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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155378
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】植物性破砕物含有酸性液状調味料
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/60 20160101AFI20231013BHJP
【FI】
A23L27/60 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023139254
(22)【出願日】2023-08-29
(62)【分割の表示】P 2019564742の分割
【原出願日】2019-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2018002217
(32)【優先日】2018-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(71)【出願人】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】原田 貴寛
(57)【要約】
【課題】植物性破砕物を含有する酸性液状調味料の攪拌・振り混ぜ混合後の泡切れを改善すること。
【解決手段】植物性破砕物と、ガム類と、冷水膨潤性澱粉と、食酢とを含有する酸性液状調味料であって、(A)20℃における粘度が500mPa・s以上、10000mPa・s以下であり、(B)解離酢酸濃度が0.15質量%以下である、酸性液状調味料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性破砕物と、ガム類と、冷水膨潤性澱粉と、食酢とを含有する酸性液状調味料であって、(A)20℃における粘度が500mPa・s以上、10000mPa・s以下であり、(B)解離酢酸濃度が0.16質量%以下である、酸性液状調味料。
【請求項2】
4メッシュパス、100メッシュオンの膨潤後の冷水膨潤性澱粉の含有率が、酸性液状調味料に対し0.5質量%以上である、請求項1に記載の酸性液状調味料。
【請求項3】
100メッシュオンの膨潤後の植物性破砕物の含有率が、酸性液状調味料に対し0.2質量%以上、60質量%以下である、請求項1又は2に記載の酸性液状調味料。
【請求項4】
9メッシュパス・100メッシュオンの膨潤後の植物性破砕物の含有率が、酸性液状調味料に対し0.2質量%以上、50質量%以下である、請求項1~3の何れか一項に記載の酸性液状調味料。
【請求項5】
膨潤後の冷水膨潤性澱粉を除く100メッシュオンの成分の含有率が、酸性液状調味料に対し0.2質量%以上、60質量%以下である、請求項1~4の何れか一項に記載の酸性液状調味料。
【請求項6】
膨潤後の冷水膨潤性澱粉を除く9メッシュパス・100メッシュオンの成分の含有率が、酸性液状調味料に対し0.2質量%以上、50質量%以下である、請求項1~5の何れか一項に記載の酸性液状調味料。
【請求項7】
植物性破砕物が、植物性食材のペースト又はピューレである、請求項1~6の何れか一項に記載の酸性液状調味料。
【請求項8】
植物性破砕物が、トマト、キュウリ、りんご、ショウガ(ジンジャー)、タマネギ(オニオン)、オレンジ、みかん、レモン、ニンニク(ガーリック)、ニンジン、パプリカ、レッドベルペッパー、及びダイコンからなる群より選択される1種又は2種以上に由来する、請求項1~7の何れか一項に記載の酸性液状調味料。
【請求項9】
ガム類が、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、及び澱粉から選択される1種又は2種以上である、請求項1~8の何れか一項に記載の酸性液状調味料。
【請求項10】
pHが2.2~4.8である、請求項1~9の何れか一項に記載の酸性液状調味料。
【請求項11】
酢酸濃度が0.1重量%以上である、請求項1~10の何れか一項に記載の酸性液状調味料。
【請求項12】
酸性液状調味料を製造する方法であって、植物性破砕物と、ガム類と、冷水膨潤性澱粉と、食酢と、任意によりその他の成分とを、(A)20℃における粘度が500mPa・s以上、10000mPa・s以下であり、(B)解離酢酸濃度が0.16質量%以下となるように混合することを含む方法。
【請求項13】
前記混合を35℃以上、100℃以下の温度で行う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
植物性破砕物を含む酸性液状調味料の攪拌・振り混ぜによる混合後の泡切れを改善する方法であって、植物性破砕物と、ガム類と、冷水膨潤性澱粉と、食酢と、任意によりその他の成分とを、(A)20℃における粘度が500mPa・s以上、10000mPa・s以下であり、(B)解離酢酸濃度が0.16質量%以下となるように混合することを含む方法。
【請求項15】
植物性破砕物を含む酸性液状調味料において、植物性破砕物が有する植物の色調、風味、及び食感のうち少なくとも一つを改善する方法であって、植物性破砕物と、ガム類と、冷水膨潤性澱粉と、食酢と、任意によりその他の成分とを、(A)20℃における粘度が500mPa・s以上、10000mPa・s以下であり、(B)解離酢酸濃度が0.16質量%以下となるように混合することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌・振り混ぜによる混合後の泡切れに優れた植物性破砕物を含有する酸性液状調味料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、サラダや揚げ物等の調理食品には、様々な味や形態の液状調味料が使用されている。なかでも、調味液中におろし野菜や、すりつぶした果実などの具材やピューレ、ペーストなどの植物性破砕物が含有された調味料は、調味液とは別に好みの植物性破砕物を準備し、混合する手間なく調味対象の食品自体の味の変化を楽しみたいという消費者の嗜好に応えるものである。
【0003】
植物性破砕物を含有する液状調味料においては、サラダや揚げ物等の調味対象食品に対し、調味料自体の味をまんべんなく、少量の使用量でいきわたらせられるよう、調味対象食品からのタレ落ちを防ぐことに加え、調味料に配合された植物性破砕物が有する植物由来の風味や食感を好ましく感じられることが重要である。これまで、調味対象食品からの液状調味料のタレ落ちを防ぐための工夫として、植物性破砕物を含む調味液料自体にガム類等の増粘剤でとろみをつけたものや、液状調味料に配合された植物性破砕物が有する植物由来の風味や食感が好ましく感じられるための工夫として、植物性破砕物の大きさ(粒径)や、その配合比を調整したものが提案されている。
【0004】
例えば、特開平3-228663号公報(特許文献1)には、澱粉及びキサンタンガムを含有する気泡入り液状調味料が開示されている。また、特開2017-123817号公報(特許文献2)には、野菜やゴマ(植物性破砕物)の大きさや、その配合量を調整した液状調味料が開示されている。
【0005】
しかしながら、ガム類等の増粘剤で粘性をつけたものは、攪拌混合した際の調味液の泡立ちが激しく、攪拌混合後の静置状態においても調味液中に継続して気泡が保持されるため、生産工程における攪拌混合や容器詰め時に、タンクや容器から調味液が溢れ出るといった生産性の低下につながるような問題があった。
【0006】
また、植物性破砕物を含有する調味料においては、消費者がサラダ等の調味対象食品にかけて使用する際には、調味液中の植物性破砕物が調味液中に均一混合されるよう、容器を手で保持し、上下、又は左右に振り混ぜてから使用するのが一般的であるが、振り混ぜることによって調味液が泡立ち、調味液中に気泡が保持されることにより、調味液自体が白っぽく混濁し、調味液の色調が薄れるため、植物性破砕物が有する鮮やかな色調が生かせないばかりか、口中においても、気泡が植物性破砕物が有する本来の風味の発現を阻害し、気泡のブツブツとした食感が強く感じられることにより、植物性破砕物が有する好ましい食感を感じにくくなるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3-228663号公報
