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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155306
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】撮像装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20231013BHJP
   H04N 25/76 20230101ALI20231013BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H04N25/76
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133344
(22)【出願日】2023-08-18
(62)【分割の表示】P 2020533431の分割
【原出願日】2019-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2018143491
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町田 貴志
(57)【要約】
【課題】電荷が光電変換部から転送先へ円滑に転送される撮像装置を提供する。
【解決手段】この撮像装置は、表面とその表面と反対側の裏面とを含む半導体層と、その半導体層に埋設され受光量に応じた電荷を光電変換により生成する光電変換部と、半導体層の表面から裏面へ向けてそれぞれ延在する第1の部分および第2の部分を含み電荷を光電変換部から同一の転送先へ転送する転送部とを備える。第1の部分は、表面と裏面との間に第1の底部を有し、表面から第1の底部へ至るまで第1の長さを有する。第2の部分は、表面と裏面との間に第2の底部を有し、表面から第2の底部へ至るまで第1の長さよりも短い第2の長さを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と、前記表面と反対側の裏面とを含む半導体層と、
前記半導体層に埋設され、受光量に応じた電荷を光電変換により生成する光電変換部と、
前記半導体層の前記表面から前記裏面へ向けてそれぞれ延在する第1の部分および第2の部分を含み、前記電荷を前記光電変換部から同一の転送先へ転送する転送部と
を備え、
前記第1の部分は、前記表面と前記裏面との間に第1の底部を有し、前記表面から前記第1の底部へ至るまで第1の長さを有し、
前記第2の部分は、前記表面と前記裏面との間に第2の底部を有し、前記表面から前記第2の底部へ至るまで前記第1の長さよりも短い第2の長さを有する
光検出装置。
【請求項2】
前記転送先は、電荷電圧変換部である
請求項1記載の光検出装置。
【請求項3】
前記転送先は、電荷保持部である
請求項1記載の光検出装置。
【請求項4】
前記転送先は、電源である
請求項1記載の光検出装置。
【請求項5】
前記転送先は、前記第1の部分と前記第2の部分との間に位置する
請求項1記載の光検出装置。
【請求項6】
前記表面と平行な面内において、
前記第2の部分と前記転送先との距離は、前記第1の部分と前記転送先との距離よりも短い
請求項1記載の光検出装置。
【請求項7】
前記転送部は、互いに独立駆動可能に構成された第1のトランジスタおよび第2のトランジスタを有する
請求項1記載の光検出装置。
【請求項8】
前記第1のトランジスタが前記第1の部分を含み、
前記第2のトランジスタが前記第2の部分を含む
請求項7記載の光検出装置。
【請求項9】
前記第1のトランジスタが前記第1の部分および前記第2の部分を含み、
前記第2のトランジスタが、前記第1のトランジスタと前記転送先との間に位置する
請求項7記載の光検出装置。
【請求項10】
オン状態の前記第1のトランジスタをオフ状態としたのち、オン状態の前記第2のトランジスタをオフ状態とする制御部をさらに有する
請求項7記載の光検出装置。
【請求項11】
前記転送部は、一のトランジスタを有し、
前記一のトランジスタは、前記第1の部分と、前記第2の部分と、第3の部分とを含み、
前記表面と平行な面内において、前記第2のトレンチゲートと前記転送先との第2の距離は、前記第1の部分と前記転送先との第1の距離よりも短く、前記第3の部分と前記転送先との第3の距離は、前記第1の距離よりも短い
請求項1記載の光検出装置。
【請求項12】
前記転送部は、一のトランジスタを有し、
前記一のトランジスタは、前記第1の部分と、前記第2の部分と、第3の部分とを含み、
前記表面と平行な面内において、前記第2の部分と前記転送先との第2の距離は、前記第1の部分と前記転送先との第1の距離よりも短く、前記第3の部分と前記転送先との第3の距離は、前記第2の距離よりも長い
請求項1記載の光検出装置。
【請求項13】
前記第1の部分の最大径は、前記第2の部分の最大径よりも大きい
請求項1記載の光検出装置。
【請求項14】
前記第1の部分の径および前記第2の部分の径は、それぞれ、前記表面から前記裏面へ向かうほど細くなっている部分を有する
請求項1記載の光検出装置。
【請求項15】
光検出装置を備えた電子機器であって、
前記光検出装置は、
表面と、前記表面と反対側の裏面とを含む半導体層と、
前記半導体層に埋設され、受光量に応じた電荷を光電変換により生成する光電変換部と、
前記半導体層の前記表面から前記裏面へ向けてそれぞれ延在する第1の部分および第2の部分を含み、前記電荷を前記光電変換部から同一の転送先へ転送する転送部と
を備え、
前記第1の部分は、前記表面と前記裏面との間に第1の底部を有し、前記表面から前記第1の底部へ至るまで第1の長さを有し、
前記第2の部分は、前記表面と前記裏面との間に第2の底部を有し、前記表面から前記第2の底部へ至るまで前記第1の長さよりも短い第2の長さを有する
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光電変換を行うことで撮像を行う撮像装置およびその撮像装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、半導体層に設けられた光電変換部において生成される信号電荷を、その半導体層に埋設されたゲート電極によりフローティングディフュージョン(floating diffusion)へ転送するようにした固体撮像装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-84785号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、このような固体撮像装置では、電荷が光電変換部から転送先へ円滑に転送されることが望ましい。
【0005】
したがって、動作信頼性に優れる撮像装置およびそのような撮像装置を備えた電子機器を提供することが望まれる。
【0006】
本開示の一実施形態としての撮像装置は、表面と、その表面と反対側の裏面とを含む半導体層と、その半導体層に埋設され、受光量に応じた電荷を光電変換により生成する光電変換部と、半導体層の表面から裏面へ向けて光電変換部へ至るまでそれぞれ延在する第1のトレンチゲートおよび第2のトレンチゲートを含み、電荷を光電変換部から第1のトレンチゲートおよび第2のトレンチゲートをそれぞれ介して同一の転送先へ転送する転送部とを備える。第1のトレンチゲートは、表面から光電変換部へ至るまで第1の長さを有し、第2のトレンチゲートは、表面から光電変換部へ至るまで第1の長さよりも短い第2の長さを有する。
また、本開示の一実施形態としての電子機器は、上記撮像装置を備えたものである。
【0007】
本開示の一実施形態としての撮像装置および電子機器では、上記の構成により、転送部がオフの状態において、光電変換部にポテンシャルディップが存在していたとしても、転送部がオンの状態ではそのポテンシャルディップが解消される。
