(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155293
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20231013BHJP
C09J 183/10 20060101ALI20231013BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231013BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20231013BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J183/10
C09J11/06
C09J201/00
H01L21/304 622J
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132660
(22)【出願日】2023-08-16
(62)【分割の表示】P 2019534983の分割
【原出願日】2019-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2018108742
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】緒方 雄大
(72)【発明者】
【氏名】戸田 智基
(57)【要約】
【課題】高温による接着亢進を低減できるとともに、光を透過しない材料にも用いることができる粘着テープを提供する。
【解決手段】粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、動的粘弾性測定で評価した25℃におけるせん断貯蔵弾性率が4.0×104~1.0×106Paであり、前記粘着剤層は、前記粘着剤テープの前記粘着剤層側をガラスに貼り付けて220℃で120分間加熱し、剥離した後の対水接触角が80°以上である、粘着テープ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は、動的粘弾性測定で評価した25℃におけるせん断貯蔵弾性率が4.0×104~2.0×106Paであり、
前記粘着剤層は、前記粘着テープの前記粘着剤層側をガラスに貼り付けて220℃で120分間加熱し、剥離した後の対水接触角が80°以上である、粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層は、前記粘着テープの前記粘着剤層側をガラスに貼り付けて220℃で加熱し、剥離した後の対水接触角が110°以下である、請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層は25℃における対水接触角が103°以下である、請求項1又は2記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層を構成する粘着剤は非硬化型粘着剤である、請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層は、架橋性官能基を有する粘着剤と、架橋性官能基を有するシリコーン系グラフト共重合体と、前記粘着剤及び前記シリコーン系グラフト共重合体と反応して架橋させることができる架橋剤とを含有する、請求項1、2、3又は4記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記シリコーン系グラフト共重合体は、酸価が0.5mgKOH/g以上、20mgKOH/g以下である、請求項1、2、3、4又は5記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記シリコーン系グラフト共重合体は、カルボキシル基含有モノマー0.1~2.5重量%、シリコーンマクロモノマー1~90重量%を含有する混合モノマーを共重合してなるものであり、重量平均分子量が40万以下である、請求項5、又は6記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記架橋剤はエポキシ系架橋剤である、請求項5記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記シリコーン系グラフト共重合体の含有量は、粘着剤100重量部に対して0.1~30重量部である、請求項5、6、又は7記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記粘着剤は、分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5のアクリル系ポリマーである、請求項5、8、又は9記載の粘着テープ。
【請求項11】
電子部品の製造における請求項1~10のいずれかに記載の粘着テープの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの製造工程において、ウエハや半導体チップの加工時の取扱いを容易にし、破損を防止するために粘着テープが用いられている。例えば、高純度なシリコン単結晶等から切り出した厚膜ウエハを所定の厚さにまで研削して薄膜ウエハとする場合、厚膜ウエハに粘着テープを貼り合わせた後に研削が行われる。
【0003】
このような粘着テープには、加工工程中にウエハや半導体チップ等の被着体を強固に固定できるだけの高い接着性とともに、工程終了後にはウエハや半導体チップ等の被着体を損傷することなく剥離できることが求められる(以下、「高接着易剥離」ともいう。)。
高接着易剥離を実現した粘着テープとして、特許文献1には紫外線等の光を照射することにより硬化して粘着力が低下する光硬化型粘着剤を用いた粘着テープが開示されている。粘着剤として光硬化型粘着剤を用いることで、加工工程中には確実に被着体を固定できるとともに、紫外線等を照射することにより容易に剥離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体チップ等の電子部品の製造工程では200℃以上の熱を加える高温処理が行われることがあり、そのような製造工程で用いられる粘着テープには耐熱性と、高温下でも接着亢進しない耐接着亢進性が要求される。従来は、高温による接着亢進を低減するために特許文献1のような光硬化型の粘着テープが用いられてきた。一方、電子部品の製造では、両面粘着テープを介してウエハや基板等を支持板に固定し、配線等の処理を行うことがある。しかしながら、近年、コストや取り扱い性の観点から銅、アルミニウム、ガラスエポキシ等の不透明な素材が支持板として用いられることが多くなってきており、このような不透明な支持板では従来の光硬化型粘着剤を用いた粘着テープを硬化させることができないという問題がある。
【0006】
