(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001554
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】ナット脱落防止具
(51)【国際特許分類】
F16B 41/00 20060101AFI20221226BHJP
F16B 39/20 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
F16B41/00 A
F16B39/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102358
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000205557
【氏名又は名称】アイエスケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100142376
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】川原貢
(72)【発明者】
【氏名】坂上雅夫
(57)【要約】
【課題】偶発的につながる恐れを抑える。
【解決手段】ナット脱落防止具10は、リング部20と、連続部22,22の対とを備える。リング部20は線材を有する。この線材は環状に屈曲することで環状部40および交差箇所42を形成する。連続部22は、リング部20が有する線材の両端それぞれに連続するように設けられる。ナット脱落防止具10は、対間材24をさらに備える。対間材24は、連続部22の対の間に渡される。対間材24は、互いに近づく方向の力を連続部22,22の対が受けると連続部22,22の対が近づき得るように変形する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に屈曲することで環状部および交差箇所を形成する線材を有するリング部と、
前記リング部が有する前記線材の両端それぞれに連続するように設けられる連続部の対とを備えるナット脱落防止具であって、
前記連続部の対の間に渡され、互いに近づく方向の力を前記連続部の対が受けると前記連続部の対が近づき得るように変形する対間材をさらに備えることを特徴とするナット脱落防止具。
【請求項2】
前記対間材が、前記連続部の対に沿って拡がる面を形成する面形成部を有することを特徴とする請求項1に記載のナット脱落防止具。
【請求項3】
前記面形成部が、前記連続部の対双方について、前記連続部の先端から前記連続部の付け根側へ向かう方向に在り前記環状部の中心軸に沿う方向についての前記連続部の先端との高低差が前記線材の太さの2倍となる位置よりも前記連続部の先端側に達していることを特徴とする請求項2に記載のナット脱落防止具。
【請求項4】
前記面形成部と前記交差箇所とが隙間を形成しており、
前記交差箇所から前記面形成部のうち前記隙間に接する箇所までの差し渡しの最小値が、前記環状部のうち対向する箇所間の前記環状部の中心軸に直交する方向についての差し渡しの最小値の1.1倍未満かつ0を超えることを特徴とする請求項2に記載のナット脱落防止具。
【請求項5】
前記面形成部が前記連続部の対双方の付け根を経て前記交差箇所に接していることを特徴とする請求項2に記載のナット脱落防止具。
【請求項6】
前記連続部の対のうち互いに対向する面から見て背面にあたる面同士の距離の最小値が、前記環状部のうち対向する箇所間の前記環状部の中心軸に直交する方向についての差し渡しの最小値よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のナット脱落防止具。
【請求項7】
前記連続部の対が、前記リング部の前記環状部が沿う面に対して交差する方向へ互いに対向するようにそれぞれ突出していることを特徴とする請求項1に記載のナット脱落防止具。
【請求項8】
前記対間材が合成樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載のナット脱落防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナット脱落防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はナット脱落防止具を開示する。このナット脱落防止具は、螺旋状のコイルバネ部と、一対の輪状の押圧部とを備える。コイルバネ部は、ボルトのネジ外径よりも小さな内径を有する。コイルバネ部は、平面視の一部分で重複する重複部を有する。押圧部は、コイルバネ部の両端から互いに対向してコイルバネ部の中心軸から遠ざかる平面方向に向けて延びるよう設けられる。このナット脱落防止具は、押圧部を互いに近接させた場合にコイルバネ部の内径がネジの外径よりも大きくなる様に構成される。これにより、このナット脱落防止具のコイルバネ部をボルトのネジ溝に沿って嵌めることが可能となる。押圧部の少なくとも一端には、コイルバネ部よりも中心軸に向けて延びる線状突起部が設けられている。特許文献1に開示されたナット脱落防止具は、ワンタッチで取付が可能で、構造が簡単で、かつ、長期の使用にも耐え得る。