【0008】
本開示の一実施形態としての撮像装置および電子機器によれば、電荷が光電変換部から転送先へ円滑に転送され、優れた撮像性能を実現できる。
なお、本開示の効果はこれに限定されるものではなく、以下に記載のいずれの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本開示の第1の実施の形態に係る撮像装置の機能の構成例を示すブロック図である。
図1B】第1の実施の形態の第1の変形例としての撮像装置の機能の構成例を示すブロック図である。
図1C】第1の実施の形態の第2の変形例としての撮像装置の機能の構成例を示すブロック図である。
図2図1Aに示した撮像装置における一のセンサ画素の回路構成を表す回路図である。
図3図1Aに示した撮像装置における一部のセンサ画素の構成を模式的に表す平面図である。
図4図1Aに示した撮像装置における一部のセンサ画素の構成を模式的に表す断面図、および深さ方向のポテンシャル状態を表す模式図である。
図5】第1の実施の形態の第3の変形例としてのセンサ画素を表す平面図である。
図6】第1の実施の形態の第4の変形例としてのセンサ画素を表す平面図である。
図7】第1の実施の形態の第5の変形例としてのセンサ画素を表す平面図である。
図8】第1の実施の形態の第6の変形例としてのセンサ画素を表す平面図である。
図9A】本開示の第2の実施の形態としてのセンサ画素を表す平面図である。
図9B図9Aに示したセンサ画素の回路構成を表す回路図である。
図10A】本開示の第3の実施の形態としてのセンサ画素を表す平面図である。
図10B図10Aに示したセンサ画素の回路構成を表す回路図である。
図11A】本開示の第4の実施の形態としてのセンサ画素を表す平面図である。
図11B図11Aに示したセンサ画素の回路構成を表す回路図である。
図11C図11Aに示したセンサ画素の構成を模式的に表す断面図である。
図12A図11Aに示したセンサ画素の各駆動信号の波形を表す第1のタイムチャートである。
図12B図11Aに示したセンサ画素の各駆動信号の波形を表す第2のタイムチャートである。
図12C図11Aに示したセンサ画素の各駆動信号の波形を表す第3のタイムチャートである。
図13A】第4の実施の形態の第1の変形例としてのセンサ画素を表す平面図である。
図13B】第4の実施の形態の第2の変形例としてのセンサ画素を表す平面図である。
図13C】第4の実施の形態の第3の変形例としてのセンサ画素を表す平面図である。
図13D】第4の実施の形態の第4の変形例としてのセンサ画素を表す平面図である。
図14】電子機器の全体構成例を表す概略図である。
図15】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図16】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
図17】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図18】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
転送部における一の縦型トランジスタが互いに深さの異なる2つのトレンチゲートを有する固体撮像装置の例。
2.第1の実施の形態の変形例
3.第2の実施の形態
電荷の転送先としての電源と、排出トランジスタとをさらに有する固体撮像装置の例。4.第3の実施の形態
電荷保持部をさらに有する固体撮像装置の例。
5.第4の実施の形態
転送部が互いに独立駆動可能な2つの縦型トランジスタを有する固体撮像装置の例。
6.第4の実施の形態の変形例
7.電子機器への適用例
8.移動体への適用例
9.内視鏡手術システムへの応用例
10.その他の変形例
【0011】
<1.第1の実施の形態>
[固体撮像装置101Aの構成]
図1Aは、本技術の第1の実施の形態に係る固体撮像装置101Aの機能の構成例を示すブロック図である。
【0012】
固体撮像装置101Aは、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの、いわゆるグローバルシャッタ方式の裏面照射型イメージセンサである。固体撮像装置101Aは、被写体からの光を受光して光電変換し、画像信号を生成することで画像を撮像するものである。
【0013】
グローバルシャッタ方式とは、基本的には全画素同時に露光を開始し、全画素同時に露光を終了するグローバル露光を行う方式である。ここで、全画素とは、画像に現れる部分の画素の全てということであり、ダミー画素等は除外される。また、時間差や画像の歪みが問題にならない程度に十分小さければ、全画素同時ではなく、複数行(例えば、数十行)単位でグローバル露光を行いながら、グローバル露光を行う領域を移動する方式もグローバルシャッタ方式に含まれる。また、画像に表れる部分の画素の全てでなく、所定領域の画素に対してグローバル露光を行う方式もグローバルシャッタ方式に含まれる。
【0014】
裏面照射型イメージセンサとは、被写体からの光を受光して電気信号に変換するフォトダイオード等の光電変換部が、被写体からの光が入射する受光面と、各画素を駆動させるトランジスタ等の配線が設けられた配線層との間に設けられている構成のイメージセンサをいう。
【0015】
固体撮像装置101Aは、例えば、画素アレイ部111、垂直駆動部112、カラム信号処理部113、データ格納部119、水平駆動部114、システム制御部115、および信号処理部118を備えている。
【0016】
固体撮像装置101Aでは、半導体層11(後出)上に画素アレイ部111が形成される。垂直駆動部112、カラム信号処理部113、データ格納部119、水平駆動部114、システム制御部115、および信号処理部118などの周辺回路は、例えば、画素アレイ部111と同じ半導体層11上に形成される。
【0017】
画素アレイ部111は、被写体から入射した光の量に応じた電荷を生成して蓄積する光電変換部51(後出)を含むセンサ画素110を複数有する。センサ画素110は、図1に示したように、横方向(行方向)および縦方向(列方向)のそれぞれに配列される。画素アレイ部111では、行方向に一列に配列されたセンサ画素110からなる画素行ごとに、画素駆動線116が行方向に沿って配線され、列方向に一列に配列されたセンサ画素110からなる画素列ごとに、垂直信号線(VSL)117が列方向に沿って配線されている。
【0018】
垂直駆動部112は、シフトレジスタやアドレスデコーダなどからなる。垂直駆動部112は、複数の画素駆動線116を介して複数のセンサ画素110に対し信号等をそれぞれ供給することにより、画素アレイ部111における複数のセンサ画素110の全てを同時に駆動させ、または画素行単位で駆動させる。
【0019】
垂直駆動部112は、例えば読み出し走査系と掃き出し走査系との2つの走査系を有する。読み出し走査系は、単位画素から信号を読み出すために、画素アレイ部111の単位画素を行単位で順に選択走査する。掃き出し走査系は、読み出し走査系によって読み出し走査が行われる読み出し行に対し、その読み出し走査よりもシャッタスピードの時間分だけ先行して掃き出し走査を行う。
【0020】
この掃き出し走査系による掃き出し走査により、読み出し行の単位画素の光電変換部51から不要な電荷が掃き出される。これをリセットという。そして、この掃き出し走査系による不要電荷の掃き出し、すなわちリセットにより、いわゆる電子シャッタ動作が行われる。ここで、電子シャッタ動作とは、光電変換部51の光電荷を捨てて、新たに露光を開始する、すなわち光電荷の蓄積を新たに開始する動作のことをいう。
【0021】
読み出し走査系による読み出し動作によって読み出される信号は、その直前の読み出し動作または電子シャッタ動作以降に入射した光量に対応する。直前の読み出し動作による読み出しタイミングまたは電子シャッタ動作による掃き出しタイミングから、今回の読出し動作による読出しタイミングまでの期間が、単位画素における光電荷の蓄積時間、すなわち露光時間となる。