本発明は、高温による接着亢進を低減できるとともに、光を透過しない材料にも用いることができる粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層は、動的粘弾性測定で評価した25℃におけるせん断貯蔵弾性率が4.0×104~2.0×106Paであり、前記粘着剤層は、前記粘着テープの前記粘着剤層側をガラスに貼り付けて220℃で120分間加熱し、剥離した後の対水接触角が80°以上である、粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の一実施態様である粘着テープは、粘着剤層を有する。
本発明の一実施態様である粘着テープは、粘着剤層を有してさえいれば、他の層を有していてもよい。また、本発明の一実施態様である粘着テープは、基材を有するサポートタイプであってもよく、基材を有さないノンサポートタイプであってもよい。本発明の一実施態様である粘着テープが基材を有する場合は、基材の少なくとも片面に粘着剤層を有していればよく、片面粘着テープであっても両面粘着テープであってもよい。
【0009】
上記粘着剤層は、動的粘弾性測定で評価した25℃におけるせん断貯蔵弾性率が4.0×104~2.0×106Paである。
粘着剤層のせん断貯蔵弾性率が4.0×104Pa以上であることで、粘着テープに適した硬さの粘着剤層とすることができる。また、粘着剤層のせん断貯蔵弾性率が2.0×106Pa以下であることで、粘着剤層が硬くなりすぎず、粘着テープの固着を防いで糊残りを抑制することができる。上記と同様の観点から、上記せん断貯蔵弾性率の好ましい下限は8.0×104Pa、より好ましい下限は1.0×105Paである。上記せん貯蔵弾性率の好ましい上限は1.5×106Pa、より好ましい上限は1.3×106Pa、更に好ましい上限は1.0×106Pa、特に好ましい上限は7.0×105Pa、最も好ましい上限は2.0×105Paである。
上記せん断貯蔵弾性率は動的粘弾性測定装置(例えば、アイティー計測制御社製、DVA-200)を用いて動的粘弾性測定のせん断モード、角周波数10Hzで昇温速度5℃/minで-50℃から200℃まで測定を行って得た測定値のうち、25℃での貯蔵弾性率の値として求めることができる。
なお、上記せん断貯蔵弾性率は、温度による変動が小さい。そのため、本発明の一実施態様である粘着テープが25℃において上記範囲のせん断貯蔵弾性率を有していれば、220℃程度の高温下においても上記効果が発揮される。
【0010】
上記粘着剤層は、上記粘着テープの上記粘着剤層側をガラスに貼り付けて220℃で120分間加熱し、剥離した後の対水接触角(以下、単に加熱後の対水接触角という)が80°以上である。
粘着テープをガラスに貼り付けて加熱し、剥離した後の粘着剤層が上記範囲の対水接触角を有していることで、表面が疎水的となり、被着体と相互作用しにくくなることから、加熱による接着亢進を低減することができる。同様の観点から、上記加熱後の対水接触角の好ましい下限は81°、より好ましい下限は81.5°、更に好ましい下限は82°である。上記加熱後の対水接触角の好ましい上限は110°、より好ましい上限は105°、更に好ましい上限は103°、更により好ましい上限は100°、特に好ましい上限は97°、とりわけ好ましい上限は95°、非常に好ましい上限は92°、なお好ましい上限は91°である。
【0011】
上記加熱後の対水接触角は、JIS R 3257:1999に準拠した方法で測定することができ、具体的には以下の方法で測定することができる。
粘着テープを25mm幅に裁断する。裁断した粘着テープをガラス被着体(例えば、松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨No.2)に室温23℃、相対湿度50%で、2kgの圧着ゴムローラーを用いて10mm/SECの速度で貼り付ける。次いで、220℃、120分の加熱処理を行う。放冷後、粘着テープをガラス被着体から剥離し、JIS R 3257:1999に準じ、接触角測定装置(例えば、KSV社製、CAM 200)を用いて粘着剤層の対水接触角を測定する。具体的には、室温25℃、湿度40%の環境下で、水平に置いた粘着テープの粘着剤層表面へ、水滴2μL(超純水)を滴下する。滴下してから5秒後の純水と粘着剤層表面とのなす角度を対水接触角とする。
【0012】
本発明の一実施態様である粘着テープは、上記粘着剤層の25℃における対水接触角が103°以下であることが好ましい。
粘着剤層の25℃における対水接触角が103°以下であることで、より適度な粘着力(初期粘着力)で被着体に貼り付けることができる。同様の観点から、上記粘着剤層の25℃における対水接触角のより好ましい上限は102°、更に好ましい上限は100°である。上記粘着剤層の25℃における対水接触角の下限は特に限定されないが、80°であることが好ましい。上記粘着剤層の25℃における対水接触角は、加熱処理を行わない以外は上記加熱後の対水接触角と同様の方法で測定することができる。
【0013】
上記粘着剤層は、架橋性官能基を有する粘着剤と、架橋性官能基を有するシリコーン系グラフト共重合体と、上記粘着剤及び上記シリコーン系グラフト共重合体と反応して架橋させることができる架橋剤とを含有することが好ましい。
粘着剤層が架橋剤を含有することで、粘着剤を架橋してせん断貯蔵弾性率を上記範囲に調節しやすくすることができる。また、粘着剤層がシリコーン系グラフト共重合体を含有すると、シリコーン系グラフト共重合体が加熱によって粘着剤層表面にブリードアウトすることで、粘着剤層の表面が疎水的になるため、加熱後の対水接触角を上記範囲に調節しやすくすることができる。また、粘着剤層の表面が疎水的になることで、粘着剤層と被着体が相互作用しにくくなり、接着力が減少することから、接着亢進を低減することができる。更に、シリコーン系グラフト共重合体が架橋性官能基を有することで、架橋剤を介してシリコーン系グラフト共重合体を粘着剤と結合できることから、被着体の汚染を抑制することができる。
【0014】
上記粘着剤は特に限定されず、硬化型であっても非硬化型であってもよい。
硬化粘着剤とは、例えば二重結合等の重合性官能基を有することによって、熱や光等の刺激によって硬化するものであり、非硬化型粘着剤とは、重合性官能基を実質的に有しないものである。製造プロセスを簡略化できることと、光硬化を行えない不透明な材料に対しても使用できることから、上記粘着剤は非硬化型粘着剤であることが好ましい。非硬化型粘着剤としては、例えば非光硬化型粘着剤、非熱硬化型粘着剤、非エネルギー硬化型粘着剤が挙げられる。
【0015】
上記粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。なかでも、上記加熱後の対水接触角と上記せん断貯蔵弾性率を調節しやすいことから非シリコーン系粘着剤が好ましく、アクリル系粘着剤であることがより好ましい。
【0016】
上記粘着剤及びシリコーン系グラフト共重合体に存在する架橋性官能基としては、それぞれ独立して、例えば、カルボキシル基、水酸基、グリジシル基、アミノ基、アミド基、ニトリル基等が挙げられる。なかでも、上記せん断貯蔵弾性率の範囲への調節が容易であることから、カルボキシル基が好ましい。
