾値を超えるときに実行される。
【0023】
一実施形態によれば、医療モニタリング装置は、
インプラント可能な骨延長装置から、少なくとも1つの振動センサによって測定されるインプラント可能な骨延長装置を含む媒体の機械的振動応答に対応するデータを受信するための受信器と、
受信器によって受信されたデータから、少なくとも、
少なくとも1つの振動センサによって測定された振動応答から前記媒体の少なくとも1つの振動パターンを求めるステップと、
第1の期間中の少なくとも1つの振動センサによって測定される測定された振動応答から求めた前記媒体の少なくとも1つの振動パターンの第1の値の推移を解析するステップと、
第2の期間中の少なくとも1つの振動センサによって測定される測定された振動応答から求めた前記媒体の少なくとも1つの振動パターンの第2の値の推移を解析するステップと、
第1の値と第2の値の比較を行うステップと、
前記比較の関数としての延長インジケータを生成するステップと、
を通じて延長インジケータを計算するための計算器と、
を備える。
【0024】
一実施形態によれば、延長インジケータを生成するステップは、前記比較が所定の閾値を超えるときに実行される。
【0025】
一実施形態によれば、少なくとも1つの振動パターンは、媒体の共振周波数である。
【0026】
一実施形態によれば、少なくとも1つの振動パターンは、減衰係数の関数である。
【0027】
信号の処理ステップは、例えば、関連するパターンを求め、いくつかの関連する値との相関関数を得ることにより、例えば、所定の時間内の前記パターンの異なる値を比較することにより、関連するインジケータの生成に寄与する。
【0028】
一実施形態によれば、医療モニタリング装置は、計算器によって延長インジケータが生成されるときにインプラント可能な骨延長装置に延長をもたらす命令を送信するための送信器をさらに備える。
【0029】
一実施形態によれば、少なくとも1つの振動センサによって測定される媒体の機械的振動応答は、骨癒合プロセスの推移のモニタリングを可能にする。
【0030】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に係るインプラント可能な骨延長装置と本発明の第2の態様に係る医療モニタリング装置とを備える医療システムに関係しており、前記医療システムは、医療モニタリング装置によって受信されることになるインプラント可能な骨延長装置からの振動データの送信をアクティブにするインターフェースを備え、振動データは、少なくとも1つの振動センサによって測定されるインプラント可能な骨延長装置を含む媒体の機械的振動応答に対応する。
【0031】
インプラント可能な骨延長装置と医療モニタリング装置は、骨癒合プロセスに関係したインジケータを改善するべく組み合わされた技術的効果をもたらすように協働する。骨延長装置の、特に、少なくとも1つの振動センサの特異的配置と、本発明に係る少なくとも1つの振動パターンの抽出を可能にする計算器によって行われるステップは、組み合わせて用いられるときに医療システムを特に効率的なものにする。
【0032】
一実施形態によれば、インプラント可能な骨延長装置は、アクチュエータを作動するための作動手段を備え、医療モニタリング装置は、前記延長インジケータが生成されるときにアクチュエータを自動的に作動するための作動手段に接続された送信器を備える。
【0033】
第4の態様において、本発明は、延長インジケータを生成する方法であって、
インプラント可能な骨延長装置から、少なくとも1つの振動センサによって測定されるインプラント可能な骨延長装置を含む媒体の機械的振動応答に対応するデータを受信することと、
受信したデータから、少なくとも、
少なくとも1つの振動センサによって測定された振動応答から前記媒体の少なくとも1つの振動パターンを求めるステップと、
第1の期間中の少なくとも1つの振動センサによって測定される測定された振動応答から求めた前記媒体の少なくとも1つの振動パターンの第1の値の推移を解析するステップと、
前記第1の値の関数としての延長インジケータを生成するステップと、
を通じて延長インジケータを計算することと、
を含む、方法に関する。
【0034】
一実施形態によれば、延長インジケータを生成するステップは、第1の値が所定の閾値を超えるときに実行される。
【0035】
一実施形態によれば、延長インジケータを生成する方法は、
インプラント可能な骨延長装置から、少なくとも1つの振動センサによって測定されるインプラント可能な骨延長装置を含む媒体の機械的振動応答に対応するデータを受信することと、
受信したデータから、少なくとも、
少なくとも1つの振動センサによって測定された振動応答から前記媒体の少なくとも1つの振動パターンを求めるステップと、
