(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155325
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】発泡性アクリル組成物
(51)【国際特許分類】
B29B 11/16 20060101AFI20231013BHJP
C08J 9/32 20060101ALI20231013BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20231013BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20231013BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20231013BHJP
【FI】
B29B11/16
C08J9/32 CEY
C08F265/06
C08F2/44 C
B29K105:08
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023135886
(22)【出願日】2023-08-23
(62)【分割の表示】P 2020529714の分割
【原出願日】2018-11-29
(31)【優先権主張番号】62/593,460
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チン-ハン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン・ジェイ・バックマン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・エム・クロマー
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来の化学発泡剤と発泡性ミクロスフェアとの両方を用いた発泡アクリル材料に関する。アクリルフォームは、改善された密度低下、光学特性及び絶縁特性を有する。
【解決手段】本発明のアクリルフォームは、従来の溶融加工法(押出成形、ブロー成形等)と、革新的な発泡方法(例えば重合中又は重合後の発泡)とによって、形成させることができる。本発明の1つの新規の方法は、膨張可能なミクロスフェアをモノマーとブレンドして使用することを含み、前記モノマーは次いでセルキャスト法、注入法又は圧縮成形法におけるバルク重合によって重合される。この方法は、例えばArkema社からのELIUM(登録商標)液体樹脂との組合せにおいて、複合フォーム構造体を製造するために有効に用いることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)及び(b):
(a)発泡ポリマー性熱可塑性(メタ)アクリルマトリックス、
(b)補強材としての繊維質材料、
を含むポリマー性発泡複合材料であって、
前記繊維質材料が少なくとも1000の繊維のアスペクト比を有する繊維を含み、又は前記繊維質材料が二次元の巨視的構造を有し、
前記発泡ポリマー性熱可塑性(メタ)アクリルマトリックスの密度が、同じ組成の未発泡ポリマー性熱可塑性(メタ)アクリルマトリックスの密度より少なくとも5、好ましくは10、好ましくは20、好ましくは30、より一層好ましくは50、より一層好ましくは70、より一層好ましくは90重量%低い、前記ポリマー性発泡複合材料。
【請求項2】
前記繊維が天然材料、植物繊維、木材繊維、動物繊維、鉱物繊維、サイザル麻、ジュート、麻、亜麻、綿、ココナッツ繊維、バナナ繊維、ウール、髪、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル、鉱物繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、シリカ繊維より成る群から選択される、請求項1に記載のポリマー性発泡複合材料。
【請求項3】
前記(メタ)アクリルマトリックスポリマーがメタクリル酸メチルモノマー単位を少なくとも70重量%含む、請求項1に記載のポリマー性発泡複合材料。
【請求項4】
前記ポリマー性熱可塑性(メタ)アクリルマトリックスの重量を基準として0.1~10重量%の残留膨張性ミクロスフェアをさらに含む、請求項1に記載のポリマー性発泡複合材料。
【請求項5】
下記e)~h):
e)(メタ)アクリルポリマー、
f)(メタ)アクリルモノマー、
g)前記(メタ)アクリルモノマーの重合を開始させるための少なくとも1種の開始剤又は開始用システム、
h)少なくとも1種の発泡剤、
を含む液状(メタ)アクリルシロップであって、
10mPa・s~10000mPa・s、好ましくは50mPa・s~5000mPa・s、有利には100mPa・s~1000mPa・sの範囲の動的粘度を有する、前記液状(メタ)アクリルシロップ。
【請求項6】
前記発泡剤が少なくとも1種の化学的発泡剤を含む、請求項5に記載の液状(メタ)アクリルシロップ。
【請求項7】
前記化学的発泡剤がアゾジカルボンアミド、アゾジイソブチロニトリル、スルホニルセミカルバジド、4,4-オキシベンゼン、アゾジカルボン酸バリウム、5-フェニルテトラゾール、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、ヒドラゾジカルボン酸ジイソプロピル、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホヒドラジド、イサト酸無水物、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロテレフタルアミド、クエン酸、重炭酸ナトリウム、クエン酸一ナトリウム、無水クエン酸、トリヒドラジノトリアジン、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p-トルエンスルホニルヒドラジド及びそれらのブレンドより成る群から選択される、請求項5に記載の液状(メタ)アクリルシロップ。
【請求項8】
前記発泡剤が膨張性ミクロスフェアを含む、請求項5に記載の液状(メタ)アクリルシロップ。
【請求項9】
(メタ)アクリルマトリックスを含む熱可塑性(メタ)アクリル発泡体物品であって、
同じ組成の未発泡(メタ)アクリル物品と比較して密度が少なくとも33%、少なくとも75%、少なくとも90%低下した、前記熱可塑性(メタ)アクリル発泡体物品。
【請求項10】
ナノ粒子を0.1~10重量%、好ましくは1~5重量%含む熱可塑性(メタ)アクリレートマトリックスを含む、請求項9に記載の熱可塑性(メタ)アクリレート発泡物品。
【請求項11】
前記ナノ粒子が伝導性ナノ粒子である、請求項10に記載の熱可塑性(メタ)アクリレート発泡物品。
【請求項12】
25°Fにおいて0.7未満、好ましくは0.5未満、より一層好ましくは0.25未満のkファクターを有する(メタ)アクリルシートを含む、請求項9に記載の熱可塑性(メタ)アクリレート発泡物品。
【請求項13】
ASTM法E340によって測定してクラスAの表面を有する、請求項9に記載の熱可塑性(メタ)アクリレート発泡物品。
【請求項14】
(メタ)アクリル発泡体を形成させるための方法であって、