【特許文献2】特開2017-123817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、攪拌・振り混ぜ混合後の泡切れに優れた植物性破砕物含有酸性液状調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは下記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、植物性破砕物を含有する酸性液状調味料において、ガム類と冷水膨潤性澱粉とを併用すると共に、調味料の粘度及び解離酢酸濃度をそれぞれ所定の範囲内に調整することにより、攪拌・振り混ぜ混合後の泡切れが改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の趣旨は例えば以下に存する。
[1]植物性破砕物と、ガム類と、冷水膨潤性澱粉と、食酢とを含有する酸性液状調味料であって、(A)20℃における粘度が500mPa・s以上、10000mPa・s以下であり、(B)解離酢酸濃度が0.16質量%以下である、酸性液状調味料。
[2]20℃における粘度が600mPa・s以上である、[1]の酸性液状調味料。
[3]20℃における粘度が700mPa・s以上である、[2]の酸性液状調味料。
[4]20℃における粘度が9500mPa・s以下である、[1]~[3]の何れかの酸性液状調味料。
[5]20℃における粘度が9000mPa・s以下である、[4]の酸性液状調味料。
[6]解離酢酸濃度が0.15質量%以下である、[1]~[5]の何れかの酸性液状調味料。
[7]解離酢酸濃度が0.13質量%以下である、[6]の酸性液状調味料。
[8]解離酢酸濃度が0.002質量%以上である、[1]~[7]の何れかの酸性液状調味料。
[9]解離酢酸濃度が0.005質量%以上である、[8]の酸性液状調味料。
[10]解離酢酸濃度が0.01質量%以上である、[9]の酸性液状調味料。
[11]4メッシュパス、100メッシュオンの膨潤後の冷水膨潤性澱粉の含有率が、酸性液状調味料に対し0.5質量%以上である、[1]~[10]の何れかの酸性液状調味料。
[12]4メッシュパス、100メッシュオンの膨潤後の冷水膨潤性澱粉の含有率が、酸性液状調味料に対し1質量%以上である、[11]の酸性液状調味料。
[13]4メッシュパス、100メッシュオンの膨潤後の冷水膨潤性澱粉の含有率が、酸性液状調味料に対し50質量%以下である、[1]~[12]の何れかの酸性液状調味料。
[14]4メッシュパス、100メッシュオンの膨潤後の冷水膨潤性澱粉の含有率が、酸性液状調味料に対し40質量%以下である、[13]の酸性液状調味料。
[15]100メッシュオンの膨潤後の植物性破砕物の含有率が、酸性液状調味料に対し0.2質量%以上である、[1]~[14]の何れかの酸性液状調味料。
[16]100メッシュオンの膨潤後の植物性破砕物の含有率が、酸性液状調味料に対し0.5質量%以上である、[15]の酸性液状調味料。
[17]100メッシュオンの膨潤後の植物性破砕物の含有率が、酸性液状調味料に対し60質量%以下である、[1]~[16]の何れかの酸性液状調味料。
[18]100メッシュオンの膨潤後の植物性破砕物の含有率が、酸性液状調味料に対し50質量%以下である、[17]の酸性液状調味料。
[19]9メッシュパス・100メッシュオンの膨潤後の植物性破砕物の含有率が、酸性液状調味料に対し0.2質量%以上である、[1]~[18]の何れかの酸性液状調味料。
[20]9メッシュパス・100メッシュオンの膨潤後の植物性破砕物の含有率が、酸性液状調味料に対し0.5質量%以上である、[19]の酸性液状調味料。
[21]9メッシュパス・100メッシュオンの膨潤後の植物性破砕物の含有率が、酸性液状調味料に対し50質量%以下である、[1]~[20]の何れかの酸性液状調味料。
[22]9メッシュパス・100メッシュオンの膨潤後の植物性破砕物の含有率が、酸性液状調味料に対し40質量%以下である、[21]の酸性液状調味料。
[23]膨潤後の冷水膨潤性澱粉を除く100メッシュオンの成分の含有率が、酸性液状調味料に対し0.2質量%以上である、[1]~[22]の何れかの酸性液状調味料。
[24]膨潤後の冷水膨潤性澱粉を除く100メッシュオンの成分の含有率が、酸性液状調味料に対し0.5質量%以上である、[23]の酸性液状調味料。
[25]膨潤後の冷水膨潤性澱粉を除く100メッシュオンの成分の含有率が、酸性液状調味料に対し60質量%以上である、[1]~[24]の何れかの酸性液状調味料。
[26]膨潤後の冷水膨潤性澱粉を除く100メッシュオンの成分の含有率が、酸性液状調味料に対し50質量%以上である、[25]の酸性液状調味料。
[27]膨潤後の冷水膨潤性澱粉を除く9メッシュパス・100メッシュオンの成分の含有率が、酸性液状調味料に対し0.2質量%以上である、[1]~[26]の何れかの酸性液状調味料。
[28]膨潤後の冷水膨潤性澱粉を除く9メッシュパス・100メッシュオンの成分の含有率が、酸性液状調味料に対し0.5質量%以上である、[27]の酸性液状調味料。
[29]膨潤後の冷水膨潤性澱粉を除く9メッシュパス・100メッシュオンの成分の含有率が、酸性液状調味料に対し50質量%以下である、[1]~[28]の何れかの酸性液状調味料。
[30]膨潤後の冷水膨潤性澱粉を除く9メッシュパス・100メッシュオンの成分の含有率が、酸性液状調味料に対し40質量%以下である、[29]の酸性液状調味料。
[31]植物性破砕物が、植物性食材のペースト又はピューレである、[1]~[30]の何れかの酸性液状調味料。
[32]植物性破砕物が、トマト、キュウリ、りんご、ショウガ(ジンジャー)、タマネギ(オニオン)、オレンジ、みかん、レモン、ニンニク(ガーリック)、ニンジン、パプリカ、レッドベルペッパー、及びダイコンからなる群より選択される1種又は2種以上に由来する、[1]~[31]の何れかの酸性液状調味料。
[33]ガム類が、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、及び澱粉から選択される1種又は2種以上である、[1]~[32]の何れかの酸性液状調味料。
[34]pHが2.2以上である、[1]~[33]の何れかの酸性液状調味料。
[35]pHが2.5以上である、[34]の酸性液状調味料。
[36]pHが2.8以上である、[35]の酸性液状調味料。
[37]pHが4.8以下である、[1]~[33]の何れかの酸性液状調味料。
[38]pHが4.6以下である、[37]の酸性液状調味料。
[39]pHが4.4以下である、[38]の酸性液状調味料。
[40]酢酸濃度が0.1質量%以上である、[1]~[39]の何れかの酸性液状調味料。
[41]酢酸濃度が0.15質量%以上である、[40]の酸性液状調味料。
[42]酢酸濃度が15質量%以下である、[1]~[41]の何れかの酸性液状調味料。
[43]酢酸濃度が10質量%以下である、[42]の酸性液状調味料。
[44]液状調味料に対するガム類の乾燥質量の比率が0.05質量%以上である、[1]~[43]の何れかの酸性液状調味料。
[45]液状調味料に対するガム類の乾燥質量の比率が0.1質量%以上である、[44]の酸性液状調味料。
[46]液状調味料に対するガム類の乾燥質量の比率が5質量%以下である、[1]~[45]の何れかの酸性液状調味料。
[47]液状調味料に対するガム類の乾燥質量の比率が3質量%以下である、[46]の酸性液状調味料。
[48]液状調味料に対する冷水膨潤性澱粉の乾燥質量の比率が0.05質量%以上である、[1]~[47]の何れかの酸性液状調味料。
[49]液状調味料に対する冷水膨潤性澱粉の乾燥質量の比率が0.1質量%以上である、[48]の酸性液状調味料。
[50]液状調味料に対する冷水膨潤性澱粉の乾燥質量の比率が5質量%以下である、[1]~[49]の何れかの酸性液状調味料。
[51]液状調味料に対する冷水膨潤性澱粉の乾燥質量の比率が3質量%以下である、[50]の酸性液状調味料。
[52]液状調味料に対するガム類と冷水膨潤性澱粉の合計乾燥質量の比率が0.2質量%以上である、[1]~[51]の何れかの酸性液状調味料。
[53]液状調味料に対するガム類と冷水膨潤性澱粉の合計乾燥質量の比率が0.3質量%以上である、[52]の酸性液状調味料。
[54]液状調味料に対するガム類と冷水膨潤性澱粉の合計乾燥質量の比率が10質量%以下である、[1]~[53]の何れかの酸性液状調味料。
[55]液状調味料に対するガム類と冷水膨潤性澱粉の合計乾燥質量の比率が7質量%以下である、[54]の酸性液状調味料。