第1の期間中の少なくとも1つの振動センサによって測定される測定された振動応答から求めた前記媒体の少なくとも1つの振動パターンの第1の値の推移を解析するステップと、
第2の期間中の少なくとも1つの振動センサによって測定される測定された振動応答から求めた前記媒体の少なくとも1つの振動パターンの第2の値の推移を解析するステップと、
第1の値と第2の値の比較を行うステップと、
前記比較の関数としての延長インジケータを生成するステップと、
を通じて延長インジケータを計算することと、
を含む。
【0036】
一実施形態によれば、延長インジケータを生成するステップは、前記比較が所定の閾値を超えるときに実行される。
【0037】
一実施形態によれば、方法は、延長インジケータが生成されるときにインプラント可能な骨延長装置に延長をもたらす命令を送信するステップをさらに含む。
【0038】
一実施形態によれば、前記方法は、延長インジケータが生成されるときに前記所定のピッチのスペースを増加又は減少させることにより2つの分離した骨区域間のスペースを調節するステップをさらに含む。
【0039】
定義
本発明では、以下の用語は以下の意味を有する。
-「ブロック」:骨区域に取り付けられるように構成された部分を指す。
-「共振周波数」:応答振幅が極大の周波数を指す。
-「ピーク」:応答振幅が極大の周波数又は狭い周波数範囲を指す。
-「振動応答」:物体又はシステムの静止状態に戻るまでの運動の振幅を指す。
-「ヤング率」:固体材料の剛性の尺度である弾性率を指す。
-「振動パターン」:振動データの特徴を指し、前記振動パターンは、振動信号又は振動スペクトル、或いは任意の他の信号の処理を通じて抽出される場合がある。
-「骨癒合プロセス」:2つの分離した骨区域間の延長仮骨形成プロセス又は2つの骨区域間の骨再生プロセスを指す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】2つの分離した骨区域に設置された、一実施形態に係るインプラント可能な骨延長装置の正面図である。
図2】2つの分離した骨区域に設置された、一実施形態に係るインプラント可能な骨延長装置の正面図であり、分離した骨区域のうちの一方に振動センサが配置されている。
図3】2つの分離した骨区域に設置された、一実施形態に係るインプラント可能な骨延長装置の側面図である。
図4】無線給電型アクチュエータと2つの振動センサを一体化した、一実施形態に係るインプラント可能な骨延長装置の側面図である。
図5】無線給電型アクチュエータと1つの振動センサを一体化した、一実施形態に係るインプラント可能な骨延長装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の第1の態様は、2つの分離した骨区域間の骨治癒プロセスをモニタリングするために振動センサを備える、骨切り術により分離された骨区域を延長するためのインプラント可能な骨延長装置に関係する。
【0042】
図1に例示したように、インプラント可能な骨延長装置1は、第1の骨区域2にインプラントしかつ取り付けるための、第1のチャンバボアを画定する第1のブロック3を備える。インプラント可能な骨延長装置1は、骨切り術により第1の骨区域2から分離された第2の骨区域2’に植え込む及び取り付けるための、第2のチャンバボアを画定する第2のブロック3’を備える。一実施形態において、インプラント可能な骨延長装置1は、前記第1のチャンバボア内に受け入れられる第1の端と、前記第1の端とは反対の、前記第2のチャンバボア内に受け入れられる第2の端とを有する駆動ロッド5を備え、前記駆動ロッド5は、第1のブロック3と第2のブロック3’との間のスペースを調節することができる。
【0043】
インプラント可能な骨延長装置1は、作動時に第1の骨区域2と第2の骨区域2’の間の延長を可能にする第1のブロック3と第2のブロック3’との間のスペースを調節するためにアクチュエータをさらに備える。
【0044】
一実施形態において、アクチュエータは、作動時に第1の骨区域2と第2の骨区域2’の間の延長を可能にする第1のブロック3と第2のブロック3’との間のスペースを調節するべく前記駆動ロッド5と協働する、駆動ロッドアクチュエータ4である。
【0045】
インプラント可能な骨延長装置1は、第1のブロック3と第2のブロック3’の間に存在する領域内に配置され、インプラント可能な骨延長装置1を含む媒体の振動応答を測定するように配向された、少なくとも1つの振動センサ6をさらに備える。一実施形態において、前記媒体は、第1の骨区域2及び第2の骨区域2’をさらに含む。一実施形態において、媒体は、2つの分離した骨区域間の間隙に存在する仮骨をさらに含む。一実施形態において、媒体は、インプラント可能な骨延長装置の環境をさらに含む。一実施形態において、媒体は、隣接する骨、筋肉、靱帯などの、インプラント可能な骨延長装置の周囲組織をさらに含む。