a.発泡剤、(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルポリマー及び1種以上の開始剤をブレンドして、10mPa・s~10000mPa・s、好ましくは50mPa・s~5000mPa・s、有利には100mPa・s~1000mPa・sの範囲の動的粘度を有する液状(メタ)アクリルシロップを形成させる工程;
b.前記液状(メタ)アクリルシロップを重合させることによって構造体を形成させる工程:
を含む、前記方法。
【請求項15】
前記重合プロセスと同時に発泡を起こさせて発泡した構造体を形成させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
発泡剤が膨張するのを可能にすることができるエネルギーを加えることによって重合後に前記構造体を発泡させる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記発泡剤が少なくとも1種の化学的発泡剤を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記発泡剤が膨張性ミクロスフェアを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
セルキャスト、ソリッドステートキャスティング、真空注入、引抜成形、湿式圧縮成形、樹脂トランスファー成形、圧縮樹脂トランスファー成形、レイアップ/スプレーアップ又はフィラメントワインディングによって前記構造体の形成を行う、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
重合に先立って、前記液状(メタ)アクリルシロップと少なくとも1000の繊維のアスペクト比を有する長繊維とを組み合わせるか、又は前記繊維質材料が二次元若しくは三次元巨視的構造を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
長繊維と液状(メタ)アクリルシロップとを組み合わせる工程を、グラビアコーティング、浸漬ディップコーティング、スロットダイコーティング、カーテンコーティング又はギャップコーティングによって行う、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
ASTM法E340によって測定して向上した表面外観を有する(メタ)アクリル発泡体を形成させる方法であって、
a)膨張性ミクロスフェアを含む熱可塑性(メタ)アクリル発泡物品をモールド中で成形する工程、
b)前記物品を硬化させる工程、
c)前記モールドを僅かに開くことによって又は前記硬化物品を僅かに大きいモールド中に移すことによって、モールドのサイズを大きくする工程、
d)前記物品に追加の熱を加えてさらなる膨張を引き起こして大きいモールドを満たす工程、
e)前記物品を冷やす工程、及び
f)前記物品を離型する工程
を含む、前記方法。
【請求項23】
自動車部品、ボート部品、列車部品、スポーツ用品、飛行機部品、ヘリコプター部品、宇宙船部品、ロケット部品、太陽光発電モジュール部品、風力タービン部品、家具部品、建設部品、建築部品、電話若しくは携帯電話部品、コンピューター若しくはテレビ部品、プリンター部品又はコピー部品として用いるための物品である、請求項1に記載のポリマー性発泡複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の化学的発泡剤と発泡可能な(以下、発泡性と言う)ミクロスフェア(微小球体)との両方を用いた発泡させたアクリル系材料(以下、「発泡させた・・・」を単に「発泡・・・」と言い、「アクリル系」を単に「アクリル」と言う)に関する。アクリル発泡体(フォーム)は、改善された密度低下、光学特性及び絶縁特性を有する。本発明のアクリル発泡体は、従来の溶融加工法(押出成形、ブロー成形等)と、革新的な発泡方法(例えば重合中又は重合後の発泡)とによって、形成させることができる。本発明の1つの新規の方法は、モノマーとブレンドされた膨張性(即ち膨張可能な)ミクロスフェアを使用することを含み、前記モノマーは次いでセルキャスト法、注入法又は圧縮成形法におけるバルク重合によって重合される。この方法は、複合発泡体構造体を製造するために有効に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
従来の発泡ポリマーは、化学的発泡剤又は物理的発泡剤を用いて生じさせていた。化学的発泡剤の場合、化学物質をその分解温度以上に加熱して分解することによって、気体が作り出される。物理的発泡剤の場合、ポリマー中に気体を直接導入するか、又は液状発泡剤をその蒸発温度以上に加熱して蒸発させることによってポリマー中に気体を導入する。どちらのタイプの発泡剤も連続式発泡法又はバッチ式発泡法の両方で用いることができるが、バッチ式法では主に物理的発泡剤が用いられる。化学的発泡剤は主に密度低下が50%の高密度発泡体用に用いられるのに対して、物理的発泡剤は密度低下が10倍以上の軽い発泡体を製造することができる。
【0003】
従来入手可能な発泡プラスチックシート製品には、発泡PVC、発泡ポリスチレン(発泡スチロール)及びアルミニウム複合材料が含まれる。発泡PVCは、高い内部応力のせいで温度が変化した時に反りを生じる傾向があり、耐候性に劣る。発泡ポリスチレンは、表面に小さな凹みを有する。アルミニウム複合材料は頻繁に剥離し、印刷適性が劣る。発泡PVC、発泡ポリスチレン及びアルミニウム複合材料に欠点があるせいで、市場では発泡アクリル材料に対する需要がある。
【0004】
アクリルは、耐候性、表面光沢及び印刷適性が優れているため、他のプラスチックより好ましい熱可塑性材料である。発泡アクリル材料に対しては工業的規模で使用することについての要望がある。
【0005】
近年、膨張性ミクロスフェアの形で非晶質ポリマー及び半結晶質ポリマーを発泡させるための新規の手段が開発された。米国特許第7879441号には、押出機中でポリマーマトリックスに膨張性ミクロスフェアを加えることによって調製される発泡体物品が記載されている。この混合物は、押出機中で膨張して発泡物品をもたらすこともでき、また、比較的膨張しないままでその場で発泡させることもできる。その用途は主に粘着テープである。また、米国特許出願公開第2015/0322226号にも、ポリマーを発泡させるためにミクロスフェアを使用することが記載されている。
【0006】
ミクロスフェアは、様々な液体や気体を封入することができるポリマーシェルを有する小さな中空粒子である。加熱した際に、ポリマーシェルは軟化し、球体内の液体が蒸発して大量の高圧気体が発生し、これがミクロスフェアを大幅に膨張させる。球体は、様々な直径(一般的には広い寸法分布で)、シェル厚さ、シェル組成(一般的には軽度に架橋したアクリレート、メタクリレート及びそれらとアクリロニトリルとのコポリマー)を有することができ、様々な液体又は気体(一般的にはイソオクタン、イソブテン、イソペンタン又はそれらの混合物)を収納することができる。ミクロスフェアは追加的に、内部及び表面上の両方に、微細に分散した有機又は非有機材料を含むことができる。ミクロスフェアは、製造業数社から広範な粒子寸法及び粒度分布のものを商品として入手できる。一般的に、ミクロスフェアは、膨張前には10ミクロン未満の平均粒子直径を数ミクロンのシェル厚さと共に有し、膨張後には数十ミクロンの平均直径及び1ミクロン未満のシェル厚さが一般的である。
