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特開2023-15537絶縁シート及びこれを用いた電磁装置、並びに電磁装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015537
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】絶縁シート及びこれを用いた電磁装置、並びに電磁装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/47 20060101AFI20230125BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20230125BHJP
   H02K 15/10 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
H02K3/47
H02K3/04 E
H02K15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119374
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】596069542
【氏名又は名称】株式会社旭エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186026
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 研自
(72)【発明者】
【氏名】大内 正之
(72)【発明者】
【氏名】田村 強
【テーマコード(参考)】
5H603
5H604
5H615
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB02
5H603BB07
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB01
5H603CB21
5H603CC19
5H603CD21
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB03
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC04
5H604CC12
5H604DA14
5H604DB01
5H604DB26
5H604PB03
5H604QA01
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP12
5H615RR02
5H615SS10
5H615SS18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】絶縁シートに空芯のコイルを精度良く取り付ける作業を容易に行うことができ、電磁装置の製造コストの低減が可能な絶縁シート及びこれを用いた電磁装置、並びに電磁装置の製造方法を提供する。
【解決手段】空芯のコイルを電磁装置の電機子の外周又は内周の少なくとも一方に周方向に沿って複数配列するため前記電機子の外周又は内周の少なくとも一方の面を絶縁する絶縁シートであって、複数の前記コイルを予め定められた位置にそれぞれ位置決めするための複数の位置決め部を備えるよう構成される。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空芯のコイルを電機子の外周又は内周の少なくとも一方に周方向に沿って複数配列するため前記電機子の外周又は内周の少なくとも一方を絶縁する絶縁シートであって、
前記各コイルを予め定められた位置にそれぞれ位置決めする複数の位置決め部を備えた絶縁シート。
【請求項2】
前記位置決め部は、前記コイルの空芯に嵌め合わされる位置決め用凸部からなる請求項1に記載の絶縁シート。
【請求項3】
前記位置決め用凸部は、前記絶縁シートのシート基材に接着又は溶着により設けられる請求項2に記載の絶縁シート。
【請求項4】
前記位置決め用凸部は、前記絶縁シートのシート基材をプレス加工することにより形成される請求項2に記載の絶縁シート。
【請求項5】
前記位置決め用凸部は、前記コイルの空芯と同一形状に形成される請求項2乃至4のいずれかに記載の絶縁シート。
【請求項6】
空芯のコイルが外周又は内周の少なくとも一方に周方向に沿って複数設けられる電機子と、
永久磁石が予め定められた方向に配列され前記電機子に対して相対的に移動する界磁と、
を備え、
前記電機子は、前記空芯のコイルを外周又は内周の少なくとも一方に周方向に沿って複数配列するため前記電機子の外周又は内周の少なくとも一方を絶縁する絶縁シートを有し、
前記絶縁シートとして請求項1乃至5のいずれかに記載の絶縁シートを用いた電磁装置。
【請求項7】
前記空芯のコイルは、リッツ線又はマグネットワイヤーの巻線からなり、3相のコイルを構成するよう接続される請求項6に記載の電磁装置。
【請求項8】
空芯のコイルが外周又は内周の少なくとも一方に周方向に沿って複数設けられる電機子と、
永久磁石が予め定められた方向に配列され前記電機子に対して相対的に移動する界磁と、
を備えた電磁装置の製造方法において、
前記電機子の外周又は内周の少なくとも一方を絶縁する絶縁シートであって、前記各コイルを予め定められた位置にそれぞれ位置決めする複数の位置決め部を備えた前記絶縁シートを準備する第1の工程と、