【0046】
一実施形態において、振動センサ6は、仮骨の形成に伴って発生し得る振動応答を測定するように構成、配置、及び配向される。
【0047】
一実施形態において、振動センサ6は、仮骨のできるだけ近くに配置される。一実施形態において、振動センサ6は、インプラント可能な骨延長装置1に配置される。一実施形態において、振動センサ6は、図1に例示したように第1のブロック3又は第2のブロック3’に配置される。一実施形態において、振動センサ6は、駆動ロッド5又は駆動ロッドアクチュエータ4に配置される。一実施形態において、振動センサは、図5に例示したように駆動ロッド5の長手方向に沿って第1のブロック3又は第2のブロック3’と横方向に位置合わせされる。図2に例示した別の実施形態では、振動センサ6は、第1の骨区域2又は第2の骨区域2’に配置されるように構成される。
【0048】
一実施形態において、前記振動センサは、駆動ロッドの方向のインプラント可能な骨延長装置を含む媒体の振動応答を測定するように配向される。
【0049】
一実施形態において、駆動ロッドは、第1及び第2のブロックの軸線の長手方向に沿って延びる長手方向要素である。一実施形態において、振動センサ6は、駆動ロッド5の長手方向の機械的振動を測定するように配向される。一実施形態において、振動センサは、駆動ロッドの長手方向に垂直な方向の機械的振動を測定するように配向される。
【0050】
図4に例示した一実施形態によれば、第1のブロック3は長手方向の溝を備え、第2のブロック3’は、図5で分かるように、第1のブロックと第2のブロックとの間のスペースを増加させるべく前記溝に沿って移動することができる。
【0051】
一実施形態によれば、インプラント可能な骨延長装置1は、少なくとも2つの振動センサ6、すなわち、駆動ロッド5の長手方向の機械的振動を測定するための第1の振動センサと、駆動ロッド5の長手方向に垂直な方向の機械的振動を測定するための第2の振動センサとを備える。別の実施形態によれば、インプラント可能な骨延長装置1は、少なくとも3つの振動センサ6、すなわち、駆動ロッド5の長手方向の機械的振動を測定するための第1の振動センサと、駆動ロッドの長手方向と直交する2つの方向の機械的振動を測定するための第2及び第3の振動センサとを備える。
【0052】
図3に例示した一実施形態において、インプラント可能な骨延長装置1は、
第1の骨区域2にインプラントしかつ取り付けるための、駆動チャンバボアを画定する第1のブロック3と、
骨切り術により第1の骨区域2から分離された第2の骨区域2’にインプラントしかつ取り付けるための、ねじ付きボアを画定する第2のブロック3’と、
前記駆動チャンバボア内に受け入れられる第1の駆動端と、前記第1の駆動端とは反対の、ねじ付きボア内に受け入れられる第2のねじ付き端とを有する、回転可能な駆動ロッド5と、
前記駆動チャンバボア内に配置され、作動時に前記第1の駆動端を回転させ、第1の骨区域と第2の骨区域との間の延長を可能にする第1のブロックと第2のブロックとの間のスペースを調節するべく前記第1の駆動端と協働する、アクチュエータと、
を備える。
【0053】
一実施形態において、アクチュエータは、駆動ロッドアクチュエータである。
【0054】
一実施形態において、駆動ロッドアクチュエータは、延長ねじを含む。延長ねじは、駆動ロッドのねじ付き遠位端が前記ねじ付きボア内にねじ込むことにより受け入れられる固有の深さを調節することができるように、前記駆動ロッドを回転させるべく駆動ロッド5と協働する。この調節により、第1の骨区域と第2の骨区域との間の延長を可能にする第1のブロックと第2のブロックとの間隔を調節することができる。このようにして、それらの間の骨成長を強化することができる。この実施形態では、オペレータは、駆動ロッドアクチュエータ4をねじ込むことにより、第1のブロック3と第2のブロック3’との間のスペースを制御することができる。
【0055】
一実施形態において、少なくとも1つの振動センサ6は、所定の時間にわたる媒体の振動応答を連続的に又は半連続的に記録する。一実施形態によれば、少なくとも1つの振動センサ6は、機械的振動に対応する振動応答を測定するように配置される。一実施形態によれば、少なくとも1つの振動センサ6は、前記媒体の振動周波数値及び/又は振動振幅値を測定するように構成される。一実施形態によれば、少なくとも1つの振動センサ6は、第1のブロック、第2のブロック、駆動ロッドアクチュエータ、及び/又は回転可能な駆動ロッドに配置される。
【0056】
1つの好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの振動センサは、圧電素子である。圧電振動センサは、機械的応力又は変形が生じたときに、電界をもたらすことができる。圧電素子によってもたらされる電流は、変形(又は応力)の強度の関数である。圧電素子は、振動の振幅及び周波数を測定することができる。
