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特開2023-15554部品実装基板の製造方法および部品実装基板の製造システム
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  • 特開-部品実装基板の製造方法および部品実装基板の製造システム 図1
  • 特開-部品実装基板の製造方法および部品実装基板の製造システム 図2
  • 特開-部品実装基板の製造方法および部品実装基板の製造システム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015554
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】部品実装基板の製造方法および部品実装基板の製造システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230125BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20230125BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20230125BHJP
   B23K 35/363 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
H01L21/92 604E
H05K3/34 503A
H05K3/34 507C
H05K13/04 B
B23K35/363 E
H01L21/92 621A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119409
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】境 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】前田 憲
(72)【発明者】
【氏名】岡村 進吾
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 祐樹
【テーマコード(参考)】
5E319
5E353
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AA07
5E319AB06
5E319BB05
5E319CC33
5E319CD21
5E319GG03
5E319GG15
5E353EE41
5E353JJ21
5E353MM04
5E353MM08
5E353QQ02
5E353QQ11
(57)【要約】
【課題】半田プリコートを用い且つ高い生産性および歩留まりで部品実装基板を製造できる、部品実装基板の製造方法を提供する。
【解決手段】開示される製造方法は、基板1のランド1b上に形成された半田プリコート2と、半田プリコート2の少なくとも頂部を覆う樹脂膜であって熱可塑性樹脂を含む樹脂膜3とを覆うようにフラックス4を塗布するフラックス塗布工程と、半田プリコート2上に存在する樹脂膜3上に部品5を搭載する部品搭載工程と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のランド上に形成された半田プリコートと、前記半田プリコートの少なくとも頂部を覆う樹脂膜であって熱可塑性樹脂を含む樹脂膜とを覆うようにフラックスを塗布するフラックス塗布工程と、
前記半田プリコート上に存在する前記樹脂膜上に部品を搭載する部品搭載工程と、を含む、部品実装基板の製造方法。
【請求項2】
前記部品搭載工程によって前記部品が搭載された前記基板を加熱した後に冷却することによって、前記ランドと前記部品とを半田付けするリフロー工程をさらに含み、
前記リフロー工程において、前記基板を加熱したときに、前記半田プリコートが溶融するとともに前記樹脂膜が軟化する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記部品搭載工程において、前記樹脂膜上に前記部品を搭載することによって前記樹脂膜に亀裂を生じさせる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記フラックス塗布工程の前に、前記半田プリコートと前記樹脂膜とを前記基板に形成する半田プリコート形成工程をさらに含み、