前記電機子の外周又は内周の少なくとも一方を前記絶縁シートで被覆する第2の工程と、
前記絶縁シートの前記各位置決め部に前記空芯のコイルを固定する第3の工程と、
を備える電磁装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁シート及びこれを用いた電磁装置、並びに電磁装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電動機や発電機などの回転電機、あるいはリニアモータなどの電磁装置としては、例えば、電機子を備えたコアレス型ブラシレスモータがある(特許文献1)。
【0003】
このコアレス型ブラシレスモータの電機子100は、図16に示されるように、薄肉円筒形状に形成された芯金101の外周に、環状に形成された複数の電磁鋼板102,102・・・を互いに絶縁した状態で積層することにより電機子本体103を構成し、電機子本体103の外周面を細長い矩形状に形成された絶縁シート104によって接着剤を介して全周にわたり被覆する。
【0004】
そして、コアレス型ブラシレスモータの電機子100は、電機子本体103の外周面を構成する絶縁シート104の表面に複数の空芯のコイル105,105・・・を周方向に沿って接着剤により固定することで製造される。
【0005】
その際、コアレス型ブラシレスモータの電機子100の外周面に配置される複数の空芯のコイル105,105・・・は、永久磁石からなる界磁とともにコアレス型ブラシレスモータの性能を決定する部材であり、電機子本体103の外周面の予め定められた位置に精度良く取り付ける必要がある。
【0006】
そこで、従来のコアレス型ブラシレスモータでは、複数の空芯のコイル105,105・・・を電機子本体103の外周面に取り付けるため、図17に示されるような専用の装着治具200を用いている。
【0007】
この専用の装着治具200は、図17に示されるように、円盤状の台座201と、台座201の上部に垂直方向に沿って配置され、電機子本体103を外周に嵌め合わせた状態で保持する円筒形状の保持部202と、台座201と保持部202の間に配置され、空芯のコイル105,105・・・を保持した保持部材203を周方向に沿って電機子本体103の外周面と平行になるよう取り付ける取付部204を備えている。
【0008】
装着治具200の取付部204は、平面多角柱形状に形成されており、各取付部204の表面には、保持部材203を位置決めする位置決めピン205と、位置決めピン205の上下にそれぞれ穿設された雌ネジ部206,207が設けられている。
【0009】
一方、保持部材203は、図18に示されるように、平面円弧状に形成された内面の中央に空芯のコイル105,105・・・を嵌め合わせた状態で保持するための凸条208が長手方向に沿って設けられている。また、保持部材203の下端部は、装着治具200の取付部204に当接される平面状に形成されているとともに、位置決めピン205が挿入される挿入孔209と、装着治具200の雌ネジ部206,207に図示しない雄ネジを螺合させるためのザグリ穴210,211がそれぞれ形成されている。
【0010】
そして、装着治具200は、図19に示されるように、絶縁シート104の外周面に全面にわたり接着剤が塗布された電機子本体103を円筒形状の保持部に嵌め合わせた状態で固定した後、凸条208にコイル105,105・・・の空芯部を嵌め合わせたコイル105,105・・・を保持した保持部材203を、装着治具200の取付部204の外周に位置決めピン205で位置決めしつつ、雌ネジ部206,207にザグリ穴210,211を介して図示しない雄ネジをそれぞれ螺合することにより固定する。このとき、空芯のコイル105,105・・・の内周面は、接着剤を介して電機子本体103の外周面の予め定められた位置に押圧された状態で位置決めされる。
【0011】
電機子本体103を保持した装着治具200は、所要の温度に加熱された電気炉の内部に入れられて所要の時間だけ放置され、接着剤が加熱硬化されて電機子本体103の外周面に空芯のコイル105,105・・・が装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平09-056131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来のコアレス型ブラシレスモータの場合は、上述したように、電機子100を組み立てるに際して専用の装着治具200を使用する必要があり、しかも専用の装着治具200を用いて電機子本体103の外周に空芯のコイル105,105・・・を配置する作業が非常に煩雑であり、大幅な製造コストの上昇を招くという技術的課題を有していた。
【0014】
そこで、本発明の目的は、電機子の絶縁シートに空芯のコイルを精度良く取り付ける作業が容易であり、電磁装置の製造コストを低減することが可能な絶縁シート及びこれを用いた電磁装置、並びに電磁装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載された発明は、空芯のコイルを電機子の外周又は内周の少なくとも一方に周方向に沿って複数配列するため前記電機子の外周又は内周の少なくとも一方を絶縁する絶縁シートであって、
前記各コイルを予め定められた位置にそれぞれ位置決めする複数の位置決め部を備えた絶縁シートである。