【0057】
1つの好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの振動センサ6は、加速度計要素である。前記加速度計は、静的(重力)加速度と動的(運動又は振動)加速度との両方を測定できる電気機械式装置である。
【0058】
一実施形態によれば、少なくとも1つの振動センサ6によって生成された信号は、周波数スペクトルを得ることを可能にする。一実施形態において、少なくとも1つの振動センサ6によって生成された信号は、周波数スペクトルを得るべくフーリエ変換又はウェーブレット変換によって変換される。
【0059】
実際、振動センサ6は、加えられた機械的応力に応答して電荷を生成することができる。振動が発生するとき、前記振動センサは、媒体の振動応答を測定する。
【0060】
この方策の利点は、仮骨の推移に基づいている。実際、仮骨の剛性は、骨癒合プロセスに伴って高まる。さらに、仮骨の剛性の推移は、媒体の振動応答を変化させる。次いで、骨癒合プロセスの推移をモニタリングすることができ、これにより、オペレータへの情報の生成が可能となる。このようにして、オペレータは、骨形成の関数としての第1の骨区域と第2の骨区域との間の延長の速度を制御することができる。
【0061】
一実施形態によれば、少なくとも1つの振動センサは、20Hz~10000Hz、好ましくは30Hz~7000Hz、より好ましくは40Hz~5000Hzの範囲の周波数での前記媒体の振動応答を測定するように構成される。
【0062】
一実施形態によれば、前記インプラント可能な骨延長装置1は、振動励起トランスデューサを備えない。振動励起トランスデューサは、振動センサによって記録されるノイズを増加させ、より多くのエネルギーの使用を必要とする場合がある。実際、脊柱の運動によって力学的波が自然に発生する。一実施形態によれば、振動センサは、振動を発することもできる。
【0063】
インプラント可能な骨延長装置1がユーザの体にインプラントした後で、2つの分離した骨区域間に骨形成プロセスが期待される。骨癒合プロセスの進行は、インプラント可能な骨延長装置1と分離した骨区域2、2’を含む媒体の剛性を変化させることができ、それから、振動応答を変化させることができる。
【0064】
日中の人体の動きのために、インプラント可能な骨延長装置は絶えず振動を受ける。これらの振動は種々の周波数と関連付けられる。
【0065】
これらの周波数を振動センサで連続的に又は半連続的に記録することにより、十分な時間(数時間から数日)で広範囲の周波数が記録され、これは医療装置が広範囲の周波数での振動応答を解析することを可能にすることを出願人は発見した。
【0066】
言い換えれば、振動の振幅及びそれらの周波数のモニタリングは、インプラント可能な骨延長装置を含む媒体の振動の周波数スペクトルの生成を可能にする。
【0067】
別の実施形態では、機械的振動は、人体の外部にある装置によって生成される場合がある。
【0068】
一実施形態において、インプラント可能な骨延長装置1は、振動センサによって測定されたデータをインプラント可能な骨延長装置1から又は振動センサから外部装置に送信するための手段をさらに備える。
【0069】
一実施形態において、インプラント可能な骨延長装置1は、前記測定値を送信するための無線インターフェースをさらに備える。
【0070】
一実施形態において、インプラント可能な骨延長装置1は、少なくとも1つの振動センサ6によって測定されたデータを記憶するための手段をさらに備える。前記測定されたデータを記憶するための手段は、メモリであってよく、前記メモリは、少なくとも1つの振動センサ6に接続される。
【0071】
一実施形態において、前記メモリは、前記測定されたデータを送信するためのインターフェース(無線であり得る)に接続される。
【0072】
一実施形態において、駆動ロッドアクチュエータ4は、駆動ロッド5と協働する。この協働は、第1の骨区域2と第2の骨区域2’の間の延長を可能にする第1のブロック3と第2のブロック3’との間のスペースの調節(増加又は減少)をもたらす。
【0073】
実際、延長プロセスは、骨癒合のブリッジが達成されるときの2つの骨区域間のスペースを増加させることを含む。前記駆動ロッドアクチュエータの作動により、回転可能な駆動ロッドが回転し、第1の骨区域と第2の骨区域との間のスペースが増加する。
【0074】
一実施形態において、2つの骨区域間の骨癒合のブリッジの形成の検出により、アクチュエータが、2つの骨区域間のスペースを増加させるべく自動的に作動する。
【0075】
