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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015533
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/80 20220101AFI20230125BHJP
【FI】
B01F7/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119367
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】504085750
【氏名又は名称】アドバンエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 圭佐
(72)【発明者】
【氏名】丸山 隼人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 由貴子
【テーマコード(参考)】
4G078
【Fターム(参考)】
4G078AA02
4G078AB20
4G078BA05
4G078CA01
4G078DA30
(57)【要約】
【課題】十分な撹拌性能を保持しながら、撹拌羽根への混練流体の付着を抑制し、洗浄効率を改善することのできる、撹拌装置を提供する。
【解決手段】回転駆動軸3と、回転駆動軸3の軸線Xと略平行に配置された全体が略円柱形の撹拌羽根5とを備えた。撹拌羽根5は、第1の撹拌羽根5aと、第1の撹拌羽根5aよりも回転半径の小さい第2の撹拌羽根5bとから構成され、回転駆動軸3の軸線Xと直交し第1の撹拌羽根5aの中心を通る第1の直線Yと、回転駆動軸3の軸線Xと直交し第2の撹拌羽根5bの中心を通る第2の直線Zは、略直交する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動軸と、この回転駆動軸の軸線と略平行に配置された全体が略円柱形の撹拌羽根とを備えたことを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
内部形状が略円柱形の撹拌槽の中心に前記回転駆動軸の軸線を配置して用いられ、撹拌槽の内径を100としたときの前記撹拌羽根の太さが15以下であることを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
内部形状が略円柱形の撹拌槽の中心に前記回転駆動軸の軸線を配置して用いられ、撹拌槽の内側の高さを100としたときの前記撹拌羽根の長さが50以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
内部形状が略円柱形の撹拌槽の中心に前記回転駆動軸の軸線を配置して用いられ、撹拌槽の中心から撹拌槽の側方壁までの距離を100としたときの、撹拌槽の中心から最も外側に位置する前記撹拌羽根の撹拌槽の側方壁に最も近い点までの距離が60以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記撹拌羽根は、第1の撹拌羽根と、この第1の撹拌羽根よりも回転半径の小さい第2の撹拌羽根とから構成され、前記回転駆動軸の軸線と直交し前記第1の撹拌羽根の中心を通る第1の直線と、前記回転駆動軸の軸線と直交し前記第2の撹拌羽根の中心を通る第2の直線は、略直交することを特徴とすることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項6】
内部形状が略円柱形の撹拌槽の中心に前記回転駆動軸の軸線を配置して用いられ、撹拌槽の中心から前記第1の撹拌羽根の撹拌槽の側方壁に最も近い点までの距離を100としたときの、撹拌槽の中心から前記第2の撹拌羽根の撹拌槽の側方壁に最も近い点までの距離が50以上であることを特徴とする請求項5に記載の撹拌装置。
【請求項7】
ジオポリマーの原料を撹拌するために用いられることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃棄物固化用のジオポリマー組成物を撹拌するための撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、福島第一原子力発電所をはじめ、各原子力関係施設での放射性廃棄物処理が課題となっている。
【0003】
放射性廃棄物処理の方法として、固化材料を用いて廃棄物を固化、安定化させるものがある。この廃棄物固化技術では、廃棄物と固化材料を均一に混錬し、健全な廃棄固化体を作製する必要がある。
【0004】
しかし、放射性廃棄物処理分野では、廃棄物の放射能レベルが高く、処理工程において人が立ち入れず遠隔で処理作業を進めなければいけない。加えて、放射性廃棄物や、放射性廃棄物を含む固化材料に触れたものは、二次廃棄物となるため、混練装置洗浄に用いる洗浄液の量や洗浄用品を削減する必要がある。
【0005】
しかし、既存撹拌羽根(例えば、特許文献1)は形状が複雑であることから、洗浄作業にかかる時間の長時間化や、遠隔での洗浄作業困難が問題となっている。加えて二次廃棄物が大量に発生してしまうという問題を抱えている。
【0006】