【0007】
鋼や他の金属の代替品として、耐久性があり、強く、軽量な材料が望まれている。近年Arkema社は、米国特許第9777140号に記載されたように、(メタ)アクリルモノマー/(メタ)アクリルポリマー/開始剤液体ブレンド及び長繊維から形成されたアクリル/繊維複合熱可塑性材料を紹介した。これらの強い材料は、アクリルの外観及び耐候性を有するが、しかし一般的な熱硬化性複合材料と違って、熱可塑性アクリル複合材料は熱成形することができ、リサイクルすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7879441号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0322226号明細書
【特許文献3】米国特許第9777140号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明は、(メタ)アクリル発泡体及び発泡体複合材料、新規の製造並びに発泡方法に関する。
【0010】
本明細書内においては、明瞭且つ簡潔な明細書が書かれることを可能にするように実施形態を説明するが、本発明から逸脱することなく実施形態を様々に組み合わせたり分けたりできることが意図され、認識されるだろう。例えば、本明細書に記載されたすべての好ましい特徴は、本明細書に記載された発明のすべての局面に適用可能である。
【0011】
本発明の局面には、以下が含まれる。
1. 下記(a)及び(b):
(a)発泡ポリマー性熱可塑性(メタ)アクリルマトリックス、
(b)補強材としての繊維質材料、
を含むポリマー性発泡複合材料であって、
前記繊維質材料が少なくとも1000の繊維のアスペクト比を有する繊維を含み、又は前記繊維質材料が二次元の巨視的構造を有し、
前記発泡ポリマー性熱可塑性(メタ)アクリルマトリックスの密度が、同じ組成の未発泡ポリマー性熱可塑性(メタ)アクリルマトリックスの密度より少なくとも5、好ましくは10、好ましくは20、好ましくは30、より一層好ましくは50、より一層好ましくは70、より一層好ましくは90重量%低い、前記ポリマー性発泡複合材料。
【0012】
2. 前記繊維が天然材料、植物繊維、木材繊維、動物繊維、鉱物繊維、サイザル麻、ジュート、麻、亜麻、綿、ココナッツ繊維、バナナ繊維、ウール、髪、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル、鉱物繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、シリカ繊維より成る群から選択される、局面1のポリマー性発泡複合材料。
【0013】
3. 前記(メタ)アクリルマトリックスポリマーがメタクリル酸メチルモノマー単位を少なくとも70重量%含む、局面1又は2のポリマー性発泡複合材料。
【0014】
4. 前記ポリマー性熱可塑性(メタ)アクリルマトリックスの重量を基準として0.1~10重量%の残留膨張性ミクロスフェアをさらに含む、局面1~3のいずれかのポリマー性発泡複合材料。
【0015】
5. 下記a)~d):
a)(メタ)アクリルポリマー、
b)(メタ)アクリルモノマー、
c)前記(メタ)アクリルモノマーの重合を開始させるための少なくとも1種の開始剤又は開始用システム、
d)少なくとも1種の発泡剤、
を含む液状(メタ)アクリルシロップであって、
10mPa・s~10000mPa・s、好ましくは50mPa・s~5000mPa・s、有利には100mPa・s~1000mPa・sの範囲の動的粘度を有する、前記液状(メタ)アクリルシロップ。
【0016】
6. 前記発泡剤が少なくとも1種の化学的発泡剤を含む、局面5の液状(メタ)アクリルシロップ。
【0017】
7. 前記化学的発泡剤がアゾジカルボンアミド、アゾジイソブチロニトリル、スルホニルセミカルバジド、4,4-オキシベンゼン、アゾジカルボン酸バリウム、5-フェニルテトラゾール、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、ヒドラゾジカルボン酸ジイソプロピル、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホヒドラジド、イサト酸無水物、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロテレフタルアミド、クエン酸、重炭酸ナトリウム、クエン酸一ナトリウム、無水クエン酸、トリヒドラジノトリアジン、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p-トルエンスルホニルヒドラジド及びそれらのブレンドより成る群から選択される、局面5又は6の液状(メタ)アクリルシロップ。
【0018】
8. 前記発泡剤が膨張性ミクロスフェアを含む、局面5~7の液状(メタ)アクリルシロップ。
【0019】
9. (メタ)アクリルマトリックスを含む熱可塑性(メタ)アクリル発泡体物品であって、同じ組成の非発泡(メタ)アクリル物品と比較して密度が少なくとも33%、少なくとも75%、少なくとも90%低下した、前記熱可塑性(メタ)アクリル発泡体物品。
【0020】
10. ナノ粒子を0.1~10重量%、好ましくは1~5重量%含む熱可塑性(メタ)アクリレートマトリックスを含む、局面9の熱可塑性(メタ)アクリレート発泡物品。
【0021】
11. 前記ナノ粒子が導電性ナノ粒子である、局面9又は10の熱可塑性(メタ)アクリレート発泡物品。
【0022】
12. 25°Fにおいて0.7未満、好ましくは0.5未満、より一層好ましくは0.25未満のkファクターを有する(メタ)アクリルシートを含む、局面9~11のいずれかの熱可塑性(メタ)アクリレート発泡物品。
【0023】
13. ASTM法E340によって測定してクラスAの表面を有する、局面9~12のいずれかの熱可塑性(メタ)アクリレート発泡物品。
【0024】
14. (メタ)アクリル発泡体を形成させるための方法であって、
a.発泡剤、(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルポリマー及び1種以上の開始剤をブレンドして、10mPa・s~10000mPa・s、好ましくは50mPa・s~5000mPa・s、有利には100mPa・s~1000mPa・sの範囲の動的粘度を有する液状(メタ)アクリルシロップを形成させる工程;
b.前記液状(メタ)アクリルシロップを重合させることによって構造体を形成させる工程:
を含む、前記方法。
【0025】
15. 前記重合プロセスと同時に発泡を起こさせて発泡した構造体を形成させる、局面14の方法。
【0026】
16. 発泡剤が膨張するのを可能にすることができるエネルギーを加えることによって重合後に前記構造体を発泡させる、局面14又は15の方法。
【0027】
17. 前記発泡剤が少なくとも1種の化学的発泡剤を含む、局面14~16のいずれかの方法。
【0028】
18. 前記発泡剤が膨張性ミクロスフェアを含む、局面14~17のいずれかの方法。
