(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015534
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】墨出し補助器具
(51)【国際特許分類】
B25H 7/04 20060101AFI20230125BHJP
E04G 21/18 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
B25H7/04 A
E04G21/18 B
E04G21/18 A
B25H7/04 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119369
(22)【出願日】2021-07-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】521320944
【氏名又は名称】尾崎 健
(74)【代理人】
【識別番号】100134533
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 夏香
(74)【代理人】
【識別番号】100186451
【弁理士】
【氏名又は名称】梅森 嘉匡
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 健
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174DA40
2E174DA41
(57)【要約】
【課題】墨出し用の目印を基礎に付けるためのテープメジャーを用いた計測作業を単独で実施することが可能であり、かつ、レーザー墨出し器の載置台としても利用可能な墨出し補助器具を提供する。
【解決手段】墨出し補助器具1は、ガイドフレーム2と、短フレーム部22の下端に固定され、第1締結面311を備える第1締結ユニット3と、長フレーム部21に装着され長フレーム部21に沿って摺動可能な第2締結ユニット4とを有する。第1締結ユニット3はベース体31と据付け片34と締め具33とを有し、第2締結ユニット4は締結用ネジ軸41とスライドアーム44とを有する。墨出し補助器具1は、固定側の第1締結ユニット3(第1締結面311)と可動側の第2締結ユニット4(第2締結面421)とにより基礎をその両側面から挟み付けることにより、基礎に対して着脱自在に締結される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平に配置される長フレーム部と下方に延びる短フレーム部とを備えるガイドフレームと、
前記短フレーム部の下端に固定され、上面視で前記長フレーム部の長手方向と略直交する方向に沿って設けられる第1締結面を備える第1締結ユニットと、
前記長フレーム部に装着され前記長フレーム部に沿って摺動可能な第2締結ユニットと、を有し、
前記第1締結ユニットは、
前記短フレーム部の下端に固定され、前記第2締結ユニット側の側面に前記第1締結面が形成されるベース体と、
前記ベース体上面に固定され、一端が前記第1締結面側から突出する据付け片と、
前記ベース体に取り付けられる締め具と、
を有し、
前記第2締結ユニットは、
前記長フレーム部と略平行に配置される締結用ネジ軸と、
上端側に前記長フレーム部が摺動自在に挿入される挿通孔が形成され、下端側に前記締結用ネジ軸が螺合するネジ孔が設けられ、前記長フレーム部及び前記締結用ネジ軸に略直交して配置されるスライドアームと、
を有し、
前記ベース体と前記締め具とによりメジャーテープの端部を挟み込んで保持する挟持手段を構成する、ことを特徴とする墨出し補助器具。
【請求項2】
前記墨出し補助器具は、前記第1締結ユニットに着脱自在に装着される拡張ユニット、
を有し、
前記第1締結ユニットは、
前記ベース体が、上面視で前記長フレーム部の長手方向と略直交する方向に開口する角筒を備えるとともに、
前記ベース体の上面から前記角筒の内部に向けて貫通する固定用ネジ孔と、
前記固定用ネジ孔に螺合するネジ部材と、
を有し、
前記拡張ユニットは、
長方形状の拡張プレートと、
上面視で前記拡張プレートの長手方向と略直交する方向に配置されるとともに前記拡張プレートの底面に固定され、一端が前記拡張プレートから突出し、前記角筒に挿入可能な連結バーと、
前記拡張プレートに取り付けられる拡張側締め具と、
を有し、
前記拡張プレートと前記拡張側締め具とによりメジャーテープの端部を挟み込んで保持する拡張側挟持手段を構成する、ことを特徴とする請求項1記載の墨出し補助器具。
【請求項3】