【0022】
垂直駆動部112によって選択走査された画素行の各単位画素から出力される信号は、垂直信号線117の各々を通してカラム信号処理部113に供給されるようになっている。カラム信号処理部113は、画素アレイ部111の画素列ごとに、選択行の各単位画素から垂直信号線117を通して出力される信号に対して所定の信号処理を行うとともに、信号処理後の画素信号を一時的に保持するようになっている。
【0023】
具体的には、カラム信号処理部113は、例えばシフトレジスタやアドレスデコーダなどからなり、ノイズ除去処理、相関二重サンプリング処理、アナログ画素信号のA/D(Analog/Digital)変換A/D変換処理等を行い、ディジタル画素信号を生成する。カラム信号処理部113は、生成した画素信号を信号処理部118に供給する。
【0024】
水平駆動部114は、シフトレジスタやアドレスデコーダなどによって構成され、カラム信号処理部113の画素列に対応する単位回路を順番に選択するようになっている。この水平駆動部114による選択走査により、カラム信号処理部113において単位回路ごとに信号処理された画素信号が順番に信号処理部118に出力されるようになっている。
【0025】
システム制御部115は、各種のタイミング信号を生成するタイミングジェネレータ等からなる。システム制御部115は、タイミングジェネレータで生成されたタイミング信号に基づいて、垂直駆動部112、カラム信号処理部113、および水平駆動部114の駆動制御を行なうものである。
【0026】
信号処理部118は、必要に応じてデータ格納部119にデータを一時的に格納しながら、カラム信号処理部113から供給された画素信号に対して演算処理等の信号処理を行ない、各画素信号からなる画像信号を出力するものである。
【0027】
データ格納部119は、信号処理部118での信号処理にあたり、その信号処理に必要なデータを一時的に格納するようになっている。
【0028】
なお、本技術の固体撮像装置は図1Aに示した固体撮像装置101Aに限定されるものではなく、例えば図1Bに示した固体撮像装置101Bや図1Cに示した固体撮像装置101Cのような構成を有していてもよい。図1Bは、本技術の第1の実施の形態に係る第1の変形例としての固体撮像装置101Bの機能の構成例を示すブロック図である。図1Cは、本技術の第1の実施の形態に係る第2の変形例としての固体撮像装置101Cの機能の構成例を示すブロック図である。
【0029】
図1Bの固体撮像装置101Bでは、カラム信号処理部113と水平駆動部114との間にデータ格納部119が配設され、カラム信号処理部113から出力される画素信号が、データ格納部119を経由して信号処理部118に供給されるようになっている。
【0030】
また、図1Cの固体撮像装置101Cは、カラム信号処理部113と水平駆動部114との間にデータ格納部119と信号処理部118とを並列に配設するようにしたものである。固体撮像装置101Cでは、カラム信号処理部113が画素アレイ部111の列ごと、あるいは画素アレイ部111の複数列ごとにアナログ画素信号をディジタル画素信号に変換するA/D変換を行うようになっている。
【0031】
[センサ画素110の構成]
(回路構成例)
次に、図2を参照して、図1Aの画素アレイ部111に設けられたセンサ画素110の回路構成例について説明する。図2は、画素アレイ部111を構成する複数のセンサ画素110のうちの1つのセンサ画素110の回路構成例を示している。
【0032】
図2に示した例では、画素アレイ部111におけるセンサ画素110は、光電変換部(PD)51、転送トランジスタ(TG)52、電荷電圧変換部(FD)53、リセットトランジスタ(RST)54、増幅トランジスタ(AMP)55、および選択トランジスタ(SEL)56を含んでいる。
【0033】
この例では、TG52、RST54、AMP55、およびSEL56は、いずれもN型のMOSトランジスタである。これらTG52、RST54、AMP55、およびSEL56における各ゲート電極には、駆動信号S52,S54,S56がそれぞれシステム制御部115の駆動制御に基づき垂直駆動部112および水平駆動部114により供給される。駆動信号S52,S54,S56は、高レベルの状態がアクティブ状態(オンの状態)となり、低レベルの状態が非アクティブ状態(オフの状態)となるパルス信号である。なお、以下、駆動信号をアクティブ状態にすることを、駆動信号をオンするとも称し、駆動信号を非アクティブ状態にすることを、駆動信号をオフするとも称する。
【0034】
PD51は、例えばPN接合のフォトダイオードからなる光電変換素子であり、被写体からの光を受光して、その受光量に応じた電荷を光電変換により生成し、蓄積するように構成されている。
【0035】
TG52は、PD51とFD53との間に接続されており、TG52のゲート電極に印加される駆動信号S52に応じて、PD51に蓄積されている電荷をFD53に転送するように構成されている。TG52は、本開示の「転送部」に対応する一具体例である。
【0036】
RST54は、電源VDDに接続されたドレインと、FD53に接続されたソースとを有している。RST54は、そのゲート電極に印加される駆動信号S54に応じて、FD53を初期化、すなわちリセットする。例えば、駆動信号S58がオンし、RST58がオンすると、FD53の電位が電源VDDの電圧レベルにリセットされる。すなわち、FD53の初期化が行われる。
【0037】
FD53は、TG52を介してPD51から転送されてきた電荷を電気信号(例えば、電圧信号)に変換して出力する浮遊拡散領域である。FD53には、RST54が接続されるとともに、AMP55およびSEL56を介して垂直信号線VSLが接続されている。
【0038】
(平面構成例および断面構成例)
次に、図3および図4を参照して、図1Aの画素アレイ部111に設けられたセンサ画素110の平面構成例および断面構成例について説明する。図3は、画素アレイ部111を構成する複数のセンサ画素110のうちの1つのセンサ画素110の平面構成例を示している。また、図4の(A)は、1つのセンサ画素110の断面構成例を示しており、図3に示したIV-IV切断線に沿った矢視方向の断面に相当する。但し、図4の(A)において、位置P1から位置P2の間はX軸方向に沿ったXZ断面を示し、それ以外はY軸方向に沿ったYZ断面を示している。
【0039】
図3および図4の(A)に示した例では、PD51がセンサ画素110の中央の領域を占めており、その周辺の領域にRST54、VDD、AMP55、SEL56、FD57、VSSおよびVSL117が設けられている。TG52およびFD53は、Z軸方向(厚さ方向あるいは深さ方向ともいう。)においてPD51と重なり合う位置に設けられて
いる。FD57はメタル層によりFD53と接続されている。VSSはグラウンド端子であり、通常は0Vに設定される。
【0040】
図3および図4の(A)に示したように、センサ画素110は、Si(シリコン)などの半導体材料により形成された半導体層11と、PD51と、転送部としてのTG52とを備えている。さらに、TG52と半導体層11およびPD51との間には、酸化物などからなる絶縁層13が設けられている。半導体層11は、表面11S1と、その表面11S1と反対側の裏面11S2とを含んでいる。半導体層11には、PD51を取り囲むように遮光部12が設けられていてもよい。
【0041】
TG52は、トレンチゲート521およびトレンチゲート522を含んでいる。TG52は、PD51において生成されて蓄積された電荷を、PD51からトレンチゲート521およびトレンチゲート522をそれぞれ介して同一の転送先、すなわちFD53へ転送するようになっている。トレンチゲート521およびトレンチゲート522は、図4の(A)に示したように、半導体層11の表面11S1から裏面11S2へ向けてPD51へ至るまでそれぞれ延在している。