【0017】
上記粘着剤は、分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5のアクリル系ポリマーであることが好ましく、リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5のアクリル系ポリマー(以下、単に「リビングラジカル重合アクリル系ポリマー」ともいう)であることがより好ましい。
上記リビングラジカル重合アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリル酸等のアクリル系モノマーを原料として、リビングラジカル重合、好ましくは有機テルル重合開始剤を用いたリビングラジカル重合により得られたアクリル系ポリマーである。リビングラジカル重合は、重合反応が停止反応又は連鎖移動反応等の副反応で妨げられることなく分子鎖が生長していく重合である。リビングラジカル重合によれば、例えばフリーラジカル重合等と比較してより均一な分子量及び組成を有するポリマーが得られ、低分子量成分等の生成を抑えることができるため、高温処理を行った場合であっても糊残りを抑えることができる。また、上記せん断貯蔵弾性率を上記範囲に調節しやすくすることができる。より糊残りを抑える観点から、リビングラジカル重合アクリル系ポリマーの上記分子量分布のより好ましい下限は1.1、より好ましい上限は2.0である。
【0018】
上記リビングラジカル重合においては、種々の重合方式を採用してもよい。例えば、鉄、ルテニウムや銅触媒及びハロゲン系開始剤を用いてよく(ATRP)、TEMPOを用いてよく、有機テルル重合開始剤を用いてよい。なかでも、有機テルル重合開始剤を用いることが好ましい。有機テルル重合開始剤を用いたリビングラジカル重合は、他のリビングラジカル重合とは異なり、水酸基やカルボキシル基のような極性官能基を有するラジカル重合性モノマーをいずれも保護することなく、同一の開始剤で重合して均一な分子量及び組成を有するポリマーを得ることができる。このため、極性官能基を有するラジカル重合性モノマーを容易に共重合することができる。
【0019】
上記有機テルル重合開始剤は、リビングラジカル重合に一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、有機テルル化合物、有機テルリド化合物等が挙げられる。
上記有機テルル化合物として、例えば、(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-クロロ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-ヒドロキシ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-アミノ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-ニトロ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-シアノ-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-メチルカルボニル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-フェニルカルボニル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-メトキシカルボニル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-フェノキシカルボニル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-スルホニル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-トリフルオロメチル-4-(メチルテラニル-メチル)ベンゼン、1-クロロ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-ヒドロキシ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-アミノ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-ニトロ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-シアノ-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-メチルカルボニル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-フェニルカルボニル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-メトキシカルボニル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-フェノキシカルボニル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-スルホニル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-トリフルオロメチル-4-(1-メチルテラニル-エチル)ベンゼン、1-クロロ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-ヒドロキシ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-アミノ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-ニトロ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-シアノ-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-メチルカルボニル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-フェニルカルボニル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-メトキシカルボニル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-フェノキシカルボニル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-スルホニル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、1-トリフルオロメチル-4-(2-メチルテラニル-プロピル)ベンゼン、2-(メチルテラニル-メチル)ピリジン、2-(1-メチルテラニル-エチル)ピリジン、2-(2-メチルテラニル-プロピル)ピリジン、2-メチルテラニル-エタン酸メチル、2-メチルテラニル-プロピオン酸メチル、2-メチルテラニル-2-メチルプロピオン酸メチル、2-メチルテラニル-エタン酸エチル、2-メチルテラニル-プロピオン酸エチル、2-メチルテラニル-2-メチルプロピオン酸エチル、2-メチルテラニルアセトニトリル、2-メチルテラニルプロピオニトリル、2-メチル-2-メチルテラニルプロピオニトリル等が挙げられる。