前記ガイドフレームが、前記第1締結ユニットと前記第2締結ユニットとの間に配置され、前記長フレーム部の底面に突設されるスペーサーを有し、
前記第1締結ユニットが有する前記締め具は、前記ベース体の上面に対して直立する方向に配置される狭持用ネジ軸、当該狭持用ネジ軸の上端部に取り付けられるハンドル、及び、当該狭持用ネジ軸が螺合する狭持用ネジ孔が形成され前記ベース体の上面に立設される逆L字型の支持部材により構成され、
前記拡張ユニットが有する前記拡張側締め具は、前記拡張プレートの上面に対して直立する方向に配置される拡張側ネジ軸、当該拡張側ネジ軸の上端部に取り付けられるハンドル、及び、当該拡張側ネジ軸が螺合する拡張側ネジ孔が形成され前記拡張プレートの上面に立設される逆L字型の支持部材により構成され、ることを特徴とする請求項2記載の墨出し補助器具。
【請求項4】
前記長フレーム部の断面形状が正方形状又は十字形状であり、
前記長フレーム部が挿入される前記挿通孔の形状が、前記長フレーム部の形状に対応して、正方形状又は十字形状であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の墨出し補助器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、墨出し補助器具に関し、特に、建築物の基礎に締結され、メジャーテープの端部を挟み込んで保持する墨出し補助器具に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物の土木敷設工事の施工において、基礎の立ち上がり部の天端や、逆転スラブとも称されるスラブ基礎の上面に墨出しを行う場合には、墨出し用の目印を付ける位置を特定するための計測作業が行われる。かかる計測作業においてテープメジャーを用いる場合には、通例、一人の作業員が基準位置にメジャーテープの端部を手で押さえ付けて保持している間に、他の作業員がメジャーテープをゆるみ無く真っ直ぐに引き延ばして計測しながら墨出しのための目印を付けていく。
【0003】
2名で行っていた墨出し作業を一人で実施することが可能な補助具として、例えば、特許文献1に開示される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2名がかりで実施されていたテープメジャーを用いた前記計測作業を単独で実施することができれば、工期の短縮や人件費の抑制等につながる。この点、特許文献1は、テープメジャーを用いた計測に対応可能な技術ではない。
【0006】
上述の墨出し作業において、近年、レーザー墨出し器が用いられることがあるが、基礎の立ち上がり厚さ(巾)が狭い場合には、レーザー墨出し器を基礎の天端に載せて墨出しを行うことが困難であった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、墨出し用の目印を基礎に付けるためのテープメジャーを用いた計測作業を単独で実施することが可能であり、かつ、レーザー墨出し器の載置台としても利用可能な墨出し補助器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る墨出し補助器具は、
略水平に配置される長フレーム部と下方に延びる短フレーム部とを備えるガイドフレームと、
前記短フレーム部の下端に固定され、上面視で前記長フレーム部の長手方向と略直交する方向に沿って設けられる第1締結面を備える第1締結ユニットと、
前記長フレーム部に装着され前記長フレーム部に沿って摺動可能な第2締結ユニットと、を有し、
前記第1締結ユニットは、
前記短フレーム部の下端に固定され、前記第2締結ユニット側の側面に前記第1締結面が形成されるベース体と、
前記ベース体上面に固定され、一端が前記第1締結面側から突出する据付け片と、
前記ベース体に取り付けられる締め具と、
を有し、
前記第2締結ユニットは、
前記長フレーム部と略平行に配置される締結用ネジ軸と、
上端側に前記長フレーム部が摺動自在に挿入される挿通孔が形成され、下端側に前記締結用ネジ軸が螺合するネジ孔が設けられ、前記長フレーム部及び前記締結用ネジ軸に略直交して配置されるスライドアームと、
を有し、
前記ベース体と前記締め具とによりメジャーテープの端部を挟み込んで保持する挟持手段を構成する、ことを特徴とする。
【0009】
前記墨出し補助器具は、前記第1締結ユニットに着脱自在に装着される拡張ユニット、
を有し、
前記第1締結ユニットは、
前記ベース体が、上面視で前記長フレーム部の長手方向と略直交する方向に開口する角筒を備えるとともに、
前記ベース体の上面から前記角筒の内部に向けて貫通する固定用ネジ孔と、
前記固定用ネジ孔に螺合するネジ部材と、