[56]冷水膨潤性澱粉の乾燥質量に対するガム類の乾燥質量の比が0.04以上である、[1]~[55]の何れかの酸性液状調味料。
[57]冷水膨潤性澱粉の乾燥質量に対するガム類の乾燥質量の比が0.05以上である、[56]の酸性液状調味料。
[58]冷水膨潤性澱粉の乾燥質量に対するガム類の乾燥質量の比が5以下である、[1]~[57]の何れかの酸性液状調味料。
[59]冷水膨潤性澱粉の乾燥質量に対するガム類の乾燥質量の比が4以下である、[58]の酸性液状調味料。
[60]100メッシュオンの全成分の含有率が、酸性液状調味料に対し1質量%以上である、[1]~[59]の何れかの酸性液状調味料。
[61]100メッシュオンの全成分の含有率が、酸性液状調味料に対し2質量%以上である、[60]の酸性液状調味料。
[62]100メッシュオンの全成分の含有率が、酸性液状調味料に対し80質量%以下である、[1]~[61]の何れかの酸性液状調味料。
[63]100メッシュオンの全成分の含有率が、酸性液状調味料に対し75質量%以下である、[62]の酸性液状調味料。
[64]酸性液状調味料を製造する方法であって、植物性破砕物と、ガム類と、冷水膨潤性澱粉と、食酢と、任意によりその他の成分とを、[1]~[63]の何れかの酸性液状調味料の規定を満たすように混合することを含む方法。
[65]前記混合を35℃以上の温度で行う、[64]の方法。
[66]前記混合を40℃以上の温度で行う、[65]の方法。
[67]前記混合を100℃以下の温度で行う、[65]又は[66]の方法。
[68]前記混合を90℃以下の温度で行う、[67]の方法。
[69]前記混合を85℃以下の温度で行う、[68]の方法。
[70]植物性破砕物を含む酸性液状調味料の攪拌・振り混ぜによる混合後の泡切れを改善する方法であって、植物性破砕物と、ガム類と、冷水膨潤性澱粉と、食酢と、任意によりその他の成分とを、[1]~[63]の何れかの酸性液状調味料の規定を満たすように混合することを含む方法。
[71]植物性破砕物を含む酸性液状調味料において、植物性破砕物が有する植物の色調、風味、及び食感のうち少なくとも一つを改善する方法であって、植物性破砕物と、ガム類と、冷水膨潤性澱粉と、食酢と、任意によりその他の成分とを、[1]~[63]の何れかの酸性液状調味料の規定を満たすように混合することを含む方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、攪拌・振り混ぜ混合後の泡切れに優れた、植物性破砕物含有酸性液状調味料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0013】
<液状調味料>
本発明の第一の側面によれば、植物性破砕物と、ガム類と、冷水膨潤性澱粉と、食酢とを含有する酸性液状調味料であって、20℃における粘度及び解離酢酸濃度が所定の範囲内である酸性液状調味料(以下、適宜「本発明の液状調味料」という)が提供される。
【0014】
本発明者らは、前述した課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、植物性破砕物を含有する酸性液状調味料において、ガム類と冷水膨潤性澱粉とを併用すると共に、調味料の粘度及び解離酢酸濃度をそれぞれ所定の範囲内に調整することにより、攪拌や振り混ぜによる混合時の泡立ちが抑制されると共に、混合後の静置状態においても液状調味料中の気泡の保持性が低下し、結果として泡切れが向上することを見出した。また、泡切れが良くなることで、混合後の静置状態においても調味液中の気泡の保持性が低下するため、植物性破砕物自体の有する好ましい色調が保持され、口中においても気泡に阻害されずに植物性破砕物本来の植物の好ましい風味や食感、舌触りが得られることを見出した。更には、液状調味料の解離酢酸濃度を調整することにより、植物性破砕物本来の植物の好ましい風味や食感がさらに改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
なお、本発明における「液状調味料」とは、料理や食品素材の美味しさを引き立たせるために用いられる流動性を有する調味料をいう。液状調味料の例としては、野菜、肉類、又は魚介類等にかけて味付けをするドレッシングのほか、たれ類、ソース類、つゆ類、ポン酢等が挙げられる。
【0016】
<植物性破砕物>
本発明の液状調味料は、植物性破砕物を含有する。本発明における「植物性破砕物」としては、野菜や果実を切削やすり潰す等の処理により得られる搾汁液やピューレ、ペースト等が挙げられる。また、これらをさらに加熱等の処理により濃縮したものや、熱風乾燥、凍結乾燥、減圧加熱乾燥、マイクロウェーブ乾燥等で乾燥された乾燥野菜等も挙げられる。
【0017】
野菜としては、例えば、トマト、ピーマン、パプリカ、キュウリ、ナス、レッドベルペッパー等の果菜、タマネギ(オニオン)、ショウガ(ジンジャー)、ニンニク(ガーリック)、大根、ニンジン等の根菜、キャベツ、レタス、ほうれん草、白菜、セロリ、小松菜、チンゲン菜、モロヘイヤ、ケール、シソ、ニラ、パセリ等の葉菜、ニンニク、アスパラガス、たけのこ等の茎菜、ブロッコリー、カリフラワー等の花菜等、その他きのこ類等に由来する野菜が挙げられる。これらのうち、トマト、キュウリ、ショウガ、タマネギ、ニンニク(ガーリック)、ニンジン、パプリカ、レッドベルペッパー、ダイコンがより好ましい。野菜はこれらに限定されるものではなく、一種又は二種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用することができる。
【0018】
果実としては、例えば、りんご、桃、ぶどう、アセロラ、ブルーベリー、梨、オレンジ、レモン、ゆず、すだち、ライム、みかん、グレープフルーツ、いちご、バナナ、メロン、キウイ、パイナップル、カシス、アプリコット、グアバ、プラム、マンゴー、パパイヤ、ライチ等に由来する果実が挙げられる。これらのうち、オレンジ等の柑橘類の果実がより好ましい。果実はこれらに限定されるものではなく、一種又は二種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用することができる。なお、これらの野菜、果実より得られた植物性破砕物を、本発明の液状調味料に一種又は二種以上を任意の組み合わせ、及び比率で配合してもよい。
【0019】
また、本発明によれば、泡立ちや気泡の保持性が抑制されるため、気泡による植物性破砕物の色調が白っぽく、濁ることがなく、植物性破砕物が有する鮮やかな色調が保持された液状調味料が得られる。この効果は、鮮やかな色調を有する植物性破砕物、例えば色調の美しいトマトや、パプリカ、キュウリ、レッドペッパー、ニンジン、オレンジ等の植物性破砕物を使用した場合に強く発揮される。
【0020】
なお、本発明の液状調味料には、植物性破砕物のほかに、植物性の固形具材や、植物性以外の固形具材や破砕物を含んでもよい。植物性の固形具材としては、タマネギ、キュウリ、ピクルス、ニンジン等が挙げられる。植物性以外の固形具材や破砕物としては、肉類、魚貝類等、動物性の固形具材や破砕物等が挙げられる。
【0021】
本発明の液状調味料は、植物性破砕物の含有率が所定の範囲内であることが好ましい。具体的には、液状調味料の質量に対し、植物性破砕物の配合量を通常0.1質量%以上、中でも0.3質量%以上とすることが好ましい。植物性破砕物の配合量がこの範囲より小さいと、植物性破砕物の有する色調や風味が感じにくくなる場合がある。一方、液状調味料の質量に対し、植物性破砕物の配合量を通常30質量%以下、中でも20質量%以下とすることが好ましい。植物性破砕物の配合量がこの範囲より大きいと、植物性破砕物自体の風味が強く感じられすぎ、本発明の効果である植物性破砕物が有する風味の復活や保持効果が得られにくい場合がある。
【0022】