【0003】
特許文献2はナット脱落防止具を開示する。このナット脱落防止具は、ボルトの先端部に装着して、そのボルトにねじ込まれているナットの脱落を防止するものである。このナット脱落防止具は、弾性を有する線材からなる。このナット脱落防止具は、リング部と、線材の両端部に形成してリング部を拡径操作する一対の操作部とを備える。リング部は、この線材の中央部に形成される。リング部は、ボルトの外周面を把持する。その線材の一端部は、ナットに接触してこのナットの移動を規制すると共に、ナットの緩み方向への回転力に起因する摩擦力により、リング部を縮径させる方向に変位するものである。特許文献2に開示されたナット脱落防止具は、ナットとの間の摩擦力が大きくなった場合にも、ナット脱落防止具とナットとが共回りして脱落するのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-52648号公報
【特許文献2】特開2019-203516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示されたナット脱落防止具には、複数のナット脱落防止具が互いに偶発的につながる恐れが高いという問題点がある。本発明は、このような問題を解決するものである。本発明の目的は、偶発的につながる恐れを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図面に基づき本発明のナット脱落防止具が説明される。なおこの欄で図中の符号を使用したのは発明の内容の理解を助けるためであって内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0007】
上述された課題を解決するために、本発明のある局面に従うと、ナット脱落防止具10,210は、リング部20と、連続部22,22の対とを備える。リング部20は線材を有する。この線材は環状に屈曲することで環状部40および交差箇所42を形成する。連続部22は、リング部20が有する線材の両端それぞれに連続するように設けられる。ナット脱落防止具10,210は、対間材24,224をさらに備える。対間材24,224は、連続部22,22の対の間に渡される。対間材24,224は、互いに近づく方向の力を連続部22,22の対が受けると連続部22,22の対が近づき得るように変形する。
【0008】
あるナット脱落防止具10,210の連続部22,22の対の間に対間材24,224が渡されていると、その連続部22,22の対の間に他のナット脱落防止具10,210のリング部20および連続部22の少なくとも一方が進入することは抑えられる。これにより、前者のナット脱落防止具10,210の連続部22と後者のナット脱落防止具10,210のリング部20および連続部22の少なくとも一方とが引っ掛かり合う可能性は低くなる。その結果、それら複数のナット脱落防止具10,10,210,210が偶発的につながる恐れが抑えられる。
【0009】
また、上述された対間材24,224が面形成部60,260を有することが望ましい。面形成部60,260は、連続部22,22の対に沿って拡がる面を形成する。
【0010】
あるナット脱落防止具10,210の面形成部60,260が、連続部22,22の対に沿って拡がる面を形成することで、連続部22,22の対の間の空間を挟んで対向する一対の空間の少なくとも一部はその面形成部60,260によって隔てられる。これにより、連続部22,22の対の間の空間を他のナット脱落防止具10,210のリング部20および連続部22の少なくとも一方が貫通する可能性は小さくなる。その可能性が小さくなると、前者のナット脱落防止具10,210の連続部22と後者のナット脱落防止具10,210のリング部20および連続部22の少なくとも一方とが引っ掛かり合う可能性は低くなる。その結果、それら複数のナット脱落防止具10,10,210,210が互いに偶発的につながる恐れが抑えられる。
【0011】
もしくは、上述された面形成部60,260が、連続部22,22の対双方について、連続部22の先端から連続部22の付け根側へ向かう方向にあり環状部40の中心軸Lに沿う方向についての連続部22の先端との高低差が線材の太さの2倍となる位置よりも連続部22の先端側に達していることが望ましい。
【0012】
面形成部60,260が、連続部22,22の対双方について、上述された位置よりも連続部22の先端側に達していると、複数のナット脱落防止具10,10,210,210が互いに偶発的につながる恐れが抑えられる。
【0013】
もしくは、上述された面形成部60と交差箇所42とが隙間100を形成していることが望ましい。この場合、交差箇所42から面形成部60のうち隙間100に接する箇所までの差し渡しの最小値が、環状部40のうち対向する箇所間の環状部40の中心軸Lに直交する方向についての差し渡しの最小値φAの1.1倍未満かつ0を超えることが望ましい。