【0042】
トレンチゲート521は、表面11S1からPD51へ至るまで長さL521を有している。トレンチゲート522は、表面11S1からPD51へ至るまで長さL521よりも短い長さL522を有する(L521>L522)。
【0043】
さらに、トレンチゲート521の径D521およびトレンチゲート522の径D522は、それぞれ、表面11S1から裏面11S2へ向かうほど細くなっている。また、トレンチゲート521の径D521の最大値は、トレンチゲート522の径D522の最大値よりも大きい。なお、図4の(A)に示した例では、トレンチゲート521の径D521およびトレンチゲート522の径D522が、いずれも最上部において最大となっている。
【0044】
(センサ画素110の動作)
次に、図2および図4の(A)に加えて、図4の(B)および図4の(C)を参照して、センサ画素110の動作について説明する。センサ画素110では、被写体からの光を受光したPD51において生成および蓄積された電荷を読み出す際、システム制御部115の駆動制御に基づき、TG52への駆動信号S52をオンにする。これにより、PD51に蓄積された電荷は、PD51からトレンチゲート521およびトレンチゲート522を介して、FD53へ転送されることとなる。なお、PD51における深さ方向(Z軸方向)のポテンシャルは、より深い位置、すなわち裏面11S2に近い位置から、より浅い位置、すなわち表面11S1に近い位置へと向かうに従い、徐々に高くなるような勾配を有している。
【0045】
ところで、現実には、PD51では、その深さ方向の一部においてポテンシャルディップが発生する場合がある。ポテンシャルディップとは、それ自身の直上のポテンシャルおよび直下のポテンシャルと比較して低いポテンシャルを有する箇所である。特に、PD51の深さ方向の寸法を拡大すると、深さ方向におけるポテンシャル勾配が緩やかになり、ポテンシャルディップも生じやすくなる傾向にある。ここで、仮にTG52が1本のトレンチゲート521のみを有しているとすれば、PD51における厚さ方向(Z軸方向)のポテンシャル状態は例えば図4の(B)に示した状態となる。図4の(B)は、TG52が1本のトレンチゲート521のみを有していると仮定した場合のPD51における深さ方向(Z軸方向)のポテンシャル状態を表す模式図であり、図4の(A)の断面に対応する。仮にTG52が1本のトレンチゲート521のみを有するとした場合、図4の(B)に示したように、PD51では、深さ方向の一部にポテンシャルディップ(破線で囲んだ部分)がそのまま残存する場合がある。あるいは、TG52が互いに同じ長さのトレンチゲート521およびトレンチゲート522を有する場合も同様である。
【0046】
これに対し、本実施の形態のセンサ画素110では、TG52が、比較的長いトレンチゲート521と、比較的短いトレンチゲート522とを有するようにしている。このため、深さ方向の途中、すなわち、トレンチゲート521のみが存在する領域からトレンチゲート521およびトレンチゲート522の双方が存在する領域へ移行する際に、PD51のポテンシャルがTG52から受ける変調力が増加することとなる。その結果、PD51における厚さ方向(Z軸方向)のポテンシャル状態は例えば図4の(C)に示した状態となり、深さ方向の一部に存在したポテンシャルディップが解消されることとなる。なお、図4の(C)は、PD51における深さ方向(Z軸方向)のポテンシャル状態を表す模式図であり、図4の(A)の断面に対応する。
【0047】
[固体撮像装置101Aの効果]
このように、本実施の形態の固体撮像装置101Aでは、PD51からの電荷の転送を行うTG52が、長さL521を有するトレンチゲート521と、長さL521よりも短い長さL522を有するトレンチゲート522とを有するようにした。このため、TG52がオフの状態において、PD51に意図しないポテンシャルディップが存在していたとしても、あるいは、飽和電荷量の増加を目的としてPD51に意図しないポテンシャルディップを発生させたとしても、TG52がオンの状態ではそのポテンシャルディップを解消することができる。このため、半導体層11の厚さを大きくした場合であっても、すなわち、Z軸方向に沿ったポテンシャルの勾配が緩やかになったとしても、PD51からFD53への電荷の転送を円滑に行うことができる。よって、固体撮像装置101Aの動作信頼性の向上が期待できる。
【0048】
また、本実施の形態の固体撮像装置101Aでは、トレンチゲート521の径D521およびトレンチゲート522の径D522は、それぞれ、表面11S1から裏面11S2へ向かうほど細くなっている。また、トレンチゲート521の径D521の最大値は、トレンチゲート522の径D522の最大値よりも大きい。このため、より大きな長さL521を有するトレンチゲート521と、長さL521よりも短い長さL522を有するトレンチゲート522とを正確に形成するのに有利な構造となっている。
【0049】
<2.第1の実施の形態の変形例>
(第3の変形例)
[センサ画素110Aの構成]
図5は、第1の実施の形態の第3の変形例としてのセンサ画素110Aを表す平面図である。なお、図5は第1の実施の形態の図3に対応する。
【0050】
本変形例としてのセンサ画素110Aは、図5に示したように、電荷の転送先であるFD53が、トレンチゲート521とトレンチゲート522との間に位置するようにしたものである。この点を除き、他は上記第1の実施の形態としてのセンサ画素110と実質的に同じ構成を有する。
【0051】
[センサ画素110Aの作用効果]
このように、本変形例としてのセンサ画素110Aによれば、上記第1の実施の形態に係るセンサ画素110と比較して、トレンチゲート521とトレンチゲート522との間に転送先であるFD53を配置するようにしている。トレンチゲート521とトレンチゲート522との間の部分においてはバックバイアス効果が無くなり、TG52から受ける変調力が最も高くなる。そのため、転送される電荷は必然的にトレンチゲート521とトレンチゲート522との間を通って表面11S1まで転送されることとなる。その表面11Sの近傍に電荷の転送先であるFD53が存在することにより、PD51からFD53への電荷の転送効率が向上する。
【0052】
(第4の変形例)
[センサ画素110Bの構成]
図6は、第1の実施の形態の第4の変形例としてのセンサ画素110Bを表す平面図である。なお、図6は第1の実施の形態の図3に対応する。
【0053】
本変形例としてのセンサ画素110Bは、図6に示したように、TG52がトレンチゲート521およびトレンチゲート522に加えて、第3のトレンチゲートとしてのトレンチゲート523をさらに含むようにしたものである。また、トレンチゲート521~523は、いずれもXY平面に沿った断面が略正方形をなしている。さらに、XY面内において、トレンチゲート522と転送先であるFD53との距離は、トレンチゲート521とFD53との距離よりも短く、トレンチゲート523とFD53との距離よりも短い。これらの点を除き、他は上記第1の実施の形態としてのセンサ画素110と実質的に同じ構成を有する。
【0054】
[センサ画素110Bの作用効果]
このように、本変形例としてのセンサ画素110Bによれば、トレンチゲート523をさらに設けるようにしたので、センサ画素110に比べ、トレンチゲートの数が多い。このため、PD51のうち水平面内(XY面内)においてTG52からより離れた位置にある領域のポテンシャルに対しても変調力を及ぼすことができる。その結果、PD51からFD53への電荷の転送をより円滑に実施できる。
【0055】
(第5の変形例)
[センサ画素110Cの構成]
図7は、第1の実施の形態の第5の変形例としてのセンサ画素110Cを表す平面図である。なお、図7は第1の実施の形態の図3に対応する。