前記半田プリコート形成工程は、
半田粒子と前記熱可塑性樹脂とを含む半田ペーストを前記ランドに供給する工程(a)と、
前記半田ペーストが供給された前記基板を加熱した後に冷却することによって、前記半田プリコートおよび前記樹脂膜を形成する工程(b)とを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記半田ペーストは、前記半田粒子と前記熱可塑性樹脂とを、前記半田粒子:前記熱可塑性樹脂=8:2~6:4の体積比で含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記頂部の上における前記樹脂膜の厚さは、1~10μmの範囲にある、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂は、ロジン、変性ロジン、およびアクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
半田粒子と熱可塑性樹脂とを含む半田ペーストを基板のランドに供給して加熱することによって、前記ランド上に形成された半田プリコートと、前記半田プリコートの少なくとも頂部を覆う樹脂膜であって前記熱可塑性樹脂を含む樹脂膜とを形成する半田プリコート形成装置と、
前記半田プリコートと前記樹脂膜とを覆うようにフラックスを塗布するフラックス塗布装置と、
前記半田プリコート上に存在する前記樹脂膜上に部品を搭載する部品搭載装置と、
前記部品が搭載された前記基板を加熱することによって、前記ランドと前記部品とを半田付けするリフロー装置と、
前記基板を搬送する基板搬送装置と、を含み、
前記基板搬送装置は、前記半田プリコート形成装置、前記フラックス塗布装置、前記部品搭載装置、および前記リフロー装置の順に前記基板を搬送する、部品実装基板の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装基板の製造方法および部品実装基板の製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
実装基板の製造において、部品を部品搭載ヘッドで保持して基板に搭載する部品搭載装置が使用されている。基板にはランドにあらかじめ半田ペーストを配置しておき、半田ペーストに部品の電極を接触させるようにして部品を搭載する。部品搭載装置は、部品の搭載作業の生産性を高めるために、高速で部品搭載ヘッドを移動させる。そのため、部品を搭載する際の衝撃で部品にダメージを与えるのを防止するために、部品搭載ヘッドは、一般的に、緩衝機構を内蔵する。
【0003】
特許文献1(特開2007-266334号公報)、特許文献2(特開2010-087178号公報)、および特許文献3(特開2017-059608号公報)は、緩衝機構を用いた装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-266334号公報
【特許文献2】特開2010-087178号公報
【特許文献3】特開2017-059608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実装基板の製造において、部品の小型化によって部品の半田付けが困難になるという別の問題が顕在化してきた。これを解決するため、ランドに半田プリコートを形成しておき、半田プリコートに部品を搭載して実装基板を製造する方法が検討されている。
【0006】
しかしながら、固い金属である半田プリコート上に部品を搭載する場合、半田ペースト上に部品を搭載する場合に比べて非常に大きな衝撃が部品に作用する。このような衝撃は、緩衝機構を内蔵した既存の部品搭載ヘッドを用いるだけでは解決が難しかった。そのため、半田プリコートを用いる場合には部品搭載ヘッドを低速で移動させることが必要になり、生産性を高めることが難しかった。
【0007】
このような状況において、本発明の目的の1つは、半田プリコートを用い且つ高い生産性および歩留まりで部品実装基板を製造できる、部品実装基板の製造方法、および、部品実装基板の製造システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面は、部品実装基板の製造方法に関する。当該製造方法は、基板のランド上に形成された半田プリコートと、前記半田プリコートの少なくとも頂部を覆う樹脂膜であって熱可塑性樹脂を含む樹脂膜とを覆うようにフラックスを塗布するフラックス塗布工程と、前記半田プリコート上に存在する前記樹脂膜上に部品を搭載する部品搭載工程と、を含む。
