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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155470
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】操作子及び電子楽器
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/32 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
G10H1/32 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142110
(22)【出願日】2023-09-01
(62)【分割の表示】P 2022039931の分割
【原出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 乙也
(57)【要約】
【課題】外部から過度な荷重が加えられた場合であっても破損や脱落等が発生し難い操作子及びそのような操作子を備える電子楽器を提供する。
【解決手段】左ケース36の内部フレーム37に固定されるピッチベンダー40であって、回転可能な可変抵抗器41と、可変抵抗器41に回転操作可能に取り付けられた操作ホイール44と、可変抵抗器41を内部フレーム37に固定する固定金具42と、を備え、固定金具42は、可変抵抗器41と接続されて可撓性を有する抵抗固定部42b2を有する。操作ホイール44の一部に異常荷重が加えられた場合、当該荷重に応じて抵抗固定部42b2が撓み、当該荷重が分散される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な有軸部と、
前記有軸部に回転操作可能に取り付けられた操作部と、
前記有軸部を装置に固定する固定部と、を備え、
前記固定部は、前記有軸部と接続されて可撓性を有する可撓部を有する、
操作子。
【請求項2】
前記有軸部は、軸周りに回転可能な軸状部を有し、
前記固定部は、前記可撓部の両側に前記軸状部の軸方向と直交する方向に開放された一対のスリットを有する、
請求項1に記載の操作子。
【請求項3】
前記有軸部は、軸周りに回転可能な軸状部を有し、
前記軸状部の軸方向と直交する方向において前記操作部の一部と近接し、該操作部の一部を支持可能な支持部を備え、
前記支持部は前記装置に固定されている、
請求項1又は2に記載の操作子。
【請求項4】
前記操作部は、前記軸方向において前記可撓部と前記支持部との間に挟み込まれる形で設けられている、請求項3に記載の操作子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の操作子と、
装置と、を備える
電子楽器。
【請求項6】
前記操作子は前記装置に収納され、
前記装置は、前記操作部の一部が露出する開口部が設けられたパネル部材を有する、
請求項5に記載の電子楽器。
【請求項7】
前記装置は、前記操作子が収納される内面側に前記固定部が固定されるフレーム部材を有する、請求項6に記載の電子楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作子及び電子楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子ピアノ等の電子楽器において、楽音にピッチベンド等の演奏効果を付与するための操作子を備え、操作子が固定部材を介して電子楽器の筐体に固定されるものが知られている。例えば特許文献1には、回転式の可変抵抗器を有する多機能操作ホイール(操作子)を備える電子鍵盤楽器が開示されている。この電子鍵盤楽器では、多機能操作ホイールの可変抵抗器がブラケットを介して電子鍵盤楽器のケースの一部に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-249655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
操作子を備える電子楽器では、演奏者による操作子の操作を可能とするために、操作子の一部が電子鍵盤楽器のケースから露出される。このようにケースから露出した操作子の一部は、外部からの衝撃等を受け易い。特許文献1の電子鍵盤楽器のように操作子が固定部材を介して筐体の一部に固定される構成では、筐体から露出する操作子の一部に外部からの衝撃等により過度な荷重が加えられた場合、操作子を構成する各部材に荷重が集中し、操作子を構成する各部材の破損や脱落等が発生する虞があった。
