(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155326
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】活性化可能光学フィルタを含む眼鏡レンズ及びそのような眼鏡レンズを含む光学機器
(51)【国際特許分類】
G02C 7/00 20060101AFI20231013BHJP
G02F 1/15 20190101ALI20231013BHJP
G02F 1/155 20060101ALI20231013BHJP
G02F 1/137 20060101ALN20231013BHJP
【FI】
G02C7/00
G02F1/15 503
G02F1/155
G02F1/137
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023136371
(22)【出願日】2023-08-24
(62)【分割の表示】P 2020522953の分割
【原出願日】2018-10-19
(31)【優先権主張番号】17306462.7
(32)【優先日】2017-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・バレエ
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・アルシャンボー
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・エスケシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ポール・カノ
(72)【発明者】
【氏名】ロイク・クエール
(72)【発明者】
【氏名】ウィリー・ショーダ
(57)【要約】
【課題】改良された活性化可能光学フィルタを含む眼鏡レンズを提供する。
【解決手段】本発明は、少なくともエレクトロクロミック素子を含むと共に少なくとも3種類の構成間で能動的に切り替え可能に構成されている活性化可能光学フィルタを含む眼鏡レンズに関し、-第1の構成において、活性化可能光学フィルタは均一であり、-第2の構成において、活性化可能光学フィルタは局所光源からの光を選択的に減衰させ、-第3の構成において、活性化可能光学フィルタは均一であり、-各構成間の色度差ΔChromは20以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡着用者による着用を意図した眼鏡レンズであって、前記眼鏡レンズが活性化可能光学フィルタ(10)を含み、前記活性化可能光学フィルタ(10)が少なくとも1個のエレクトロクロミック素子を含むと共に少なくとも3種類の異なる構成間で能動的に切り替え可能に構成されていて、
-第1の構成において、前記活性化可能光学フィルタ(10)が均一であって前記活性化可能光学フィルタ(10)を透過する光が彩度C*1及び色相h°1を有し、
-第2の構成において、前記活性化可能光学フィルタ(10)が局所光源からの光を選択的に減衰させ、前記活性化可能光学フィルタ(10)で透過率が最小の箇所を透過する光が彩度C*2及び色相h°2を有し、
-第3の構成において、前記活性化可能光学フィルタ(10)が均一であって前記活性化可能光学フィルタ(10)を透過する光が彩度C*3及び色相h°3を有し、
-(C*1,h°1)、(C*2,h°2)及び(C*3,h°3)の各々から選んだ2組のペア間の色度差ΔChromが20以下であり、
前記眼鏡レンズは、少なくとも第1のゾーン及び第2のゾーンを含み、前記第2の構成において、前記活性化可能光学フィルタ(10)が前記第2のゾーンよりも前記第1のゾーンで光を多く減衰させる、眼鏡レンズ。
【請求項2】
前記エレクトロクロミック素子がエレクトロクロミック着色化合物及び少なくとも2個の透明電極(14、16)を含んでいる、請求項1に記載の眼鏡レンズ。
【請求項3】
少なくとも1個の透明電極(14、16)が導電性を有し、前記導電性が前記活性化可能光学フィルタ(10)の少なくとも一方向に連続的に変化している、請求項2に記載の眼鏡レンズ。
【請求項4】
少なくとも1個の透明電極(14、16)が、前記透明電極(14、16)に少なくとも2個の領域(A1、A2、A3)を形成すべく配置された抵抗手段(18、20、22)を含み、前記透明電極(14、16)の導電性が前記少なくとも2個の領域(A1、A2、A3)間で連続的に変化している、請求項3に記載の眼鏡レンズ。
【請求項5】
前記抵抗手段が抵抗ブリッジ(18)を含んでいる、請求項4に記載の眼鏡レンズ。
【請求項6】
前記抵抗手段(20)が前記透明電極(14、16)に刻印されている、請求項4に記載の眼鏡レンズ。
【請求項7】
前記抵抗手段(20)が前記透明電極(14、16)の3個の領域(A1、A2、A3)を形成すべく配置され、前記抵抗手段が前記透明電極(14、16)の2個の刻印された部分を含んでいる、請求項4又は6に記載の眼鏡レンズ。
【請求項8】
前記少なくとも2個の透明電極(14、16)が重なって配置されていて、前記抵抗手段(22)が前記透明電極(14、16)の重なりを含んでいる、請求項4に記載の眼鏡レンズ。
【請求項9】
前記抵抗手段(18、20、22)が、前記少なくとも2個の領域(A1、A2、A3)間を遷移可能にすべく構成されている、請求項4~8のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項10】
前記第2の構成において前記活性化可能光学フィルタ(10)が異方性である、請求項1~9のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項11】
前記エレクトロクロミック素子がエレクトロクロミック着色化合物及び活性化可能偏光素子(24)を含んでいる、請求項10に記載の眼鏡レンズ。
【請求項12】
前記エレクトロクロミック素子及び前記活性化可能偏光素子(24)が互いに独立に制御されている、請求項2~8のいずれか1項に依存する場合における、請求項11に記載の眼鏡レンズ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の眼鏡レンズと、前記活性化可能光学フィルタ(10)が少なくとも3種類の構成間で切り替わるよう前記活性化可能光学フィルタ(10)を制御すべく構成された制御装置とを含む光学機器。
【請求項14】