【0009】
本発明の他の一局面は、部品実装基板の製造システムに関する。当該製造システムは、半田粒子と熱可塑性樹脂とを含む半田ペーストを基板のランドに供給して加熱することによって、前記ランド上に形成された半田プリコートと、前記半田プリコートの少なくとも頂部を覆う樹脂膜であって前記熱可塑性樹脂を含む樹脂膜とを形成する半田プリコート形成装置と、前記半田プリコートと前記樹脂膜とを覆うようにフラックスを塗布するフラックス塗布装置と、前記半田プリコート上に存在する前記樹脂膜上に部品を搭載する部品搭載装置と、前記部品が搭載された前記基板を加熱することによって、前記ランドと前記部品とを半田付けするリフロー装置と、前記基板を搬送する基板搬送装置と、を含み、前記基板搬送装置は、前記半田プリコート形成装置、前記フラックス塗布装置、前記部品搭載装置、および前記リフロー装置の順に前記基板を搬送する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半田プリコートを用い且つ高い生産性および歩留まりで部品実装基板を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1の部品実装基板の製造システムの構成を模式的に示す図である。
図2】実施形態1の、部品実装基板の製造方法について、工程の一部を模式的に示す断面図である。
図3図2に示した工程に続く工程の一部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明に係る実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値B」という記載は、数値Aおよび数値Bを含み、「数値A以上で数値B以下」と読み替えることが可能である。以下の説明において、特定の物性や条件などの数値に関して下限と上限とを例示した場合、下限が上限以上とならない限り、例示した下限のいずれかと例示した上限のいずれかとを任意に組み合わせることができる。
【0013】
(部品実装基板の製造方法)
本実施形態の製造方法は、部品実装基板の製造方法である。当該製造方法を、以下では、「製造方法(M)」と称する場合がある。製造方法(M)は、フラックス塗布工程と、部品搭載工程とをこの順に含む。製造方法(M)は、フラックス塗布工程の前に、半田プリコート形成工程をさらに含んでもよい。また、製造方法(M)は、部品搭載工程の後に、リフロー工程をさらに含んでもよい。それらについて以下に説明する。
【0014】
(半田プリコート形成工程)
製造方法(M)は、フラックス塗布工程の前に、半田プリコートと樹脂膜とを基板に形成する半田プリコート形成工程を含んでもよい。樹脂膜は、半田プリコートの少なくとも頂部を覆い、熱可塑性樹脂を含む。当該樹脂膜および当該熱可塑性樹脂をそれぞれ、以下では、「樹脂膜(F)」および「熱可塑性樹脂(R)」と称する場合がある。樹脂膜(F)は、部品を搭載する際の緩衝膜として機能するため、樹脂膜(F)を「緩衝膜」と読み替えてもよい。
【0015】
半田プリコート形成工程は、工程(a)と工程(b)とをこの順に含む。工程(a)は、半田粒子と熱可塑性樹脂(R)とを含む半田ペーストを基板のランドに供給する工程である。工程(b)は、半田ペーストが供給された基板を加熱した後に冷却することによって、半田プリコートおよび樹脂膜(樹脂膜(F))を形成する工程である。この工程によれば、半田プリコートと樹脂膜(F)とを同時に形成できる。
【0016】
製造方法(M)に用いられる基板には特に限定はなく、板状部と、板状部の上に形成されたランドとを含む基板(例えばプリント基板)を用いることができる。
【0017】
熱可塑性樹脂(R)は、樹脂膜(F)の成分となる。熱可塑性樹脂(R)は、通常、樹脂膜(F)の主成分(50質量%以上)である。半田粒子に特に限定はなく、部品の実装に用いられている公知の半田(例えば無鉛半田)の粒子を用いることができる。
【0018】
半田ペーストは、半田粒子と熱可塑性樹脂(R)とを、半田粒子:熱可塑性樹脂(R)=8:2~6:4の体積比(25℃における体積比)で含むことが好ましい。この範囲とすることによって、樹脂膜(F)の厚さを好ましい厚さとすることが容易になる。