固化材料が高粘度流体の場合は、上記の課題が、より深刻なものとなる。高粘度固化材料候補の例としてジオポリマーが挙げられる。
【0007】
これより、十分な撹拌性能を保持しながら、撹拌羽根への混練流体の付着を抑制し、洗浄効率を改善することが課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-83592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、十分な撹拌性能を保持しながら、撹拌羽根への混練流体の付着を抑制し、洗浄効率を改善することのできる、撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、円柱構造の撹拌羽根を用いることによって、既存撹拌羽根と同等の混練性能を有しながら、混練終了時の付着・残存混練流体量を削減し、単純構造による洗浄効率向上を実現することができることを見出し、本発明に想到した。
【0011】
すなわち、本発明の撹拌装置は、回転駆動軸と、この回転駆動軸の軸線と略平行に配置された全体が略円柱形の撹拌羽根とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、内部形状が略円柱形の撹拌槽の中心に前記回転駆動軸の軸線を配置して用いられ、撹拌槽の内径を100としたときの前記撹拌羽根の太さが15以下であることを特徴とする。
【0013】
また、内部形状が略円柱形の撹拌槽の中心に前記回転駆動軸の軸線を配置して用いられ、撹拌槽の内側の高さを100としたときの前記撹拌羽根の長さが50以上であることを特徴とする。
【0014】
また、内部形状が略円柱形の撹拌槽の中心に前記回転駆動軸の軸線を配置して用いられ、撹拌槽の中心から撹拌槽の側方壁までの距離を100としたときの、撹拌槽の中心から最も外側に位置する前記撹拌羽根の撹拌槽の側方壁に最も近い点までの距離が60以上であることを特徴とする。
【0015】
また、前記撹拌羽根は、第1の撹拌羽根と、この第1の撹拌羽根よりも回転半径の小さい第2の撹拌羽根とから構成され、前記回転駆動軸の軸線と直交し前記第1の撹拌羽根の中心を通る第1の直線と、前記回転駆動軸の軸線と直交し前記第2の撹拌羽根の中心を通る第2の直線は、略直交することを特徴とすることを特徴とする。
【0016】
また、内部形状が略円柱形の撹拌槽の中心に前記回転駆動軸の軸線を配置して用いられ、撹拌槽の中心から前記第1の撹拌羽根の撹拌槽の側方壁に最も近い点までの距離を100としたときの、撹拌槽の中心から前記第2の撹拌羽根の撹拌槽の側方壁に最も近い点までの距離が50以上であることを特徴とする。
【0017】
また、ジオポリマーの原料を撹拌するために用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の撹拌装置によれば、十分な撹拌性能を保持しながら、撹拌羽根への混練流体の付着を抑制し、洗浄効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の撹拌装置の一実施例を示す斜視図である。
図2】本発明の撹拌装置の一実施例を示す写真(A)と設計図(B)である。
図3】比較例のアンカー羽根を示す写真(A)と設計図(B)である。
図4】本発明の撹拌装置の混錬性能比較実験の様子を示す写真である。
図5】本発明の撹拌装置の数値解析の妥当性を示す写真と数値解析流線である。
図6】本発明の撹拌装置の数値解析における検討パラメータを示す説明図である。
図7】本発明の撹拌装置の数値解析におけるジオポリマーの容器内充填イメージを示す説明図である。
図8】本発明の撹拌装置の数値解析におけるトレーサー流体の観察点を示す説明図である。
図9】本発明の撹拌装置の数値解析における混練中のトレーサー流体拡散の様子の代表例に示す説明図である。
図10】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ1-10-95-85-PCD比なしのときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図11】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ2-10-95-85-PCD比なしのときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図12】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-10-95-85-100のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図13】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-5-95-85-100のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図14】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-15-95-85-100のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図15】