また、本発明の液状調味料における植物性破砕物は、ある程度の大きさの固形物(野菜片や果肉など)を含んでいてもよいが、所定のサイズの破砕物が一定量以上含まれていることが好ましい。具体的には、植物性破砕物全量に対して、JIS試験用ふるい規格のメッシュ(ここで、メッシュのサイズが例えば「No.100」であれば、以降は適宜「100メッシュ」と表記する。また、特定サイズのメッシュを通過することを「メッシュパス」、通過しないことを「メッシュオン」という場合がある)にて、100メッシュ篩を通過しない(100メッシュオンの)植物性破砕物の含有率が通常80質量%以上、中でも90質量%以上であることが好ましい。植物が本来有していた好ましい風味は、植物を破砕したり、すり潰したり、濃縮したりする工程で失われるが、大きいサイズの破砕物が一定量以上残存していれば、本発明によらずとも植物性破砕物由来の風味が発現しやすいため、本発明の上記効果が得られにくい。逆に、こうした大きいサイズの破砕物の含有率が少なく、植物が本来破砕物自体に固形物をほとんど含まず、破砕物とする工程や濃縮等の処理工程を経ることで植物が本来有していた風味や食感が失われた植物性破砕物を使用した場合には、本発明の上記効果がより強く発揮されることになる。
【0023】
また、同様の理由から、本発明の液状調味料には、所定サイズの膨潤状態の植物性破砕物が、一定量含まれていることが好ましい。具体的には、液状調味料全量に対し、100メッシュ篩を通過しない(100メッシュオンの)膨潤状態の植物性破砕物の含有率が、通常0.2質量%以上、中でも0.5質量%以上であることが好ましく、また、通常60質量%以下、中でも50質量%以下であることが好ましい。本含有率が前記範囲未満であると、植物性破砕物自体の色調や風味を十分に感じることができない場合があり、逆に前記範囲を超えると、植物性破砕物自体の風味が過剰となり、調味料全体の風味が阻害される場合がある。
【0024】
なお、本発明の液状調味料に対する膨潤後の植物性破砕物の含有率を調整する場合には、植物性破砕物だけを水で十分に膨潤させた破砕物含有液を、100メッシュの篩に載置した後、よく水を切ってから篩の上にオンした質量を測定することにより、含有率を調整、決定すればよい。また、既存の液状調味料中の100メッシュオンの膨潤状態の植物性破砕物の量を測定する場合は、例えば調味料を水で適宜(10~20倍程度)希釈してから100メッシュの篩に載置し、篩を通過しない成分を取得した上で、膨潤状態の植物性破砕物以外の成分(例えば膨潤した冷水膨潤性澱粉)を識別して除外し、その質量を測定すればよい。
【0025】
更には、これも同様の理由から、本発明の液状調味料には、大サイズの膨潤状態の植物性破砕物の含有率が少ないことが好ましい。具体的には、液状調味料全量に対し、9メッシュ篩を通過し、100メッシュ篩を通過しない(9メッシュパス・100メッシュオンの)膨潤状態の植物性破砕物の含有率が、通常0.2質量%以上、中でも0.5質量%以上であることが好ましく、また、通常50質量%以下、中でも40質量%以下であることが好ましい。本含有率が前記範囲未満であると、植物性破砕物自体の色調や風味を十分に感じることができない場合があり、逆に前記範囲を超えると、植物性破砕物自体の風味が過剰となり、調味料全体の風味が阻害される場合がある。
【0026】
なお、本発明の液状調味料に対する9メッシュパス・100メッシュオンの膨潤後の植物性破砕物の含有率を調整する場合には、植物性破砕物だけを水で十分に膨潤させた破砕物含有液を、9メッシュの篩及び100メッシュの篩にそれぞれ載置し、前者の篩を通過し、後者の篩を通過しない成分を取得した上で、100メッシュの篩にオンした質量を測定することにより、含有率を調整、決定すればよい。また、既存の液状調味料中の9メッシュパス・100メッシュオンの膨潤状態の植物性破砕物の量を測定する場合は、例えば調味料を水で適宜(10~20倍程度)希釈してから9メッシュの篩及び100メッシュの篩にそれぞれ載置し、前者の篩を通過し、後者の篩を通過しない成分を取得した上で、膨潤状態の植物性破砕物以外の成分(例えば膨潤した冷水膨潤性澱粉)を識別して除外し、その質量を測定すればよい。
【0027】
なお、液状調味料の組成によっては、前記の100メッシュオンや9メッシュパス・100メッシュオンの膨潤状態の植物性破砕物から、他の成分を識別・除外することが困難な場合もある(例えば、肉や乳製品等の植物以外の食材に由来する破砕物が含まれる場合等が挙げられる)。但し、膨潤した冷水膨潤性澱粉については(膨潤状態の植物性破砕物を含むその他の成分から)目視により比較的容易に識別・除外することが可能と考えられる。よって、こうした場合には、液状調味料の100メッシュオンや9メッシュパス・100メッシュオンの全成分を取得し、ここから膨潤した冷水膨潤性澱粉を除いた全ての成分(この中には膨潤状態の植物性破砕物が含まれることになる)が、前記規定の範囲を満たしていることが好ましい。
【0028】
具体的には、酸性液状調味料全体に対する、膨潤後の冷水膨潤性澱粉を除く100メッシュオンの成分の含有率が、通常0.2質量%以上、中でも0.5質量%以上であることが好ましく、また、通常60質量%以下、中でも50質量%以下であることが好ましい。本含有率が前記範囲未満であると、植物性破砕物自体の色調や風味を十分に感じることができない場合があり、逆に前記範囲を超えると、植物性破砕物自体の風味が過剰となり、調味料全体の風味が阻害される場合がある。
【0029】
また、酸性液状調味料全体に対する、膨潤後の冷水膨潤性澱粉を除く9メッシュパス・100メッシュオンの成分の含有率が、通常0.2質量%以上、中でも0.5質量%以上であることが好ましく、また、通常50質量%以下、中でも40質量%以下であることが好ましい。本含有率が前記範囲未満であると、植物性破砕物自体の色調や風味を十分に感じることができない場合があり、逆に前記範囲を超えると、植物性破砕物自体の風味が過剰となり、調味料全体の風味が阻害される場合がある。
【0030】
<ガム類>
本発明の液状調味料は、増粘剤としてガム類を含有する。本発明における「ガム類」とは、例えば、キサンタンガム、グァーガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、タマリンドシードガム、タラガム、トラガントガム、澱粉(下記に別途定義する「冷水膨潤性澱粉」ではない澱粉、加工澱粉を含む)等が挙げられる。中でも、ガム類としてはキサンタンガム、タマリンドシードガム、グァーガムが好ましく、キサンタンガムがより好ましい。ガム類は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0031】
本発明の液状調味料に対するガム類の含有率は、限定されるものではないが、液状調味料全体に対する乾燥状態のガム類の質量比で、通常0.05質量%以上、中でも0.1質量%以上であることが好ましく、また、通常5質量%以下、中でも3質量%以下であることが好ましい。本含有率が前記範囲未満であると、調味対象食品からタレ落ちない程度の粘度が得られない場合があり、逆に前記範囲を超えると、泡切れが悪く、植物性破砕物が有する風味や、食感が感じにくくなる場合がある。
【0032】
<冷水膨潤性澱粉>
本発明の液状調味料は、増粘剤として冷水膨潤性澱粉を含有する。本発明における「冷水膨潤性澱粉」とは、25℃の冷水を吸水して膨潤し、質量が2倍以上に増加する澱粉をいう。冷水膨潤性澱粉を増粘剤として上記ガム類と併用し、かつ液状調味料の粘度及び解離酢酸定数を別掲の通りに調整することで、粘性を有するが泡切れに優れた液状調味料を得ることができる。冷水膨潤性澱粉の例としては、α化澱粉、リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉等の、架橋処理を施した澱粉が挙げられる。冷水膨潤性澱粉は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0033】
より具体的に、「冷水膨潤性澱粉」としては、1質量%水溶液で膨潤させた状態で、4メッシュパス・100メッシュオンする成分が通常80質量%以上、中でも90質量%以上のものを用いるのが好ましい。下記サイズより小さいと、攪拌混合や振り混ぜた際の泡切れや、調味液中の気泡の保持性の低下の効果が得られにくく、調味液中の気泡が阻害となり植物性破砕物が本来有していた植物由来の風味が口中で発揮されにくくなるばかりか、気泡のブツブツとした食感ばかりが目立ち、植物性破砕物が本来有する植物自体の好ましい食感が感じられにくい。
【0034】
本発明の液状調味料に対する冷水膨潤性澱粉の含有率は、限定されるものではないが、液状調味料全体に対する乾燥状態の冷水膨潤性澱粉の含有率で、通常0.05質量%以上、中でも0.1質量%以上であることが好ましく、また、通常5質量%以下、中でも3質量%以下であることが好ましい。本含有率が前記範囲未満であると、攪拌・振り混ぜ混合後の泡切れの改善効果が十分得られない場合があり、逆に前記範囲を超えると、調味料の風味、食感が損なわれる場合がある。