【0019】
熱可塑性樹脂(R)には、半田粒子(半田プリコート)を構成する半田の融点(例えば200~220℃の範囲)よりも低い温度で軟化する樹脂が好ましく用いられる。熱可塑性樹脂(R)の例には、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド、およびフェノキシ樹脂などが含まれる。半田ペーストは、キシレン樹脂、ポリアミン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などを含んでもよい。半田ペーストは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびそれらの共重合体、ならびにそれらの誘導体を含んでもよく、ポリグリセリンエステル化合物、トリアジン系化合物、ビニル基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、エポキシ基含有化合物などを含んでもよい。
【0020】
熱可塑性樹脂(R)は、ロジン、変性ロジン、およびアクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの樹脂は、樹脂膜(F)の緩衝機能を高めるとともに、後のリフロー工程における半田付けを阻害しにくい。以下では、ロジンおよび変性ロジンをまとめて「ロジン類」と称する場合がある。リフロー工程における半田付けを阻害しにくい点で、熱可塑性樹脂(R)は、ロジン類を含むことが好ましい。変性ロジンの例には、重合ロジン、水素添加ロジン、酸変性ロジン、ロジンエステル、アクリル化ロジン水素化物などが含まれる。アクリル系樹脂の例には、(メタ)アクリル酸エステルを主要なモノマーとして含むモノマーを重合して得られる重合体(例えばアクリル樹脂)が含まれる。
【0021】
半田ペーストは、通常、活性剤を含み、必要に応じて他の成分を含んでもよい。他の成分の例には、粘性を高める成分、および液体成分(溶媒または分散媒)などが含まれる。
【0022】
活性剤は、半田付けを容易にする物質である。活性剤には、公知の半田フラックスで用いられている活性剤を用いてもよい。活性剤の例には、アビエチン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、プロピオン酸、2,2-ビスヒドロキシメチルプロピオン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、ジグリコール酸、チオグリコール酸、ジチオグリコール酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、およびそれらを変性したものなどが含まれる。
【0023】
粘性を高める成分の例には、増粘剤(またはチキソ剤)として用いられる公知の成分が含まれ、例えば、カスターワックス、アマイド系チキソ剤、ソルビトール系チキソ剤などが含まれる。液体成分には、公知の半田フラックスに用いられている液体成分を用いてもよい。液体成分の例には、ヘキシルジグリコール、アルコール、ポリオール、グリコールエーテル、その他の有機化合物(例えば、グリコール、ケトン、炭化水素、エステル、ルピネオール類など)などを用いてもよい。なお、液体成分として用いられる物質には、半田粒子の融点よりも高い沸点を有する物質が好ましく用いられる。
【0024】
半田ペーストを基板のランドに供給する方法に限定はなく、公知の方法を用いてもよい。例えば、スクリーン印刷法を用いてもよいし、ディスペンサを使用して半田ペーストを供給してもよい。
【0025】
工程(b)では、半田ペーストが供給された基板を、半田粒子の溶融以上の温度に加熱することによって、半田ペースト中の半田粒子を溶融させる。その後、当該基板を冷却することによって、半田プリコートおよび樹脂膜(F)を形成する。これらの加熱および冷却は、半田プリコートを形成する公知の方法と同様に行ってもよい。加熱および冷却によって、溶融した半田はランド上に集まって半田プリコートとなり、半田ペースト中の他の固形成分は半田プリコートを覆うように固化する。
【0026】