これらの有機テルル化合物中のメチルテラニル基は、エチルテラニル基、n-プロピルテラニル基、イソプロピルテラニル基、n-ブチルテラニル基、イソブチルテラニル基、t-ブチルテラニル基、フェニルテラニル基等であってもよく、また、これらの有機テルル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記有機テルリド化合物として、例えば、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ-n-プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ-n-ブチルジテルリド、ジ-sec-ブチルジテルリド、ジ-tert-ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス-(p-メトキシフェニル)ジテルリド、ビス-(p-アミノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-ニトロフェニル)ジテルリド、ビス-(p-シアノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等が挙げられる。これらの有機テルリド化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ-n-プロピルジテルリド、ジ-n-ブチルジテルリド、ジフェニルジテルリドが好ましい。
【0021】
なお、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記有機テルル重合開始剤に加えて、重合速度の促進を目的として重合開始剤としてアゾ化合物を用いてもよい。
上記アゾ化合物は、ラジカル重合に一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル-1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1’-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)等が挙げられる。これらのアゾ化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記粘着剤は架橋性官能基を有することから、リビングラジカル重合アクリル系ポリマーには重合するモノマーとして、架橋性官能基を有するモノマーを配合する。
上記架橋性官能基がカルボキシル基である場合、カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
上記架橋性官能基が水酸基である場合、水酸基を有するモノマーとしては、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
上記架橋性官能基がグリシジル基である場合、グリシジル基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記架橋性官能基がアミド基である場合、アミド基を有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
上記架橋性官能基がニトリル基である場合、ニトリル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0023】
上記カルボキシル基を有するアクリル系モノマーを用いる場合、その含有量は特に限定されないが、上記リビングラジカル重合において重合するラジカル重合性モノマー中の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は10重量%である。上記含有量が0.1重量%以上であると、リビングラジカル重合アクリル系ポリマーが上記シリコーン系グラフト共重合体と上記架橋剤を介して充分に結合できるため、被着体の汚染を低減することができる。上記含有量が10重量%以下であると、上記粘着剤が硬くなりすぎず、粘着テープの糊残りを抑制することができる。
【0024】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いた場合、その含有量は特に限定されないが、上記リビングラジカル重合において重合するラジカル重合性モノマー中の好ましい上限は30重量%である。上記含有量が30重量%以下であることで、上記粘着剤の耐熱接着性をより向上させることができる。
【0025】
上記リビングラジカル重合において重合するアクリル系モノマーは、架橋性官能基を有するアクリル系モノマー以外の他のラジカル重合性モノマーを用いてもよい。上記他のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、他の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、アミノ基、アミド基及びニトリル基等の他の極性官能基を有するアクリル系モノマーも用いることができる。更に、上記アクリル系モノマーに加えて、ビニル化合物をモノマーとして用いてもよい。
【0026】
上記他の(メタ)アクリル酸エステルは特に限定されず、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記ビニル化合物は特に限定されず、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルアセトアミド、N-アクリロイルモルフォリン、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。これらのビニル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記リビングラジカル重合においては、分散安定剤を用いてもよい。上記分散安定剤として、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記リビングラジカル重合の方法として、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。
上記リビングラジカル重合において重合溶媒を用いる場合、該重合溶媒は特に限定されない。上記重合溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒や、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド等の高極性溶媒を用いることができる。これらの重合溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、重合温度は、重合速度の観点から0~110℃が好ましい。