を有し、
前記拡張ユニットは、
長方形状の拡張プレートと、
上面視で前記拡張プレートの長手方向と略直交する方向に配置されるとともに前記拡張プレートの底面に固定され、一端が前記拡張プレートから突出し、前記角筒に挿入可能な連結バーと、
前記拡張プレートに取り付けられる拡張側締め具と、
を有し、
前記拡張プレートと前記拡張側締め具とによりメジャーテープの端部を挟み込んで保持する拡張側挟持手段を構成する、ものであっても良い。
【0010】
また、前記ガイドフレームが、前記第1締結ユニットと前記第2締結ユニットとの間に配置され、前記長フレーム部の底面に突設されるスペーサーを有し、
前記第1締結ユニットが有する前記締め具は、前記ベース体の上面に対して直立する方向に配置される狭持用ネジ軸、当該狭持用ネジ軸の上端部に取り付けられるハンドル、及び、当該狭持用ネジ軸が螺合する狭持用ネジ孔が形成され前記ベース体の上面に立設される逆L字型の支持部材により構成され、
前記拡張ユニットが有する前記拡張側締め具は、前記拡張プレートの上面に対して直立する方向に配置される拡張側ネジ軸、当該拡張側ネジ軸の上端部に取り付けられるハンドル、及び、当該拡張側ネジ軸が螺合する拡張側ネジ孔が形成され前記拡張プレートの上面に立設される逆L字型の支持部材により構成され、るものであっても良い。
【0011】
さらに、前記墨出し補助器具は、
前記長フレーム部の断面形状が正方形状又は十字形状であり、
前記長フレーム部が挿入される前記挿通孔の形状が、前記長フレーム部の形状に対応して、正方形状又は十字形状であっても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、墨出し用の目印を基礎に付けるためのテープメジャーを用いた計測作業を単独で実施することが可能であり、かつ、レーザー墨出し器の載置台としても利用可能な墨出し補助器具を提供することができる。本発明に係る墨出し補助器具によれば、第2締結ユニットがスライドアームの長フレーム部に対して摺動可能であり、様々な厚さの基礎に対して容易に装着して使用することができる。本発明は、例えば
図4に示すとおり基礎のコーナー部以外の箇所にも装着して使用することができる。また、一般にメジャーテープにはその端部に引っ掛け用のフックやリングが設けられているものがあるが、本発明によればメジャーテープの端部を挟み込んで保持するので、当該フックやリングが設けられていないメジャーテープにも適用することができる。
【0013】
従来のメジャーテープの端部を作業員が手で押さえ付けて保持する方法では、他の作業員がメジャーテープを引っ張ったときに、メジャーテープの端部が基準位置からズレてしまうことがあり、計測作業に時間を要し、煩雑であった。この点、本発明によれば、メジャーテープの端部を機械的に強固に保持することで、張力をかけたときのズレを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1形態である墨出し補助器具を示す正面図である。
【
図2】
図1に示す墨出し補助器具を示す図であり、(A)は上面図、(B)は底面図、(C)は左側面図である。
【
図3】
図1に示す墨出し補助器具の実施例を示す図であり、(A)は基礎への締結前の状態を側面方向から示した図、(B)は締結後の状態を側面方向から示した図、(C)は締結後の状態を上面方向から示した図であり、(D)はD-D線断面図である。
【
図4】一実施の形態である拡張ユニットを示す図であり、(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は底面図、(D)は左側面図である。
【
図5】
図4に示す拡張ユニットが装着された墨出し補助器具の実施例を上面方向から示した図である。
【
図6】
図5に示す墨出し補助器具の他の使用例を上面方向から示した図であり、(A)はガイドフレームに直交する方向を計測する場合の実施形態を示し、(B)はガイドフレームに平行な方向を計測する場合の実施形態を示す。
【
図7】
図4に示す拡張ユニットが組み付けられた墨出し補助器具の他の実施例を上面方向から示した図である。
【
図8】
図1及び
図2に示す墨出し補助器具及び拡張ユニットの試作品を右側面方向から撮影した写真であり、(A)は拡張ユニットを装着する前の状態を示し、(B)は拡張ユニットを装着した後の状態を示す。
【
図9】第2形態である墨出し補助器具を示す図であり、(A)は正面図、(B)は上面図である。
【
図10】
図9に示す墨出し補助器具の実施例を示す図であり、(A)は側面方向から示した図、(B)は上面方向から示した図である。
【