以上のようにして、半田プリコートおよび樹脂膜(F)が形成された基板が得られる。ただし、半田プリコート形成工程は、製造方法(M)に必須の工程ではない。半田プリコート形成工程を行わずに、半田プリコートおよび樹脂膜(F)が形成された基板を別途準備して用いてもよい。なお、半田プリコートが形成された基板を準備し、その半田プリコート上に熱可塑性樹脂(R)を含む材料を塗布することによって樹脂膜(F)を形成することも可能である。
【0027】
半田プリコート形成工程は、別の観点では、半田プリコートおよび樹脂膜(F)が形成された基板の製造方法とみなすことが可能である。
【0028】
(フラックス塗布工程)
フラックス塗布工程は、基板のランド上に形成された半田プリコートと、樹脂膜(F)とを覆うようにフラックス(半田フラックス)を塗布する工程である。フラックスの塗布方法に限定はなく、公知の方法を適用してもよい。例えば、スクリーン印刷法を用いてもよいし、ディスペンサを用いてもよい。以下の説明において、半田プリコート形成工程で説明した事項については、重複する説明を省略する場合がある。
【0029】
上述したように、樹脂膜(F)は、熱可塑性樹脂(R)を含む。樹脂膜(F)は、半田プリコートの少なくとも頂部を覆う。通常、樹脂膜(F)は、半田プリコートのうち基板(ランド)と接していない部分の全面またはほぼ全面を覆うように形成されている。
【0030】
フラックスには、公知の半田フラックスを用いてもよい。フラックスは、樹脂膜(F)と相溶性を有するフラックスが好ましい。例えば、樹脂膜(F)およびフラックスは共に、ロジン類を含むことが好ましい。
【0031】
樹脂膜(F)は、熱可塑性樹脂(R)を含む第1の樹脂膜と、第1の樹脂膜の上に形成され且つ熱可塑性樹脂を含む第2の樹脂膜とを含んでもよい。この場合、第1の樹脂膜は、上記の半田プリコート形成工程で形成される樹脂膜である。第2の樹脂膜は、第1の樹脂膜の上に、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を塗布することによって形成できる。例えば、第2の樹脂膜は、半田プリコート形成工程で形成された第1の樹脂膜の上に、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を塗布することによって形成してもよい。第2の樹脂膜に含まれる熱可塑性樹脂には、熱可塑性樹脂(R)について例示した樹脂を用いることができる。第1の樹脂膜に含まれる熱可塑性樹脂(R)と第2の樹脂膜に含まれる熱可塑性樹脂とは異なってもよい。しかし、相溶性の点から、両者は同じであることが好ましい。第2の樹脂膜を形成することによって、緩衝膜としての機能をより高めることができる。
【0032】
(部品搭載工程)
部品搭載工程は、半田プリコート上に存在する樹脂膜(F)上に部品(電子部品)を搭載する工程である。部品搭載工程では、半田プリコート上に、樹脂膜(F)を介して複数の部品が搭載される。複数の部品は、微小な電子部品を含んでもよい。微小な電子部品とは、例えば、平面形状の1辺が0.4mm以下の電子部品である。当該電子部品には、JIS規格の0402サイズの電子部品と同じサイズ以下のサイズの電子部品が含まれる。
【0033】
部品搭載工程は、部品搭載ヘッドを含む部品搭載装置を用いて行うことができる。例えば、部品搭載工程は、部品搭載ヘッドを含む公知の部品搭載装置を用いて行ってもよい。部品搭載ヘッドには、緩衝機構を内蔵する部品搭載ヘッドを用いてもよい。それによって、部品の破損をより少なくすることが可能である。
【0034】
従来から、基板に実装される部品の微小化が進められている。また、部品を基板に実搭載する速度の高速化も進められている。しかし、部品の微小化、および、部品の搭載速度の高速化は、いずれも、部品を搭載する際に部品が破損する確率を高める。そのため、微小な部品を高速で基板に搭載する技術が強く求められている。検討の結果、本願発明者らは、半田プリコート上に樹脂膜を形成することによって、部品の破損を抑制することが可能であることを見出した。半田プリコート上に樹脂膜を形成することによって部品の破損を抑制することは、従来は全く検討されていなかった。しかし、本願発明者らが見出した新たな方法、すなわち、緩衝膜として機能する樹脂膜を用いるという新たな方法によって、部品の破損を抑制することが可能である。
【0035】
部品搭載工程では、半田プリコートの上方に部品が搭載される。本発明の製造方法では、半田プリコートの上方に部品を搭載する際に、樹脂膜(F)が緩衝膜として機能する。そのため、電子部品の破損を抑制できる。この効果は、部品が小さい場合や、部品の搭載速度が速い場合に特に大きくなる。
