(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155477
(43)【公開日】2023-10-20
(54)【発明の名称】クレーン制御装置
(51)【国際特許分類】
B66C 15/06 20060101AFI20231013BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20231013BHJP
B66C 1/34 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B66C15/06
B66C15/00 A
B66C1/34 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142244
(22)【出願日】2023-09-01
(62)【分割の表示】P 2019238608の分割
【原出願日】2019-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】元木 浩平
(57)【要約】
【課題】主に、作業員の状況に応じて自動的にクレーンの動作規制を行わせる。
【解決手段】クレーン制御装置3は、制御部21と、クレーン2のフックブロック27周辺の物に取付けられた接触検知部22Eと、接触検知部22Eの検知信号32を制御部21へ送る送信部24とを備える。フックブロック27と作業員が装着するグラブ51との間に、相互間距離52を検知する距離検知部53,54を備える。送信部24は、フックブロック27およびグラブ51の一方または両方に設けられ、相互間距離52を制御部21へ送る。制御部21は、相互間距離52が所定値よりも近接した場合に、接触検知部22Eを有効にし、相互間距離52が所定値よりも離間した場合に、接触検知部22Eを無効にする。制御部21は、検知信号32に基づいて、自動的にクレーン2の動作規制と、クレーン2の動作規制の解除とを切り替える。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンの動作を制御する制御部と、
前記クレーンのフックブロック周辺の物に取付けられた接触を検知する接触検知部と、
該接触検知部が発生した検知信号を前記制御部へ送る送信部とを備え、
前記クレーンのフックブロックと作業員が装着するグラブとの間に、相互間距離を検知する距離検知部を備え、
前記送信部は、前記フックブロックおよび前記グラブの一方または両方に設けられて、
前記相互間距離を前記制御部へ送ると共に、
前記制御部は、
前記相互間距離が所定値よりも近接した場合に、前記接触検知部を有効にすると共に、前記相互間距離が前記所定値よりも離間した場合に、前記接触検知部を無効にし、
前記制御部は、前記検知信号に基づいて、自動的に前記クレーンの動作規制と、前記クレーンの前記動作規制の解除とを切り替えることを特徴とするクレーン制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクレーン制御装置であって、
前記接触検知部が、前記グラブに設けられていることを特徴とするクレーン制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のクレーン制御装置であって、
前記制御部によって動作規制される前記クレーンの動作が、吊上・吊下動作以外の動作であることを特徴とするクレーン制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のクレーン制御装置であって、
前記制御部によって動作規制される前記クレーンの動作が、旋回動作以外の動作であることを特徴とするクレーン制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のクレーン制御装置であって、
前記検知信号は接触の強さ情報を含み、
前記制御部は、前記検知信号に含まれた強さ情報に応じて前記クレーンの動作速度を規制することを特徴とするクレーン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クレーン制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレーンなどの建設機械では、フックの周辺で作業員が玉掛作業などの作業を行うことが多い。玉掛作業中は、フックに最も近い位置に作業員が居るので、クレーンの操作者は、作業状況を目視したり監視カメラなどで監視したりしており、作業の終了を確認した後にクレーンを作動させるようにしている。
【0003】
これに対し、確認の不十分や勘違いなどによって、玉掛作業中にクレーンの操作者がクレーンを誤って作動させてしまうおそれがある。そこで、このような場合に、クレーンを不用意に作動させてしまわないようにするための手段が必要になる(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