一実施形態において、インプラント可能な骨延長装置1は、駆動ロッドアクチュエータ4を作動するための作動手段を備える。一実施形態によれば、前記駆動ロッドアクチュエータ4を作動するための作動手段は、外部装置に接続される。一実施形態によれば、駆動ロッドアクチュエータ4は、駆動ロッドアクチュエータ4を作動することができる電気モータ、空気圧モータ、又は油圧モータを備える。
【0076】
好ましい実施形態において、前記駆動ロッドアクチュエータ4を作動するための作動手段は、受信器を備える。前記受信器は、外部装置から信号を受信し、駆動ロッドアクチュエータ4を作動することが可能であり得る。
【0077】
第2の態様によれば、本発明は、受信器と計算器を備える医療モニタリング装置に関する。
【0078】
一実施形態において、医療モニタリング装置は、インプラント可能な骨延長装置から媒体の機械的振動に対応するデータを受信するための受信器を備える。一実施形態において、前記媒体は、インプラント可能な骨延長装置を含み、随意的に、2つの分離した骨区域及び/又は前記2つの分離した骨区域間の仮骨をさらに含む。
【0079】
一実施形態において、医療モニタリング装置は、受信したデータから延長インジケータを計算するための計算器を備える。
【0080】
一実施形態において、前記延長インジケータは、少なくとも、
少なくとも1つの振動センサ6によって測定された振動応答から前記媒体の少なくとも1つの第1の振動パターンを求めるステップと、
第1の期間中の測定された振動応答から求めた前記媒体の少なくとも1つの振動パターンの第1の値の推移を解析するステップと、
第1の値が所定の閾値を超えるときに延長インジケータを生成するステップと、
を通じて計算器で計算される。
【0081】
一実施形態において、前記延長インジケータは、少なくとも、
少なくとも1つの振動センサ6によって測定された振動応答から前記媒体の少なくとも1つの第1の振動パターンを求めるステップと、
第1の期間中の測定された振動応答から求めた前記媒体の少なくとも1つの振動パターンの第1の値の推移を解析し、前記第1の値を基準値として定義するステップと、
経時的に、第2の期間中の測定された振動応答から求めた前記媒体の少なくとも1つの振動パターンの少なくとも1つの第2の値の推移を解析するステップと、
少なくとも1つの第2の値と前記基準となる第1の値を比較するステップと、
前記比較が所定の閾値を超えるときに延長インジケータを生成するステップと、
を通じて計算器で計算される。
【0082】
一実施形態において、値の推移は、第1の値と少なくとも1つの第2の値の比較の関数として判定される。
【0083】
一実施形態において、所定の閾値は、ユーザインターフェースを通じて計算器に手動で提供される。一実施形態によれば、前記所定の閾値は、第1の値の1%~7%の範囲、好ましくは、第1の値の0.5%~10%の範囲、又は第1の値の0.5%~20%の範囲である。
【0084】
一実施形態において、少なくとも1つの振動パターンは、連続的に又は半連続的に求められる。一実施形態において、前記振動パターンの第1の値が求められるとき、前記第1の値が基準になる。
【0085】
前記振動パターンの第2の値が求められるとき、計算器は、前記新しい第2の値を基準と比較する。一実施形態において、比較は、差又は差を含む関数である。一実施形態において、前記差が所定の閾値を超えるとき、計算器は、延長インジケータを生成する。
【0086】
一実施形態によれば、第1の値と少なくとも1つの第2の値を比較するステップは、第1の値と第2の値との差を計算し、前記差を所定の閾値と比較するステップを含む。
【0087】
一実施形態によれば、前記所定の閾値は、第1の値の1%~7%の範囲、好ましくは、第1の値の0.5%~10%の範囲、又は第1の値の0.5%~20%の範囲である。
【0088】
一実施形態において、計算器は、前記比較が所定の閾値を超えるまで、前記振動パターンの第2の値を求め、前記第2の値を基準と比較するステップを繰返し実行する。
【0089】
一実施形態において、前記延長インジケータは、第1の期間と第2の値が求められる第2の期間との間の仮骨の物理的特性の構造的変化を示す。
【0090】
一実施形態において、前記生成された延長インジケータは、2つの期間の間の仮骨を含む媒体の構造的変化を反映する。一実施形態において、前記生成された延長インジケータは、第1の基準期間と第2の期間との間の仮骨を含む媒体の構造的変化を反映する。一実施形態において、第1の基準期間は、駆動ロッドアクチュエータの最後の作動の期間に対応する。
【0091】
一実施形態において、延長インジケータは、仮骨の固化の始まりを反映する。
【0092】
次いで、オペレータは、延長を可能にする分離した骨区域間のスペースを調節するべくインプラント可能な骨延長装置を作動することができる。一実施形態において、この方法は、分離した骨区域間のスペースを調節した後に最初から実行される。一実施形態において、振動パターンの第1の値又は基準は、分離した骨区域間のスペースを調節した後に求めた振動パターンの第1の値である。