【0016】
請求項2に記載された発明は、前記位置決め部は、前記コイルの空芯に嵌め合わされる位置決め用凸部からなる請求項1に記載の絶縁シートである。
【0017】
請求項3に記載された発明は、前記位置決め用凸部は、前記絶縁シートのシート基材に接着又は溶着により設けられる請求項2に記載の絶縁シートである。
【0018】
請求項4に記載された発明は、前記位置決め用凸部は、前記絶縁シートのシート基材をプレス加工することにより形成される請求項2に記載の絶縁シートである。
【0019】
請求項5に記載された発明は、前記位置決め用凸部は、前記コイルの空芯と同一形状に形成される請求項2乃至4のいずれかに記載の絶縁シートである。
【0020】
請求項6に記載された発明は、空芯のコイルが外周又は内周の少なくとも一方に周方向に沿って複数設けられる電機子と、
永久磁石が予め定められた方向に配列され前記電機子に対して相対的に移動する界磁と、
を備え、
前記電機子は、前記空芯のコイルを外周又は内周の少なくとも一方に周方向に沿って複数配列するため前記電機子の外周又は内周の少なくとも一方を絶縁する絶縁シートを有し、
前記絶縁シートとして請求項1乃至5のいずれかに記載の絶縁シートを用いた電磁装置である。
【0021】
請求項7に記載された発明は、前記空芯のコイルは、リッツ線又はマグネットワイヤーの巻線からなり、3相のコイルを構成するよう接続される請求項6に記載の電磁装置である。
【0022】
請求項8に記載された発明は、空芯のコイルが外周又は内周の少なくとも一方に周方向に沿って複数設けられる電機子と、
永久磁石が予め定められた方向に配列され前記電機子に対して相対的に移動する界磁と、
を備えた電磁装置の製造方法において、
前記電機子の外周又は内周の少なくとも一方を絶縁する絶縁シートであって、前記各コイルを予め定められた位置にそれぞれ位置決めする複数の位置決め部を備えた前記絶縁シートを準備する第1の工程と、
前記電機子の外周又は内周の少なくとも一方を前記絶縁シートで被覆する第2の工程と、
前記絶縁シートの前記各位置決め部に前記空芯のコイルを固定する第3の工程と、
を備える電磁装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電機子の絶縁シートに空芯のコイルを精度良く取り付ける作業が容易であり、電磁装置の製造コストを低減することが可能な絶縁シート及びこれを用いた電磁装置、並びに電磁装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態1に係る電磁装置の一例としてのコアレス型ブラシレスモータを示す正面図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る電磁装置の一例としてのコアレス型ブラシレスモータを示す断面図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る電磁装置の一例としてのコアレス型ブラシレスモータを示す左側面図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る電磁装置の一例としてのコアレス型ブラシレスモータを示す右側面図である。
図5】界磁を示す平面構成図である。
図6】本発明の実施の形態1に係る電磁装置の一例としてのコアレス型ブラシレスモータの電機子を示す構成図である。
図7】空芯のコイルを示す構成図である。
図8】本発明の実施の形態1に係る絶縁シートを示す構成図である。
図9】絶縁シートの位置決め用凸部を示す構成図である。
図10】本発明の実施の形態1に係る絶縁シートの製造工程を示す構成図である。
図11】本発明の実施の形態1に係る絶縁シートの製造工程を示す構成図である。
図12】本発明の実施の形態1に係る電磁装置の一例としてのコアレス型ブラシレスモータの製造工程を示す構成図である。
図13】本発明の実施の形態1に係る電磁装置の一例としてのコアレス型ブラシレスモータの要部を示す正面図である。
図14】本発明の実施の形態2に係る電磁装置の一例としてのコアレス型ブラシレスモータの絶縁シートを示す構成図である。
図15】本発明の実施の形態3に係る絶縁シートをそれぞれ示す平面図である。
図16】コアレス型ブラシレスモータの電機子を示す構成図である。
図17】従来のコアレス型ブラシレスモータの製造装置を示す構成図である。
図18】保持部材を示す構成図である。
図19】従来のコアレス型ブラシレスモータの製造工程を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0026】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態1に係る電磁装置の一例としてのコアレス型ブラシレスモータを示す正面図、図2は同コアレス型ブラシレスモータを示す断面図、図3は同コアレス型ブラシレスモータを示す左側面図、図4は同コアレス型ブラシレスモータを示す右側面図である。
【0027】
本実施の形態1に係るコアレス型ブラシレスモータ1は、アウターロータ方式のブラシレスモータである。このコアレス型ブラシレスモータ1は、図1及び図2に示されるように、大別して、外周に配置された円筒形状の回転子(ロータ)2と、回転子2の内部に固定して配置された電機子(ステータ)3(図4参照)と、回転子2と一体的に設けられ電機子3に回転可能となるよう支持された回転軸(シャフト)4とを備えている。