【0036】
頂部の上における樹脂膜(F)の厚さは、1~10μmの範囲(例えば3~7μmの範囲)にあってもよい。当該厚さを3μm以上とすることによって緩衝膜としての効果を高めることができる。当該厚さを7μm以下とすることによって、リフローの際の半田付けの不良を抑制できる。
【0037】
部品搭載工程において、樹脂膜(F)上に部品を搭載することによって、樹脂膜(F)に亀裂を生じさせてもよい。すなわち、樹脂膜(F)上に部品を搭載する際の衝撃によって、樹脂膜(F)に亀裂を生じさせてもよい。これによって、後のリフロー工程において、樹脂膜(F)をフラックス中に分散させやすくなる。その結果、リフロー工程における半田付けの不良を抑制できる。
【0038】
(リフロー工程)
リフロー工程は、部品搭載工程によって部品が搭載された基板を加熱した後に冷却することによって、ランドと部品とを半田付けする工程である。リフロー工程において、基板を加熱したときに、半田プリコートが溶融するとともに樹脂膜(F)が軟化する。その後に基板を冷却することによって、部品の端子とランドとが半田付けされる。リフロー工程に限定はなく、公知のリフロー工程と同様に行ってもよい。
【0039】
以上のようにして、部品(電子部品)が実装された基板が得られる。製造方法(M)によれば、微小な電子部品を、高い歩留まりおよび高い生産性で基板に実装することが可能である。
【0040】
(部品実装基板の製造システム)
本実施形態の製造システムは、部品実装基板を製造するためのシステムである。この製造システムを用いることによって、製造方法(M)を容易に実施できる。製造方法(M)について説明した事項はこの製造システムに適用してもよい。そのため、以下の説明において、製造方法(M)について説明した事項については重複する説明を省略する場合がある。この製造システムについて説明した事項は、製造方法(M)に適用してもよい。
【0041】
当該製造システムは、半田プリコート形成装置、フラックス塗布装置、部品搭載装置、リフロー装置、および基板搬送装置を含む。基板は、基板搬送装置によって、半田プリコート形成装置、フラックス塗布装置、および部品搭載装置をこの順に搬送され、それぞれの装置で処理される。これらの装置について、以下に説明する。なお、製造システムは、半田プリコート形成装置を含まない装置であってもよい。
【0042】
(半田プリコート形成装置)
半田プリコート形成装置は、半田粒子と熱可塑性樹脂とを含む半田ペーストを基板のランドに供給してそれらを加熱することによって、当該ランド上に形成された半田プリコートと、半田プリコートの少なくとも頂部を覆う樹脂膜であって熱可塑性樹脂(R)を含む樹脂膜(F)とを形成する。半田プリコート形成装置は、半田粒子と熱可塑性樹脂(R)とを含む半田ペーストを基板のランドに供給する半田ペースト供給部と加熱部とを含み、さらに冷却部を含んでもよい。半田ペースト供給部に特に限定はなく、公知の半田ペースト供給装置を用いてもよい。例えば、ディスペンサを含む装置や、スクリーン印刷装置を用いてもよい。加熱部および冷却部には、公知のリフロー装置またはそれと同様の装置を用いてもよい。
【0043】
(フラックス塗布装置)
フラックス塗布装置は、半田プリコートと樹脂膜(F)とを覆うようにフラックスを塗布する装置である。フラックス塗布装置では、フラックス塗布工程が行われる。フラックス塗布装置は、スクリーン印刷を行うための装置であってもよい。あるいは、フラックス塗布装置は、フラックスを塗布するためのディスペンサを含んでもよい。
【0044】
(部品搭載装置およびリフロー装置)
部品搭載装置では、部品搭載工程が行われる。具体的には、部品搭載装置は、半田プリコート上に存在する樹脂膜(F)上に部品を搭載する。部品搭載装置には、部品を保持する部品搭載ヘッドと、部品搭載ヘッドを移動させる移動装置とを含む装置を用いることができる。部品搭載装置には、公知の部品搭載装置を用いてもよい。部品搭載ヘッドは、部品を搭載する際の衝撃を緩和するための緩衝機構を含んでもよい。
【0045】
リフロー装置は、部品が搭載された基板を加熱することによって、ランドと部品とを半田付けする。リフロー装置では、リフロー工程の少なくとも一部が行われる。リフロー装置は、少なくとも加熱装置を含み、冷却装置を含んでもよい。リフロー装置には、公知のリフロー装置を用いてもよい。