光度パラメータを検出すべく構成された少なくとも1個のセンサを更に含み、前記制御装置が前記センサから提供された光度パラメータに基づいて前記活性化可能光学フィルタ(10)を制御すべく構成されている、請求項13に記載の光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個のエレクトロクロミック素子を含む活性化可能光学フィルタを含み、少なくとも3種類の構成間で能動的に切り替え可能に構成されている、眼鏡着用者による着用を意図された眼鏡レンズに関する。
【0002】
本発明は更に、そのような眼鏡レンズを含む光学機器に関する。
【背景技術】
【0003】
日常生活を通じて、人の両眼は強い光度に晒されて眩しく不快になることがある。ソーラーレンズ又はサングラスは、そのようなサングラスの着用者の両眼を眩しさから保護すべく構成されているが、高い光度が稀で短時間しか継続しない時期、特に冬、秋及び春に正しく着用されないため、当該期間中は保護効果が無い。従って、透明な状態から低光透過状態に切り替え可能な眼鏡を提供する必要がある。
【0004】
通常は強い自然光度を有する紫外(UV)線に晒されたならば色が濃くなるように構成された調光レンズがある。しかし、そのような調光レンズは受動的であり、特定の条件下で、眼鏡着用者の要求により又は自動的に、起動することができない。また、そのような調光レンズは通常、人工光又は屋内では起動しない。
【0005】
更に、例えば液晶又はエレクトロクロミック系に基づく活性化可能なソーラーレンズがある。このような活性化可能ソーラーレンズは、着用者の両眼を強い光度から保護すべく透明状態から低光透過状態に切り替わることができる。
【0006】
にもかかわらず、活性化可能ソーラーレンズの中間状態を有することが大いに望まれ、前記中間状態は、高エネルギー青色光等の潜在的に有害な波長の大部分をフィルタリングして、ある状況下でコントラスト又は視覚的快適さを高めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
着用者の両眼が受光した光のスペクトルを部分的に変調する受動フィルタがある。しかし、そのような受動フィルタではスペクトルフィルタリング機能を最適な時点で起動することができない。
【0008】
また、ピクセル化されたレンズを含む能動眼鏡がある。しかし、そのような能動眼鏡のピクセル化されたレンズは完全に透明ではなく、制御が困難である。更に、ピクセル化されたレンズでは通常ピクセルの数が制約されるため、能動眼鏡の着色が不連続になる。
【0009】
更に、光の透過勾配を得るべく厚さが可変な眼鏡レンズの能動光学フィルタのエレクトロクロミックセルを実現できる可能性がある。しかし、この解決策では勾配が固定的に画定され、眼鏡レンズ全体にわたり均一な色合いが得られない。
【0010】
本発明の目的は、改良された活性化可能光学フィルタを含む眼鏡レンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的のため、本発明は、眼鏡着用者による着用を意図した眼鏡レンズを提案するものであり、当該眼鏡レンズは活性化可能光学フィルタを含み、当該活性化可能光学フィルタは少なくともエレクトロクロミック素子を含むと共に少なくとも3種類の構成間で能動的に切り替え可能に構成されていて、
-第1の構成において、活性化可能光学フィルタは均一であって活性化可能光学フィルタを透過する光が彩度C*1及び色相h°1を有し、
-第2の構成において、活性化可能光学フィルタは局所光源からの光を選択的に減衰させ、活性化可能光学フィルタで透過率が最小の箇所を透過する光が彩度C*2及び色相h°2を有し、
-第3の構成において、活性化可能光学フィルタは均一であって活性化可能光学フィルタを透過する光が彩度C*3及び色相h°3を有し、
-(C*1,h°1)、(C*2,h°2)及び(C*3,h°3)の各々から選んだ2組のペア間の色度差ΔChromは20以下である。
【0012】
有利な特徴として、本発明による眼鏡レンズは、透過率及び/又は色合いの強度が眼鏡レンズの表面全体又は一部にわたり可変である眼鏡レンズが得られるようにする。透過率及び/又は色合いの変化は有利な特徴として突然でないため、眼鏡レンズの透過率及び/又は着色が不連続にならない。
【0013】
本発明による眼鏡レンズは3個の異なる構成の間で切り替え可能であり、その各々が異なる光フィルタリング機能を提供する。
【0014】
第1の構成は透明状態に対応し、不変な色覚を提供する。
【0015】
第2の構成は、潜在的に有害な波長からの保護等、特定のフィルタ機能を提供することができ、着用者のコントラスト又は視覚的快適さを高める。
【0016】
第3の構成は防眩機能を提供する。
【0017】
複数の実施形態によれば、本発明による眼鏡レンズは更に、任意の可能な組み合わせによる以下の一つ又は複数の特徴を含んでいてよい。すなわち、
-エレクトロクロミック素子は、エレクトロクロミック着色化合物及び少なくとも2個の透明電極を含み、及び/又は
-エレクトロクロミック素子はエレクトロクロミックセルであり、及び/又は
-少なくとも1個の透明電極が導電性を有し、当該導電性が活性化可能光学フィルタの少なくとも一方向に連続的に変化し、及び/又は
-少なくとも1個の透明電極が、透明電極に少なくとも2個の領域を形成すべく配置された抵抗手段を含み、透明電極の導電性が当該少なくとも2個の領域間で連続的に変化し、及び/又は
-抵抗手段が抵抗ブリッジを含み、及び/又は
-抵抗手段が透明電極に刻印されていて、及び/又は
-抵抗手段が透明電極の3個の領域を形成すべく配置され、抵抗手段が透明電極内の2個の刻印された部分を含み、及び/又は
-少なくとも2個の透明電極が重なって配置され、抵抗手段が透明電極の重なりを含み、及び/又は
-抵抗手段が、少なくとも2個の領域間を遷移可能にすべく構成され、及び/又は
-第1の構成において、活性化可能光学フィルタが80%以上の透過率T1を有し、及び/又は活性化可能光学フィルタを透過する光が15以下の彩度C*1を有し、及び/又は
-第1の構成が活性化可能光学フィルタの非起動構成に対応し、及び/又は
-第2の構成において、局所光源が強い光源であり、及び/又は
-眼鏡レンズが少なくとも第1のゾーン及び第2のゾーンを含み、第2の構成において、活性化可能光学フィルタが第2のゾーンよりも第1のゾーンで光を多く減衰させ、及び/又は