【0056】
本変形例としてのセンサ画素110Cは、図7に示したように、TG52がトレンチゲート521およびトレンチゲート522に加えて、第3のトレンチゲートとしてのトレンチゲート523をさらに含むようにしたものである。また、トレンチゲート521~523は、いずれもXY平面に沿った断面が略正方形をなしている。さらに、XY面内において、トレンチゲート521と転送先であるFD53との距離は、トレンチゲート522とFD53との距離よりも長く、トレンチゲート523とFD53との距離よりも長い。これらの点を除き、他は上記第1の実施の形態としてのセンサ画素110と実質的に同じ構成を有する。
【0057】
[センサ画素110Cの作用効果]
このように、本変形例としてのセンサ画素110Cによれば、トレンチゲート523をさらに設けるようにしたので、センサ画素110に比べてトレンチゲートの数が多い。このため、PD51のうち水平面内(XY面内)においてTG52からより離れた位置にある領域のポテンシャルに対しても変調力を及ぼすことができる。その結果、PD51からFD53への電荷の転送をより円滑に実施できる。また、本変形例としてのセンサ画素110Cでは、3本のトレンチゲートのうちの2本を、電荷の転送先であるFD53の近傍に配置するようにした。このため、図6に示した第1の実施の形態の第4の変形例としてのセンサ画素110Bと比較して、PD51の電荷をより効率的にFD53へ転送することができる。より効率的にPD51の電荷を転送できる良好な転送経路、すなわちトレンチゲート522とトレンチゲート523との間に挟まれた領域部分がFD53の近傍に配置されることとなるからである。
【0058】
(第6の変形例)
[センサ画素110Dの構成]
図8は、第1の実施の形態の第6の変形例としてのセンサ画素110Dを表す平面図である。なお、図8は第1の実施の形態の図3に対応する。
【0059】
本変形例としてのセンサ画素110Dは、図8に示したように、トレンチゲート521,522が、いずれもXY平面に沿った断面が略正方形をなしている。この点を除き、他は上記第1の実施の形態としてのセンサ画素110と実質的に同じ構成を有する。
【0060】
[センサ画素110Dの作用効果]
このように、本変形例としてのセンサ画素110Dによれば、上記第1の実施の形態に係るセンサ画素110と比較して、水平面内(XY面内)におけるTG52の占有面積を縮小することができる。よって、水平面内(XY面内)におけるPD51の受光可能面積を拡大することができる。
【0061】
<3.第2の実施の形態>
図9Aは、本技術の第2の実施の形態に係るセンサ画素210の平面構成例を示している。また、図9Bは、センサ画素210の回路構成例を示している。
【0062】
本実施の形態のセンサ画素210は、PD51の電荷の転送先として、FD53に加えてVDD2をさらに設けると共に、PD51とVDD2との間に排出トランジスタ(OFG)58をさらに設けるようにしたものである。これらの点を除き、他は上記第1の実施の形態としてのセンサ画素110と実質的に同じ構成を有する。
【0063】
OFG58は、電源VDD2に接続されたドレインと、TG52とPD51とを結ぶ配線に接続されたソースとを有している。OFG58は、そのゲート電極に印加される駆動信号S58に応じて、PD51を初期化、すなわちリセットする。PD51をリセットする、とは、PD51を空乏化するという意味である。
【0064】
また、OFG58は、TG52と電源VDD2との間にオーバーフローパスを形成し、PD51から溢れた電荷を電源VDD2に排出するようになっている。このように、本実施の形態のセンサ画素210では、OFG58が直接PD51をリセットすることができ、FD保持型のグローバルシャッタを実現できる。
【0065】
さらに、本実施の形態では、OFG58においても深さの異なる複数のトレンチゲート、すなわち、トレンチゲート581およびトレンチゲート582を設けるようにしている。ここで、トレンチゲート581の長さとトレンチゲート582の長さとが異なっている。このように、本実施の形態のセンサ画素210では、OFG58が、深さの異なるトレンチゲート581およびトレンチゲート582を有するようにしたので、PD51から溢れた電荷を電源VDD2に排出する際の転送不良を防ぐことができる。
【0066】
<4.第3の実施の形態>
図10Aは、本技術の第3の実施の形態に係るセンサ画素310の平面構成例を示している。また、図10Bは、センサ画素310の回路構成例を示している。
【0067】
本実施の形態のセンサ画素310は、PD51とFD53との間に電荷保持部(MEM)59をさらに設けるようにしたものである。これに伴い、TG52の代わりに、第1の転送トランジスタ(TG)52Aと、第2の転送トランジスタ(TG)52Bとを設けるようにした。TG52AはPD51とMEM59との間に配置され、TG52BはMEM59とFD53との間に配置されている。これらの点を除き、他は上記第2の実施の形態としてのセンサ画素210と実質的に同じ構成を有する。
【0068】
本実施の形態のセンサ画素310では、MEM59をさらに設けることにより、PD51からの電荷がMEM59に転送され、メモリ保持型のグローバルシャッタを実現できる。具体的には、センサ画素310では、TG52Aのゲート電極に印加される駆動信号S52Aがオンし、TG52Aがオンすると、PD51に蓄積されている電荷が、TG52Aを介してMEM59に転送されるようになっている。MEM59は、グローバルシャッタ機能を実現するために、PD51に蓄積された電荷を一時的に保持する領域である。TG52Bは、TG52Bのゲート電極に印加される駆動信号S52Bに応じて、MEM59に保持されている電荷をFD53に転送するようになっている。例えば、駆動信号S52がオフし、TG52Aがオフし、駆動信号S52Bがオンし、TG52Bがオンすると、MEM59に保持されている電荷がTG52Bを介して、FD53へ転送される。
【0069】
本実施の形態のセンサ画素310では、MEM59が、深さの異なるトレンチゲート591およびトレンチゲート592を有している。このため、PD51における電荷をMEM59へ転送する際の転送不良を防ぐことができる。
【0070】
<5.第4の実施の形態>
図11Aは、本技術の第4の実施の形態に係るセンサ画素410の平面構成例を示している。また、図11Bは、センサ画素410の回路構成例を示している。さらに、図11Cは、センサ画素410の断面構成例を示している。
【0071】
図11A図11Cに示したように本実施の形態のセンサ画素410では、転送部が、互いに独立駆動可能に構成された第1の転送トランジスタ(TG)52Aおよび第2の転送トランジスタ(TG)52Bを有する。TG52AがトレンチゲートTG521と含み、TG52BがトレンチゲートTG522を含んでいる。これらの点を除き、他は上記第1の実施の形態としてのセンサ画素110と実質的に同じ構成を有する。よって、センサ画素410では、センサ画素110と同様に、トレンチゲート522の長さL522がトレンチゲート521の長さL521よりも短くなっている(L521>L522)。
【0072】
[センサ画素410の作用効果]
本実施の形態のセンサ画素410では、TG52AとTG52Bとを独立して駆動できるので、TG52Aにおけるオン・オフの駆動タイミングと、TG52Bにおけるオン・オフの駆動タイミングとを自由に選択できる。したがって、図12Aに示したように、例えばTG52AとTG52Bとを同時に立ち上げたのち、すなわち同時にオフ状態からオン状態としたのち、TG52AをTG52Bよりも先に立ち下げる(オン状態からオフ状態とする)ことができる。このように、TG52AをTG52Bよりも先に立ち下げることにより、PD51のポテンシャルがTG52から受ける変調力が、Z軸方向に沿って裏面11S2側から表面11S1へ至る途中で増加することとなる。その結果、上記第1の実施の形態に係るセンサ画素110のように一のTG52に2つのトレンチゲートTG521およびトレンチゲートTG522を設けた場合と比較して、PD51におけるポテンシャルディップをより効果的に解消することができる。
