(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015546
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】正の誘電率異方性をもつ化合物、その化合物を含有する液晶組成物、および、その液晶組成物を用いた液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
C09K 19/12 20060101AFI20230125BHJP
C09K 19/02 20060101ALI20230125BHJP
C09K 19/34 20060101ALI20230125BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20230125BHJP
C09K 19/14 20060101ALI20230125BHJP
C09K 19/16 20060101ALI20230125BHJP
C09K 19/18 20060101ALI20230125BHJP
C09K 19/20 20060101ALI20230125BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C09K19/12
C09K19/02
C09K19/34
C09K19/30
C09K19/14
C09K19/16
C09K19/18
C09K19/20
G02F1/13 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119394
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】521051842
【氏名又は名称】株式会社JACTAコラボレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】弁理士法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼津 晴義
【テーマコード(参考)】
4H027
【Fターム(参考)】
4H027BA01
4H027BB03
4H027BB13
4H027BC04
4H027BD02
4H027BD03
4H027BD07
4H027BD10
4H027BE02
4H027BE04
4H027CE04
4H027CH04
4H027CN04
4H027CR04
4H027CT03
4H027CW03
(57)【要約】
【課題】応答性、透過性等の性能を向上させることができ、且つ、工程中の組成変化を抑制できる化合物、その化合物を用いた液晶組成物および液晶表示素子の提供。
【解決手段】[1]1分子中に2つ以上の炭素数をもつメチレンスペーサーによって区切られた2つの部位から成り、一方の部位は少なくとも2つ以上のフルオロ基を備え、双極子モーメントのベクトル和がその分子軸に対して水平方向に向かうよう構成されているポジ型であり、もう一方の部位は双極子モーメントのベクトル和が任意方向に向かうように構成されているポジ型であり、誘電率異方性が4より大きい化合物。[2]一般式(1)で表される化合物。[3]一般式(1)で表せる化合物を一種又は二種以上含有する液晶組成物。[4]前記液晶組成物を使用した、IPS型、FFS型又はTN型液晶表示素子。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも炭素原子をもつ所定のスペーサーによって区切られた2つの部位から成り、前記スペーサーおよび各々の前記部位の結合部から、各々の前記部位の末端へ向かう方向に沿った分子軸がそれぞれ規定され、
所定の正の誘電率異方性を有する化合物であって、
前記スペーサーは、
1分子中に2つ以上の炭素数をもつメチレンスペーサーであり、
前記メチレンスペーサーによって区切られた2つの前記部位のうちの一方は、
少なくとも2つ以上のフルオロ基を備え、前記一方の部位における双極子モーメントのベクトル和が前記一方の部位にて規定される前記分子軸に対して水平方向に向かうよう構成されており、且つ、前記一方の部位における誘電率異方性が正となるポジ型であり、
前記メチレンスペーサーによって区切られた2つの前記部位のうちの他方は、
前記他方の部位における双極子モーメントのベクトル和が任意方向に向かうように構成されており、
前記正の誘電率異方性の値が、4.0より大きいことを特徴とする化合物。
【請求項2】
前記メチレンスペーサーによって区切られた2つの前記部位から成る前記化合物として、
下記の一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は炭素原子数1から9のアルキル基又はアルコキシ基又は炭素原子数2から9のアルケニル基又はアルケニルオキシ基を表し、Y
1はF、Cl、OCF
3、OCF
2H、OCFH
2、CF
3又は炭素原子数1から5のアルキル基又はアルコキシ基又は炭素原子数3から5のアルケニル基又はアルケニルオキシ基を表し、Y
2およびY