【0029】
19. セルキャスト、ソリッドステートキャスティング、真空注入、引抜成形、湿式圧縮成形、樹脂トランスファー成形、圧縮樹脂トランスファー成形、レイアップ/スプレーアップ又はフィラメントワインディングによって前記構造体の形成を行う、局面14~18のいずれかの方法。
【0030】
20. 重合に先立って、前記液状(メタ)アクリルシロップと少なくとも1000の繊維のアスペクト比を有する長繊維とを組み合わせるか、又は前記繊維質材料が二次元若しくは三次元巨視的構造を有する、局面14~19のいずれかの方法。
【0031】
21. 長繊維と液状(メタ)アクリルシロップとを組み合わせる工程を、グラビアコーティング、浸漬ディップコーティング、スロットダイコーティング、カーテンコーティング又はギャップコーティングによって行う、局面14~20のいずれかの方法。
【0032】
22. ASTM法E340によって測定して向上した表面外観を有する(メタ)アクリル発泡体を形成させる方法であって、
a)膨張性ミクロスフェアを含む熱可塑性(メタ)アクリル発泡物品をモールド中で成形する工程、
b)前記物品を硬化させる工程、
c)前記モールドを僅かに開くことによって又は前記硬化物品を僅かに大きいモールド中に移すことによって、モールドのサイズを大きくする工程、
d)前記物品に追加の熱を加えてさらなる膨張を引き起こして大きいモールドを満たす工程、
e)前記物品を冷やす工程、及び
f)前記物品を離型する工程
を含む、前記方法。
【0033】
23. 自動車部品、ボート部品、列車部品、スポーツ用品、飛行機部品、ヘリコプター部品、宇宙船部品、ロケット部品、太陽光発電モジュール部品、風力タービン部品、家具部品、建設部品、建築部品、電話若しくは携帯電話部品、コンピューター若しくはテレビ部品、プリンター部品又はコピー部品として用いるための物品である、局面1のポリマー性発泡複合材料。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本発明の2つの成形部品を示し、左の部品は例3におけるような通常の圧縮成形によって成形され、右の部品は例4の方法によって成形されたものであり、クラス「A」表面を達成する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳しい説明
解決すべき課題:改善された密度低下、優れた光学特性及び/又は良好な機械的特性を有するアクリル発泡材料を製造することに対する要望が存在する。また、十分な機械的特性を維持しつつ密度を低下させることによってより高い強度対重量の比で熱可塑性アクリル複合材料の利点を有する発泡アクリル複合材料に対する要望も存在する。
【0036】
解決策:今回、液状アクリルシロップ中に発泡剤を加え、次いでこれを重合させて発泡させることによって、アクリル発泡体を形成させた。発泡は、重合の間又は後に行うことができ、製造の柔軟性を提供し、光学特性及び/又は機械的特性の改善をもたらす。アクリル発泡体を長繊維と組み合わせることによって、強度対重量の比、溶接性、熱成形性及びリサイクル性が向上した複合材料を形成させることができる。
【0037】
本明細書において「コポリマー」とは、2種以上の異なるモノマー単位を有するポリマーを意味する。「ポリマー」とは、ホモポリマー及びコポリマーの両方を意味する。例えば、本明細書において「PMMA」及び「ポリメチルメタクリレート」とは、別段の記載がない限り、ホモポリマー及びコポリマーの両方を意味するものとする。(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方並びにそれらの混合物を意味するものとする。ポリマーは、直鎖状、分岐鎖状、星状、櫛状、ブロック状又は他の任意の構造であってよい。ポリマーは、均質であっても不均質であってもよく、コモノマー単位の勾配分布を有していてもよい。引用するすべての文献は、参考用にここに取り入れるものとする。
【0038】
本明細書において百分率は、別段の定めがない限り、重量%を意味する。分子量は、GPCによって測定される重量平均分子量である。ポリマーがある程度の架橋を含有する場合、及び不溶性ポリマー画分のせいでGPCが適用できない場合には、可溶性画分/ゲル画分又はゲルから抽出した後の可溶性画分の分子量を採用する。
【0039】
液状アクリル樹脂:
【0040】
本発明の液状アクリル樹脂は、液状アクリルシロップとも称され、(メタ)アクリルポリマーと(メタ)アクリルモノマーと開始剤との粘性のある重合可能なブレンドである。
【0041】
(メタ)アクリルポリマー:1つの実施形態において、(メタ)アクリルポリマーは、メタクリル酸メチルを少なくとも70重量%含む。
【0042】
別の実施形態において、PMMAは、少なくとも1種のMMAのホモポリマー及び少なくとも1種のMMAのコポリマーの混合物、又は平均分子量が異なる少なくとも2種のMMAのホモポリマー若しくは少なくとも2種のMMAのコポリマーの混合物、又はモノマー組成が異なる少なくとも2種のMMAのコポリマーの混合物である。
【0043】
メタクリル酸メチル(MMA)のコポリマーは、メタクリル酸メチル70~99.7重量%及びメタクリル酸メチルと共重合することができる少なくとも1個のエチレン性不飽和を有する少なくとも1種のモノマー0.3~30重量%を含む。
【0044】
これらのモノマーはよく知られており、特にアクリル酸、メタクリル酸、及びアルキル基が1~12個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸C1~C12アルキルを挙げることができる。例として、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル又は(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルを挙げることができる。好ましくは、前記コモノマーは、アルキル基が1~4個の炭素原子を有するアクリル酸アルキルである。
【0045】
好ましい実施形態において、メタクリル酸メチル(MMA)のコポリマーは、メタクリル酸メチル70~99.7重量%、好ましくは80~99.7重量%、有利には90~99.7重量%、より一層有利には90~99.5重量%及びメタクリル酸メチルと共重合することができる少なくとも1個のエチレン性不飽和を有する少なくとも1種のモノマー0.3~30重量%、好ましくは0.3~20重量%、有利には0.3~10重量%、より一層有利には0.5~10重量%を含む。好ましくは、前記コモノマーはアクリル酸メチル又はアクリル酸エチル又はそれらの混合物から選択される。
【0046】
前記(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量は、高いべきであり、50000g/モル超、好ましくは100000g/モル超とする。
【0047】
重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定することができる。
【0048】