【0014】
交差箇所42から面形成部60のうち隙間100に接する箇所までの差し渡しの最小値が、環状部40のうち対向する箇所間の環状部40の中心軸Lに直交する方向についての差し渡しの最小値φAの1.1倍未満かつ0を超えると、複数のナット脱落防止具10,10,210,210が互いに偶発的につながる恐れが抑えられる。
【0015】
もしくは、上述された面形成部260が連続部22,22の対双方の付け根を経て交差箇所42に接していることが望ましい。
【0016】
面形成部260が連続部22,22の対双方の付け根を経て交差箇所42に接していると、面形成部260と交差箇所42との隙間に他のナット脱落防止具10,210のリング部20および連続部22の少なくとも一方が進入しなくなる。その結果、複数のナット脱落防止具10,10,210,210が互いに偶発的につながる恐れが抑えられる。
【0017】
また、上述された連続部22,22の対のうち互いに対向する面から見て背面にあたる面同士の距離の最小値Dが、環状部40のうち対向する箇所間の環状部40の中心軸Lに直交する方向についての差し渡しの最小値φAよりも大きいことが望ましい。
【0018】
連続部22,22の対のうち互いに対向する面から見て背面にあたる面同士の距離の最小値Dが上述された最小値φAよりも大きいと、あるナット脱落防止具10,210の連続部22,22の対が次に述べられる部分へ共に進入する可能性が抑えられる。その部分は、他の同一サイズのナット脱落防止具10,210のリング部20の環状部40である。これにより、前者のナット脱落防止具10,210の連続部22,22の対が後者のナット脱落防止具10,210のリング部20の環状部40へ押付けられることで前者のナット脱落防止具10,210と後者のナット脱落防止具10,210とがつながる可能性が低くなる。その結果、複数のナット脱落防止具10,10,210,210が互いに偶発的につながる恐れが抑えられる。
【0019】
また、上述された連続部22,22の対が、リング部20の環状部40が沿う面に対して交差する方向へ互いに対向するようにそれぞれ突出していることが望ましい。
【0020】
また、上述された対間材24,224が合成樹脂製であることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、偶発的につながる恐れが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具の平面図である。
【
図2】本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具の側面図である。
【
図3】本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具の背面図である。
【
図4】本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具がボルトに固定された状況が示されている図である。
【
図5】本発明の他の実施形態にかかるナット脱落防止具の平面図である。
【
図6】本発明の実施例および比較例における各箇所の大きさと数珠繋ぎ数とが示されている図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明が図面に基づき詳細に説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付される。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0024】
[構成の説明]
図1は、本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具10の平面図である。
図2は、本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具10の側面図である。
図3は、本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具10の背面図である。
図1乃至
図3に基づいて、本実施形態にかかるナット脱落防止具10の構成が説明される。
【0025】
本実施形態にかかるナット脱落防止具10は、リング部20と、連続部22,22の対と、対間材24とを備える。
【0026】
本実施形態にかかるリング部20および連続部22,22の対は線材によって構成される。リング部20は、その線材のうち両端を除いた部分からなる。その部分が、環状部40および交差箇所42を形成する。この環状部40において対向する箇所間の、環状部40の中心軸Lに直交する方向についての差し渡しの最小値φAに応じて、本実施形態にかかるナット脱落防止具10の使用に適したボルト120の呼び径が決まる。
【0027】