図11】第3形態である墨出し補助器具を示す図であり、(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は底面図であり、(D)は左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明を具体的に説明するが、本発明は図面に示す実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限りにおいて適宜変更可能である。
【0016】
図1は、第1形態である墨出し補助器具1を示す正面図である。
図2(A)は
図1に示す墨出し補助器具1の上面図、(B)は底面図、(C)は左側面図である。
図3は、
図1に示す墨出し補助器具1の実施例を示す図である。墨出し補助器具1は、一般家屋等の建築物の基礎に締結された状態で使用され、計測用具であるメジャーテープの端部を挟み込んで保持することが可能な金属製の器具である。
【0017】
墨出し補助器具1は、略水平に配置される長フレーム部21と下方に延びる短フレーム部22とを備えるガイドフレーム2と、短フレーム部22の下端に固定され、上面視で長フレーム部21の長手方向と略直交する方向に沿って設けられる第1締結面311を備える第1締結ユニット3と、長フレーム部21に装着され長フレーム部21に沿って摺動可能な第2締結ユニット4と、を有する。墨出し補助器具1は、固定側の第1締結ユニット3(第1締結面311)と可動側の第2締結ユニット4(第2締結面421)とにより基礎の立ち上がり部をその両側面から挟み付けることにより、基礎に対して着脱自在に締結される。以下、各構成要素につき詳細に説明する。
【0018】
ガイドフレーム2は、略水平に配置される長フレーム部21及び長フレーム部21の一端に連設され下方に延びる短フレーム部22を備え、本形態においては略L字型の部材である。長フレーム部21は、短フレーム部22より長尺である断面長方形状の部材であり、一端が短フレーム部22に連設され、他端(基端部)にはスライドアーム抜け止め用の突起23が設けられている。短フレーム部22は、一端が長フレーム部21に一体として設けられ、鉛直下方に向けて湾曲し、その下端(先端)には第1締結ユニット3が溶接固定されている。
【0019】
第1締結ユニット3は、第1締結面311が形成されるベース体31と、ベース体31の上面に固定され一端が第1締結面311から突出する据付け片34と、ベース体31に取り付けられる締め具33と、を有する。ベース体31と締め具33とによりメジャーテープTの端部を挟み込んで保持する挟持手段が構成される。短フレーム部22はベース体31の長手方向中間部に溶接固定され、短フレーム部22との固定箇所の両側の略対称位置に、締め具33及び据付け片34がそれぞれ設けられている。
【0020】
本実施の形態においては、ベース体31は、長方形状の鋼板36と、断面ロ字状の角筒32と、により構成される。鋼板36及び角筒32は、上面視で長フレーム部21の長手方向と略直交する方向に沿って配置される。角筒32は、鋼板36の第2締結ユニット4側の側面に、それぞれの上面が面一となるように、溶接固定される。ベース体31の第2締結ユニット4側の側面(本実施の形態においてはベース体31を構成する角筒32の第2締結ユニット4側の側面)が第1締結面311となる。
【0021】
据付け片34は、ベース体31上面に固定され、一端が第1締結面311側から突出する角棒状の部材である。据付け片34は、好ましくは、長フレーム部21の長手方向と略平行に配置される角棒状の部材であり、かかる形状の据付け片によれば、後記実施例で述べるとおり、据付け片34の先端がホールダウン金物(ホールダウンアンカー)やアンカーボルトを向くように墨出し補助器具1を基礎に締結しようとする場合の照準として利用することができる。
【0022】
角筒32の長手方向寸法は、好ましくは、図示するように鋼板36の長手方向寸法と同一に設定される。締め具33は、いずれも同様の構成であり、ベース体31の上面に対して直立する方向に配置される狭持用ネジ軸331、狭持用ネジ軸331の上端部に取り付けられるハンドル332、及び、狭持用ネジ軸331が螺合する狭持用ネジ孔が形成されベース体の上面に立設される逆L字型の支持部材333により構成される。ハンドル332をつまんで軸回りに回転させることにより狭持用ネジ軸331が回転し、その回転方向に応じてベース体31に向けて挟持用ネジ軸331を接近又は離間させることができる。狭持用ネジ軸331の下端がメジャーテープの押え部となっており、ベース体31と締め具33の当該押え部との間にメジャーテープTの端部を挟み込んで保持することができる(