【0035】
また、本発明の液状調味料における、ガム類と冷水膨潤性澱粉の総含有率は、限定されるものではないが、液状調味料全体に対する乾燥状態のガム類と冷水膨潤性澱粉の合計質量の比率で、通常0.2質量%以上、中でも0.3質量%以上であることが好ましく、また、通常10質量%以下、中でも7質量%以下であることが好ましい。本比率が前記範囲未満であると、調味対象食品からのタレ落ちを防ぐ粘度が付与できない場合があり、逆に前記範囲を超えると、攪拌混合や振り混ぜた際の泡切れや、調味液中の気泡の保持性がうまく低下されず、植物性破砕物が本来有していた植物由来の風味が、気泡に阻害されることによって口中で発揮されにくくなるばかりか、気泡のブツブツとした食感ばかりが強く感じられ舌触りが悪く、植物性破砕物自体の好ましい食感が得られにくい場合がある。
【0036】
本発明の液状調味料に対するガム類の冷水膨潤性澱粉に対する乾燥質量での含有比は、限定されるものではないが、通常0.04以上、中でも0.05以上であることが好ましく、また、通常5以下、中でも4以下であることが好ましい。本比率が前記範囲未満であっても、逆に前記範囲を超えても、攪拌混合や振り混ぜた際の泡切れが改善されにくい場合がある。
【0037】
また、本発明の液状調味料には、所定サイズの膨潤状態の冷水膨潤性澱粉が、一定量含まれていることが好ましい。具体的には、液状調味料全量に対し、4メッシュ篩を通過し、100メッシュ篩を通過しない(4メッシュパス・100メッシュオンの)膨潤状態の冷水膨潤性澱粉の含有率が、通常0.5質量%以上、中でも1質量%以上であることが好ましく、また、通常50質量%以下、中でも40質量%以下であることが好ましい。本含有率が前記範囲未満であると、泡切れの改善効果が得られにくい場合があり、逆に前記範囲を超えると、泡切れが悪くなり、植物性破砕物が本来有していた植物由来の風味や食感が感じにくくなる場合がある。
【0038】
なお、液状調味料に対する4メッシュパス・100メッシュオンの膨潤状態の冷水膨潤性澱粉の含有率は、例えば調味料を水で適宜(10~20倍程度)希釈してから4メッシュの篩及び100メッシュの篩にそれぞれ載置し、前者の篩を通過し、後者の篩を通過しない成分を取得した上で、その他の成分(例えば膨潤状態の植物性破砕物)を識別して除外し、得られた膨潤状態の冷水膨潤性澱粉の質量を測定することにより得ることができる。
【0039】
また、本発明の液状調味料に対する膨潤後の冷水膨潤性澱粉の含有率を調整する場合には、冷水膨潤性澱粉を水で十分に膨潤させた破砕物含有液を、4メッシュの篩及び100メッシュの篩にそれぞれ載置し、前者の篩を通過し、後者の篩を通過しない成分を取得した上で、100メッシュの篩にオンした質量を測定することにより、含有率を調整、決定すればよい。
【0040】
なお、本発明の液状調味料には、100メッシュの篩を通過しない成分(例えば植物性破砕物や、冷水膨潤性澱粉)が一定量含まれていることが好ましい。具体的には、液状調味料全量に対し、100メッシュ篩を通過しない(100メッシュオンの)成分の含有率が、通常1質量%以上、中でも2質量%以上であることが好ましく、また、通常80質量%以下、中でも75質量%以下であることが好ましい。本含有率が前記範囲未満であると、泡切れの改善効果が得られにくい場合があり、逆に前記範囲を超えると、液状調味料自体の流動性が保てない場合がある。なお、液状調味料に対する100オンの成分の量は、例えば調味料を水で適宜(10~20倍程度)希釈してから100メッシュの篩に載置し、篩を通過しない成分を取得した上で、よく水を切った後、その質量を測定すればよい。
【0041】
<食酢>
本発明の液状調味料は、食酢を含有する。本発明における「食酢」としては、米や麦などの穀物や果汁を原料として生産される醸造酢と、氷酢酸や酢酸の希釈液に砂糖等の調味料を加えるか、又はそれに醸造酢を加えた合成酢があり、何れも使用できる。醸造酢としては、例えば、米酢、穀物酢(玄米酢、黒酢、粕酢、麦芽酢、はと麦酢、大豆酢等)、果実酢(りんご酢、ぶどう酢、レモン酢、カボス酢、梅酢、ワイン酢、バルサミコ酢等)、エタノールを原料とした酢酸発酵によって製造される酒精酢、中国酢、シェリー酢などが挙げられ、また、合成酢としては、氷酢酸又は酢酸を水で適宜希釈したものなどが挙げられる。なお、これらの食酢は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。中でも、本発明では食酢として、酢酸含有量が高く、原料に由来する風味が弱い、高酢酸濃度の醸造酢や合成酢を使用することが好ましい。本発明の液状調味料に対する食酢の含有率は、限定されるものではないが、後述の酢酸濃度やpH、解離酢酸濃度に応じて調整すればよい。
【0042】
<酢酸及び解離酢酸濃度>
本発明の液状調味料は、酢酸を含有する。酢酸は、主に前記の食酢に由来するものであるが、他の成分に由来するものであってもよい。酢酸を含有させることで、植物性破砕物が有する野菜や果実の風味が、より好ましく感じられる。また、破砕物とする工程で失われた風味も、酢酸を含有させることで復活し、より新鮮な風味として感じられる。本発明の液状調味料において、酢酸とは、原料又は添加物に由来する酢酸分子(CHCOOH)と酢酸イオン(CHCOO)をいい、酢酸の含有量とは、これらを合計した濃度をいう。特に、食品である食酢由来の酢酸であることが好ましい。
【0043】
本発明の液状調味料における酢酸の含有量は特に制限されないが、調味対象であるサラダや調理食品の味を引き立てる観点からは、調味料に対する質量比として、通常0.1質量%以上、中でも0.15質量%以上とすることが好ましい。酢酸の含有量が上記範囲以下であると、酢酸の風味が十分に感じられず、調味料の味がぼやけてしまう場合がある。一方、味のバランスの観点からは、調味料に対する質量比として、通常15質量%以下、中でも10質量%以下とすることが好ましい。酢酸の含有量が上記範囲を超えると、酸味や酢酸臭が植物性破砕物の風味よりも際立ちやすく、調味料全体の風味バランスが崩れてしまう場合がある。
【0044】
本発明の液状調味料は、解離酢酸濃度が所定の範囲内であることを特徴とする。本発明において「解離酢酸濃度」とは、解離型酢酸の濃度を意味する。具体的に、酢酸分子は水溶液中において解離型と非解離型とが存在し、両者が共鳴状態になっていることが知られている。ここで、解離型酢酸濃度を〔A〕、プロトン濃度を〔H〕、非解離型酢酸濃度(即ち酢酸濃度-解離型酢酸濃度)を〔AH〕とすると、下式の状態で両者が平衡状態で共存する。
【数1】
ここで、解離型酢酸濃度〔A〕は、以下の計算式によりpH及び酢酸濃度から求めることができる。
【数2】
【0045】
具体的に、本発明の液状調味料の解離酢酸濃度は、通常0.16質量%以下、好ましくは0.15質量%以下、更に好ましくは0.13質量%以下である。解離酢酸濃度を前記範囲以下とすることにより、植物性破砕物の破砕や濃縮等の処理工程により失われた植物由来の風味を復活させ、植物らしい新鮮な風味として感じさせることができる傾向がより高まる。一方、解離酢酸濃度の下限は特に限定されないが、調味料全体の風味を良くするという理由から、通常は0.002質量%以上、中でも0.005質量%以上、更には0.01質量%以上とすることが好ましい。なお、液状調味料の解離酢酸濃度は、液状調味料の酢酸濃度及びpHを測定し、上記の式2により算出することができる。
【0046】
<pH>
本発明の液状調味料のpHは、酸性値(pH7未満)であればよく、特に限定されない。通常は風味と呈味のバランス、上記の解離型酢酸濃度の観点から決定すればよい。但し、特に限定されるものではないが、通常2.2以上、中でも2.5以上、更には2.8以上であることが好ましく、また、通常4.8以下、中でも4.6以下、更には4.4以上であることが好ましい。
【0047】
<粘度>
本発明の液状調味料は、攪拌混合や振り混ぜたあとの泡立ちや、気泡の保持効果を抑える点から、所定の範囲内の粘度を有することが好ましい。具体的には、液状調味料の20℃における粘度が、通常500mPa・s以上、好ましくは600mPa・s以上、更に好ましくは700mPa・s以上であり、また、通常10000mPa・s以下、好ましくは9500mPa・s以下、更に好ましくは9000mPa・s以下である。液状調味料の20℃における粘度が前記範囲未満であると、液状調味料中の植物性破砕物や、液状調味料自体のタレ落ちを防げなくなる場合がある。逆に前記範囲を超えると攪拌混合や振り混ぜた際の泡切れや、調味液中の気泡の保持性がうまく低下されなくなる場合がある。