(メタ)アクリルモノマー:(メタ)アクリルポリマーは、1種以上の(メタ)アクリルモノマー中に溶解される。前記モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリルモノマー、アルキルメタクリルモノマー及びそれらの混合物より成る群から選択される。
【0049】
好ましくは、前記モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアクリルモノマー、アルキルメタクリルモノマー及びそれらの混合物(該アルキル基は、1~22個の炭素原子を有し、直鎖状、分岐鎖状又は環状であってよく、好ましくは1~12個の炭素原子直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基である)より成る群から選択される。
【0050】
有利には、(メタ)アクリルモノマーは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、アクリル酸、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル及びそれらの混合物から選択される。
【0051】
より一層有利には、前記(メタ)アクリルモノマーは、メタクリル酸メチル、アクリル酸イソボルニル又はアクリル酸及びそれらの混合物から選択される。
【0052】
好ましい実施形態においては、モノマーの少なくとも50重量%がメタクリル酸メチルである。
【0053】
より一層好ましい実施形態においては、モノマーの少なくとも50重量%がメタクリル酸メチルとアクリル酸イソボルニル及び/又はアクリル酸との混合物である。
【0054】
液状(メタ)アクリルシロップ中の前記(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマー群は、(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルポリマーに鑑みた液状(メタ)アクリルシロップ全体の内の少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、有利には少なくとも60重量%、より一層有利には少なくとも65重量%を占める。
【0055】
液状(メタ)アクリルシロップ中の(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマー群は最大90重量%を占め、液状(メタ)アクリルシロップ中の(メタ)アクリルポリマー又はポリマー群は少なくとも10重量%を占め、液状(メタ)アクリルシロップ中の(メタ)アクリルポリマー又はポリマー群は最大60重量%を占める。
【0056】
液状(メタ)アクリルシロップ中の(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマー群は、(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルポリマーに鑑みた液状シロップ全体の内の40~90重量%、好ましくは50~90重量%を占める。
【0057】
従って、液状(メタ)アクリルシロップ中の(メタ)アクリルポリマー又はポリマー群は、(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルポリマーに鑑みた液状シロップ全体の内の60~10重量%、好ましくは50~10重量%を占める。
【0058】
液状(メタ)アクリルシロップ中の動的粘度は、10mPa・s~10000mPa・s、好ましくは50mPa・s~5000mPa・s、有利には100mPa・s~1000mPa・sの範囲である。前記シロップの粘度は、レオメーター又は粘度計を用いて容易に測定することができる。前記動的粘度は、25℃において測定される。液状(メタ)アクリルシロップは、ニュートン性挙動を有する。これは、ずり減粘がなく、動的粘度がレオメーターの剪断や粘度計の可動部の速度に依存しないことを意味する。
【0059】
開始剤:(メタ)アクリルモノマーの重合を開始させるための開始剤又は開始用システムに関しては、熱によって活性化させる開始剤又は開始用システムを挙げることができる。
【0060】
熱によって活性化される開始剤は、好ましくはラジカル開始剤である。ラジカル開始剤は、過酸化ジアシル、ペルオキシエステル、過酸化ジアルキル、ペルオキシアセタール又はアゾ化合物から選択することができる。
【0061】
好ましくは、(メタ)アクリルモノマーの重合を開始させるための開始剤又は開始用システムは、2~20個の炭素原子を有するペルオキシドから選択される。
【0062】
液状(メタ)アクリルシロップの(メタ)アクリルモノマーに対するラジカル開始剤の含有率は、100~50000重量ppm(50000ppm=5重量%)、好ましくは200~40000重量ppm、有利には300~30000ppmの範囲である。
【0063】
1つの実施形態において、開始剤は、モノマーが自然に重合するのを防止するために存在させる。
【0064】
発泡剤:本発明において有用な発泡剤には、化学的発泡剤及び膨張性ミクロスフェアが含まれる。
【0065】
未膨張のミクロスフェアは、架橋した環状コポリマー(アクリロニトリル及びMMA)シェルにイソペンタン発泡剤を含有させたものである。イソペンタンは、加熱したら沸騰してシェルをその元のサイズの6~8倍に膨張させる。膨張性ミクロスフェアの例には、AkzoNobel社から入手できるEXPANCEL(登録商標)ミクロスフェアがある。
【0066】
本発明の膨張性ミクロスフェアは、一般的に粉体であり、膨張していない形又は膨張した形にあることができる。ペレットの形にあるポリマーから発泡体を押出成形するためには、加えられる発泡剤もまたペレットの形にあるのがより一層好都合である。従って、ポリマーキャリアーにミクロスフェアを加えることによってミクロスフェアを含有するペレットのコンセントレート又はマスターバッチを調製し、それらを発泡体押出成形のために用いるのが望ましい。
【0067】
拡張性ミクロスフェアを用いて発泡体を形成させることには、いくつかの処理上の利点がある。気体/ポリマーマトリックスの相互作用はほとんど存在せず、溶存気体のせいで溶融強度が低下するという懸念も軽減される。発泡用気体とポリマーとの溶解性、拡散性及び透過性に代表される適合性は、なおさら問題ない。これにより、セルの誘導及び成長現象をポリマー/気体の適合性から切り離すことが可能となる。押出機についての温度プロファイルは、生ポリマー押出成形について用いられる温度プロファイルにより一層類似したものになり、処理ウィンドウは他の2つの発泡技術形式より広いものとなる。膨張用気体によって形成されるバブルは通常、他の2つの発泡技術において起こり得るように破裂したり合体して大きなボイドになったりすることがない。発泡体のセルサイズ分布は、ミクロスフェア粒子の粒度分布の関数である。例えば、混合物を高温に長時間保つと、形成されたバブル内の気体がそれらの薄いシェルからポリマーマトリックス中に逃げ出してバブルが崩壊してしまうので、プロセスの温度及び滞留時間の組合せに特に注意を払うべきである。プロセスの温度及び滞留時間の制御は、良好な閉じた発泡体の形成にとって重要である。ミクロスフェアについては、成核剤を加える必要はない。
【0068】