図3(D)参照)。
【0023】
第2締結ユニット4は、長フレーム部21と略平行に配置される締結用ネジ軸41と、長フレーム部21及び締結用ネジ軸41に略直交して配置されるスライドアーム44と、を有する。スライドアーム44の上端側には長フレーム部21が摺動自在に挿入される挿通孔441が形成され、下端側には締結用ネジ軸41が螺合するネジ孔442が設けられる。長フレーム部21に対してスライドアーム44を摺動させたとき、スライドアーム44と一体として締結用ネジ軸41が移動する。また、スライドアーム44を静止させた状態で締結用ネジ軸41を回転させたとき、締結用ネジ軸41が移動する。
【0024】
本実施の形態においては、締結用ネジ軸41のうち第1締結ユニット3の側端部には押圧パッド42が取り付けられ、その反対側の端部にはグリップ43が取り付けられている。押圧パッ42の押圧面(第1締結ユニット3側に配置される面)が、基礎の側面に当接する第2締結面421となる。
【0025】
次に、
図3に基づいて、墨出し補助器具1の実施例について説明する。
図3(A)は基礎のコーナー部近傍への締結前の状態を側面方向から示した図であり、同図(B)は締結後の状態を側面方向から示した図であり、同図(C)は締結後の状態を上面方向から示した図であり、同図(D)は同図(C)に示すD-D線を切断線とする断面図である。なお、基礎Bはコンクリート製の布基礎であるが、説明の便宜上、アンカーボルトやホールダウン金物は図示していない。
【0026】
先ず、
図3(A)に示すように、基礎Bの立ち上がり部の一方の側面に第1締結面311を当接させるとともに基礎Bの天端に据付け片34を載せた状態において、同図(A)中矢印で示す方向にスライドアーム44を動かし、基礎Bの他方の側面に第2締結面421を当接させる。第2締結ユニット4はスライドアーム44に対して摺動自在であり、様々な厚さの基礎Bに対応することができる。次いで、グリップ43をねじ回して基礎Bを押し込む方向に締結用ネジ軸41を移動させることにより、第1締結ユニット3の第1締結面311と第2締結ユニット4の第2締結面421とにより基礎Bを両側面から挟み込んで締結する。据付け片34はその突出部が基礎の天端(上面)に据え付けられることにより、ベース体31の上面が基礎の天端(上面)と面一となるように配置される。
【0027】
次に、同図(D)に示すように、ハンドル332を回してメジャーテープTの端部を挟み込む方向に狭持用ネジ軸331を移動させることにより、ベース体31と狭持用ネジ軸331(締め具33)とによりメジャーテープTの端部を挟み込んで保持する。作業員は、メジャーテープTの一端を基礎Bに締結された墨出し補助器具1に挟み込んだ後、その他端を計測対象位置まで弛み無く真っ直ぐに引き延ばして、墨出し用の目印を付けるための計測作業を行うことができる。
【0028】
上記各作業は、いずれも作業員が単独で行うことができる。すなわち、本発明によれば、墨出し用の目印を基礎に付けるためのテープメジャーを用いた計測作業を単独で実施することができる。また、本発明によれば、基礎の天端と面一にベースプレート31を取り付けることができ、レーザー墨出し器の載置面を拡幅することができる。
【0029】
なお、本発明に用いられるテープメジャーとしては、テープの最先端部をゼロ点(基準点、0mm点)とするものではなく、当該最先端部から所定の間隔を空けた位置にゼロ点が設定されたものが好適である。
【0030】
墨出し補助器具1は、ガイドフレーム2、第1締結ユニット3、及び、第2締結ユニット4に加え、第1締結ユニット3に着脱自在に装着される拡張ユニット5、を有する。
図4は、一実施の形態である拡張ユニット5を示す図であり、(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は底面図、(D)は左側面図である。
【0031】
第1締結ユニット3は、ベース体31が、上面視で長フレーム部21の長手方向と略直交する方向に開口する角筒32を備えている。すなわち、本実施の形態においては、角筒32は、鋼板36とともにベース体31を構成し第1締結面311を形成するとともに、拡張ユニット5の装着手段として機能する。
【0032】
拡張ユニット5は、長方形状の拡張プレート51と、拡張プレート51の底面に固定される連結バー52と、拡張プレート5に取り付けられる拡張側締め具53と、有する。拡張プレート51と拡張側締め具53とによりメジャーテープTの端部を挟み込んで保持する拡張側挟持手段を構成する。拡張プレート5は、好ましくは、第1締結ユニット3に装着された状態において、ベース体31の上面と拡張プレート5の上面が面一となる厚さに設定される。