連続部22,22の対は、上述された線材の両端からなる。より具体的には、本実施形態にかかる連続部22,22の対は、上述された線材の両端を屈曲させたものからなる。これにより、連続部22,22の対は、リング部20を構成する部分の両端それぞれに連続するように設けられることとなる。なお、本実施形態の場合、連続部22,22の対の間隔の最小値Cは、環状部40の外周のうち環状部40の中心から見て互いに反対側となる箇所間の環状部40の中心軸Lに直交する方向についての距離の最小値φBより小さい。一方、連続部22,22の対の間隔の最小値Cは、環状部40のうち対向する箇所間の環状部40の中心軸Lに直交する方向についての差し渡しの最小値φAよりも大きい。当然、連続部22,22の対のうち互いに対向する面から見て背面にあたる面同士の距離の最小値Dは、環状部40のうち対向する箇所間の環状部40の中心軸Lに直交する方向についての差し渡しの最小値φAよりも大きい。
【0028】
本実施形態にかかる連続部22,22の対は、互いに対向している。また、特に
図2および
図3において明らかなように、本実施形態にかかる連続部22,22の対は、リング部20から共に立ち上がっている。これにより、本実施形態にかかる連続部22,22の対は、リング部20の環状部40が沿う面に対して交差する方向へそれぞれ突出していることとなる。
【0029】
本実施形態の場合、対間材24は、合成樹脂製である。本実施形態の場合、対間材24は、面形成部60と、被覆部62,62の対とを有する。
【0030】
特に
図2から明らかなように、本実施形態にかかる面形成部60は、連続部22,22の対に沿って拡がる面を形成する。
【0031】
特に
図3から明らかなように、本実施形態の場合、面形成部60の上端80は、連続部22,22の対のうち低い方の先端付近に達している。また、本実施形態の場合、面形成部60の上端80は、連続部22,22の対のうち高い方の先端から少し下に下がった位置に達している。特に
図3から明らかなように、その位置は、連続部22のうち高い方の先端からその付け根側へ向かう方向に在る。
【0032】
本実施形態にかかる面形成部60の下端82は、リング部20の交差箇所42に対向する。これにより、本実施形態にかかる面形成部60の下端82とリング部20の交差箇所42とが隙間100を形成することとなる。
【0033】
被覆部62,62の対は、連続部22,22の対をそれぞれ被覆する。これにより、連続部22は、被覆部62によって取り囲まれるように被覆されることとなる。その際、被覆部62,62の対が連続部22,22の対にそれぞれ固定されることにより、本実施形態にかかる対間材24が連続部22,22の対の間に渡されることとなる。
【0034】
[製造方法の説明]
本実施形態にかかるナット脱落防止具10は、線材加工工程と対間材巻付工程とを経て製造される。線材加工工程は、周知の線材が周知の方法で加工されることにより
図1および
図2に示されているようにリング部20と連続部22,22の対とが形成される工程である。対間材巻付工程は、線材加工工程において形成された連続部22,22の対の間に基材が合成樹脂製である粘着テープを巻付ける工程である。
【0035】
[使用方法の説明]
本実施形態にかかるナット脱落防止具10は、ボルト120にねじ込まれたナット122がそのボルト120から抜けることを防止するために使用される。本実施形態にかかるナット脱落防止具10は、次に述べられる手順で使用される。
【0036】
本実施形態にかかるナット脱落防止具10は、しばしば、ポケットその他の図示されない収容手段において保管される。その収容手段には、しばしば、本実施形態にかかるナット脱落防止具10が多数収容される。本実施形態にかかるナット脱落防止具10を使用する者(以下「使用者」と称される)は、それら多数のナット脱落防止具10のうち一個を収容手段からつまみ取る。使用者は、収容手段からつまみ取ったナット脱落防止具10の連続部22,22の対をつまんでそれらを近づける。これにより、連続部22,22の対は互いに近づく方向の力を受けることとなる。連続部22,22の対がその力を受けたことにより、リング部20のうち環状の部分の直径は大きくなる。また、対間材24はたわむように変形する。
【0037】
対間材24がたわむように変形すると、使用者は、連続部22,22の対をつまんだまま環状部40をボルト120に嵌める。環状部40がボルト120に嵌められると、使用者は、連続部22,22の対から手を離す。連続部22,22の対から使用者の手が離れると、環状部40は元に戻る。環状部40が元に戻ったことに伴い、環状部40はボルト120を締め付ける。環状部40がボルト120を締め付けることで、本実施形態にかかるナット脱落防止具10はボルト120に固定される。
図4は、本実施形態にかかるナット脱落防止具10がボルト120に固定された状況が示されている図である。本実施形態にかかるナット脱落防止具10がボルト120に固定されると、ナット122がゆるんだ際にそのナット122の動きが妨げられるので、そのナット122の脱落は防止される。
【0038】
[効果の説明]
本実施形態にかかるナット脱落防止具10によれば、複数のナット脱落防止具10,10が互いに偶発的につながる恐れが抑えられる。
【0039】