【0093】
一実施形態によれば、前記モニタリング装置は、インピーダンスメータ、及び/又はディスプレイなどのユーザインターフェースをさらに備える。一実施形態によれば、前記インターフェースは、ユーザが測定パラメータを提供すること及び少なくとも1つの生成された延長インジケータを表示することを可能にするために必要とされる。
【0094】
一実施形態において、計算器は、メモリを備える。一実施形態において、前記メモリは、所定の閾値の値を備える。一実施形態において、計算器は、求めた振動パターンの値をそのメモリに記憶することができる。一実施形態によれば、医療モニタリング装置は、インプラント可能な骨延長装置から受信した測定データを記憶することができるメモリユニットを備える。
【0095】
一実施形態において、計算ステップは、
測定された振動応答から前記媒体の少なくとも1つの振動パターンの少なくとも1つの第2の値を求めるステップと、
第1の値を少なくとも1つの第2の値と比較するステップと、
前記比較の関数として推移を判定するステップと、
を含む。
【0096】
一実施形態において、本発明は、骨癒合プロセスの情報を提供するために振動応答の測定を用いる。前記振動応答の測定は、いくつかの振動パターンの観察につながる。
【0097】
一実施形態において、前記振動パターンは、共振周波数である。一般に、固体材料が振動を受けるとき、前記振動への前記材料の応答は実質的に同じである。しかしながら、応答が他の周波数応答よりもかなり高い、特定の周波数が存在する。これらの特定の周波数は、共振周波数と呼ばれる。
【0098】
振動パターンが共振周波数である一実施形態によれば、方法は、測定される周波数スペクトルの各振動周波数に関して測定される振動応答を走査するステップを含む。一実施形態において、方法は、振動応答が他の周波数応答よりもかなり高い、少なくとも1つの基準共振周波数を判定するステップを含む。一実施形態によれば、受信されるデータは、周波数のスペクトルである。
【0099】
一実施形態において、媒体の少なくとも1つの共振周波数値を計算するステップは、
振動センサによって行われた測定から、各周波数に関して前記媒体の振動応答を走査するステップと、
前記振動応答の少なくとも1つのピークを識別するステップと、
随意的に、前記少なくとも1つのピークの中心の周波数値を記録するステップと、
随意的に、前記周波数値を共振周波数値としてラベル付けするステップと、
を含む。
【0100】
別の実施形態によれば、同じ目的を達成するために別の振動パターンを用いることができる。前記振動パターンは、周波数スペクトルの特徴とすることができる。前記振動パターンは、1つの所定の周波数又は測定される周波数スペクトルでの信号の振幅とすることもできる。
【0101】
一実施形態によれば、医療モニタリング装置は、2つの分離した骨区域間の骨癒合プロセスについての情報を得るべく前記少なくとも1つの共振周波数値をモニタリングする。
【0102】
別の実施形態では、振動パターンは、所定数の周波数での測定された振動応答である。例えば、振動パターンは、切りよく2000、2500、3000、4000、及び/又は4500Hzでの媒体の振動応答とすることができる。一実施形態によれば、前記振動パターンは、少なくとも1つの所定の周波数での信号の振幅である。
【0103】
一実施形態によれば、前記振動パターンは、所定の周波数での信号の振幅である。一実施形態によれば、前記振動パターンは、フーリエ変換又はウェーブレット変換などの振動応答の数学的変換である。一実施形態によれば、前記振動パターンは、或る時間にわたる周波数の変動である。
【0104】
一実施形態によれば、本発明は、モード減衰係数(MDF)を計算するための手段を含む。有利には、本発明では、周波数スペクトルは、ピークの中心周波数を中心とした共振ピークの幅に比例する減衰係数を計算するのに用いられる。
【0105】
一実施形態において、計算器によって実行されるステップは、反復的に実行される。一実施形態において、計算器によって実行されるステップは、閉ループの方法で実行される。一実施形態において、計算器は、これらのステップを半連続的に実行して延長インジケータを半連続的に生成する。一実施形態において、計算器は、これらのステップを連続的に実行して延長インジケータを連続的に生成する。
【0106】
本発明によれば、計算器は、少なくとも1つの基準振動パターンを備える。一実施形態によれば、医療装置は、少なくとも1つの基準振動パターンを備えるメモリユニットを備える。
【0107】