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-10-90-85-100のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図16】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-10-85-85-100のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図17】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-10-70-85-100のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図18】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-10-50-85-100のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図19】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-10-95-90-100のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図20】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-10-95-75-100のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図21】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-10-95-65-100のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図22】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-10-95-85-90のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図23】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-10-95-85-85のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図24】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-10-95-85-80のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図25】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-10-95-85-75のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図26】本発明の撹拌装置の数値解析における撹拌羽根本数と混練終了時間との関係を示すグラフである。
図27】本発明の撹拌装置の数値解析における撹拌羽根太さと混練終了時間との関係を示すグラフである。
図28】本発明の撹拌装置の数値解析における撹拌羽根長さと混練終了時間との関係を示すグラフである。
図29】本発明の撹拌装置の数値解析における撹拌羽根最大翼径と混練終了時間との関係を示すグラフである。
図30】本発明の撹拌装置の数値解析における撹拌羽根PCD比と混練終了時間との関係を示すグラフである。
図31】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-15-95-90-100のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図32】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-5-50-90-100のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図33】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-5-95-60-100のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
図34】本発明の撹拌装置の数値解析におけるパラメータ4-5-95-90-80のときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の撹拌装置について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。
【実施例0021】
本発明の撹拌装置の一実施例を示す図1を参照すると、1は撹拌装置、2は撹拌槽である。撹拌装置1を撹拌槽2の中に挿入し、撹拌槽2の中に収容された被撹拌物を撹拌装置1によって撹拌するようになっている。
【0022】
撹拌槽2は、廃棄物の放射能レベルが高く、処理工程において人が立ち入れず遠隔で処理作業を進めなければならないような、原子力関係施設での放射性廃棄物処理に用いられるものであって、処理工程後に廃棄物とともに廃棄されることが想定されている。したがって、撹拌槽2としては、ドラム容器のような有底の略円筒形の容器が好適に用いられる。