【0073】
なお、TG52Aにおけるオン・オフの駆動タイミング、およびTG52Bにおけるオン・オフの駆動タイミングについては、図12Aに示した場合に限定されず、例えば図12Bに示したようにしてもよい。図12Bでは、TG52AをTG52Bよりも先に立ち上げると共にTG52AをTG52Bよりも先に立ち下げるようにした例を表している。すなわち、本実施の形態のセンサ画素410では、TG52Aにおけるオン状態の期間とTG52Bにおけるオン状態の期間とが一部重なると共に、TG52AをTG52Bよりも先に立ち下げるようにすればよい。あるいは、図12Cに示したように、TG52Aの立ち下げを開始するタイミングとTG52Bの立ち下げを開始するタイミングとが一致していても、TG52Aの立ち下げが完了するタイミングがTG52Bの立ち下げが完了するタイミングよりも先となればよい。すなわち、オン状態からオフ状態へ切り替わる速度の勾配を変えることにより、TG52Aにおけるオン状態からオフ状態への切り替え完了のタイミングよりもTG52Bにおけるオン状態からオフ状態への切り替え完了のタイミングが遅くなるようにしてもよい。図12Cに示したパルスのなまりは、垂直駆動部112の負荷や水平駆動部114の負荷を変えたり、図11Bに示した回路中の配線の容量を変えたりすることにより実現できる。なお、図12A図12Cは、RST54,SEL56,TG52AおよびTG52Bに供給される各駆動信号の波形を表すタイムチャートである。
【0074】
<6.第4の実施の形態の変形例>
(第1の変形例)
[センサ画素410Aの構成]
図13Aは、第4の実施の形態の第1の変形例としてのセンサ画素410Aを表す平面図である。なお、図13Aは第4の実施の形態の図11Aに対応する。
【0075】
本変形例としてのセンサ画素410Aは、図13Aに示したように、電荷の転送先であるFD53が、トレンチゲート521とトレンチゲート522との間に位置するようにしたものである。この点を除き、他は上記第4の実施の形態としてのセンサ画素410と実質的に同じ構成を有する。
【0076】
[センサ画素410Aの作用効果]
このように、本変形例としてのセンサ画素410Aによれば、上記第4の実施の形態に係るセンサ画素410と比較して、トレンチゲート521とトレンチゲート522との間に転送先であるFD53を配置するようにしている。トレンチゲート521とトレンチゲート522との間の部分においてはバックバイアス効果が無くなり、TG52AおよびTG52Bから受ける変調力が最も高くなる。そのため、転送される電荷は必然的にトレンチゲート521とトレンチゲート522との間を通って表面11S1まで転送されることとなる。その表面11Sの近傍に電荷の転送先であるFD53が存在することにより、PD51からFD53への電荷の転送効率が向上する。
【0077】
(第2の変形例)
[センサ画素410Bの構成]
図13Bは、第4の実施の形態の第2の変形例としてのセンサ画素410Bを表す平面図である。なお、図13Bは第4の実施の形態の図11Aに対応する。
【0078】
本変形例としてのセンサ画素410Bは、図13Bに示したように、TG52Aがトレンチゲート521およびトレンチゲート522の双方を含んでいる。TG52Bはトレンチゲートを有しておらず、TG52Aと、電荷の転送先であるFD53との間に位置する。この点を除き、他は上記第4の実施の形態としてのセンサ画素410と実質的に同じ構成を有する。
【0079】
[センサ画素410Bの作用効果]
このように、本変形例としてのセンサ画素410Bによれば、トレンチゲートを有しないTG52Bを、2つのトレンチゲート521,522を有するTG52AとFD53との間に設けるようにした。このため、PD51のポテンシャルがTG52Aのトレンチゲート521,522から受ける変調力を適度の大きさに抑えつつ、PD51におけるポテンシャルディップを解消することができる。図11Aなどに示したセンサ画素410のように、電荷の転送先であるFD53と近接したTG52Bがトレンチゲートを有する場合、そのトレンチゲートがPD51のポテンシャルに及ぼす変調力が過度に高くなることがある。そうした場合、TG52Bをオン状態からオフ状態とした際に、FD53から電子がそのトレンチゲートへ向けて移動してしまうことがある。本変形例としてのセンサ画素410Bによれば、そのような電子の逆流を効果的に防ぐことができる。
【0080】
(第3の変形例)
[センサ画素410Cの構成]
図13Cは、第4の実施の形態の第3の変形例としてのセンサ画素410Cを表す平面図である。なお、図13Cは第4の実施の形態の図11Aに対応する。
【0081】
本変形例としてのセンサ画素410Cは、図13Cに示したように、転送部として、TG52AおよびTG52Bに対して独立して駆動可能なTG52Cをさらに有している。TG52Aがトレンチゲート521を含み、TG52Bがトレンチゲート522を含み、TG52Cがトレンチゲート523を含んでいる。この点を除き、他は上記第4の実施の形態としてのセンサ画素410と実質的に同じ構成を有する。
【0082】
[センサ画素410Cの作用効果]
このように、本変形例としてのセンサ画素410Cによれば、TG52Cをさらに設けるようにしたので、センサ画素410に比べ、水平面内(XY面内)におけるPD51からの電荷の転送をより円滑に行うことができる。したがって、例えばPD51の飽和信号量を増加させやすくなる。
【0083】
(第4の変形例)
[センサ画素410Dの構成]
図13Dは、第4の実施の形態の第4の変形例としてのセンサ画素410Dを表す平面図である。なお、図13Dは第4の実施の形態の図11Aに対応する。
【0084】
本変形例としてのセンサ画素410Dは、図13Dに示したように、TG52Cがトレンチゲートを有していない。この点を除き、他は上記第4の実施の形態の第3の変形例としてのセンサ画素410Cと実質的に同じ構成を有する。
【0085】
[センサ画素410Dの作用効果]
このように、本変形例としてのセンサ画素410Dによれば、トレンチゲートを有しないTG52Cを、トレンチゲート521,522をそれぞれ有するTG52A,TG52BとFD53との間に設けるようにした。このため、PD51のポテンシャルがTG52Aのトレンチゲート521およびTG52Bのトレンチゲート522からそれぞれ受ける変調力を適度の大きさに抑えつつ、PD51におけるポテンシャルディップを解消することができる。
【0086】
<7.電子機器への適用例>
図14は、本技術を適用した電子機器としてのカメラ2000の構成例を示すブロック図である。
【0087】
カメラ2000は、レンズ群などからなる光学部2001、上述の固体撮像装置101など(以下、固体撮像装置101等という。)が適用される撮像装置(撮像デバイス)2002、およびカメラ信号処理回路であるDSP(Digital Signal Processor)回路2003を備える。また、カメラ2000は、フレームメモリ2004、表示部2005、記録部2006、操作部2007、および電源部2008も備える。DSP回路2003、フレームメモリ2004、表示部2005、記録部2006、操作部2007および電源部2008は、バスライン2009を介して相互に接続されている。
【0088】
光学部2001は、被写体からの入射光(像光)を取り込んで撮像装置2002の撮像面上に結像する。撮像装置2002は、光学部2001によって撮像面上に結像された入射光の光量を画素単位で電気信号に変換して画素信号として出力する。
【0089】