【0028】
回転子2は、円筒形状に形成されたバックヨーク(継鉄)5と、バックヨーク5の内周面に周方向に沿って取り付けられた円筒形状の界磁6から構成されている。バックヨーク5は、SS400等の一般構造用圧延鋼材によって比較的薄肉の円筒形状に形成されている。バックヨーク5の一端部5a(図中左端部)は、他の部分に比較して内側へ向けて若干厚肉に形成されている。バックヨーク5の一端部5aには、長円形状に形成された排気口7,7・・・が周方向に沿って等しい間隔で複数(図示例では8つ)設けられている。また、バックヨーク5の一端部5aは、回転軸4の円盤状に形成されたフランジ部14の外周端19に嵌合や接着等の手段により固定されている。
【0029】
バックヨーク5の内周面には、複数の永久磁石8,8・・・からなる円筒形状の界磁6が全周にわたり取り付けられている。界磁6を構成する永久磁石8,8・・・は、軸方向に沿って細長い略直方体状に形成されたものが、周方向に沿って互いに密着した状態、またはある距離だけ離れた状態で複数(例えば、24個)配置されている。
界磁6としては、例えば、図5に示されるように、リング状の円筒磁石を用いて、複数の永久磁石8,8・・・を界磁6の内周から外周に向けてN極とS極が交互に位置するよう着磁したN-S配列のものが用いられる。
【0030】
回転軸4は、図2に示されるように、コアレス型ブラシレスモータ1の中心に軸方向に沿って配置されている。回転軸4は、その軸方向に沿ってコアレス型ブラシレスモータ1の内部に配置される長尺な主軸部10と、主軸部10の軸方向に沿った一端側(図中右側)にテーパ部11を介して主軸部10より外径が小さく形成された出力軸部12と、主軸部10の軸方向に沿った他端側(図中左側)に主軸部10より僅かに外径が大きく形成された中径部13を介して半径方向外方へ向けた円盤状に設けられたフランジ部14(図3参照)と、フランジ部14の外側面に相対的に外径が大きく形成された大径部15と、大径部15の外側端に短く突出した外径が最も小さい小径部16とを備えている。
【0031】
回転軸4のフランジ部14は、図2及び図3に示されるように、外側面が全面的に閉塞された円盤状に形成されている。フランジ部14の内側面には、中径部13より外径が大きく形成された中心部17から半径方向に沿った外方へ向けて平板状に伸びた回転翼18が周方向に沿って複数(図示例では8個)設けられている。回転翼18は、その先端部18aの幅が基端部18bより若干小さく設定されている。また、回転翼18の先端は、バックヨーク5の外周に設けられた排気口7,7・・・の間に位置するよう配置されている。
【0032】
さらに、回転軸4のフランジ部14は、その外周端19が軸方向に沿った内側へ向けて回転軸4と平行となるよう全周にわたり屈曲された短い円筒状に形成されている。このフランジ部14の外周端19には、バックヨーク5の排気口7,7・・・が内部へ向けて貫通した状態で設けられている。このフランジ部14の外周端19には、上述したように、バックヨーク5の一端部5aが嵌合や接着等の手段により固定されている。バックヨーク5を備えた界磁6からなる回転子2は、フランジ部14を介して回転軸4に片持ち梁状に一体的に連結され、回転軸4とともに回転する。
【0033】
回転軸4の回転検出方法は、接続した駆動回路の機能により、3相のコイルの逆起電力を利用して行うセンサレス方式を採用している。故に、磁極を検出するための素子(ホール素子又はホールIC)等は、モータには搭載されていないので、シンプルな構造となっている。
【0034】
回転軸4の主軸部10には、図2に示されるように、その軸方向に沿った両端部に配置された軸受部材の一例としてのベアリング20,21を介して内部ハウジング22が装着されている。一方のベアリング20は、その一端部(図中左端部)が回転軸4の中径部13の端面に突き当てられた状態で配置されている。このベアリング20の軸方向に沿った他端部(図中右端部)は、内部ハウジング22の内周面に装着されたC形状の穴用止め輪23によって位置決めされている。
【0035】
また、他方のベアリング21は、その一端部(図中右端部)が回転軸4のテーパ部11の内側に装着されたC形状の軸用止め輪24によって位置決めされている。このベアリング21の軸方向に沿った他端部(図中左端部)は、環状の波ワッシャー25を介して円筒スペーサ26に突き当てられている。円筒スペーサ26は、内部ハウジング22の内周面に固定された状態で配置されて一対のベアリング20,21の間隔を所定の値に保持する円筒形状の部材である。円筒スペーサ26の軸方向に沿った一端部(図中左端部)は、C形状の穴用止め輪23に突き当てられている。また、円筒スペーサ26の軸方向に沿った他端部(図中右端部)は、半径方向に沿った内側へ向けて折り曲げられ端部26aが円形状に開口された端面を形成している。円筒スペーサ26は、この端部26aが波ワッシャー25に突き当てられている。円筒スペーサ26は、内部ハウジング22の内周面に嵌合し、波ワッシャー25のバネ圧と共に、ベアリング20,21に定圧予圧を与えるためのものである。
【0036】
内部ハウジング22は、円筒形状の電機子3を固定した状態で保持する部材である。内部ハウジング22は、軽量化などのため、アルミニウムによる一体成型等により形成される。内部ハウジング22は、電機子3の軸方向に沿った長さと略同等の長さを有する円筒状に形成された円筒部27と、円筒部27の軸方向に沿った両端部にそれぞれ半径方向の外方へ向けて環状に設けられた第1及び第2の環状部28,29とを備えるよう構成されている。