上記特許文献1には、クレーンのフックに、人体感知センサーおよび音声発生装置を設けて、フックの下方に人体を感知した場合に、音声を発して、作業者に警告を与えられるようにしている(段落[0007]
図2など)。
【0005】
また、上記特許文献2では、電動チェーンブロックの吊具に、吊具を上下動させるための操作摘みを設けるようにして、作業員が吊具の上下動を操作できるようにしている(段落[0024][0027][0034]-[0036]
図1、
図2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-056385号公報
【特許文献2】特開平6-336396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の場合、玉掛作業などの作業中は、人体感知センサーが常時人体を感知しているので、作業員の側から音声発生装置の音声を停止することができず、煩わしいなどの問題があった。
【0008】
また、特許文献2の場合、吊具が不用意に上下動されたような場合に、作業員が自ら操作摘みを操作して、吊具の上下動を停止させる必要があるため、対応が難しく、煩わしいなどの問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、作業員の状況に応じて自動的にクレーンの動作規制を行わせるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に対して、本発明は、
クレーンの動作を制御する制御部と、
前記クレーンのフックブロック周辺の物に取付けられた接触を検知する接触検知部と、
該接触検知部が発生した検知信号を前記制御部へ送る送信部とを備え、
前記クレーンのフックブロックと作業員が装着するグラブとの間に、相互間距離を検知する距離検知部を備え、
前記送信部は、前記フックブロックおよび前記グラブの一方または両方に設けられて、
前記相互間距離を前記制御部へ送ると共に、
前記制御部は、
前記相互間距離が所定値よりも近接した場合に、前記接触検知部を有効にすると共に、前記相互間距離が前記所定値よりも離間した場合に、前記接触検知部を無効にし、
前記制御部は、前記検知信号に基づいて、自動的に前記クレーンの動作規制と、前記クレーンの前記動作規制の解除とを切り替えるクレーン制御装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記構成によって、作業員の状況に応じて自動的にクレーンの動作規制を行わせることなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1にかかるクレーン制御装置を備えたクレーンの全体側面図である。
【
図2】実施例1にかかるクレーン制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3A】実施例1にかかる接触検知部および送信部の取付状態を示すフックブロックの拡大側面図である。
【
図3B】実施例1の変形例にかかる接触検知部および送信部の取付状態を示すフックブロックの拡大側面図である。
【
図4】実施例1にかかるクレーン制御装置の制御部の制御例を示すフローチャートである。
【
図5】実施例1にかかるクレーン制御装置の制御部の他の制御例を示すフローチャートである。
【
図7】実施例2にかかる接触検知部および送信部の取付状態を示すフックブロックの拡大側面図である。
【
図8】実施例3にかかる接触検知部および送信部の取付状態を示すフックブロックの拡大側面図である。
【
図9】実施例3にかかるクレーン制御装置の制御部の別の制御内容を示すフローチャートである。
【
図10】実施例4にかかるクレーン制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】実施例4にかかる接触検知部および送信部の取付状態を示すフックブロックおよびグラブの拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1~
図11は、この実施の形態を説明するためのものである。このうち、
図1~
図6は実施例1、
図7は実施例2、
図8-
図9は実施例3、
図10-
図11は実施例4に関している。
【実施例0014】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0015】
図1に示すような、フックブロック27を備えたクレーン2などの建設機械に対して、この実施例のクレーン制御装置3(
図2)を設ける。
【0016】
クレーン2などの建設機械は、例えば、走行部4の上に水平旋回可能な旋回部5を備えると共に、旋回部5に起伏可能なブームなどの起伏部6を備えたものなどとされる。このクレーン2は、走行部4を有することで移動式クレーンとなっている。起伏部6は、伸縮し得るように構成しても良い(伸縮ブーム)。そして、フックブロック27は起伏部6の先端部の位置に設置される。
【0017】