【0048】
なお、本発明において、液状調味料の20℃における粘度は、当業者に公知の手法を用いて測定することが可能である。斯かる測定法の例としては、市販のB型粘度計(単一円筒形回転粘度計を表し、通称ブルックフィールド形回転粘度計とも称される。例えば東機産業社製の「B-II」)などの各種粘度計による測定が挙げられる。具体的には、20℃に調整した液状調味料をB型粘度計の測定用容器に適量充填し、容器をB型粘度計にセットし、測定粘度に適合したローターを用いて適当な回転数で粘度を測定することができる。
【0049】
<液状調味料の態様その他の原料>
本発明の液状調味料は、油脂を含まないノンオイルタイプ、油脂量を減少させた低オイルタイプ(10質量%以下)、油脂を含むオイルタイプ(乳化タイプ及び分離タイプを含む)タイプの何れのタイプの液状調味料であってもよいが、植物性破砕物の風味を感じやすいノンオイルタイプが好ましい。
【0050】
本発明の液状調味料には、上記原料のほか、その種類に応じて通常の液状調味料において用いられる調味等のための原料を含有させることができる。斯かる原料は、液状調味料の態様によって異なる。
【0051】
例えば、本発明の液状調味料がノンオイルタイプのドレッシングである場合には、一般的に、水、糖類(高甘味度甘味料を含む)、食塩が基本原料となる。本発明の液状調味料には、このような基本原料に加えて、例えば、香辛料、香辛料抽出物、香味オイル、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、有機酸系調味料、風味原料、旨味調味料、酒類、フレーバーなどの呈味・風味成分、ガム類や冷水膨潤性澱粉以外の粘度調整剤、安定剤、着色料、カルシウム塩等などの添加剤などを用いることができる。これらの成分の含有量は、特に限定はされず、用途に応じて適宜決定することができる。
【0052】
上記糖類としては、例えば、砂糖、麦芽糖、果糖、異性化液糖、ブドウ糖、水あめ、デキストリンやソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコール類等が挙げられる。これらの糖類は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0053】
上記高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、甘草抽出物、ステビアやその酵素処理物等が挙げられる。これらの高甘味度甘味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0054】
上記食塩はそのものでもよいが、食塩を含有する食品でも良い。食塩を含有する食品は特に限定はないが、例として、醤油、味噌、出汁等が挙げられる。
【0055】
上記醤油としては特に限定されるものではないが、例えば濃口醤油、淡口醤油、白醤油、溜り醤油、再仕込み醤油等が挙げられる。これらの醤油は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0056】
上記味噌としては特に限定されるものではないが、例えば麦味噌、米味噌、豆味噌、調合味噌などに加えて、その製法に起因する色の違いによって命名される赤味噌・白味噌・淡色味噌等が挙げられる。これらの味噌は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0057】
上記香辛料とは、特有の香り、刺激的な呈味、色調を有し、香り付け、消臭、調味、着色等の目的で飲食品に配合する植物体の一部(植物の果実、果皮、花、蕾、樹皮、茎、葉、種子、根、地下茎など)をいい、香辛料にはスパイス又はハーブが含まれる。スパイスとは香辛料のうち、利用部位として茎と葉と花を除くものをいい、例えば、胡椒(黒胡椒、白胡椒、赤胡椒)、ニンニク、ショウガ、ごま(ごまの種子)、唐辛子、ホースラディシュ(西洋ワサビ)、マスタード、ケシノミ、ゆず、ナツメグ、シナモン、パプリカ、カルダモン、クミン、サフラン、オールスパイス、クローブ、山椒、オレンジピール、ウイキョウ、カンゾウ、フェネグリーク、ディルシード、カショウ、ロングペパー、オリーブの実などが挙げられる。また、ハーブとは香辛料のうち、茎と葉と花を利用するものをいい、例えば、クレソン、コリアンダー、シソ、セロリ、タラゴン、チャイブ、チャービル、セージ、タイム、ローレル、ニラ、パセリ、マスタードグリーン(からしな)、ミョウガ、ヨモギ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、サボリー、レモングラス、ディル、ワサビ葉、山椒の葉などが挙げられる。
【0058】
上記香辛料抽出物としては、一般的に「香辛料」又は「スパイス」と表示される食品の抽出物であれば何でもよく、その例としては唐辛子抽出物、マスタード抽出物(カラシ抽出物)、ショウガ抽出物(ジンジャー抽出物)、ワサビ抽出物、ペパー抽出物、ニンニク抽出物(ガーリック抽出物)、オニオン抽出物、サンショウ抽出物等が挙げられる。これらの香辛料抽出物は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0059】
上記香味オイルとしては、例えば、ジンジャーオイル、ガーリックオイル、マスタードオイル、オニオンオイル、ゴマ油、ねぎオイル、ニラオイル、セリオイル、しそオイル、わさびオイル、レモンオイル、魚介オイル、蓄肉オイル等が挙げられる。これらの香味オイルは、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0060】
上記アミノ酸系調味料としては、例えば、L-グルタミン酸ナトリウム、DL-アラニン、グリシン、L-又はDL-トリプトファン、L-フェニルアラニン、L-又はDL-メチオニン、L-リシン、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アルギニン等が挙げられる。これらのアミノ酸系調味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0061】
上記核酸系調味料としては、例えば、5’-イノシン酸二ナトリウム、5’-グアニル酸二ナトリウム、5’-ウリジル酸二ナトリウム、5’-シチジル酸二ナトリウム、5’-リボヌクレオチドカルシウム、5’-リボヌクレオチド二ナトリウム等が挙げられる。これらの核酸系調味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0062】
上記有機酸系調味料としては、例えば、クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸水素カリウム、L-酒石酸水素カリウム、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸ナトリウム等が挙げられる。これらの有機酸系調味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。二種以上の有機酸系調味料を併用することで、双方の呈味が相乗的に高まるため好ましい。
【0063】
上記風味原料としては、例えば、鰹だし、昆布だし、野菜エキス、鰹エキス、昆布エキス、魚介エキス、蓄肉エキス等が挙げられる。これらの風味原料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0064】
上記旨味調味料としては、例えば、たん白加水分解物、酵母エキス等が挙げられる。これらの旨味調味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0065】
上記酒類としては、清酒、合成清酒、みりん、焼酎、ワイン、リキュール、紹興酒等が挙げられる。これらの酒類は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0066】
上記フレーバーとしては、例えば、ジンジャーフレーバー、ガーリックフレーバー、マスタードフレーバー、オニオンフレーバー、ゴマフレーバー、ねぎフレーバー、ニラフレーバー、しそフレーバー、わさびフレーバー、レモンフレーバー等が挙げられる。これらのフレーバーは、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0067】