【0037】
内部ハウジング22の第1の環状部28には、軸方向に沿って空気を挿通させるための挿通孔31,31・・・が周方向に沿って複数開口されている。
【0038】
一方、内部ハウジング22の第2の環状部29には、図2に示されるように、第1の環状部28に比較して厚肉であって且つ外径が大きい円環状に形成されている。内部ハウジング22の第2の環状部29は、その軸方向に沿った内側に電機子3の内周面と接着剤等で接合されている。当該接合部は、第2の環状部29の外周端より外径が小さく設定された段差部として軸方向の内側に沿った短い円筒形状に形成されている。内部ハウジング22の第2の環状部29は、その外周端が電機子3の外径と同等か又は若干大きく設定されている。内部ハウジング22の第2の環状部29とバックヨーク5との間には、間隙Gが設けられている。
【0039】
内部ハウジング22の第2の環状部29には、図4に示されるように、周方向に沿って複数(図示例では12個)の吸気口33,33・・・が開口されている。第1の環状部28の挿通口31,31・・・は、吸気口33,33・・・と軸方向に沿った同じ位置に同一の内径を有する円形状に形成されている。第2の環状部29の複数の吸気口33,33・・・からコアレス型ブラシレスモータ1の内部に取り入れられた外気は、図2に示されるように、内部ハウジング22の内部を通過する間に当該ブラシレスモータ1の電機子3を冷却しつつ、第1の環状部28の複数の挿通孔31,31・・・からブラシレスモータ1の軸方向に沿った端部(図中左側端部)へと流れる。このような空気の流れは、回転軸4の回転翼18によって作り出される。回転軸4の回転翼18によって半径方向に沿った外方へと流れる空気は、バックヨーク5の排気口7,7・・・から外部に排出される。
【0040】
また、内部ハウジング22の第2の環状部29には、図4に示されるように、コアレス型ブラシレスモータ1を所望の位置に取り付けるための取付用のネジ穴34,34・・・が複数(図示例では4つ)設けられている。さらに、内部ハウジング22の第2の環状部29には、後述する電機子3のコイル44,44・・・の配線を挿通するため挿通孔に装着されたブッシュ35,35・・・が2個を一組として外周端に沿って複数組(図示例では18組)設けられている。なお、図中、符号36は電機子3のコイルの温度を検知する温度センサ37(図2参照)の配線を挿通するため、内部ハウジング22の第2の環状部29の最上端に設けられた挿通孔に装着されたブッシュを示している。また、図2には、便宜上、取付用のネジ穴34,34・・・の断面が図示されているが、当該取付用のネジ穴34,34・・・は、図4に示されるように、垂直方向及び水平方向に対して45度をなす位置に配置されている。
【0041】
また、図示の実施の形態1では、内部ハウジング22の軸方向に沿った長さを可能な限り短くし、且つ取付用のネジ穴34,34・・・が設けられる部分の剛性を高めるため、第2の環状部29の外側面には、円筒部27の外径と同一の外径を有し、当該円筒部27より内径が小さく厚肉に形成された厚肉円筒部38が形成されている。そして、取付用のネジ穴34,34・・・は、第2の環状部29の厚肉円筒部38に設けられている。その際、取付用のネジ穴34,34・・・は、その外周端が内部ハウジング22の円筒部27の内周端より外側(円筒部27の肉厚の内部)に位置するよう配置されている。そのため、第2の環状部29の厚肉円筒部38に取付用のネジ穴34,34・・・を設けるにあたり、取付用のネジ穴34,34・・・の奥側の端部が内部ハウジング22の円筒部27の内部に埋没するのを回避するため、円筒部27の右側端部には、厚肉円筒部38の内側から外周へ向けて穿設された環状の凹部39が設けられている。
【0042】
内部ハウジング22には、図2に示されるように、電機子3が接着等の手段により固定された状態で設けられている。電機子3は、その軸方向に沿った両端部のみが第1の環状部28及び第2の環状部29にそれぞれ装着されている。電機子3の内周面は、内部ハウジング22の第1及び第2の環状部28,29の間に形成された空間に露出している。
【0043】
電機子3は、図6に示されるように、薄肉円筒形状に形成されたステンレス等からなる芯金40を備えている。芯金40の軸方向に沿った一端部には、フランジ部41が半径方向に沿った外方向に向けて短く形成されている。芯金40の外周には、薄い電磁鋼板等からなる環状の積層板42,42・・・が全長にわたり接着剤を介して貼り合わされた状態で複数枚(例えば、145枚)積層されている。複数枚の積層板42,42・・・は、旋削や切削加工などにより外径が均一な円筒面となるよう加工される。芯金40と環状の積層板42,42・・・は、電機子本体3’を構成している。
【0044】
電機子本体3’の積層板42,42・・・の外周面には、絶縁性を保持するための絶縁シート43が全周にわたり接着剤を介して巻き付けられている。
【0045】
また、電機子3の絶縁シート43の外周面には、複数(図示例では18個)の空芯のコイル44,44・・・が周方向に沿って全周にわたり接着等の手段により設けられている。電機子3の外周に配置される複数のコイル44,44・・・は、コアレス型ブラシレスモータ1の性能を決定するものであり、その取付位置に高い精度が要求される。