-第2の構成において、活性化可能光学フィルタが、眼鏡レンズの別の部分よりも眼鏡レンズの表面の一部で低い透過率を有し、及び/又は
-第2の構成において、活性化可能光学フィルタが局所光源の光線の偏光方向に基づいて光を減衰させ、及び/又は
-第2の構成において、活性化可能光学フィルタが透過率の勾配を有し、及び/又は
-第2の構成において、活性化可能光学フィルタが異方性であり、及び/又は
-エレクトロクロミック素子が、エレクトロクロミック着色化合物及び活性化可能偏光素子を含み、及び/又は
-エレクトロクロミック素子と活性化可能偏光素子が互いに独立に制御され、及び/又は
-第3の構成において、活性化可能光学フィルタが、43%以下、好適には18%以下、より好適には8%以下の透過率T3を有し、及び/又は
-透過率T2が透過率T3に等しく、第2の構成における活性化可能偏光素子の偏光効率PE2が、第3の構成における活性化可能偏光素子の偏光効率PE3とは少なくとも10%異なり、及び/又は
-透過率T2が透過率T3に等しく、第2の構成における活性化可能偏光素子の偏光方向PD2が第3の構成における活性化可能偏光素子の偏光方向PD3とは少なくとも15°異なり、及び/又は
-エレクトロクロミック着色化合物が、ビオロゲン、黄色ビオロゲン及びフェナジンからなるリストに含まれ、及び/又は
-眼鏡レンズが着用者に適合された光学的機能を有している。
【0018】
活性化可能光学フィルタの第3の構成において、エレクトロクロミック素子は好適に起動される。
【0019】
より厳密には、第1の構成は非起動状態(エレクトロクロミック及び偏光素子の両方が)に好適に対応し、第2の構成は活性化可能偏光素子の起動状態に好適には対応し、第3の構成はエレクトロクロミック素子の起動状態に好適に対応しており、最終的に偏光素子の起動状態に重ね合わされる。
【0020】
本発明は更に、本発明による眼鏡レンズと、活性化可能光学フィルタが少なくとも3種類の構成間で切り替わるよう活性化可能光学フィルタを制御すべく構成された制御装置とを含む光学機器に関する。
【0021】
複数の実施形態によれば、本発明による光学機器は更に、任意の可能な組み合わせによる以下の一つ又は複数の特徴を含んでいてよい。すなわち、
-光学機器が光度パラメータを検出すべく構成された少なくとも1個のセンサを含み、制御装置がセンサから提供された光度パラメータに基づいて活性化可能光学フィルタを制御すべく構成され、及び/又は
-眼鏡着用者が眼鏡レンズを着用した場合に、センサが着用者の環境に位置する局所光源の光線方向を測定すべく構成されている。
【0022】
以下ではCIELab比色モデルを用いる。当該比色モデルにおいて、輝度/明度、彩度C*、色相h°、赤/緑位置a*、及び黄/青位置b*を、標準D65発光体及び標準的な観察者の嗜好(角度10°)に基づいて評価する。
【0023】
(C*1,h°1)と(C*2,h°2)の間の色度差ΔChromを、明度とは無関係に色間のユークリッド距離として定義する。
【数1】
ここにa*及びb*は同色の円柱座標C*及びh°に対応するデカルト色座標である。
【0024】
この色度差は、色の明度成分を含むLabΔEとして知られる標準的な色差ではない。本発明において、明度は様々な構成において顕著に変化する場合があり、色比較は色度に限定される。
【0025】
本発明の他の特徴及び利点は、請求項及び、図面の参照に限定されない例を挙げて以下に記述するいくつかの実施形態からより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態による活性化可能光学フィルタを示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による活性化可能光学フィルタの透明電極を表す図である。
【
図3】本発明による活性化可能光学フィルタを透過する光を活性化可能光学フィルタに印加された電圧の関数として表すグラフである。
【
図4】本発明の実施形態による活性化可能光学フィルタの透明電極を表す図である。
【
図5】本発明の実施形態による活性化可能光学フィルタの透明電極を表す図である。
【
図6a】本発明の一実施形態による活性化可能光学フィルタの上下の透明電極を表す図である。
【
図6b】本発明の一実施形態による活性化可能光学フィルタの上下の透明電極を表す図である。
【
図7】本発明の一実施形態による活性化可能光学フィルタを示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態による活性化可能光学フィルタの透明電極を表す図である。
【
図9】本発明の一実施形態による活性化可能光学フィルタを表す図である。
【
図10a】本発明の一実施形態による活性化可能光学フィルタを表す図である。
【
図10b】本発明の一実施形態による活性化可能光学フィルタを表す図である。
【
図11】本発明の一実施形態による活性化可能光学フィルタを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図の要素は簡潔且つ明快さを旨として示されており、必ずしも一定の比率で描かれている訳ではない。例えば、本発明の複数の実施形態に対する理解を深めるべく、図のいくつかの要素の寸法が他の要素に比べて強調されている場合がある。
【0028】
本発明は、眼鏡着用者による着用を意図された眼鏡レンズ、例えば視力矯正用レンズに関する。
【0029】
本発明による眼鏡レンズは、着用者に適合された光学的機能を有していてよい。
【0030】
本発明における意味として、光学的機能とは、光学レンズが光学レンズ透過する光線に及ぼす影響を各視線方向毎に与える機能に対応している。
【0031】
光学的機能は、屈折機能、吸光又は偏光機能を含んでいてよい。
【0032】
屈折機能は、光学レンズの度数、すなわち平均度数、視線方向の機能としての非点収差又はプリズム由来の偏位に対応している。
【0033】
本発明による眼鏡レンズは、着用者に適合された特定の光学設計を有していてよい。
【0034】
用語「光学設計」は、視力矯正用レンズの屈折機能を決定可能にするパラメータの組を指定する視力矯正分野の当業者には公知の広く用いられる用語であり、各視力矯正用レンズ設計者は、特に累進視力矯レンズを自身で設計する。
【0035】
一例として、視力矯正用累進レンズの「光学設計」は、老眼者があらゆる距離を明瞭に視認できる能力を復元し、且つ中心窩視、中心窩外視、両眼視等の全ての生理学的視覚的機能を最適に尊重し、不要な非点収差を最小限に抑える累進面の最適化の結果得られる。