〈変形例の説明〉
上述されたナット脱落防止具10は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものである。上述されたナット脱落防止具10は、本発明の技術的思想の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0040】
例えば、連続部22は、リング部20が有する線材の端に取付けられる板状の部材からなるものでもよい。連続部22は、その板状の部材に加え何かの部品を有していてもよい。すなわち、連続部22の構成は上述されたものに限定されない。
【0041】
また、対間材24の形態は上述されたものに限定されない。例えば、対間材24は連続部22,22双方の先端に被せられる袋状のものであってもよい。対間材24の面形成部60の上端80は連続部22,22双方の先端に達していてもよい。面形成部60の上端80の位置は連続部22,22双方においてそれらの先端よりはるかに下であってもよい。面形成部60の下端82の位置も上述されたものに限定されない。
図5は、本発明の他の実施形態にかかるナット脱落防止具210の平面図である。このナット脱落防止具210は、上述された対間材24に代えて次に述べられる対間材224を備える。その対間材224は、次に述べられる点において上述された対間材24と異なる。その点は、その対間材224の面形成部260の下端282が、
図5に示されているように、連続部22,22の対双方の付け根を経て交差箇所42に接しているという点である。
【実施例0042】
以下、本発明の一実施形態における実施例1~14が比較例1,2と共に説明される。なお、実施例1~14と比較例1,2とにおいて用いられたナット脱落防止具の形態は、特に説明される点を除き、
図1乃至
図4に示されたナット脱落防止具10の形態と同様であることとする。
【0043】
[実施例1]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具の製造に用いられた線材の太さγ(ひいては環状部40および交差箇所42を形成する線材の太さγ、以下「線径γ」と称される)は直径1.3ミリメートルであった。本実施例にかかるナット脱落防止具において、面形成部60の上端80と連続部22のうち高い方の先端との環状部40の中心軸Lに沿う方向についての高低差α(以下「突出距離α」と称される)は0ミリメートルであった。したがって、線径γに対する突出距離αの比であるα/γの値は「0」であった。ちなみに、面形成部60の上端80は、環状部40の中心軸Lに直交する方向へ延びていた。面形成部60の下端82も、環状部40の中心軸Lに直交する方向へ延びていた。環状部40のうち対向する箇所間の環状部40の中心軸Lに直交する方向についての差し渡しの最小値φA(以下「環状部40の差し渡しφA」と称される。
図1および
図3参照。)は13.8ミリメートルであった。環状部40の外周のうち環状部40の中心から見て互いに反対側となる箇所間の環状部40の中心軸Lに直交する方向についての距離の最小値φB(以下「環状部40の最小幅φB」と称される。
図1および
図3参照。)は16.4ミリメートルであった。連続部22,22の対の間隔の最小値C(
図1および
図3参照)は11.9ミリメートルであった。その結果、連続部22,22の対のうち互いに対向する面から見て背面にあたる面同士の距離の最小値D(
図1および
図3参照)は14.5ミリメートルであった。連続部22のうち面形成部60が拡がる方向に直交する方向についての幅E(以下「連続部22の幅E」と称される。
図1参照。)は5.1ミリメートルであった。環状部40の底から連続部22,22の対のうち低い方の下端までの高さF(以下「連続部22の一方下端高さF」と称される。
図3参照。)は1.2ミリメートルであった。環状部40の底から連続部22,22の対のうち高い方の下端までの高さG(以下「連続部22の他方下端高さG」と称される。
図3参照。)は2.7ミリメートルであった。環状部40の底から連続部22,22の対のうち低い方までの高さH(以下「連続部22の一方突出高さH」と称される。
図3参照。)は10.3ミリメートルであった。環状部40の底から連続部22,22の対のうち高い方までの高さI(以下「連続部22の他方突出高さI」と称される。
図3参照。)は12.0ミリメートルであった。交差箇所42から面形成部60のうち隙間100に接する箇所までの差し渡しの最小値β(以下「間隙距離β」と称される)は12.9ミリメートルであった。したがって、環状部40の差し渡しφAに対する間隙距離βの比であるβ/φAは「0.935」であった。対間材24は、ニチバン株式会社製の幅15ミリメートルのセロテープ(登録商標)により形成された。
【0044】
(上下動実験)