【0033】
拡張プレート5の長手方向中間部には、連結バー52が固定されている。連結バー52は、角筒32に挿入可能な角棒状の部材であり、上面視で拡張プレート5の長手方向と略直交する方向に配置されるとともに、拡張プレート51の底面に固定され、一端が拡張プレート5から突出している。
【0034】
拡張側締め具53は、いずれも締め具33と同様の構成であり、拡張プレート5の上面に対して直立する方向に配置される拡張側ネジ軸531、拡張側ネジ軸531の上端部に取り付けられるハンドル532、及び、拡張側ネジ軸531が螺合する拡張側ネジ孔が形成され拡張プレート5の上面に立設される逆L字型の支持部材533により構成される。拡張側ネジ軸531の下端がメジャーテープの押え部となっており、ハンドル532を回転させることにより、拡張プレート5と当該押え部との間にメジャーテープTの端部を挟み込んで保持することができる。
【0035】
本実施の形態においては、第1締結ユニット3は、ベース体31の上面から角筒32の内部に向けて貫通する固定用ネジ孔と、固定用ネジ孔に螺合するネジ部材35と、を有する。ネジ部材35はいずれも蝶ボルトである。固定用ネジ孔は角筒32の挿入口近傍に設けられており、ネジ部材35を締め付けることにより、角筒32に挿入された連結バー52を固定することができる。
【0036】
図5は、
図4に示す拡張ユニット5が装着された墨出し補助器具1の実施例を上面方向から示した図である。なお、
図5に示すガイドフレーム2、第1締結ユニット3、及び、第2締結ユニット4は、
図1及び
図2に示すものと同一の構成であるので同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
拡張ユニット5は、拡張プレート5を上面側に配置した状態で、連結バー52を角筒32の一方の挿入孔に挿入し、ネジ部材35を締め付けることにより、第1締結ユニット3に対して装着される。拡張ユニット5が装着された墨出し補助器具1は、
図4に示すとおり、基礎のコーナー部以外の箇所(単独基礎等)に締結し、メジャーテープTの端部を拡張側狭持手段により挟み込んで保持し、計測作業を行うことができる。
【0038】
長フレーム部21は基礎Bを横断するように配置されるが、略水平に配置された長フレーム部21と基礎Bの天端との間には短フレーム部22の長さに対応して隙間が設けられることから、長フレーム部21の下側にメジャーテープTを通すことができる。
【0039】
本実施の形態においては、ガイドフレーム2は、第1締結ユニット3と第2締結ユニット4との間に配置され、長フレーム部21の底面に突設されるスペーサー24、を有する。スペーサー24は、長フレーム部21の底面のうち、墨出し補助器具1を基礎Bに締結した状態において第1締結ユニット3と第2締結ユニット4との間に配置される位置、即ち、基礎の天端(上面)に載置される位置に突設される(
図1参照)。スペーサー24は、基礎の天端(上面)に据付け片34及びスペーサー24を載置したとき長フレーム部21が略水平に配置されるように、短フレーム部22の下端(ベースプレート31の上面)と同等の高さ位置まで鉛直下方に延びて設けられる。スペーサー24を設けることにより、長フレーム部21を略水平に配置しやすく、長フレーム部21の下側にメジャーテープTを通し易くするためのスペースを設けやすい。
【0040】
図6は、
図5に示す墨出し補助器具1の他の使用例を上面方向から示した図であり、(A)はガイドフレーム2に直交する方向を計測する場合の実施例を示し、(B)はガイドフレーム2に平行な方向を計測する場合の実施例を示す。図示するように、基礎Bに対する墨出し補助器具1の締結位置を変えることなく、各方向の計測を行うことができる。
【0041】
ところで、基礎の立ち上がり厚さ(巾)は、木造建築物であれば、120ミリメートルや150ミリメートルのように定められており、その厚さ(巾)方向の略中間部にはアンカーボルトAやホールダウン金物Hが設けられている。
図5や
図6に示すように基礎Bの配設方向に沿って計測を行う場合には、アンカーボルトAやホールダウン金物Hを避けてメジャーテープTを引き延ばす必要がある。そこで、ベース体側の締め具33や拡張側締め具53は、基礎Bに墨出し補助器具1を装着したとき、基礎Bの厚さ方向の略中間部よりも壁面側にずれた位置に配置されるように設けられることが好ましい。
【0042】