【0046】
(基板搬送装置)
基板搬送装置は、半田プリコート形成装置、フラックス塗布装置、部品搭載装置、およびリフロー装置の順に基板を搬送する。基板搬送装置は、基板を搬送するための機構(例えば、ベルトコンベアおよび駆動装置)を含む。そのような機構には、基板を搬送するための公知の機構を用いてもよい。
【0047】
製造システムは、上記の装置を制御するための制御装置を含む。制御装置は、演算処理装置と記憶装置とを含む。記憶装置には、上記の装置を制御するためのプログラムが記憶される。さらに、記憶装置には、基板の処理に必要な情報が記憶される。
【0048】
以下では、本発明の製造方法(M)および製造システムの例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する例の工程および装置には、上述した工程および装置を適用できる。また、以下で説明する例の工程および装置は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。また、以下で説明する実施形態において、本発明の実施に必須ではない事項は省略してもよい。
【0049】
(実施形態1)
実施形態1では、本発明の製造方法(M)の一例、および本発明の製造方法システムの一例について説明する。実施形態1の製造システム10の構成を図1に模式的に示す。製造システム10は、基板搬送ライン(基板搬送装置)11、制御装置20、ローダー50、半田プリコート形成装置90、半田プリコート検査装置300、フラックス塗布装置400、部品搭載装置501および502、搭載状態検査装置600、リフロー装置700、基板検査装置800、およびアンローダー900を含む。これらは、この順序で上流側から下流側に配置されている。本発明に特有の構成以外の構成には、公知の構成を適用してもよい。以下では、部品搭載装置501および502をまとめて、「部品搭載装置500」と称する場合がある。
【0050】
基板搬送ライン11は、半田プリコート形成装置90から基板検査装置800にわたって基板1(後述)を搬送する。基板搬送ライン11は、連続した1つのラインでなくてともよく、複数の搬送ラインによって構成されていてもよい。基板搬送ライン11には、公知の基板搬送ラインを用いることができる。
【0051】
制御装置20は、各装置に接続されている。制御装置20は、演算処理装置と記憶装置とを含む。制御装置20は、製造システム10に含まれる他の装置と通信可能に接続されている。制御装置20は、これらの装置との間でデータのやりとりを行う。それによって、制御装置20は、製造システム10で行われる工程を管理する。制御装置20の記憶装置には、製造システム10の各装置に必要なプログラムやそれに必要なデータが格納されている。
【0052】
ローダー50は、ラック(図示せず)に収納された基板を半田プリコート形成装置90へ供給する。アンローダー900は、完成した実装基板をラックに回収する。半田プリコート形成装置90から基板検査装置800までの各装置は基板を搬送するコンベア(基板搬送ライン11)を含む。各コンベアは、上流側(ローダー50側)の装置から基板を受け取って下流側(アンローダー900側)の装置へ受け渡すことができるように配置されている。
【0053】
以下に、基板1の処理について説明する。まず、基板1をローダー50から半田プリコート形成装置90に搬送して処理する。半田プリコート形成装置90は、半田プリコート形成装置90は、半田ペースト供給部100、加熱部210、冷却部220を含む。
【0054】
半田ペースト供給部100は、基板1に半田ペーストを供給するための機構を含む。例えば、半田ペースト供給部100は、半田ペーストをスクリーン印刷するための機構や、ディスペンサなどを含んでもよい。加熱部210は、基板1に供給された半田ペーストを加熱して半田ペーストに含まれる半田粒子を溶融する加熱機構を含む。冷却部220は溶融した半田を冷却して固化するための冷却機構を含む。半田ペースト供給部100は、スクリーン印刷などによって、半田ペーストを基板1のランド上に配置する。
【0055】
図2を参照して、半田プリコートの形成工程について説明する。図2に示すように、基板1は、板状部1aと、板状部1a上に形成された複数のランド1bとを含む。ランド1bは、配線パターンの一部であり、半田プリコートが形成される部分である。
【0056】