【0046】
空芯のコイル44,44・・・は、図7に示されるように、リッツ線又は通常のマグネットワイヤーからなる巻線45を予め定められた回数にわたり中心を空芯部46として長円形状に巻き付けて構成されている。また、空芯のコイル44,44・・・は、円筒形状に形成された電機子3の外周に配置されるものである。そのため、空芯のコイル44,44・・・は、その内周面及び外周面が電機子3の外径に対応した曲率半径R1,R2を有する円弧状に形成されている。リッツ線は、例えば、合成樹脂が被覆された外径0.2mm程度の銅線を予め定められた本数(例えば、8本)だけ束ねて撚りを加えたものである。巻線45としては、例えば、リッツ線をα巻きで2層配列巻きに巻回したものが用いられる。α巻きとは、コイル44の巻線45の巻き始めと巻き終わりの両方がコイル44の外周に形成される巻き方である。コイル44の中心には、長手方向に沿って直線状に形成され、その両端部が巻線41の曲率に対応した曲率半径の円弧状に形成された空隙部(空芯)46が形成されている。コイル44,44・・・は、その中心に鉄心(コア)を有しないコアレス型のコイルである。
【0047】
空芯のコイル44,44・・・は、巻き線機などを用いて製造される。その際、空芯のコイル44,44・・・は、巻き線機の空隙部46に対応した形状に形成された図示しない巻き芯に対して、巻線45の両端を保持した状態で巻線の両端の回転方向が互いに逆方向となるよう且つ所定の曲率半径を有するように巻き付けられる。巻線45の一端は、コイル44の一層目を構成し、巻線45の他端は、コイル44の二層目を構成する。その際、巻線45は、コイル44の内周面と外周面がそれぞれ所定の曲率半径R1,R2を有する円弧状に巻回される。巻線45の両端は、図7に示されるように、コイル44の長手方向に沿った同一の端部にそれぞれ引き出される。コイル44の巻線45の両端45a,45bは、当該コイル44に通電するための図示しない配線を接続するため、巻線45の銅線が露出されてハンダ付け処理が施されている。コイル44の配線は、図4に示されるように、上述したごとく、第2の環状部29のブッシュ35,35・・・を介してコアレス型ブラシレスモータ1の外部に引き出される。電機子3の空芯のコイル44,44・・・は、U相,V相,W相等の3相の巻き線を構成するよう2つおきのコイル44,44・・・同士の互いの配線が直列接続となるよう接続される。そして、3相の巻き線を構成する空芯のコイル44,44・・・は、コアレス型ブラシレスモータ1の図示しない駆動装置に接続される。
【0048】
ところで、電機子3の外周に複数設けられる空芯のコイル44,44・・・は、複数の永久磁石8,8・・・からなる界磁6とともにコアレス型ブラシレスモータ1の性能を決定する重要な構成要素であり、トルクリップルを抑制するため、その取付位置には高い精度が要求される。
【0049】
そこで、本実施の形態1に係るコアレス型ブラシレスモータ1は、電機子3の絶縁シート43に複数の空芯のコイル44,44・・・を精度良く取り付けことが可能なことは勿論のこと、当該複数の空芯のコイル44,44・・・の取付作業を容易に行うことが可能な絶縁シート43として次のものを採用している。
【0050】
すなわち、本実施の形態1に係るコアレス型ブラシレスモータ1に用いられる絶縁シート43は、図8に示されるように、空芯のコイル44,44・・・を予め定められた位置にそれぞれ位置決めするための複数の位置決め部50,50・・・を備えるよう構成されている。位置決め部50,50・・・としては、例えば、コイル44,44・・・の空芯部46に嵌め合わされる空芯部46と同一形状の位置決め用凸部51,51・・・からなるものが用いられる。
【0051】
本実施の形態1に係る絶縁シート43は、平面細長い長方形の薄いシート状又はフィルム状に形成されたシート基材52を備えている。シート基材52の材料としては、例えば、耐熱性や寸法安定性などに優れた所謂“スーパーエンジニアリングプラスチック”であるポリフェニレンサルファイド(PPS)が用いられる。ただし、シート基材52の材料としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)に限定されるものではなく、耐熱性や寸法安定性などに優れ且つ可撓性を有するシート状に成形可能な材料であれば、他の材料を用いても良いことは勿論である。シート基材52の材料として使用可能な他の材料としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)以外に、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、あるいはこれらの複合材料などを挙げることができる。
【0052】
絶縁シート43を構成するシート基材52には、図8に示されるように、位置決め用凸部51,51・・・が設けられている。位置決め用凸部51,51・・・は、例えば、シート状基材52と同一の材料である耐熱性や寸法安定性などに優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)によって形成される。位置決め用凸部51,51・・・は、接着剤を用いた接着や超音波溶着などによる溶着等の手段によりシート基材52のコイル44,44・・・の装着位置に対応した予め定められた位置に固定した状態で設けられる。