【0036】
例えば、累進レンズ設計は、日常生活でレンズ着用者を使用する、子午線とも呼ばれる主視線方向に沿った度数曲線、及び度数の分布、例えばレンズの端部、すなわち主視線方向から離れた領域における平均度数又は非点収差を含んでいる。
【0037】
眼鏡レンズは、少なくとも3種類の構成間で能動的に切り替え可能に構成された活性化可能光学フィルタを含んでいる。
【0038】
切り替えは制御装置により誘発されてよい。
【実施例0039】
第1の構成において、活性化可能光学フィルタは均一であって、活性化可能光学フィルタを透過する光は彩度C*1及び色相h°1を有している。
【0040】
第1の構成は活性化可能光学フィルタの非起動構成に対応している。第1の構成における光度機能に対する効果は均一である。
【0041】
第1の構成において、活性化可能光学フィルタは80%以上の透過率T1を有していてよい。
【0042】
本発明における意味として、「透過率」は可視スペクトルにわたり活性化可能光学フィルタを透過する光の割合に対応している。換言すれば、80%の透過率は、可視スペクトルにわたり活性化可能光学フィルタを透過する入射光線の80%に対応している。このような構成はISO標準ISO8980-3:2003に定義されたクラス0レンズに対応している。
【0043】
活性化可能光学フィルタは、前記活性化可能光学フィルタを透過する光が15以下の彩度C*1を有するように構成されていてよい。換言すれば、活性化可能光学フィルタの第1の構成は透明状態に対応している。
【0044】
好適には、第1の構成は活性化可能光学フィルタの非起動構成に対応している。活性化可能光学フィルタが複数の活性化可能素子を含んでいる場合、非起動状態は起動されていない全ての活性化可能素子に対応している。
【0045】
第2の構成において、活性化可能光学フィルタは局所光源からの光を選択的に減衰させ、活性化可能光学フィルタで透過率が最小の箇所を透過する光が彩度C*2及び色相h°2を有している。
【0046】
本発明における意味として、局所光源とは着用者の視野で限られた立体角を占める光源を意味する。換言すれば、着用者が光を受光する眼鏡レンズの領域は眼鏡レンズの一部に過ぎない。例えば、着用者の頭上に位置する光源(机上方のランプ)の場合、眼鏡レンズの上部だけが前記光源からの光を着用者の眼まで透過させる。着用者よりも下方に位置する光源(釣りをしている間の水面上での反射)の場合、眼鏡レンズの主に下部が前記光源からの光を着用者の眼まで透過させる。
【0047】
局所光源は、大域的周囲光とは異なる。特に、局所光源は、強い光源、特に太陽、人工照明、又は反射率が強い表面(水、雪、窓、明るい表面等)での太陽又は人の照明の反射であってよい。局所光源はまた、色又は別の光度パラメータにより異なっていてよい。
【0048】
本発明における意味として、強い光源は、環境よりも40%、及び好適には50%明度が高い光源である。強い光源は、直射光源であっても、又は反射光に対応していてもよい。
【0049】
本発明における意味として、局所光源からの光の選択的減衰は、局所光源からの光の空間減衰及び/又は局所光源からの光の偏光に対応している。換言すれば、局所光源からの光の減衰は、空間的に選択的であっても、又は偏光が選択的であってもよい。特に、活性化可能光学フィルタの透過率は均一、すなわち活性化可能光学フィルタ全面にわたり同一でありながら依然として強い反射面すなわち局所光源から発せられた偏光も選択的であってよい。
【0050】
第2の構成において、活性化可能光学フィルタは、着用者の網膜への有害な青色光の影響を防止すべく構成されていてよい。網膜用に対する青色光由来のリスクを減らすべく、活性化可能光学フィルタは、400nm~460nmの範囲、好適には420nm~450nmの範囲での光の透過を減衰させるべく第2の構成に構成されていてよい。
【0051】
活性化可能光学フィルタは、第2の構成において、着用者の時間生物学の改善に役立つべく構成されていてよい。例えば、本発明による活性化可能光学フィルタは、第2の構成においてターコイズ及び青色を、生物時計の同期化を起動させる465nm~495nmの範囲でフィルタリングすべく構成されていてよい。このような実施形態は特に、不眠症、時差ボケ等の睡眠関連障害を患っているユーザー又はシフト勤務者に有利な特徴である。
【0052】
活性化可能光学フィルタは、第2の構成において、コントラストを強めることに役立つべく構成されていてよい。これは特に着用者が運転又はスポーツの練習をしている場合に役立つ場合がある。例えば、活性化可能光学レンズはコントラストを強めるべく黄色に着色されていてよい。活性化可能光学フィルタは、第2の構成において、赤/緑コントラストを強めるために幅が少なくとも20nmであって、475nmに等しい平均波長に中心を有する波長の範囲でフィルタリングすべく、又は赤/緑コントラストを強めるために幅が少なくとも20nmであって580nmに等しい平均波長に中心を有する波長の範囲でフィルタリングすべく構成されていてよい。活性化可能光学フィルタは、第2の構成において、青/緑コントラストを強めるために幅が少なくとも20nmであって、500nmに等しい平均波長に中心を有する波長の範囲でフィルタリングすべく、又は眩惑を減らすために幅が少なくとも20nmであって、600nmに等しい平均波長に中心を有する波長の範囲でフィルタリングすべく構成されていてよい。
【0053】
第2の構成において、活性化可能光学フィルタは、43%以下、好適には18%以下、より好適には8%以下の透過率T2を有していてよい。
【0054】
第2の構成において、活性化可能光学フィルタは透過率の勾配を有していてよい。活性化可能光学フィルタの透過率は均一であっても又は均一でなくてもよい。活性化可能光学フィルタの透過が均一でない場合、第2の構成の透過率T2は最小透過率に対応している。
【0055】
活性化可能光学フィルタの第2の構成による光透過率T2は、波長範囲の以下のリスト、すなわち400nm~460nm、420nm~450nm、465nm~495nm、480nm~520nm、460nm~520nm、560n~600nm、580nm~620nm、530nm~650nmから選択された波長範囲にわたる第1の構成による透過率T1と比較して少なくとも10%低下している場合がある。
【0056】
第2の構成において、活性化可能光学フィルタは、眼鏡レンズの光学面全体又は眼鏡レンズの光学面の一部に配置されていてよい。