半田プリコートの形成では、まず、図2(a)に示すように、半田ペースト供給部100のマスクプレート116を基板1上に配置する。次に、マスクプレート116の上面の半田ペーストPを、半田ペースト供給部100の印刷ヘッドのスキージ113a(ハッチングは省略する)を用いて、マスクプレート116上を移動させる。これによって、図2(b)に示すように、パターン孔116aを通過した半田ペーストの一部がパターン孔116aに充填される。
【0057】
次に、図2(c)に示すように、基板1をマスクプレート116から引き離す。ランド1b上には、半田ペーストPが配置されている。半田ペーストPは、半田粒子と熱可塑性樹脂(R)とを含む。
【0058】
その後、半田ペーストPが配置された基板1は、加熱部210で加熱される。この加熱によって、半田ペーストP中の半田粒子が溶解する。次に、基板1は、冷却部220で冷却される。これによって、溶融した半田が固化し、図2(d)に示すように、ランド1b上に半田プリコート2が形成される。なお、図2(d)では、半田プリコート2上に形成される樹脂膜3の図示を省略しているが、実際には、上記の工程によって、図3(a)に示すように、半田プリコート2の頂部2tを覆うように樹脂膜3が形成される。図3(a)に示す一例では、樹脂膜3は、半田プリコート2の上面の全体を覆うように警醒されている。樹脂膜3は、半田ペーストPに含まれる熱可塑性樹脂(R)を含む。
【0059】
半田プリコート2の頂部2tは、板状部1aから最も離れている部分である。通常、頂部2tは、ランド1bの上方に位置する半田プリコート2の中央近傍にある。
【0060】
半田プリコート2および樹脂膜3が形成された基板1は、半田プリコート検査装置300で、半田プリコート2が適切に形成されているかどうかが検査される。次に、基板1は、フラックス塗布装置400で処理される。フラックス塗布装置400は、フラックスを塗布ための機構を含む。例えば、フラックス塗布装置400は、フラックスをスクリーン印刷するための機構や、ディスペンサなどを含んでもよい。
【0061】
フラックス塗布装置400は、図3(b)に示すように、半田プリコート2と樹脂膜3とを覆うようにフラックス4を塗布する。フラックス4は、上述した方法(例えばスクリーン印刷)によって塗布される。
【0062】
フラックス4が塗布された基板1は、次に、部品搭載装置500に送られる。部品搭載装置500では、部品搭載ヘッドを用いて、図3(c)に示すように、半田プリコート2上に存在する樹脂膜3上に部品(電子部品)5を搭載する。このとき、樹脂膜3上に部品5を搭載することによって、樹脂膜3に亀裂を生じさせてもよい。本実施形態の方法および装置では、半田プリコート2上に、緩衝膜として機能する樹脂膜3が形成されている。そのため、微小な部品5を比較的高速で半田プリコート2の上に搭載する場合でも、部品5の破損を抑制できる。
【0063】
部品5が搭載された基板1は、次に、搭載状態検査装置600に送られ、部品5の搭載状態が検査される。その後、基板1は、リフロー装置700に送られる。リフロー装置700は、部品が搭載された基板1を加熱する機構と冷却する機構とを含む。
【0064】
リフロー装置700は、部品5が搭載された基板1を加熱した後に冷却する。これによって、図3(d)に示すように、ランド1bと部品5とが、半田2aによって半田付けされる。基板1を加熱したときに、半田プリコート2が溶融するとともに樹脂膜3が軟化する。軟化した樹脂膜3はフラックス4と混ざりあい、冷却後は樹脂膜3aとなる。
【0065】
このようにして、部品5が実装された部品実装基板1xが得られる。本発明によれば、微小な部品を歩留まりおよび生産性よく基板に実装することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、部品実装基板の製造方法および部品実装基板の製造システムに利用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 :基板
1b :ランド
1x :部品実装基板
2 :半田プリコート
2t :頂部
3 :樹脂膜
4 :フラックス
5 :部品
10 :製造システム
11 :基板搬送ライン
90 :半田プリコート形成装置
400 :フラックス塗布装置
500、501、502 :部品搭載装置
700 :リフロー装置
P :半田ペースト
図1
図2
図3