【0005】
本発明は、外部から過度な荷重が加えられた場合であっても破損や脱落等が発生し難い操作子及びそのような操作子を備える電子楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の操作子は、回転可能な有軸部と、前記有軸部に回転操作可能に取り付けられた操作部と、前記有軸部を装置に固定する固定部と、を備え、前記固定部は、前記有軸部と接続されて可撓性を有する可撓部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外部から過度な荷重が加えられた場合であっても破損や脱落等が発生し難い操作子及びそのような操作子を備える電子楽器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る電子鍵盤楽器の全体斜視図である。
図2】実施形態に係る電子鍵盤楽器における左ケースを右側上方から見た斜視図である。
図3】実施形態に係る電子鍵盤楽器における左ケースを右側下方から見た斜視図である。
図4】実施形態に係るピッチベンダーを右側前方から見た斜視図である。
図5】実施形態に係るピッチベンダーを左側前方から見た斜視図である。
図6】実施形態に係るピッチベンダーの分解斜視図である。
図7】実施形態に係るピッチベンダーの操作ホイールを右側から見た側面図であって、操作ホイールの回転態様を示す側面図である。
図8】実施形態に係るピッチベンダーの断面図であって、図4におけるVIII-VIII断面の断面図である。
図9】実施形態に係るピッチベンダーの断面図であって、図8に対応する断面において操作ホイールに対して右方向に荷重が加わった場合の様子を示す断面図である。
図10】実施形態に係るピッチベンダーの断面図であって、図8に対応する断面において操作ホイールに対して左方向又は下方向に荷重が加わった場合の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1に示す電子鍵盤楽器(電子楽器)10は、複数の白鍵と複数の黒鍵を有する鍵盤部20、及びケース(装置)30を備えている。ケース30の内部には、図示しない制御基板等が収納される。なお、各図には座標軸を示しており、以下では、各図におけるX軸方向を電子鍵盤楽器10の左右方向(X軸正方向を左方向とする)とし、各図におけるY軸方向を電子鍵盤楽器10の前後方向(Y軸正方向を前方向とする)とし、各図におけるZ軸方向を電子鍵盤楽器10の上下方向(Z軸正方向を上方向とする)として説明する。
【0010】
ケース30は、左右方向を長手方向とする横長矩形状であり、合成樹脂製とされ、上ケース32、下ケース34、左ケース36、及び右ケース38に分割される。上ケース32の上面の一部には、楽音のボリュームを制御するためのダイヤル12が設けられている。図2に示すように、左ケース36は、その上面を構成する上面パネル(パネル部材)36a、及びその側壁を構成するケース側壁36bを有している。上面パネル36aの前側部分には、楽音にピッチベンドを付与して制御するためのピッチベンダー(操作子)40の一部(後述する操作ホイール44)が露出する操作開口部(開口部)36a1が設けられている。上面パネル36aの後側部分には、ピッチベンダー40に設けられた各LED43a~43c(図6等参照)の発光を開始又は停止するための発光ボタン14、及び各種設定用の設定ボタン16が設けられている。また、ケース側壁36bの前面には、イヤホンジャック18が設けられている。
【0011】
左ケース36の内面側には、フレーム状の部材である内部フレーム(フレーム部材)37が設けられている。内部フレーム37の内側には、発光ボタン14及び設定ボタン16の押下動作等を受け付ける第1基板37a、イヤホンジャック18における挿抜動作を受け付ける第2基板37b、及びピッチベンダー40等が取り付けられている。ピッチベンダー40は、その一部が操作開口部36a1から露出した状態で左ケース36の内面側に収納され、第1固定ネジS1及び第2固定ネジS2により内部フレーム37の内側に固定される(図3参照)。第1基板37aと第2基板37bの間、及び第1基板37aとピッチベンダー40の間は図示しない接続配線により電気的に接続されている。また、第1基板37a及び第2基板37bは、図示しない接続配線により電子鍵盤楽器10の制御基板と電気的に接続されている。
【0012】