【0053】
位置決め用凸部51,51・・・は、図9に示されるように、その平面形状が空芯のコイル44,44・・・の空隙部46と同一形状に形成されている。また、位置決め用凸部51,51・・・は、固定子3の外周に固定された状態で使用されるため、その下面及び上面は、固定子3の外径に応じた曲率半径R1,R2を有する円弧状の曲面として形成される。
【0054】
図示の実施の形態1では、位置決め用凸部51,51・・・が、コイル44,44・・・の数に対応してシート基材52の周方向に沿って等間隔となるよう18個設けられている。
【0055】
<コアレス型ブラシレスモータの製造方法>
本実施の形態1に係るコアレス型ブラシレスモータ1は、次のように、電機子3の外周又は内周の少なくとも一方に周方向に沿って空芯のコイル44,44・・・を複数配列するに際して、電機子3の外周又は内周の少なくとも一方の面を絶縁する絶縁シート43であって、絶縁シート43のシート基材52に複数のコイル44,44・・・を予め定められた位置にそれぞれ位置決めする複数の位置決め部50,50・・・を備えた絶縁シート43を準備する第1の工程と、電機子3の外周又は内周の少なくとも一方の面に絶縁シート43を被覆する第2の工程と、電機子3の外周又は内周の少なくとも一方の面に被覆された絶縁シート43の複数の位置決め部50,50・・・に空芯のコイル44,44・・・を位置決め固定する第3の工程と、を備えるよう製造される。
【0056】
すなわち、本実施の形態1に係るコアレス型ブラシレスモータ1を製造するにあたり、固定子3の外周又は内周の少なくとも一方に周方向に沿って空芯のコイル44,44・・・を複数配列するに際して、電機子3の外周又は内周の少なくとも一方の面を絶縁する絶縁シート43であって、絶縁シート43のシート基材52に複数のコイル44,44・・・を予め定められた位置にそれぞれ位置決めする複数の位置決め部50,50・・・を備えた絶縁シート43を準備する第1の工程が行なわれる。
【0057】
絶縁シート43は、コアレス型ブラシレスモータ1を組み立てる製造工程とは別の工程で予め製造される。
【0058】
まず、図10に示されるように、絶縁シート43を構成するシート基材52が準備される。シート基材52は、所要の厚さ、所要の幅を有するポリフェニレンサルファイド(PPS)製の長尺なシートを所要の長さを有するよう裁断することにより製造される。なお、シート基材52は、次に述べるように、位置決め用凸部51,51・・・を固定した状態で設けた後に、所要の長さを有するよう裁断することにより製造しても勿論良い。
【0059】
次に、所要の長さを有するよう裁断されたシート基材52の表面には、図11に示されるように、位置決め用凸部51,51・・・が接着や超音波溶着等の溶着により予め定められた位置に固定した状態で設けられる。位置決め用凸部51,51・・・は、作業性等を考慮すると、シート基材52と同じポリフェニレンサルファイド(PPS)等で製造されて超音波溶着等の溶着により設けられるのが望ましい。その際、位置決め用凸部51,51・・・は、その内周面が電機子3の外周形状に応じた曲率半径R1,R2を有する円弧状に形成されているため、シート基材52の表面に位置決め用凸部51,51・・・を超音波溶着等の溶着により設ける工程は、シート基材52の裏面を電機子3の曲率半径と等しい半径を有するロール形状の支持部材により支持しながら行うのが望ましい。
【0060】
その後、電機子3の外周面に絶縁シート43を被覆する第2の工程が行なわれる。
【0061】
この第2の工程は、図12に示されるように、電機子3の外周面又は絶縁シート43の裏面に接着剤53を塗布した後、当該絶縁シート43を電機子3の外周面に接着剤53を介して巻き付けることにより実施される。そして、外周面に絶縁シート43が接着剤53を介して巻き付けられた電機子3は、真空チャンバー内にて減圧されることにより、電機子3の外周面と絶縁シート43との間に存在する気泡が除去される。
【0062】
次に、外周面に絶縁シート43が接着剤を介して巻き付けられた電機子3は、加熱炉の内部に収容され、所要の温度(例えば、150℃)に所要時間(3時間)だけ置かれて接着剤53が硬化される。なお、接着剤53としては、例えば、二液混合型のエポキシ樹脂が用いられる。
【0063】
次に、外周面に絶縁シート43が巻き付けられた電機子3は、図13に示されるように、絶縁シート43の位置決め用凸部51,51・・・に空芯のコイル44,44・・・を接着剤を介して接着固定する第3の工程が実施される。
【0064】
この第3の工程では、図13に示されるように、電機子3の外周に巻き付けられた絶縁シート43に空芯のコイル44,44・・・を、絶縁シート43の各位置決め用凸部51,51・・・に空芯のコイル44,44・・・の空隙部46を嵌め合わせるようにして取り付ける。その際、空芯のコイル44,44・・・の内周面には、接着剤が塗布される。
【0065】
その後、空芯のコイル44,44・・・が接着剤を介して外周面に取り付けられた電機子3は、図示しない加熱炉の内部に収容され、所要の温度に所要時間だけ置かれて接着剤が硬化される。
【0066】
このようにして、電機子3が製造される。その後、製造された電機子3は、図2に示されるように、コアレス型ブラシレスモータ1の内部ハウジング22に接着剤を介して固定されることにより、コアレス型ブラシレスモータ1が製造される。