ミクロスフェア発泡は、連続式又はバッチ式の発泡方法において用いることができ、(メタ)アクリルシロップの重合の間又は後に膨張させることができる。
【0069】
(メタ)アクリルシロップ中には、化学的発泡剤もまた用いることができる。本発明のための有用な化学的発泡剤には、(メタ)アクリルポリマーに対して適合性であり、同様の分解温度(220~240℃)を有するものが含まれる。化学的発泡剤の場合、化学物質をその分解温度以上に加熱して分解することによって、気体が作り出される。物理的発泡剤の場合、ポリマー中に気体を直接導入するか、又は液状発泡剤をその蒸発温度以上に加熱して蒸発させることによってポリマー中に気体を導入する。化学的発泡剤は主に密度低下が70%の高密度発泡体用に用いられるのに対して、物理的発泡剤は密度低下が10倍以上の軽い発泡体を製造することができる。
【0070】
化学的発泡剤は、固体又は液体であることができる。有用な発泡剤には、限定されるわけではないが、以下のものが含まれる:アゾジカルボンアミド、アゾジイソブチロニトリル、スルホニルセミカルバジド、4,4-オキシベンゼン、アゾジカルボン酸バリウム、5-フェニルテトラゾール、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、ヒドラゾジカルボン酸ジイソプロピル、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホヒドラジド、イサト酸無水物、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロテレフタルアミド、クエン酸、重炭酸ナトリウム、クエン酸一ナトリウム、無水クエン酸、トリヒドラジノトリアジン、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン及びp-トルエンスルホニルヒドラジド又は2種以上のこれら発泡剤のブレンド。化学的発泡剤の混合物及び/又は化学的発泡剤と物理的発泡剤との混合物もまた、本発明によって構想される。
【0071】
発泡剤の割合は、目標とする密度低下を達成するために、0.1~10%まで変えることができる。発泡剤としてクエン酸一ナトリウム0.5%をプロセス助剤(Arkema社製のPLASTICSTRENGTH p566)10%と共に用いた場合に、発泡アクリル棒材(Arkema社製のPLEXIGLA V045樹脂)において40%の密度低下を達成することができる。発泡剤としてのイオウヒドラジン誘導体0.6%及び加工助剤(Plastistrength P566)5%を用いて、発泡アクリルシート(Plexiglas V045樹脂)において33%の密度低下を達成することができる。この方法で発泡させたアクリルシートは、広いセルサイズ分布のせいで、粗い表面を有する。セルサイズ及び表面特性は、下記の方法によって改善することができる。
【0072】
他の添加剤:
【0073】
前記液状(メタ)アクリルシロップには、その他の随意としての添加剤を含有させることもできる。これらの添加剤には、以下のものが含まれる:重合用の活性剤、繊維、着色剤、フィラー、カーボンナノチューブ、グラファイト酸化物、ナノ粒子(所望の特性を達成するためにモノマー/開始剤/発泡剤の混合物に加えることができるもの)。
【0074】
液状(メタ)アクリルシロップの(メタ)アクリルモノマーに対する前記活性剤の含有率は、100ppm~10000ppm(重量による)、好ましくは200ppm~7000ppm(重量による)、有利には300ppm~4000ppmである。
【0075】
1つの実施形態において、ナノ粒子は、熱伝導性及び/又は電気伝導性の熱可塑性ナノ複合材料発泡体を形成させるために加えることができる。この場合、乾燥未膨張ミクロスフェア及び(メタ)アクリル液状樹脂を、1~20重量%の好適な高いアスペクト比で、カーボンナノチューブ(Arkema社のGRAPHISTRENGTH)又はグラフェン、グラファイトナノ粒子、グラファイト酸化物又は窒化ホウ素等の伝導性ナノ粒子と組み合わせることができる。この混合物を1/8インチ厚のガラスモールド中で始動させて重合させることができる。シートを180℃に15分間加熱した際に、膨張することができる。膨張性ミクロスフェアが元の直径の10倍まで膨張することを考慮に入れると、スフェアの表面は10000%までの二軸ひずみを受ける可能性があり、これは隣り合った膨張しているスフェアの間に流れ場を作り出す。この流れ場は、伝導性粒子の一軸又は二軸延伸を誘導することがあることが提案されている。ミクロスフェアによって作り出される閉じたセルの形態はまた、双連続性の浸透していく伝導性ネットワークを促進する。従って、このような複合材料は、高伝導性ネットワークにとって理想的な形態を有する可能性がある。電気伝導性発泡体は、パッケージングや電子機器絶縁等の電磁干渉(Electromagnetic Interference)(EMI)シールドを要する用途にとって理想的な低密度材料である。
【0076】
1つの実施形態において、本発明の液状(メタ)アクリルシロップは、含浸性繊維用に用いることができる。含浸は、モールド中で、例えば真空注入や湿式圧縮成形によって、又は長繊維に液状(メタ)アクリルシロップを浸漬、噴霧若しくはその他の方法で含浸させることによって、行うことができる。含浸させた繊維を次いで重合させ、発泡させる。
【0077】
本発明の繊維質基材には、限定されるわけではないが、マット、布帛、フェルト又は不織布が含まれ、これらはストリップ(strip)、ラップ(lap)、ブレード(braid)、ロック(lock)又はピース(piece)の形にあることができる。前記繊維質材料は、一次元、二次元又は三次元の、様々な形状及び寸法を有することができる。繊維質基材は1つ以上の繊維の組立体を含む。繊維が連続性のあるものである場合、それらの組立体は布帛を形成する。
【0078】
一次元形態は、線状の長繊維である。繊維は、不連続的又は連続的であってよい。繊維は、ランダムに配列していてもよく、互いに平行な連続フィラメントとして配列していてもよい。繊維は、そのアスペクト比によって規定され、これは繊維の長さと直径との間の比である。本発明において用いられる繊維は、長繊維又は連続繊維である。前記繊維は、少なくとも1000、好ましくは少なくとも1500、より一層好ましくは少なくとも2000、有利には少なくとも3000、特に有利には少なくとも5000のアスペクト比を有する。
【0079】
二次元形態は、繊維質マット又は不織補強材又は織りロービング又は繊維の束であり、これらは編むこともできる。
【0080】
三次元形態は、例えば積み重ねられた又は折り畳まれた繊維質マット又は不織補強材又は繊維の束又はそれらの混合物、二次元形態の第3次元における組立体である。
【0081】
繊維質材料は、天然のもの又は合成のものであることができる。天然材料には、限定されるわけではないが、植物繊維、木材繊維、動物繊維又は鉱物繊維、例えばサイザル麻、ジュート、麻、亜麻、綿、ココナッツ繊維、バナナ繊維、羊毛又は毛髪が含まれる。
【0082】
合成材料には、限定されるわけではないが、熱硬化性若しくは熱硬化性ポリマーであるポリマー繊維又はそれらの混合物が含まれる。これらには、ポリアミド(脂肪族若しくは芳香族)、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂及びビニルエステルが含まれる。