ピッチベンダー40の構成について詳しく説明する。図4図6に示すように、ピッチベンダー40は、可変抵抗器(有軸部)41と、固定金具(固定部)42と、光源基板43と、操作ホイール(操作部)44と、トーションばね45と、保持部材(保持部)46とを備えている。操作ホイール44は、略円板状をなしており、ホイール部材47、導光部材48、及びホイール部材47と導光部材48との間を貼り合わせるための両面テープ49を有している(図5参照)。左ケース36の操作開口部36a1からは、操作ホイール44の上側部分が露出する。
【0013】
可変抵抗器41は、回転可能なロータリー式の可変抵抗器であり、センサ前部41a、センサ後部41b、軸状部41c、及びセンサ前部41aの下側から延びる3つの配線接続部41dを有している。センサ前部41aは略円柱状をなしており、センサ後部41bはセンサ前部41aより細い略円筒状をなしてセンサ前部41aの左側から左方に突出している。センサ前部41a及びセンサ後部41bは、回転角度センサを構成している。
【0014】
軸状部41cは、左右方向に沿って軸状に延びており、右側端部がセンサ後部41bの円筒内側に挿入され、その軸周りに回転可能とされている。軸状部41cは、センサ後部41bから露出する部分の断面がセンサ後部41bとの境界部近傍を除いて略半月状とされている。各配線接続部41dには、第1基板37aと接続された接続配線が接続される。可変抵抗器41は、センサ前部41a及びセンサ後部41bにおいて軸状部41cの回転に応じて変化する抵抗値から軸状部41cの回転角度を検出し、その回転角度を電気信号に変換して接続配線を介して第1基板37aに出力する。
【0015】
固定金具42は、ピッチベンダー40を構成する各部材を互いに固定するとともにピッチベンダー40を内部フレーム37に固定するための金具であり、その断面が略L字状となっている。固定金具42は、両板面を上下方向に向けた姿勢で配置される平板状の平板部42a、平板部42aの右側端部から両板面を左右方向に向けた姿勢で平板状に立ち上がる立壁部42bを有している。また、固定金具42は、平板部42aの左側端部の一部から下方に延びるネジ孔が設けられた第1ネジ止め部42c、及び立壁部42bの立ち上がり先端部の前後両側からそれぞれ右方に平板状に延びるネジ孔が設けられた第2ネジ止め部42dを有している。
【0016】
第1ネジ止め部42cは、内部フレーム37の内側側面に当接され、そのネジ孔内に第1固定ネジS1が左右方向に沿って挿通される。第2ネジ止め部42dは、内部フレーム37の内側上面に当接され、そのネジ孔内に第2固定ネジS2が上下方向に沿って挿通される。このように固定金具42は、第1ネジ止め部42c及び第2ネジ止め部42dがそれぞれ第1固定ネジS1及び第2固定ネジS2により内部フレーム37の内側にネジ止めされることにより、内部フレーム37に対して強固に固定される。
【0017】
両第2ネジ止め部42dが延びる立壁部42bの内側には、上方向(軸状部41cの軸方向と直交する方向)に開放されて上下方向に沿って延びる一対のスリット42b1が、平板部42a近傍に至るまで設けられている。両スリット42b1の内側には、両第2ネジ止め部42dよりも上方に延びる平板状の抵抗固定部(可撓部)42b2が設けられている。換言すれば、抵抗固定部42b2の前後両側には、一対のスリット42b1が設けられている。
【0018】
抵抗固定部42b2のうち両第2ネジ止め部42dよりも上方に位置する部位には、円形状に開口し、可変抵抗器41のセンサ後部41bが挿通される固定開口部42b3が設けられている。可変抵抗器41は、センサ後部41bが固定開口部42b3に挿通された状態でボルト締めされることにより、抵抗固定部42b2に接続される。抵抗固定部42b2は、その両側にスリット42b1が設けられていることにより、固定金具42が内部フレーム37に固定された状態において、固定金具42の他の部位に比して左右方向(軸状部41cの軸方向)における可撓性を有している。
【0019】
光源基板43は、両板面を上下方向に向けた姿勢で配置される平板状のプリント基板である。光源基板43は、固定金具42の平板部42a上に配置され、ネジ止めにより平板部42aに対して固定される。光源基板43上には、それぞれ異なる波長帯域光を出射する3つのLED(光源部)43a,43b,43cが設けられている。各LED43a~43cは、前後方向に沿って直線状に等間隔で配置されており、光源基板43の上方に向けて光を出射する。また、光源基板43の下面には略直方体状の光源接続部43dが設けられている(図3参照)。光源接続部43dには、第1基板37a側から延びる接続配線が接続される。なお、固定金具42における平板部42aと光源基板43との間には、両者の間を絶縁するための絶縁板IPが挟み込まれる。