上記粘度調整剤としては、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カラギナン、カラヤガム、寒天、セルロース、タマリンドシードガム、プルラン、ペクチン、キチン、キトサン、等が挙げられる。これらの粘度調整剤は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0068】
<液状調味料の製造方法>
本発明の液状調味料は、前記の植物性破砕物と、ガム類と、冷水膨潤性澱粉と、食酢と、任意によりその他の成分とを、20℃における粘度及び解離酢酸濃度がそれぞれ前記範囲となるように混合する工程を含む製造方法により製造することができる。ここで、混合は攪拌でも振盪でもよく、必要に応じて加熱しながら行ってもよい。原料の混合攪拌は、従来、公知の方法によればよいが、上記混合攪拌工程における温度は、通常は35℃以上、中でも40℃以上とすることが好ましい。また、加熱しながら混合を行う場合には、冷水膨潤性澱粉の溶解を抑制するために、加熱温度の上限を通常100℃以下、中でも90℃以下、更には85℃以下とすることが好ましい。
【0069】
上記の工程により均一な液状とした後、そのまま、あるいは、加熱殺菌や膜濾過殺菌などの殺菌処理に供した後、一般の液状調味料と同様に、容器に充填する。本発明の液状調味料に使用する容器としては、材質や形状は特に限定はされないが、例えば、プラスチック製容器、パウチ(ポリエチレンパウチ、アルミパウチ)、ペットボトル、スチール缶、アルミ缶、瓶容器などが挙げられる。また、本発明の液状調味料は容器に充填した後、加熱殺菌、あるいはレトルト殺菌などの殺菌処理に供して液状調味料とすることができる。これらの液状調味料の製造方法も、本発明の一側面に含まれる。
【0070】
<植物性破砕物含有液状調味料の使用態様>
本発明の液状調味料の使用態様は、特に限定されず、野菜や魚介類、肉類等の食材又は料理に振りかける、和えるなどして使用できる。使用時の食材又は料理は加熱状態であっても非加熱状態の何れであってもよいが、サラダ、調理済みの揚げ物、焼き物(ステーキ、焼き魚)、豆腐、パスタなどに、非加熱状態で用いることが好ましい。
【0071】
<植物の色調・風味、及び食感の改善、及び、攪拌・振り混ぜによる混合後の泡切れの改善の方法>
なお、上述の本発明の液状調味料の製造方法を利用して、植物性破砕物が有する植物の色調・風味・食感を改善し、及び・又は、攪拌・振り混ぜによる混合後の泡切れを改善することも可能である。即ち、前記の植物性破砕物と、ガム類と、冷水膨潤性澱粉と、食酢と、任意によりその他の成分とを、20℃における粘度及び解離酢酸濃度がそれぞれ前記範囲となるように混合する。これにより、植物性破砕物を含む酸性液状調味料において、植物性破砕物が有する植物の色調、風味、及び食感のうち少なくとも一つを改善し、及び・又は、攪拌・振り混ぜによる混合後の泡切れを改善することが可能となる。これらの方法(植物の色調・風味、及び食感を改善する方法、及び、攪拌・振り混ぜによる混合後の泡切れを改善する方法)も、本発明の一側面に含まれる。
【0072】
<小括>
本発明によれば、攪拌混合や振り混ぜ後の泡切れに優れ、植物性破砕物が本来有していた好ましい風味や食感が感じられ、鮮やかな色調が保持された酸性液状調味料が提供される。本発明の破砕物を含有する酸性調味料は、攪拌混合の泡切れに優れるため、従来の植物性破砕物を含有する酸性液状調味料においてみられる、攪拌混合後の泡立ちや、気泡の高保持性が原因となるタンクや容器からの調味液の流出が起こりにくく、生産性の低下が改善される。また、食材にかけて食する前に、液状調味料を振り混ぜることによって生じる泡立ちや、その後の気泡の保持性が抑えられることで、植物性破砕物が本来有する色調が気泡によって白く濁り、発色が低下することがない。さらには、調味液中の気泡の保持性が改善されることで、口中において気泡に阻害されずに植物性破砕物本来の風味を強く感じることができ、気泡のぶつぶつとした食感に邪魔されず、植物性破砕物本来の好ましい食感が感じられる。
【実施例0073】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
[実施例1]増粘剤の含有率及び粘度の検討
(1)試験品の調製
下記の表1に示す配合量に従い、トマトペースト(植物性破砕物)、食塩、砂糖、醸造酢(酸度15%)、及び水を配合すると共に、組み合わせと配合比を変えたキサンタンガム(ガム類)及び冷水膨潤性澱粉を配合し、60℃で均一になるよう十分に攪拌混合した後、90℃で5分の殺菌処理を行い、ボトルに充填し、酸性液状調味料の試験品No.1~8を調製した。なお、上記トマトペーストは、全量を100メッシュの篩に載置した際、90質量%以上が100メッシュ篩にオンした。
【0075】
(2)試験品の評価手順
[粘度の測定]
下記(1)で調製した試験品について、以下の手順により粘度を測定した。即ち、B型粘度計として、東機産業社製の「B-II」を用い、20℃に調整した試験品をB型粘度計の測定用容器に適量充填し、容器をB型粘度計にセットし、測定粘度に適合したローターを用いて適当な回転数で粘度を測定した。
【0076】
[pHの測定及び解離酢酸濃度の算出]
下記(1)で調製した試験品の調味料について、pHメーターを用いて調味料のpHを測定した。また、使用した食酢の含量と酸度から調味料の酢酸濃度を算出した。得られた調味料のpH及び酢酸濃度から、下記式により解離酢酸濃度を求めた。
【数3】
式中、〔A〕は解離型酢酸濃度(即ち解離酢酸濃度)、〔AH〕は非解離型酢酸濃度(即ち酢酸濃度-解離酢酸濃度)である。
【0077】
[100メッシュオンの全成分の含有率測定]
下記(1)で調製した試験品について、以下の手順により試験品の調味料に対する100メッシュオンの全成分の含有率を測定した。即ち、試験品の調味料を水で10倍に希釈してから100メッシュの篩に載置し、100メッシュの篩を通過しない成分を取得し、その質量を測定して、調味料に対する含有率を求めた。
【0078】
[膨潤後の冷水膨潤性澱粉の含有率測定]
下記(1)で調製した試験品について、以下の手順により膨潤後の冷水膨潤性澱粉の含有率を測定した。まず、試験品の調味料を水で10倍に希釈してから100メッシュ及び4メッシュの篩に載置し、100メッシュの篩を通過せず、4メッシュの篩を通過する成分を取得した。ここで、試験品の組成から判断するに、100メッシュの篩を通過しない成分は、膨潤後の冷水膨潤性澱粉及び植物性破砕物のみと考えられるため、これらを目視で識別し、膨潤後の冷水膨潤性澱粉成分のみを分別・取得した。また、試験品の調味料に使用したのと同量の乾燥状態の冷水膨潤性澱粉を別途用意し、十分量の冷水(25℃)を吸水させて膨潤させた後、同様の手順で100メッシュの篩を通過しない成分を取得した。得られた両成分の質量を測定したところ、ほぼ同値であったことから、以降においては簡便のため、後者の手順により得られた値を、膨潤後の冷水膨潤性澱粉の質量として用い、調味料に対する含有率を求めた。
【0079】
[膨潤後の植物性破砕物の含有率測定]
下記(1)で調製した試験品について、以下の手順により膨潤後の植物性破砕物の含有率を測定した。まず、試験品の調味料を水で10倍に希釈してから100メッシュ及び9メッシュの篩に載置し、100メッシュの篩を通過せず、9メッシュの篩を通過する成分を取得した。ここで、試験品の組成から判断するに、100メッシュの篩を通過しない成分は、膨潤後の冷水膨潤性澱粉及び植物性破砕物のみと考えられるため、これらを目視で識別し、膨潤後の植物性破砕物成分のみを分別・取得した。また、試験品の調味料に使用したのと同量の植物性破砕物を別途用意し、十分量の水を吸水させて膨潤させた後、同様の手順で100メッシュの篩を通過しない成分を取得した。得られた両成分の質量を測定したところ、ほぼ同値であったことから、以降においては簡便のため、後者の手順により得られた値を、膨潤後の植物性破砕物の質量として用い、調味料に対する含有率を求めた。
【0080】
[官能検査]
下記(1)で調製した試験品について、「振り混ぜ後の泡切れの良さ」、「振り混ぜ後の色調」の官能検査を行った。官能検査は熟練したパネル5名にて行い、各試験項目の評価基準は以下のとおりとした。何れの評価も、「良い」、「ふつう」、「悪い」の3段階評価とし、「良い」が過半数(5名中3名)であり、且つ「悪い」が一人も存在しない場合につき、本発明における効果が認められるとした。なお、官能検査を行ったパネルは、通常一般に流通している市販の液状調味料を熟知しており、泡切れの良さや、色調、風味や食感についても、一般的なレベル(評価における「ふつう」)を十分に把握している熟練のパネルである。