図2に示すように、クレーン2には、少なくとも、旋回部5を旋回させるための旋回用アクチュエータ11や、起伏部6を起伏させるための起伏用アクチュエータ12や、起伏部6を伸縮させるための伸縮用アクチュエータ13や、フックブロック27を上下動させるための吊上用アクチュエータ14(例えば、ウインチ)などの駆動装置が備えられる。なお、以上の記載は、各実施例において共通である。
【0018】
上記のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えることができる。
【0019】
(1-1)クレーン制御装置3は、
図2に示すように、クレーン2の動作を制御する制御部21と、
クレーン2のフックブロック27に対する接触を検知する接触検知部22と、 接触検知部22が検知した検知信号23を制御部21へ送る送信部24とを備えている。
図3Aに示すように、接触検知部22および送信部24は、フックブロック27に取付けられる。
制御部21は、検知信号23に基づいて、接触状態と判断したときに自動的にクレーン2の動作規制を行い、非接触状態と判断したときに自動的にクレーン2の動作規制を解除するように構成されている。
【0020】
ここで、クレーン2の動作は、例えば、上記したような旋回部5の旋回動作や、起伏部6の起伏動作および伸縮動作や、フックブロック27(に備えられたフック1)の吊上・吊下動作などのことである。
【0021】
制御部21は、旋回部5に設けられた運転台5a(
図1)からクレーン2を操作できるようにするための制御装置や、制御装置にインストールされた制御ソフトなどで構成される。制御部21は、例えば、運転台5aに設けられた各種の操作レバーや操作スイッチなどの操作部(以下、操作レバー25という、
図2)の操作によって旋回用アクチュエータ11を作動させて旋回部5に旋回動作を行わせたり、操作レバー25の操作によって起伏用アクチュエータ12や伸縮用アクチュエータ13を作動させて起伏部6に起伏動作および伸縮動作を行わせたり、操作レバー25の操作によって吊上用アクチュエータ14を作動させてフックブロック27(またはフック1)に吊上・吊下動作を行わせたりする。
【0022】
フックブロック27は、吊上用アクチュエータ14(例えば、ウインチ)にワイヤ26(26)などを介して接続され、起伏部6の先端部から吊り下げた状態に設置された金属製の係止部材である。
【0023】
図3Aに示すように、フックブロック27は、滑車などを収容する部分(ブロック部28)と、ブロック部28の下端部に取付けられたフック1とで構成されている。フック1は、鉤型をしたフック本体29で主に構成されている。フック本体29には、必要に応じて、ハズレ止部材31が備えられる。
【0024】
フック本体29は、ブロック部28の下端部から下方へ延びる短い軸部29a(根本部分)と、軸部29aの下端部に取付けられた鉤状部29bとを有している。鉤状部29bは、例えば、丸型の場合、中心角が180度よりも大きく360度よりも小さい側面視ほぼ円弧状のものとされる。なお、鉤状部29bは、丸型の他に、例えば、多角形状をした角型のものや、J字型のものなどがある。
【0025】
ハズレ止部材31は、軸部29aの下端部分と、鉤状部29bの上へ向いた先端部との間にできる斜め上に開いた開放部分に対し、開放部分を開閉可能となるように取付けられる。ハズレ止部材31は、上端部が軸部29aに回動自在に取付けられると共に、付勢部材によって開放部分を閉じる方向に付勢される。
【0026】
接触は、フックブロック27の少なくとも一部に対して物理的に接触することを基本としている。但し、接触検知部22の感度によっては、非接触で検知を行わせることも可能である。非接触の場合には、接触を、接触検知部22の検知領域内への侵入と読み替えるようにする。
【0027】
接触検知部22は、接触を検知できるセンサーであれば、どのようなものとしても良い。接触検知部22には、例えば、圧電素子や静電容量センサーなどを用いることができる。圧電素子は、圧力によって電圧を発生させる素子である。静電容量センサーは、静電容量の変化を検出するセンサーである。
【0028】
送信部24は、接触検知部22からの検知信号23の内容を制御部21へ送信することができれば、どのようなものとしても良い。送信部24は、例えば、RFID( radio frequency identifier)システムを構成するRFタグ(ID情報を埋め込んだ小型のタグ)などの発信装置などとすることができる。送信部24は、接触検知部22で発生した電力で作動して電波を発信するように構成しても良いし、接触検知部22とは別電源で作動させて、接触検知部22で発生した電力をトリガーとして電波を発信させるように構成しても良い。送信部24と接触検知部22は、配線32によって接続される。
【0029】
接触検知部22および送信部24は、フックブロック27(を構成するブロック部28やフック1)のどこの位置にどのような状態で取付けても良いが、例えば、
図3Aでは接触検知部22および送信部24を、ブロック部28の側面に近接した状態で取付けるようにしている。なお、接触検知部22および送信部24は、フックブロック27の異なる位置に離して取付けても良い。