【0029】
上記リビングラジカル重合アクリル系ポリマーは、分子量の好ましい下限が50万、より好ましい下限が80万、好ましい上限が150万、より好ましい上限が120万である。上記リビングラジカル重合アクリル系ポリマーの分子量が上記範囲であることで、上記加熱後の対水接触角と上記せん断貯蔵弾性率を上記範囲へ調節しやすくすることができる。
【0030】
上記シリコーン系グラフト共重合体は、架橋性官能基を有する限り、特に限定されない。架橋性官能基は、グラフト鎖に存在してもよく、主鎖に存在してもよく、グラフト鎖及び主鎖に存在してもよい。
【0031】
被着体への汚染を低減する観点から、上記シリコーン系グラフト共重合体は、極性官能基含有モノマー、及びシリコーンマクロモノマーに由来する構造単位を含有することが好ましい。被着体への汚染を低減する観点から、上記シリコーン系グラフト共重合体は、シリコーンを有する側鎖を有するグラフト共重合体であることが好ましい。上記極性官能基含有モノマーとしては、ヒドロキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーが挙げられる。なかでも、粘着力の制御を行い易い観点から、極性官能基含有モノマーはカルボキシル基含有モノマーであることが好ましい。
【0032】
上記極性官能基含有モノマーがカルボキシル基含有モノマーである場合、初期粘着力と加熱後の粘着力を更に良化できる観点から、上記シリコーン系グラフト共重合体は、好ましくは0.1重量%以上、好ましくは90重量%以下のカルボキシル基含有モノマーを含有する混合モノマーを共重合してなるものであることが好ましい。上記カルボキシル基含有モノマーの含有量は、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上である。また、上記カルボキシル基含有モノマーの含有量は、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下であり、更により好ましくは60重量%以下、特に好ましくは50重量%以下、とりわけ好ましくは40重量%以下、特に好ましくは30重量%以下、非常に好ましくは20重量%以下である。
【0033】
本発明の好適な実施態様において、上記シリコーン系グラフト共重合体は、カルボキシル基含有モノマー(カルボン酸含有モノマー)0.1~2.5重量%、シリコーンマクロモノマー1~90重量%を含有する混合モノマーを共重合してなるものであることが好ましい。
カルボキシル基含有モノマーは、シリコーン系グラフト共重合体の架橋性官能基の元となるものであり、上記範囲の含有量で配合することによって、架橋剤を介してシリコーン系グラフト共重合体と粘着剤を結合させることができ、被着体の汚染を抑制することができる。シリコーンマクロモノマーは、シリコーン系グラフト共重合体にブリード剤としての性能を付与するものであり、上記範囲の含有量で配合することにより高温による接着亢進を低減することができる。特に、上記粘着剤と、上記架橋剤と、上記混合モノマーを共重合してなるシリコーン系グラフト共重合体とを用いることで、より一層高温による接着亢進を低減でき、被着体の汚染を抑制することができる。なお、上記加熱後の対水接触角を上記範囲に調節するためには、カルボキシル基含有モノマーの含有量が特に重要である。カルボキシル基含有モノマーが0.1重量%以上であると、得られるシリコーン系グラフト共重合体が粘着剤と充分に結合できる。カルボキシル基含有モノマーが2.5重量%以下であると、粘着剤との結合に用いられないカルボキシル基が減少することによって粘着剤層表面が親水的になるのを抑制することができるため、加熱後の対水接触角を上記範囲に調整し易く、接着亢進を低減することができる。上記の観点から上記カルボキシル基含有モノマーの含有量のより好ましい下限は1.0重量%、更に好ましい下限は1.5重量%、より好ましい上限は2.0重量%、更に好ましい上限は1.7重量%である。また、加熱後の対水接触角を上記範囲としてより接着亢進を低減する観点から、上記シリコーンマクロモノマーの含有量のより好ましい下限は2重量%である。上記シリコーンマクロモノマーの含有量の更に好ましい下限は2.5重量%、更により好ましい下限は3重量%、特に好ましい下限は3.5重量%、とりわけ好ましい下限は4重量%、非常に好ましい下限は4.5重量%、最も好ましい下限は5重量%である。上記シリコーンマクロモノマーの含有量のより好ましい上限は80重量%、更に好ましい上限は60重量%、更により好ましい上限は50重量%、特に好ましい上限は40重量%、とりわけ好ましい上限は30重量%、非常に好ましい上限は25重量%、最も好ましい上限は20重量%である。
【0034】
本発明の好適な実施態様において、上記シリコーン系グラフト共重合体は、極性官能基含有モノマー及びシリコーンマクロモノマー以外に、(メタ)アクリル酸エステルを含有する混合モノマーを共重合してなるものであってもよい。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されず、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記混合モノマーが(メタ)アクリル酸エステルを含有する場合、(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、好ましくは1重量%以上、好ましくは99重量%以下である。上記(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは7.5重量%以上、更により好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは95重量%以下、更に好ましくは90重量%以下、更により好ましくは80重量%以下である。
【0035】
上記シリコーン系グラフト共重合体の架橋性官能基としては、上記粘着剤の架橋性官能基と同様のものを用いることができる。また、上記シリコーン系グラフト共重合体の架橋性官能基は、上記粘着剤の架橋性官能基と同一であってもよく異なっていてもよい。
【0036】
上記シリコーンマクロモノマーは重量平均分子量が500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましい。
シリコーンマクロモノマーの重量平均分子量が上記下限以上であることで、シリコーン系グラフト共重合体によって形成される疎水的な表面層が厚くなることから、接着亢進をより低減することができる。同様の観点から上記シリコーンマクロモノマーの重量平均分子量のより好ましい上限は50000であり、通常20000以下である。
【0037】