【0081】
(振り混ぜ後の泡切れの良さ)
試験品の入ったボトルを、30cmの幅で、1秒あたり2往復の速さで15秒間上下させることで振り混ぜ、3分間静置させた後、容器内の液状調味料の外観を目視により確認し、以下の評点により評価した。
◎:良い(実質的に液上部に泡立ちが見られず、液中にも泡がほとんど見られない。)
○:ふつう(液上部に1cmを超える泡立ちが見られ、液部の大半に泡が見られる。)
×:悪い(液上部に2cm以上の激しい泡立ちが見られ、液部のほぼ全体に泡が見られる)
【0082】
(振り混ぜ後の色調)
試験品の入ったボトルを、30cmの幅で、1秒あたり2往復の速さで15秒間上下させることで振り混ぜ、3分間静置させた後、容器内の液状調味料の外観を目視により確認し、以下の評点により評価した。
◎:良い(振り混ぜる前後で実質的に色調変化が見られず、振り混ぜ後に濁りも生じない。)
○:ふつう(振り混ぜる前後で若干の色調変化が生じるが、振り混ぜ後に濁りは生じない。)
×:悪い(振り混ぜる前後で明らかな色調変化が生じ、振り混ぜ後に濁りも生じる。)
【0083】
(3)試験品の評価結果
試験品No.1~8の組成、粘度測定結果、膨潤後の冷水膨潤性澱粉及び植物性破砕物の含有率、並びに官能検査結果を下記表1に示す。なお、以降の表を含め、表中「含有率」とは、別途記載ある場合を除き、調味料全体に対する含有率を意味する。
【表1】
【0084】
上記表1に示すように、植物性破砕物としてトマトペーストを使用し、食塩、砂糖、醸造酢(酸度15%)、及び冷水膨潤性澱粉を配合した液状調味料において、増粘剤としてキサンタンガム(ガム類)及び冷水膨潤性澱粉を併用し、解離酢酸濃度を0.15質量%以下に調整した場合、粘度が500~10000mPa・sの範囲内にある試験品No.3~6及び8の液状調味料では、攪拌混合後の泡立ちが抑えられるとともに、液中における泡保持性が低下し、泡切れが良くなる傾向が認められた。また、振り混ぜ後の色調も気泡による白っぽい濁りがなく、振り混ぜ前後の色調の変化もほとんどなく、植物性破砕物由来の鮮やかな色が保持されていた。一方、粘度が500mPa・sに満たない試験品No.1の液状調味料、粘度が10000mPa・sを超える試験品No.7の液状調味料、更には増粘剤として冷水膨潤性澱粉を使用していない試験品No.2の液状調味料では、泡切れに劣り、他の評価項目の面でも不十分なものであった。
【0085】
[実施例2]植物性破砕物の含有率の検討
(1)試験品の調製
下記の表2に示す配合量に従い、食塩、砂糖、醸造酢(酸度15%)、キサンタンガム(ガム類)、冷水膨潤性澱粉、及び水を配合すると共に、配合量を変えた上記トマトペーストA(植物性破砕物)を配合し、60℃で均一になるよう十分に攪拌混合した後、90℃で5分の殺菌処理を行い、ボトルに充填し、酸性液状調味料の試験品No.9~11を調製した。なお、上記トマトペーストAは、全量を100メッシュの篩に載置させた際、90質量%以上が100メッシュ篩にオンした。
【0086】
(2)試験品の評価手順
下記(1)で調製した試験品No.9~11について、実施例1(2)と同様の手順により、粘度の測定、膨潤後の冷水膨潤性澱粉及び植物性破砕物の含有率測定、並びに官能検査を行った。
【0087】
(3)試験品の評価結果
試験品No.9~11の組成、粘度測定結果、膨潤後の冷水膨潤性澱粉及び植物性破砕物の含有率、並びに官能検査結果を下記表2に示す。
【表2】
【0088】
上記表2に示すように、植物性破砕物としてトマトペーストを使用し、食塩、砂糖、醸造酢(酸度15%)、及び冷水膨潤性澱粉を配合した液状調味料において、増粘剤としてキサンタンガム(ガム類)及び冷水膨潤性澱粉を併用し、解離酢酸濃度を0.15質量%以下に、粘度を500~10000mPa・sに調整した場合、トマトペーストの含有率が0.3~20質量%(100メッシュオン、及び9メッシュパス・100メッシュオンの膨潤後の含有率がいずれも0.6~40質量%)の範囲内にある試験品No.9~11の液状調味料では、攪拌混合後の泡立ちが抑えられるとともに、液中における泡保持性が低下し、泡切れが良くなる傾向が認められた。また、振り混ぜ後の色調も気泡による白っぽい濁りがなく、振り混ぜ前後の色調の変化もほとんどなく、植物性破砕物由来の鮮やかな色が保持されていた。
【0089】
[実施例3]解離酢酸濃度の検討
(1)試験品の調製
下記の表3に示す配合量に従い、上記トマトペーストA(植物性破砕物)、食塩、砂糖、キサンタンガム(ガム類)、冷水膨潤性澱粉、及び水を配合すると共に、配合量を変えた醸造酢(酸度15%)と、pH調節のために必要に応じてクエン酸ナトリウムを配合し、60℃で均一になるよう十分に攪拌混合した後、90℃で5分の殺菌処理を行い、ボトルに充填し、酸性液状調味料の試験品No.12~17を調製した。
【0090】
(2)試験品の評価手順
下記(1)で調製した試験品No.12~17について、実施例1(2)と同様の手順により、粘度の測定、膨潤後の冷水膨潤性澱粉及び植物性破砕物の含有率測定、並びに官能検査を行った。
【0091】
(3)試験品の評価結果
試験品No.12~17の組成、粘度測定結果、膨潤後の冷水膨潤性澱粉及び植物性破砕物の含有率、並びに官能検査結果を下記表3に示す。
【表3】
【0092】
上記表3に示すように、植物性破砕物としてトマトペーストを使用し、食塩、砂糖、醸造酢(酸度15%)、及び冷水膨潤性澱粉を配合した液状調味料において、増粘剤としてキサンタンガム(ガム類)及び冷水膨潤性澱粉を併用し、粘度を500~10000mPa・sに調整した場合、解離酢酸濃度が0.15質量%以下の範囲内にある試験品No.12、13、16、及び17の液状調味料では、攪拌混合後の泡立ちが抑えられるとともに、液中における泡保持性が低下し、泡切れが良くなる傾向が認められた。また、振り混ぜ後の色調も気泡による白っぽい濁りがなく、振り混ぜ前後の色調の変化もほとんどなく、植物性破砕物由来の鮮やかな色が保持されていた。一方、解離酢酸濃度が0.15質量%を超える試験品No.14及び15の液状調味料では、泡切れに劣り、他の評価項目の面でも不十分なものであった。
【0093】
[実施例4]
(1)試験品の調製
下記の表4-1及び4-2に示す配合量に従い、植物性破砕物や、ガム類、食酢の種類や配合量を変え、食塩、砂糖、水に加え他原料を配合した酸性液状調味料の試験品No.18~27を調製した。
【0094】
(2)試験品の評価手順
下記(1)で調製した試験品No.18~27について、実施例1(2)と同様の手順により、粘度の測定、膨潤後の冷水膨潤性澱粉及び植物性破砕物の含有率測定、並びに官能検査を行った。
【0095】
(3)試験品の評価結果
試験品No.18~27の組成、粘度測定結果、膨潤後の冷水膨潤性澱粉及び植物性破砕物の含有率、並びに官能検査結果を下記表4-1~4-4に示す。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【0096】
上記表4-1~4-4に示すように、試験品No.18~27の何れにおいても、攪拌混合後の泡立ちが抑えられるとともに、液中における泡保持性が低下し、泡切れが良くなる傾向が認められた。また、振り混ぜ後の色調も気泡による白っぽい濁りがなく、振り混ぜ前後の色調の変化もほとんどなく、植物性破砕物由来の鮮やかな色が保持されていた。また、鮮やかな色調を有する植物性破砕物であるトマトピューレ、キュウリ、レッドペッパー、ニンジン、オレンジを使用した試験品については、特に植物性破砕物由来の鮮やかな色が保持されていた。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は食品分野において、植物性破砕物を含有する酸性液状調味料に広く利用でき、その産業上の有用性は極めて大きい。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性破砕物と、ガム類と、冷水膨潤性澱粉と、食酢とを含有する酸性液状調味料であって、(A)20℃における粘度が500mPa・s以上、10000mPa・s以下であり、(B)解離酢酸濃度が0.16質量%以下である、酸性液状調味料。