3は各々独立して、F、又はHを表し、aおよびbは0、1、又は2を表し、環Aおよび環Bは、下記の構造式(a-1)から構造式(a-6)のうちのいずれかを表し、
【化2】
Z
1およびZ
2は各々独立して-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-CH
2CH
2-、-CF
2CF
2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、又は単結合を表わし、メチレンスペーサーを含む連結基Xは、-(CH
2)n-、-O-(CH
2)n-O-、-O-(CH
2)n-、-(CH
2)n-O-、-CF
2O-(CH
2)n-、-CF
2O-(CH
2)n-O-、-OCF
2-(CH
2)n-、又は-OCF
2-(CH
2)n-O-を表し、nは2から10を表す。)で表され、
2つの前記部位のうちの前記一方は、
前記一般式(1)において、前記連結基Xが含む前記メチレンスペーサーの一端と結合する原子から前記R
1を末端とする一連の部位であり、
2つの前記部位のうちの前記他方は、
前記一般式(1)において、前記連結基Xが含む前記メチレンスペーサーの他端と結合する原子から前記Y
1を末端とする一連の部位である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記一般式(1)における前記Z1および前記Z2は、
単結合である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記一般式(1)における前記環Aは、
前記構造式(a-1)のシクロヘキサン環、又は、前記構造式(a-2)のベンゼン環であり、
前記一般式(1)における前記環Bは、
前記構造式(a-2)のベンゼン環又は(a-3)のモノフルオロベンゼン環又(a-4)のジフルオロベンゼン環である請求項2または請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
少なくとも、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の化合物を一種又は二種以上含有する液晶組成物。
【請求項6】
下記の構造式(3-1)から構造式(3-6)
【化3】
(式中、R
5は炭素原子数1から9のアルキル基又は炭素原子数2から9のアルケニル基を表し、R
6は炭素原子数1から9のアルキル基又はアルコキシ基又は炭素原子数3から9のアルケニル基を表す。)の化合物のうちの一種又は二種以上、および、
下記の構造式(5-1)から構造式(5-17)
【化4】
(式中、R
9は炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表す。)の化合物のうちの一種又は二種以上を、更に含有する請求項5に記載の液晶組成物。
【請求項7】
前記構造式(3-1)から前記構造式(3-4)における前記R5は、
エチル基、プロピル基、エテニル基、又はプロペニル基であり、
前記構造式(3-5)および前記構造式(3-6)における前記R5は、
炭素原子数1から5のアルキル基、又はアルコキシ基であり、
前記構造式(3-1)から前記構造式(3-6)における前記R6は、
炭素原子数1から5のアルキル基、又はアルコキシ基であり、
前記構造式(5-1)から前記構造式(5-17)における前記R9は、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はペンチル基である請求項6に記載の液晶組成物。
【請求項8】
誘電率異方性(Δε)が1.5から5.0の間である請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項9】
誘電率異方性(Δε)が5.0から15の間である請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項10】
請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の液晶組成物を使用した液晶表示素子。
【請求項11】
IPS(イン・プレーン・スイッチング)型、FFS(フリンジ・フィールド・スイッチング)型、又はTN(ツイステッド・ネマチック)型である請求項10に記載の液晶表示素子。
【請求項12】
請求項8に記載の液晶組成物を使用した、FFS(フリンジ・フィールド・スイッチング)型である液晶表示素子。
【請求項13】