【0020】
操作ホイール44は、可変抵抗器41の軸状部41cに取り付けられ、軸状部41cと共に軸状部41cの軸周りに回転する。操作ホイール44の上面の一部には、略円弧状に凹んでなる操作凹部44aが設けられている。操作凹部44aは、左ケース36の操作開口部36a1から露出しており、操作者が操作ホイール44を回転操作する際、指等を載せることで回転操作し易いように設けられている。図7に示すように、操作ホイール44は、操作凹部44aが鉛直上方に向けられた姿勢が初期状態P0とされ、初期状態P0から軸状部41cの軸周りに前方側へ45度回転させた第1状態P1、後方側へ45度回転させた第2状態P2、の範囲内で回転操作することができる。
【0021】
操作ホイール44のホイール部材47は、合成樹脂製とされ、下側部分において円の1/4程度が欠けた略扇形状の板状部材である。ホイール部材47の端縁のうち下側部分を除いた部分には、右方に向けて壁状にわずかに延びる外壁部47aが設けられている(図5参照)。外壁部47aの上側部分の前後方向中央部には、円弧状に凹んでなり、操作凹部44aの一部を構成するホイール側凹部47a1が設けられている。ホイール部材47の略中心部には、軸状部41cの断面形状に沿って略半月状に開口し、左右方向に貫通するホイール側貫通孔47bが設けられている。ホイール部材47は、ホイール側貫通孔47bに軸状部41cが挿通されることにより、軸状部41cに対して固定される。
【0022】
また、ホイール部材47の左側板面におけるホイール側貫通孔47bの周りには、左方に張り出すホイール側張出部47cが設けられている。ホイール側張出部47cは、ホイール部材47を上方側から見たときにホイール側貫通孔47bが隠れるように左側から見て略L字状に設けられている。また、ホイール部材47の左側板面には、左方に向けて略円筒状に突出するばね固定部47dが設けられている(図5参照)。上述したホイール側貫通孔47bは、ばね固定部47dの内側を貫通する形で設けられている。ばね固定部47dの下側には、両板面を上下方向に向けた姿勢で左方に略平板状に張り出す第1ばね当接部47eが設けられている。第1ばね当接部47eの板面は、下側に凸となるように緩やかに湾曲している。
【0023】
操作ホイール44の導光部材48は、略円板状をなしており、透光性に優れた材料(例えばアクリル樹脂)で設けられている。図7に示すように、導光部材48は、各LED43a~43cとの間にわずかな隙間を設けた形で光源基板43の上方に配置され、各LED43a~43cから出射された光を上方へ導光する。導光部材48は、その左側板面がホイール部材47の外壁部47aの内側に位置する板面に両面テープ49を介して貼り付けられ、ホイール部材47と共に軸状部41cの軸周りに回転する。両面テープ49の略中央部には、軸状部41cが挿通されるテープ側貫通孔49aが設けられている。このようにホイール部材47は、導光部材48の一方の板面側に配置されて導光部材48を支持している。
【0024】
導光部材48の端縁48aには、その上側部分の前後方向中央部に、ホイール側凹部47a1と略同形状で略円弧状に凹んでなり、操作凹部44aの一部を構成する導光側凹部48a1が設けられている。導光部材48の略中央部には、左右方向に貫通する導光側貫通孔48bが設けられている。導光部材48は、導光側貫通孔48bに軸状部41cが挿通され、ホイール部材47と共に軸状部41cの軸周りに回転する。導光部材48の右側板面における導光側貫通孔48bの周りには、右方に張り出す導光側張出部48cが設けられている。導光側張出部48cは、導光部材48を上方側から見たときに導光側貫通孔48bが隠れるように右側から見て略L字状に設けられている。
【0025】
トーションばね45は、コイルばね部45aと一対の付勢部45bを有している。コイルばね部45aは、コイルばねであり、ばね固定部47dの外周面周りに巻かれた状態でばね固定部47dに固定されている。コイルばね部45aの両端は、ばね固定部47dの下方まで延びている。一対の付勢部45bは、コイルばね部45aの両端に挿通された細長い円筒状のゴム部材によりなっている。一対の付勢部45bは、操作ホイール44が初期状態P0の位置とされている場合、その内側部分が第1ばね当接部47eを挟持する形で第1ばね当接部47eを付勢しながら第1ばね当接部47eと当接する。