【0030】
制御部21には、送信部24からの検知信号23を無線通信によって自動で受信して認識する受信部33(または、RFIDシステムの読取装置など)が備えられる。
【0031】
クレーン2の動作規制は、クレーン2の動作を禁止(または停止)することや、クレーン2の動作を制限(まは抑制)することなどである。クレーン2の動作規制によって、クレーン2の全ての動作を規制したり(全面規制)、後述するようにクレーン2の一部の動作を規制したり(部分規制)することができる。
【0032】
クレーン2の動作規制を解除するとは、動作規制のない状態(通常の動作ができる状態)にクレーン2を戻すことである。
【0033】
自動的にとは、作業者やクレーン2の操作者による意識的な操作を必要としないで、制御部21が動作規制や規制解除を判断して実行することである。
【0034】
制御部21には、動作規制や規制解除を行わせるための動作規制部35が設けられる。動作規制部35は、例えば、操作レバー25からの信号36を途中で遮断したり、旋回用アクチュエータ11や起伏用アクチュエータ12や吊上用アクチュエータ14などに対する動力や作動信号などを遮断したり制限したりすることなどによって、動作規制や規制解除を実施する。
【0035】
(1-2)
図3Bに示すように、接触検知部22は、フックブロック27に備えられたフック1の外周部分に取付けても良い。
送信部24は、フック1の根本部分に取付けても良い。
【0036】
ここで、フック1の外周部分は、フック1を側方から見た時に、フック1の外側に位置する輪郭部分のことである。接触検知部22は、例えば、フック1の外周部分に沿って貼付けられる。この実施例では、接触検知部22は、フック1(の鉤状部29b)の外周部分のほぼ全域に亘って設けられている。また、接触検知部22に加えて、または、接触検知部22に替えてハズレ止部材31の外側の部分に対しても、接触検知部34を取付けることができる。この実施例では、接触検知部34は、接触検知部22に加えて設けられた補助的なものとなっている。
【0037】
送信部24は、フックブロック27のどの位置(例えば、ブロック部28の側面など)に取付けても良いが、フック1の根本部分(軸部29a)の外周などに取付けるのが好ましい。
【0038】
(1-3)制御部21は、検知信号23を受信している間中、接触状態が続いていると判断して、動作規制を継続させるようにしても良い。
【0039】
この場合、送信部24は、例えば、接触検知部22からの接触を示す検知信号23を連続的に送信したり、接触を示す検知信号23を所定の周期で繰り返し送信し続けたりするように構成される。制御部21は、例えば、接触を示す検知信号23の受信が途絶えたときに、非接触状態になったと判断して、動作規制を中止する(規制解除)。
【0040】
例えば、制御部21(の動作規制部35)は、
図4に示すようにして、動作規制および規制解除を行うように構成することができる。この場合、制御部21は、フラグ(例えば、クレーン操作有効フラグ)を用いて、動作規制および規制解除の状態を管理するように構成することができる。そして、送信部24から受信部33に対して、別のフラグ(例えば、クレーン停止フラグなど)を含む検知信号23を送るようにしている。これらのフラグは、制御部21に設けられたメモリ41(
図2)になど格納されて、動作規制および規制解除の判断に使用される。
【0041】
具体的には、クレーン2のエンジンを始動することで制御が開始されると、S1で、クレーン2の制御部21が持っているクレーン操作有効フラグを1に初期化する。クレーン操作有効フラグは、1がクレーン操作可、0がクレーン操作不可を意味している。
【0042】
また、フックブロック27側またはフック1側(以下、フック1側という)が持っているクレーン停止フラグを0に初期化する。クレーン停止フラグは、1が動作規制、0が規制解除を意味している。
【0043】
次に、S2で、フック1側の送信部24(フック側送信装置)とクレーン2側の受信部33(クレーン側の受信装置)との間の通信(送受信)を確立する。
【0044】
そして、S3で、フック1側の送信部24からの検知信号23に含まれるクレーン停止フラグをクレーン2側の受信部33で受信する。
【0045】
S4で、制御部21は、クレーン停止フラグが1であるか否かを判断する。
【0046】
そして、クレーン停止フラグが1である場合には、S5で、クレーン2の制御部21は、クレーン操作有効フラグを0に書き替えて、操作レバー25の操作を無効または禁止にする割込処理を行い、S6で、クレーン2の動作を規制する。
【0047】
反対に、クレーン停止フラグが0である場合には、S7で、クレーン2の制御部21は、クレーン操作有効フラグを1に書き替えて、操作レバー25の操作を有効にする割込処理を行い(または、操作レバー25の操作を無効または禁止にする割込処理を終了し)、S8で、クレーン2が動作できるようにする、または、動作規制を規制解除する。
【0048】
S6およびS8以降は、クレーン2のエンジンを停止するまで、S3に戻って上記を繰り返す。