請求項9に記載の液晶組成物を使用した、IPS(イン・プレーン・スイッチング)型又はTN(ツイステッド・ネマチック)型である液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正の誘電率異方性をもつ化合物、当該化合物を含有する液晶組成物、および、当該液晶組成物を用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、自動車用パネル、ワードプロセッサー、電子手帳、プリンター、コンピューター、携帯電話、テレビ、広告表示板等に用いられるようになっている。液晶表示方式としては、その代表的なものにTN(ツイステッド・ネマチック)型、STN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)型、TFT(薄膜トランジスタ)を用いたMVA(マルチドメイン・バーティカル・アライメント)型、PSA(ポリマー・サステインド・アライメント)型、IPS(イン・プレーン・スイッチング)型、FFS(フリンジ・フィールド・スイッチング)等がある。これらの液晶表示素子に用いられる液晶組成物は水分、空気、熱、光などの外的要因に対して安定であること、また、室温を中心としてできるだけ広い温度範囲で液晶相を示し、低粘性であることが求められている。さらに液晶組成物は個々の表示素子に対して誘電率異方性(Δε)または屈折率異方性(Δn)等を要求される値とするなどの観点で、下記特許文献1に示すように、数種類から二十種類程度の化合物から構成されている。
【0003】
特に近年においては、高速応答性の液晶組成物が求められている。目的とする物性を達成する為には種々の方法が考えられるが、有効な手段として液晶組成物の低粘性化が挙げられる。液晶組成物の粘性を低下させる為には、粘度(η)の低い化合物を添加する事が極めて有効である。特に回転粘度(γ1)の低い化合物の添加が有効である。しかしながら、従来の粘性の非常に低い化合物は、誘電率異方性が0付近の非極性の化合物がほとんどであり、これを多く使用すると誘電率異方性が低下してしまう。したがって、所望する誘電率異方性を達成するためには、さほど多くは使用できなかった。したがって、低粘性で正の誘電率異方性の液晶組成物を作製するためには、従来の化合物に比べて、より回転粘度が低い正の誘電率異方性の化合物の開発が求められている。さらに、前記化合物には、液晶組成物への相溶性が優れていることも求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、従来の化合物に比べて、より回転粘度が低く、比較的大きな正の誘電率異方性を有し、液晶組成物への相溶性に優れた化合物、その化合物を用いた液晶組成物、および、液晶表示素子の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために、少なくとも炭素原子をもつ所定のスペーサーによって区切られた2つの部位から成り、スペーサーおよび各々の部位の結合部から、各々の部位の末端へ向かう方向に沿った分子軸がそれぞれ規定され、所定の正の誘電率異方性を有する化合物を提供する。
【0007】
本発明の化合物の特徴は、スペーサーが、1分子中に2つ以上の炭素数をもつメチレンスペーサーであり、メチレンスペーサーによって区切られた2つの部位のうちの一方は、少なくとも2つ以上のフルオロ基を備え、一方の部位における双極子モーメントのベクトル和が分子軸に対して水平方向に向かうよう構成され、且つ、一方の部位における誘電率異方性が正となるポジ型であり、メチレンスペーサーによって区切られた2つの部位のうちの他方は、他方の部位における双極子モーメントのベクトル和が任意方向に向かうように構成されており、正の誘電率異方性の値が、4.0より大きいことにある。
【0008】
ここにおいて、上記「正の誘電率異方性の値が、4.0より大きい」とは、一方及び他方の部位を含む全体の化合物における正の誘電率異方性が、4.0より大きい、ということを意味している。また、正の誘電率異方性の値を求める手法は任意であり、例えば、一般的な外挿法等が用いられてもよい。また、他方の部位における双極子モーメントのベクトル和は、任意方向に向かっていればよく、例えば、他方の部位における分子軸に対して水平方向に向かっていてもよいし、ベクトル和がゼロであってもよく、これらに限定されない。
【0009】
本発明は、メチレンスペーサーによって区切られた2つの部位から成る前述の化合物であって、より好ましき化合物として、下記一般式(1)で表される化合物を提供する。
【0010】
【化1】
(式中、R
1は炭素原子数1から9のアルキル基又はアルコキシ基又は炭素原子数2から9のアルケニル基又はアルケニルオキシ基を表し、Y
1はF、Cl、OCF
3、OCF
2H、OCFH
2、CF
3又は炭素原子数1から5のアルキル基又はアルコキシ基又は炭素原子数3から5のアルケニル基又はアルケニルオキシ基を表し、Y
2およびY
3は各々独立して、F、又はHを表し、aおよびbは0、1、又は2を表し、環Aおよび環Bは、下記の構造式(a-1)から構造式(a-6)のうちのいずれかを表し、
【0011】
【化2】
Z
1およびZ
2は各々独立して-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-CH
2CH
2-、-CF
2CF
2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、又は単結合を表わし、メチレンスペーサーを含む連結基Xは、-(CH
2)n-、-O-(CH
2)n-O-、-O-(CH