【0067】
このように、本実施の形態1に係る絶縁シート43を適用したコアレス型ブラシレスモータ1は、電機子3の外周面を絶縁する絶縁シート43に空芯のコイル44,44・・・を所定の取付位置に位置決めする位置決め用凸部51,51・・・を一体的に設けたため、電機子3を製造するにあたり、絶縁シート43の位置決め用凸部51,51・・・に空芯のコイル44,44・・・を当該コイル44,44・・・の空隙部46を嵌め合わせた状態で位置決めして取り付ければ良く、空芯のコイル44,44・・・の取付位置は、絶縁シート43の位置決め用凸部51,51・・・によって精度良く決定され、電機子3の絶縁シート43に空芯のコイル44,44・・・精度良く取り付ける作業が容易であり、コアレス型ブラシレスモータ1の製造コストを低減することが可能となる。
【0068】
[実施の形態2]
図14は、実施の形態2に係る絶縁シートの一例及びこれを用いた電磁装置の一例としてのコアレス型ブラシレスモータの要部を示す構成図である。
【0069】
本実施の形態2に係る絶縁シート43は、シート基材52に予め成形された位置決め用凸部51を接着や溶着等の手段により設けるのではなく、シート基材52に一体的に位置決め用凸部51を形成するよう構成されている。
【0070】
すなわち、本実施の形態2に係る絶縁シート43は、図14に示されるように、プレス装置を用いてシート基材52に複数の位置決め用凸部51,51・・・を一体的に成形するよう構成されている。このとき、位置決め用凸部51,51・・・は、電機子3の外周に固定された状態で使用されるため、その下面(空隙部46を形成する空間部)及び上面は、電機子3の外径に応じた曲率半径R1,R2を有する円弧状の曲面として形成される。
【0071】
本実施の形態2に係る絶縁シート43は、シート基材52に複数の位置決め用凸部51,51・・・を一体的に成形するよう構成されているので、位置決め用凸部51,51・・・を精度良く且つ容易に形成することができ、製造コストをより一層低減することが可能となる。
【0072】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0073】
[実施の形態3]
図15は、実施の形態3に係る絶縁シートの一例及びこれを用いた電磁装置の一例としてのコアレス型ブラシレスモータを示す構成図である。
【0074】
本実施の形態3に係る絶縁シート43は、図15に示されるように、シート基材52に設けられる位置決め用凸部51の形状が前記実施の形態1と異なるように構成されている。
【0075】
すなわち、本実施の形態3に係る絶縁シート43は、図15に示されるように、シート基材52に設けられる位置決め用凸部51の形状が空芯のコイル44,44・・・の空隙部46と同一形状ではなく、コイル44,44・・・の空隙部46の長手方向に沿った両端部のみと同一形状、又はコイル44,44・・・の空隙部46の長手方向に沿った両端部を除いた中間部のみと同一形状となるよう構成されている。
【0076】
本実施の形態3に係る絶縁シート43の場合には、シート基材52に設けられる位置決め用凸部51の大きさ(形状及び面積)が小さくなり、位置決め用凸部51を形成する材料を減少させることが可能となり、この面から製造コストの低減が可能となる。
【0077】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0078】
なお、前記実施の形態では、電磁装置の一例としてのコアレス型ブラシレスモータに適用した場合について説明したが、電磁装置としてのコアレス型ブラシレスモータに限定されるものではなく、空芯のコイルを用いた発電機やリニアモータなどの電磁装置に適用することができることは勿論である。
【0079】
また、前記実施の形態では、電機子として芯金の外周面に空芯のコイルを配置した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電機子として芯金の内周面又は外周面及び内外周面の双方に空芯のコイルを配置した場合に適用しても良いことは勿論である。
【0080】
さらに、前記実施の形態では、位置決め用凸部として空芯コイルの空隙部の形状に対応した形状のものを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、位置決め用凸部としては、空芯コイルの外周形状に対応した形状のものを用いても良い。
【符号の説明】
【0081】
1…コアレス型ブラシレスモータ
2…回転子
3…電機子
4…回転軸
5…バックヨーク
6…界磁
7…排気口
8…永久磁石
10…主軸部
11…テーパ部
12…出力軸部
13…中径部
14…フランジ部
15…大径部
16…小径部
17…中心部
18…回転翼
20,21…ベアリング
22…内部ハウジング
23…C形状の穴用止め輪
24…C形状の軸用止め輪
25…波ワッシャー
26…円筒スペーサ
27…円筒部
28,29…第1及び第2の環状部
31…挿通孔
33…吸気口
34…取付用のネジ穴
40…芯金
41…フランジ部
42…積層板
43…絶縁シート
44…空芯のコイル
45…巻線
46…空芯部
50…位置決め部
51…位置決め用凸部
52…シート基材
53…接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
図18
図19