【0026】
保持部材46は、合成樹脂製とされ、トーションばね45の位置を保持するための部材である。保持部材46は、底部46a及び側板部46bを有している。底部46aは、光源基板43の上方に配置され、各LED43a~43cの光出射側を覆わないような形状とされている。底部46aの前後両側は上方に向けてブロック状にわずかに立ち上がっており、その内面が操作ホイール44の外周面に沿って曲面状に凹んでいる。底部46aは、間に光源基板43及び絶縁板IPを挟み込む形で固定金具42の平板部42aに対してネジ止めにより固定されている。従って、保持部材46は、固定金具を介して内部フレーム37に固定される。
【0027】
側板部46bは、両板面を左右方向に向けた姿勢で底部46aの左側端部からホイール部材47のばね固定部47dに至るまで平板状に立ち上がっている。側板部46bの先端部には、ばね固定部47dの外周面に沿って略円弧状に切り欠かれたホイール受け部(支持部)46b1が設けられている。ホイール受け部46b1は、上下方向及び左右方向(軸状部41cの軸方向と直交する方向)においてばね固定部47dとの間にわずかな隙間を設けて近接している。このため、ホイール受け部46b1は、ばね固定部47dが下方(軸状部41cの軸方向と直交する方向)側に傾いた場合にばね固定部47dを支持可能となっている。操作ホイール44は、軸状部41cの軸方向において抵抗固定部42b2とホイール受け部46b1との間に挟み込まれる形で配置される(図8参照)。
【0028】
また、側板部46bの右側板面のうち第1ばね当接部47eより下側に位置する部分には、両板面を上下方向に向けた姿勢で右方に略平板状に張り出す第2ばね当接部46cが設けられている。第2ばね当接部46cの板面は、下側に凸となるように緩やかに湾曲しており、第1ばね当接部47eと略等しい幅とされている。トーションばね45の一対の付勢部45bは、操作ホイール44が初期状態P0の位置とされている場合、第1ばね当接部47eの下側において、その内側部分が第2ばね当接部46cを挟持する形で第2ばね当接部46cを付勢しながら第2ばね当接部46cと当接する。
【0029】
以上のような構成とされたピッチベンダー40では、操作ホイール44が回転操作されると、可変抵抗器41の軸状部41cが操作ホイール44と連動し、軸状部41cがその軸周りに回転する。軸状部41cが回転すると、可変抵抗器41がその回転角度を電気信号に変換し、当該電気信号を第1基板37aに出力する。第1基板37a側に出力された電気信号は、第1基板37aを介して電子鍵盤楽器10の制御基板に出力され、制御基板で解析制御されて、電子鍵盤楽器10の楽音に操作ホイール44の回転角度に応じたピッチベンド効果が付与される。
【0030】
また、ピッチベンダー40では、操作ホイール44が前方側に回転操作された場合、ホイール側張出部47cがトーションばね45の前方側の付勢部45bを間に挟む形で第2ばね当接部46cの前方側と間接的に当接し、操作ホイール44が初期状態P0から前方側に45度回転した第1状態P1で操作ホイール44の前方側への回転が規制される。同様に操作ホイール44が後方側に回転操作された場合、ホイール側張出部47cがトーションばね45の後方側の付勢部45bを間に挟む形で第2ばね当接部46cの後方側と間接的に当接し、操作ホイール44が初期状態P0から後方側に45度回転した第2状態P2で操作ホイール44の後方側への回転が規制される。なお、操作ホイール44を回転操作可能な範囲内では、操作ホイール44に設けられたホイール側張出部47c及び導光側張出部48cにより、操作開口部36a1から光源基板43等が視認されることが防止される。
【0031】
また、ピッチベンダー40では、操作ホイール44が回転操作されると、トーションばね45の一対の付勢部45bのうち一方側は第1ばね当接部47eと当接した状態で第2ばね当接部47eから離間して回転し、他方側は第2ばね当接部47eと当接した状態で第1ばね当接部47eから離間して、一対の付勢部45bの間隔が広がる。このため、操作ホイール44が初期状態P0から回転操作された状態では、操作ホイール44の操作凹部44aから指等を離すと、トーションばね45の弾性復帰力により、操作ホイール44が初期状態P0の位置まで戻るようになっている。即ち、保持部材46(第2ばね当接部47e)によりトーションばね45の位置が保持される。
【0032】