【0023】
撹拌装置1は、撹拌装置1の全体を保持するとともに撹拌装置1を回転させるための駆動力を駆動装置(図示せず)から受ける回転駆動軸3を、上端中央部に備えている。回転駆動軸3の下端には、上面視で略十字型のブラケット4の中央部が固定されている。ブラケット4の4つの端部には、それぞれ同じ形状の撹拌羽根5の上端が固定されている。
【0024】
撹拌羽根5は、全体が略円柱形となっており、回転駆動軸3の軸線Xと平行に配置されている。また、撹拌羽根5は、一対の第1の撹拌羽根5aと、第1の撹拌羽根5aよりも回転半径の小さい一対の第2の撹拌羽根5bとから構成されている。一対の第1の撹拌羽根5aは、回転駆動軸3の軸線Xを中心に相互に線対称の位置に配置され、一対の第2の撹拌羽根5bも、回転駆動軸3の軸線Xを中心に相互に線対称の位置に配置されている。また、回転駆動軸3の軸線Xと直交し、第1の撹拌羽根5aの中心を通る第1の直線Yと、回転駆動軸3の軸線Xと直交し、第2の撹拌羽根5bの中心を通る第2の直線Zは、略直交している。
【0025】
撹拌羽根5は、単純な略円柱形状であるが、その本数や、撹拌槽2の大きさに対する太さ、長さ、位置によって、撹拌効率に差が生じる。放射性廃棄物処理に固化材として用いられるジオポリマーの原料を撹拌する場合は、以下のとおりである。なお、被撹拌物のジオポリマーの原料の密度は1500~1700kg/m、粘土は4~5Pa・sである。
【0026】
撹拌羽根5の本数については、本数に関係なく、被撹拌物を均一に混合することができる。
【0027】
撹拌羽根5の太さについては、内部形状が略円柱形の撹拌槽2の中心に回転駆動軸3の軸線Xを配置した場合に、撹拌槽2の内径を100としたときの撹拌羽根5の太さが15以下であるときに、被撹拌物を均一に混合することができる。なお、撹拌羽根5の太さが細い方が、短時間で被撹拌物を均一に混合することができ、撹拌槽2の内径を100としたときの撹拌羽根5の太さは、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。
【0028】
撹拌羽根5の長さについては、内部形状が略円柱形の撹拌槽2の中心に回転駆動軸3の軸線Xを配置した場合に、撹拌槽2の内側の高さを100としたときの撹拌羽根5の長さが50以上であるときに、被撹拌物を均一に混合することができる。なお、撹拌羽根5の長さが長い方が、短時間で被撹拌物を均一に混合することができ、撹拌槽2の内側の高さを100としたときの撹拌羽根5の長さは、70以下が好ましく、95以下がより好ましい。
【0029】
撹拌羽根5の位置については、内部形状が略円柱形の撹拌槽2の中心に回転駆動軸3の軸線Xを配置した場合に、撹拌槽2の中心から撹拌槽2の側方壁までの距離を100としたときの、撹拌槽2の中心から最も外側に位置する撹拌羽根5aの撹拌槽2の側方壁に最も近い点までの距離が60以上であるときに、被撹拌物を均一に混合することができる。なお、この距離が大きい方が、短時間で被撹拌物を均一に混合することができ、撹拌槽2の中心から撹拌槽2の側方壁までの距離を100としたときの、撹拌槽2の中心から最も外側に位置する撹拌羽根5aの撹拌槽2の側方壁に最も近い点までの距離は、75以上が好ましく、90以上がより好ましい。
【0030】
また、内部形状が略円柱形の撹拌槽2の中心に回転駆動軸3の軸線Xを配置した場合に、撹拌槽2の中心から第1の撹拌羽根5aの撹拌槽2の側方壁に最も近い点までの距離を100としたときの、撹拌槽2の中心から第2の撹拌羽根5bの撹拌槽2の側方壁に最も近い点までの距離が50以上であるときに、被撹拌物を均一に混合することができる。なお、この距離が大きい方が、短時間で被撹拌物を均一に混合することができ、撹拌槽2の中心から第1の撹拌羽根5aの撹拌槽2の側方壁に最も近い点までの距離を100としたときの、撹拌槽2の中心から第2の撹拌羽根5bの撹拌槽2の側方壁に最も近い点までの距離は、80以上が好ましく、100がより好ましい。
【0031】
本実施例の撹拌装置1は、略円柱形の撹拌羽根5を有するものであるが、その撹拌性能は、既存形状のアンカー羽根の撹拌性能と同等である。
【0032】
また、本実施例の撹拌装置1の撹拌羽根5は、略円柱形の極めて単純な形状であるため、撹拌中に被撹拌物が撹拌羽根5へ付着することを抑制することができ、さらに、使用後には、撹拌槽2から引き上げて、容易に洗浄することができる。
【0033】
このように、本実施例の撹拌装置1の撹拌羽根5は、洗浄が容易であるため、従来の撹拌羽根を用いた場合と比較して、洗浄作業時間を大幅に短縮することができる。特に、ロボットなどを用いた遠隔操作による洗浄作業においては、洗浄作業時間の短縮による作業効率化の効果は大きい。
【0034】
また、本実施例の撹拌装置1の撹拌羽根5は、洗浄が容易であるため、洗浄液の使用量も大幅に削減することができる。特に、放射性廃棄物処理の分野で用いる場合は、洗浄液も二次廃棄物となるため、洗浄液の使用量の削減により廃棄物処理量を削減することができる。
【0035】
以上のように、本実施例の撹拌装置1は、回転駆動軸3と、この回転駆動軸3の軸線Xと略平行に配置された全体が略円柱形の撹拌羽根5とを備えたものである。