2)n-、-(CH
2)n-O-、-CF
2O-(CH
2)n-、-CF
2O-(CH
2)n-O-、-OCF
2-(CH
2)n-、又は-OCF
2-(CH
2)n-O-を表し、nは2から10を表す。)
【0012】
上記一般式(1)において、前述の2つの部位は、連結基Xが含むメチレンスペーサーの一端と結合する原子からR1を末端とする一連の部位(一方の部位に相当)と、連結基Xが含むメチレンスペーサーの他端と結合する原子からY1を末端とする一連の部位(他方の部位に相当)とから成る。
【0013】
また、本発明は前述の4.0より大きい正の誘電率異方性を有する化合物を一種又は二種以上含有する液晶組成物を提供する。好ましくは、前記一般式(1)で表される化合物を一種又は二種以上含有する液晶組成物を提供する。さらに、本発明は、前記液晶組成物を使用した液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、比較的大きな正の誘電率異方性を有し、従来の化合物より回転粘度が低く、液晶組成物への相溶性に優れている化合物を得ることができる。また、その化合物を液晶組成物の材料として用いた場合に、液晶組成物の粘性を従来よりも低下させることができる。したがって、本発明の液晶組成物は、所望の正の誘電率異方性を有する低粘性の液晶組成物となり得る。また、本発明の化合物は、液晶組成物に対する相溶性に優れるため、その化合物を含む本発明の液晶組成物は、低温で結晶が析出しにくく、ネマチック液晶相の低温保存性に優れている。本発明の液晶組成物は低粘性であるため、この液晶組成物により構成された本発明の液晶表示素子は、高速応答性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のより好ましき化合物の例として、前記一般式(1)に対応する下記の構造式(1-1)から構造式(1-25)をあげる。
【0016】
【化3】
(式中、R
1、Y
1および連結基Xは、式(1)のR
1、Y
1および連結基Xと同じ意味を表す。)
【0017】
前記R1の好ましきは炭素数1~5のアルキル基又はアルケニル基又はアルコキシ基であり、より好ましくはエチル基又はプロピル基又はブチル基又はペンチル基又はエテニル基又はプロペニル基又はメトキシ基又はエトキシ基又はプロポキシ基であり、前記Y1の好ましきはF又はOCF3又はOCF2H又はメチル基又はエチル基又はプロピル基であり、前記連結基Xの好ましきは、-O-(CH2)2-O-、-O-(CH2)4-O-、-(CH2)2-、-(CH2)4-、-(CH2)6-、-O-(CH2)3-、-O-(CH2)5-、-(CH2)3-O-、-(CH2)5-O-である。
【0018】
本実施形態においては、液晶組成物に含有される化合物を、液晶化合物と称呼することもある。また、誘電率異方性が正の値となる液晶組成物を、ポジ型液晶組成物と称呼することもある。本発明の液晶組成物のうちIPS型やFFS型、TN型等の液晶表示素子に用いられるポジ型液晶組成物は、前述の本発明にかかる液晶化合物(例えば、本発明の実施形態における構造式(1-1)~(1-25)の化合物)を一種又は二種以上含有し、前記化合物に加えて、誘電率異方性(以下、単に「Δε」とも称呼する。)が0付近(概ね-2から+2程度)の従来公知の液晶化合物およびΔεが+3より大きい正のΔεを有する従来公知の液晶化合物を含有することが好ましい。
【0019】
本発明のポジ型液晶組成物に含有されるΔεが0付近(概ね-2から+2程度)の従来公知の好ましき液晶化合物の例として、下記の構造式(3-1)から構造式(3-6)をあげる。このうち一種又は二種以上含有されることが好ましい。
【0020】
【化4】
(式中、R
5は炭素原子数1から9のアルキル基又は炭素原子数2から9のアルケニル基を表わし、R
6は炭素原子数1から9のアルキル基又はアルコキシ基又は炭素原子数3から9のアルケニル基を表し、さらに好ましきは、R
5はエチル基又はプロピル基又はエテニル基又はプロペニル基を表し、R
6は炭素原子数1から5のアルキル基又はアルコキシ基を表す。)
【0021】
本発明のポジ型液晶組成物に含有される+3より強い正のΔεを有する化合物の従来公知の好ましき液晶化合物の例として、下記の構造式(5-1)から構造式(5-17)をあげる。このうち一種又は二種以上含有されることが好ましい。
【0022】
【化5】
(式中、R
9は炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表わし、さらに好ましきは、エチル基又はプロピル基又はエテニル基又はプロペニル基を表す。)
【0023】
本発明のポジ型液晶組成物は、一般式(1)で表わされる化合物のうち一種又は二種以上、および、Δεが0付近(概ね-2から+2程度)の構造式(3-1)から構造式(3-6)の化合物のうち一種又は二種以上、および、+3より強いΔεを有する構造式(5-1)から構造式(5-17)の化合物のうち一種又は二種以上を含有することが好ましい。
【0024】