また、ピッチベンダー40では、制御基板により、楽音に付与されるピッチベンド効果や他の操作態様等に応じて各LED43a~43cの発光態様が制御される。具体的には、制御基板は、各LED43a~43cの発光色や発光間隔等を変化させる制御を行う。各LED43a~43cから出射された光は、導光部材48の端縁48aの下側部分から入射して拡散され、導光部材48内でその径方向に導光される。導光部材48内で導光された光は、導光部材48の端縁48aの上側部分から出射され、演奏者が視認できるようになっている(図8で示す光路L1参照)。これにより、演奏者は、電子鍵盤楽器10の楽音制御状態を知ることができる。
【0033】
次に、ピッチベンダー40において、操作ホイール44の操作開口部37a1から露出する部分(以下、「露出部分」という。)に外部から異常荷重が加えられた場合に、当該荷重が分散される態様について説明する。なお、本明細書でいう「異常荷重」とは、通常の操作ホイール44の回転操作では加えられないような過度な荷重をいい、電子鍵盤楽器10の転倒等による衝撃等、偶発的な事象に起因して加えられる荷重をいう。
【0034】
図9に示すように、露出部分に対して右方向寄りの荷重Faが加えられた場合、操作ホイール44に挿通された可変抵抗器41に操作ホイール44を介して当該荷重Faが伝わり、可変抵抗器41を固定する固定金具42の抵抗固定部42b2が右側に撓む。抵抗固定部42b2が右側に撓むと、操作ホイール44が右側に傾いて導光部材48の右側板面が上面パネル36aに設けられた操作開口部36a1の開口端に当接し、抵抗固定部42b2の撓みが途中で停止する。このように抵抗固定部42b2が右側に撓むことにより、露出部分に加えられた右方向寄りの荷重Faが分散される。
【0035】
また、図10に示すように、露出部分に対して左方向寄りの荷重Fbが加えられた場合、可変抵抗器41に操作ホイール44を介して当該荷重Fbが伝わり、固定金具42の抵抗固定部42b2が左側に撓む。抵抗固定部42b2が左側に撓むと、操作ホイール44が左側に傾いてホイール部材47の左側が上面パネル36aに設けられた操作開口部36a1の開口端に当接し、抵抗固定部42b2の撓みが途中で停止する。このように抵抗固定部42b2が左側に撓むことにより、露出部分に加えられた左方向寄りの荷重Fbが分散される。
【0036】
また、ピッチベンダー40では、可変抵抗器41の軸状部41cが挿通されたホイール側貫通孔47b及び導光側貫通孔48bは、可変抵抗器41のセンサ後部41bが固定された固定開口部42b3(抵抗固定部42b2)よりも左側に位置している。このため、図10に示すように、露出部分に対して下方向寄りの荷重Fcが加えられた場合、当該荷重Fcが左方向と下方向に分散され、可変抵抗器41に操作ホイール44を介して当該分散された荷重Fbが伝わる。これにより、固定金具42の抵抗固定部42b2が左側に撓みつつ、操作ホイール44が下方向寄りに傾く。操作ホイール44が下方向寄りに傾くと、ばね固定部47dが保持部材46のホイール受け部46b1と当接し、ばね固定部47dがホイール受け部46b1に支持されて抵抗固定部42b2の撓みが途中で停止する。このように抵抗固定部42b2が左側に撓むことにより、露出部分に加えられた下方向寄りの荷重Fcが分散される。
【0037】
以上説明したように本実施形態に係るピッチベンダー40は、左ケース36の内部フレーム37に固定されるピッチベンダー40であって、回転可能な可変抵抗器41と、可変抵抗器41に回転操作可能に取り付けられた操作ホイール44と、可変抵抗器41を内部フレーム37に固定する固定金具42と、を備えている。そして、固定金具42は、可変抵抗器41と接続されて可撓性を有する抵抗固定部42b2を有する。
【0038】
ピッチベンダー40が上記のような構成とされていることにより、操作ホイール44の一部に様々な方向から異常荷重が加えられた場合、操作ホイール44が取り付けられた可変抵抗器41に当該荷重が伝わる。可変抵抗器41に伝わった当該荷重は、可変抵抗器41が接続された固定金具42の抵抗固定部42b2に伝わり、当該荷重に応じて抵抗固定部42b2が撓む。これにより、操作ホイール44の一部に加えられた異常荷重が分散される。このため、可変抵抗器41や操作ホイール44に当該荷重が集中することを防止することができ、操作ホイール44に外部から異常荷重が加えられた場合であっても可変抵抗器41や操作ホイール44の破損や脱落等が発生し難いピッチベンダー40を実現することができる。
【0039】