表示部2005は、例えば、液晶パネルや有機ELパネル等のパネル型表示装置からなり、撮像装置2002で撮像された動画または静止画を表示する。記録部2006は、撮像装置2002で撮像された動画または静止画を、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録する。
【0090】
操作部2007は、ユーザによる操作の下に、カメラ2000が持つ様々な機能について操作指令を発する。電源部2008は、DSP回路2003、フレームメモリ2004、表示部2005、記録部2006および操作部2007の動作電源となる各種の電源を、これら供給対象に対して適宜供給する。
【0091】
上述したように、撮像装置2002として、上述した固体撮像装置101A等を用いることで、良好な画像の取得が期待できる。
【0092】
<8.移動体への応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0093】
図15は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0094】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図21に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(Interface)120
53が図示されている。
【0095】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0096】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0097】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0098】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0099】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0100】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0101】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0102】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0103】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図15の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0104】
図16は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0105】
図16では、撮像部12031として、撮像部12101、12102、12103、12104、12105を有する。
【0106】
撮像部12101、12102、12103、12104、12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102、12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0107】
なお、図22には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0108】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0109】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0110】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0111】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0112】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部12031に適用され得る。具体的には、図1などに示した固体撮像装置101A等を撮像部12031に適用することができる。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、車両制御システムの優れた動作が期待できる。
【0113】
<9.内視鏡手術システムへの応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0114】
図17は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0115】
図17では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0116】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0117】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0118】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0119】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0120】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0121】
光源装置11203は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0122】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0123】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0124】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0125】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0126】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0127】
図18は、図17に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0128】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0129】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0130】