【0057】
特に、累進レンズの場合、活性化可能光学フィルタは、遠視に関連付けられた上部又は近視に関連付けられた下部に配置されていてよい。
【0058】
第2の構成において、活性化可能光学フィルタは、眼鏡レンズの別の部分よりも眼鏡レンズの表面の一部で透過率が低い場合がある。
【0059】
活性化可能光学フィルタは、第2の構成において段階的色合いを提供することができる。活性化可能光学フィルタの透過性が均一でない場合、活性化可能光学フィルタを透過する光の彩度C*2及び色相h°2は段階的色合いに沿った最も濃い色合いに対応している。眼鏡レンズが着用された際の勾配の方向は垂直でも水平でもよい。
【0060】
第2の構成において、活性化可能光学フィルタは、局所光源の光線の偏光方向に基づいて光を減衰させることができる。
【0061】
第2の構成において、活性化可能光学フィルタは異方性であってよい。換言すれば、活性化可能光学フィルタの光学特性は活性化可能光学フィルタにおける方向により異なる。例えば、複屈折特性を有する単軸材料は異方性であり、複屈折となるように起動された光学フィルタは異方性の活性化可能光学フィルタである。異方性材料の別の例は、二色性を生じさせる特定の方向(機械的延伸、又は、例えば液晶系における電磁場等の外部刺激により誘発された配列のいずれかにより得られた)を含む偏光材料である。偏光フィルタが均一であっても、すなわちフィルタの全ての位置で同一の光学特性を有していても異方性である。偏光するように起動された光学フィルタは異方性の活性化可能光学フィルタである。
【0062】
第3の構成において、活性化可能光学フィルタは均一であり、活性化可能光学フィルタを透過する光は彩度C*3及び色相h°3を有している。
【0063】
第3の構成において、眼鏡着用者の視覚は眩しさから保護されている。
【0064】
第3の構成は濃色構成に対応していてよい。
【0065】
典型的には、第3の構成において活性化可能光学フィルタは、43%以下すなわちISO8980-3:2003標準のクラス2、例えば18%以下すなわちISO8980-3:2003標準のクラス3、又は例えば8%以下すなわちISO8980-3:2003標準のクラス4の透過率T3を有している。
【0066】
透過率T3は透過率T2に等しくてよい。
【0067】
第3の構成において、活性化可能光学フィルタは、眼鏡レンズの光学面全体又は眼鏡レンズの光学面の一部、例えば遠視に関連付けられた上部又は近視に関連付けられた下部に配置されていてよい。
【0068】
第3の構成における活性化可能光学フィルタは、段階的色合いを提供することができる。この場合、活性化可能光学フィルタを透過する光の彩度C*3及び色相h°3は段階的色合いに沿って最も濃い色合いに対応している。勾配の方向は眼鏡レンズが着用される場合に垂直でも水平でもよい。
【0069】
(C*1,h°1)、(C*2,h°2)及び(C*3,h°3)の各々から選んだ2組のペア間の色度差ΔChromは20以下である。
【0070】
換言すれば、(C*1,h°1)と(C*2,h°2)と間の色度差ΔChromは20以下、(C*1,h°1)と(C*3,h°3)との間の色度差ΔChromは20以下、及び(C*2,h°2)と(C*3,h°3)との間の色度差ΔChromは20以下である。
【0071】
特に、ペア(C*1,h°1)(C*2,h°2)及び(C*3,h°3)は互いに異なっている。
【0072】
本発明の一実施形態によれば、
図1に示すように、本発明による眼鏡レンズの活性化可能光学フィルタ10は少なくとも1個のエレクトロクロミック素子、例えば2個の透明電極14、16の間に配置されたエレクトロクロミックセル12を含んでいてよい。
【0073】
エレクトロクロミック素子は典型的に2個の透明な外層、例えば2枚の有機又は鉱物ガラス、2個の導電層すなわち外層の内面に配置されていて電源に接続された電極、前記素子の中央で2個の導電層の間に配置された電解質、及びエレクトロクロミック化合物を含む構造を有している。
【0074】
エレクトロクロミック化合物は、還元状態で着色され、及び酸化状態で無色又はわずかに着色されるように、又はその逆であるように選択される。
【0075】
上述のようなエレクトロクロミック素子により、電流、従って吸光によりエレクトロクロミック化合物の状態を制御することができる。最後に、エレクトロクロミック素子の光透過は電流により制御される。
【0076】
エレクトロクロミック素子関連の用語「起動状態」は、エレクトロクロミック素子に含まれる少なくとも1個のエレクトロクロミック化合物が着色されているため、エレクトロクロミック素子を通る光透過を減衰させることを意味する。
【0077】
エレクトロクロミック素子は、2個の透明電極14、16の間に電場を印加したならば光学特性が1回変化するエレクトロクロミック着色化合物を含んでいてよい。
【0078】
エレクトロクロミック着色化合物は、ビオロゲン、黄色ビオロゲン、又はフェナジンであってよい。いくつかのエレクトロクロミック化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
印加された電場、すなわち印加された電圧に応じて、エレクトロクロミック着色化合物を起動することができる。
【0080】
本発明の別の実施形態によれば、活性化可能光学フィルタ10は、2個の独立したエレクトロクロミック素子、例えば2個の独立したエレクトロクロミックセル12を含んでいてよく、各々のエレクトロクロミック素子が異なるエレクトロクロミック着色化合物を含んでいる。
【0081】
2個の独立したエレクトロクロミック素子の各々は、両方のエレクトロクロミックセルが透明、第1のエレクトロクロミックセルが透明で第2のエレクトロクロミックセルが着色、第1のエレクトロクロミックセルが着色で第2エレクトロクロミックセルが透明、最後に両方のエレクトロクロミックセルが着色、に対応する4個の異なる構成を可能にする特定の色を有していてよい。
【0082】
有利な特徴として、上述のような実施形態により、1個が透明な構成、別の1個が濃色構成に対応し、最後の2種類の構成が異なる機能に適合された異なる色に対応している4種類の構成を有していてよい。
【0083】
眼鏡レンズは、選択的に減衰される局所光源の局所化との関係で、少なくとも第1のゾーン及び第2のゾーンを含んでいてよい。換言すれば、第1のゾーンは、光源が局所化された着用者の視野の限定された立体角に含まれるレンズの表面に対応している。第2のゾーンは、光源が局所化された着用者の視野の限定された立体角と交差しないレンズの表面に対応している。