【0036】
また、内部形状が略円柱形の撹拌槽2の中心に前記回転駆動軸3の軸線Xを配置して用いられ、撹拌槽2の内径を100としたときの前記撹拌羽根5の太さが15以下である。
【0037】
また、内部形状が略円柱形の撹拌槽2の中心に前記回転駆動軸3の軸線Xを配置して用いられ、撹拌槽2の内側の高さを100としたときの前記撹拌羽根5の長さが50以上である。
【0038】
また、内部形状が略円柱形の撹拌槽2の中心に前記回転駆動軸3の軸線Xを配置して用いられ、撹拌槽2の中心から撹拌槽2の側方壁までの距離を100としたときの、撹拌槽2の中心から最も外側に位置する前記撹拌羽根5の撹拌槽2の側方壁に最も近い点までの距離が60以上である。
【0039】
また、前記撹拌羽根5は、第1の撹拌羽根5aと、この第1の撹拌羽根5aよりも回転半径の小さい第2の撹拌羽根5bとから構成され、前記回転駆動軸3の軸線Xと直交し前記第1の撹拌羽根5aの中心を通る第1の直線Yと、前記回転駆動軸3の軸線Xと直交し前記第2の撹拌羽根5bの中心を通る第2の直線Zは、略直交する。
【0040】
また、内部形状が略円柱形の撹拌槽2の中心に前記回転駆動軸3の軸線Xを配置して用いられ、撹拌槽2の中心から前記第1の撹拌羽根5aの撹拌槽2の側方壁に最も近い点までの距離を100としたときの、撹拌槽2の中心から前記第2の撹拌羽根5bの撹拌槽2の側方壁に最も近い点までの距離が50以上である。
【0041】
さらに、ジオポリマーの原料を撹拌するために用いられる。
【0042】
このような本実施例の撹拌装置1によれば、十分な撹拌性能を保持しながら、撹拌羽根5への混練流体の付着を抑制し、洗浄効率を改善することができる。
【0043】
以下、本発明の撹拌装置を用いた混錬性能比較実験と数値解析の結果について詳細に説明する。
【実施例0044】
[混錬性能比較実験]
本発明の撹拌装置の混錬性能について実験を行った。
【0045】
既存の撹拌羽根としては、アンカー羽根、リボン羽根、プロペラ羽根、タービン羽根などが知られているが、これらの中でも構造が比較的単純なアンカー羽根を比較例とした。
【0046】
本実施例で用いた本発明の撹拌装置の円柱羽根を図2に、比較例のアンカー羽根を図3に示す。
【0047】
(1)材料
混練性能を比較するため、放射性廃棄物固化用の固化材料として想定されるジオポリマーを混錬した。混練量は20Lとした。
【0048】
使用した材料は以下の通りである。
アルミナシリカ源
・メタカオリン(Al2O3・2SiO2
・シリカフューム(SiO2
アルカリ源
・ケイ酸カリウム(K2O・2SiO2
・水酸化カリウム(KOH)
・純水(H2O)
【0049】
ジオポリマー成分組成はK/Al=1.37、Si/Al=2.5、H2O/Al2O3=10である。
【0050】
(2)装置
混練に使用した装置は以下の通りである。
・自社20L混練装置
【0051】
装置に取り付けた円柱羽根とアンカー羽根どちらとも表面コーティング加工を施した。
【0052】
(3)方法
実験方法は以下の通りである。
・アルカリ源を全て混錬した。
・アルカリ源にシリカフュームを加え、混錬した。
・アルカリ源とシリカフュームの混練物に数回に分けてメタカオリンを加え、混錬した。
・混練時間は合計40分間、撹拌速度は30~100 rpmの間で、段階的に増加させた。
【0053】
(4)結果
混練時の様子を図4に示す。
【0054】
図4より、アンカー羽根は混練終了時に、粉体原料が塊となって付着していることが確認できる。特に、撹拌槽底面と平行な下部に多くの粉体原料が付着することが確認できる。これと比較して、円柱羽根では、混練流体界面付近に一部粉体原料の塊が付着した。
【0055】
付着した粉体原料の塊を除去し、混練流体中に加えてから再度混練を行った。アンカー羽根では、再度原料が塊となって付着する。これと比較して、円柱羽根では、原料塊が付着することはなく、付着した混練流体も羽根にほとんど残留しなかった。
【0056】
混練終了時の混練流体の表面は、どちらの羽根を用いた場合でも均一で、粉体原料の残留も見られなかった。
【0057】
(5)混錬したジオポリマーの固化後の一軸圧縮強度
各羽根で混練したジオポリマーの固化後の一軸圧縮強度を表1に示す。これより、円柱羽根はアンカー羽根と同等の混練性能を持つことが確認された。
【0058】
【表1】
【実施例0059】
[数値解析]
円柱羽根の最適な条件を検討するために、種々の条件で円柱羽根を製作して検討するのは現実的ではないため、数値解析により検討を行った。
【0060】
<1 数値解析モデル>
検討を開始する前に、数値解析モデルの妥当性について、実験結果との比較で確認した。
【0061】
(1)条件
表2に数値解析と比較実験の条件を示した。実機撹拌レイノルズ数を合わせるため、数値解析モデルでは回転数を調整した。
【0062】
【表2】
【0063】
(2)材料
実機による可視化実験に用いた材料は以下の通りである。
観察流体
・水
トレーサー粉体
・蛍光粉末(に不溶かつ、水より低密度)
【0064】
(3)装置
試験装置は以下の通りである。
・自社20L混練装置
【0065】
(4)方法
可視化実験方法は以下の通りである。
・水に蛍光粉末を加え混錬した。
・ブラックライトを水面に当て、流線を撮影した。