鉄塔上で作業者が本実施例にかかるナット脱落防止具をボルト120に固定する状況を疑似的に再現するため、次に述べられる実験が行われた。すなわち、本実施例にかかるナット脱落防止具が50個用意された。それらのナット脱落防止具は20センチメートル四方のビニール袋に入れられた。それらナット脱落防止具が入れられたビニール袋は、5秒間に高低差70センチメートル上下動させられた。その上下動は100回繰り返された。それらの上下動の後、そのビニール袋から任意のナット脱落防止具が取り出された。ナット脱落防止具が取り出されると、そのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数が数えられた。ナット脱落防止具の取り出しとそのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の計数とは10回繰り返された。それら10回の計数における、取り出されたナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の総和(以下「数珠繋ぎ数」と称される)は0個であった。すなわち、それら10回の実験において、ナット脱落防止具は一度もつながっていなかった。
【0045】
[実施例2]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、突出距離αは1.4ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、線径γに対する突出距離αの比であるα/γの値は「1.077」であった。
【0046】
(上下動実験)
実施例1と同様の手順で、ナット脱落防止具の取り出しとそのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の計数とが10回繰り返された。それら10回の計数における数珠繋ぎ数は0個であった。すなわち、それら10回の実験において、ナット脱落防止具は一度もつながっていなかった。
【0047】
[実施例3]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、突出距離αは2.6ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、線径γに対する突出距離αの比であるα/γの値は「2」であった。
【0048】
(上下動実験)
実施例1と同様の手順で、ナット脱落防止具の取り出しとそのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の計数とが10回繰り返された。それら10回の計数における数珠繋ぎ数は9個であった。その際、あるナット脱落防止具のリング部20に他のナット脱落防止具の連続部22の先端が引っ掛かっていた。
【0049】
[実施例4]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、突出距離αは3.1ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、線径γに対する突出距離αの比であるα/γの値は「2.385」であった。
【0050】
(上下動実験)
実施例1と同様の手順で、ナット脱落防止具の取り出しとそのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の計数とが10回繰り返された。それら10回の計数における数珠繋ぎ数は41個であった。その際、あるナット脱落防止具のリング部20に他のナット脱落防止具の連続部22の先端が引っ掛かっていた。
【0051】
[実施例5]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、間隙距離βは14.1ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、環状部40の差し渡しφAに対する間隙距離βの比であるβ/φAは「1.022」であった。
【0052】
(上下動実験)
実施例1と同様の手順で、ナット脱落防止具の取り出しとそのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の計数とが10回繰り返された。それら10回の計数における数珠繋ぎ数は0個であった。すなわち、それら10回の実験において、ナット脱落防止具は一度もつながっていなかった。
【0053】
[実施例6]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、間隙距離βは15.2ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、環状部40の差し渡しφAに対する間隙距離βの比であるβ/φAは「1.101」であった。
【0054】
(上下動実験)
実施例1と同様の手順で、ナット脱落防止具の取り出しとそのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の計数とが10回繰り返された。それら10回の計数における数珠繋ぎ数は7個であった。その際、あるナット脱落防止具のリング部20の交差箇所42と面形成部60の下端82との隙間100を他のナット脱落防止具のリング部20が貫通していた。