【0084】
例えば、着用者の頭上に位置する光源(机上方のランプ)の場合、前記光源から着用者の両眼まで光を透過させる眼鏡レンズの上部が第1のゾーンとして画定されるのに対し、眼鏡レンズの下部が第2のゾーンとして画定される。着用者よりも下方に位置する光源(釣りをしている間の水面上での反射)の場合、前記光源から着用者の両眼まで光を透過させる眼鏡レンズの下部が第1のゾーンとして画定されるのに対し、眼鏡レンズの上部が第2のゾーンとして画定される。本発明の一実施形態によれば、第2の構成において、活性化可能光学フィルタは、第2のゾーンよりも第1のゾーンで光を多く減衰させることができる。換言すれば、光は、眼鏡レンズの異なるゾーン間で異なる程度に減衰される。
【0085】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1個の透明電極14、16が局所導電性を有していてよい。局所導電性は、活性化可能光学フィルタの少なくとも一方向に連続的に変化することができる。透明電極14、16の一方だけが均一な導電性を有していてよいのに対し、他方の透明電極14、16は可変な導電性を有していてよい。
【0086】
少なくとも1個の透明電極14、16は、透明電極の少なくとも2個の領域を形成すべく配置された抵抗手段を含んでいてよい。透明電極14、16の導電性は、少なくとも2個の領域間で連続的に変化し得る。換言すれば、透明電極の第1の領域は第1の電圧を有し、透明電極の第2の領域は第2の電圧を有していて、第2の電圧は、第1の電圧が抵抗手段により低下した電圧に対応している。
【0087】
図2に示す本発明の第1の下位実施形態によれば、透明電極14、16の抵抗手段は抵抗ブリッジ18を含んでいる。特に、透明電極14、16の一方だけが抵抗ブリッジ18を含んでいてよい。
【0088】
図2に示すように、透明電極14、16は抵抗ブリッジ18に分離された2個の領域、すなわち第1の領域A1及び第2の領域A2に分割されている。透明電極14、16の領域A1、A2は同一サイズ又は異なるサイズであってよく、同一形状又は異なる形状を有していてよい。
【0089】
無論、透明電極14、16の抵抗手段は、透明電極14、16が2個よりも多い領域に分割されるように複数の抵抗ブリッジ18を含んでいてよい。
【0090】
特に、第1の領域A1は第1の電圧V1に接続され、第2の領域A2は第2の電圧V2に接続されている。第1の電圧V1と第2の電圧V2は等しくても異なっていてもよい。
【0091】
例えば、第1の領域A1は0Vに等しい第1の電圧V1に接続され、第2の領域A2は0Vに等しい第2の電圧V2に接続されていてよい。透明電極14、16の当該構成は、能動光学フィルタが均一且つ透明状態にある能動光学フィルタ10の第1の構成に対応している。
【0092】
第1の領域A1は1Vに等しい第1の電圧V1に接続され、第2の領域A2は0.5Vに等しい第2の電圧V2に接続されていてよい。当該構成において、活性化可能光学フィルタは局所光源からの光を選択的に減衰させることができる。透明電極14、16の当該構成は、活性化可能光学フィルタが透過率の勾配を有する能動光学フィルタ10の第2の構成に対応している。
【0093】
第1の領域A1は1Vに等しい第1の電圧V1に接続され、第2の領域A2は1Vに等しい第2の電圧V2に接続されていてよい。当該構成において活性化可能光学フィルタは均一である。透明電極14、16の当該構成は、能動光学フィルタ10が防眩機能を提供する能動光学フィルタの第3の構成に対応している。
【0094】
有利な特徴として、透過率の勾配は、透明電極の領域に印加される電圧に応じて変更することができる。
【0095】
図3に、活性化可能光学フィルタ10を透過された光を、活性化可能光学フィルタ10の第1の領域A1及び第2の領域A2に印加される電圧の関数として表す。領域ARは、抵抗ブリッジ18を含む活性化可能光学フィルタ10の領域に対応している。曲線aは、透明電極14、16の抵抗手段が抵抗ブリッジ18を含んでいる場合に活性化可能光学フィルタ10を透過された光を表し、曲線bは、抵抗ブリッジ18が無い活性化可能光学フィルタ10で透過された光を表す。
図3に示すように、曲線aは曲線bの傾斜よりもなだらかな傾斜を示している。
【0096】
有利な特徴として、抵抗ブリッジ18は、第1の領域A1と第2の領域A2との間で滑らかな遷移を行えるようにする。
【0097】
好適には、領域ARは、第1の領域A1と第2の領域A2との間で突然の遷移が生じないように透明電極14、16の2mm~30mmの幅にわたり延在している。
【0098】
図4に示す本発明の第2の下位実施形態によれば、抵抗手段は、透明電極14、16の少なくとも一方に刻印されている。抵抗手段は、透明電極14、16の希薄化に対応していてよい。抵抗手段は、透明電極14、16の導電性を局所的に強化可能にする。
【0099】
図4に示すように、透明電極14、16は、3個の領域、すなわち第1の領域A1、第2の領域A2、及び第3の領域A3に分割されている。第1の領域A1は、刻印抵抗手段20により第2の領域A2から分離されている。第2の領域A2は、刻印抵抗手段20により第3の領域A3から分離されている。換言すれば、第2の領域A2は、第1の領域A1と第3の領域A3の間に配置されている。透明電極14、16の領域A1、A2、A3は同一サイズ又は異なるサイズであってよく、同一形状又は異なる形状を有していてよい。
【0100】
無論、透明電極14、16の抵抗手段は、透明電極14、16が2個以上の領域に分割されるように1個又は2個より多い刻印抵抗手段20を含んでいてよい。
【0101】
同じ第1の電圧V1が第1、第2及び第3の領域A1、A2、A3に印加されている場合、活性化可能光学フィルタ10は均一である。例えば、第1の領域A1は0Vに等しい第1の電圧V1に接続されていてよい。当該構成において、各領域A1、A2、A3は0Vに等しい電圧を有していてよい。透明電極14、16の当該構成は能動光学フィルタが透明状態にある能動光学フィルタ10の第1の構成に対応している。
【0102】