・撹拌速度は30rpmだった。
【0066】
(5)結果
図5に比較結果を示した。表中画像は撹拌羽根を、反時計方向に30rpmで回転させた実験結果の写真と、数値解析流線結果である。どちらも、撹拌羽根後方に渦を形成し、撹拌槽中心部にも渦を形成することが確認された。このように、数値解析結果が可視化実験結果と類似した結果を示したことから、本数値解析モデルの妥当性が確認された。
【0067】
<2 円柱羽根の比較>
(1)検討パラメータ
以下のパラメータから、撹拌羽根として使用できるパラメータ範囲を決定する。各パラメータの取り扱いを表3と図6に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
すなわち、図6を参照しながら説明すると、撹拌羽根太さは、撹拌槽内径に対する撹拌羽根の太さAの百分率、撹拌羽根長さは、撹拌槽の内側の高さに対する撹拌羽根の長さBの百分率により表す。最大翼径は、最も外側に位置する撹拌羽根の撹拌槽壁に最も近い点と撹拌槽の中心点を結ぶ線分の長さを2倍した長さをCとしたときに、撹拌槽内径に対する長さCの百分率により表す。PCD比は、回転径の大きい撹拌羽根と、回転径の小さい撹拌羽根を備えている場合に、回転径の大きい撹拌羽根の撹拌槽壁に最も近い点と撹拌槽の中心点を結ぶ線分の長さを2倍した長さをCとし、回転径の小さい撹拌羽根の撹拌槽壁に最も近い点と撹拌槽の中心点を結ぶ線分の長さを2倍した長さをDとしたときに、長さCに対する長さDの百分率により表す。なお、このとき、長さCの線分と、長さDの線分は、直交しているものする。
【0070】
(2)混練時間の定義
混練流体としてジオポリマーを仮定した。ジオポリマーの物性値を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
容器容量2Lを100体積%としたとき、ジオポリマーは75体積%充填されている設定とした。残り25体積%は空気が充填されている設定とした。
【0073】
ジオポリマーの内、高さ方向で2等分し、下50体積%をトレーサー流体と定義した。容器内充填イメージを図7に示す。トレーサー流体の質量分率が0.5のとき、ジオポリマーの上半分(非トレーサー流体)と下半分(トレーサー流体)が十分に混ざり合っているということができる。
【0074】
図8、表5に示した4点の観察点全てでトレーサー流体の質量分率が0.5を示したとき、混練完了とみなした。最長混練時間を1時間とし、1時間以内に混練完了したパラメータを使用可能範囲とした。
【0075】
【表5】
【0076】
(3)解析結果
混練中のトレーサー流体拡散の様子の代表例を図9に示す。また、各観測点におけるトレーサー流体質量分率を図10~25に示す。なお、各図に示したパラメータ(表3、図6を参照)の条件記載規則は「本数-撹拌羽根太さ-撹拌羽根長さ-最大翼径-PCD比」である。
【0077】
図9より、撹拌槽底部にあるトレーサー流体が、時間経過とともに撹拌槽上方へと拡散する様子が確認できる。撹拌羽根の形状によって、撹拌の様子は異なる。「本数-撹拌羽根太さ-撹拌羽根長さ-最大翼径-PCD比」のパラメータが4-10-50-85-100の撹拌羽根のように、撹拌羽根形状が適当でない場合は、トレーサー流体と非トレーサー流体が十分に混ざり合うことはないことが確認できる。
【0078】
図10~12は、撹拌羽根本数を1、2、4本としたものである。撹拌羽根本数が1本のときに、最も短時間で混練が終了した。
【0079】
図13、14は、撹拌羽根太さを撹拌槽内径の5%、15%としたものである。15%のときは、混練が終了しなかった。
【0080】
図15~18は、撹拌羽根長さを撹拌槽高さの90%、85%、70%、50%としたものである。85%のときに、最も短時間で混練が終了し、50%のときは、混練が終了しなかった。
【0081】
図19~21は、最大翼径を撹拌槽内径の90%、75%、65%としたものである。90%のときに、最も短時間で混練が終了し、65%のときは、混練が終了しなかった。
【0082】
図22~25は、PCD比を90%、85%、80%、75%としたものである。90%のときに、最も短時間で混練が終了し、75%のときは、混練が終了しなかった。
【0083】
(4)解析結果のまとめ
図10~25に示した数値解析の結果をもとに、各パラメータと混練終了時間との関係を図26~30にまとめた。
【0084】
これより、撹拌羽根本数4本の場合の最適パラメータは表6の通りとなった。
【0085】
【表6】
【0086】
表6の値を用いて撹拌羽根パラメータの範囲内最低値を求めた。すなわち、5つのパラメータのうち、4つのパラメータを最適パラメータの値として、混練終了となる残りの1つのパラメータの範囲を求めた。各パラメータが限界値となったときの各観測点におけるトレーサー流体質量分率を図31~34に示す。
【0087】
混練終了となる各パラメータの限界値は、図7の通りとなった。
【0088】
【表7】
【符号の説明】
【0089】
1 撹拌装置
2 撹拌槽
3 回転駆動軸
5 撹拌羽根
5a 第1の撹拌羽根
5b 第2の撹拌羽根
X 軸線
Y 第1の直線
Z 第2の直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34