撮像部11402は、撮像素子で構成される。撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(Dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0131】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0132】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0133】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0134】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0135】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0136】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0137】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0138】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0139】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0140】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0141】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0142】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0143】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0144】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、CCU11201(の画像処理部11412)等に適用され得る。具体的には、例えば、図1Aの固体撮像装置101Aは、撮像部10402に適用することができる。撮像部10402に本開示に係る技術を適用することにより、より鮮明な術部画像を得ることができるため、術者が術部を確実に確認することが可能になる。
【0145】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0146】
<10.その他の変形例>
以上、いくつかの実施の形態および変形例を挙げて本開示を説明したが、本開示は上記
実施の形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば上記実施の形態等では、グローバルシャッタ方式の裏面照射型イメージセンサを例示して説明したが、本開示の撮像装置はこれに限定されるものではなく他の方式のイメージセンサであってもよい。すなわち、本開示はグローバルシャッタ方式のイメージセンサに限定されるものではなく、ローリングシャッター方式のイメージセンサにも適用可能である。さらに、本開示は、裏面照射型イメージセンサに限定されるものではなく、表面照射型イメージセンサにも適用可能である。また、本開示の技術はCMOSイメージセンサへの適用に限定されず、単位画素がマトリックス状に2次元配列されているX-Yアドレス方式の固体撮像装置全般に適用可能である。
【0147】
また、本開示の撮像装置は、可視光の光量分布を検出して画像として取得する撮像装置に限定されるものではなく、赤外線やX線、あるいは粒子等の入射量の分布を画像として取得する撮像装置であってもよい。
【0148】
また、本開示の撮像装置は、撮像部と信号処理部または光学系とがまとめてパッケージングされたモジュールの形態をなしていてもよい。
【0149】
また、上記実施の形態等では、互いに分離された2つまたは3つの転送トランジスタを転送部として有するセンサ画素を例示したが、本開示の撮像装置は、4以上の転送トランジスタを転送部として有するようにしてもよい。
【0150】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であってその記載に限定されるものではなく、他の効果があってもよい。また、本技術は以下のような構成を取り得るものである。
(1)
表面と、前記表面と反対側の裏面とを含む半導体層と、
前記半導体層に埋設され、受光量に応じた電荷を光電変換により生成する光電変換部と、
前記半導体層の前記表面から前記裏面へ向けてそれぞれ延在する第1の部分および第2の部分を含み、前記電荷を前記光電変換部から同一の転送先へ転送する転送部と
を備え、
前記第1の部分は、前記表面と前記裏面との間に第1の底部を有し、前記表面から前記第1の底部へ至るまで第1の長さを有し、
前記第2の部分は、前記表面と前記裏面との間に第2の底部を有し、前記表面から前記第2の底部へ至るまで前記第1の長さよりも短い第2の長さを有する
光検出装置。
(2)
前記転送先は、電荷電圧変換部である
上記(1)に記載の光検出装置。
(3)
前記転送先は、電荷保持部である
上記(1)に記載の光検出装置。
(4)
前記転送先は、電源である
上記(1)に記載の光検出装置。
(5)
前記転送先は、前記第1の部分と前記第2の部分との間に位置する
上記(1)に記載の光検出装置。
(6)
前記表面と平行な面内において、
前記第2の部分と前記転送先との距離は、前記第1の部分と前記転送先との距離よりも短い
上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の光検出装置。
(7)
前記転送部は、互いに独立駆動可能に構成された第1のトランジスタおよび第2のトランジスタを有する
上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の光検出装置。
(8)
前記第1のトランジスタが前記第1の部分を含み、
前記第2のトランジスタが前記第2の部分を含む
上記(7)記載の光検出装置。
(9)
前記第1のトランジスタが前記第1の部分および前記第2の部分を含み、
前記第2のトランジスタが、前記第1のトランジスタと前記転送先との間に位置する
上記(7)記載の光検出装置。
(10)
オン状態の前記第1のトランジスタをオフ状態としたのち、オン状態の前記第2のトランジスタをオフ状態とする制御部をさらに有する
上記(7)記載の光検出装置。
(11)
前記転送部は、一のトランジスタを有し、
前記一のトランジスタは、前記第1の部分と、前記第2の部分と、第3の部分とを含み、
前記表面と平行な面内において、前記第2のトレンチゲートと前記転送先との第2の距離は、前記第1の部分と前記転送先との第1の距離よりも短く、前記第3の部分と前記転送先との第3の距離は、前記第1の距離よりも短い
上記(1)記載の光検出装置。
(12)
前記転送部は、一のトランジスタを有し、
前記一のトランジスタは、前記第1の部分と、前記第2の部分と、第3の部分とを含み、
前記表面と平行な面内において、前記第2の部分と前記転送先との第2の距離は、前記第1の部分と前記転送先との第1の距離よりも短く、前記第3の部分と前記転送先との第3の距離は、前記第2の距離よりも長い
上記(1)記載の光検出装置。
(13)
前記第1の部分の最大径は、前記第2の部分の最大径よりも大きい
上記(1)から(12)のいずれか1つに記載の光検出装置。
(14)
前記第1の部分の径および前記第2の部分の径は、それぞれ、前記表面から前記裏面へ向かうほど細くなっている部分を有する
上記(1)から(12)のいずれか1つに記載の光検出装置。
(15)
光検出装置を備えた電子機器であって、
前記光検出装置は、
表面と、前記表面と反対側の裏面とを含む半導体層と、
前記半導体層に埋設され、受光量に応じた電荷を光電変換により生成する光電変換部と、
前記半導体層の前記表面から前記裏面へ向けてそれぞれ延在する第1の部分および第2の部分を含み、前記電荷を前記光電変換部から同一の転送先へ転送する転送部と
を備え、
前記第1の部分は、前記表面と前記裏面との間に第1の底部を有し、前記表面から前記第1の底部へ至るまで第1の長さを有し、
前記第2の部分は、前記表面と前記裏面との間に第2の底部を有し、前記表面から前記第2の底部へ至るまで前記第1の長さよりも短い第2の長さを有する
電子機器。
【0151】
本出願は、日本国特許庁において2018年7月31日に出願された日本特許出願番号2018-143491号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0152】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15
図16
図17
図18