前記コンピュータ可読データキャリアは、インプラント可能な骨延長装置と分離した骨区域とを含む媒体の少なくとも1つの振動パターンを求め又は計算し、前記振動パターンを基準振動パターンと比較する。前記比較から、前記コンピュータ可読データキャリアを備えるコンピュータは、2つの骨区域間の間隙を増加させるべきか否かを判定することができ、随意的に、この間隙を増加させるコマンドをアクチュエータに送信することができる。
【0108】
一実施形態によれば、前記医療モニタリング装置は、ユーザの体外に位置するように構成される。一実施形態によれば、前記医療モニタリング装置は、ベルト、好ましくは腹部のベルトである。
【0109】
一実施形態において、振動パターンを抽出する前に振動信号を処理するために、数値又はアナログ増幅器又はフィルタが用いられてよい。測定した信号のいくつかの振動パターンを抽出するために、例えば最尤基準を用いる相関法が、いくつかの所定のパターンを有するいくつかの所定の信号に適用されてよい。
【0110】
振動応答の測定から、コンピュータ可読データキャリアに接続されたコンピュータは、媒体の少なくとも1つの振動パターンと、記録されたデータからの任意の他の適切な情報を計算することができる。
【0111】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様に係るインプラント可能な骨延長装置1と本発明の第2の態様に係る医療モニタリング装置とを備える医療システムに関係する。一実施形態において、前記医療モニタリング装置は、医療モニタリング装置によって受信されることになるインプラント可能な骨延長装置1からの振動データの送信をアクティブにするインターフェースを備える。
【0112】
一実施形態において、医療システムは、インプラント可能な骨延長装置1と医療モニタリング装置とを接続する通信手段を備える。一実施形態において、前記通信手段は、無線送信手段を備える。送信手段は、少なくとも1つの送信器と少なくとも1つの受信器を備えていてよい。一実施形態において、インプラント可能な骨延長装置1と医療モニタリング装置は、両方とも、前記測定値を送信するための手段を備える。一実施形態において、医療システムは、前記測定値を送信するための手段を備え、前記手段は、医療モニタリング装置とインプラント可能な骨延長装置1との間の、又は医療モニタリング装置と振動センサ6との間の双方向通信を可能にする。
【0113】
次いで、少なくとも1つの振動センサ6によって収集されたデータが、医療モニタリング装置に送信される。次いで、医療モニタリング装置は、振動パターンの推移が所定の閾値を超えるときに延長インジケータを生成するためにこれらのデータを後述するように処理することができる。
【0114】
一実施形態によれば、医療モニタリング装置は、エネルギーを提供する手段を備える。一実施形態によれば、医療モニタリング装置は、インプラント可能な骨延長装置1に供給されるエネルギーを提供することができる。一実施形態によれば、医療モニタリング装置は、インプラント可能な骨延長装置1にエネルギーを供給するために無線電力伝送手段を備える。一実施形態によれば、医療モニタリング装置は、電源に接続された無線送信器を備える。
【0115】
一実施形態によれば、インプラント可能な骨延長装置1は、少なくとも1つの受信器を備える。別の実施形態によれば、医療システムは、インプラント可能な骨延長装置に有線接続された受信器を備える。一実施形態によれば、電源に接続された無線送信器が、介在する空間を越えて前記受信器に電界エネルギーを伝達し、前記受信器は、前記電界エネルギーを電流に戻るように変換する。
【0116】
前記実施形態において、医療システムは、測定値を送信するための無線インターフェースに、及び/又は振動センサに、随意的に駆動ロッドアクチュエータに、エネルギーを提供することができる。
【0117】
1つの好ましい実施形態において、インプラント可能な骨延長装置は、エネルギーを受信するための少なくとも1つの受信器と、医療モニタリング装置に測定データを送信するための少なくとも1つの送信器を備える。前記実施形態によれば、受信器は、データを送信するための手段に及び駆動ロッドアクチュエータに電気的に接続される。
【0118】
例示していない一実施形態によれば、インプラント可能な骨延長装置は、有線で、前記エネルギーを受信するための受信器に接続され、且つ、前記医療モニタリング装置に測定データを送信するための少なくとも1つの送信器に接続される。
【0119】
第4の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様に係るインプラント可能な骨延長装置1とコンピュータ可読データキャリアとを備える、骨切り術により分離された骨区域を延長するための医療モニタリング装置に関する。一実施形態において、前記医療モニタリング装置は、インプラント可能な骨延長装置1からコンピュータ可読データキャリアに前記測定値を送信するための手段をさらに備える。一実施形態において、前記コンピュータ可読データキャリアは、