第1の領域A1は、1Vに等しい第1の電圧V1に接続されていてよい。当該電圧は、透明電極14、16に沿って、より厳密には第1及び第2の領域A1とA2の間、及び第2と第3の領域A2とA3との間で刻印抵抗手段20に起因して低下する。例えば、第2の領域A2は、0.8Vに等しい第2の電圧を有していてよく、第3の領域A3は0.6Vに等しい第3の電圧を有していてよい。当該構成において、活性化可能光学フィルタは局所光源からの光を選択的に減衰させる。透明電極14、16の当該構成は、活性化可能光学フィルタが透過率の勾配を有する能動光学フィルタ10の第2の構成に対応している。
【0103】
図5に示す透明電極14、16が
図4に示す透明電極14、16と異なるのは、第1及び第2の領域A1、A2の両方が1Vに等しい第1の電圧V1に接続されていてよい点だけである。電圧は、透明電極14、16に沿って、より厳密には第2の領域A2と第3の領域A3の間で刻印抵抗手段20に起因して低下する。例えば、第3の領域A3は0.8Vに等しい第2の電圧を有していてよい。
【0104】
本発明の第3の下位実施形態によれば、少なくとも2個の透明電極14、16は重なり合って配置されている。抵抗手段は重なり合った透明電極を含んでいる。
【0105】
例えば、
図6aに第1の透明電極14を示し、
図6bに第2の透明電極16を示す。各透明電極14、16において、各透明電極14、16の第1と第2の領域A1とA2の分離を破線で表す。
【0106】
第1の透明電極14の第1のゾーンA1は第2の透明電極16の第1のゾーンA1に重ね合わされることが意図されており、
図6a、6Bに示すように第2の透明電極16の第1のゾーンA1とは異なる。第2の透明電極16の第2のゾーンA2は、第1の透明電極14の第2のゾーンA2に重ね合わされることが意図されており、
図6a、6Bに示すように第1の透明電極14の第2のゾーンA2とは異なる。
【0107】
第3の下位実施形態を
図7に示す。透明電極14すなわち上部透明電極14は第1及び第2の領域A1、A2を含み、透明電極16すなわち下部透明電極16は第1及び第2の領域A1、A2を含んでいる。
【0108】
第1の透明電極14の第1の領域A1は第2の透明電極16の第1の領域A1に重なり、第2の透明電極16の第2の領域A2は第1の透明電極14の第2の領域A2に重なっている。下部透明電極16の領域A1の一部及び上部透明電極14の第2の領域A2の一部は、抵抗手段22に対応している。
【0109】
第1の透明電極14の第1の領域A1は第1の電圧V1に接続されていてよく、第1の透明電極14の第2の領域A2は第2の電圧V2に接続されていてよく、第2の透明電極16の第1の領域A1は第3の電圧V3に接続されていてよく、第2の透明電極16の第2の領域A2は第4の電圧V4に接続されていてよい。
【0110】
第1の電圧V1、第2の電圧V2、第3の電圧V3及び第4の電圧V4は等しくても異なっていてもよい。
【0111】
同じ第1の電圧V1、V3が第1及び第2の透明電極14、16の第1の領域A1に印加され、同じ第2の電圧V2、V4が第1及び第2の透明電極14、16の第2の領域A2に印加されている場合、活性化可能光学フィルタ10は均一である。透明電極14、16の当該構成は、能動光学フィルタが透明状態にある能動光学フィルタ10の第1の構成に対応している。
【0112】
第1の透明電極14の第1の領域A1は-0.5Vに等しい第1の電圧V1に接続されていてよく、第1の透明電極14の第2の領域A2は、0Vに等しい第2の電圧V2に接続されていてよい。第2の透明電極16の第1の領域A1は0.5Vに等しい第3の電圧V3に接続されていてよく、第2の透明電極16の第2の領域A2は0Vに等しい第4の電圧V4に接続されていてよい。
【0113】
第1の電圧V1に接続された第1の透明電極14の第1の領域A1と、第3の電圧V3に接続された第2の透明電極16の第1の領域A1との間の電位差は1Vに等しい。第2の電圧V2に接続された第1の透明電極14の第2の領域A2と、第4の電圧V4に接続された第2の透明電極16との間の電位差は0Vに等しい。第2の電圧V2に接続された第1の透明電極14の第2の領域A2と、第3の電圧V3に接続された第2の透明電極16の第1の領域A1との間の電位差は0.5Vに等しい。当該構成において、活性化可能光学フィルタ10は局所光源からの光を選択的に減衰させる。透明電極14、16の当該構成は、活性化可能光学フィルタが透過率の勾配を有する能動光学フィルタ10の第2の構成に対応している。
【0114】
無論、各透明電極は2個より多い領域を含んでいてよく、従って透明電極14、16は複数の抵抗手段22を含んでいてよい。
【0115】
全ての実施形態において、抵抗手段は、透明電極14、16の第1と第2の領域A1とA2の間で遷移可能にすべく構成されていてよい。
【0116】
より厳密には、能動光学フィルタの第2の構成における透明電極14、16の第1と第2の領域A1とA2の間で透過率の滑らかな遷移を維持すべく、当該広い領域にわたり透過率の遷移が生じるように、透明電極14、16の領域のエッジを、広い領域にわたり延在するように計算することができる。また、起こり得る回折の影響を限定すべく、前記エッジの形状は不規則、及び/又は角点が無くてもよい。最後に、透明電極14、16は、透明電極14、16の第1及び第2の領域A1、A2のエッジを結合してなだらかな勾配の領域が得られるように重なり合ってよい。
【0117】
図8に示すように、透明電極14、16は4個の領域A1、A2、A3、A4を含むように表されている。透明電極14、16の第1及び第2の領域A1、A2のエッジは長方形のエッジとして表され、透明電極14、16の第2及び第3の領域A2、A3のエッジは三角形のエッジとして表され、透明電極14、16の第3及び第4の領域A3、A4のエッジは湾曲したエッジとして表されている。無論、透明電極14、16の第1、第2、第3及び第4の領域A1、A2、A3、A4のエッジを他の種類のエッジで表してもよい。4個の領域A1、A2、A3、A4のエッジは規則的、すなわち周期的な形状を有していても、又は不規則、すなわち
図8に示すように非周期的な形状を有していてもよい。有利な特徴として、4個の領域A1、A2、A3、A4のエッジは、眼鏡レンズ上の2個の領域の間で光が拡散するリスクを抑えるべく不規則な形状をなしている。
【0118】
透明電極14、16のエッジの周期、形状及び振幅は、眼鏡レンズ上の2個の領域間で滑らかな勾配を得るべく適合されていてよい。
【0119】
エレクトロクロミック素子は、エレクトロクロミック着色化合物及び活性化可能偏光素子24を含んでいてよい。