【0049】
また、例えば、フラグをクレーン操作有効フラグのみとしても、上記と同様の動作規制および規制解除を行わせることが可能である。
【0050】
この場合には、
図5に示すように、クレーン2のエンジンを始動することで制御が開始されると、S11で、クレーン2の制御部21(およびフック1側)が持っているクレーン操作有効フラグを1に初期設定する。クレーン操作有効フラグは、1がクレーン動作可能、0がクレーン動作禁止を意味している。
【0051】
次に、S12で、フック1側の送信部24(フック側送信装置)とクレーン2側の受信部33(クレーン側の受信装置)との間の通信(送受信)を確立する。
【0052】
そして、S13で、フック1側の送信部24からの検知信号23に含まれるクレーン操作有効フラグをクレーン2側の受信部33で受信(取得)する。
【0053】
S14で、制御部21は、クレーン操作有効フラグが1であるか否かを判断する。
【0054】
そして、クレーン操作有効フラグが1である場合には、S15で、クレーン2の制御部21は、クレーン2を動作可能とする。
【0055】
反対に、クレーン操作有効フラグが0である場合には、S16で、クレーン2の制御部21は、クレーン2を動作禁止にする。
【0056】
以後、クレーン2のエンジンを停止するまで、S13に戻って上記を繰り返す。
【0057】
(1-4)また、制御部21は、検知信号23を受信するごとに、動作規制と規制解除とを交互に切り替えるようにしても良い。
【0058】
この場合、送信部24は、例えば、接触検知部22が接触を検知したときにのみ検知信号23を送信するように構成される。制御部21は、接触検知部22からの接触を示す検知信号23を受信しないときは、状態に変化がないとして、動作規制または規制解除の状態をそのまま保つようにする。
【0059】
そして、制御部21は、例えば、検知信号23を受信したときに、上記したクレーン操作有効フラグの0と1とを反対に書き替えて、動作規制と規制解除との状態が交互に逆なるようにする。
【0060】
なお、上記した(1-3)と(1-4)の内容は、択一的なものとされる。また、どちらも、以下の各実施例で適用することが可能である。
【0061】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0062】
クレーン2では、例えば、旋回部5を旋回させたり、起伏部6を起伏させたり伸縮させたり、フックブロック27またはフック1を吊上げたり吊下ろしたりすることによって作業が行われる。このようなクレーン2の動作は、制御部21が、操作レバー25の操作に応じて、旋回用アクチュエータ11を作動させて旋回部5に旋回動作を行わせたり、起伏用アクチュエータ12を作動させて起伏部6に起伏動作を行わせたり、伸縮用アクチュエータ13を作動させて伸縮部に伸縮動作を行わせたり、操作レバー25の操作によって吊上用アクチュエータ14を作動させてフックブロック27またはフック1に吊上・吊下動作を行わせたりすることで実行される。
【0063】
クレーン2で建築資材などの荷物(吊荷45)を吊上げる場合、
図6に示すように、作業員がフックブロック27またはフック1の周辺で玉掛ワイヤ46を用いて玉掛作業を行うことになる。玉掛作業は、クレーン2の操作者がフックブロック27またはフック1を下ろし、作業員が片手で下ろされたフックブロック27またはフック1を手に取ることによって開始される。そして、作業員が吊荷45に玉掛ワイヤ46を巻き付け、他方の手で吊荷45に巻き付けた玉掛ワイヤ46をフック1に掛けることで玉掛作業が終了される。クレーン2の操作者は、玉掛作業の終了を確認した後に、フックブロック27またはフック1と共に吊荷45を吊り上げて、吊荷45の設置場所まで移動させる。
【0064】
玉掛作業中は、フックブロック27またはフック1に最も近い位置に作業員が居るので、クレーン2の操作者は、作業状況を目視したり監視カメラなどで監視したりしており、作業の終了を確認した後にクレーン2を作動させることになる。この際、確認の不十分や勘違いなどによって、玉掛作業中にクレーン2の操作者がクレーン2を誤って作動させてしまわないように注意する必要がある。そこで、この実施例では、以下のようにして、クレーン2を不用意に作動させないようにしている。
【0065】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0066】
(効果 1-1)クレーン制御装置3では、制御部21はクレーン2の動作を制御し、接触検知部22は、クレーン2のフックブロック27(またはフック1)に対する接触を検知し、送信部24は、接触検知部22が検知した検知信号23を制御部21へ送るようになっている。
【0067】
そして、制御部21(の動作規制部35)は、検知信号23に基づいて、フックブロック27の少なくとも一部に対する接触状態が発生していると判断したときにクレーン2の動作を自動的に規制(禁止または制限)し、フックブロック27またはフック1に対して非接触状態であると判断したときにクレーン2の動作規制を自動的に解除する。