本発明のポジ型液晶組成物を使用した液晶表示素子としては、液晶表示素子が、二枚の基板の間に液晶材料を挟持して液晶を基板に略平行で一枚の基板上にある電極に略平行に配向するIPS型とFFS型であると好ましい。さらに、二枚の基板の間に液晶材料を挟持して液晶を基板に略平行で電極に略平行に配向するTN型であっても好ましい。また、液晶表示素子がFFS型である場合、用いられるポジ型液晶組成物のΔεが、1.5から5.0の間であると好ましい。また、液晶表示素子がIPS型又はTN型である場合、用いられるポジ型液晶組成物のΔεが、5.0から15の間であると好ましい。また、本液晶組成物を使用した液晶表示素子は、高速応答を要求される液晶テレビや液晶モニターや低温で高速の応答が要求される車載用ディスプレイやPID(パブリック・インフォメーション・ディスプレイ)への応用に適している。
【実施例0025】
(実施例1)
式(1-2)においてR1=C3H7-、Y1=-F、X=-O-(CH2)2-O-の化合物の合成
【0026】
【化6】
(上記式中、DIADはアゾジカルボン酸ジイソプロピルを表し、TPPはトリフェニルホスフィンを表す。)
【0027】
3,5-ジフルオロ-4-(trans-4-プロピルシクロヘキシル)フェノール(5.04g)、2-(3,4,5-トリフルオロフェニルオキシ)エタノール(1.93g)及びトリフェニルホスフィン(6.0g)をTHF(25mL)に溶解させ、-10℃に冷却した。DIAD(4.4g)を、内温が15℃以上とならない速度で加え、室温にてさらに2時間撹拌した。水(1mL)を加えて10分撹拌し、反応液を減圧下濃縮した。ヘキサン(60mL)、トルエン(20mL)及び70%ターシャリーブチルヒドロぺルオキシド水溶液(0.8g)を加えて、室温にて1時間撹拌した。析出物を除去し、溶媒を減圧留去した。続いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらにエタノールから再結晶する事で、式(1-2-1)の化合物を白色固体として4.9g得た。
【0028】
(実施例2)
式(1-2)においてR1=C3H7-、Y1=-F、X=-O-(CH2)4-O-の化合物の合成
【0029】
(実施例1)と同様にして、式(1-2-2)の化合物を4.8g得た。
【化7】
【0030】
(実施例3)
式(1-4)においてR1=C3H7-、Y1=-F、X=-O-(CH2)2-O-の化合物の合成
【0031】
(実施例1)と同様にして、式(1-4-1)の化合物を4.9g得た。
【化8】
【0032】
(実施例4)
式(1-4)においてR1=C3H7-、Y1=-F、X=-O-(CH)3-の化合物の合成
【0033】
(実施例1)と同様にして、式(1-4-2)の化合物を4.7g得た。
【化9】
【0034】
(実施例5)
式(1-4-1)及び式(1-4-2)の本発明の化合物を用いて、表1のポジ型液晶組成物(1)(以下、単に「組成物(1)」とも称呼する。)を作製した。表1は、液晶組成物が含有する化合物における組成比率を示している。
【0035】
液晶組成物(1)の物性値は以下の通りであった。誘電率異方性(Δε)および屈折率異方性(Δn)は25℃で測定し、粘度(η20)および回転粘度(γ1)は20℃で測定した。
ネマチック相上限温度(Tn-i):75.2℃
誘電率異方性(Δε):9.6
屈折率異方性(Δn):0.10
粘度(η20):11.2mPa・s
回転粘度(γ1):64mPa・s
【0036】
(比較例1)
(実施例5)の比較例として従来の液晶化合物から成る表1のポジ型液晶組成物(2)(以下、単に「組成物(2)」とも称呼する。)を作製した。
【0037】
液晶組成物(4)の物性値は以下の通りであった。
ネマチック相上限温度(Tn-i):75.3℃
誘電率異方性(Δε):9.6
屈折率異方性(Δn):0.10
粘度(η20):12.5mPa・s
回転粘度(γ1):73mPa・s
【0038】
【0039】
表1の式(3-1-4)、式(3-1-5)、式(3-3-3)、式(5-11-1)、式(5-12-1)、式(5-15-1)、式(5-15-2)、および、式(5-15-3)の化合物は下記の化合物を示す。
【化10】
【0040】
実施例(5)のポジ型の液晶組成物(1)の回転粘度(γ1)は、64mPa・sであり、比較例(1)の組成物(2)の回転粘度(γ1)73mPa・sより明らかに低くなっている。これは、ポジ型の液晶組成物(1)が、上記実施例(3)の式(1-4-1)の液晶化合物および上記実施例(4)の式(1-4-2)の液晶化合物をそれぞれ含有していることに基づく。このことから、本発明の液晶化合物およびそれを含有する液晶組成物は、ポジ型液晶を用いるFFS型やIPS型、TN型等の液晶表示素子に用いられる場合において、液晶表示素子の高速応答性の点で有効であることは明白である。
【0041】
このように、上述した液晶化合物によれば、液晶組成物に用いられることで、応答性を向上させることができる。加えて、上述した液晶化合物は他の液晶化合物との相溶性に優れており、容易に所望の低粘性の液晶組成物を作製できる。