【0083】
鉱物繊維は好ましい実施形態であり、これにはガラス繊維、特にタイプE、R若しくはS2のもの、炭素繊維、ホウ素繊維又はシリカ繊維が含まれる。
【0084】
1つの実施形態において、本発明の液状(メタ)アクリルシロップは、発泡及び重合に先立って短ガラス繊維等の短繊維と混合することができる。この場合、モールド中での繊維の含浸は必要ではない。繊維は5000未満、好ましくは3000未満、より一層好ましくは2000未満、有利には1500未満、特に有利には1000未満のアスペクト比を有する。
【0085】
繊維質材料は、天然のもの又は合成のものであることができる。天然材料には、限定されるわけではないが、植物繊維、木材繊維、動物繊維又は鉱物繊維、例えばサイザル麻、ジュート、麻、亜麻、綿、ココナッツ繊維、バナナ繊維、羊毛又は毛髪が含まれる。
【0086】
合成材料には、限定されるわけではないが、熱硬化性若しくは熱硬化性ポリマーであるポリマー繊維又はそれらの混合物が含まれる。これらには、ポリアミド(脂肪族若しくは芳香族)、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂及びビニルエステルが含まれる。
【0087】
鉱物繊維は好ましい実施形態であり、これにはガラス繊維、特にタイプE、R若しくはS2のもの、炭素繊維、ホウ素繊維又はシリカ繊維が含まれる。
【0088】
方法:
【0089】
発泡剤は、アクリルモノマーに組み込んで未膨張のままにすることができ、又は重合中にその場で膨張させる。
【0090】
本発明の発泡剤は、液状(メタ)アクリルシロップに加えられる。安定した懸濁のためはより高い粘度が必要なので、膨張性ミクロスフェアはモノマーのみに加えられるものではない。
【0091】
発泡剤は、(メタ)アクリルモノマーの重合の間又はその後に、作動させることができる。1つの実施形態においては、重合の際に生じる発熱が重合開始と同時に発泡体を硬化させるように、開始剤を選択することができる。
【0092】
別の実施形態においては、液状(メタ)アクリルシロップを重合させた後に発泡剤を作動させて発泡体を製造することができる。
【0093】
発泡体及び複合材料発泡体は、一般的な方法によって形成させることができ、これには、限定されるわけではないが、真空注入、湿式圧縮成形、樹脂トランスファー成形、圧縮樹脂トランスファー成形、レイアップ/スプレーアップ、フィラメントワインディング及び引抜成形が含まれる。
【0094】
1つの実施形態においては、少なくとも1つの本発明の発泡体層が少なくとも1つの非発泡層と組み合わされた多層構造が形成される。これは、発泡体の層が非発泡材料の2つの層(これらは(メタ)アクリル層又はスチレン等の適合性ポリマーであることができる)の間に形成された発泡体-コア構造であることができる。
【0095】
本発明の方法のいくつかの例には、次の例が含まれる:当業者は提供された例に基づいて本発明の別の方法及び変法を容易に想像できる。Elium(登録商標)液状アクリル樹脂は、(メタ)アクリルポリマー10~60重量%を(メタ)アクリルモノマー40~90重量%中に溶解させた溶液である。
【0096】
a)1つの実施形態においては、乾燥未膨張Expancel(登録商標)ミクロスフェア950DU80をElium(登録商標)190中に実験室用振盪機を用いて分散させる。Elium(登録商標)/Expancel(登録商標)混合物を、61℃の水浴中の1/8インチ厚ガラスモールド中で、1%Perkadox(登録商標)16によって始動させ、重合させる。平滑且つ光沢のある表面を有する1/8インチ厚の半透明シートが得られる。
【0097】
180℃において15分間加熱した際に、これはその元の体積の8~9倍まで膨張する。10重量%Expancel 950 DU 80ミクロスフェアにより、90%の密度低下を得ることができる。安定な懸濁液を得るためには所定の粘度が必要なので、粒子はMMA中に分散したまま留まることはできないこと、及び100cP粘度のEliumグレードは10重量%までの粒子を保持することができることに注目されたい。
【0098】
この方法によって調製された発泡PMMAシートは、信じられないほど均一なセルサイズ(108±30μm)及びセル構造を有する;シートの表面/エッジとシートの中央との間に違いはない。密度低下90%の発泡体シートは、25°Fにおいて0.21のkファクターを有する。密度低下がはるかに大きいせいでもっと低いkファクター(断熱においてより良好)を有するPU発泡体と比較して、本発明のアクリル発泡体はもっと小さくて狭いセルサイズ分布を有する。
【0099】
b)自己発泡性PMMAベースの液状樹脂はまた、a)に記載した方法と同様の手順を用いて処方することもできる。この場合、Elium(登録商標)樹脂/MMA/未膨張Expancel(登録商標)ミクロスフェア混合物を、続いて起こる反応発熱がExpancel(登録商標)ミクロスフェアの発泡を引き起こすように、好適なラジカル開始剤パッケージと組み合わせる。従って、提案されるPMMAベースの液状樹脂は、同時に発泡して硬化する。この処方は、Expancel 820 DU 40のような低い発泡温度を有する乾燥未膨張Expancelミクロスフェアを必要とする。
【0100】
c)ELIUM(登録商標)樹脂を用い、真空注入及び湿式圧縮成形によって、Expancel(登録商標)未膨張ミクロスフェアを有する熱可塑性複合材料を調製する。1つの実験において、ELIUM(登録商標)150に5重量%の未膨張Expancel(登録商標)ミクロスフェアを加え、開始剤として2重量%のLUPEROX(登録商標)AFR40を用いる。標準的な真空注入レイアップ法(即ち、ピールプライ、フローメディア、粘着テープ及びバッグ)を用いて、混合物をガラス繊維マット補強材中に注入した。このプロセスは室温において行われ、室温で約45分間で硬化させた。硬化したら、積層された複合材料を離型させ、切断していくつかの切片にした。1つの切片を200℃のオーブン中に5分間吊るしてExpancel(登録商標)粒子を膨張させた。別の切片を、0.100インチのセットキャビティ厚さを有する予備加熱されたスチール製モールド中に入れた。このモールドを油圧プレスに入れ、約50psiを適用してモールドを閉じ、複合材料の膨張を平面のみに制限した。湿式圧縮成形プロセスを用いて、未膨張粒子(約5重量%)を組み込んだ複合パネルの製造に成功した。2回目の加熱段階により、Expancel粒子が意図した通りに膨張し、ELIUM(登録商標)複合材料部品の40%密度低下をもたらした。
【0101】
用途:
【0102】
本発明の複合熱可塑性(メタ)アクリル発泡体物品には、当業者であれば本明細書及び実施例に基づいて想像できるように、多くの用途がある。発泡体複合材料は、多くの用途のための部品を形成させるために用いることができ、かかる部品には、限定されるわけではないが、以下のものが含まれる:自動車部品、ボート部品、列車部品、スポーツ用品、飛行機部品、ヘリコプター部品、宇宙船部品、ロケット部品、太陽光発電モジュール部品、風力タービン部品、家具部品、建設部品、建築部品、電話若しくは携帯電話部品、コンピューター若しくはテレビ部品、プリンター部品又はコピー部品。