【0055】
[実施例7]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、間隙距離βは15.9ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、環状部40の差し渡しφAに対する間隙距離βの比であるβ/φAは「1.152」であった。
【0056】
(上下動実験)
実施例1と同様の手順で、ナット脱落防止具の取り出しとそのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の計数とが10回繰り返された。それら10回の計数における数珠繋ぎ数は35個であった。その際、あるナット脱落防止具のリング部20の交差箇所42と面形成部60の下端82との隙間100を他のナット脱落防止具のリング部20が貫通していた。
【0057】
[実施例8]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、線径γは直径1.5ミリメートルであった。環状部40の差し渡しφAは16.3ミリメートルであった。環状部40の最小幅φBは19.3ミリメートルであった。連続部22,22の対の間隔の最小値Cは15.0ミリメートルであった。その結果、連続部の対のうち互いに対向する面から見て背面にあたる面同士の距離の最小値Dは18.0ミリメートルであった。連続部22の幅Eは6.8ミリメートルであった。連続部22の一方下端高さFは0.2ミリメートルであった。連続部22の他方下端高さGは2.4ミリメートルであった。連続部22の一方突出高さHは15.5ミリメートルであった。連続部22の他方突出高さIは17.7ミリメートルであった。間隙距離βは15.2ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、環状部40の差し渡しφAに対する間隙距離βの比であるβ/φAは「0.933」であった。
【0058】
(上下動実験)
実施例1と同様の手順で、ナット脱落防止具の取り出しとそのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の計数とが10回繰り返された。それら10回の計数における数珠繋ぎ数は0個であった。すなわち、それら10回の実験において、ナット脱落防止具は一度もつながっていなかった。
【0059】
[実施例9]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、突出距離αは1.6ミリメートルであった。他の点は実施例8と同様であった。したがって、線径γに対する突出距離αの比であるα/γの値は「1.067」であった。
【0060】
(上下動実験)
実施例1と同様の手順で、ナット脱落防止具の取り出しとそのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の計数とが10回繰り返された。それら10回の計数における数珠繋ぎ数は0個であった。すなわち、それら10回の実験において、ナット脱落防止具は一度もつながっていなかった。
【0061】
[実施例10]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、突出距離αは3ミリメートルであった。他の点は実施例8と同様であった。したがって、線径γに対する突出距離αの比であるα/γの値は「2」であった。
【0062】
(上下動実験)
実施例1と同様の手順で、ナット脱落防止具の取り出しとそのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の計数とが10回繰り返された。それら10回の計数における数珠繋ぎ数は8個であった。その際、あるナット脱落防止具のリング部20に他のナット脱落防止具の連続部22の先端が引っ掛かっていた。
【0063】
[実施例11]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、突出距離αは3.8ミリメートルであった。他の点は実施例8と同様であった。したがって、線径γに対する突出距離αの比であるα/γの値は「2.533」であった。
【0064】
(上下動実験)
実施例1と同様の手順で、ナット脱落防止具の取り出しとそのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の計数とが10回繰り返された。それら10回の計数における数珠繋ぎ数は41個であった。その際、あるナット脱落防止具のリング部20に他のナット脱落防止具の連続部22の先端が引っ掛かっていた。
【0065】
[実施例12]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、間隙距離βは16.5ミリメートルであった。他の点は実施例8と同様であった。したがって、線径γに対する突出距離αの比であるα/γの値は「1.012」であった。
【0066】
(上下動実験)