また、ピッチベンダー40では、可変抵抗器41は、軸周りに回転可能な軸状部41cを有し、固定金具42は、抵抗固定部42b2の両側に上方向(軸状部41cの軸方向と直交する方向)に開放された一対のスリット42b1を有する。これにより、固定金具42の一部(第1ネジ止め部42c及び第2ネジ止め部42d)が内部フレーム37に固定される構成であっても、上方向に開放された一対のスリット42b1の間に位置する抵抗固定部42b2に対して左右方向(軸状部41cの軸方向)の可撓性を付与することができる。
【0040】
また、ピッチベンダー40では、可変抵抗器41は、軸周りに回転可能な軸状部41cを有し、上下方向及び左右方向(軸状部41cの軸方向と直交する方向)において操作ホイール44のばね固定部47dと近接し、ばね固定部47dを支持可能なホイール受け部46b1を有する保持部材46を備え、保持部材46は固定金具42を介して左ケース36の内部フレーム37に固定されている。これにより、操作ホイール44からホイール受け部46b1に向かう方向寄り(例えば下方向寄り)の荷重が操作ホイール44に加えられた場合、操作ホイール44がホイール受け部46b1側に傾いてばね固定部47dがホイール受け部46b1に支持される。このため、操作ホイール44に対してホイール受け部46b1に向かう方向寄りの異常荷重が加えられた場合、当該荷重が抵抗固定部42b2の撓みにより分散された後に抵抗固定部42b2の撓みを途中で停止させることができ、操作ホイール44が過度に傾くことを防止することができる。
【0041】
また、ピッチベンダー40では、操作ホイール44は、軸状部41cの軸方向において抵抗固定部42b2とホイール受け部46b1との間に挟み込まれる形で設けられている。これにより、操作ホイール44に対して抵抗固定部42b2から離れる方向寄り、即ち操作ホイール44からホイール受け部46b1に向かう方向寄りの異常荷重が加えられた場合、ばね固定部47dがホイール受け部46b1に支持される構成を実現することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る電子鍵盤楽器10は、ピッチベンダー40と、ケース30と、を備える。これにより、電子鍵盤楽器10が転倒等して操作ホイール44に異常荷重が加えられた場合であっても、抵抗固定部42b2が撓むことにより当該荷重が分散される。このため、ピッチベンダー40の破損等が発生し難い電子鍵盤楽器10を実現することができる。
【0043】
また、電子鍵盤楽器10では、ピッチベンダー40は左ケース36に収納され、左ケース36は、ピッチベンダー40の一部が露出する操作開口部36a1が設けられた上面パネル36aを有する。これにより、操作ホイール44に所定の方向寄りの荷重(本実施形態では右方向寄りの荷重)が加えられて操作ホイール44が傾いた場合、操作ホイール44の一部を上面パネル36aに設けられた操作開口部36a1の開口端に当接させることができ、抵抗固定部42b2の撓みを途中で停止させることができる。このため、操作ホイール44が過度に傾くことを防止することができる。
【0044】
また、電子鍵盤楽器10では、左ケース36は、ピッチベンダー40が収納される内面側に固定金具42が固定される内部フレーム37を有する。これにより、左ケース36の内面側にピッチベンダー40が収納されて固定された構成において、ピッチベンダー40の破損等が発生し難い電子鍵盤楽器10を実現することができる。
【0045】
なお、以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えば上記の実施形態では操作子としてピッチベンダーを例示したが、モジュレーションホイール等のような他の操作子であってもよい。また、例えば上記の実施形態では電子楽器として電子鍵盤楽器を例示したが、鍵盤を備えない他の電子楽器であってもよい。
【0046】
以下に、本願出願の最初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]回転可能な有軸部と、
前記有軸部に回転操作可能に取り付けられた操作部と、
前記有軸部を装置に固定する固定部と、を備え、
前記固定部は、前記有軸部と接続されて可撓性を有する可撓部を有する、
操作子。
[2]前記有軸部は、軸周りに回転可能な軸状部を有し、
前記固定部は、前記可撓部の両側に前記軸状部の軸方向と直交する方向に開放された一対のスリットを有する、
前記[1]に記載の操作子。
[3]前記有軸部は、軸周りに回転可能な軸状部を有し、