上記シリコーン系グラフト共重合体は、被着体の汚染抑制、初期粘着力及び加熱後粘着力の制御の観点から、酸価が好ましくは0.5mgKOH/g以上、より好ましくは1mgKOH/g以上、更に好ましくは3mgKOH/g以上、特に好ましくは5mgKOH/g以上、最も好ましくは10mgKOH/g以上である。また、上記酸化が、好ましくは22mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以下、更に好ましくは19mgKOH/g以下である。
【0038】
上記シリコーンマクロモノマーとしては、側鎖にシロキサン結合含有基を有するモノマーであればよく、例えば、シリコーン基含有アクリル系モノマー、シロキサン結合含有スチレン系モノマー等が挙げられる。なかでも、耐熱性、耐候性に優れることから、シロキサン結合含有アクリル系モノマーが好ましい。上記シロキサン結合含有アクリル系モノマーとしては、例えば、以下の一般式(1)又は一般式(2)のような構造式を有するモノマーが挙げられる。
【0039】
【0040】
ここで、Rは(メタ)アクリロイル基含有官能基を表し、X及びYは、それぞれ独立して、0以上の整数を表し、通常5000以下、特に500以下の整数を表す。
【0041】
本発明のシリコーン系グラフト共重合体の原料モノマー中における上記シリコーンマクロモノマーの含有量は、1重量%以上90重量%以下であることが好ましい。シリコーンマクロモノマーの含有量が上記範囲であることで、高温下での接着亢進をより抑えることができる。高温下での接着亢進を更に抑える観点から、上記シリコーンマクロモノマーの含有量のより好ましい下限は5重量%、更に好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は80重量%、更に好ましい上限は60重量%である。
【0042】
上記カルボキシル基含有モノマー及び上記シリコーンマクロモノマー以外のモノマーとしては例えば、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、水酸基、アミノ基、アミド基及びニトリル基等の他の極性官能基を有するアクリル系モノマーも用いることができる。更に、上記アクリル系モノマーに加えて、ビニル化合物をモノマーとして用いてもよい。
【0043】
上記シリコーン系グラフト共重合体は、重量平均分子量が40万以下であることが好ましい。
シリコーン系グラフト共重合体の重合平均分子量が40万以下であると、粘着剤層内で動きやすくなることから、シリコーン系グラフト共重合体が粘着剤層表面に集まりやすくなり、接着亢進をより低減することができる。上記シリコーン系グラフト共重合体の重合平均分子量のより好ましい上限は30万、更に好ましい上限は25万、特に好ましい上限は20万であり、通常1万以上である。
【0044】
上記シリコーン系グラフト共重合体の含有量は、上記粘着剤100重量部に対して0.1~30重量部であることが好ましい。
シリコーン系グラフト共重合体の含有量が0.1重量部以上であることで、接着亢進をより低減することができる。シリコーン系グラフト共重合体の含有量が30重量部以下であることで、シリコーン系グラフト共重合体が粘着剤と充分に結合でき、被着体の汚染をより抑制することができる。同様の観点から、粘着剤100重量部に対する上記シリコーン系グラフト共重合体の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、更に好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は10重量部、更に好ましい上限は5重量部である。
【0045】
上記架橋剤は、上記粘着剤と上記シリコーン系グラフト共重合体とが有する架橋性官能基と結合できるものを適宜選択することができる。上記架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤等が挙げられる。なかでも、上記せん断貯蔵弾性率の範囲への調節が容易であることから、エポキシ系架橋剤が好ましい。
【0046】
上記粘着剤100重量部に対する上記架橋剤の含有量は、好ましい下限が0.5重量部、より好ましい下限が1重量部、好ましい上限が5重量部、より好ましい上限が3重量部である。上記架橋剤の含有量が上記範囲であることで、上記粘着剤と上記シリコーン系グラフト共重合体とを充分に架橋させることができ、上記加熱後の対水接触角と上記せん断貯蔵弾性率を上記範囲に調節しやすくすることができる。
【0047】
上記粘着剤層は、ヒュームドシリカ等の無機フィラー、可塑剤、樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤、酸化防止剤、ガス発生剤等の公知の添加剤を含有してもよい。
【0048】
上記粘着剤層の厚さは特に限定されないが、下限が5μm、上限が100μmであることが好ましい。粘着剤層の厚みが上記範囲であると充分な粘着力で被着体に貼り付けることができ、更に剥離時の糊残りを抑制することもできる。上記粘着剤層の厚さのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は60μmである。
【0049】
本発明の一実施態様である粘着テープを製造する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、離型処理を施したフイルム上に上記粘着剤成分の溶液を塗工、乾燥させることで製造することができる。
【0050】
本発明の一実施態様である粘着テープの用途は特に限定されないが、例えば、半導体チップ、表示装置(ОLED、液晶表示装置等)等の電子部品の製造等が挙げられるが、高温による接着亢進を低減でき、不透明な材料にも適用できることから、半導体チップ等の電子部品の製造における保護テープとして特に好適に用いることができる。
【0051】
本発明の別の実施態様においては、電子部品の製造における上記粘着テープの使用も提供される。特に不透明な材料を用いる電子部品、例えば半導体チップの製造において、上記粘着テープは保護テープとして有利に用いることができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、高温による接着亢進を低減できるとともに、光を透過しない材料にも用いることができる粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
(粘着剤Aの合成)
Tellurium(40メッシュ、金属テルル、アルドリッチ社製)6.38g(50mmol)をテトラヒドロフラン(THF)50mLに懸濁させ、これに1.6mol/Lのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液(アルドリッチ社製)34.4mL(55mmol)を、室温でゆっくり滴下した。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで攪拌した。この反応溶液に、エチル-2-ブロモーイソブチレート10.7g(55mmol)を室温で加え、2時間攪拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物の2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオン酸エチルを得た。