たとえば、前述の厚さの基礎Bに装着される墨出し補助器具1であれば、好ましくは、ベース体側の締め具33が、ベース体31に固定される短フレーム部22の下端部からベース体31の長手方向に向けて約65ミリメートル離れた位置に狭持用ネジ軸331が配置される箇所に設けられる。また、拡張側締め具53が、連結バー52の固定部から拡張プレート5の長手方向に向けて約115ミリメートル離れた位置に拡張側ネジ軸531が配置される箇所に設けられる。また、更に好ましくは、据付け片34が、ベース体31に固定される短フレーム部22の下端部からベース体31の長手方向に向けて約105ミリメートル離れた位置に設けられる。かかる構成によれば、据付け片34の先端を照準として据付け片34の延長方向にアンカーボルトAやホールダウン金物Hが配置されるように墨出し補助器具1を装着することにより、ベース体側の締め具33や拡張側締め具53を基礎Bの厚さ方向の略中間部よりも壁面側にずれた位置に配置することができ、アンカーボルトAやホールダウン金物Hを回避しつつ、基礎Bの配設方向に沿ってメジャーテープTを真っ直ぐに引き延ばすことができる。
【0043】
図7は、
図4に示す拡張ユニット5が組み付けられた墨出し補助器具1の他の実施例を上面方向から示した図である。拡張ユニット5は角筒32のいずれの挿入口からでも装着可能であり、適宜、挿入口を入れ替えて装着することにより、様々な基礎の形状にも対応して使用することができる。拡張ユニット5と第1締結ユニット3との締結作業は、ネジ部材35を締め付けるのみで実施でき簡便である。
【0044】
図8は、
図1及び
図2に示す墨出し補助器具及び拡張ユニットの試作品を右側面方向から撮影した写真であり、(A)は拡張ユニットを装着する前の状態を示し、(B)は拡張ユニットを装着した後の状態を示す。前述のガイドフレーム2及び第2締結ユニット4は、L型クランプ等の名称で販売されている締結用具を加工することにより容易に製作することができる。例えば、
図7に示す試作品は、L型クランプの短フレーム部を切断し、当該切断部(短フレーム部の下端)に第1締結ユニットを溶接固定等することにより製作したものである。また、同図に示すベース体側の締め具及び拡張側締め具は、市販のハンドル式のクランプの受け部(ネジ軸先端に対向する部分)を切断加工して、プレートに溶接することにより製作したものである。なお、同図に示すように、挟持用ネジ軸や拡張側ネジ軸の下端には、メジャーテープとの接触面を拡張するためのカップ状の押圧体を設けるようにしても良い。
【0045】
次に、第2形態である墨出し補助器具6について説明する。
図9は、第2形態である墨出し補助器具6を示す図であり、(A)は正面図、(B)は上面図である。
図10は、
図9に示す墨出し補助器具6の実施例を示す図であり、(A)は側面方向から示した図、(B)は上面方向から示した図である。なお、第1形態である墨出し補助器具1と共通する部品ないし部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
前述のとおり、基礎スラブの上面に墨付けを行ったりする際にテープメジャーを用いた計測作業を行う場合があるが、墨出し補助器具6によれば、アンカーボルトやホールダウン金物等の突出物が立設された基礎スラブに締結することができる。すなわち、墨出し補助器具6は、略水平に配置される長フレーム部71と下方に延びる短フレーム部72とを備えるガイドフレーム7を有するところ、長フレーム部71の断面形状が正方形状であり、長フレーム部71が挿入されるスライドアーム45の挿通孔451の形状が長フレーム部71の形状に対応して正方形状である。また、長フレーム部71の基端部には、第1形態の長フレーム部21とは異なり、スライドアーム抜け止め用の突起が設けられていない。従って、第2締結ユニット4を長フレーム部71の基端部側から取り外し、
図9に示すように、スライドアーム45をガイドフレーム7の側方に配置されるように90°時計回りに回転させた状態で当該基端部側から取り付けることができる。なお、スライドアーム45の下端側には締結用ネジ軸41が螺合するネジ孔452が設けられる。このように、スライドアームをガイドフレームの側方に配置されるように90°時計回りに回転させた状態で取り付けることが可能な形状であれば、例えば、長フレーム部の断面形状を十字形状に形成するとともに、前記長フレーム部が挿入される前記挿通孔の形状を、前記長フレーム部の形状に対応して、十字形状に形成するようにしても良い。
【0047】
墨出し補助器具6によれば、
図10に示すように、基礎Bの一方の側面に第1締結面311を当接させるとともに基礎Bの天端に据付け片34を載せた状態において、スライドアーム45及びグリップ43を操作して、アンカーボルトA等の突出物に押圧パッド46を押し付けることにより、基礎Bに対して墨出し補助器具6を締結することができる。次いで、ハンドル332を回してメジャーテープTの端部を挟み込む方向に狭持用ネジ軸331を移動させることにより、メジャーテープTの端部を挟み込んで保持することができる。これらの作業は、作業員が単独で行うことができる。