図9~11に、エレクトロクロミックセル12及び活性化可能偏光素子24の両方を含む能動光学フィルタを示す。
【0120】
活性化可能光学フィルタ10の第1の構成を
図9に示す。
図9は、活性化可能光学フィルタ10のエレクトロクロミックセル12a及び活性化可能偏光素子24aの両方が起動されておらず、眼鏡レンズが透明である非起動状態に対応している。
【0121】
活性化可能光学フィルタ10の第2の構成を
図10a、10bに示す。
【0122】
図10aにおいて、エレクトロクロミックセル12aを透明状態で示し、活性化可能偏光素子24bを偏光状態で示している。
図10aは、起動されていないエレクトロクロミックセル及び起動された活性化可能偏光素子に対応している。
【0123】
図10bにおいて、エレクトロクロミックセル12bを濃色状態で示し、活性化可能偏光素子24aを非偏光状態で示している。
図10bは、起動されたエレクトロクロミックセル及び非能動活性化可能偏光素子に対応している。起動状態において、エレクトロクロミックセル12は等方性であってよい。換言すれば、起動されたエレクトロクロミックセル12は、光の偏光状態に依らず光を遮断することができる。
【0124】
活性化可能光学フィルタ10の第3の構成を
図11に示す。
図11は、活性化可能光学フィルタ10のエレクトロクロミックセル12a及び活性化可能偏光素子24aの両方が起動されていて眼鏡レンズが濃色である、起動状態に対応している。
【0125】
フィルムの偏光効率(PE)が透過率の測定により決定される。透過率及び他の光学特性は光路に偏光器と共に備えられたHunter Lab UltraScan(登録商標)分光光度計を用いて測定される。400nm~750nmの透過スペクトルが偏光器の光軸に平行なフィルムサンプルの光軸に沿って記録され、次いで偏光器を90°回転させた後で別のスペクトルが記録される。従って所与の波長ラムダについて各々T
=(λ)及びT
⊥(λ)と表記する両方の状況で透過率が決定される。従って偏光効率PE(λ)は、次式により計算される。
【数2】
【0126】
活性化可能偏光フィルタの偏光方向は、前記軸の方向に偏光された光が透過されない軸である。逆に、前記軸に垂直な方向に偏光される光は全て透過される。
【0127】
活性化可能偏光素子24の偏光効率に従い、エレクトロクロミック素子の濃色状態を高めることができる。例えば、活性化可能偏光素子24の偏光効率が100%である場合、光の半分が遮断され、その結果生じる透過は半分になる。
【0128】
特に、例えば着用者が屋内、又はトンネル内にいるときに非偏光状態となり、着用者の状況、着用者の環境、着用者の行為又は着用者の活動を考慮して偏光又は/及び濃色状態に変化できるように活性化可能偏光素子24を構成することができる。
【0129】
本発明の図示しない一実施形態によれば、活性化可能光学フィルタの活性化可能偏光素子は透明な液晶溶液を含んでいる。
【0130】
透明な非起動状態において、活性化可能偏光素子は、液晶溶液に混合された二色性着色剤に対応していてよい。二色性着色剤が液晶溶液に溶解されたならば吸光効果をもたらすことができる。
【0131】
2個の透明電極14、16の間に電場を印加する場合、液晶の向きが変化して、例えば液晶が所望の波長を反射する状態から、液晶が異なる方向に向けられてもはや反射しなくなった状態又は同じ方向に向けられて光の反射を高める状態に切り替え可能にする。
【0132】
換言すれば、電場下の起動状態において、液晶溶液は、特定の波長の光を反射する干渉系を画定する方向に向けられている。同時に、二色性着色剤は、液晶に従い方位が決定される結果、一部の偏光の吸光が高まる。当該活性化可能素子は、偏光効果及び光フィルタリングを同時に示す。
【0133】
エレクトロクロミックセル12及び活性化可能偏光素子24は互いに独立に制御することができる。例えば、エレクトロクロミックセル12の定常的且つ大域的な透過率で、エレクトロクロミックセル12の偏光率又は透過率を調整することができる。例えば、エレクトロクロミックセル12の所与の大域的透過率について、環境光が顕著に偏光されている場合は活性化可能偏光素子24の寄与を高めることが可能であり、その逆も同じである。環境の偏光率は、光の偏光方向又は例えば眼鏡レンズのフレームで統合された二つの偏光方向における強度の差を検出すべく構成されたセンサにより決定することができる。
【0134】
第2の構成における活性化可能偏光素子24の偏光効率PE2は、第3の構成における活性化可能偏光素子24の偏光効率PE3から少なくとも10%異なっていてよい。
【0135】
第2の構成における活性化可能偏光素子24の偏光方向PD2は、第3の構成における活性化可能偏光素子24の偏光方向PD3とは少なくとも15°異っていてよい。
【0136】
本発明は、上述の眼鏡レンズ及び制御装置を含む光学機器に関する。
【0137】
制御装置は、少なくとも3種類の構成間で切り替わる活性化可能光学フィルタを有するように活性化可能光学フィルタを制御すべく構成されている。
【0138】
少なくとも3種類の構成間の切り替えは、光学機器の着用者により手動で行うことができる。
【0139】
当該光学機器は、光度パラメータを検出すべく構成された少なくとも1個のセンサを含んでいてよい。制御装置は、センサにより提供される光度パラメータに基づいて、活性化可能光学フィルタを制御すべく構成されていてよい。
【0140】
センサは、眼鏡着用者が眼鏡レンズを着用した場合に着用者の環境に位置する局所光源の光線方向を検出すべく構成されていてよい。
【0141】
本発明は、一般的な発明の概念の限定無しに複数の実施形態を用いて上で述べられてきた。更に、本発明の複数の実施形態は何らの規制無しに結合することができる。
【0142】
上述の例示的実施形態を参照することで、例示目的でのみ示され、添付の請求項によってのみ決定される本発明の範囲を限定することは意図していない多くの更なる変更及び変型が当業者には想起されよう。
【0143】
請求項において、用語「含む」は他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数性を排除しない。異なる特徴が、互いに異なる従属クレームで引用されているという単なる事実は、これらの特徴の組み合わせを有利に用いることができないことを示していない。請求項の任意の参照符号も本発明の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。