【0055】
アルゴン置換したグローブボックス内で、反応容器中に、得られた2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオン酸エチル19μL、V-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、富士フイルム和光純薬社製)34mg、酢酸エチル1mLを投入した後、反応容器を密閉し、反応容器をグローブボックスから取り出した。続いて、反応容器にアルゴンガスを流入しながら、反応容器内に、表1に示す混合モノマーの合計100g、重合溶媒として酢酸エチル66.5gを投入し、60℃で20時間重合反応を行い、リビングラジカル重合されたアクリル系ポリマー(粘着剤A)含有溶液を得た。
次いで、得られた粘着剤A含有溶液をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍に希釈した。得られた希釈液をフィルターで濾過し、濾液をゲルパミエーションクロマトグラフに供給して、サンプル流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、粘着剤Aのポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、ゲルパミエーションクロマトグラフは、Waters社製、2690 Separations Modelを用いた。フィルターは、ポリテトラフルオロエチレン製、ポア径0.2μmのものを用いた。カラムとしてはGPC KF-806L(昭和電工社製)を用い、検出器としては示差屈折計を用いた。
【0056】
(粘着剤B、C、Fの合成)
混合モノマーの組成を表1の通りとした以外は粘着剤Aの合成と同様にして粘着剤B、C、F含有溶液を得て、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0057】
(粘着剤Dの合成)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意し、この反応器内に、モノマーとして2-エチルヘキシルアクリレート100重量部、アクリル酸3重量部、ヒドロキシエチルアクリレート0.1重量部、酢酸エチル80重量部を加えた。この反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤としてV-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、富士フイルム和光純薬社製)0.01重量部を投入し、60℃で8時間重合反応を行い、粘着剤Dの酢酸エチル溶液を得た。粘着剤Aの合成と同様にして、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0058】
(粘着剤E、Gの合成)
モノマーの組成を表1の通りとした以外は粘着剤Cの合成と同様にして粘着剤E、Gの酢酸エチル溶液を得て、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0059】
(ブリード剤Aの合成)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器を用意した。この反応器内に、モノマーとして2-エチルヘキシルアクリレート39.9重量部、シリコーンマクロモノマー(信越化学社製、KF-2012、メタクリロイル変性シリコーン、重量平均分子量4600)60重量部、アクリル酸0.1重量部、n-ドデカンチオール0.2重量部、酢酸エチル80重量部を加えた。この反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(富士フイルム和光純薬社製、V-60)0.1重量部を添加し、還流下で重合を開始させた。次に、重合開始から1時間後にも、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(富士フイルム和光純薬社製、V-60)を0.1重量部ずつ添加し、更に、重合開始から6時間後に2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(富士フイルム和光純薬社製、V-60)を0.2重量部添加して重合反応を継続させた。そして、重合開始から7時間後に、シリコーン系グラフト共重合体であるブリード剤Aの酢酸エチル溶液を得た。粘着剤Aの合成と同様にして、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。また、酸価は、モノマーの仕込み量より算出した。更に、ブリード剤Aのガラス転移温度(Tg)を、次のFOX式により求められる理論計算値として求めた。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
(式中、Tgは、ブリード剤Aのガラス転移温度(K)であり、W1、W2、・・・、Wnは、各モノマーの重量分率であり、Tg1、Tg2、・・・、Tgnは、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度である)。上記計算に用いるホモポリマーのガラス転移温度は、文献に記載されている値を用いることができる。
【0060】
(ブリード剤B~Xの合成)
モノマーの組成を表2、3の通りとした以外はブリード剤Aの合成と同様にして、シリコーン系グラフト共重合体であるブリード剤B~Xの酢酸エチル溶液を得て、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0061】
(実施例1)
得られた粘着剤A含有溶液に、その不揮発分100重量部に対して酢酸エチルを加えて攪拌し、表4に示した種類及び配合量でブリード剤Aと、エポキシ系架橋剤とを添加して攪拌し、不揮発分30重量%の粘着剤組成物の酢酸エチル溶液を得た。
得られた粘着剤組成物の酢酸エチル溶液を、片面にコロナ処理を施した厚さ50μmの透明なポリエチレンナフタレートフイルムのコロナ処理面上に、乾燥皮膜の厚さが40μmとなるようにドクターナイフで塗工し、110℃、5分間加熱して塗工溶液を乾燥させた。その後、40℃、3日間静置養生を行い、粘着テープを得た。なお、エポキシ系架橋剤としては、三菱ガス化学社製、テトラッドCを用いた。
【0062】
(25℃対水接触角の測定)
JIS R 3257:1999に準じ、接触角測定装置(KSV社製、CAM 200)を用いて対水接触角を測定した。
具体的には、粘着テープを25mm幅に裁断し測定に用いた。室温25℃、湿度40%の環境下で水平に置いた粘着テープの粘着剤層表面へ水滴2μL(超純水)を滴下した。滴下してから5秒後の純水と粘着剤層表面とのなす角度を対水接触角とした。
【0063】
(加熱後対水接触角の測定)