前記軸状部の軸方向と直交する方向において前記操作部の一部と近接し、該操作部の一部を支持可能な支持部を備え、
前記支持部は前記装置に固定されている、
前記[1]又は前記[2]に記載の操作子。
[4]前記操作部は、前記軸方向において前記可撓部と前記支持部との間に挟み込まれる形で設けられている、
前記[3]に記載の操作子。
[5]前記[1]から[4]のいずれかに記載の操作子と、
装置と、を備える
電子楽器。
[6]前記操作子は前記装置に収納され、
前記装置は、前記操作部の一部が露出する開口部が設けられたパネル部材を有する、
前記[5]に記載の電子楽器。
[7]前記装置は、前記操作子が収納される内面側に前記固定部が固定されるフレーム部材を有する、前記[6]に記載の電子楽器。
【符号の説明】
【0047】
10 電子鍵盤楽器 12 ダイヤル
14 発光ボタン 16 設定ボタン
18 イヤホンジャック 20 鍵盤部
30 ケース 32 上ケース
34 下ケース 36 左ケース
36a 操作開口部 37 内部フレーム
37a 第1基板 37b 第2基板
38 右ケース 40 ピッチベンダー
41 可変抵抗器 41a センサ前部
41b センサ後部 41c 軸状部
41d 配線接続部 42 固定金具
42a 平板部 42b 立壁部
42b1 スリット 42b2 抵抗固定部
42b3 固定開口部 42c 第1ネジ止め部
42d 第2ネジ止め部 43 光源基板
43a LED 43b LED
43c LED 43d 光源接続部
44 操作ホイール 44a 操作凹部
45 トーションばね 45a コイルばね部
45b 付勢部 46 保持部材
46a 底部 46b 側板部
46b1 ホイール受け部 46c 第2ばね当接部
47 ホイール部材 47a1 ホイール側凹部
47b ホイール側貫通孔 47c ホイール側張出部
47d ばね固定部 47e 第1ばね当接部
48 導光部材 48a 端縁
48a1 導光側凹部 48b 導光側貫通孔
48c 導光側張出部 49 両面テープ
49a テープ側貫通孔 IP 絶縁板
L1 光路 P0 初期状態
P1 第1状態 P2 第2状態
S1 第1固定ネジ S2 第2固定ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な有軸部と、
前記有軸部に回転操作可能に取り付けられた操作部と、
前記操作部が前記有軸部と直交する方向に傾いた場合に、前記方向において前記操作部のばね固定部を支持し、前記操作部が前記方向に傾かない場合、前記方向において前記ばね固定部との間に隙間を有する支持部と、を備え、
前記支持部は略円弧状に切りかかれた形状である、
操作子。
【請求項2】
前記有軸部を装置に固定する固定部と、を備え、
前記操作部は、前記有軸部の軸方向において前記固定部と前記支持部との間に設けられている、
請求項1に記載の操作子。
【請求項3】
前記固定部は、前記有軸部と接続されて可撓性を有する可撓部を有する、
請求項2に記載の操作子。
【請求項4】
前記可撓部は前記有軸部の一部が挿通される開口部が設けられている、
請求項3に記載の操作子。
【請求項5】
前記有軸部は、軸周りに回転可能な軸状部を有し、
前記操作部の略中心部に前記軸状部が挿通される貫通孔が設けられている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の操作子。
【請求項6】
前記貫通孔は、前記操作部において前記支持部側に設けられている、
請求項5に記載の操作子。
【請求項7】
前記貫通孔は、前記開口部よりも前記支持部側に設けられている、
請求項5又は6に記載の操作子。
【請求項8】
前記ばね固定部の外周面に設けられたトーションばねを備え、
前記トーションばねの両端は、前記ばね固定部の下方まで延びている、
請求項1~7のいずれか1項に記載の操作子。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の操作子と、
装置と、を備える、
電子楽器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の一態様の操作子は、回転可能な有軸部と、前記有軸部に回転操作可能に取り付
けられた操作部と、前記操作部が前記有軸部と直交する方向に傾いた場合に、前記方向において前記操作部のばね固定部を支持し、前記操作部が前記方向に傾かない場合、前記方向において前記ばね固定部との間に隙間を有する支持部と、を備え、前記支持部は略円弧状に切りかかれた形状である