【0048】
締結用ネジ軸41に取り付けられる押圧パッド46は、図示するように、第2締結面461側にV字状の縦溝を有するものであっても良い。当該溝部にアンカーボルトA等の突出物を嵌め込むことで、基礎Bに対して墨出し用補助器具6を強固に締結することができる。また、墨出し補助器具6によれば、長フレーム部71に対してスライドアーム45を前記第1形態のごとく取り付けることにより、前記第1形態と同様の使用方法を実現することができる。
【0049】
図11は、第3形態である墨出し補助器具を示す図であり、(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は底面図であり、(D)は左側面図である。なお、第1形態である墨出し補助器具1と共通する部品ないし部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
第3形態である墨出し補助器具8は、ベース体81が、短フレーム部22の下端に固定され、第2締結ユニット4側の側面に第1締結面811が形成される点は第1形態のベース体31と同様であるが、ベース体81は、ベース体31とは異なり、直角に折り曲げられたアングル鋼86と角筒82とにより構成される。アングル鋼86は、据付け片34や締め具33が取り付けられる上面部と、第1締結面811を形成する側面部とを備える。角筒82は当該上面部の底面に固定される。かかる形態によれば、当該側面部を拡張して基礎に接する第1締結面811を大きくすることで、墨出し補助器具8を基礎に対して安定して装着することができる。
【0051】
本発明は、上記実施の形態ないし実施例に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形実施が可能である。例えば、前記実施の形態においては、いずれも基礎の配設方向に沿ってメジャーテープを引き延ばして計測しているが、ベース体側の締め具33および拡張側締め具53は、いずれもメジャーテープを挟み込んで保持する機構であるから、これに限られることなく、対角線方向等任意の角度方向の計測にも適用することができる。また、据付け片34,締め具33、53の個数は各2個に限らず、任意に増減可能である。
【0052】
また、締め具33及び拡張側締め具53の構成は一例に過ぎず、例えば、バイスプライヤや各種クランプを締め具として用いることもできる。例えば、締め具33に変えて、ベース体の鋼板36(第3形態の場合にはアングル鋼86の上面部)に対してバイスプライヤ(図示しない)の顎部を挟み付けて取り付けることにより、ベース体と締め具としてのバイスプライヤとによりメジャーテープの端部を挟み込んで保持する挟持手段を構成し、バイスプライヤを開閉操作して上側顎部と鋼板上面(又はアングル鋼の上面部)との間にメジャーテープの端部を挟み込んで保持するようにしても良い。同様に、拡張側締め具53に変えて、拡張プレート51に対してバイスプライヤ(図示しない)の顎部を挟み付けて取り付けることにより、拡張プレートと拡張側締め具としてのバイスプライヤとによりメジャーテープの端部を挟み込んで保持する拡張側挟持手段を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、建築物の施工において基礎に墨出しを行う際に適用することができるが、墨出し作業の局面に限られることなく、基礎やアンカーボルト等の工作物が所定の位置に設置されているか確認するための計測作業をメジャーテープを用いて行う際にも利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 墨出し補助器具(第1形態)
2 ガイドフレーム
21 長フレーム部
22 短フレーム部
24 スペーサー
3 第1締結ユニット
31 ベース体
311 第1締結面
32 角筒
33 締め具
34 据付け片
36 鋼板
4 第2締結ユニット
41 締結用ネジ軸
421 第2締結面
44 スライドアーム
45 スライドアーム
5 拡張ユニット
51 拡張プレート
52 連結バー
53 拡張側締め具
6 墨出し補助器具(第2形態)
7 ガイドフレーム
71 長フレーム部
8 墨出し補助器具(第3形態)
81 ベース体
811 第1締結面
82 角筒
86 アングル鋼
B 基礎
A アンカーボルト
H ホールダウン金物
T メジャーテープ