粘着テープを25mm幅に裁断した。裁断した粘着テープをガラス被着体(松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨 No.2)に室温23℃、相対湿度50%で、2kgの圧着ゴムローラーを用いて10mm/SECの速度で貼り付けた。次いで、220℃、120分の加熱処理を1回行った。放冷後、粘着テープをガラス被着体から剥離し、JIS R 3257:1999に準じ、接触角測定装置(KSV社製、CAM 200)を用いて対水接触角を測定した。
具体的には、室温25℃、湿度40%の環境下で水平に置いた粘着テープの粘着剤層表面へ水滴2μL(超純水)を滴下した。滴下してから5秒後の純水と粘着剤層表面とのなす角度を対水接触角とした。
【0064】
(せん断貯蔵弾性率の測定)
動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、DVA-200)を用いて動的粘弾性測定のせん断モード、角周波数10Hz、昇温速度5℃/minで-50℃から200℃まで測定を行い、得られた測定値のうち、25℃での貯蔵弾性率の値を測定した。
【0065】
(実施例2~25、比較例1~12)
用いる粘着剤、ブリード剤、架橋剤の種類及び配合量を表4~6の通りとした以外は実施例1と同様にして粘着テープを製造し、加熱前対水接触角、加熱後対水接触角及びせん断貯蔵弾性率を測定した。なお、イソシアネート系架橋剤としては東ソー社製、コロネートLを用いた。エポキシ変性シリコーンとしては、信越化学社製、X-22-163Cを用いた。また、イソシアネート系架橋剤としては、日本ポリウレタン工業社製、コロネートL45を用いた。
【0066】
<評価>
実施例及び比較例で得た粘着テープについて、以下の方法により評価を行った。結果を表4~6に示した。
【0067】
(初期粘着力の評価)
粘着テープを25mm幅に裁断した。裁断した粘着テープをガラス被着体(松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨 No.2)に、室温23℃、相対湿度50%で、2kgの圧着ゴムローラーを用いて10mm/SECの速度で貼り付けた。30分間放置した後、JIS Z0237に準拠し、表面保護フイルムを300mm/minの速度で引き剥がして180度剥離強度を測定し、これを初期粘着力とした。
【0068】
(加熱後粘着力の評価)
粘着テープを25mm幅に裁断した。裁断した粘着テープをガラス被着体(松浪ガラス工業社製、大型スライドガラス白縁磨 No.2)に、室温23℃、相対湿度50%で、2kgの圧着ゴムローラーを用いて10mm/SECの速度で貼り付けた。次いで、220℃、120分の加熱処理を1回行った。放冷後、JIS Z0237に準拠し、表面保護フイルムを300mm/minの速度で引き剥がして180度剥離強度を測定し、これを加熱後粘着力とした。
【0069】
(汚染性の評価)
加熱後粘着力の測定後のガラス板を目視にて観察し、下記基準で残渣を評価した。
A:残渣なし
B:一部に残渣あり(残渣がある部位の占める面積が10%以下)
C:全面に残渣あり(残渣がある部位の占める面積が10%を超える)
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、高温による接着亢進を低減できるとともに、光を透過しない材料にも用いることができる粘着テープを提供することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記粘着剤層は、動的粘弾性測定で評価した25℃におけるせん断貯蔵弾性率が4.0×104~2.0×106Paであり、
前記粘着剤層は、前記粘着テープの前記粘着剤層側をガラスに貼り付けて220℃で120分間加熱し、剥離した後の対水接触角が80°以上であり、
前記粘着剤層は、アクリル系粘着剤を含有する
粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層は、前記粘着テープの前記粘着剤層側をガラスに貼り付けて220℃で加熱し、剥離した後の対水接触角が110°以下である、請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層は25℃における対水接触角が103°以下である、請求項1又は2記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層を構成する粘着剤は非硬化型粘着剤である、請求項1、2又は3記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層は、架橋性官能基を有する粘着剤と、架橋性官能基を有するシリコーン系グラフト共重合体と、前記粘着剤及び前記シリコーン系グラフト共重合体と反応して架橋させることができる架橋剤とを含有する、請求項1、2、3又は4記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記シリコーン系グラフト共重合体は、酸価が0.5mgKOH/g以上、20mgKOH/g以下である、請求項1、2、3、4又は5記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記シリコーン系グラフト共重合体は、カルボキシル基含有モノマー0.1~2.5重量%、シリコーンマクロモノマー1~90重量%を含有する混合モノマーを共重合してなるものであり、重量平均分子量が40万以下である、請求項5、又は6記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記架橋剤はエポキシ系架橋剤である、請求項5記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記シリコーン系グラフト共重合体の含有量は、粘着剤100重量部に対して0.1~30重量部である、請求項5、6、又は7記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記粘着剤は、分子量分布(Mw/Mn)1.05~2.5のアクリル系ポリマーである、請求項5、8、又は9記載の粘着テープ。
【請求項11】
電子部品の製造における請求項1~10のいずれかに記載の粘着テープの使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
(実施例2~21、比較例1~12)
用いる粘着剤、ブリード剤、架橋剤の種類及び配合量を表4~6の通りとした以外は実施例1と同様にして粘着テープを製造し、加熱前対水接触角、加熱後対水接触角及びせん断貯蔵弾性率を測定した。なお、イソシアネート系架橋剤としては東ソー社製、コロネートLを用いた。エポキシ変性シリコーンとしては、信越化学社製、X-22-163Cを用いた。また、イソシアネート系架橋剤としては、日本ポリウレタン工業社製、コロネートL45を用いた。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】