【0103】
包装材料における用途については、ポリウレタン発泡体と違って、この発泡技術は有害なジイソシアネートを必要とせず、有害なVOCを発生させない。電子機器包装の用途では、ジイソシアネートがない液状発泡性シロップが求められている。
【実施例0104】
例1:発泡シートを得るためにExpancel(登録商標)ミクロスフェアを使用
【0105】
20gの乾燥未膨張Expancel(登録商標)950DU80ミクロスフェアを、180gのElium(登録商標)190中に、実験室用振盪機を用いて室温において30分間分散させる。Elium(登録商標)190は、MMAとアクリルコポリマーとの粘度100cPの混合物である。分散したら、Elium(登録商標)/Expancel(登録商標)混合物中に2gのPerkadox(登録商標)16を開始剤として手動混合する。次いでこの混合物を1/8インチ厚ガラス製モールド中に注ぎ、密封する。このモールドを水浴中に浸漬して61℃において約40分間重合させる。平滑で光沢のある表面を有する1/8インチ厚の半透明シートが得られる。このシートから2インチ×2インチのサイズのピースを切り取り、180℃のエアーオーブン中に15分間吊るしてExpancel(登録商標)ミクロスフェアを膨張させる。この条件を用いて、4インチ×4インチのサイズで1/4インチ厚の発泡シートを得ることができる。発泡シートは、密度低下90%で、均一なセルサイズ(108±30μm)及び25°Fにおいて0.21のkファクターを有する。
【0106】
例2:真空注入によって複合部品を得るためにExpancel(登録商標)ミクロスフェアを使用
【0107】
15gの乾燥未膨張Expancel(登録商標)920DU20を、285gのElium(登録商標)150に加え、実験室用振盪機を用いて室温において30分間混合する。分散したら、この混合物に開始剤として6gのLuperox(登録商標)AFR40を加える。標準的な真空注入レイアップ法(即ちピールプライ、フローメディア、粘着テープ及びバッグ)を用いて、混合物をガラス繊維マット補強材中に注入した。プロセスは室温において実施し、室温において約45分間硬化させた。硬化したら、複合材料パネルから1インチ×1インチの切片を切り取る。この切片を200℃のエアーオーブン中に吊るしてExpancel(登録商標)ミクロスフェアを膨張させる。別の切片を、セットキャビティ厚0.100インチの予め加熱されたスチール製モールド中に入れた。このモールドを油圧プレスに入れ、約50psiを適用してモールドを閉じ、複合材料の膨張を平面のみに制限した。両方の膨張方法について得られた密度低下は、30~40%である。
【0108】
例3:液体圧縮成形によって複合材料部品を得るためにExpancel(登録商標)ミクロスフェアを使用
【0109】
3.3gの乾燥未膨張Expancel(登録商標)031DU40ミクロスフェアを、63.2gのElium(登録商標)150中に、室温において手動混合する。次の工程において、この混合物に、開始剤として1.3gのLuperox(登録商標)AFR40を加える。2個の1/8インチのスチール製プレートの間に直径3.5mmの円形のゴムスペーサーを配置させ、スチール製プレートの間のゴムリングの内側に、丸い形のPPG MatVantage IIの細断してステッチしたガラス繊維マットを敷くことによって、モールドをセットアップする。このモールドを開いて繊維質マット上に前記混合物を注ぎ、この混合物を木製舌圧子で均一に広げる。次いでこのモールドを60℃に予め加熱した油圧プレス中に入れ、圧力を加えて硬化プロファイルの間に徐々に100psiから6000psiにする。約10分後に、複合材料パネルを硬化させ、1インチ×1インチの切片を切り取る。1つの切片を、180℃に予め加熱したエアーオーブン中に吊るす。別の切片を、同じ方法だがしかし温度を下げた室温の油圧プレス中で約50psiの圧力で、z方向の膨張を最小限に抑えて、膨張させる。密度低下は約20~32%であり、温度を下げて複合材料部品を圧縮した場合には、より平滑であり/より光沢のある表面を得ることができる。形成された部品を
図1の右側に示す。
【0110】
「クラスA」の表面を達成するための方法の例:
【0111】
上記のELIUM(登録商標)樹脂/Expancel(登録商標)複合材料部品をモールドキャビティ中で硬化させる。硬化したら、モールドを僅かに開いて多少のフリーボリュームを作る。次いで、Expancel(登録商標)粒子が膨張し始める温度点まで、モールドを加熱する。この膨張は、樹脂を器具のキャビティ壁に効果的に押しつける。次いでモールドを冷まし、部品を安定化させ、離型させる。
【0112】
【0113】
上記の方法の変法は、モールド中で複合材料部品を成形し、次いで離型させ、僅かに大きい空隙を有する別のモールド(例えば全体的に0.5mm)に移すことを含み、前記部品を次いでモールド中で加熱するか、又はモールドを閉じる前に加熱する。次いでモールドを閉じて、厚さの均一性を達成するために、モールド内で部品を圧縮する。開かれないモールドからの部品、及び最初に成形し、次いで僅かにモールドを開いてさらに膨張させることによって形成された部品の例。
【0114】
モールドを開いて発泡させることを伴う方法、又はモールド移動を伴う方法は、溶融加工部品用ともなるだろう。
前記化学的発泡剤がアゾジカルボンアミド、アゾジイソブチロニトリル、スルホニルセミカルバジド、4,4-オキシベンゼン、アゾジカルボン酸バリウム、5-フェニルテトラゾール、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、ヒドラゾジカルボン酸ジイソプロピル、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホヒドラジド、イサト酸無水物、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロテレフタルアミド、クエン酸、重炭酸ナトリウム、クエン酸一ナトリウム、無水クエン酸、トリヒドラジノトリアジン、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p-トルエンスルホニルヒドラジド及びそれらのブレンドより成る群から選択される、請求項2に記載の液状(メタ)アクリルシロップ。
セルキャスト、ソリッドステートキャスティング、真空注入、引抜成形、湿式圧縮成形、樹脂トランスファー成形、圧縮樹脂トランスファー成形、レイアップ/スプレーアップ又はフィラメントワインディングによって前記構造体の形成を行う、請求項10~14のいずれかに記載の方法。
12. 25°Fにおいて0.7未満、好ましくは0.5未満、より一層好ましくは0.25未満のkファクターを有する(メタ)アクリルシートを含む、局面9~11のいずれかの熱可塑性(メタ)アクリル発泡体物品。
21. 長繊維と液状(メタ)アクリルシロップとを組み合わせる工程を、グラビアコーティング、浸漬ディップコーティング、スロットダイコーティング、カーテンコーティング又はギャップコーティングによって行う、局面20の方法。