【0068】
これにより、作業員が、フックブロック27またはフック1の周辺で作業(例えば、玉掛作業)を行っている時に、作業員がフックブロック27またはフック1に触れることで、接触検知部22がこれを検知し(例えば、圧電素子が電圧を発生させ)、送信部24が検知信号23を発生(発信)し、クレーン2側の制御部21が受信することで、(クレーン2やフック1の周囲での)作業中であると制御部21が判断してクレーン2の動作を自動的に規制するので、クレーン2の操作者が誤ってクレーン2を操作したとしてもクレーン2が動くことがなくなるため、作業の安全性を確保することができる。
【0069】
そして、フックブロック27またはフック1に対する接触状態の有無を検知するために接触検知部22を用いたことにより、作業員が自ら行う意識的なスイッチ操作などは、特に不要となり、作業に伴って生じるフックブロック27またはフック1(に取付けられた接触検知部22)への(スイッチ操作を意識していない)無意識な接触の有無のみによって動作規制と規制解除とが自動で切替えられるように構成できる(勿論、意識的に接触を行っても良い)。そのため、作業員や作業の状況に応じて必要な動作規制が自動的に行われるようになり、安全性を確保できると共に、切り替えが自然に行われるため煩わしさを感じないようにできる。
【0070】
(効果 1-2)この際、接触検知部22をフックブロック27に備えられたフック1の外周部分に取付けるようにしても良い。これにより、作業員がフック1の外周部分に触れている時に限ってクレーン2の動作を規制することができ、フック1の外周部分以外に触れている時にはクレーン2の動作規制が行われないので、適正かつ確実にクレーン2の動作規制を行わせることができる。また、接触検知部22の損傷なども防止できる。
【0071】
これに対し、例えば、接触検知部22をフック1の内周部分に取付けた場合には、吊荷45を吊るための玉掛ワイヤ46などが接触検知部22に接触するため、作業者が触っていることを適正に検出することができなくなると共に、接触検知部22が損傷し易くなるおそれがある。
【0072】
そして、送信部24をフック1の根本部分(軸部29a)に取付けるようにしても良い。これにより、接触検知部22と送信部24とが近くに設置されるので、装置構成の簡略化を図ることができると共に、フック1の根本部分は、外力が作用され難い位置であるため、外力による送信部24の損傷なども防止できる。
【0073】
(効果 1-3)制御部21は、検知信号23を受信している間中、接触状態が続いていると判断して、動作規制を継続させるようにしても良い。これにより、フックブロック27またはフック1に対して接触しているか、フックブロック27またはフック1から離れているかということのみが、クレーン2の動作規制を行うか規制解除を行うかの判断基準となるので、作業員にとって感覚的に分かり易い構成にすることができる。
【0074】
(効果 1-4)または、制御部21は、検知信号23を受信するごとに、動作規制と規制解除とを交互に切り替えるようにしても良い。これにより、フックブロック27またはフック1に接触していない間は動作規制または規制解除の状態が継続され、フックブロック27またはフック1に接触する度に動作規制と規制解除とが交互に切り替えられるようになるので、作業員はフックブロック27またはフック1に接触し続けている必要がなくなり、例えば、作業員がフックブロック27またはフック1から離れた場合でも動作規制を継続させたり、規制解除を継続させたりすることが可能になる。
ここで、動作規制用の検知部22Aは、動作規制を行わせるために専用に設けられる接触検知部22である。動作規制用の検知部22Aは、例えば、フックブロック27における、フック1の下側に設置されるのが好ましい。
規制解除用の検知部22Bは、規制解除を行わせるために専用に設けられる接触検知部22である。規制解除用の検知部22Bは、例えば、フックブロック27における、フック1の上側に設置されるのが好ましい。
動作規制用の検知部22Aおよび規制解除用の検知部22Bは、それぞれ配線32によって1つの送信部24に接続されており、送信部24は、動作規制用の検知部22Aおよび規制解除用の検知部22Bのどちらか一方から得られた検知信号23を制御部21へ送る。
制御部21は、動作規制用の検知部22Aからの検知信号23を受信した場合に、動作規制を行わせ、規制解除用の検知部22Bからの検知信号23を受信した場合に、規制解除を行わせる。
(作用効果 2-1)接触検知部22は、動作規制用の検知部22Aと、規制解除用の検知部22Bとを別々に備えるようにしても良い、これにより、上記実施例と同様の作用効果に加えて、別々に設けられている動作規制用の検知部22Aと、規制解除用の検知部22Bとを、意識的に選択して使う(使い分ける)ことが容易となるため、動作規制用の検知部22Aと規制解除用の検知部22Bとをスイッチとして使って動作規制と規制解除とをより明確かつ確実に実行させることが可能になる。