少なくとも1つの閾値と、
コンピュータによって実行されるときに、コンピュータに、
a.測定された振動応答から媒体の少なくとも1つの第1の振動パターンを求めるステップと、
b.経時的に、測定された振動応答から前記媒体の少なくとも1つの第2の振動パターンを求めるステップと、
c.少なくとも1つの第1の振動パターンと少なくとも1つの第2の振動パターンとの差を計算するステップと、
d.前記計算した差の値が少なくとも1つの閾値を超えるときに延長インジケータを生成するステップと、
を実行させる命令と、
を備える。
【0120】
一実施形態において、計算した差が少なくとも1つの閾値を超えない場合、コンピュータは、ステップbに戻って実行する。
【0121】
一実施形態において、ステップa)、b)、c)、及びd)は、反復的に実行される。
【0122】
一実施形態において、計算した差が少なくとも1つの閾値を超える場合、命令は、アクチュエータを自動的に遠隔作動するステップをさらに含む。
【0123】
一実施形態において、前記コンピュータ可読データキャリアは、延長インジケータが生成されるときにアクチュエータ又は駆動ロッドアクチュエータ4を自動的に作動する命令をさらに含む。
【0124】
一実施形態において、装置は、延長するための手段を備える。一実施形態において、延長するための手段は、2つの分離した骨区域間の延長を提供する。一実施形態において、延長は、測定された振動応答に基づいてアクティブにされる。
【0125】
一実施形態において、延長するための手段は、測定された振動応答をアクチュエータに送信するために送信器を備える。一実施形態において、医療モニタリング装置の計算器が延長インジケータを生成するとき、送信器は、アクチュエータに信号を送信する。一実施形態において、送信器は、アクチュエータを遠隔作動して、分離した骨区域の延長をもたらす。
【0126】
一実施形態において、駆動ロッドアクチュエータ4は、延長インジケータが生成されるときに自動的に作動する。
【0127】
一実施形態において、駆動ロッドアクチュエータの遠隔作動は、前記所定のピッチのスペースを増加又は減少させることによって2つの分離した骨区域間のスペースの調節をもたらす。
【0128】
第5の態様によれば、本発明は、方法に関する。一実施形態によれば、前記方法は、モニタリング方法である。一実施形態において、前記方法は、
インプラント可能な骨延長装置1から媒体の機械的振動応答に対応するデータを受信するステップと、
受信したデータから、
測定された振動応答から前記媒体の少なくとも1つの振動パターンを求め、
第1の期間中の測定された振動応答から少なくとも1つの振動パターンの第1の値の推移を解析し、
第1の値が所定の閾値を超えるときに延長インジケータを生成する、
ことにより延長インジケータを計算するステップと、
を含む。
【0129】
一実施形態において、前記方法は、閉ループの方法である。一実施形態において、本方法は、受信するステップと計算するステップを反復的に含む。一実施形態において、方法は、これらのステップを半連続的に実行して延長インジケータを半連続的に生成する。一実施形態において、方法は、これらのステップを連続的に実行して延長インジケータを連続的に生成する。
【0130】
一実施形態において、前記方法は、延長インジケータが生成されるときにアクチュエータを作動するステップをさらに含む。
【0131】
一実施形態において、前記方法は、開ループの方法である。
【0132】
本発明はさらに、本発明に係るモニタリング方法と、延長インジケータが生成されるときに前記所定のピッチのスペースを増加又は減少させることにより2つの分離した骨区域間のスペースを調節するステップとを含む操作方法に関する。
【0133】
一実施形態において、所定のピッチは、2つの分離した骨区域間の仮骨を壊さずに前記2つの分離した骨区域を引き離すために適用でき得る距離である。一実施形態において、前記ピッチは、0.1~5mmの範囲である。
【0134】
一実施形態において、前記方法は、本発明の第3の態様に係る医療システムを用いる。
【0135】
様々な実施形態が説明及び図示されているが、詳細な説明は、それに限定されると解釈されるべきではない。特許請求の範囲によって定義される本開示の真の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者はこれらの実施形態に様々な修正を加えることができる。
【符号の説明】
【0136】
1:インプラント可能な骨延長装置
2:第1の骨区域
2’:第2の骨区域
3:第1のブロック
3’:第2のブロック
4:駆動ロッドアクチュエータ
5:駆動ロッド
6:振動センサ
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】