実施例1と同様の手順で、ナット脱落防止具の取り出しとそのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の計数とが10回繰り返された。それら10回の計数における数珠繋ぎ数は0個であった。すなわち、それら10回の実験において、ナット脱落防止具は一度もつながっていなかった。
【0067】
[実施例13]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、間隙距離βは17.9ミリメートルであった。他の点は実施例8と同様であった。したがって、線径γに対する突出距離αの比であるα/γの値は「1.098」であった。
【0068】
(上下動実験)
実施例1と同様の手順で、ナット脱落防止具の取り出しとそのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の計数とが10回繰り返された。それら10回の計数における数珠繋ぎ数は9個であった。その際、あるナット脱落防止具のリング部20の交差箇所42と面形成部60の下端82との隙間100を他のナット脱落防止具のリング部20が貫通していた。
【0069】
[実施例14]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、間隙距離βは18.7ミリメートルであった。他の点は実施例8と同様であった。したがって、環状部40の差し渡しφAに対する間隙距離βの比であるβ/φAは「1.147」であった。
【0070】
(上下動実験)
実施例1と同様の手順で、ナット脱落防止具の取り出しとそのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の計数とが10回繰り返された。それら10回の計数における数珠繋ぎ数は56個であった。その際、あるナット脱落防止具のリング部20の交差箇所42と面形成部60の下端82との隙間100を他のナット脱落防止具のリング部20が貫通していた。
【0071】
[比較例1]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本比較例にかかるナット脱落防止具には対間材24が設けられていなかった。したがって、本比較例において突出距離αは存在しなかった。線径γに対する突出距離αの比であるα/γの値も存在しなかった。間隙距離βも存在しなかった。環状部40の差し渡しφAに対する間隙距離βの比であるβ/φAも存在しなかった。他の点は実施例8と同様であった。
【0072】
(上下動実験)
実施例1と同様の手順で、ナット脱落防止具の取り出しとそのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の計数とが10回繰り返された。それら10回の計数における数珠繋ぎ数は242個であった。その際、あるナット脱落防止具のリング部20に他のナット脱落防止具の連続部22の先端が引っ掛かっていた。
【0073】
[比較例2]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本比較例にかかるナット脱落防止具には対間材24が設けられていなかった。したがって、本比較例において突出距離αは存在しなかった。線径γに対する突出距離αの比であるα/γの値も存在しなかった。間隙距離βも存在しなかった。環状部40の差し渡しφAに対する間隙距離βの比であるβ/φAも存在しなかった。他の点は実施例1と同様であった。
【0074】
(上下動実験)
実施例1と同様の手順で、ナット脱落防止具の取り出しとそのナット脱落防止具に連なっていた他のナット脱落防止具の個数の計数とが10回繰り返された。それら10回の計数における数珠繋ぎ数は277個であった。その際、あるナット脱落防止具のリング部20に他のナット脱落防止具の連続部22の先端が引っ掛かっていた。
【0075】
図6は、実施例1乃至実施例14と比較例1乃至比較例2とにおける各箇所の大きさと数珠繋ぎ数とが示されている図である。
【0076】
図6によれば、α/γの値が「2」を超えると数珠繋ぎ数が大幅に多くなる。このことから、面形成部60,260が、次に述べられる位置よりも連続部22の先端側に達していることが望ましいと言える。その位置は、連続部22の先端から連続部22の付け根側へ向かう方向にあり突出距離αが線径γの2倍となる位置である。面形成部60,260が連続部22の先端に達していなくても、α/γの値が「2」以下(特にα/γの値が「2」未満)であると数珠繋ぎ数が大幅に少なくできる。この場合、連続部22の先端まで面形成部60,260が達している必要がなくなる分、本発明にかかるナット脱落防止具の生産が容易になる。
【0077】
また、
図6によれば、β/φAの値が1.1未満のとき数珠繋ぎ数が大幅に多くなる。このことから、間隙距離βが、環状部40の差し渡しφAの1.1倍未満かつ0を超えることが望ましいと言える。この場合、交差箇所42まで面形成部60,260が達している必要がなくなる分、本発明にかかるナット脱落防止具の生産が容易になる。